JP2004289927A - モーター制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】同期モーターの矩形波電圧駆動時におけるトルク制御性能を向上させる。
【解決手段】3相同期モーター7の回転速度ωm、交流電力Peおよび変換効率に基づいてモータートルクTeを推定し、トルク指令値Te*とトルク推定値Tdとの偏差が0となるようにPI制御またはPID制御を行ってd軸電圧指令値vd1を求め、d軸電圧指令値vd1と直流電源4aの電圧Vdqとに基づいて矩形波電圧の位相δを演算し、この位相δの3相矩形波電圧を直流電源4aから生成してモーター7に印加する。
【選択図】 図2
【解決手段】3相同期モーター7の回転速度ωm、交流電力Peおよび変換効率に基づいてモータートルクTeを推定し、トルク指令値Te*とトルク推定値Tdとの偏差が0となるようにPI制御またはPID制御を行ってd軸電圧指令値vd1を求め、d軸電圧指令値vd1と直流電源4aの電圧Vdqとに基づいて矩形波電圧の位相δを演算し、この位相δの3相矩形波電圧を直流電源4aから生成してモーター7に印加する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は交流モーターの制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
交流モーターにインバーターを用いて電圧を印加する場合に、正弦波PWM電圧の代わりに1パルスの矩形波電圧を印加すると基本波電圧の波高値を高くすることができ、高回転速度領域におけるモーター出力を増加することができる。矩形波電圧駆動時には、モーターに印加する電圧の位相は制御できるが、印加電圧の振幅はインバーターの直流電源電圧(DCリンク電圧)により定まり、モータートルクを正確に制御することができない。
【0003】
このような矩形波電圧駆動時の問題を解決するために、トルク推定器を用いてモータートルクを推定し、トルク指令値と推定値との偏差に基づいて電圧位相を制御することによって、トルク指令値に応じたトルクが得られるようにしたモーター制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この出願の発明に関連する先行技術文献としては次のものがある。
【特許文献1】
特開2000−050689号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来のモーター制御装置では、定常状態におけるモータートルクと電圧位相との関係に基づいて、モータートルクの指令値に推定値をフィードバックしてモータートルクを制御しているので、フィードバック制御ゲインを上げると制御系が不安定になりやすく、そのため制御ゲインを十分に上げることができず、トルク制御の応答性を速くすることが難しいという問題がある。
【0006】
本発明は、同期モーターの矩形波電圧駆動時におけるトルク制御性能を改善したモーター制御装置を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、3相同期モーターの回転速度、交流電力および変換効率に基づいてモータートルクを推定し、トルク指令値とトルク推定値との偏差が0となるようにPI制御またはPID制御を行ってd軸電圧指令値を求め、d軸電圧指令値と直流電源の電圧とに基づいて矩形波電圧の位相を演算し、この位相の3相矩形波電圧を直流電源から生成してモーターに印加する、ものである。
また、本発明は、3相同期モーターの回転速度、交流電力および変換効率に基づいてモータートルクを推定し、トルク指令値とトルク推定値との偏差が0となるようにPI制御またはPID制御を行って矩形波電圧の位相を求めるとともに、トルク指令値、直流電源の電圧およびモーターの回転速度に基づいて矩形波電圧の位相を補償し、補償された位相の3相矩形波電圧を直流電源から生成してモーターに印加するものである。
【0008】
【発明の効果】
本発明によれば、同期モーターの矩形波電圧駆動時におけるトルク制御性能を向上させることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
永久磁石同期モーターの回転に同期して回転するdq軸座標系における回路方程式は、次式のように表すことができる。
【数4】
(1)式において、vdはd軸電圧、vqはq軸電圧、Ldはd軸インダクダンス、Lqはq軸インダクダンス、Rは電機子抵抗、ωeはモーターの電気的角速度、idはモーターの界磁電流に相当するd軸電流、iqはモーターのトルク電流に相当するq軸電流、φは永久磁石による磁束鎖交数、pは微分演算子を表す。
【0010】
モーターの負荷、すなわち電流がほぼ一定な定常状態を考えると、(1)式を次のように近似することができる。
【数5】
また、モーターが高速で回転しているときには、dq軸インダクダンスLd、Lqとdq軸電流id、iqによる電圧に比べ、電機子抵抗Rとdq軸電流id、iqによる電圧の影響が小さくなるため、(2)式をさらに次のように近似することができる。
【数6】
【0011】
ここで、矩形波電圧位相δを用いてvdとvqを表すと次式の関係になり、これを図示すると図1に示す関係になる。
【数7】
vd=−Vdq・sinδ ・・・(4)
【数8】
vq=Vdq・cosδ ・・・(5)
