JP3755582B2 - 電動機制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、電動機の回転子に取り付けられた角度検出器が検出する回転角度の検出誤差を自動補正する機能を有する電動機制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電動機、特に回転子が永久磁石により構成された三相同期電動機において、ベクトル制御方式により高精度に電動機制御を行う場合、制御情報として回転子の回転角度を用いて演算を行い制御するのが一般的であり、そのために、電動機の回転子には角度検出器、または、特定角度検出機能を備えた回転速度検出器が取り付けられる。これらの検出器は、回転子軸、または、回転子と同期回転する軸上に取り付けられた可動部分と、固定子側に取り付けられて可動部分の回転位置を検出する固定部分とから構成され、回転部分は電動機の回転子にキーなどによりそれぞれの基準となる相対位置が機械的に位置決めされて固定されるのが一般的であり、通常はエンコーダやレゾルバなどの検出器が用いられている。
【0003】
しかし、検出器の取り付けにあたっては機械的な角度誤差が存在し、電動機の極対数をPmとすると、回転子の一回転は電気角ではPm回転に相当するため、極数の大きい多極電動機の場合においては上記の機械的な角度誤差が電気的にはPm倍の誤差に拡大されることになり、機械的な位置決め精度の向上を図っても量産時の精度向上には限界があるため、電気的な角度誤差を必要とする値にまで縮小することは困難であった。一方、電動機の制御を精度良く行うためにはこの電気的な角度誤差を縮小することが絶対条件であり、角度検出器には微調整機構が設けられ、電動機に組み付けた後に微調整を行って機械的な角度誤差を修正するのが通常の手法であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この角度検出の精度は、要求される電動機の制御精度に応じて高める必要があるため、制御精度の高い電動機においては生産工程で微調整機構を用いて高精度に調整を行うことになり、この調整には多大な時間を必要として生産性を阻害することになる。また、高精度化するほど微調整機構の構成も複雑化するため角度検出器自体の部品点数が増加し、角度検出器の生産に対する加工時間の増大を伴うものであり、さらに、機械的な微調整機構は経年変化による角度誤差の変化の増大が避けられず、電動機の制御精度の経年劣化にもつながるものであった。
【0005】
また、このような機械的な誤差修正による課題に対処する技術としては、例えば、特開平9−47066号公報が開示されている。この公報に開示された技術は、永久磁石型同期電動機をインバータにより駆動するものにおいて、インバータと電動機との間に開閉手段を設け、電源投入後にこの開閉手段を解放して電動機の誘起電圧波形を検出し、この誘起電圧波形と電動機の回転角を計測する磁極位置センサの出力信号とを比較し、両者の位相差から磁極位置センサの取り付け誤差を求め、磁極位置センサの検出値を補正するようにしたものであるが、その誤差検出の精度には限界を有するものである。
【0006】
この発明はこのような課題を解決するためになされたもので、角度検出器の取り付け精度を機械的に微調整することなく、制御装置内で角度情報による演算を行い、機械的な角度誤差を電気的に精度良く、また、容易に自動補正することが可能な電動機制御装置を得ることを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明に係わる電動機制御装置は、インバータにより駆動される電動機の回転角を検出する角度検出手段と、電動機の回転速度を検出する速度検出手段と、電動機の電流を電動機の界磁磁束のベクトルと同期して回転する回転直交座標上の実電流値に置換する電流演算手段と、電動機に外部から与えられるトルク指令値と電動機の回転速度とから回転直交座標上の電流指令値を演算する電流指令値演算手段と、実電流値と電流指令値とから回転直交座標上の電圧指令値を演算する電圧指令値演算手段と、電圧指令値を電動機に印加すべき三相電圧指令値に置換する三相電圧指令値演算手段と、三相電圧指令値をインバータに与えるPWM信号に置換するPWM信号生成手段と、電圧指令値と三相電圧指令値とPWM信号のうちのいずれか一つ、または、いずれか複数から算出される電動機の印加電圧ベクトルの大きさと、電動機の回転速度とから電動機の回転角を検出する角度検出器の機械的な取り付け位置に起因して発生する回転角の検出誤差を界磁磁束ベクトルの回転直交座標に対する位相差として算出すると共に、この位相差により角度検出手段が検出する回転角の検出誤差を補正する角度誤差算出・補正手段とを備えるようにしたものである。
【0008】
また、角度誤差算出・補正手段が、電動機の所定回転速度において、界磁磁束のベクトル方向に対する各位相補正角毎に回転直交座標上の電圧指令値と三相電圧指令値とPWM信号のうちのいずれか一つ、または、いずれか複数から算出される電動機の印加電圧ベクトルの大きさを回転角と共にデータ対として記憶し、この記憶したデータ対から界磁磁束ベクトルの回転直交座標に対する位相差を算出するようにしたものである。
【0009】
さらに、インバータにより駆動される電動機の回転角を検出する角度検出手段と、電動機の回転速度を検出する速度検出手段と、電動機の電流を電動機の界磁磁束のベクトルと同期して回転する回転直交座標上の実電流値に置換する電流演算手段と、電動機に外部から与えられるトルク指令値と電動機の回転速度とから回転直交座標上の電流指令値を演算する電流指令値演算手段と、実電流値と電流指令値とから回転直交座標上の電圧指令値を演算する電圧指令値演算手段と、電圧指令値を電動機に印加すべき三相電圧指令値に置換する三相電圧指令値演算手段と、三相電圧指令値をインバータに与えるPWM信号に置換するPWM信号生成手段と、インバータの入力電圧および入力電流から算出される直流電力の大きさと、電動機の回転速度とから電動機の回転角を検出する角度検出器の機械的な取り付け位置に起因して発生する回転角の検出誤差を界磁磁束ベクトルの回転直交座標に対する位相差として算出すると共に、この位相差により角度検出手段が検出する回転角の検出誤差を補正する角度誤差算出・補正手段とを備えるようにしたものである。
【0010】
さらにまた、角度誤差算出・補正手段が、電動機の所定回転速度において、界磁磁束のベクトル方向に対する各位相補正角毎にインバータの入力電圧と入力電流から算出される直流電力の大きさとを回転角と共にデータ対として記憶し、この記憶したデータ対から界磁磁束ベクトルの回転直交座標に対する位相差を算出するようにしたものである。
【0011】
また、電動機の所定回転速度は、回転速度の絶対量が等しく回転方向が異なる少なくとも一組の回転速度であって、同一回転角で回転方向が異なる場合の対を構成する各データ差から界磁磁束ベクトルの回転直交座標に対する位相差を算出するようにしたものである。
さらに、電動機の固定子温度の検出手段、電動機の回転子温度の検出手段、インバータ温度の検出手段のうちのいずれか一つ、または、複数の検出手段を備えており、固定子温度、回転子温度、インバータ温度のいずれか一つ、または、複数の温度により界磁磁束ベクトルの回転直交座標に対する位相差が補正されて算出されるようにしたものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1ないし図4は、この発明の実施の形態1による電動機制御装置の構成と動作とを説明するためのもので、図1は構成を説明するブロック図、図2は角度誤差演算・補正手段のデータ蓄積部(フェーズ1)の詳細構成を説明するブロック図、図3は角度誤差演算・補正手段の角度誤差演算部(フェーズ2)の詳細構成を説明するブロック図、図4は角度誤差算出の説明図である。また、図5ないし図8は、永久磁石を界磁とする同期電動機における角度検出誤差の算出原理を説明する説明図である。
