JP5916343B2 - モータ制御装置、モータ制御方法 - Google Patents
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Description
ここで、d軸とq軸の2軸座標へ座標変換したdqベクトル制御の概略を説明する。dqベクトル制御は、回転子の界磁方向をd軸、これと直交する方向をq軸とするdq座標系上の等価回路でモータの制御処理を行う。このようなモータを制御するモータ制御装置は、例えば、PI(Proportional Integral;比例積分)制御を用いてd軸の検出電流Id及びq軸の検出電流Iqが、d軸指令電流Id*及びq軸指令電流Iq*に追従するように、フィードバック制御によりd軸指令電圧Vd*及びq軸指令電圧Vq*を制御している。
このため、特許文献1に記載のモータ制御装置は、d軸及びq軸の各電流指令値を0にして、外部からモータを回転させる。この場合、モータには、誘起電圧が発生するが、モータ制御装置が、電流が0になるようにモータを制御している。このため、モータ制御装置は、d軸電流Id、q軸電流Iqを0にするように制御することになり、角度検出器と同期モータの回転位置との間の位相がずれていない場合、q軸電圧Vqのみが発生し、d軸電圧Vdは0となる。
しかしながら、角度検出器と同期モータの回転位置との間の位相がずれている場合、d軸電圧Vdが発生する。特許文献1に記載のモータ制御装置は、d軸電流Id及びq軸電流Iqを0にするd軸指令電圧Vd*とq軸指令電圧Vq*とを求め、求めたd軸指令電圧Vd*が0になるオフセット量Δθを算出している。そして、特許文献1に記載のモータ制御装置では、算出したオフセット量を用いて、角度検出器と同期モータの回転位置との間に生じるずれを補正していた。
モータ制御装置は、例えば産業車両や電気自動車、ハイブリッド自動車、電車、船舶、飛行機、発電システム等において、電池セルから電力の供給を受けてモータを制御する装置である。
電気モータを動力とする電気自動車や、内燃機関と電気モータを併用して動力とするハイブリッド自動車(以下、「電気自動車等」という)では、電力利用効率を高めるため、モータ制御装置が、3相の駆動電流を制御する際にパルス幅を変調させるパルス幅変調制御(PWM(Pulse Width Modulation)制御)を用いている。
電気自動車等では主に永久磁石同期モータが用いられ、そのモータには、回転に同期した3相電流が流される。その3相電流をPWM制御するために、キャリア信号と呼ばれる一定の周波数の電気パルスが用いられる。この場合、駆動電流は、キャリア信号のタイミングに合わせてパルス幅が変調された矩形波としてモータに供給され、モータのインダクタンスによって正弦波の3相電流となる。
そして、このようなモータ制御装置では、モータに流れる電流が、入力されたトルク指令のトルクになるようにフィードバックを用いたPI(Proportional Integral;比例積分)制御により制御している。また、PI制御では、モータへ供給するuvwの3相をd軸q軸の2軸座標へと座標変換し、d軸q軸の2相にて制御する。また、このようなモータ制御装置では、モータの回転角度を検出する角度検出装置であるレゾルバが組み付けられている。そして、電流のPI制御では、検出したモータの回転角度と、入力されたトルク指令に基づいて電流指令値を生成し、生成した電流の指令値と、モータに流れる電流の測定値とを合わせるように制御することで、モータを制御している。
モータ制御システムでは、レゾルバの組み付け精度による誤差や、レゾルバの製造による誤差、レゾルバによる検出信号の処理の遅れによる誤差などが生じる(以下、レゾルバによる誤差という)。このような誤差を補正するために、本発明のモータ制御システムでは、無負荷状態のモータを、d軸電流が流れていず、モータの速度が弱め界磁制御領域に属していない制御領域で定速回転させる。