(4)式および(5)式において、Vdqはdq軸座標系における電圧ベクトルの大きさ(以下、単にdq軸電圧と呼ぶ)であり、矩形波電圧駆動時にはインバーターの直流電源電圧(DCリンク電圧)Vdcを用いて次のように表せる。
【数9】
Vdq=√(6)・Vdc/π ・・・(6)
また、高回転速度で且つ定常状態におけるq軸電流iqとd軸電流idは、(3)式からそれぞれ次のように表せる。
【数10】
iq=−vd/(Lqωe) ・・・(7)
【数11】
id=(vq−ωeφ)/(Ldωe) ・・・(8)
【0012】
永久磁石同期モーターのトルクは、永久磁石によるトルクTemとリラクタンストルクTerによって発生する。永久磁石によるトルクTemは(9)式で表され、リラクタンストルクTerは(10)式で表される。
【数12】
Tem=Pφiq ・・・(9)
【数13】
Ter=P(Ld−Lq)idiq ・・・(10)
(9)式および(10)式において、Pは極対数を表す。
【0013】
(9)式と(10)式のトルクと電圧位相の関係を表すために、定常状態のdq軸電流id、iqを表す(7)式および(8)式と、dq軸電圧vd、vqと矩形波電圧位相δの関係を表す(4)式および(5)式を用いて整理すると、永久磁石によるトルクTemは(11)式で、リラクタンストルクTerは(12)式でそれぞれ表される。
【数14】
Tem=PφVdqsinδ/(Lqωe) ・・・(11)
【数15】
(11)式および(12)式から、電圧位相δを操作することによってモータートルクを制御できることがわかる。
【0014】
《発明の第1の実施の形態》
定常状態におけるリラクタンストルクTerを表す上記(12)式において、モーターの回転速度が高く、φ≫(Vdq/2ωe)であれば、(12)式を次のように近似することができる。
【数16】
Ter≒(PVdq/ωe)(1/Ld−1/Lq)φsinδ ・・・(13)
このリラクタンストルクの近似式(13)と永久磁石によるトルクを表す(11)式を加算すると、次のにようにモータートルクTeを簡単な形で表すことができる。
【数17】
Te≒{PVdqφ/(Ldωe)}sinδ ・・・(14)
この(14)式をd軸電圧vdを用いて表すと、
【数18】
Te≒−{Pφ/(Ldωe)}vd ・・・(15)
(15)式から明らかなように、d軸電圧vdによってモータートルクTeを操作できることがわかる。
【0015】
図2に第1の実施の形態の構成を示す。減算器1とトルク制御器101はトルクフィードバック制御を行う。まず、減算器1は、トルク指令値Te*とトルク推定値Te(詳細後述)とのトルク偏差(Te*−Te)を求める。トルク制御器101は、トルク偏差(Te*−Te)が0になるようにPI制御またはPID制御(比例P、積分I、微分D)を行ってd軸電圧vd0を求める。
【0016】
さらに、上記(15)式から明らかなように正のd軸電圧vdに対して負のトルクTeが得られることから、トルク制御器101の比例ゲインと積分ゲイン(および微分ゲイン)に正の値を設定している場合には、トルク制御器101から出力されるd軸電圧vd0に「−1」ゲイン102を乗じ、フィードバック制御の出力としてd軸電圧指令値vd1を求める。
【0017】
d軸電圧補償器105は、トルク制御の応答性を向上させるためのフィードフォワード補償器であり、上述したトルク制御器101と並列に接続される。上記(15)式のd軸電圧vdをvd’に、モータートルクTeをトルク指令値Te*にそれぞれ置き換えて変形すると次式が得られる。
【数19】
vd’=−{Ldωe/(Pφ)}Te* ・・・(16)
d軸電圧補償器105は、トルク指令値Te*とモーター7の電気的回転速度ωeとに基づいて(16)式によりd軸電圧vd’を求め、トルク制御器101からのd軸電圧指令値vd1を補償するための補償分として出力する。
【0018】
加算器103は、トルク制御器101のd軸電圧指令値vd1とd軸電圧補償器105のd軸電圧指令値補償分vd’とを加算し、d軸電圧指令値vdを求める。電圧位相演算器104は、d軸電圧指令値vdとdq軸電圧Vdqとに基づいて上記(4)式を変形した次式により矩形波電圧位相δを求める。
【数20】
δ=sin−1(−vd/Vdq) ・・・(17)
なお、dq軸電圧Vdqは、直流電源(DCリンク)4aの電圧Vdcから上記(6)式を用いて求められる。
【0019】
矩形波電圧駆動時には、モーター7に印加されるU相矩形波電圧の位相δは図3に示す関係となる。なお、正弦波PWM電圧駆動時には、モーター7に印加されるU相正弦波PWM電圧の位相δは図4に示す関係となる。
【0020】
インバーターを矩形波電圧制御で動作させる場合には、正弦波PWM電圧制御で動作させる場合よりも27.3%高い基本波電圧をモーターに印加することができる。また、正弦波に3次高調波を重畳して電圧の利用率を向上させる方法が知られているが、矩形波電圧制御で動作させる場合はこの方法よりも10.3%も高い基本波電圧をモーターに印加することができる。
【0021】
パルス生成器3は、矩形波電圧位相δ、モーター7の電気的回転角度θeおよびdq軸電圧Vdqに基づいてモーター7に印加する3相矩形波電圧指令を生成する。ここで、d軸電流とq軸電流を独立に制御する通常のベクトル制御では、次式によりdq軸電圧vd、vqから3相交流電圧vu、vv、vwへの座標変換が行われる。
