JP5907799B2 - 湯種及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、湯種及びその製造方法に関する。特に、本発明は、離水が有意に抑制されてなる湯種及びその製造方法に関する。また、本発明は、離水が有意に抑制された湯種を用いて製造されるベーカリー製品用生地及びベーカリー製品に関する。また、本発明は、湯種の離水抑制方法に関する。
今日、ソフトでありながらもしっとり感やもちもち感のある独特な食感を有するパン等のベーカリー製品を製造する方法として、湯種製法が広く知られている。湯種製法は、パン等を製造するにあたり、原材料の一つとして使用される澱粉質原料の一部を先に熱湯等とともに混捏して「湯種」を調製し、得られた湯種を残りの原材料とともに混捏、発酵、加熱等することによってベーカリー製品を製造する方法である。湯種製法は例えば特許文献1に開示されており、特許文献1に記載される「中麺」が湯種に相当する。
特許第3080368号公報
本発明者らは、湯種の保存時、特に冷蔵保存や冷凍保存時に、湯種において離水が生じることに気づいたが、湯種の離水を抑制するための手段はこれまでに報告されていない。
そこで、本発明は、離水が有意に抑制されてなる湯種、当該湯種を製造する方法を提供することを目的とする。また、本発明は、離水が有意に抑制された湯種を用いて製造されるベーカリー製品用生地及びベーカリー製品を提供することを目的とする。また、本発明は、湯種の離水抑制方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねていたところ、湯種の製造時にマルトジェニックα−アミラーゼを用いることにより、湯種において生じる離水を抑制できることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成されたものである。すなわち、本発明は、下記に掲げる発明を提供する。
(I)湯種及び湯種の製造方法
項I−1.マルトジェニックα−アミラーゼを含有することを特徴とする湯種。
項I−2.更に澱粉質を含有する、項I−1に記載の湯種。
項I−3.澱粉質が、穀物、穀粉、澱粉質を含む穀物以外の植物種子、種子粉、澱粉質を含む植物体(野菜を含む)、植物体粉、澱粉、及び加工澱粉からなる群より選択される少なくとも1種である、項I−2に記載の湯種。
項I−4.穀物が小麦、米、大麦、ともろこし;穀粉が小麦粉(例えば、強力粉、薄力粉、小麦全粒粉)、コーンフラワー、米粉;澱粉質を含む植物種子が豆、そば;種子粉が大豆粉、そば粉;澱粉質を含む植物体が芋、ワラビ;植物体粉が馬鈴薯粉、ワラビ粉;澱粉がコーンスターチ、緑豆澱粉、馬鈴薯澱粉、葛粉;加工澱粉がタピオカエーテル化澱粉、小麦アルファ化澱粉であり、これらからなる群より選択される少なくとも1種である、I−2またはI−3に記載の湯種。
項I−5.澱粉質が穀粉である項I−2〜I−4のいずれかに記載の湯種。
項I−6.澱粉質が小麦粉及び米粉からなる群より選択される少なくとも1種である項I−2〜I−5のいずれかに記載の湯種。
項I−7.冷凍及び/または冷蔵されてなる項I−1〜I−6のいずれかに記載の湯種。
項I−8.マルトジェニックα−アミラーゼ存在下で澱粉質原料を混捏する工程を有する、項I−1〜I−7のいずれかに記載する湯種の製造方法。
(II)ベーカリー製品用生地及びベーカリー製品用生地の製造方法
項II−1.項I−1〜I−7のいずれかに記載の湯種、または、項I−8に記載の製造方法により製造される湯種を原料として製造されるベーカリー製品用生地。
項II−2.項I−1〜I−7のいずれかに記載の湯種、または、項I−8に記載の製造方法により製造される湯種を原料として、これに澱粉質原料を混捏して製造される、項II−1に記載のベーカリー製品用生地。
項II−3.ベーカリー製品用生地がパン類、パン類乾燥品、ケーキ類、ワッフル、シュー、ドーナツ、揚げ菓子、パイ、ピザ、及びクレープからなる群より選択される少なくとも1つのベーカリー製品用である、II−1または項II−2に記載のベーカリー製品用生地。
(III)ベーカリー製品及びベーカリー製品の製造方法
項III−1.項II−1〜項II−3のいずれかに記載のベーカリー製品用生地を、加熱処理して製造されるベーカリー製品。
項III−2.加熱処理が焼成、蒸す、蒸し焼き、及び油ちょうからなる群より選択される少なくとも1つの処理である、項III−1に記載のベーカリー製品。
項III−3.ベーカリー製品がパン類、パン類乾燥品、ケーキ類、ワッフル、シュー、ドーナツ、揚げ菓子、パイ、ピザ、及びクレープからなる群より選択される少なくとも1つである、項III−1または項III−2に記載のベーカリー製品。
(IV)湯種の離水抑制方法
項IV−1.マルトジェニックα−アミラーゼ存在下で澱粉質原料を混捏することを特徴とする湯種の離水抑制方法。
項IV−2.湯種の冷凍及び/または冷蔵に伴う離水を抑制する、項IV−1に記載の離水抑制方法。
本発明によれば、湯種の製造時にマルトジェニックα−アミラーゼを用いることにより、湯種の保存時、特に冷蔵保存や冷凍保存時に湯種において生じる離水を抑制できる。また、本発明の湯種は離水が有意に抑制されており、特に、湯種の冷蔵や冷凍に伴い生じる離水が有意に抑制されている。
