JP5912735B2 - 車両用衝撃吸収部材 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリスチレン系樹脂成分とポリエチレン系樹脂成分との複合樹脂を基材樹脂とする合成樹脂発泡粒子成形体を用いてなる車両用衝撃吸収部材に関し、詳しくは、車両の乗員座席の足元を形成する床面またはその付近に敷設される部材として好適な車両用衝撃吸収部材に関する。
従来、自動車などの車両の床面において、車両の床面の一部を構成し、また車両衝突時の乗員の脚部の保護等の目的から、合成樹脂発泡粒子成形体(以下、単に「発泡粒子成形体」と省略する場合がある。)を用いてなる車両用衝撃吸収部材を車両床面嵩上げ部材や乗員下肢部保護部材として敷設することが提案されている(例えば、下記特許文献1、2)。上記車両用衝撃吸収部材は、衝撃吸収性能を高めるために、乗員の脚が、直接または間接に載置される面と、車両衝突時の衝撃吸収のための凹凸構造とを備える例が知られる。例えば特許文献1には、発泡成形体の室内側は平面を形成し、床面側はハニカム構造、スリット構造または突起構造などの凹凸構造の採用される衝撃吸収性自動車用フロアスペーサの発明が開示されている。また、特許文献2には、車両に設置したときに車体側となる面には、車両の前後方向と同方向となるようにして複数の縦長状凹溝がほぼ等間隔に平行に形成された車両用下肢部衝撃吸収パッドの発明が開示されている。
ところで発泡粒子成形体は、その優れた衝撃吸収性、軽量性、防振性などの特性を活かして、車両用部材を含む幅広い用途に利用されている。発泡粒子成形体の基材樹脂としては、ポリスチレン等のポリスチレン系樹脂や、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂が主流である。中でも、近年、ポリエチレン系樹脂成分とポリスチレン系樹脂成分との複合樹脂(以下、「PS/PE複合樹脂」と省略する場合がある)を基材樹脂とする合成樹脂発泡粒子成形体が、靭性と圧縮強度とのバランスや、耐油性等に優れることより、注目されている。
PS/PE複合樹脂発泡粒子成形体は、種々の優れた点がある一方、燃えやすいという欠点があり、難燃性を付与するためのいくつかの提案がなされている。
具体的には、例えば、スチレン改質ポリエチレン系樹脂発泡成形体の成形倍数をY倍とし、成形体中に残存する可燃性発泡剤の量をX重量%とした場合にX×Y≦5となるように発泡剤残存量と成形倍数を特定の関係に維持する技術が提案されている(特許文献3参照)。
また難燃剤として、テトラブロモシクロオクタンやトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートを用いた、スチレン改質ポリオレフィン系樹脂を基材樹脂とする発泡粒子を得る方法が提案されている(特許文献4、5参照)。
このような難燃性が付与されたPS/PE複合樹脂発泡粒子成形体を自動車部材として用いることを予定する場合には、一般的に、FMVSS No.302(米国自動車安全基準、以下、単に「FMVSS試験」ともいう)に準拠した燃焼試験が実施される。例えば特許文献3〜5においてもFMVSS試験に準拠した燃焼試験により、その難燃性を確認している。
特開2003−127796号公報 特開2004−306791号公報 特開平6−57027号公報 特開平7−179646号公報 特開平7−179646号公報
ここで、近年の車両設計の流れから、車両自体の大きさはなるべく変更せず車内空間を拡充したいという要望が強まっている。そのため、車両用衝撃吸収部材は、車両のフロアに敷設されるという使用態様から、十分な衝撃吸収性能などの安全性を確保可能な範囲でその厚みを小さくすることが求められる場合がある。この場合、十分な衝撃吸収性能を維持するために、車両用衝撃吸収部材における凹凸構造の凸部分の厚み(高さ)を維持したまま、乗員の脚が載置される板状の基部の厚みをより小さく設計する場合がある。具体的には、車両用衝撃吸収部材の基部の厚みを10mm未満とする設計、すなわち、車両用衝撃吸収部材の最小厚みが10mm未満とする設計が望まれる場合がある。
しかしながら以上のような最小厚みの設計では、難燃性で不都合な点があることがわかった。即ち、難燃性試験として汎用されるFMVSS試験は、一般的に12.7mmの一律の厚みの試験片を準備し、これを試験に供して難燃速度を測定する試験である(以下、「標準試験」ともいう)。これに対し、PS/PE複合樹脂発泡粒子成形体であって全体厚みは12.7mmであるが、任意の箇所に12mm未満の薄肉部を有する試験片を用いて同試験を実施し(以下、「薄物試験」ともいう)、標準試験時の燃焼速度と比較すると、薄物試験における燃焼速度は顕著に大きくなってしまうという問題がある。したがって、最小厚みが10mm未満の構造を有する車両用衝撃吸収部材に、PS/PE複合樹脂発泡粒子成形体を用いる場合には、さらなる難燃性の向上が求められる。
そこで本発明者らは、PS/PE複合樹脂発泡粒子成形体を製造する際に用いる難燃剤として2級または3級ハライドを含むハロゲン系難燃剤を選択し、その添加量を増やして難燃性を向上させることを試みた。ところが単純に難燃剤の含有量を増やしてPS/PE複合樹脂発泡粒子を製造したところ、該発泡粒子を用いて成形した発泡粒子成形体中に残留する、揮発性有機化合物(VOC)であるスチレン、トルエン、キシレン及びエチルベンゼンの総含有量が増大してしまうことがわかった。該発泡粒子成形体中に残留するVOCは、環境衛生の観点から少ない方が望ましく、且つ、著しいVOC含有量の増大は、発泡粒子成形体の圧縮強度等の機械的物性を低下させる傾向にあることがわかった。
また、VOC含有量が顕著に増大した場合には、難燃剤を充分に添加しても、その添加効果が添加量に見合う充分な効果としては現れ難く、難燃性が阻害される傾向にあることも推察された。
したがって、PS/PE複合樹脂発泡粒子成形体におけるVOC含有量の増大を回避し、その量を、車両用衝撃吸収部材に用いられるに足る適切な範囲に抑える必要がある。
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、ポリスチレン系樹脂成分とポリエチレン系樹脂成分とから構成される複合樹脂を基材樹脂とする合成樹脂発泡粒子成形体を用いてなる車両用衝撃吸収部材において、最小厚みが10mm未満の構成を有していても、充分な難燃性を示し、且つ、衝撃吸収性能などの機械的物性に優れる車両用衝撃吸収部材を提供することを目的とする。
本発明は、
(1)凹凸構造部を備える合成樹脂発泡粒子成形体を用いてなる車両用衝撃吸収部材であって、
上記発泡粒子成形体は、最小厚みが10mm未満の薄肉部を有しており、
上記発泡粒子成形体が、50〜80質量部のポリスチレン系樹脂成分と20〜50質量部のポリエチレン系樹脂成分とから構成される複合樹脂(ただし、両者の合計が100質量部である。)を基材樹脂とすると共に、難燃剤を含み、
上記ポリスチレン系樹脂には、アクリル酸ブチル成分単位が共重合成分として含まれており、該ポリスチレン系樹脂100質量%における、アクリル酸ブチル成分単位の含有量が1質量%以上3質量%未満であり、
上記難燃剤として、2級または3級ハライドを含み、且つ、50%分解温度が290〜350℃のハロゲン系難燃剤が上記発泡粒子成形体の基材樹脂100質量部に対して1.5質量部以上3質量部以下配合されており、
上記発泡粒子成形体のスチレン、トルエン、キシレン及びエチルベンゼンの総含有量が1000質量ppm以下であり、
FMVSS No.302の燃焼試験に準じて測定された燃焼速度が80mm/min未満である、
ことを特徴とする車両用衝撃吸収部材、
(2)上記ハロゲン系難燃剤の50%分解温度が、330〜350℃であることを特徴とする上記(1)に記載の車両用衝撃吸収部材、
(3)上記発泡粒子成形体の見掛け密度が35kg/m以下であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の車両用衝撃吸収部材、
を要旨とするものである。
本発明の車両用衝撃吸収部材は、ポリスチレン系樹脂成分とポリエチレン系樹脂成分とから構成される複合樹脂を基材樹脂とする合成樹脂発泡粒子成形体を用いてなる車両用衝撃吸収部材において、その最小厚みが10mm未満の薄肉部を有しているにも関わらず、合成樹脂発泡粒子成形体の基材樹脂中のポリスチレン系樹脂成分が共重合成分として特定量のアクリル酸ブチル成分単位を含むと共に、発泡粒子成形体が特定の熱分解挙動を示す難燃剤を含み、かつスチレン、トルエン、キシレン及びエチルベンゼンの総含有量が少ないことから、PS/PE複合樹脂発泡粒子成形体が本来有する優れた機械的物性を有しながらも、高い難燃性が示され得る。
したがって、難燃性が配慮された上で、車両用衝撃吸収部材における最小厚みを10mm未満とすることが可能であるため、車両用衝撃吸収部材の設計の自由度を広げることができる。
また、本発明の車両用衝撃吸収部材は、ポリスチレン系樹脂を重合する際のモノマーに由来するスチレンに加え、トルエン、キシレン及びエチルベンゼンの総含有量が小さい範囲に特定されており、環境衛生に対する配慮がなされている。
本発明の車両用衝撃吸収部材の一実施態様を上方(車両に設置した場合の室内側)から視た斜視図である。 図1に示した本発明の車両用衝撃吸収部材を下方(車両に設置した場合の車体側)から視た斜視図である。 図1におけるI−I線に沿う部分の拡大断面図である。
[本発明の車両用衝撃吸収部材]
以下に本発明を実施するための形態について説明する。まず本発明の一実施態様について、図面を用いて、その形状を説明する。図1は、本発明の車両用衝撃吸収部材の一実施態様を上方(車両に設置した場合の室内側)から視た斜視図であり、図2は、図1に示した本発明の車両用衝撃吸収部材を下方(車両に設置した場合の車体側)から視た斜視図である。