【数21】
(18)式のdq軸電圧vd、vqに、(4)式および(5)式に示すvd、vqを代入すると次式が得られる。
【数22】
なお、(19)式は正弦波電圧を表しているが、矩形波電圧駆動時には正弦波の符号に応じた3相矩形波電圧が出力されることになる。
【0022】
インバーター4は、パルス生成器3で生成された矩形波電圧指令にしたがってスイッチング素子を駆動し、直流電源(DCリンク)4aから位相δの3相矩形波電圧を生成してモーター7に印加する。
【0023】
位相速度演算器9は、レゾルバーなどの位置センサー8により検出したモーター7の機械的な回転角度に基づいてモーター7の機械的な回転速度ωm、電気的な回転速度ωeおよび電気的な回転角度θeを演算する。dq←3相変換器12は、モーター7の電気的な回転角度θeを用いて電流センサー5、6により検出した3相交流電流iu、ivを次式により座標変換し、dq軸電流id、iqを求める。
【数23】
なお、W相交流電流iwは、U、V相と同様に電流センサーにより検出してもよいが、3相交流の関係から次式により演算により求めることができる。
【数24】
iw=−iu−iv ・・・(21)
【0024】
次に、一般にモーターの電力はモーター電流と印加電圧により求められる。この実施の形態では矩形波電圧位相δ、直流電源4aの電圧Vdcおよびdq軸電流id、iqに基づいてモーター電力Peを演算する。なお、直流電源4aの電圧Vdcは一般的な電圧センサー(不図示)を用いて検出する。モーター電力Peは、dq軸電流id、iqとdq軸電圧vd、vqを用いて次式により求められる。
【数25】
Pe=vdid+vqiq ・・・(22)
この(22)式に(4)〜(6)式を代入すれば次式が導かれる。
【数26】
電力演算器10は、dq軸電流id、iq、矩形波電圧位相δおよび直流電源電圧Vdcに基づいて(23)式によりモーター電力(電気的出力)Peを演算する。
【0025】
ここで、モーターの機械的出力Pmと電気的出力Peは、変換効率ηを用いると次のような関係にある。
【数27】
ηPe=Pm ・・・(24)
また、モーターの機械的出力Pmは、モーターのトルクTeと機械的角速度ωmにより次式で表される。
【数28】
Pm=ωmTe ・・・(25)
(24)式と(25)式から次式が得られる。
【数29】
Te=ηPe/ωm ・・・(26)
トルク推定器11は、モーター7の電力Pe、角速度ωmおよび効率ηに基づいて(26)式によりモーター7のトルクTeを推定演算する。
【0026】
なお、モーターの変換効率ηはモーター7の回転速度ωmやトルクTeによって変化するため、実際には変換効率ηを回転速度ωmとトルクTeに対するマップとして記憶しておき、モータートルクTeの推定演算に反映させる。
【0027】
また、上述した一実施の形態ではトルク推定器11によりモータートルクTeを推定演算する例を示したが、トルクメーターなどのトルクセンサーを用いてモータートルクTeを直接、検出してもよい。
【0028】
このように、第1の一実施の形態では、モータートルクTeを演算により推定し、トルク制御器101によりトルク指令値Te*とトルク推定値Teとの偏差(Te*−Te)が0になるようにPI制御またはPID制御を行ってd軸電圧指令値vd1をもとめるとともに、フィードフォワード補償器であるd軸電圧補償器105によりトルク指令値Te*とモーター角速度ωeに基づいてd軸電圧指令値補償分vd’を求め、両者の和(vd1+vd’)のd軸電圧指令値vdとdq軸電圧Vdqとに基づいて矩形波電圧位相δを求め、位相δの3相矩形波電圧を生成してモーター7に印加するようにした。これにより、正弦波PWM電圧駆動を行う場合に比べて高い基本波電圧を利用することができるため、モーターの高回転速度領域で出力を増加することができるとともに、特に、d軸電圧補償器105によりモーターの回転速度ωmやトルク指令値Te*の変化に対するトルクの応答性を向上させることができる。
【0029】
また、第1の一実施の形態では、インバーター4の直流電源電圧Vdcから求めたdq軸電圧Vdqを用いて矩形波電圧位相δを演算しているので、インバーター4の直流電源電圧Vdcが変化する場合でもモータートルクを応答性よく制御することができる。
【0030】
特許請求の範囲の構成要素と第1の実施の形態の構成要素との対応関係は次の通りである。すなわち、位相速度演算器9が速度検出手段を、電力演算器10が電力演算手段を、トルク推定器11がトルク推定手段を、減算器1、トルク制御器101およびゲイン「−1」102がトルク制御手段を、電圧位相演算器104が位相演算手段を、パルス生成器3およびインバーター4が電力変換手段を、直流電源4aが直流電源を、d軸電圧補償器105および加算器103が電圧補償手段をそれぞれ構成する。なお、本発明の特徴的な機能を損なわない限り、各構成要素は上記構成に限定されるものではない。
【0031】
《発明の第2の実施の形態》
図5に第2の実施の形態の構成を示す。なお、図2に示す第1の実施の形態の機器と同様な機器に対しては同一の符号を付して説明を省略する。この第2の実施の形態では、トルク指令値Te*とトルク推定値Teとの偏差(Te*−Te)にPI制御またはPID制御を施し、偏差(Te*−Te)が0になるような矩形波電圧位相δを直接、演算する。