【0013】
この発明の実施の形態1による電動機制御装置を説明する前に、永久磁石式三相同期電動機の角度検出誤差算出の動作原理を図5ないし図8に基づき説明すると次の通りである。まず、電気的回転角速度ωmにて電動機の界磁磁束のベクトルと同期して回転する回転直交座標軸上における同期電動機の電圧・電流方程式は、回転直交座標軸をd−q軸とすると公知のように、
Vd=R・id−ωm・Lq・iq ・・・(1)
Vq=R・iq+ωm(Ld・id+Φa) ・・・(2)
として示される。ここに、VdとVqとは電動機端子電圧のd軸成分およびq軸成分、idとiqとは電動機の電機子に流れる電流のd軸成分およびq軸成分、Rは電機子抵抗、LdとLqとはインダクタンスのd軸成分およびq軸成分、Φaは磁石による界磁磁束である。また、電気的回転角速度ωmは電動機の磁極対数をPmとすると機械的回転角速度ωrに対してωm=Pm・ωrの関係を有するものである。
【0014】
上記の(1)式と(2)式とは、界磁磁石による磁束のベクトルと回転直交座標軸のd軸とが一致している場合を示すもので、角度誤差がない場合に相当するものである。いま、d軸の電流がマイナス方向にi0 、q軸の電流が0、電気的角速度がω0 で正方向に回転している場合、電動機の電圧・電流方程式は次式のようになる。
Vd=R・i0 ・・・(3)
Vq=ω0 (Ld・i0 +Φa) ・・・(4)
また、電動機の線間電圧実効値Vuvの二乗値は
Vuv2 =Vd2 +Vq2 ・・・(5)
の関係にて示されることから
Vuv2 =(R・i0 2 +ω0 2 (Ld・i0 +Φa)2 ・・・(6)
として表すことができる。
【0015】
図5はこのときの回転座標のd−q軸に対する電圧と電流のベクトルを示すものであり、図に示した電圧ベクトルVは(5)式と(6)式のVuvに相当し、Vd=R・i0 とVq=ω0 (Ld・i0 +Φa)とのベクトル和である。なお図5と図6とでは後述する図7と図8との関連上から、d軸電流はi0 =id0 として示している。また、電圧ベクトルVと電流ベクトルi0 とのなす角度ρ0 +は力率角を示すものである。従って、運転状態における有効電力Peと無効電力Piと皮相電力Pとは、
Pe=V・i0 cosρ0 + ・・・(7)
Pi=V・i0 sinρ0 + ・・・(8)
P=V・i0 ・・・(9)
として示されることになる。
【0016】
つぎに、d軸の電流がマイナス方向にi0 、q軸の電流が0、電気的角速度が−ω0 で上記とは逆転方向に回転している場合、電動機の電圧・電流方程式は次式にて示される。
Vd=R・i0 ・・・(10)
Vq=−ω0 (Ld・i0 +Φa) ・・・(11)
従って、電動機の線間電圧実効値Vuvの二乗値は
【数1】
Figure 0003755582
として表されることになる。図6はこのときの回転座標のd−q軸に対する電圧と電流のベクトルを表すものであり、上記の図5と較べると電圧ベクトルVの大きさは等しいが、方向はd軸に対して対称位置となり、従って、力率角ρ0 −はすなわち−ρ0 +となるものである。
【0017】
また、運転状態における有効電力Peと無効電力Piと皮相電力Pとは
Figure 0003755582
として示されることになる。
【0018】
以上のように角度誤差がなく、界磁磁石による磁束ベクトルと回転直交座標軸とが一致して電動機の制御がなされているとき、d軸のみに所定電流を流して正方向の所定回転速度にて運転した場合と、逆方向に同一回転速度にて運転した場合とでは、電圧ベクトルVの方向がd軸に対して対称位置となり、力率は絶対値が等しくて符号が逆になる。言い換えれば、回転直交座標上での電圧指令値、三相座標上での電圧指令値の実効値および有効電力量は回転方向に関わらず等しい値を示すことになる。
【0019】
界磁磁石による磁束のベクトルと回転直交座標軸のd軸とが一致せず、両者間に角度差(すなわち角度検出器の検出誤差である)ψが存在する場合を考えると次のようになる。なお、この角度検出誤差は界磁磁束ベクトルとd軸とが一致して回転する電動機の回転直交座標(d−q)軸に対し、角度検出器の誤差により制御演算装置が演算に使用する回転直交座標の(d′−q′)軸が位相誤差ψ分遅れて(あるいは進んで)回転している状態を言うものであり、以降これを角度検出誤差ないしは位相差と称す。
【0020】
このように位相差ψがあり、制御演算装置がd′軸の電流としてマイナス方向にi0 、q′軸の電流として0の電流を通電した場合、電気的角速度がω0 で正方向に回転している電動機の電圧・電流方程式は次式のように表される。
Vd=R・id0 −ω0 Lq・iq0 ・・・(16)
Vq=R・iq0 +ω0 (Ld・id0 +Φa) ・・・(17)
ここに、id0 およびiq0 は(d′−q′)座標上の電流i0 を(d−q)座標上のd軸とq軸とに投影した成分であり、位相差ψを用いて次のように表されるものである。
id0 =i0 cosψ ・・・(18)
iq0 =i0 sinψ ・・・(19)
【0021】
従って、(16)式と(17)式とは次のように書き換えることができる。
【数2】
Figure 0003755582
【数3】
Figure 0003755582
また、電動機の線間電圧実効値Vuvの二乗値は
【数4】
Figure 0003755582
となる。
【0022】
図7はこのときの回転直交座標(d′−q′)軸に対する電圧と電流とのベクトルを表すものであり、図7の電圧ベクトルVは図5の電圧ベクトルVとは大きさおよび方向共に異なったものとなり、大きさの差は(6)式と(22)式との差の平方根に相当する。また方向にも差があるために、図に示すように力率角はρψ+となり、図5の場合のρ0 +とは異なった力率角となる。
【0023】
また、回転直交座標(d−q)軸に対し、制御演算装置が演算に用いる回転直交座標(d′−q′)軸が位相差ψ分遅れて回転している場合で、d′軸の電流がマイナス方向にi0 、q′軸の電流が0であり、電気的角速度が−ω0 で逆方向に回転しているときの電動機の電圧・電流方程式は次式のようになる。
【数5】
Figure 0003755582
【数6】
Figure 0003755582
さらに、電動機の線間電圧実効値Vuvの二乗値は
【数7】
Figure 0003755582
となる。
【0024】
このときの回転直交座標(d′−q′)軸に対する電圧と電流とのベクトルを表したのが図8であり、図8を電動機が正回転時の図7と比較すると、電圧ベクトルVの大きさは異なり、その方向も上記の位相差のない状態の図5に対する図6の場合とは異なり、d′軸に対して対称位置にはならない。従って、力率角ρψ−は図7の力率角ρψ+に対しては絶対量が異なるものとなる。このように位相差ψが存在する場合には正転時と逆転時とにおける電圧ベクトルVと力率角とは異なった値となり、従って、有効電力量も異なった値を示すことになる。
【0025】