モータが無負荷で一定回転している状態では、実動作におけるd軸電流とq軸電流とはわずかしか流れていない。しかしながら、レゾルバによる誤差が生じ、実動作における座標とモータ制御装置内の座標とでdq座標系の角度ずれが発生する。このように実動作とモータ制御装置内とでdq座標系の角度がずれている場合、モータ制御装置内では、見かけ上、励磁電圧ベクトルωΦaの位相がずれて、モータの電圧ベクトルの角度に影響が発生する。
このような原理に基づき、本発明のモータ制御システムでは、無負荷状態のモータを定速回転させているとき、d軸及びq軸の各電圧指令値を測定する。そして、本発明のモータ制御システムでは、測定したd軸及びq軸の各電圧指令値からオフセット誤差(補正値)を算出し、算出したオフセット誤差補正値をレゾルバによる検出信号に加算してモータ制御を行う。
第1実施形態のモータ制御装置は、d軸電流が発生せず、モータの速度が弱め界磁制御領域に属していない制御領域(例えば、後述する電圧制御領域)において、モータを無負荷状態で回転させる。このようにモータが無負荷状態で定速回転しているときに、本実施形態のモータ制御装置は、d軸電圧指令値とq軸電圧指令値を測定して、オフセット誤差補正値を算出する。以下、第1実施形態について、詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るモータ制御システム1は、レゾルバ20、モータ制御装置30、及びオフセット補正装置40を備えている。
モータ制御装置30は、速度計算部(速度制御部)302、速度PI制御部(速度制御部)303、電流指令部(速度制御部)304、電流検出器305、3相/2相変換部306、電流PI制御部(速度制御部、電流比例積分制御部)307、2相/3相変換部308、デューティ計算部309、及び電力変換部310を備えている。
オフセット補正装置40は、制御部401、電圧測定部(電圧測定部)402及びオフセット算出部(補正値算出部)403を備えている。
また、モータ制御装置30は、モータ10及びオフセット補正装置40と接続されている。
また、速度PI制御部303は、オフセット補正装置40の制御部401が出力する電流指令値ω*に基づきモータ10に対するトルク指令値τ*を算出し、算出したトルク指令値τ*を電流指令部304に出力する。
電流PI制御部307は、入力されたd軸電流指令値Id*およびq軸電流指令値Iq*から、それぞれ検出電流IdおよびIqを減算して、偏差ΔIdおよびΔIqを算出する。電流PI制御部307は、算出した偏差ΔIdおよびΔIq用いて、次式(1)及び(2)により、指令電圧であるd軸の電圧指令値Vd*、q軸の電圧指令値Vq*(以下、d軸電圧指令値、q軸電圧指令値という)を算出する。なお、本実施形態では、電流PI制御しているため、d軸電圧指令値Vd*は、電圧Vdに等しく、q軸電圧指令値Vq*は、電圧Vqに等しい。このため、本実施形態では、d軸電圧指令値Vd*をd軸電圧指令値Vd、q軸電圧指令値Vq*をq軸電圧指令値Vqとして表す。
電流PI制御部307は、算出したd軸電圧指令値Vdおよびq軸電圧指令値Vqを、2相/3相変換部308に出力する。
2相/3相変換部308は、算出した3相の電圧指令値Vu、Vv、Vwをデューティ計算部309に出力する。
オフセット算出部403は、記憶されている各値、電圧測定部402が出力する回転方向、d軸電圧指令値Vd、q軸電圧指令値Vqに基づき、後述するようにオフセット誤差Δθ’(第1補正値、第2補正値)を算出する。
なお、算出されたオフセット誤差補正値は、モータ制御装置30またはオフセット補正装置40の記憶部(不図示)に記憶させておいてもよい。