【0032】
トルク制御器201は、トルク指令値Te*とトルク推定値Teとの偏差(Te*−Te)が0になるようにPI制御またはPID制御を行い、矩形波電圧位相δoを求める。
【0033】
δ補償器202は、トルク制御の応答性を向上させるためのフィードフォワード補償器であり、上述したトルク制御器201と並列に接続される。δ補償器202は、トルク指令値Te*、モーター7の電気的角速度ωeおよびdq軸電圧Vdqに基づいて、トルク制御器201の矩形波電圧位相δoを補償するための補償分δ’を求める。
【0034】
δ補償器202の構成について詳しく説明する。上記(14)式のモータートルクTeにトルク指令値Te*を、位相δに補償分δ’をそれぞれ代入して変形すると次式が得られる。
【数30】
δ’=sin−1{Ldωe/(PVdqφ)・Te*} ・・・(27)
δ補償器202は、トルク指令値Te*、モーター7の電気的角速度ωeおよびdq軸電圧Vdqに基づいて(27)式により矩形波電圧位相補償分δ’を演算する。なお、δが小さい範囲ではsinδ≒δと近似できるから、(27)式を次のように変形して補償分δ’を近似計算することができる。
【数31】
δ’≒Ldωe/(PVdqφ)・Te* ・・・(28)
【0035】
なお、(27)式および(28)式は、リラクタンストルクTerを利用可能な永久磁石同期モーターに対して導出した演算式であるが、リラクタンストルクTerを利用できないSPMモーターではLd=Lqとなるだけであるから、(27)式および(28)式をリラクタンストルクTerを利用できないSPMモーターに対しても適用することができる。
【0036】
加算器203は、トルク制御器201の矩形波電圧位相δoとδ補償器202の補償分δ’とを加算して矩形波電圧位相δを求める。以下、上述した第1の実施の形態と同様に、パルス生成器3により、矩形波電圧位相δ、モーター7の電気的回転角度θeおよびdq軸電圧Vdqに基づいてモーター7に印加する3相矩形波電圧指令を生成し、インバーター4により、パルス生成器3で生成された矩形波電圧指令にしたがってスイッチング素子を駆動し、直流電源(DCリンク)4aから位相δの3相矩形波電圧を生成してモーター7に印加する。
【0037】
このように、第2の実施の形態によれば、モータートルクTeを推定し、トルク制御器201によりトルク指令値Te*とトルク推定値Teとの偏差(Te*−Te)が0になるようにPI制御またはPID制御を行って矩形波電圧位相δoを求めるとともに、フィードフォワード補償器であるδ補償器202によりトルク指令値Te*、モーター回転速度ωeおよびdq軸電圧Vdqに基づいて矩形波電圧位相補償分δ’を求め、両者の和(δo+δ’)を矩形波電圧位相δとする3相矩形波電圧を生成し、モーター7に印加するようにした。これにより、正弦波PWM電圧駆動を行う場合に比べて高い基本波電圧を利用することができるため、モーターの高回転速度領域で出力を増加することができるとともに、特に、δ補償器202によりモータートルクの応答性を向上させることができる。
【0038】
特許請求の範囲の構成要素と第2の実施の形態の構成要素との対応関係は次の通りである。すなわち、位相速度演算器9が速度検出手段を、電力演算器10が電力演算手段を、トルク推定器11がトルク推定手段を、減算器1およびトルク制御器201がトルク制御手段を、δ補償器202および加算器203が位相補償手段を、パルス生成器3およびインバーター4が電力変換手段を、直流電源4aが直流電源をそれぞれ構成する。なお、本発明の特徴的な機能を損なわない限り、各構成要素は上記構成に限定されるものではない。
【0039】
なお、上述した一実施の形態では、dq軸座標系におけるモーターの回路方程式を高回転速度でかつ定常状態に限定して近似し、近似式(3)に基づいて矩形波電圧駆動を行う例を示した。モーターを上述した矩形波電圧のみにより駆動してもよいが、低回転速度時は従来の正弦波PWM電圧駆動に切り換えてモーターを駆動制御するのが望ましい。正弦波PWM電圧駆動制御と、正弦波PWM電圧駆動と矩形波電圧駆動との切り換え制御についてはすでにいろいろな方法が提案されているので、それらの制御方法によるものとする。
【図面の簡単な説明】
【図1】dq軸電圧vd、vqと矩形波電圧位相δとの関係を示す図である。
【図2】第1の実施の形態の構成を示す図である。
【図3】U相矩形波電圧波形を示す図である。
【図4】U相正弦波PWM電圧波形を示す図である。
【図5】第2の実施の形態の構成を示す図である。
【符号の説明】
1 減算器
3 パルス生成器
4 インバーター
4a 直流電源(DCリンク)
5、6 電流センサー
7 3相同期モーター
8 位置センサー
9 位相速度演算器
10 電力演算器
11 トルク推定器
12 dq←3相変換器
101 トルク制御器
102 「−1」ゲイン
103 加算器
104 電圧位相演算器
105 d軸電圧補償器
201 トルク制御器
202 δ補償器
203 加算器
【発明の属する技術分野】
本発明は交流モーターの制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