図1に示す車両用衝撃吸収部材1は、乗員が足を載置する面を有する天板10を含み、該天板10は、上面視上、中央平坦面部11と、中央平坦面部11に隣接し、車両後方方向に位置する後部平坦面部12とを備えて構成される。尚、図1に示す車両用衝撃吸収部材1は本発明の一実施態様であって本発明を限定するものではない。本発明の車両用衝撃吸収部材は、少なくとも、車両に設置した際に車両室内側に面する天板を備え、且つ、該天板の車体側に設けられる凹凸構造を有していればよい。
車両用衝撃吸収部材1の裏面は、中央平坦面部11および後部平坦面部12の裏面において、凹凸構造部16が設けられている(図2参照)。凹凸構造部16は、前後方向に連続して伸長する凸部を天板10の裏面(車両に設置した際に、車体側となる面)に形成することによって設けられた凸部17と、左右方向に隣り合う凸部17間における実質的に凹状となる部分である凹部18とから構成されている。尚、車両用衝撃吸収部材1の説明において使用する「前後方向」および「左右方向」とは、車両用衝撃吸収部材1を車に設置した際における、車両の前後方向と左右方向に概略一致する。
凹凸構造部16は、衝突などにより車両に衝撃が与えられた際に、乗員の脚部にかかるその衝撃エネルギーの少なくとも一部を吸収する作用を発揮せしめるための構造であり、本発明における凹凸構造部の一例を示すものである。乗員の脚部と車体との間に位置する凸部が、車両衝突時に、弾性変形及び/又は塑性変形することによって、車両衝突時の衝撃エネルギーを吸収して乗員の脚部を保護する。なお、車両用衝撃吸収部材として求められる衝撃エネルギー吸収性能を満足させるためには、上記凹凸構造部16における凸部17の先端面は平坦状に形成し、且つ、凸部17の先端面の面積の和として示される受圧面積は、凹凸構造部16の水平投影面積に対し25〜75%とすることが好ましく、また、上記好ましい面積比率の範囲に含まれるよう、凸部17間の距離(凹部18の幅)を、10〜20mmと設計することが好ましい。尚、本発明において衝撃エネルギー吸収性能を発揮させるために設けられる凹凸構造において、複数の凸部の幅寸法は一律であってもよいし、異なっていてもよく、また凸部間の距離は一律であってもよいし、異なっていてもよい。
本発明における凹凸構造部は、車両用衝撃吸収部材において、車両に衝撃が与えられた場合に、その衝撃の少なくとも一部を吸収可能な凹凸構造であればよく、図2に示す凹凸構造部16に限定されるものではない。例えば、天板の一面に形成される凸部の全部又は一部をハニカム構造にする態様や、天板の一面において連続の、または不連続の凹部を形成し、該凹部間における実質的に凸状となる部分を凸部とし、該凹部と該凸部とで凹凸構造部を構成してもよい。例えば、より具体的な例としては、特開2003−127796における[図2]〜[図4]、[図7]などであってもよい。
凹凸構造部16をさらに説明するために、図1におけるI−I線に沿う部分の拡大断面図である図3を示す。車両用衝撃吸収部材1の全体厚みはCとして示されるが、車両用衝撃吸収部材1には、最小厚みAとして示すとおり、薄肉の部分が存在する。上述するとおり、室内空間の拡充などの理由により車両用衝撃吸収部材1の全体厚みCを、より小さく設計することが望まれる場合があり、十分な衝撃エネルギー吸収を維持するためには凸部17の厚み(高さ)Bを小さくすることは困難であるため、これに伴い、最小厚みAがより小さく設計される傾向にある。なお、車両用衝撃吸収部材の最小厚みAが小さすぎると、車両用衝撃吸収部材として求められる衝撃エネルギー吸収性能を満足できなくなる虞があるため、最小厚みAの下限は概ね5mm程度とすることが好ましい。
このように、車両用衝撃吸収部材1には、全体厚みよりも小さい厚み部分が存在し、少なくともこの部分が、10mm未満の最小厚みとなるものである。本発明の多くの実施態様では、上述する薄肉部分は、一面側に凹凸構造部を有する天板の厚みにおいて示される最小厚み部分である。
ここで、一般的に10mm未満の最小厚み部分を備える車両用衝撃吸収部材は、12.7mm厚のFMVSS試験(標準試験)において難燃性が充分と確認された発泡粒子成形体によって構成した場合であっても、薄肉部分、特には10mm未満の厚み部分において燃焼速度が上昇するため、実質的に車両用衝撃吸収部材としての難燃性が不充分となることを本発明者らは確認した。
そこで、本発明者らは、少なくとも一面に凹凸構造部を備える合成樹脂発泡粒子成形体を用いてなる車両用衝撃吸収部材であって、上記発泡粒子成形体が最小厚みが10mm未満の薄肉部を有する車両用衝撃吸収部材に関し、上記発泡粒子成形体が、50〜80質量部のポリスチレン系樹脂成分と20〜50質量部のポリエチレン系樹脂成分とから構成される(ただし、両者の合計が100質量部である。)複合樹脂を基材樹脂とすると共に、難燃剤を含み、上記ポリスチレン系樹脂には、アクリル酸ブチル成分単位が共重合成分として含まれており、該ポリスチレン系樹脂100質量%における、アクリル酸ブチル成分単位の含有量が1質量%以上3質量%未満であり、上記難燃剤として、2級または3級ハライドを含み、且つ、50%分解温度が290〜350℃のハロゲン系難燃剤が上記発泡粒子成形体の基材樹脂100質量部に対して1.5質量部以上配合されており、上記発泡粒子成形体のスチレン、トルエン、キシレン及びエチルベンゼンの総含有量が1000質量ppm以下である構成を採用するものである。
即ち本発明者らは、上述するように、難燃性向上のための2級または3級ハライドを含むハロゲン系難燃剤の使用および配合量、これに伴う難燃性と、発泡粒子成形体中のスチレン、トルエン、キシレン及びエチルベンゼンの総含有量の増減を鋭意検討した。当該検討において、本発明者らは、ポリスチレン系樹脂において共重合成分として用いられるアクリル酸ブチルに着眼するに至った。アクリル酸ブチルは、一般的には、スチレン系モノマーと共重合させてポリスチレン系樹脂とすることにより、該ポリスチレン系樹脂のガラス転移点(Tg)を下げることができ、その結果、該ポリスチレン系樹脂を基材樹脂とする発泡性粒子の発泡性や型内成形性を向上させ得るという添加効果を有することが知られる。一方、スチレンに対するアクリル酸ブチルの共重合量が多くなると、ポリスチレン系樹脂の軟化温度の低下に起因し、耐熱性が低下することも知られる。
本発明者らの検討により、ポリスチレン系樹脂成分とポリエチレン系樹脂成分とから構成される複合樹脂を基材樹脂とする発泡粒子成形体において、2級または3級ハライドを含むハロゲン系難燃剤の配合とともに、ポリスチレン系樹脂が上記アクリル酸ブチルを好適な範囲で共重合成分として含有し、スチレンモノマー等のVOC成分を特定量とすることによれば、発泡成形体の耐熱性及び機械的強度を良好に維持しつつ、優れた難燃性を示し得るという知見が見出された。
即ち、第一の知見として、ポリスチレン系樹脂成分とポリエチレン系樹脂成分とから構成される発泡粒子成形体において、適当な量の2級または3級ハライドを含むハロゲン系難燃剤を含有させた場合に、添加量を増加させれば、それに伴い難燃性が向上するとは限らないということを認識した。
上記第一の知見に対し、さらに検討した結果、スチレン系モノマーに適量のアクリル酸ブチルを共重合させて複合樹脂中のポリスチレン系樹脂成分とし、また適当な量の2級または3級ハライドを含むハロゲン系難燃剤を含有させて、ポリスチレン系樹脂成分とポリエチレン系樹脂成分とから構成される発泡粒子成形体を製造した場合に、アクリル酸ブチルを含有しないサンプルと比較して難燃性を向上させ得るという第二の知見を得た。
上記第二の知見は、ポリスチレン系樹脂成分とポリエチレン系樹脂成分とから構成される発泡粒子成形体において、適当な量の2級または3級ハライドを含むハロゲン系難燃剤を含有し、上記ポリスチレン樹脂にアクリル酸ブチルが共重合していない場合に、期待通りの難燃性が得られなかった場合であっても、適度な量のアクリル酸ブチルが共重合されたポリスチレン樹脂を複合樹脂の構成成分とすることによって、難燃性を向上させ得るという、謂わば、アクリル酸ブチルの難燃性向上助剤として作用を見出したものである。
以下に、本発明の構成の詳細について説明する。
本発明の車両用衝撃吸収部材は、発泡粒子成形体を用いてなる部材であり、上記発泡粒子成形体は、ポリスチレン系樹脂成分とポリエチレン系樹脂成分とから構成される複合樹脂を基材樹脂とすると共に、難燃剤を含む発泡粒子成形体である。
[本発明に用いられる発泡粒子成形体]
上記発泡粒子成形体は、PS/PE複合樹脂を基材樹脂とするため、その相構造を発泡粒子成形体の断面において透過型電子顕微鏡で観察した場合に、本発明の一態様において、ポリエチレン系樹脂の連続相中に、ポリスチレン系樹脂の略円形および/または不定形の粒状の分散相が分散されてなる海島構造が観察される。かかる態様の海島構造が示される場合には、発泡粒子成形体が、特に、ポリスチレン系樹脂に由来する高い剛性と、ポリエチレン系樹脂に由来する高い靱性とを併せ持ったものとなるため好ましい。
あるいはまた、本発明の別の態様では、上述と同様の観察において、発泡粒子成形体の基材樹脂であるPS/PE複合樹脂の相構造は、ポリスチレン系樹脂を主成分とする連続相とポリエチレン系樹脂を主成分とする連続相とからなる共連続相が形成されていてもよい。また異なる別の態様では、ポリスチレン系樹脂を主成分とする連続相中にポリエチレン系樹脂を主成分とする分散相が分散されてなる海島構造が示されてもよい。尚、上述する本発明の発泡粒子成形体の基材樹脂の相構造の説明は、本発明を何ら限定するものではない。
ポリエチレン系樹脂成分:
本発明において、発泡粒子成形体の基材樹脂を構成するポリエチレン系樹脂成分は、エチレンの単独重合体、あるいはエチレンと任意のモノマー、例えば、炭素数3以上のα−オレフィンや、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとが重合してなる共重合体であってもよく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜選択されてよい。より具体的な例としては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン・メタクリル酸アルキルエステル共重合体等が挙げられる。上記ポリエチレン系樹脂成分のより好ましい例は、発泡粒子成形体の圧縮強度等の機械的物性の優位性の観点から、直鎖状低密度ポリエチレン、及び/又は、複合樹脂粒子の発泡性や得られる発泡粒子の型内成形性の観点からエチレン−酢酸ビニル共重合体が好ましく挙げられる。
ただし、本発明において、ポリエチレン系樹脂とは、該ポリエチレン系樹脂100質量%においてエチレン成分単位が50質量%以上含有されているものをいい、エチレン成分単位が80質量%以上含有されていることが好ましい。
上記直鎖状低密度ポリエチレンは、好ましくは直鎖のポリエチレン鎖と炭素数2〜6の短鎖状の分岐構造を有するものが用いられることが好ましい。
直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、通常、0.88〜0.95g/cm程度であるが、複合樹脂粒子の発泡性と発泡粒子成形体の圧縮強度等の機械的物性との両立という観点から、好ましくは密度0.90〜0.94g/cmの直鎖状低密度ポリエチレン、より好ましくは0.91〜0.93g/cmの直鎖状低密度ポリエチレンが用いられることが好ましい。
上記エチレン−酢酸ビニル共重合体の密度は、一般に0.90〜0.96g/cm程度であるが、発泡性、成形性、特に成形性の観点から、0.95g/cm以下が好ましく、0.94g/cm以下がより好ましい。
また、エチレン−酢酸ビニル共重合体は、一般に、長鎖のポリエチレン鎖分岐と酢酸ビニル由来の短鎖の分岐構造を有している。酢酸ビニルの含有量(共重合体中の酢酸ビニルモノマー由来の構造割合)は、通常1〜45質量%のものが知られているが、スチレンモノマーの含浸性やグラフト重合性の観点等から、3〜20質量%のものが好ましく、5〜15質量%のものがより好ましい。
ポリスチレン系樹脂:
本発明において、発泡粒子成形体の基材樹脂を構成するポリスチレン系樹脂成分としては、スチレンモノマーとアクリル酸ブチルとの共重合体、スチレンモノマーとアクリル酸ブチルとこれらと共重合可能なモノマー成分との共重合体などが挙げられる。
該スチレンモノマー及びアクリル酸ブチルと共重合可能なモノマー成分としては、例えば、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、2,4−ジクロロスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−オクチルスチレン、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム等のスチレン誘導体、;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等のメタクリル酸アルキルエステル、;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有不飽和化合物等が挙げられる。
ただし、本発明において、ポリスチレン系樹脂とは、該ポリスチレン系樹脂100質量%においてスチレンモノマー成分単位が50質量%以上であるものをいい、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上である。尚、本明細書では、ポリスチレン系樹脂を構成するスチレンモノマー、アクリル酸ブチル、及び必要に応じて添加されるこれらと共重合可能なモノマーを、併せてスチレン系モノマーと称することがある。
ポリエチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂の含有比率:
本発明における発泡粒子成形体の基材樹脂は、50〜80質量部のポリスチレン系樹脂成分と20〜50質量部のポリエチレン系樹脂成分とから構成される複合樹脂(ただし、両者の合計が100質量部である。)を含む。かかるポリスチレン系樹脂成分とポリエチレン系樹脂成分との配合比率の範囲は、発泡粒子成形体の物性を考慮して決定された。具体的には、ポリエチレン系樹脂成分量が多すぎてポリスチレン系樹脂成分量が充分でないと、車両用衝撃吸収部材として所望される、発泡粒子成形体の圧縮特性等の機械的強度が不充分になる虞がある。一方、ポリエチレン系樹脂成分量が不充分でありスチレン系樹脂成分が多すぎる場合には、発泡粒子成形体の靭性、耐薬品性等が不充分になる虞がる。これらの虞を勘案して、上記範囲が決定された。同様の観点において、25〜40質量部のポリエチレン系樹脂成分と75〜60質量部のスチレン系樹脂成分とから構成されることが、より好ましい。
上記基材樹脂は、上記複合樹脂のみから構成されていてもよいし、あるいは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記複合樹脂以外の任意の樹脂がさらに含有されていてもよい。本発明の課題を好ましく解決することができる複合樹脂発泡粒子を得られ易いという観点では、好ましくは、上記基材樹脂100質量%における複合樹脂の含有量は、90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、特に好ましくは100質量%である。
難燃剤:
本発明において、発泡粒子成形体に含有される難燃剤は、2級または3級ハライドを含み、且つ、50%分解温度が290〜350℃のハロゲン系難燃剤である。
本発明における難燃剤には、2級または3級ハライドを含まれていることにより、燃焼時にポリマーの燃焼進展推進役となる活性なOHラジカルやHラジカルを補足・安定化させるハロゲンラジカルを発生するので、気相における難燃効果が充分に発揮される安定した難燃性を、発泡粒子成形体に付与することができる。しかも、50%分解温度が290〜350℃であることにより、上記発泡粒子成形体の熱分解が進む温度範囲において、ハロゲン系難燃剤の充分な難燃効果が発現される。上記観点から上記ハロゲン系難燃剤の50%分解温度は、310〜350℃がより好ましく、330℃〜350℃であることがさらに好ましい。
本発明における難燃剤は、発泡粒子成形体100質量部に対して1.5質量部以上配合されることにより、発泡粒子成形体に好ましい難燃性を付与することができる。発泡粒子成形体に対する難燃性の付与という観点では、難燃剤の配合の上限は特に限定されないが、配合量が多すぎると、複合樹脂発泡粒子の型内成形性や、得られる発泡粒子成形体の機械的物性が低下する虞があり、また、スチレンモノマーの重合を阻害し、発泡粒子成形体中のスチレンモノマー等のVOC成分の含有量が増加する虞がある。したがって、以上の事項を勘案すると、難燃剤の配合量の下限は、発泡粒子成形体100質量部に対して1.5質量部、好ましくは2質量部であり、難燃剤の配合量の上限は発泡粒子成形体100質量部に対して好ましくは5質量部であり、より好ましくは4質量部、さらに好ましくは3.5質量部、特に好ましくは3質量部である。
また、本発明の発泡粒子成形体は、上記ハロゲン系難燃剤の50%分解温度をA(℃)、上記発泡粒子成形体の50%分解温度をB(℃)とすると、50≦(B−A)≦150という関係を満足することが好ましい。上記関係は、より好ましくは、50≦(B−A)≦100である。
50≦(B−A)≦150とすることにより、上記発泡粒子成形体の熱分解と上記ハロゲン系難燃剤の熱分解のタイミングを最適化することが可能であり、上記発泡粒子成形体に、一層優れた難燃性を付与することが可能である。
尚、上記発泡粒子成形体の熱分解温度は、主としてポリエチレン系樹脂成分とポリスチレン系樹脂成分の成分比率や種類、発泡粒子成形体のゲル分率などにより決まり、その他、発泡粒子成形体の見掛け密度と気泡径などによっても影響され得る。ポリエチレン系樹脂成分を多くすること、あるいはゲル分率を高くすることなどにより、上記発泡粒子成形体の熱分解温度は高くなる傾向にある。
ハロゲン系難燃剤の50%分解温度は、ハロゲン系難燃剤の種類によって決まる。したがって、上記の関係式を満たしたい場合には、複合樹脂発泡粒子の基材樹脂に応じて、ハロゲン系難燃剤の種類を適宜選択してよい。
上述のハロゲン系難燃剤および発泡粒子成形体それぞれの50%分解温度は、示差熱熱重量同時測定装置(TG/DTA)により、昇温速度10℃/分、測定温度範囲40℃から500℃、空気雰囲気下、サンプルパンの材質:Pt、サンプル質量50mgの条件にて、示差熱減量曲線を測定し、該示差熱減量曲線において重量が50%減少したときの温度である。
上記ハロゲン系難燃剤の例としては、例えば、ビス[3,5−ジブロモ−4−(2,3−ジブロモプロポキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(2,3−ジブロモプロポキシ)−3,5−ジブロモフェニル]プロパン、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート等の臭素系難燃剤、ビス[3,5−ジクロロ−4−(2,3−ジクロロプロポキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(2,3−ジクロロプロポキシ)−3,5−ジクロロフェニル]プロパン、トリス(2,3−ジクロロプロピル)イソシアヌレート等の塩素系難燃剤等を挙げることができる。難燃効果の観点から、好ましくは臭素系難燃剤であり、特に好ましくは、ビス[3,5−ジブロモ−4−(2,3−ジブロモプロポキシ)フェニル]スルホンである。上記ハロゲン系難燃剤は単独で用いても、2種類以上混合して用いてもよい。