図2に示すように、レゾルバ20は、モータ10の貫通シャフトにマウントされ、ブラシレスモータのロータ磁界に合わせて調整されている。レゾルバ20は、レゾルバ・ロータ22、1次側コイル(ロータ)24、1次側コイル24と互いに90度離れたふたつの2次側コイル(ステータ)26とで構成されている。1次側に交流電圧を加えると2次側コイルにも電圧が発生する。2次側に出力される電圧の振幅は、θをロータ角度とするとsinθとcosθになる。
レゾルバ20は、これらの2次側コイル26の信号に基づき、モータ10の検出角度を算出する。この算出された検出角度は、モータ10の電気角の回転基準角度(0度)から1回転(360度)の間、電気自動車などでは慣性が大きく、サンプリングタイムに比べて加速度が無視されるので、単調に且つほぼ線形に増加する値となる。したがって、モータ10の複数の回転にわたる算出値は、例えば、のこぎりの歯状の波形となる。レゾルバ20は、この算出値によりモータ10の電気角の検出角度を検出できる。
図3において、横軸は速度を表し、縦軸は電圧、界磁、出力及びトルクを表している。また、図3において、Nbは基底速度であり、Ntは最高速度である。なお、基底速度Nbとは、電圧制御領域における最高速度である。また、最高速度Ntとは、最弱界磁における最高速度である。
曲線g101は、電圧対速度の関係を表し、曲線g102は、出力対速度の関係を表している。曲線g103は、界磁対速度の関係を表し、曲線g104は、トルク対速度の関係を表している。
そして、所定の回転速度以上の領域では、曲線g101のように電圧を一定に保ちながら界磁を曲線g103のように弱めることで、回転速度を上昇させる。このような制御が弱め界磁制御であり、このように電圧が一定且つ回転速度が速くなる領域が弱め界磁制御領域(界磁制御領域)である。
制御系dcqc座標系とは、モータ制御装置30a内のd軸をdc軸、q軸をqc軸に置き換えて表した座標系である。
図4に示すように、モータ制御装置30aは、速度計算部302、速度PI制御部303、電流指令部304a、電流PI制御部307aから構成される。モータ10とレゾルバ20を実座標のd軸q軸で表した制御対象60は、第1位相変換部600、第2位相変換部601、モータ電圧方程式部602、トルク方程式部603、(1/Js)604、(1/s)605、加算部70から構成される。
オフセット補正装置40aは、制御部401、電圧測定部402a及びオフセット算出部403aを備えている。
図1と同じ動作部は、同じ符号を用いて説明を省略する。
ここで、遅れ分|ω|Δtを省略すると、第1位相変換部600は、次式(3)のように表される。
ここで、遅れ分|ω|Δtを省略すると、第2位相変換部601は、式(3)の逆行列で次式(4)のように表される。
また、式(5)において、pは微分演算子である。このため、定常状態において、式(5)は、次式(6)のように表される。
オフセット算出部403aは、電圧測定部402aが出力するモータ10の回転方向を示す情報、dc軸電圧指令値Vdc *、qc軸電圧指令値Vqc *に基づき、オフセット誤差補正値Δθ’を算出する。
d軸電圧及びq軸電圧は、式(6)より、次式(8)及び次式(9)のように表される。
図5において、角度δは、内部相差角(負荷角)であり、q軸と電圧Vのベクトル(以下、電圧ベクトルVという)とのなす角である。
図5において、反時計回りが正回転方向であり、d軸に対してq軸が90度進んでいる。
図5に示すように、モータ10に印加される電圧ベクトルVは、d軸電圧Vd(=−Vsinδ)のベクトル(以下、ベクトルVdという)とq軸電圧Vq(=Vcosδ)のベクトル(以下、ベクトルVqという)とに分解できる。
モータ10に流れる電流ベクトルIは、d軸電流Idのベクトル(以下、ベクトルIdという)とq軸電流Iqのベクトル(以下、ベクトルIqという)とに分解できる。