交流モーターにインバーターを用いて電圧を印加する場合に、正弦波PWM電圧の代わりに1パルスの矩形波電圧を印加すると基本波電圧の波高値を高くすることができ、高回転速度領域におけるモーター出力を増加することができる。矩形波電圧駆動時には、モーターに印加する電圧の位相は制御できるが、印加電圧の振幅はインバーターの直流電源電圧(DCリンク電圧)により定まり、モータートルクを正確に制御することができない。
【0003】
このような矩形波電圧駆動時の問題を解決するために、トルク推定器を用いてモータートルクを推定し、トルク指令値と推定値との偏差に基づいて電圧位相を制御することによって、トルク指令値に応じたトルクが得られるようにしたモーター制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この出願の発明に関連する先行技術文献としては次のものがある。
【特許文献1】
特開2000−050689号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来のモーター制御装置では、定常状態におけるモータートルクと電圧位相との関係に基づいて、モータートルクの指令値に推定値をフィードバックしてモータートルクを制御しているので、フィードバック制御ゲインを上げると制御系が不安定になりやすく、そのため制御ゲインを十分に上げることができず、トルク制御の応答性を速くすることが難しいという問題がある。
【0006】
本発明は、同期モーターの矩形波電圧駆動時におけるトルク制御性能を改善したモーター制御装置を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、3相同期モーターの回転速度、交流電力および変換効率に基づいてモータートルクを推定し、トルク指令値とトルク推定値との偏差が0となるようにPI制御またはPID制御を行ってd軸電圧指令値を求め、d軸電圧指令値と直流電源の電圧とに基づいて矩形波電圧の位相を演算し、この位相の3相矩形波電圧を直流電源から生成してモーターに印加する、ものである。
また、本発明は、3相同期モーターの回転速度、交流電力および変換効率に基づいてモータートルクを推定し、トルク指令値とトルク推定値との偏差が0となるようにPI制御またはPID制御を行って矩形波電圧の位相を求めるとともに、トルク指令値、直流電源の電圧およびモーターの回転速度に基づいて矩形波電圧の位相を補償し、補償された位相の3相矩形波電圧を直流電源から生成してモーターに印加するものである。
【0008】
【発明の効果】
本発明によれば、同期モーターの矩形波電圧駆動時におけるトルク制御性能を向上させることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
永久磁石同期モーターの回転に同期して回転するdq軸座標系における回路方程式は、次式のように表すことができる。
【数4】
(1)式において、vdはd軸電圧、vqはq軸電圧、Ldはd軸インダクダンス、Lqはq軸インダクダンス、Rは電機子抵抗、ωeはモーターの電気的角速度、idはモーターの界磁電流に相当するd軸電流、iqはモーターのトルク電流に相当するq軸電流、φは永久磁石による磁束鎖交数、pは微分演算子を表す。
【0010】
モーターの負荷、すなわち電流がほぼ一定な定常状態を考えると、(1)式を次のように近似することができる。
【数5】
また、モーターが高速で回転しているときには、dq軸インダクダンスLd、Lqとdq軸電流id、iqによる電圧に比べ、電機子抵抗Rとdq軸電流id、iqによる電圧の影響が小さくなるため、(2)式をさらに次のように近似することができる。
【数6】
【0011】
ここで、矩形波電圧位相δを用いてvdとvqを表すと次式の関係になり、これを図示すると図1に示す関係になる。
【数7】
vd=−Vdq・sinδ ・・・(4)
【数8】
vq=Vdq・cosδ ・・・(5)
(4)式および(5)式において、Vdqはdq軸座標系における電圧ベクトルの大きさ(以下、単にdq軸電圧と呼ぶ)であり、矩形波電圧駆動時にはインバーターの直流電源電圧(DCリンク電圧)Vdcを用いて次のように表せる。
【数9】
Vdq=√(6)・Vdc/π ・・・(6)
また、高回転速度で且つ定常状態におけるq軸電流iqとd軸電流idは、(3)式からそれぞれ次のように表せる。
【数10】
iq=−vd/(Lqωe) ・・・(7)
【数11】
id=(vq−ωeφ)/(Ldωe) ・・・(8)
【0012】
永久磁石同期モーターのトルクは、永久磁石によるトルクTemとリラクタンストルクTerによって発生する。永久磁石によるトルクTemは(9)式で表され、リラクタンストルクTerは(10)式で表される。
【数12】
Tem=Pφiq ・・・(9)
【数13】
Ter=P(Ld−Lq)idiq ・・・(10)
(9)式および(10)式において、Pは極対数を表す。
【0013】
(9)式と(10)式のトルクと電圧位相の関係を表すために、定常状態のdq軸電流id、iqを表す(7)式および(8)式と、dq軸電圧vd、vqと矩形波電圧位相δの関係を表す(4)式および(5)式を用いて整理すると、永久磁石によるトルクTemは(11)式で、リラクタンストルクTerは(12)式でそれぞれ表される。
【数14】
Tem=PφVdqsinδ/(Lqωe) ・・・(11)
【数15】
(11)式および(12)式から、電圧位相δを操作することによってモータートルクを制御できることがわかる。
【0014】
《発明の第1の実施の形態》