この発明の実施の形態1においては、以上に述べた動作原理のd′軸に所定の電流を流しながら電動機を正転側と逆転側に同一回転速度で駆動した場合に、位相差に起因して現れる回転直交座標上での電圧指令値や三相座標上での電圧指令実効値や有効電力量の不平衡のうち、電機子抵抗Rとd軸インダクタンスLdと磁石による界磁磁束Φaとを既知の値とした場合に、位相差ψに起因して(6)式と(22)との差成分として現れる回転直交座標上での電圧指令値の不平衡やこれに伴う三相座標上での電圧指令値の不平衡に基づき、位相差すなわち角度検出誤差を検出してこの誤差を補正するようにしたもので、以下に図1ないし図4により構成と動作とを説明する。
【0026】
図1において、1は後述する制御演算装置、2は制御演算装置1が出力するPWM信号に制御されて直流電源4からの直流電力を三相交流電力に変換する三相インバータ、3は三相インバータ2の出力により駆動される電動機、5aと5bとは電動機3のU相電流とV相電流とを検出して制御演算装置1にフィードバックする電流検出器、6は電動機3の回転角を検出して制御演算装置1に出力する角度検出器である。
【0027】
また、制御演算装置1は、角度検出器6の出力信号により電動機3の回転角度θを検出する角度検出手段10と、角度検出器6の出力信号により電動機3の電気的回転角速度ωmを検出する速度検出手段11と、電流検出器5aと5bの出力iuとivとを受けて電動機3の回転直交座標軸上の実電流値idとiqとを演算する電流演算手段12と、外部からのモード信号modeとトルク指令値τmaとを受けて回転直交座標軸上の電流指令値idaとiqaとを演算する電流指令値演算手段13と、この電流指令値idaとiqa、および、実電流値idとiqとを受けて電動機3に対する回転直交座標軸上の電圧指令値VdaとVqaとを演算する電圧指令値演算手段14と、後述する角度誤差演算・補正手段15aと、加算器16と、各電圧指令値Vda、Vqaを三相電圧指令値Vua、Vva、Vwaに置換する三相電圧指令値演算手段17と、この三相電圧指令値をPWM信号tu、tv、twに変換して三相インバータ2に出力するPWM信号生成手段18とから構成されている。
【0028】
図2は角度誤差演算・補正手段15aにおける第一段階での動作部分である角度誤差算出データ蓄積部(フェーズ1)のブロック図である。図において、19は外部からのモード信号により駆動制御モードと角度誤差算出補正モードとを切り換える角度誤差算出モード切替手段、20aはフェーズ1の角度誤差算出用データ蓄積手段であり、乗算器21および22と、加算器23と、電気的回転角速度ωmを入力してΔθ毎の回転角を補正角度として出力する補正角度発生手段24と、補正角度発生手段24の出力により動作するサンプリング指示発生手段25と、このサンプリング指示発生手段25の指示により動作するサンプラ26および27と、各サンプラ26および27がサンプリングした電圧値と補正角度とをデータ対として記憶する角度誤差対電圧指令特性マップ28aとから構成されている。
【0029】
また、図3は角度誤差演算・補正手段15aにおける第二段階での動作部分である角度誤差算出演算部(フェーズ2)のブロック図である。図において、19は図2に示した角度誤差算出モード切替手段、30aはフェーズ2の角度誤差算出演算手段で、角度誤差算出演算手段30aは、減算器31と、角度誤差対電圧指令偏差特性マップ32aと、データ抽出手段33と、角度誤差補間手段34aと、角度補正値記憶手段35とから構成されている。なお、28aは図2にて示した角度誤差対電圧指令特性マップである。
【0030】
このように構成されたこの発明の実施の形態1の電動機制御装置において、まず、角度検出器6の角度検出誤差の補正値がすでに演算されている状態での電動機3の駆動制御を説明すると次の通りである。図1において、三相インバータ2は直流電源4から電力を受け、これを三相交流電力に変換して電動機3に供給する。この電力変換は制御演算装置1から三相インバータ2に与えられるPWM信号が三相インバータ2のスイッチング素子を駆動することにより行われ、PWM信号は公知のベクトル制御法により生成されるものである。
【0031】
図示しない外部装置から電動機3に対する要求トルク値として電流指令値演算手段13にトルク指令値τmaが入力され、角度検出器6からの信号により速度検出手段11から電気的回転角速度信号ωmが電流指令値演算手段13に入力されると、電流指令値演算手段13はこれらの信号に応じた値の回転直交座標(d−q)軸上の電流指令値としてidaとiqaとを演算して出力する。また、角度検出器6からの信号により角度検出手段10が電動機3の回転角度θを算出して加算器16に与え、加算器16ではこの回転角度θと角度誤差演算・補正手段15aが出力する角度補正値θcompとが加算され、界磁磁束のベクトルと回転直交座標との位相差をゼロに補正した補正後角度としてθaを出力する。
【0032】
電流検出器5aと5bとは電動機3のU相電流検出信号iuとV相電流検出信号ivとを電流演算手段12に与え、電流演算手段12はこの各電流検出信号と補正後角度θaとを入力して公知の演算方法により、界磁磁束のベクトル方向と一致して回転する座標軸(d軸)とこれに直交して回転する座標軸(q軸)とにベクトル分解したd軸実電流idとq軸実電流iqとを演算して出力する。電圧指令値演算手段14では電流指令値のidaとiqa、および、d軸実電流idとq軸実電流iqを入力し、例えば、idaとidとの偏差であるΔidと、iqaとiqとの偏差であるΔiqとを求め、両者を比例積分(PI)することによりd軸電圧指令値Vdaとq軸電圧指令値Vqaとを演算し、トルク指令値τmaに見合ったトルクを得る各軸電圧指令値として出力する。
【0033】
このときの各軸電圧指令値VdaとVqaは、電動機3が定常状態であり、角度検出器6の検出誤差がゼロになるように位相差が補正されているので、上記した(1)式のd軸電圧Vdおよび(2)式のq軸電圧Vqとは一致することになる。三相電圧指令値演算手段17では各軸の電圧指令値VdaとVqaとを入力して電流演算手段12によるベクトル分解とは逆の演算を行い、U相の電圧指令値VuaとV相の電圧指令値VvaとW相の電圧指令値Vwaとの三相電圧指令値に置換して電動機3に与えるべき電圧として出力する。この三相電圧指令値を入力するPWM信号生成手段18では公知の三角波比較正弦波形近似PWM作成法などにより三相各相のPWM信号tuとtvとtwとを生成し、このPWM信号が三相インバータ2に入力されてスイッチング素子を駆動し、電動機3には三相の交流電力が供給される。
【0034】
以上が界磁磁束のベクトルと回転直交座標との位相差がすでに補正されている場合の電動機3の駆動制御であるが、位相差の補正は次のようにして行われ、この補正は電動機3および制御演算装置1の初期化段階にて行われるものである。図示しない外部装置からは制御演算装置1に対してモード信号modeが与えられる。このモード信号には電動機3を通常に駆動する電動機駆動制御モードと、角度誤差を算出・補正する角度誤差算出・補正モードとがあり、この角度誤差算出・補正モードには後述するように角度誤差算出用のデータを蓄積する(フェーズ1)と、この蓄積されたデータに基づき角度誤差を算出する(フェーズ2)とがある。上記のように位相差がすでに補正されている場合の電動機3の駆動制御は電動機駆動制御モードであり、角度誤差の補正時には第一段階でフェーズ1、第二段階でフェーズ2が選択され、この選択はフェーズ1でのデータ蓄積の完了を検知して行われる。なお、角度誤差算出・補正モードでは電動機3は所定値の電気的回転角速度ωm0 、および、−ωm0 にて定速駆動されている状態におかれ、この状態にて位相差の算出がなされる。
【0035】