また、上記ハロゲン系難燃剤に、三酸化アンチモン、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンなどの難燃助剤や、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェートなどの非ハロゲンリン系難燃剤や、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェートなどの上記ハロゲン系難燃剤以外の含ハロゲンリン系難燃剤を適量併用してもよい。上記難燃助剤、リン系難燃剤は単独で上記ハロゲン系難燃剤と併用しても、あるいは2種類以上混合して併用してもよい。
アクリル酸ブチル:
本発明におけるポリスチレン系樹脂には、アクリル酸ブチル成分単位が共重合体成分として含まれる。アクリル酸ブチル成分単位の含有量は、ポリスチレン系樹脂100質量%において、1質量%以上3質量%未満の範囲内であり、1.5〜2.5質量%とすることが好ましい。なお、上記アクリル酸ブチル成分単位の含有量は、モノマーとして用いたアクリル酸ブチルの換算質量である。
本発明において、アクリル酸ブチル成分単位が上記の範囲内でポリスチレン系樹脂に含有されることにより本発明における複合樹脂発泡粒子の発泡性および成形性が良好になる。加えて、上記第二の知見として説明するように、アクリル酸ブチル成分単位が上記範囲内でポリスチレン系樹脂に含有されることにより、発泡粒子成形体の耐熱性を大きく低下させずに、ハロゲン系難燃剤の難燃効果の好ましい発揮に寄与するものと推察される。
発泡粒子成形体におけるスチレン、トルエン、キシレン及びエチルベンゼンの総含有量:
本発明の車両用衝撃吸収部材に用いられる発泡粒子成形体は、スチレン、トルエン、キシレン及びエチルベンゼンの総含有量が1000質量ppm以下であると特定される。なお、これら4化合物は、主たる由来としてはポリスチレン系樹脂を重合する際に、重合されなかったスチレンモノマーと、スチレンモノマーに元々含まれる不純物であることが推察され、多くの本発明の態様において、これら4化合物の総含有量のうち、スチレンモノマーが主成分である。ただし、上記由来に限定されず、発泡粒子成形体に含まれる4化合物の総含有量が、1000質量ppmであると特定される。
一般的に発泡粒子成形体におけるVOC含有量が少ないことは環境衛生上の観点から望ましい。ただし、低VOC化を図るために、上記4化合物の含有量を削減すると、基材樹脂に対する可塑化効果の低減により発泡性の低下が観察され、低見掛け密度の発泡粒子を一段で製造しにくくなり、また、発泡粒子の二次発泡性や発泡粒子間の融着性が低下しやすく、これを補うために型内成形時の成形加熱条件を高くするか発泡粒子に内圧を付与する等の前処理を行わなければならなかった。
ところが本発明は、ポリスチレン系樹脂中にアクリル酸ブチルが適当な範囲の量で共重合されており、アクリル酸ブチルの本来の作用である発泡性、成形性向上効果が発揮される。したがって、本発明は、低VOC化が図られ環境衛生上の改善がなされた上、発泡性、成形性の低下も補われている。換言すれば、本発明において、ポリスチレン系樹脂が上述のとおり適当な範囲の量のアクリル酸ブチルを共重合成分として含有することにより、発泡性、成形性を損なわず、また損なわれた発泡性、成形性を補うための処理を必ずしも行うことなく、低VOC化を図ることが可能となった。
より好ましく低VOC化を図り、また難燃性の優れた発泡粒子成形体を備える車両用衝撃吸収材を提供するという観点からは、特にスチレン、トルエン、キシレン及びエチルベンゼンの総含有量は、500ppm以下であることが望ましい。500ppmというVOCの含有量の小さい発泡粒子成形体において、従来は、発泡性や成形性の低下が危惧されていたところ、本発明は、発泡粒子成形体の基材樹脂のポリスチレン系樹脂の共重合成分としてアクリル酸ブチルが好適な範囲で含有しているため、発泡性、成形性の低下を補うことができ、且つ、驚くべきことに、共重合成分のアクリル酸ブチルの存在により難燃性向上までも補われるものと推察され、車両用衝撃吸収部材を構成する成形体として非常に優れた合成樹脂発泡粒子成形体を提供することができる。
発泡粒子成形体中のスチレン、トルエン、キシレン及びエチルベンゼンの総含有量を1000質量ppm以下まで減量する方法としては、(1)ポリスチレン系樹脂を重合する際に、重合開始剤として分解温度の異なる複数の有機化酸化物を使用してスチレン系モノマーの重合度を上げ残留モノマー量を減量する方法、(2)密閉容器内で水性媒体中に複合樹脂粒子を分散させ、加熱下で該複合樹脂粒子に二酸化炭素などの無機発泡剤を含浸させ、水性媒体と共に複合樹脂粒子を放出することにより発泡させてスチレンモノマー等を除去する方法、(3)複合樹脂粒子、発泡粒子或いは発泡粒子成形体の状態で超臨界二酸化炭素などを使用してスチレンモノマー等を抽出除去又は揮発させる方法などがある。
これらの方法の中でも、発泡粒子成形体中のスチレン、トルエン、キシレン及びエチルベンゼンの総含有量が1000質量ppm以下(0を含む)であることが特定される本発明において、複合樹脂発泡粒子を得るために、上記(1)の方法と(2)の方法とを組み合わせることは好ましい。
また本発明に用いられる発泡粒子成形体は、スチレン、トルエン、キシレン及びエチルベンゼンの総含有量が1000質量ppm以下と特定されており、この結果、VOC含有量の増大に起因する発泡粒子成形体の50%圧縮応力などの機械的物性の低下や難燃性の悪化を抑制することができる。したがって、本発明において、スチレン、トルエン、キシレン及びエチルベンゼンの総含有量が1000質量ppm以下と特定されることにより、優れた衝突エネルギー吸収性能及び難燃性を有する車両用衝撃吸収部材を提供することにも貢献する。
上述に説明する本発明における発泡粒子成形体の見掛け密度は特に限定されないが、車両用部材に用いられることを勘案すると、該見掛け密度は、35kg/m以下であることが望ましい。
発泡粒子成形体の見掛け密度をより小さく設計するということは、発泡粒子成形体の発泡倍率を増大する結果となり、該発泡粒子成形体の難燃性、特には燃焼速度の点で、不利に働く傾向にある。しかしながら、本発明は、特定の難燃剤が発泡粒子成形体に対して充分量含まれ、且つ、ポリスチレン系樹脂における共重合成分であるアクリル酸ブチル成分単位が好適な範囲内の量で含まれ、さらに発泡粒子成形体中のスチレンモノマーなどのVOC含有量が少ないため、見掛け密度35kg/m以下に設計しても、優れた難燃性を示すことが可能であり、車両用部材として望ましい物性が示されうる。
その他の添加剤
本発明に用いられる発泡粒子成形体には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、さらに任意の添加剤が含有されていてよい。具体的には、例えば、複合樹脂発泡粒子を得る際に用いられる発泡剤や気泡調整剤など、また、複合樹脂発泡粒子の型内成形性やこれを用いて成形される発泡粒子成形体の物性の向上及び高機能化の観点から用いられる樹脂添加剤、帯電防止剤、着色剤(顔料、染料)などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
以上に説明する発泡粒子成形体は、難燃性に優れ、特に、最小厚みが10mm未満となる箇所においても優れた難燃性が示され得る。かかる難燃性は、厚みが10mm未満のサンプルを準備し、これを用いてFMVSS試験(薄物試験)に準拠して難燃性を評価することにより示される。上記発泡粒子成形体を用いてなる本発明の車両用衝撃吸収部材であれば、車両用部材として望ましい難燃速度を示す部材を提供することができる。
[本発明の製造方法]
次に本発明に用いられる発泡粒子成形体の製造方法(以下、単に「本発明の製造方法」ともいう)の例について説明する。ただし、以下に示す発泡粒子成形体の製造方法は、本発明に用いられる発泡粒子成形体の製造方法の一例であって、それ以外の製造方法により製造された発泡粒子成形体を本発明に用いることを除外するものではない。
本発明の製造方法は、水性媒体中に懸濁させたポリエチレン系樹脂粒子中に、アクリル酸ブチルを含むスチレン系モノマーを含浸、重合させて、複合樹脂粒子を得るための改質工程を実施することができる
そして、上記改質工程中および/または改質工程後に、複合樹脂粒子中に物理発泡剤を含浸させる発泡剤含浸工程を実施する。
続いて、物理発泡剤が含浸された発泡性複合樹脂粒子を加熱し発泡させて複合樹脂発泡粒子を得る発泡工程を実施する。
上述のとおり得られた複合樹脂発泡粒子を用いて所望形状に型内成形することによって、車両用衝撃吸収部材に用いる発泡粒子成形体を得る成形工程を実施する。
さらに、必要に応じて該発泡粒子成形体に必要な加工、装飾を施すことにより、本発明の車両用衝撃吸収部材を製造することができる。
以下に、改質工程、発泡剤含浸工程、発泡工程、および成形工程に分けて説明する。
改質工程:
ポリエチレン系樹脂粒子(以下、「核粒子」という場合がある)を水性媒体中に懸濁させた懸濁液中に、上述するハロゲン系難燃剤を溶解させた、アクリル酸ブチルを含むスチレン系モノマー、重合開始剤を添加し、核粒子に該スチレン系モノマー等を含浸させ、重合開始剤の存在下で該スチレン系モノマーを重合させる。これにより、ハロゲン系難燃剤を含有する、ポリエチレン系樹脂成分とポリスチレン系樹脂成分とから構成される複合樹脂粒子を得る。なお、上記方法を採用した複合樹脂粒子を得る改質工程が、ハロゲン系難燃剤の熱履歴により性能低下を防止するという観点から好ましいが、上記ハロゲン系難燃剤とポリエチレン系樹脂とを、予め押出機等で混練して製造したハロゲン系難燃剤を配合した核粒子に該スチレン系モノマー等を含浸させ、該スチレン系モノマーを重合して複合樹脂粒子を得る改質工程を実施してもよい。
(ポリエチレン系樹脂粒子)
上記核粒子におけるポリエチレン系樹脂としては、上述するポリエチレン系樹脂成分として示す内容と同様、あるいは、それらを構成可能な材料であり、特に、直鎖状低密度ポリエチレン、および/又は、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含むことが好ましい。
尚、上記直鎖状低密度ポリエチレンの190℃、荷重2.16kgfにおけるメルトマスフローレート(MFR)は、核粒子の造粒押出し時における押出適性の観点等から、1.5〜4.0g/10分、更に1.5〜3.0g/10分であることが好ましく、ビカット軟化温度は、核粒子の粒径安定化の観点から、80〜120℃、さらには90〜100℃であることが好ましい。上述する好ましい直鎖状低密度ポリエチレンは、市販品として入手することが可能である。
また、上記エチレン−酢酸ビニル共重合体の190℃、荷重2.16kgfにおけるMFRは、核粒子の造粒押出し時における押出適性の観点等から、1.5〜4.0g/10分、更に2.0〜3.5g/10分であることが好ましく、ビカット軟化温度は、核粒子の粒径安定化の観点から、60〜110℃、さらには60〜90℃であることが好ましい。上述する好ましいエチレン−酢酸ビニル共重合体は、市販品として入手することが可能である。
核粒子を、直鎖状低密度ポリエチレンおよびエチレン−酢酸ビニル共重合体を混合して構成する場合には、これらの好適な配合割合は、直鎖状低密度ポリエチレンおよびエチレン−酢酸ビニル共重合体の合計100質量%に対して、直鎖状低密度ポリエチレン60〜80質量%、エチレン−酢酸ビニル共重合体20〜50質量%である。
尚、上記核粒子は、上記ハロゲン系難燃剤の他、本発明の効果を損なわない限り、気泡調整剤、顔料、スリップ剤、帯電防止剤などを含むことができる。
上記核粒子は、上述した樹脂等の材料を適宜配合し、押出機等により溶融混練してから細粒化して製造することができる。この時、樹脂を均一に混練するため、予め各樹脂成分をヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、Vブレンダー、レディーゲミキサーなどの混合機を使用して混合した後、押出機に供給してよい。
また、複合樹脂中のポリスチレン系樹脂成分の分散径を制御するために、予め樹脂添加剤を核粒子のポリエチレン系樹脂に分散させることができる。
上記樹脂添加剤としては、アクリロニトリル−スチレン共重合体、メチルメタクリレート−スチレン共重合体、ポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン、ABS樹脂、AES樹脂等のスチレン系樹脂、SBS、SIS、それらの水添加物等のスチレン系エラストマー、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。また、上記樹脂添加剤を配合する場合には、核粒子を構成するポリエチレン系樹脂100質量部に対して1〜10質量部、更に好ましくは3〜7質量部添加することが好ましい。
また核粒子には、複合樹脂発泡粒子の気泡径を均一微細にするためや発泡倍率を向上させるために気泡調整剤を添加することが好ましい。
上記気泡調整剤としては、タルク、炭酸カルシウム、シリカ、酸化チタン、石膏、ゼオライト、ホウ酸亜鉛、水酸化アルミニウム等の無機系気泡調整剤の他、リン酸系核剤、フェノール系核剤、アミン系核剤等の有機系気泡調整剤を用いることができる。なお、気泡調整剤は、単独または2種以上の組み合わせで添加することができる。
上記気泡調整剤は、上記核粒子100質量部に対して、好ましくは3質量部以下、より好ましくは1.5質量部以下、更に好ましくは1質量部以下、さらに好ましくは0.5質量部以下で添加することができる。
細粒状の核粒子は、上記押出機にて核粒子を構成するポリエチレン系樹脂および必要に応じて配合される各種添加剤を溶融混練した後、押出機先端に取り付けた多孔ダイから押出して、ストランドカット方式、ホットカット方式、水中カット方式などにより小粒子にペレタイズして得ることができるが、所望の粒子径、粒子質量のものが得られれば他の方法を用いても良い。
上記核粒子は、これを用いて得られる上記複合樹脂粒子を適度な大きさに調整する観点から、平均粒子径が0.1〜3.0mm、更に0.3〜1.5mmであることが好ましく、平均質量が0.000625〜20mg/個、更に0.02〜2.5mg/個であることが好ましい。
尚、粒子径と粒子質量の調整は、押出機による場合、例えば孔が設けられたダイから溶融樹脂を押し出し、吐出量、カッタースピード等を調節し、目的とする粒子径および長さの樹脂粒子に切断することで行うことができる。
上記ポリエチレン系樹脂粒子(核粒子)は、通常、水等の分散媒体中に懸濁剤と共に懸濁させて懸濁液とする。水性媒体中への分散は、通常、攪拌機を備えた耐圧容器からなる重合装置を用いて行われる。水性媒体としては、脱イオン水などが挙げられる。
上記懸濁剤としては、リン酸三カルシウム、ハイドロキシアパタイト、ピロリン酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化第2鉄、水酸化チタン、水酸化マグネシウム、リン酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、ベントナイト等の微粒子状の無機懸濁剤を用いることができる。また、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の有機懸濁剤を用いることもできる。特に、リン酸三カルシウムやハイドロキシアパタイト、ピロリン酸マグネシウムが好ましく用いられる。これらの懸濁剤は単独で、または2種以上を組み合わせ用いてよい。
上記懸濁重合に使用される懸濁剤の使用量は、懸濁重合系の水性媒体(反応生成物含有スラリーなどの水を含む系内の全ての水をいう)100質量部に対して、通常、固形分量としては0.05〜10質量部、好ましくは0.3〜5質量部である。0.05質量部未満の場合は、上記スチレン系モノマーを懸濁安定化することができずに樹脂の塊状物が発生することがあり、10質量部を超えると製造コストの面から好ましくないだけではなく、粒子径分布が広くなるという問題が生じやすい。
また、上記のとおり分散媒体に添加される界面活性剤としては、たとえば、アルキルスルホン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、αオレフィンスルホン酸ナトリウム、ドデシルフェニルオキサイドジスルホン酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤、;ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のノニオン系界面活性剤;ココナットアミンアセテート、ステアリルアミンアセテートなどのアルキルアミン塩やラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライドなどの第四級アンモニウム等のカチオン系界面活性剤、;ラウリルベタインやステアリルベタインなどのアルキルベタインやラウリルジメチルアミンオキサイド等のアルキルアミンオキサイド等の両性界面活性剤が挙げられる。好ましくは、アニオン系界面活性剤である。更に好ましくは、炭素数8〜20のアルキルスルホン酸アルカリ金属塩(好ましくはナトリウム塩)である。これにより、優れた懸濁安定化の効果が得られる。
また必要に応じて、後述する複合樹脂粒子中のボイドの数を調整するために、例えば酢酸ナトリウム、塩化リチウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム等の無機塩類等からなる電解質を、懸濁重合系の水性媒体(反応生成物含有スラリーなどの水を含む系内の全ての水をいう)100質量部に対して、通常、固形分量として0.01〜0.5質量部、好ましくは0.05〜0.2質量部を加えることができる。
また、上記複合樹脂発泡粒子を型内成形して、粘り強く、曲げや圧縮強度に優れる発泡粒子成形体を得るためには、上記核粒子を懸濁させる水性媒体からなる分散媒体中に水溶性重合禁止剤を添加することが好ましい。
上記水溶性重合禁止剤としては、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸アンモニウム、L−アスコルビン酸、クエン酸などが挙げられる。
水溶性重合禁止剤としては、上記核粒子内に含浸しにくく、水性媒体中に溶解するものを採用することができる。この場合には、核粒子に含浸したスチレン系モノマーの重合は行われるが、この核粒子に吸収されていない水性媒体中のスチレン系モノマーの微小液滴や核粒子に吸収されつつある粒子表面付近のスチレン系モノマーの重合を抑制することができる。その結果、得られる複合樹脂粒子の表面部分は、粒子中心部に比べてポリスチレン系樹脂成分量が少なくなると推察される。
水溶性重合禁止剤の添加量は、水性媒体(反応生成物含有スラリーなどの水を含む系内の全ての水をいう)100質量部に対して0.001〜0.1質量部、好ましくは0.002〜0.02質量部である。0.1質量部を超えると、残存スチレン系モノマーの増加により良好な複合樹脂発泡粒子、発泡粒子成形体が得られなくなる虞がある。