定常状態におけるリラクタンストルクTerを表す上記(12)式において、モーターの回転速度が高く、φ≫(Vdq/2ωe)であれば、(12)式を次のように近似することができる。
【数16】
Ter≒(PVdq/ωe)(1/Ld−1/Lq)φsinδ ・・・(13)
このリラクタンストルクの近似式(13)と永久磁石によるトルクを表す(11)式を加算すると、次のにようにモータートルクTeを簡単な形で表すことができる。
【数17】
Te≒{PVdqφ/(Ldωe)}sinδ ・・・(14)
この(14)式をd軸電圧vdを用いて表すと、
【数18】
Te≒−{Pφ/(Ldωe)}vd ・・・(15)
(15)式から明らかなように、d軸電圧vdによってモータートルクTeを操作できることがわかる。
【0015】
図2に第1の実施の形態の構成を示す。減算器1とトルク制御器101はトルクフィードバック制御を行う。まず、減算器1は、トルク指令値Te*とトルク推定値Te(詳細後述)とのトルク偏差(Te*−Te)を求める。トルク制御器101は、トルク偏差(Te*−Te)が0になるようにPI制御またはPID制御(比例P、積分I、微分D)を行ってd軸電圧vd0を求める。
【0016】
さらに、上記(15)式から明らかなように正のd軸電圧vdに対して負のトルクTeが得られることから、トルク制御器101の比例ゲインと積分ゲイン(および微分ゲイン)に正の値を設定している場合には、トルク制御器101から出力されるd軸電圧vd0に「−1」ゲイン102を乗じ、フィードバック制御の出力としてd軸電圧指令値vd1を求める。
【0017】
d軸電圧補償器105は、トルク制御の応答性を向上させるためのフィードフォワード補償器であり、上述したトルク制御器101と並列に接続される。上記(15)式のd軸電圧vdをvd’に、モータートルクTeをトルク指令値Te*にそれぞれ置き換えて変形すると次式が得られる。
【数19】
vd’=−{Ldωe/(Pφ)}Te* ・・・(16)
d軸電圧補償器105は、トルク指令値Te*とモーター7の電気的回転速度ωeとに基づいて(16)式によりd軸電圧vd’を求め、トルク制御器101からのd軸電圧指令値vd1を補償するための補償分として出力する。
【0018】
加算器103は、トルク制御器101のd軸電圧指令値vd1とd軸電圧補償器105のd軸電圧指令値補償分vd’とを加算し、d軸電圧指令値vdを求める。電圧位相演算器104は、d軸電圧指令値vdとdq軸電圧Vdqとに基づいて上記(4)式を変形した次式により矩形波電圧位相δを求める。
【数20】
δ=sin−1(−vd/Vdq) ・・・(17)
なお、dq軸電圧Vdqは、直流電源(DCリンク)4aの電圧Vdcから上記(6)式を用いて求められる。
【0019】
矩形波電圧駆動時には、モーター7に印加されるU相矩形波電圧の位相δは図3に示す関係となる。なお、正弦波PWM電圧駆動時には、モーター7に印加されるU相正弦波PWM電圧の位相δは図4に示す関係となる。
【0020】
インバーターを矩形波電圧制御で動作させる場合には、正弦波PWM電圧制御で動作させる場合よりも27.3%高い基本波電圧をモーターに印加することができる。また、正弦波に3次高調波を重畳して電圧の利用率を向上させる方法が知られているが、矩形波電圧制御で動作させる場合はこの方法よりも10.3%も高い基本波電圧をモーターに印加することができる。
【0021】
パルス生成器3は、矩形波電圧位相δ、モーター7の電気的回転角度θeおよびdq軸電圧Vdqに基づいてモーター7に印加する3相矩形波電圧指令を生成する。ここで、d軸電流とq軸電流を独立に制御する通常のベクトル制御では、次式によりdq軸電圧vd、vqから3相交流電圧vu、vv、vwへの座標変換が行われる。
【数21】
(18)式のdq軸電圧vd、vqに、(4)式および(5)式に示すvd、vqを代入すると次式が得られる。
【数22】
なお、(19)式は正弦波電圧を表しているが、矩形波電圧駆動時には正弦波の符号に応じた3相矩形波電圧が出力されることになる。
【0022】
インバーター4は、パルス生成器3で生成された矩形波電圧指令にしたがってスイッチング素子を駆動し、直流電源(DCリンク)4aから位相δの3相矩形波電圧を生成してモーター7に印加する。
【0023】
位相速度演算器9は、レゾルバーなどの位置センサー8により検出したモーター7の機械的な回転角度に基づいてモーター7の機械的な回転速度ωm、電気的な回転速度ωeおよび電気的な回転角度θeを演算する。dq←3相変換器12は、モーター7の電気的な回転角度θeを用いて電流センサー5、6により検出した3相交流電流iu、ivを次式により座標変換し、dq軸電流id、iqを求める。
【数23】
なお、W相交流電流iwは、U、V相と同様に電流センサーにより検出してもよいが、3相交流の関係から次式により演算により求めることができる。
【数24】
iw=−iu−iv ・・・(21)
【0024】
次に、一般にモーターの電力はモーター電流と印加電圧により求められる。この実施の形態では矩形波電圧位相δ、直流電源4aの電圧Vdcおよびdq軸電流id、iqに基づいてモーター電力Peを演算する。なお、直流電源4aの電圧Vdcは一般的な電圧センサー(不図示)を用いて検出する。モーター電力Peは、dq軸電流id、iqとdq軸電圧vd、vqを用いて次式により求められる。