外部装置から角度誤差算出・補正のモード信号が制御演算装置1に与えられると、図2と図3の角度誤差算出モード切替手段19は、角度誤差対電圧指令特性マップ28aにデータが全て蓄積されるまでの間においては角度誤差算出・補正モード(フェーズ1)に切り替わり、電流指令値演算手段13から出力される電流指令値はd軸電流指令値としてida=iの固定値が、q軸電流指令値としてはiqa=0が出力され、この電流指令値に基づき電圧指令値演算手段14が電圧指令値VdaとVqaとを演算し、角度誤差算出用データ蓄積手段20aに出力する。角度誤差算出用データ蓄積手段20aに入力された電圧指令値VdaとVqaとはそれぞれ乗算器21と22とで二乗され、さらに、加算器23により加算されて(Vda)+(Vqa)が得られる。
【0036】
補正角度発生手段24には電気的回転角速度ωmが入力されており、電動機3が所定値のωm0で定常的に回転していると認められる場合には補正角度θcomp(磁束のベクトル方向に対する演算に用いる回転直交座標軸の位相差)をΔθ毎に出力し、この補正角度θcompは一定時間毎にΔθ単位でm回増加、または、m回減少するように設定されている。また、この補正角度θcompの増加または減少の変化範囲は、角度検出器6の取り付けなどにより発生する角度検出誤差の発生可能範囲を包含する範囲とされ、Δθ単位の変化が基準となる角度のプラス側とマイナス側とに及ぶように設定されている。サンプリング指示発生手段25は補正角度θcompを入力してΔθ単位の変化に同期してサンプラ26および27にデータをサンプリングするように指示を与え、サンプラ26はこの指示に同期して(Vda)2 +(Vqa)2 をサンプリングすることにより、{(Vda)2 +(Vqa)2 }(n)を得、サンプラ27はサンプリング指示に同期してθcomp(n)を得る。
【0037】
角度誤差対電圧指令特性マップ28aは、サンプリングされたデータ{(Vda)2 +(Vqa)2 }(n)とθcomp(n)とを一組のデータとして蓄積して行くが、ここで蓄積されるデータの個数は補正角度θcompのΔθ単位での変化回数であるm回に対応してm個となる。この場合、電動機3は所定の回転角速度ωm0で正回転しているため、{(Vda)2 +(Vqa)2 }(+n)のように+符号を付与する。
【0038】
このようにしてデータがm個蓄積されると電動機3の回転は−ωm0に設定され、同様に電動機3が所定値の−ωm0で定常的に回転していると認められる場合には補正角度θcompを一定時間毎にΔθ単位でm回増加、または、減少させ、同様の動作により角度誤差対電圧指令特性マップ28aは電気的角速度−ωm0 に対応したデータを蓄積する。この場合、回転角速度は−ωm0 で逆回転しているため、{(Vda)2 +(Vqa)2 }(−n)のようにマイナス符号を付与し、m個のデータが蓄積されると全てのデータ蓄積が完了となり、これが角度誤差算出モード切替手段19に認識されて引き続き角度誤差を算出する角度誤差算出・補正モード(フェーズ2)を実行するように切り替えられる。
【0039】
図4は角度検出誤差をパラメータとする回転速度対電圧指令値の特性である。この特性は、上記の(22)式と(25)式に対応して正転時と逆転時のそれぞれの回転速度での線間電圧の実効値Vuvの二乗値をプロットしたものである。上記したように界磁磁束のベクトルと回転直交座標との位相差がゼロの場合には電動機3の回転が正転時のω0 と逆転時の−ω0 とでの線間電圧の実効値Vuvの二乗値は等しい値となるが、位相差がゼロでない場合には回転速度がω0 のときと−ω0 のときとではVuvは異なる値を示すことになる。従って、角度誤差対電圧指令特性マップ28aに蓄積されたデータのうち、回転速度がωm0 のときの電圧指令値と−ωm0 のときの電圧指令値とがより近い値を示す補正角度θcompを選択することにより角度検出誤差をゼロにより近づけるように設定することができる。
【0040】
この動作を図3により説明すると、上記したように角度誤差対電圧指令特性マップ28aに全てのデータが蓄積されると角度誤差算出モード切替手段19は角度検出誤差を算出する角度誤差算出・補正モード(フェーズ2)に切り替わる。このフェーズ2ではまず、角度誤差対電圧指令特性マップ28aから電気的角速度がωm0と−ωm0とにおけるデータから補正角度θcomp(1)と、この補正角度に対応する電圧指令値{(Vda)2 +(Vqa)2 }(+1)、および、{(Vda)2 +(Vqa)2 }(−1)が出力され、減算器31にて両電圧指令値の偏差ΔVa(1)が算出される。
【0041】
角度誤差対電圧指令偏差特性マップ32aは、この算出されたデータθcomp(1)とΔVa(1)とを一組のデータ対として蓄積するが、この動作は角度誤差対電圧指令特性マップ28aに蓄積されたデータ個数であるm回繰り返されてθcomp(m)とΔVa(m)まで蓄積して終了する。続いてデータ抽出手段33は角度誤差対電圧指令偏差特性マップ32aから二つのデータ対{θcomp(k)、ΔVa(k)}と{θcomp(l)、ΔVa(l)}とを抽出する。
【0042】
角度誤差補間手段34aはこの抽出されたデータ対に基づき次式により線形補間を行って電圧指令値偏差ΔVaがゼロになる補正角度θcomp(ROM)を算出する。
【数8】
Figure 0003755582
このとき、二つのデータ対を複数組抽出し、各々算出した補正角度に統計手法、例えば平均化処理を施し、補正角度の精度を向上させることもできる。ここで算出したθcomp(ROM)が位相差の補正成分、すなわち、角度検出器6の検出誤差の補正成分であり、この値が角度補正値記憶手段35に記憶される。
【0043】
位相差の補正成分θcomp(ROM)が角度補正値記憶手段35に記憶されることによりフェーズ2は終了し、これが角度誤差算出モード切替手段19に認識されて動作モードは電動機駆動制御モードに切り替えられる。この動作モードの切替は図示しない外部装置に伝達され、制御演算装置1に入力されるモード信号が電動機駆動制御モードの指示に切り替わり、電動機駆動制御モードで動作中は角度補正値記憶手段35に記憶されたθcomp(ROM)が図1の加算器16に出力されて角度検出器6の検出誤差を補正する。
【0044】
この発明の実施の形態1による電動機制御装置においては以上のようにして補正角度θcomp(ROM)が算出され、角度検出の誤差による界磁磁束のベクトルと回転直交座標との位相差が補正されるので、電動機駆動制御モードにおいて良好なベクトル制御を行うことが可能になるものである。また、制御演算装置1に設けられた角度誤差演算・補正手段15aは電流演算手段12などと同列にマイクロプロセッサを用いてソフトウエアにて構成することができ、これにより部品点数の増加もなく安価で容易に位相差の補正ができるものである。
【0045】
なお、この実施の形態においては、角度誤差対電圧指令特性マップ28aと角度誤差対電圧指令偏差特性マップ32aとにおいて、m×3回のデータ蓄積を行うようにしたが、主旨とするところは上記の動作原理を用いて角度検出誤差の算出を行うところにあり、例えば、界磁磁束のベクトルと回転直交座標との位相差により発生する(12)式と(22)式の差成分を用いて算術的に誤差検出を行うこともできるものである。また、電圧偏差ΔVaは電圧指令値偏差を使用したが、三相電圧指令値演算手段17が出力する三相電圧指令値や、PWM信号生成手段18が出力するPWM信号、あるいは、これらの組み合わせにより電圧偏差ΔVaを得ることもできるものである。
【0046】
実施の形態2.