レゾルバ20の組み付けによる誤差、製造による誤差、モータ制御装置30aの遅れにより発生する誤差等が無い場合、図5に示したd軸及びq軸は、モータ制御装置30aのdc軸及びqc軸と一致している。
次に、レゾルバ20にオフセット誤差が有り、d軸及びq軸と制御系座標のdc軸及びqc軸とが一致していない場合におけるベクトルの関係を、図6及び図7を用いて説明する。
図6は、本実施形態に係る角速度が正の場合の電圧ベクトルの関係の一例を説明する図である。図7は、本実施形態に係る角速度が負の場合の電圧ベクトルの関係の一例を説明する図である。
図6に示す状態は、d軸電流が発生していず、モータ10の速度が弱め界磁制御領域に属していない制御領域で、無負荷状態としたモータ10を、角速度が正になるように、図4のモータ制御装置30aによりモータ10を回転させている状態である。
図6に示すように、制御系のqc1軸は、実座標のq軸に対して角度(オフセット誤差Δθ+遅れ分|ω|Δt)進んでいるとする。
実座標d−qにおいて、無負荷状態のモータ10が正回転している場合、誘起電圧ベクトルωΦaがq軸の正方向に発生する。また、d軸電流Id及びq軸電流Iqによる電圧成分は、誘起電圧ベクトルωΦaを抑えるように電圧ベクトル(ωLdId+RaIq)がq軸の負方向に発生する。このため、q軸電圧ベクトルVqは、電圧ベクトル(ωLdId+RaIq)と誘起電圧ベクトルωΦaとの合成ベクトルである。また、d軸電圧ベクトルVd(=−ωLqIq+RaId)は、d軸の負方向に発生している。
図6に示すように、制御系座標dc1−qc1においては、実座標のd軸に対して角度δ進んでいる電圧ベクトルVc1として表される。なお、電圧ベクトルVc1は、モータ10の電圧である。この電圧ベクトルVc1は、dc1軸の正方向の電圧ベクトルVdc1と、qc1軸の正方向の電圧ベクトルVqc1とに分解できる。
また、図6に示すように、電圧ベクトルVc1と電圧ベクトルVqc1とのなす角は、(オフセット誤差Δθ+遅れ分|ω|Δt)と(誘起電圧ベクトルωΦaと電圧ベクトルVc1とのなす角δ)との差である。
図7に示す状態は、モータの速度が弱め界磁制御領域に属していない制御領域で、無負荷状態としたモータ10を、角速度が負になるように、図4のモータ制御装置30aによりモータ10を回転させている状態である。
図7に示すように、実座標d−qにおいて、無負荷状態のモータ10が負回転している場合、誘起電圧ベクトルωΦaがq軸の負方向に発生する。また、d軸電流Id及びq軸電流Iqによる電圧成分は、誘起電圧ベクトルωΦaを抑えるように電圧ベクトル(ωLdId+RaIq)がq軸の正方向に発生する。このため、q軸電圧ベクトルVqは、電圧ベクトル(ωLdId+RaIq)と誘起電圧ベクトルωΦaとの合成ベクトルである。また、d軸電圧Vdベクトル(=−ωLqIq+RaId)は、d軸の負方向に発生している。
図7に示すように、制御系座標dc2−qc2においては、実座標のd軸に対して角度δ遅れている電圧ベクトルVc2として表される。なお、電圧ベクトルVc2は、モータ10の電圧である。この電圧ベクトルVc2は、dc2軸の正方向の電圧ベクトルVdc2と、qc2軸の正方向の電圧ベクトルVqc2とに分解できる。
また、図7に示すように、電圧ベクトルVc2と電圧ベクトルVqc2とのなす角は、(オフセット誤差Δθ−遅れ分|ω|Δt)と(誘起電圧ベクトルωΦaと電圧ベクトルVc2とのなす角δ)との和である。
図8は、本実施形態に係るモータの速度が弱め界磁制御領域に属していない制御領域でモータを回転させている場合のオフセット誤差補正値の算出方法を説明する図である。
すなわち、オフセット算出部403aは、無負荷状態としたモータ10を、正回転させた場合のdc1軸電圧指令値Vdc1、qc1軸電圧指令値Vqc1を測定する。次に、オフセット算出部403aは、無負荷状態としたモータ10を、負回転させた場合のdc2軸電圧指令値Vdc2、qc2軸電圧指令値Vqc2を測定する。次に、オフセット算出部403aは、式(14)に各測定した電圧指令値を代入して、オフセット誤差補正値Δθ’を算出する。