(スチレン系モノマー)
スチレン系モノマーとは、上述にて記載するポリスチレン系樹脂を構成するスチレンモノマー、アクリル酸ブチル、及び必要に応じて添加されるこれらと共重合可能なモノマーの総称である。
核粒子内でスチレン系モノマーを均一に重合させるため、スチレン系モノマーを懸濁液に懸濁後、該懸濁液に懸濁される核粒子に含浸させて重合させることが好ましい。核粒子に含浸させて重合させると、重合と共に架橋が生じる。該重合には、重合開始剤、必要により架橋剤を用いてよい。重合開始剤および/または架橋剤は、スチレン系モノマーに溶解しておくことが好ましい。
尚、モノマーの重合過程において、ポリエチレン系樹脂の架橋が生じる場合があり、本明細書において「重合」は「架橋」を含む場合がある。
また、スチレン系モノマーには、懸濁液に添加する前に上述するハロゲン系難燃剤を溶解させるが、該ハロゲン化難燃剤以外にも、必要に応じて、グリセリントリステアレート、グリセリントリオクトエート、グリセリントリラウレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノステアレート、ブチルステアレート等の脂肪酸エステル、グリセリンジアセトモノラウレート等のアセチル化モノグリセライド、硬化牛脂、硬化ひまし油等の油脂類、流動パラフィン等の非揮発性可塑剤物質、パラ−t−ブチルカテコール、ハイドロキノン、ベンゾキノンなどの油溶性重合禁止剤などを添加してもよい。
上記重合開始剤としては、スチレン系モノマーの懸濁重合法に用いられるものであれば、特に制限はなく、例えば、スチレン系モノマーに可溶で、10時間半減期温度が50〜120℃である、クメンヒドロキシパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキソイソプロピルカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイドなどの有機過酸化物や、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物などを用いることができる。これらの重合開始剤は1種類または2種類以上組み合わせて用いることができる。特に、複合樹脂粒子中のスチレン、トルエン、キシレン及びエチルベンゼンの総含有量を減量するためには、10時間半減期温度の異なるt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートとt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、またはベンゾイルパーオキサイドとt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートとt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネートを組み合わせてみ用いることが好ましい。
重合開始剤の使用量は、重合開始剤の種類により異なるが、スチレン系モノマー100質量部に対して、0.01〜3質量部が好ましい。
また、好ましい架橋剤としては、重合温度では分解せず、架橋温度で分解するものである。例えば、ジクミルパーオキサイド、2,5−t−ブチルパーベンゾエート、1,1−ビス−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン等の過酸化物が挙げられ、これらは単独または2種類以上併用して用いられる。架橋剤の配合量は、スチレン系モノマー100質量部に対して0.1〜5質量部であることが好ましい。重合開始剤と架橋剤は、同じ化合物であることもあり得る。
また、気泡調整剤として、メタクリル酸メチル系共重合体、ポリエチレンワックスや、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミドなどの脂肪族モノアミド、メチレンビスステアリン酸、エチレンビスステアリン酸アミドなどの脂肪族ビスアミド、タルク、シリカ、シリコーンなどを用いることができる。この場合、スチレン系モノマー100質量部に対して0.01〜2質量部用いることが好ましい。
スチレン系モノマーおよびハロゲン系難燃剤、必要に応じて重合開始剤、架橋剤などの添加剤の懸濁液への添加は、一括して行っても良いし、分割して行っても良い。
また重合温度は、使用する重合開始剤の種類によって異なるが、60〜105℃が好ましい。また架橋温度は、使用する架橋剤の種類によって異なるが、100〜150℃が好ましい。特に、複合樹脂粒子中のスチレン、トルエン、キシレン及びエチルベンゼンの総含有量を減量するためには、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートとt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、架橋剤としてジクミルパーオキサイドを用いる場合、重合は80℃で5時間以上、架橋は125℃で5時間以上行うことが好ましい。
発泡剤含浸工程、発泡工程:
上記改質工程における重合中および/または重合後に物理発泡剤を複合樹脂粒子に含浸させ、上記発泡工程においては、上記物理発泡剤が含浸された発泡性複合樹脂粒子を加熱し発泡させて複合樹脂発泡粒子を得るか、あるいは、発泡剤含浸工程および発泡工程として、上記複合樹脂粒子を耐圧容器内の分散媒体中にて物理発泡剤とともに分散させ、該物理発泡剤を複合樹脂粒子に含浸させ、複合樹脂粒子を加熱軟化状態で分散媒と共に該耐圧容器から放出して発泡させて複合樹脂発泡粒子を得る。
好ましい発泡剤含浸工程および発泡工程としては、上記複合樹脂粒子と物理発泡剤とを密閉容器内で水等の分散媒体に分散させ、攪拌下に加熱して複合樹脂粒子を軟化させるとともに複合樹脂粒子に物理発泡剤を含浸させる。その後、物理発泡剤を含浸した軟化状態の複合樹脂粒子を上記密閉容器内より低圧下(通常、大気圧下)に放出して発泡させる方法が挙げられる。
好ましく例示される複合樹脂発泡粒子を得るための含浸工程および発泡工程において、密閉容器内の内容物を密閉容器から低圧域に放出する際には、使用した物理発泡剤あるいは窒素、空気等の無機ガスで密閉容器内に背圧をかけて該容器内の圧力が急激に低下しないようにして、内容部を放出することが好ましい。この場合には、得られる複合樹脂発泡粒子の見掛け密度をより均一にすることがきる。
(物理発泡剤)
上記物理発泡剤としては、プロパン、ブタン、ペンタン等の有機物理発泡剤を用いることも可能であるが、二酸化炭素、窒素、空気などの無機物理発泡剤を用いることが好ましい。無機物理発泡剤を使用し、発泡剤を含む複合樹脂粒子を上記分散媒と共に放出する発泡方法を採用すると、複合樹脂中に存在し得るスチレンモノマー、トルエン、キシレン、およびエチルベンゼンなどのVOCが、発泡粒子外に除去され、発泡粒子成形体におけるこれらの総合含有量を低下させる作用が期待される。
有機物理発泡剤を使用する場合には、最終的に得られる発泡粒子成形体に残存する量が、耐熱性などの観点から1質量%以下(0を含む)となるように留意することが好ましく、より好ましくは0.5質量%以下(0を含む)であり、さらに好ましくは0.1質量%以下(0を含む)である。
上記物理系発泡剤の使用量は、目的とする複合樹脂発泡粒子に望まれる見掛け密度、基材樹脂の組成、または物理発泡剤の種類等を考慮して決定してよい。概ね、上記複合樹脂粒子100質量部に対し、0.5〜30質量部の物理発泡剤を用いることが好ましい。
また、無機系物理発泡剤と有機系物理発泡剤とを併用する場合には、物理発泡剤100質量%において、無機系物理発泡剤を50質量%以上100質量%未満の範囲で用いることが好ましく、特に、二酸化炭素を物理発泡剤100質量%において50質量%以上100質量%未満の範囲となるよう用いることが好ましい。
(分散媒体)
上記複合樹脂発泡粒子の製造に際して、上記複合樹脂粒子を分散させる分散媒体としては、上記複合樹脂粒子を溶解させない分散媒体を使用することができる。このような分散媒体としては、例えばエチレングリコール、グリセリン、メタノール、エタノール等を用いることができるが、好ましくは水が用いられる。
(分散剤)
上記分散媒体中には、必要に応じて、上記複合樹脂粒子が分散媒体中に均一に分散するように、酸化アルミニウム、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、酸化亜鉛、およびカオリンなどの難水溶性無機物質等の分散剤、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルカンスルホン酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤等の分散助剤を分散させることが好ましい。
上記複合樹脂発泡粒子を製造する際に分散媒体中に添加される分散剤の量は、上記複合樹脂粒子の質量を基準として決定することができ、上記複合樹脂粒子の質量と分散剤の質量との比率(上記複合樹脂粒子の質量/分散剤の質量)を20〜2000とすることが好ましく、30〜1000とすることがより好ましい。
また分散剤の質量と分散助剤の質量との比率(分散剤の質量/分散助剤の質量)は、0.1〜500とすることが好ましく、1〜50とすることがより好ましい。
(複合樹脂発泡粒子の見掛け密度、平均気泡径)
上記複合樹脂発泡粒子は、見掛け密度が10〜500kg/m、平均気泡径が50〜500μmであることが好ましい。より好ましくは、平均気泡径は80〜300μmがよく、さらに好ましくは100〜250μmがよい。