図9ないし図11は、この発明の実施の形態2による電動機制御装置の構成を説明するためのもので、図9は制御演算装置の構成を説明するブロック図、図10と図11とは角度誤差演算・補正手段の詳細構成を説明するブロック図であり、上記の実施の形態1と同一部分と相当部分とには同一符号が付与されている。図9において、上記の図1と異なる点は次の通りであり、7は直流電源4の電圧を検出する電圧検出器、8は三相インバータ2に対する流入電流を検出する電流検出器、15bは実施の形態1の場合とは異なる角度誤差演算・補正手段である。また、角度誤差演算・補正手段15bの構成は次の通りである。
【0047】
図10は、角度誤差演算・補正手段15bにおける角度誤差算出用データ蓄積部(フェーズ1)に関するブロック図である。図において、実施の形態1の図2と異なる点は次の通りであり、20bはフェーズ1の角度誤差算出用データ蓄積手段、29は電圧検出器7が検出する直流電源4の電圧VDCと電流検出器8が検出する三相インバータ2に対する流入電流IDCとを乗算して直流電力(VDC・IDC)を得る乗算器、28bはサンプラ26と27とがサンプリングする直流電力値(VDC・IDC)(n)と補正角度発生手段24からの補正角度θcomp(n)とをデータ対として記憶する角度誤差対直流電力特性マップである。
【0048】
また、図11は角度誤差演算・補正手段15bにおける角度誤差算出演算部である(フェーズ2)の構成を示すブロック図であり、実施の形態1の図3と異なる点は次の通りである。図において、30bは角度誤差算出演算手段(フェーズ2)、28bは図10に示した角度誤差対直流電力特性マップ、32bは角度誤差対直流電力偏差特性マップ、34bは角度誤差補間手段である。
【0049】
なお、この実施の形態は、三相インバータ2での消費電力を監視して界磁磁束のベクトルと回転直交座標との位相差を算出するもので、いま、位相差がない場合を考えると、同一の通電電流により回転速度の絶対値が同一で正回転と逆回転とのそれぞれの方向に電動機3を駆動した場合、電動機3の有効電力は実施の形態1にて示した(7)式と(13)式の通り等しい値となる。また、電動機3に対する印加電圧と通電電流とが等しいことから三相インバータ2のスイッチング素子など電力変換用の半導体素子を電流が流れることに起因する消費電力も等しくなる。位相差がゼロでない場合には電動機3の有効電力、従って、三相インバータ2の消費電力は実施の形態1の動作原理において説明したように位相差に応じて異なったものになるため、これを監視することにより位相差の有無を検出するもので、以下に実施形態1の場合とは異なる角度誤差演算・補正手段15bの動作を中心に説明する。
【0050】
制御演算装置1に外部装置からモード信号として角度誤差算出・補正モードの信号が入力されると実施の形態1と同様に、電流指令値演算手段13からはd軸電流指令値としてida=i0 の固定値が、q軸電流指令値としてiqa=0が出力され、この電流指令値により電動機3が所定の回転速度で駆動される。そして、電圧検出器7からの直流電源4の電圧VDCと三相インバータ2に対する流入電流IDCとが角度誤差演算・補正手段15bに入力される。角度誤差演算・補正手段15bは実施の形態1の場合と同様に二つの動作段階を有しており、第一段階は角度誤差算出用のデータを蓄積するフェーズ1であり、第二段階は蓄積されたデータに基づき角度誤差を算出するフェーズ2である。
【0051】
フェーズ1における動作を図10により説明すると、電圧検出器7により検出された電源電圧VDCと電流検出器8により検出された三相インバータ2に対する流入電流IDCとは乗算器29により乗算されて直流電力(VDC・IDC)が得られる。また、補正角度発生手段24には電気的回転角速度ωmが入力されており、電動機3が所定値のωm0 で定常的に回転していると認められた場合には補正角度θcompを一定時間毎にΔθ単位でm回増加、または、減少させながら出力する。
【0052】
サンプリング指示発生手段25は補正角度θcompを入力してΔθ単位の変化に同期してサンプラ26および27にデータをサンプリングするように指示を与え、サンプラ26はこのサンプリング指示に同期して(VDC・IDC)をサンプリングすることにより(VDC・IDC)(n)を得、サンプラ27はサンプリング指示に同期してθcomp(n)を得る。続いて角度誤差対直流電力特性マップ28bはサンプリングされたデータ(VDC・IDC)(n)とθcomp(n)とを一組のデータとして補正角度θcompのΔθ単位での変化回数m回分を蓄積する。この場合、電動機3は所定の回転角速度ωm0で正回転しているため、(VDC・IDC)(+n)のように+符号を付与する。
【0053】
このようにしてデータがm個分蓄積されると電動機3の回転は−ωm0に設定され、電動機3が所定値の−ωm0 で定常的に回転していると認められた場合に補正角度θcompを一定時間毎にΔθ単位でm回増加、または、減少させ、同様の動作により角度誤差対直流電力特性マップ28bは電気的角速度−ωm0 に対応したデータをm回分蓄積してデータ蓄積を完了する。なおこのとき、回転角速度は−ωm0 で逆回転しているため、(VDC・IDC)(−n)のようにマイナス符号を付与する。データ蓄積の完了は角度誤差算出モード切替手段19に認識され、角度誤差を算出する角度誤差算出・補正モード(フェーズ2)を実行するように切り替えられる。
【0054】
角度検出誤差をパラメータとする回転速度対直流電力の特性は、実施の形態1にて示した図4の電圧指令を直流電力に置き換えた場合と類似したものになる。これはすなわち、上記の図5と図6とで説明したように、界磁磁束のベクトルと回転直交座標との位相差、すなわち、角度検出誤差がゼロの場合には力率角ρ0+と力率角ρ0 −との絶対量が等しくなるために、正回転時の回転速度がωm0 の場合と逆回転時の−ωm0 の場合とでは有効電力は等しくなり、直流電源4から供給される直流電力量も等しくなるものであり、図7と図8とで説明したように位相差がゼロでない場合には力率角ρψ+と力率角ρψ−との絶対量が異なり、電圧ベクトルの長さも異なるため、正回転時と逆回転時とでは有効電力が異なり、直流電力量も異なるものである。従って、角度誤差対直流電力特性マップ28bに蓄積されたデータのうち、回転速度がωm0 の場合と−ωm0 の場合とにおける直流電力量がより近い値を示す補正角度θcompを選択することにより角度誤差をゼロにより近づけるように設定することができることになる。
【0055】
この動作を図11により説明すると、角度誤差対直流電力特性マップ28bに全てのデータが蓄積されると角度誤差算出モード切替手段19は角度誤差を算出する角度誤差算出・補正モード(フェーズ2)に切り替わる。このフェーズ2ではまず、角度誤差対直流電力特性マップ28bから電気的角速度がωm0と−ωm0 とにおける蓄積データから補正角度θcomp(1)と、直流電力(VDC・IDC)(+1)と、(VDC・IDC)(−1)とが出力され、減算器31にて両直流電力の偏差ΔPDC(1)が算出される。
【0056】
角度誤差対直流電力偏差特性マップ32bは、この算出されたデータθcomp(1)とΔPDC(1)とを一組のデータ対として蓄積するが、この動作は角度誤差対直流電力特性マップ28bのデータ個数であるm回繰り返されてθcomp(m)とΔPDC(m)まで蓄積される。続いてデータ抽出手段33は角度誤差対直流電力偏差特性マップ32bから二つのデータ対{θcomp(k)、ΔPDC(k)}と{θcomp(l)、ΔPDC(l)}とを抽出する。
【0057】
角度誤差補間手段34bはこの抽出されたデータ対に基づき次式により線形補間を行って直流電力偏差ΔPDCがゼロになる補正角度θcomp(ROM)を算出する。
【数9】
Figure 0003755582
このとき、実施の形態1でも説明したように二つのデータ対を複数組抽出し、各々に算出した補正角度に統計手法、例えば平均化処理を施し、補正角度の精度を向上させることもできる。
【0058】
ここで算出したθcomp(ROM)が位相差の補正成分、すなわち、角度検出器6の検出誤差の補正成分であり、この値が角度補正値記憶手段35に記憶され、この記憶によりフェーズ2は終了し、これが角度誤差算出モード切替手段19に認識されて動作モードは電動機駆動制御モードに切り替えられる。この動作モードの切替は図示しない外部装置に伝達され、制御演算装置1に入力されるモード信号が電動機駆動制御モードの指示に切り替わり、電動機駆動制御モードで動作中は角度補正値記憶手段35に記憶されたθcomp(ROM)が図9の加算器16に出力されて角度検出器6の検出誤差を補正する。この発明の実施の形態2による電動機制御装置においては以上のようにして補正角度θcomp(ROM)が算出され、角度検出の誤差が補正されるもので、これにより実施の形態1と同様の効果を有することになる。
【0059】
実施の形態3.