なお、式(14)を用いて、遅れ分|ω|Δt及び角度δの影響を除去するために、本実施形態では、モータ10の正回転及び負回転の各回転数の絶対値を等しくして、各電圧指令値を測定する。
なお、以下のようなオフセット誤差補正値の算出は、モータ制御システム1が車両に搭載されている場合、例えば車両の組み立て時、車両の点検時、モータ10もしくはモータ制御装置30の交換時等に行うようにしてもよい。
図9は、本実施形態に係るオフセット誤差補正値の算出手順のフローチャートである。
(ステップS2)電圧測定部402aは、dc1軸電圧指令値Vdc1及びqc1軸電圧指令値Vqc1を測定し、測定したdc1軸電圧指令値Vdc1及びqc1軸電圧指令値Vqc1をオフセット算出部403aに出力する。
次に、電圧測定部402aは、速度計算部302が出力する角速度ωを取得し、取得した角速度ωに基づいて回転方向を検出する。ステップS2において、電圧測定部402aは、回転方向を正方向(正回転)と検出する。次に、電圧測定部402aは、検出した回転方向をオフセット算出部403aに出力する。ステップS2終了後、ステップS3に進む。
(ステップS4)電圧測定部402aは、dc2軸電圧指令値Vdc2及びqc2軸電圧指令値Vqc2を測定し、測定したdc2軸電圧指令値Vdc2及びqc2軸電圧指令値Vqc2をオフセット算出部403aに出力する。
次に、電圧測定部402aは、速度計算部302が出力する角速度ωを取得し、取得した角速度ωに基づいて回転方向を検出する。ステップS4において、電圧測定部402aは、回転方向を負方向(負回転)と検出する。次に、電圧測定部402aは、検出した回転方向をオフセット算出部403aに出力する。ステップS4終了後、ステップS5に進む。
以上で、オフセット誤差補正値算出処理を終了する。
図10は、本実施形態に係る実機を用いてオフセット誤差を算出した結果の一例を説明する図である。
≪実測方法≫
手順1 無負荷状態のモータに対して、+1000[rpm]の速度指令値で回転させた時のモータ制御装置30bの内部データを測定する。
手順2 無負荷状態のモータに対して、−1000[rpm]の速度指令値で回転させた時のモータ制御装置30bの内部データを測定する。
手順3 手順1及び手順2で測定したdc軸電圧指令値Vdcとqc軸電圧指令値Vqcからオフセット誤差補正値を算出する。
手順4 手順1〜3について、オフセット誤差に+30[deg]を追加して測定する。
手順5 手順1〜3について、オフセット誤差に−30[deg]を追加して測定する。
図10(c)及び図10(d)は、手順4の実測結果である。すなわち、実機が有しているオフセット誤差に加えて、オフセット誤差を+30[deg]加算した場合の効果を測定した結果である。
図10(b)及び図10(d)において、第1行目は項目を示し、第2行目は回転数が+1000[rpm]の場合のオフセット誤差補正値の計算値を示し、第3行目は回転数が−1000[rpm]の場合のモータ制御装置30bのオフセット誤差補正値の計算値を示している。なお、図10(b)及び図10(d)の計算値は、図10(a)及び図10(c)に示した測定値を、tan−1(Vdc/Vqc)に代入して算出した値である。
次に、図10(d)に示したように、オフセット誤差を1.7[deg]に+30[deg]を加算した場合、正回転のみによるオフセット誤差補正値は+27.2[deg]であり、負回転のみによるオフセット誤差補正値は+36.6[deg]であった。正回転と負回転とのオフセット誤差補正値の平均を算出すると、図10(d)に示したように+31.9[deg]である。すなわち、実機にオフセット誤差が合計+31.7(=1.7+30)[deg]あっても、本実施形態によれば、(オフセット誤差−オフセット誤差補正値)の補正精度を−0.2[deg]に抑えることができる。