上記平均気泡径が50μm未満の場合には、上記発泡粒子の見掛け密度にもよるが、気泡を構成する気泡膜の厚みが小さくなる傾向がある。そして、基材樹脂のモルフォロジーにもよるが、ポリエチレン系樹脂を主成分とする連続相中にスチレン系樹脂を主成分とする分散相が分散されてなる複合樹脂を基材樹脂とする場合、気泡膜の表面に上記ポリスチレン系樹脂が露出する確率が高くなる。上記ポリスチレン系樹脂が露出すると、発泡粒子の型内成形時の加熱により破泡が起こり易くなる。この傾向は、特に発泡粒子が高発泡倍率になるほど顕著になる。発泡粒子が低発泡倍率の場合には、平均気泡径が50μm未満であっても成形が可能となる場合があるが、金型再現性を安定させるためには、低発泡倍率でも平均気泡径は50μm以上であることが好ましい。
一方、上記平均気泡径が500μmを超える場合には、得られる発泡粒子成形体の強度が低下したり、難燃性が悪化する虞がある。
上記見掛け密度は、例えば基材樹脂の組成、発泡条件(温度、圧力)、発泡剤の量等を調整することにより制御することができる。
また、上記複合樹脂発泡粒子の平均気泡径は、発泡温度、物理発泡剤の含浸量、複合樹脂粒子中のボイドの数、及び核粒子に分散する気泡調整剤の種類と量等を総合的に調整することにより制御することができる。例えば、発泡温度を高く設定することは基本的に気泡径が大きくなる方向に作用し、物理発泡剤の含浸量を多くすることは気泡径が小さくなる方向に作用する。また、複合樹脂粒子中のボイド数は少ないほど気泡が大きくなる傾向があるが、発泡倍率は小さくなる傾向がある。一方、ボイド数が多くなると、高発泡倍率の複合樹脂発泡粒子を得やすくなるが、気泡が細かくなる傾向にある。核粒子に添加する気泡調整剤に関しては添加量を多くすると気泡は細かくなる傾向にある。
尚、複合樹脂発泡粒子の平均気泡径は、次のようにして測定することができる。
まず、複合樹脂発泡粒子を略分割し切断面を走査型電子顕微鏡にて写真を撮影する。得られた断面写真において、発泡粒子切断面の中心付近から八方向に等間隔に直線を引き、その直線と交わる気泡の数を全てカウントし、該直接の合計長さをカウントされた気泡数で除して得られた値を発泡粒子の気泡径とする。この操作を多数(少なくとも30個以上)の発泡粒子について行い各発泡粒子の気泡径の算術平均値を平均気泡径とする。尚、上記各発泡粒子の気泡径の測定において、該直線と一部でも交わる気泡もカウントすることとする。また、上記測定において発泡粒子切断面の中心付近から八方向に等間隔に直線を引く理由としては、直接が発泡粒子切断面の中心付近から八方向に等間隔に引かれるものであれば、測定あれる気泡の形状が、仮に発泡粒子切断面上で方向によって異なるものであっても、平均的な気泡径の値を安定的に得られるからである。
養生工程、二段発泡工程:
尚、上述の方とおり得られた複合樹脂発泡粒子には、通常行われる大気圧下での養生工程を行うことができる。
次いで、必要に応じて加圧用の密閉容器に充填された空気等の加圧気体により加圧処理して複合樹脂発泡粒子内の圧力を0.01〜0.6MPa(G)に調整した後、該複合樹脂発泡粒子を該容器内から取出して、飽和水蒸気、熱風、飽和水蒸気と空気の混合物、及び温水などを用いて加熱する。これにより、より見掛け密度の低い複合樹脂発泡粒子とすることができる(以下、この工程を二段発泡ということがある。)
成形工程:
上述のとおり得られた複合樹脂発泡粒子を、車両用衝撃吸収部材に用いられる発泡粒子成形体として所望の形状の金型キャビティ内に充填し、金型キャビティ内に加圧水蒸気などの加熱媒体を吹き込んで加熱することにより、充填された複合樹脂発泡粒子をさらに発泡させるとともに、互いを融着させて所望の形状に成形し、金型を冷却して取出し、発泡粒子成形体を得ることができる。
本実施例では、特に断りがない限り、ポリエチレン系樹脂粒子(核粒子)を水性媒体中に懸濁させた懸濁液中に、アクリル酸ブチルを含むスチレン系モノマー、ハロゲン系難燃剤、重合開始剤を添加し、上記核粒子に該スチレン系モノマー等を含浸させ、スチレン系モノマーを重合反応を生じさせて複合樹脂粒子を得る改質工程を実施し、次いで、上記複合樹脂粒子を耐圧容器内の分散媒体中にて、無機物理発泡剤である二酸化炭素とともに分散させ、二酸化炭素を複合樹脂粒子に含浸させる発泡剤含浸工程を実施、該二酸化炭素を含浸した発泡性複合樹脂粒子を加熱軟化状態で該耐圧容器から分散媒と共に放出して発泡させる発泡工程により複合樹脂発泡粒子を製造し、該複合樹脂発泡粒子を型内成形して発泡粒子成形体を製造し、これを車両用衝撃吸収部材とすることを基本的な製造の流れとした。
以下に、詳細に示す実施例および比較例にて得られたポリスチレン系樹脂のガラス転移温度(Tg)、発泡粒子成形体におけるスチレン、トルエン、キシレン、およびエチルベンゼンの総含有量、12.7mm厚サンプル燃焼速度、切り出しサンプル燃焼速度、耐熱性、50%圧縮応力の評価を行い、表1または表2に示した。尚、表中、ポリエチレン系樹脂をPE、アクリル酸ブチルが共重合したポリスチレン系樹脂をPS、アクリル酸ブチルをBAと省略する。
[実施例1]
ポリエチレン系樹脂粒子(核粒子)の製造:
酢酸ビニル成分含量が15質量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製、商品名:ウルトラセン625)5kg、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(東ソー(株)製、商品名:ニポロン9P51A)15kg、およびホウ酸亜鉛(富田製薬(株)製、ホウ酸亜鉛2335、平均粒子径:6μm)0.144kgをヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株)製;型式:FM−75E)に投入し、5分間混合した。次いで、この樹脂混合物を押出機(アイケージー(株)製、型式:MS50−28;50mmφ単軸押出機、マドックタイプのスクリュ)にて230〜250℃で溶融混練後、押出し、水中カット方式により0.4〜0.6mg/個(平均0.5mg/個)のポリエチレン系樹脂粒子(核粒子)を得た。
複合樹脂粒子の製造(改質工程):
攪拌装置の付いた内容積が1000リットルのオートクレーブに、脱イオン水506kgを入れ、更にピロリン酸ナトリウム3kgを加えて溶解させた後、粉末状の硝酸マグネシウム・6水和物6.5kgを加え、室温で30分攪拌して懸濁剤としてピロリン酸マグネシウムスラリーを合成した。ピロリン酸マグネシウムスラリーを合成後、この反応生成物スラリーに界面活性剤としてラウリルスルホン酸ナトリウム(10質量%水溶液)0.63kg、水溶性重合禁止剤として亜硝酸ナトリウム0.152kg、上記ポリエチレン系樹脂粒子75.9kgを投入した。次いで、重合開示剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日本油脂社製、商品名:「パーブチルO」)0.65kgと、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(日本油脂社製、商品名:「パーブチルE」)0.87kg、及び架橋剤としてジクミルパーオキサイド(日本油脂社製、商品名:「パークミルD」)0.09kg、ハロゲン系難燃剤としてビス[3,5−ジブロモ−4−(2,3−ジブロモプロポキシ)フェニル]スルホン(鈴裕化学社製、商品名:「ファイアカットP−65CN(FCP−65CN)」)5.44kgを、スチレン系モノマーとしてのスチレン174.4kg及びアクリル酸ブチル2.5kgに溶解させ、105rpmで攪拌しながらオートクレーブに投入した。
次いで、オートクレーブ内を窒素置換した後、昇温を開始し、1時間半かけて87℃まで昇温した。
そして87℃到達後、その状態を30分間保持した後、攪拌速度を95rpmに下げ、80℃まで30分かけて冷却した。80℃に冷却後、80℃で5時間保持した後、125℃まで4時間かけて昇温し、そのまま125℃で5時間保持した。その後、30℃まで約6時間かけて冷却した。冷却後、内容物を取出し、硝酸を添加し複合樹脂粒子の表面に付着したピロリン酸マグネシウムを溶解させた後、遠心分離機で脱水・洗浄し、気流乾燥装置で表面に付着した水分を除去し、平均粒子径が1.5mmの複合樹脂粒子を得た。
複合樹脂発泡粒子の製造(含浸工程、発泡工程):
上述する改質工程で得た発泡樹脂粒子100kgを分散媒体である水220リットルと共に攪拌機を備えた400Lの耐圧容器内に仕込み、更に分散媒体中に、分散剤としてのカオリン240g、及び界面活性剤としてのアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム60gを添加した。次いで、300rpmで攪拌しながら表1に示す発泡温度まで昇温した後に耐圧容器内に無機系物理発泡剤としての二酸化炭素を4.0MPa圧入し攪拌下で15分間保持した。その後、二酸化炭素の背圧で耐圧容器内の圧力を4.0MPaに保ちながらバルブを開放して発泡粒子を配管を通して遠心脱水機に送った。この時、脱水機内はスチームで95℃以上に保持し、間接送粒によって受け網槽に送粒することで見掛け密度49kg/mの複合樹脂発泡粒子を得た。
複合樹脂発泡粒子の見掛け密度:
上記複合樹脂発泡粒子の見掛け密度は、下記方法により求めた。
温度23℃の水の入ったメスシリンダーを用意し、約500mlの複合樹脂発泡粒子群(該複合樹脂発泡粒子群の質量W1)を金網などの道具を使用して沈める。そして、金網などの道具の体積を考慮して、水位上昇分より読み取られる複合樹脂発泡粒子群の体積V1(cm)を測定し、メスシリンダーに入れた複合樹脂発泡粒子の質量W1(g)を体積V1で除する(W1/V1)ことにより、複合樹脂発泡粒子の見掛け密度(kg/m)を求めた。尚、本実施例および比較例では、いずれも、発泡粒子の見掛け密度を49kg/mに設計し、得られた複合樹脂発泡粒子について見掛け密度を測定したところ、設計どおりの見掛け密度が示されたことを確認した。