図12ないし図15は、この発明の実施の形態3による電動機制御装置の構成を説明するためのもので、図12は制御演算装置の構成を説明するブロック図、図13は角度誤差演算・補正手段のデータ蓄積部(フェーズ1)の詳細構成を説明するブロック図、図14は角度誤差対電圧指令特性マップの詳細を説明する説明図、図15は角度誤差演算・補正手段の角度誤差演算部(フェーズ2)の詳細構成を説明するブロック図であり、実施の形態1との同一部分と相当部分とには同一符号が付与されている。
【0060】
図12において、上記の実施の形態1にて説明した図1と異なる点は次の通りである。40は電動機3の固定子温度を検出する固定子温度検出器、41は電動機3の回転子温度を検出する回転子温度検出器であり、制御演算装置1aには実施の形態1の場合とは異なる内容の角度誤差演算・補正手段15cが設けられているほか、固定子温度検出器40の検出温度を角度誤差演算・補正手段15cに与える固定子温度検出手段42と、回転子温度検出器41の検出温度を角度誤差演算・補正手段15cに与える回転子温度検出手段43とが設けられている。
【0061】
角度誤差演算・補正手段15cの第一段階の動作部分であるデータ蓄積部(フェーズ1)の構成を示したのが図13であり、実施の形態1の図2との相違点は次の通りである。20cは角度誤差算出用データ蓄積手段、36と37とはサンプラ26および27と連動するサンプラ、28cは図14に示すようにサンプラ26がサンプリングする電圧指令値{(Vda)2+(Vqa)2}(n)と、サンプラ27がサンプリングする補正角度θcomp(n)と、サンプラ36による固定子温度tst(n)と、サンプラ37による回転子温度trt(n)とを記憶する角度誤差対電圧指令特性マップである。
【0062】
図15は角度誤差演算・補正手段15cにおける角度誤差算出演算部(フェーズ2)の構成を示すブロック図であり、実施の形態1の図3と異なる点は次の通りである。図において、30cは角度誤差算出演算手段、28cは図13と図14とに示した角度誤差対電圧指令特性マップ、32cは角度誤差対電圧指令偏差特性マップ、34cは角度誤差補間手段である。
【0063】
この実施の形態の電動機制御装置においては上記の実施の形態1と比較して、角度誤差算出の課程において電動機3の固定子温度と回転子温度とを入力して演算するようにしたものである。上記実施の形態1の動作原理にて説明したようにd′軸に所定の電流を流しながら正転側と逆転側とに同一絶対回転速度で電動機3を駆動した場合、正転側と逆転側との回転直交座標上の電圧指令値に現れる不平衡(電圧指令値間の差)に対しては固定子温度や回転子温度、あるいは三相インバータの温度が影響を与える。特に、これらの温度変動が大きい場合にはこの影響が無視できない場合があるため、この実施の形態では一例として固定子温度と回転子温度とを演算に取り入れ、より高精度に角度検出誤差の補正を行うようにしたものであり、以下に実施の形態1の場合と異なる点を中心に説明する。
【0064】
制御演算装置1aに外部装置からモード信号として角度誤差算出・補正モードの信号が入力されると実施の形態1と同様に、電流指令値演算手段13からはd軸電流指令値としてida=i0 の固定値が、q軸電流指令値としてiqa=0が出力され、電動機3は所定の回転角速度にて駆動される。固定子温度検出手段42は固定子温度検出器40の信号を受けて固定子温度tstを算出し、回転子温度検出手段43は回転子温度検出器41の信号を受けて回転子温度trtを算出して角度誤差演算・補正手段15cに入力する。さらに、角度誤差演算・補正手段15cにはd軸電圧指令値Vdaとq軸電圧指令値Vqa、および、モード信号と電気的角速度信号ωm0 が入力されている。
【0065】
これらを入力する角度誤差演算・補正手段15cの動作は実施の形態1と同様に、第一段階の角度誤差算出用データを蓄積するフェーズ1と、第二段階の蓄積されたデータに基づき角度誤差を算出するフェーズ2とに分けられ、このフェーズ1の動作を図13と図14とにより説明すると、入力されたd軸電圧指令値Vdaとq軸電圧指令値Vqaとから実施の形態1と同様に乗算器21と22および加算器23により(Vda)2 +(Vqa)2 が演算される。また、補正角度発生手段24は電動機3が所定値のωm0で定常的に回転していると認められる場合に補正角度θcompを一定時間毎にΔθ単位でm回増加、または、減少させて出力する。
【0066】
サンプリング指示発生手段25は補正角度θcompを入力してΔθ単位の変化に同期してサンプラ26、27、36,37にデータをサンプリングするように指示を与え、サンプラ26はこの指示に基づき(Vda)2 +(Vqa)2 をサンプリングすることにより{(Vda)2 +(Vqa)2 }(n)を得、サンプラ27はサンプリング指示に同期してθcomp(n)を得る。また、サンプラ36は固定子温度tst(n)を、サンプラ37は回転子温度trt(n)をそれぞれサンプリングする。サンプリングされたデータは{(Vda)2 +(Vqa)2 }(n)、θcomp(n)、tst(n)、trt(n)を一組のデータとし、補正角度θcompのΔθ単位での変化回数m回に対応するm個分が得られ、角度誤差対電圧指令特性マップ28cに蓄積される。
【0067】
データがm個分蓄積されると、続けて回転角速度を逆回転の−ωm0として同様にデータを蓄積し、図14に示すように、正回転時と逆回転時とのそれぞれにおける補正角度と電圧指令値と固定子温度と回転子温度とを含む角度誤差対電圧指令特性マップ28cを完成させる。データ蓄積が完了すると角度誤差算出モード切替手段19がこれを認識し、角度誤差演算・補正手段15cの動作は図15に示すような角度誤差を算出する角度誤差算出・補正モード(フェーズ2)に切り替えられる。
【0068】
フェーズ2の動作では、まず、角度誤差対電圧指令特性マップ28cの電気的角速度がωm0 と−ωm0 とにおける蓄積データから補正角度θcomp(1)と、電圧指令値{(Vda)2 +(Vqa)2 }(+1)および{(Vda)2 +(Vqa)2 }(−1)が出力され、減算器31にて両電圧指令値の偏差ΔVa(1)が算出される。角度誤差対電圧指令偏差特性マップ32cは、このデータθcomp(1)と、電圧指令値の偏差ΔVa(1)と、回転速度ωm0 での固定子温度tst(+1)と回転子温度trt(+1)と、回転速度−ωm0 での固定子温度tst(−1)と回転子温度trt(−1)とを一組のデータ対として蓄積する。そしてこの動作は角度誤差対電圧指令特性マップ28aに蓄積されたデータ個数であるm回繰り返されて終了する。
【0069】
続いてデータ抽出手段33は角度誤差対電圧指令偏差特性マップ32cから二つのデータ対として{θcomp(k)、ΔVa(k)、tst(+k)、trt(+k)、tst(−k)、trt(−k)}と{θcomp(l)、ΔVa(l)、tst(+l)、trt(+l)、tst(−l)、trt(−l)}とを抽出する。
【0070】
ここで、固定子温度と回転子温度とが電圧指令値に及ぼす影響は次のように見積もられる。まず、k番目のデータ対について、回転速度ωm0 、固定子温度tst(+k)における固定子抵抗値をR+ kとし、回転速度−ωm0 、固定子温度tst(−k)における固定子抵抗値をR− kとすると両者の関係は公知の温度関係式として次式のようになる。
【数10】