正回転または負回転のみの場合と比較して、オフセット誤差補正値の補正精度が抑えられている理由は、正回転と負回転とのオフセット誤差補正値の平均を算出することで、モータ制御装置30bの遅れ要素などによる影響がキャンセルされているためである。このように、本実施形態によれば、オフセット誤差補正値の補正精度を高精度に抑えることができる。
この結果、本実施形態のモータ制御システム1では、無負荷状態のモータ10を、正方向及び逆方向に回転させているので、正方向しか回転させていない従来技術と比較して精度良くオフセット誤差を補正することができる。また、本実施形態のモータ制御システム1では、オフセット補正装置40の速度指令値により、モータ10の回転を制御しているため、例えばガソリンと電気を用いるハイブリッドカーでなく電気のみでモータ10を駆動する場合においても、モータ10を正回転及び負回転させて、電流指令値を測定してオフセット制御値を算出することができる。
このように算出したオフセット誤差補正値を、レゾルバ20が検出した検出信号に加算してモータ10を制御することで、高精度にオフセット誤差を補正したモータ10の制御を行える。
次に、オフセット誤差に対するノイズ及び高周波成分の影響を抑える方法を、図4及び図11を用いて説明する。本実施形態のモータ制御装置は、図4に示したモータ制御システムにおいて、電流PI制御部307aの構成が異なっている。
図11に示した電流PI制御部307bの各部において、ノイズや高周波成分の影響を受けやすいのは、増幅部Gpd341、増幅部Gid342、増幅部Gpq346及び増幅部Giq347である。しかし、増幅部Gid342の出力及び増幅部Giq347の出力は、積分器343及び348で積分されることにより、ノイズや高周波成分は減衰される。また、非干渉制御部350内部の値は、ノイズや高周波成分の影響を受けにくい。さらに、定常状態では、積分が効くために、増幅部Gpd341の入力及び増幅部Gpq346の入力はノイズのみとなり、この出力は電圧ベクトルには影響を与えない。このため、本実施形態では、電流PI制御部307b内部データの内、ノイズや高周波成分の影響を受けやすい増幅部Gpd341、増幅部Gpq346の出力を除き、ノイズや高周波成分の影響を受けにくい値を用いてd軸電圧指令値Vd’、q軸電圧指令値Vq’を生成する。そして、本実施形態では、オフセット補正装置は、このように生成されたd軸電圧指令値Vd’、q軸電圧指令値Vq’を測定して、測定したd軸電圧指令値Vd’、q軸q軸電圧指令値Vq’を用いてオフセット誤差を算出する。
本実施形態におけるモータ制御装置の電流PI制御部307bには、電流指令部304a(図4)が出力するdc軸電流指令値Idc *、qc軸電流指令値Iqc *、第1位相変換部600(図4)が出力するdc軸電流Idc、qc軸電流Iqc、速度計算部302(図4)が出力する角速度ωが入力される。電流PI制御部307bは、これらの入力された値に基づき、dc軸電圧指令値Vdc、qc軸電圧指令値を生成し、生成したdc軸電圧指令値Vdc、qc軸電圧指令値Vqcを第2位相変換部601(図4)に出力する。
また、非干渉制御部350は、Raパラメータ部350−1及び350−3、Ldパラメータ部350−6、φパラメータ部350−8、Lqパラメータ部350−11、加算部350−2、350−4、350−7、350−9及び350−12、及び乗算部350−5及び350−10を備えている。
増幅部Gpd341には、d軸電流制御比例ゲインが記憶されている。なお、d軸電流制御比例ゲインは、モータ制御装置30の設計者が、予め算出して記憶させる。増幅部Gpd341は、加算部340が出力する偏差ΔIdcに、d軸電流制御比例ゲインを乗じて、乗算した値Gpd×ΔIdcを加算部344に出力する。