【数25】
Pe=vdid+vqiq ・・・(22)
この(22)式に(4)〜(6)式を代入すれば次式が導かれる。
【数26】
電力演算器10は、dq軸電流id、iq、矩形波電圧位相δおよび直流電源電圧Vdcに基づいて(23)式によりモーター電力(電気的出力)Peを演算する。
【0025】
ここで、モーターの機械的出力Pmと電気的出力Peは、変換効率ηを用いると次のような関係にある。
【数27】
ηPe=Pm ・・・(24)
また、モーターの機械的出力Pmは、モーターのトルクTeと機械的角速度ωmにより次式で表される。
【数28】
Pm=ωmTe ・・・(25)
(24)式と(25)式から次式が得られる。
【数29】
Te=ηPe/ωm ・・・(26)
トルク推定器11は、モーター7の電力Pe、角速度ωmおよび効率ηに基づいて(26)式によりモーター7のトルクTeを推定演算する。
【0026】
なお、モーターの変換効率ηはモーター7の回転速度ωmやトルクTeによって変化するため、実際には変換効率ηを回転速度ωmとトルクTeに対するマップとして記憶しておき、モータートルクTeの推定演算に反映させる。
【0027】
また、上述した一実施の形態ではトルク推定器11によりモータートルクTeを推定演算する例を示したが、トルクメーターなどのトルクセンサーを用いてモータートルクTeを直接、検出してもよい。
【0028】
このように、第1の一実施の形態では、モータートルクTeを演算により推定し、トルク制御器101によりトルク指令値Te*とトルク推定値Teとの偏差(Te*−Te)が0になるようにPI制御またはPID制御を行ってd軸電圧指令値vd1をもとめるとともに、フィードフォワード補償器であるd軸電圧補償器105によりトルク指令値Te*とモーター角速度ωeに基づいてd軸電圧指令値補償分vd’を求め、両者の和(vd1+vd’)のd軸電圧指令値vdとdq軸電圧Vdqとに基づいて矩形波電圧位相δを求め、位相δの3相矩形波電圧を生成してモーター7に印加するようにした。これにより、正弦波PWM電圧駆動を行う場合に比べて高い基本波電圧を利用することができるため、モーターの高回転速度領域で出力を増加することができるとともに、特に、d軸電圧補償器105によりモーターの回転速度ωmやトルク指令値Te*の変化に対するトルクの応答性を向上させることができる。
【0029】
また、第1の一実施の形態では、インバーター4の直流電源電圧Vdcから求めたdq軸電圧Vdqを用いて矩形波電圧位相δを演算しているので、インバーター4の直流電源電圧Vdcが変化する場合でもモータートルクを応答性よく制御することができる。
【0030】
特許請求の範囲の構成要素と第1の実施の形態の構成要素との対応関係は次の通りである。すなわち、位相速度演算器9が速度検出手段を、電力演算器10が電力演算手段を、トルク推定器11がトルク推定手段を、減算器1、トルク制御器101およびゲイン「−1」102がトルク制御手段を、電圧位相演算器104が位相演算手段を、パルス生成器3およびインバーター4が電力変換手段を、直流電源4aが直流電源を、d軸電圧補償器105および加算器103が電圧補償手段をそれぞれ構成する。なお、本発明の特徴的な機能を損なわない限り、各構成要素は上記構成に限定されるものではない。
【0031】
《発明の第2の実施の形態》
図5に第2の実施の形態の構成を示す。なお、図2に示す第1の実施の形態の機器と同様な機器に対しては同一の符号を付して説明を省略する。この第2の実施の形態では、トルク指令値Te*とトルク推定値Teとの偏差(Te*−Te)にPI制御またはPID制御を施し、偏差(Te*−Te)が0になるような矩形波電圧位相δを直接、演算する。
【0032】
トルク制御器201は、トルク指令値Te*とトルク推定値Teとの偏差(Te*−Te)が0になるようにPI制御またはPID制御を行い、矩形波電圧位相δoを求める。
【0033】
δ補償器202は、トルク制御の応答性を向上させるためのフィードフォワード補償器であり、上述したトルク制御器201と並列に接続される。δ補償器202は、トルク指令値Te*、モーター7の電気的角速度ωeおよびdq軸電圧Vdqに基づいて、トルク制御器201の矩形波電圧位相δoを補償するための補償分δ’を求める。
【0034】
δ補償器202の構成について詳しく説明する。上記(14)式のモータートルクTeにトルク指令値Te*を、位相δに補償分δ’をそれぞれ代入して変形すると次式が得られる。
【数30】
δ’=sin−1{Ldωe/(PVdqφ)・Te*} ・・・(27)
δ補償器202は、トルク指令値Te*、モーター7の電気的角速度ωeおよびdq軸電圧Vdqに基づいて(27)式により矩形波電圧位相補償分δ’を演算する。なお、δが小さい範囲ではsinδ≒δと近似できるから、(27)式を次のように変形して補償分δ’を近似計算することができる。
【数31】
δ’≒Ldωe/(PVdqφ)・Te* ・・・(28)
【0035】
なお、(27)式および(28)式は、リラクタンストルクTerを利用可能な永久磁石同期モーターに対して導出した演算式であるが、リラクタンストルクTerを利用できないSPMモーターではLd=Lqとなるだけであるから、(27)式および(28)式をリラクタンストルクTerを利用できないSPMモーターに対しても適用することができる。