Figure 0003755582
【0071】
また、回転速度ωm0での界磁磁石の磁束を回転子温度trt(+k)での値としてΦ+akとし、また、回転速度−ωm0 での界磁磁石の磁束を回転子温度trt(−k)での値としてΦ−akとし、磁石の温度特性に基づく回転子温度の変化による磁束の変動量を係数Bkで表した場合、Φ+akを基準として次式で表すことができる。ただし、磁石の温度特性を示す関数f(t)は磁石の材料により定まるものである。
【数11】
Figure 0003755582
【0072】
以上から界磁磁束のベクトルと回転直交座標との位相差がない場合での固定子の温度変化と回転子の温度変化とが電圧指令偏差に与える影響を考えてみると、まず、回転速度ωm0 における電圧指令は、上記の(6)式から、次のように表すことができる。
【数12】
Figure 0003755582
また、回転速度−ωm0 における電圧指令は、同様に上記の(6)式から、次のようになる。
【数13】
Figure 0003755582
【0073】
従って、k番目のデータ対について、温度変化の影響による電圧指令値偏差ΔVtemp(k)は次式のようになる。
【数14】
Figure 0003755582
同様に、l番目のデータ対にについて、温度変化の影響による電圧指令値偏差ΔVtemp(l)は次式のようになる。
【数15】
Figure 0003755582
【0074】
温度変化による電圧指令値の変化成分は以上のようになるので、角度検出誤差の算出においてはこの変化成分を予め除いておけばよいことになる。従って、k番目のデータ対において変化成分を除いた電圧指令値をΔVb(k)とし、l番目のデータ対において変化成分を除いた電圧指令値をΔVb(l)とすると、それぞれは次のようになる。
ΔVb(k)=ΔVa(k)−ΔVtemp(k) ・・・(34)
ΔVb(l)=ΔVa(l)−ΔVtemp(l) ・・・(35)
【0075】
角度誤差補間手段34cでは抽出されたデータに基づき、次式により温度変化の影響を除いて線形補間を行い、電圧指令値偏差ΔVbがゼロになるときの補正角度θcomp(ROM)を算出する。
【数16】
Figure 0003755582
このとき、二つのデータ対を複数抽出し、各々に算出した補正角度に統計手法、例えば平均化処理を施し、補正角度の精度を向上させることもできる。
【0076】
ここで算出したθcomp(ROM)が位相差、すなわち、角度検出器6の検出誤差の補正成分であり、この値が角度補正値記憶手段35に記憶され、図12の加算器16に出力されて角度検出器6の検出誤差を補正する。またこの記憶によりフェーズ2は終了し、これが角度誤差算出モード切替手段19に認識されて動作モードは電動機駆動制御モードに切り替えられる。この動作モードの切替は図示しない外部装置に伝達され、制御演算装置1に入力されるモード信号が電動機駆動制御モードの指示に切り替わる。
【0077】
以上のようにこの発明の実施の形態3による電動機制御装置においては、固定子温度や回転子温度を検知して電圧指令値に対する変化成分を算出し、この変化成分を除いた電圧指令値偏差により角度検出誤差を補正するようにしたので、実施の形態1の場合と同様の効果を得ることができると共に、温度の変化に対しても高精度に角度誤差を補正することができるものである。
【0078】
なお、以上の説明は、実施の形態1にて説明した電圧指令値偏差から温度による変化成分を除くようにしたものであるが、実施の形態2にて説明した直流電力偏差により演算する場合に適用しても同様の効果が得られるものであり、また、三相インバータに使用される半導体素子の特性は温度依存性が高いため、上記の固定子温度や回転子温度の場合と同様の手法を使用して三相インバータの温度による変化成分を除去することにより、より高精度に角度検出誤差を補正することができるものである。
【0079】
【発明の効果】
以上に説明したようにこの発明の電動機制御装置において、請求項1に記載の発明によれば、インバータにより駆動される電動機の回転角と回転速度とを検出する角度検出手段と速度検出手段と、電動機の電流を界磁磁束のベクトルと同期回転する回転直交座標上の実電流値に置換する電流演算手段と、外部から与えられるトルク指令値と回転速度とから回転直交座標上の電流指令値を演算する電流指令値演算手段と、実電流と電流指令値とから回転直交座標上の電圧指令値を演算する電圧指令値演算手段と、電圧指令値を三相電圧指令値に置換する三相電圧指令値演算手段と、三相電圧指令値をPWM信号に置換するPWM信号生成手段と、電圧指令値と三相電圧指令値とPWM信号とのいずれか一つ、または、いずれか複数から算出される前記電動機の印加電圧ベクトルの大きさと、回転速度とから電動機の回転角を検出する角度検出器の機械的な取り付け位置に起因して発生する回転角の検出誤差を界磁磁束ベクトルの回転直交座標に対する位相差として検出すると共に、角度検出手段が検出する回転角の検出誤差を補正する角度誤差算出・補正手段とを備えるようにしたので、機械的な角度微調整機構などを必要とせず、精度良く回転角の検出誤差を補正することができ、経年変化などによる劣化のない電動機制御装置を得ることができるものである。
【0080】
また、請求項2に記載の発明によれば、角度誤差算出・補正手段が、電動機の所定回転速度において、界磁磁束のベクトル方向に対する各位相補正角毎に回転直交座標上の電圧指令値と三相電圧指令値とPWM信号のいずれか一つ、または、いずれか複数から算出される前記電動機の印加電圧ベクトルの大きさを回転角と共にデータ対として記憶し、この記憶したデータ対から界磁磁束ベクトルの回転直交座標に対する位相差を算出するようにしたので、特別な装置を要することなく単純な方法にて角度誤差の算出ができるものである。
【0081】
さらに、請求項3に記載の発明によれば、請求項1の発明に対して三相インバータの直流側入力電圧および入力電流から算出される直流電力の大きさと、回転速度とから電動機の回転角を検出する角度検出器の機械的な取り付け位置に起因して発生する回転角の検出誤差を界磁磁束ベクトルの回転直交座標に対する位相差として検出すると共に、角度検出手段による回転角の検出誤差を補正する角度誤差算出・補正手段を備えるようにしたので、請求項1の場合と同様、機械的な角度微調整機構を必要とせず、経年変劣化がなく、精度良く回転角の検出誤差を補正することができる電動機制御装置を得ることができるものである。
【0082】
さらにまた、請求項4に記載の発明によれば、角度誤差算出・補正手段が、電動機の所定回転速度において、界磁磁束のベクトル方向に対する各位相補正角毎に入力電圧と入力電流から算出される直流電力の大きさとを回転角と共にデータ対として記憶し、この記憶したデータ対から界磁磁束ベクトルの回転直交座標に対する位相差を算出するようにしたので、請求項2と同様に、特別な装置を要することなく単純な方法にて角度誤差の算出ができるものである。
【0083】
また、請求項5に記載の発明によれば、電動機の所定回転速度は、回転速度の絶対量が等しく回転方向が異なる少なくとも一組の回転速度であって、同一回転角で回転方向が異なる場合の対を構成する各データ差から界磁磁束ベクトルの回転直交座標に対する位相差を算出するようにしたので、電動機の定数やバラツキとは無関係に角度検出誤差を算出することができ、また、角度誤差の検出機能をソフトウエアとして構成することができ、高精度で部品点数の増加のない安価な電動機制御装置を得ることができるものである。