積分器343は、増幅部Gid342が出力する値Gid×ΔIdcを積分し、積分した値Intgl_dc(=Gid×Σ(ΔIdc))を加算部344に出力する。
加算部344は、増幅部Gpd341が出力する値Gpd×(ΔIdc)に、積分器343が出力する値Intgl_dcを加算し、加算した値Intgl_dc+Gpd×(ΔIdc)を非干渉制御部350に出力する。
増幅部Gpq346には、q軸電流制御比例ゲインが記憶されている。なお、q軸電流制御比例ゲインは、モータ制御装置30の設計者が、予め算出して記憶させる。増幅部Gpq346は、加算部345が出力する偏差ΔIqcに、q軸電流制御比例ゲインを乗じて、乗算した値Gpq×(ΔIqc)を加算部349に出力する。
積分器348は、増幅部Giq347が出力する値Giq×(ΔIqc)を積分し、積分した値Intgl_qc(=Giq×Σ(ΔIqc))を加算部349に出力する。
加算部349は、増幅部Gpd346が出力する値Gpq×(ΔIqc)に、積分器348が出力する値Intgl_qcを加算し、加算した値Intgl_qc+Gpq×(ΔIqc)を非干渉制御部350に出力する。
Raパラメータ部350−1には、予め所定値の巻線抵抗Raの抵抗値が記憶されている。なお、巻線抵抗Raの抵抗値は、モータ制御装置30の設計者が、予め算出して記憶させる。Raパラメータ部350−1は、電流指令部304aが出力するqc軸電流指令値Iqc *に巻線抵抗Raの抵抗値を乗じて、乗算した値Ra×Iqc *を加算部350−2に出力する。
加算部350−2は、加算部349が出力する値(Intgl_qc+Gpq×(ΔIqc))に、Raパラメータ部350−1が出力する値Ra×Iqc *を加算し、加算した値Intgl_qc+Gpq×(ΔIqc)+Ra×Iqc *を加算部350−7に出力する。
加算部350−4は、加算部344が出力する値(Intgl_dc+Gpd×(ΔIdc))に、Raパラメータ部350−3が出力する値Ra×Idc *を加算し、加算した値Intgl_dc+Gpd×(ΔIdc)+Ra×Idc *を加算部350−12に出力する。
Ldパラメータ部350−6には、予め所定値のd軸インダクタンスLdが記憶されている。なお、d軸インダクタンスLdは、モータ制御装置30の設計者が、予め算出して記憶させる。Ldパラメータ部350−6は、乗算部350−5が出力する値ωIdc *にd軸インダクタンスLdを乗じて、乗算した値ωLd×Idc *を加算部350−7に出力する。
加算部350−7は、加算部350−2が出力する値Intgl_qc+Gpq×(ΔIqc)+Ra×Iqc *に、Ldパラメータ部350−6が出力する値ωLd×Idc *を加算し、加算した値Intgl_qc+Gpq×(ΔIqc)+Ra×Iqc *+ωLd×Idc *を加算部350−9に出力する。
加算部350−9は、加算部350−7が出力する値Intgl_qc+Gpq×(ΔIqc)+Ra×Iqc *+ωLd×Idc *に、φパラメータ部350−8が出力する値ωΦaを加算し、加算した値Intgl_qc+Gpq×(ΔIqc)+Ra×Iqc *+ωLd×Idc *+ωΦaをqc軸電圧指令値Vqcとして出力する。
Lqパラメータ部350−11には、予め所定値のq軸インダクタンスLqが記憶されている。なお、q軸インダクタンスLqは、モータ制御装置30の設計者が、予め算出して記憶させる。Lqパラメータ部350−11は、乗算部350−10が出力する値ωIqc *にq軸インダクタンスLqを乗じて、乗算した値ωLq×Iqc *を加算部350−12に出力する。
Claims (7)
- 電流指令値から、電圧指令値を生成し、モータに流れる検出電流によりフィードバック制御するモータ制御装置であって、