【0036】
加算器203は、トルク制御器201の矩形波電圧位相δoとδ補償器202の補償分δ’とを加算して矩形波電圧位相δを求める。以下、上述した第1の実施の形態と同様に、パルス生成器3により、矩形波電圧位相δ、モーター7の電気的回転角度θeおよびdq軸電圧Vdqに基づいてモーター7に印加する3相矩形波電圧指令を生成し、インバーター4により、パルス生成器3で生成された矩形波電圧指令にしたがってスイッチング素子を駆動し、直流電源(DCリンク)4aから位相δの3相矩形波電圧を生成してモーター7に印加する。
【0037】
このように、第2の実施の形態によれば、モータートルクTeを推定し、トルク制御器201によりトルク指令値Te*とトルク推定値Teとの偏差(Te*−Te)が0になるようにPI制御またはPID制御を行って矩形波電圧位相δoを求めるとともに、フィードフォワード補償器であるδ補償器202によりトルク指令値Te*、モーター回転速度ωeおよびdq軸電圧Vdqに基づいて矩形波電圧位相補償分δ’を求め、両者の和(δo+δ’)を矩形波電圧位相δとする3相矩形波電圧を生成し、モーター7に印加するようにした。これにより、正弦波PWM電圧駆動を行う場合に比べて高い基本波電圧を利用することができるため、モーターの高回転速度領域で出力を増加することができるとともに、特に、δ補償器202によりモータートルクの応答性を向上させることができる。
【0038】
特許請求の範囲の構成要素と第2の実施の形態の構成要素との対応関係は次の通りである。すなわち、位相速度演算器9が速度検出手段を、電力演算器10が電力演算手段を、トルク推定器11がトルク推定手段を、減算器1およびトルク制御器201がトルク制御手段を、δ補償器202および加算器203が位相補償手段を、パルス生成器3およびインバーター4が電力変換手段を、直流電源4aが直流電源をそれぞれ構成する。なお、本発明の特徴的な機能を損なわない限り、各構成要素は上記構成に限定されるものではない。
【0039】
なお、上述した一実施の形態では、dq軸座標系におけるモーターの回路方程式を高回転速度でかつ定常状態に限定して近似し、近似式(3)に基づいて矩形波電圧駆動を行う例を示した。モーターを上述した矩形波電圧のみにより駆動してもよいが、低回転速度時は従来の正弦波PWM電圧駆動に切り換えてモーターを駆動制御するのが望ましい。正弦波PWM電圧駆動制御と、正弦波PWM電圧駆動と矩形波電圧駆動との切り換え制御についてはすでにいろいろな方法が提案されているので、それらの制御方法によるものとする。
【図面の簡単な説明】
【図1】dq軸電圧vd、vqと矩形波電圧位相δとの関係を示す図である。
【図2】第1の実施の形態の構成を示す図である。
【図3】U相矩形波電圧波形を示す図である。
【図4】U相正弦波PWM電圧波形を示す図である。
【図5】第2の実施の形態の構成を示す図である。
【符号の説明】
1 減算器
3 パルス生成器
4 インバーター
4a 直流電源(DCリンク)
5、6 電流センサー
7 3相同期モーター
8 位置センサー
9 位相速度演算器
10 電力演算器
11 トルク推定器
12 dq←3相変換器
101 トルク制御器
102 「−1」ゲイン
103 加算器
104 電圧位相演算器
105 d軸電圧補償器
201 トルク制御器
202 δ補償器
203 加算器
Claims (6)
- 3相同期モーターに3相矩形波電圧を印加して駆動するモーター制御装置において、
前記モーターの回転速度を検出する速度検出手段と、
前記モーターの交流電力を演算する電力演算手段と、
前記モーターの前記回転速度、前記交流電力および変換効率に基づいて前記モーターのトルクを推定するトルク推定手段と、
トルク指令値と前記トルク推定値とのトルク偏差が0となるようにPI制御またはPID制御を行い、前記モーターの回転に同期して回転するdq軸座標系のd軸電圧指令値を出力するトルク制御手段と、
前記トルク制御手段から出力されたd軸電圧指令値と直流電源の電圧とに基づいて前記矩形波電圧の位相を演算する位相演算手段と、
前記位相演算手段で演算された位相にしたがって前記直流電源から前記矩形波電圧を生成する電力変換手段とを備えることを特徴とするモーター制御装置。 - 請求項1に記載のモーター制御装置において、
前記トルク指令値と前記モーターの回転速度とに基づいて前記d軸電圧指令値を補償する電圧補償手段を備えることを特徴とするモーター制御装置。 - 3相同期モーターに3相矩形波電圧を印加して駆動するモーター制御装置において、
前記モーターの回転速度を検出する速度検出手段と、
前記モーターの交流電力を演算する電力演算手段と、
前記モーターの前記回転速度、前記交流電力および変換効率に基づいて前記モーターのトルクを推定するトルク推定手段と、
トルク指令値と前記トルク推定値とのトルク偏差が0となるようにPI制御またはPID制御を行い、前記矩形波電圧の位相を出力するトルク制御手段と、
前記トルク指令値、直流電源の電圧および前記モーターの回転速度に基づいて前記矩形波電圧の位相を補償する位相補償手段と、
前記位相補償手段で補償された位相にしたがって前記直流電源から矩形波電圧を生成する電力変換手段とを備えることを特徴とするモーター制御装置。
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