成形工程1:
上述のとおり得た複合樹脂発泡粒子を、図1〜図3に示す形状を有し、図3に示すA(天板最小厚み)が7.5mm、E(凸部幅)が15mm、C(全体厚み)が30mm、D(凸部間距離)が15mmの形状を有する成形体を成形するための金型のキャビティに充填率110%で充填し、表1に示す元圧(成形蒸気圧)のスチームを成形キャビティ内に15秒間導入して、発泡粒子を加熱して発泡させると共に互いに融着させて型内成形を行った。加熱終了後水冷を行い、面圧が0.01MPa(ゲージ圧)まで低下したときに金型を開き成形体を離型して見掛け密度33kg/mの成形体を得て実施例1サンプル1とした。なお、上記成形蒸気圧は、表面平滑性が目視で良好と判断でき、かつ内部融着率が80%以上の発泡粒子成形体を得るために最低限必要なスチームの圧力である。尚、凸部先端の面積である受圧面積は、凹凸構造部の設けられた領域の面積に対し、約50%となるよう設計した。
成形工程2:
本発明の評価のために、上述で得られた複合樹脂発泡粒子を用いて、成形工程1とは異なる金型を用いたこと以外は同様の方法で、成形体を得て、実施例1サンプル2とした。なお金型は、縦700mm×横200mm×厚み50mmの平板成形用金型を用いた。
[実施例2〜7、比較例1〜5]
重合開始剤である上記パーブチルEの添加量(表中、実際に添加した重量(kg)として示す)、用いたハロゲン系難燃剤種類、およびハロゲン系難燃剤の配合量(表中、複合樹脂発泡粒子100質量部に対するハロゲン系難燃剤の質量部として表示)、アクリル酸ブチル成分単位の含有量(表中、アクリル酸ブチルが共重合したポリスチレン系樹脂100質量%におけるアクリル酸ブチル換算の質量%として示す)、複合樹脂発泡粒子を製造する際の発泡温度、型内成形時における成形蒸気圧を、表1または表2に示す内容とすること以外は、実施例1と同様の方法および条件にて発泡粒子成形体を製造し、これをそれぞれ実施例2〜7、および比較例1〜5のサンプル1、サンプル2とした。
上述で得られた実施例1〜7および比較例1〜5の発泡粒子成形体について、60℃の雰囲気下で12時間養生した後、さらに23℃、相対湿度50%の雰囲気下で24時間成形体の状態調節を行った後、下記のとおり評価を行なった。評価結果は、表1、表2にそれぞれ示す。尚、薄物サンプル燃焼速度試験に各実施例、比較例のサンプル1を使用した以外は、いずれの評価もサンプル2を用いて行なった。
ポリスチレン系樹脂成分のガラス転移温度(Tg)測定:
まず、150メッシュの金網袋中に複合樹脂粒子1.0gを入れた。次に、丸型フラスコ200mlにキシレン約200mlを入れ、上記金網袋に入れた複合樹脂粒子のサンプルをソックスレー抽出管にセットした。マントルヒーターで8時間加熱することによりソックスレー抽出を行なった。ここで抽出したキシレン溶液をアセトン600mlへ投下し、デカンテーション及び減圧蒸発乾固を行い、アセトン可溶分としてポリスチレン系樹脂成分を得た。
得られたポリスチレン系樹脂成分2〜4mgについて、示差走査熱測定を行なった。示差走査熱測定は、ティ・エイ・インスツルメント社製のQ1000型DSC測定器を用い、JIS K7121(1987年)に従って行なった。そして、加熱速度10℃/分の条件で得られるDSC曲線の中間点ガラス転移温度を求め、これをポリスチレン系樹脂成分のガラス転移温度(Tg)とした。
発泡粒子成形体におけるスチレン、トルエン、キシレン、およびエチルベンゼンの総含有量の測定:
サンプル1から約1gの試験片を切出し、該試験片を精秤した後、該試験片をジメチルホルムアミド25mlに溶解させ、ガスクロマトグラフィにてスチレンモノマー、トルエン、キシレン、およびエチルベンゼンの含有量を総量として測定した。
尚、ガスクロマトグラフィの測定条件は、使用機器:(株)島津製作所製のガスクロマトグラフィGC−9A、カラム充填剤:<液相名>PEG−20M、<液相含浸率>25重量%、<担体粒度>60/80メッシュ、カラム材質:内径3mm、長さ3000mmのガラスカラム、キャリーガス:N、検出器:FID(水素炎イオン化検出器)、定量:内部標準法である。
難燃性評価:
(1)12.7mm厚サンプル燃焼速度測定試験
各実施例、比較例におけるサンプル2から、340mm×102mm×12.7mmのサイズの試験片を切り出した。該試験片を用い、FMVSS No.302の燃焼試験に準じて燃焼速度を測定した。
(2)薄物サンプル燃焼速度測定試験
各実施例、比較例におけるサンプル1を用い、340mm×102mmのサイズに切り出し、さらに凸部の一部を切削して全体厚み12.7mmであって、7.5mmの薄肉部(即ち天板10の最小厚みA部分)を含む試験片を作成した。該試験片を用い、FMVSS No.302の燃焼試験に準じて燃焼速度を測定した。この測定を3個の試験片に対して行って燃焼速度の相加平均値を求め、この燃焼速度の平均値を基に難燃性を以下の基準にて評価した。
燃焼速度80mm/min未満・・・・難燃性良好(○)
燃焼速度80mm/min以上100mm/min以下・・・・難燃性不十分(△)
燃焼速度100mm/minを超える・・・・難燃性不良(×)
耐熱性評価:
各実施例、比較例におけるサンプル2から、150mm×150mm×25mmのサイズの試験片を切り出した。該試験片をさらに温度23℃で一日以上安置した後、ノギスで縦、横各部位の寸法を測定した。次いで、寸法測定後の試験片を80℃一定のオーブンで240時間加熱し、その後、温度23℃で一日安置した後に加熱前と同じ箇所の寸法を測定し、縦と横それぞれの加熱寸法変化率を次の式から算出し、この縦横の相加平均値を加熱寸法変化率とした。
加熱寸法変化率(%)=「80℃加熱前の成形体寸法−80℃加熱後の成形体の寸法」×100/「80℃加熱前の成形体寸法」
この測定を3個の試験片に対して行って、加熱寸法変化率の相加平均値を求め、この加熱寸法変化率の平均値が±1.0%以内の場合を耐熱性良好(○)、その範囲を超えて変形した場合を耐熱性不良(×)として評価した。
圧縮強さ(kPa)測定:
各実施例、比較例におけるサンプル2から、50mm×50mm×25mmのサイズの試験片を切り出した。該試験片を用い、JIS K7220(2006年)に準じて圧縮試験を行った。尚、圧縮歪が50%のときの圧縮応力を50%圧縮応力とし、250kPa以上を圧縮強さ良好(○)、250kPa未満を圧縮強さ不充分(×)として評価した。また、表中、実測値も合わせて示す。
発泡粒子成形体の見掛け密度の測定:
各実施例および比較例のサンプル2について、外形寸法から体積を求め、次いで、各実施例および比較例のサンプル2の質量を測定し、該質量を上述で求めた体積で除し、単位換算することによりサンプル2の見掛け密度(kg/m)を算出した。
表1、2に示されるように、実施例1〜7の発泡粒子成形体は、いずれも難燃性、耐熱性、圧縮強度に優れることが確認された。
一方、比較例1〜5は、難燃性、耐熱性、圧縮強度の少なくともいずれかにおいて、不充分な評価が示された。
また、PS中のBA含有量の観点で、実施例1と実施例3、実施例2と実施例4、比較例1と比較例4と、比較例2と比較例3とに着眼すると、それぞれの組み合わせにおいて、含有される難燃剤の量は同じであるが、BAを含有しない、あるいはBAの含有量が少ない実験区よりも、適切な範囲で添加されたBAを含有する実験区の方が、難燃性が向上していることが確認された。
Figure 0005912735
Figure 0005912735
1 車両用衝撃吸収部材
10 天板
11 中央平坦面部
12 後部平坦面部
16 凹凸構造部
17 凸部
18 凹部
A 天板10の最小厚み
B 凸部17の高さ
C 天板10の全体厚み
D 凸部17間の距離
E 凸部17の幅方向の厚み

Claims (3)

  1. 凹凸構造部を備える合成樹脂発泡粒子成形体を用いてなる車両用衝撃吸収部材であって、上記発泡粒子成形体は、最小厚みが10mm未満の薄肉部を有しており、
    上記発泡粒子成形体が、50〜80質量部のポリスチレン系樹脂成分と20〜50質量部のポリエチレン系樹脂成分とから構成される複合樹脂(ただし、両者の合計が100質量部である。)を基材樹脂とすると共に、難燃剤を含み、
    上記ポリスチレン系樹脂には、アクリル酸ブチル成分単位が共重合成分として含まれており、該ポリスチレン系樹脂100質量%における、アクリル酸ブチル成分単位の含有量が1質量%以上3質量%未満であり、
    上記難燃剤として、2級または3級ハライドを含み、且つ、50%分解温度が290〜350℃のハロゲン系難燃剤が、上記発泡粒子成形体の基材樹脂100質量部に対して1.5質量部以上3質量部以下配合されており、
    上記発泡粒子成形体のスチレン、トルエン、キシレン及びエチルベンゼンの総含有量が1000質量ppm以下であり、
    FMVSS No.302の燃焼試験に準じて測定された燃焼速度が80mm/min未満である、
    ことを特徴とする車両用衝撃吸収部材。
  2. 上記ハロゲン系難燃剤の50%分解温度が、330〜350℃であることを特徴とする請求項1に記載の車両用衝撃吸収部材。
  3. 上記発泡粒子成形体の見掛け密度が35kg/m以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用衝撃吸収部材。
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