前記モータの速度制御を行う速度制御部と、
前記モータが一定速度で回転しているときの前記速度制御部の出力に基づく前記電圧指令値を測定する電圧測定部と、
前記測定された電圧指令値に基づき、前記モータの回転位置に対する補正値を算出する補正値算出部と、
を備え、
前記電圧指令値は、
d軸電圧指令値及びq軸電圧指令値であり、
前記電圧測定部は、
前記モータが速度指令値に基づいて回転しているとき、前記d軸電圧指令値及び前記q軸電圧指令値を測定し、
前記補正値算出部は、
前記モータが正回転しているときの前記測定された前記d軸電圧指令値と前記q軸電圧指令値との位相に基づく第1補正値、及び、前記モータが負回転しているときの前記測定された前記d軸電圧指令値と前記q軸電圧指令値との位相に基づく第2補正値を算出し、算出した前記第1補正値及び前記第2補正値に基づいて、前記モータの回転位置に対する補正値を算出する
ことを特徴とするモータ制御装置。 - 前記補正値算出部は、
前記算出した補正値を前記モータの回転位置に対応した検出値に加算して回転位置を示す値を生成し、
前記速度制御部は、
前記生成された回転位置を示す値に基づき前記モータを制御する
ことを特徴とする請求項1に記載のモータ制御装置。 - 前記速度制御部は、
前記モータの正回転における前記モータの回転速度と、前記モータの負回転における前記モータの回転速度の絶対値とが等しくなるように制御し、
前記補正値算出部は、
前記モータが正回転しているときの前記測定された前記d軸電圧指令値と前記q軸電圧指令値との位相に基づいて算出した第1補正値と、前記モータが負回転しているときの前記測定された前記d軸電圧指令値と前記q軸電圧指令値との位相に基づいて算出した第2補正値との平均を算出して前記補正値を算出する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のモータ制御装置。 - 前記速度制御部は、
前記電流指令値から前記電圧指令値を生成する非干渉制御部を有する電流比例積分制御部
を備え、
前記電圧測定部は、
前記電流比例積分制御部内で生成されたd軸電流偏差の積分成分と前記非干渉制御部で生成されたd軸電圧成分とに基づいて生成されたd軸電圧指令値Vd’、および前記電流比例積分制御部内で生成されたq軸電流偏差の積分成分と前記非干渉制御部で生成されたq軸電圧成分とに基づいて生成されたq軸電圧指令値Vq’を測定する
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のモータ制御装置。 - 電流指令値から、電圧指令値を生成し、モータに流れる検出電流によりフィードバック制御するモータ制御装置のモータ制御方法であって、
速度制御部が、前記モータの速度制御を行う速度制御手順と、
電圧測定部が、前記モータが一定速度で回転しているときの前記速度制御部の出力に基づく前記電圧指令値を測定する電圧測定手順と、
補正値算出部が、前記測定された電圧指令値に基づき、前記モータの回転位置に対する補正値を算出する補正値算出手順と、
を含み、
前記電圧指令値は、
d軸電圧指令値及びq軸電圧指令値であり、
前記電圧測定手順では、
前記モータが速度指令値に基づいて回転しているとき、前記d軸電圧指令値及び前記q軸電圧指令値を測定し、
前記補正値算出手順では、
前記モータが正回転しているときの前記測定された前記d軸電圧指令値と前記q軸電圧指令値との位相に基づく第1補正値、及び、前記モータが負回転しているときの前記測定された前記d軸電圧指令値と前記q軸電圧指令値との位相に基づく第2補正値を算出し、算出した前記第1補正値及び前記第2補正値に基づいて、前記モータの回転位置に対する補正値を算出する
ことを特徴とするモータ制御方法。
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