【0084】
さらに、請求項6に記載の発明によれば、電動機の固定子温度、回転子温度、三相インバータ温度のいずれか一つ、または、複数の温度検出手段を備え、固定子温度、回転子温度、インバータ温度のいずれか一つ、または、複数の温度を用いて温度による影響を除去するようにしたので、電動機やインバータの温度による検出誤差を除去することができ、精度良く角度検出誤差を補正することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1の電動機制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】 この発明の実施の形態1の電動機制御装置に使用するデータ蓄積部のブロック図である。
【図3】 この発明の実施の形態1の電動機制御装置に使用する角度誤差算出演算部のブロック図である。
【図4】 この発明の実施の形態1の電動機制御装置の角度誤差算出の説明図である。
【図5】 この発明による角度検出誤差算出原理の説明図である。
【図6】 この発明による角度検出誤差算出原理の説明図である。
【図7】 この発明による角度検出誤差算出原理の説明図である。
【図8】 この発明による角度検出誤差算出原理の説明図である。
【図9】 この発明の実施の形態2の電動機制御装置の構成を示すブロック図である。
【図10】 この発明の実施の形態2の電動機制御装置に使用するデータ蓄積部のブロック図である。
【図11】 この発明の実施の形態2の電動機制御装置に使用する角度誤差算出演算部のブロック図である。
【図12】 この発明の実施の形態3の電動機制御装置の構成を示すブロック図である。
【図13】 この発明の実施の形態3の電動機制御装置に使用するデータ蓄積部のブロック図である。
【図14】 この発明の実施の形態3の電動機制御装置に使用する角度誤差対電圧指令特性マップの説明図である。
【図15】 この発明の実施の形態3の電動機制御装置に使用する角度誤差算出演算部のブロック図である。
【符号の説明】
1、1a 制御演算装置、2 三相インバータ、3 電動機、
4 直流電源、5a、5b、8 電流検出器、6 角度検出器、
9 電圧検出器、10 角度検出手段、11 速度検出手段、
12 電流演算手段、13 電流指令値演算手段、
14 電圧指令値演算手段、
15a〜15c 角度誤差算出・補正手段、
17 三相電圧指令値演算手段、
18 PWM信号生成手段、19 角度誤差算出モード切替手段、
20a〜20c 角度誤差算出用データ蓄積手段、
24 補正角度発生手段、
28a、28c 角度誤差対電圧指令特性マップ、
28b 角度誤差対直流電力特性マップ、
30a〜30c 角度誤差算出演算手段、
32a、32c 角度誤差対電圧指令偏差特性マップ、
32b 角度誤差対直流電力偏差特性マップ、
33 データ抽出手段、34a〜34c 角度誤差補間手段、
35 角度補正値記憶手段、42 固定子温度検出手段、
43 回転子温度検出手段。

Claims (6)

  1. インバータにより駆動される電動機の回転角を検出する角度検出手段、前記電動機の回転速度を検出する速度検出手段、前記電動機の電流を前記電動機の界磁磁束のベクトルと同期して回転する回転直交座標上の実電流値に置換する電流演算手段、前記電動機に外部から与えられるトルク指令値と前記電動機の回転速度とから前記回転直交座標上の電流指令値を演算する電流指令値演算手段、前記実電流値と前記電流指令値とから前記回転直交座標上の電圧指令値を演算する電圧指令値演算手段、前記電圧指令値を前記電動機に印加すべき三相電圧指令値に置換する三相電圧指令値演算手段、前記三相電圧指令値を前記インバータに与えるPWM信号に置換するPWM信号生成手段、前記電圧指令値と前記三相電圧指令値と前記PWM信号のうちのいずれか一つ、または、いずれか複数から算出される前記電動機の印加電圧ベクトルの大きさと、前記電動機の回転速度とから前記電動機の回転角を検出する角度検出器の機械的な取り付け位置に起因して発生する回転角の検出誤差を前記界磁磁束ベクトルの前記回転直交座標に対する位相差として算出すると共に、この位相差により前記角度検出手段が検出する回転角の検出誤差を補正する角度誤差算出・補正手段を備えたことを特徴とする電動機制御装置。
  2. 前記角度誤差算出・補正手段が、前記電動機の所定回転速度において、界磁磁束のベクトル方向に対する各位相補正角毎に前記回転直交座標上の電圧指令値と三相電圧指令値とPWM信号のうちのいずれか一つ、または、いずれか複数から算出される前記電動機の印加電圧ベクトルの大きさを回転角と共にデータ対として記憶し、この記憶したデータ対から前記界磁磁束ベクトルの前記回転直交座標に対する位相差を算出することを特徴とする請求項1に記載の電動機制御装置。
  3. インバータにより駆動される電動機の回転角を検出する角度検出手段、前記電動機の回転速度を検出する速度検出手段、前記電動機の電流を前記電動機の界磁磁束のベクトルと同期して回転する回転直交座標上の実電流値に置換する電流演算手段、前記電動機に外部から与えられるトルク指令値と前記電動機の回転速度とから前記回転直交座標上の電流指令値を演算する電流指令値演算手段、前記実電流値と前記電流指令値とから前記回転直交座標上の電圧指令値を演算する電圧指令値演算手段、前記電圧指令値を前記電動機に印加すべき三相電圧指令値に置換する三相電圧指令値演算手段、前記三相電圧指令値を前記インバータに与えるPWM信号に置換するPWM信号生成手段、前記インバータの入力電圧および入力電流から算出される直流電力の大きさと、前記電動機の回転速度とから前記電動機の回転角を検出する角度検出器の機械的な取り付け位置に起因して発生する回転角の検出誤差を前記界磁磁束ベクトルの前記回転直交座標に対する位相差として算出すると共に、この位相差により前記角度検出手段が検出する回転角の検出誤差を補正する角度誤差算出・補正手段を備えたことを特徴とする電動機制御装置。
  4. 前記角度誤差算出・補正手段が、前記電動機の所定回転速度において、界磁磁束のベクトル方向に対する各位相補正角毎に前記インバータの入力電圧と入力電流から算出される直流電力の大きさとを回転角と共にデータ対として記憶し、この記憶したデータ対から前記界磁磁束ベクトルの前記回転直交座標に対する位相差を算出することを特徴とする請求項3に記載の電動機制御装置。
  5. 前記電動機の所定回転速度は、回転速度の絶対量が等しく回転方向が異なる少なくとも一組の回転速度であって、同一回転角で回転方向が異なる場合の対を構成する各データ差から前記界磁磁束ベクトルの前記回転直交座標に対する位相差を算出することを特徴とする請求項2または請求項4に記載の電動機制御装置。
  6. 前記電動機の固定子温度の検出手段、前記電動機の回転子温度の検出手段、前記インバータ温度の検出手段のうちのいずれか一つ、または、複数の検出手段を備えており、固定子温度、回転子温度、インバータ温度のいずれか一つ、または、複数の温度により前記界磁磁束ベクトルの前記回転直交座標に対する位相差が補正されて算出されることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の電動機制御装置。
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