このように、本発明によれば湯種における離水を有意に抑制できることから、湯種において所定量の水分が保持され、湯種自体の品質が一層均一となり安定する。そして、湯種自体の品質が安定することから、その後のベーカリー製品用生地や最終的に得られるベーカリー製品の品質の安定性、ひいては、ベーカリー製品における独特の食感といった湯種の効果も向上できる。このため、本発明の湯種は、工業的に生産されるベーカリー製品用生地やベーカリー製品に適した湯種として有用である。
(1)湯種及び湯種の製造方法
(1−1)湯種
本発明の湯種は、マルトジェニックα−アミラーゼを含有することを特徴とする。 本発明において対象とする湯種は、パン等のベーカリー製品を製造する方法として広く知られている湯種製法(湯捏製法ともいう)の過程で製造される、澱粉の一部がα化されてなる湯種である。湯種製法とは、ベーカリー製品の原材料の一つとして使用される澱粉質原料の一部を先に水等とともに所望の温度で混捏して湯種を製造し、得られた湯種と残りの原材料とをともに混捏、発酵、加熱等することによってベーカリー製品を製造する公知の方法である。
本発明においてマルトジェニックα−アミラーゼはデンプンをマルトース(α型)単位で切断する酵素である。マルトジェニックα−アミラーゼは市販されており、市販品の例として商品名ノバミル(Novamyl)(登録商標)10000BG(ノボザイムズジャパン社製)、マルトゲナーゼ(Maltogenase)(登録商標)(ノボザイムズジャパン社製)が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の湯種においてマルトジェニックα−アミラーゼの含有量は本発明の効果が得られる限り制限されず適宜設定すればよいが、湯種中、マルトジェニックα−アミラーゼの含有量は0.00001〜0.5重量%、好ましくは0.0002〜0.3重量%、より好ましくは0.0005〜0.05重量%が例示される。
本発明において湯種は離水が抑制されてなるものであり、後述する実施例から明らかなように、湯種がマルトジェニックα−アミラーゼを含有する場合に、その離水が明らかに抑制される。このことから、本発明の湯種は、マルトジェニックα−アミラーゼを用いていない湯種と比較して、その離水が抑制されているものといえる。離水が抑制されているかどうか、また、離水の程度は、後述する実施例に記載の測定方法等を用いて、適宜測定できる。
また、本発明の湯種かどうかについては、湯種中にマルトジェニックα−アミラーゼが存在しているか否かで判断することができ、湯種中にマルトジェニックα−アミラーゼが存在している場合には本発明の湯種と判断できる。湯種中にマルトジェニックα−アミラーゼが存在しているか否かは、例えば従来公知の酵素検出・測定法やタンパク質検出・測定法などの方法によって測定すればよい。例えば、マルトジェニックα−アミラーゼの酵素活性を測定する方法のほか、マルトジェニックα−アミラーゼに特異的に結合できる物質(例えばマルトジェニックα−アミラーゼ対する抗体)を蛍光物質または酵素で標識して、当該標識された物質を湯種中のマルトジェニックα−アミラーゼと結合させて、得られた蛍光強度や酵素活性を指標として、湯種中のマルトジェニックα−アミラーゼの存否を確認することができる。本発明の湯種中のマルトジェニックα−アミラーゼの含有量は、必要に応じて、当該標識された物質を用いて測定すればよい。また、このほかの例として検出、測定には質量分析法(例えば飛行時間型質量分析法:TOFMS)など、従来公知の種々の方法を用いればよい。
なお、本発明が対象とする「ベーカリー製品」とは、澱粉質原料を主材料として焼成、蒸す、蒸し焼き、及び油ちょう等の加熱処理をして製造される加工食品であり、例えばパン類、パン類乾燥品、ケーキ類、ワッフル、シュー、ドーナツ、揚げ菓子、パイ、ピザ、クレープ等が挙げられる。パン類としては、食事パン(例えば食パン、ライ麦パン、フランスパン、乾パン、バラエティブレッド、ロールパン等)、調理パン(例えばホットドッグ、ハンバーガー、ピザパイ等)、菓子パン(例えばジャムパン、アンパン、クリームパン、レーズンパン、メロンパン、スイートロール、クロワッサン、ブリオッシュ、デニッシュ、コロネ等)、蒸しパン(例えば肉まん、中華まん、あんまん等)、特殊パン(例えばグリッシーニ、マフィン、ナン等)等が例として挙げられる。パン類乾燥品としては、ラスクやパン粉等が例として挙げられる。ケーキ類としては、蒸しケーキ、スポンジケーキ、バターケーキ、ロールケーキ、ホットケーキ、ブッセ、バームクーヘン、パウンドケーキ、チーズケーキ、スナックケーキ等が例として挙げられる。
また、本発明において澱粉質原料とは、澱粉を含む可食性原料を意味する。澱粉質原料には、穀物、穀物の胚乳または当該胚乳を胚芽や表皮を付けた状態で碾いて調製される粉(穀粉);澱粉質を含む穀物以外の植物種子、当該植物種子の胚乳または当該胚乳を胚芽や表皮を付けた状態で碾いて調製される粉(種子粉);澱粉質を含む植物体(野菜を含む)、それを粉状にしたもの(植物体粉);穀物、澱粉質を含む穀物以外の植物種子、澱粉質を含む植物体またはその他の植物体から、澱粉質のみを抽出したもの(澱粉);その加工澱粉がいずれも含まれる。
ここで、「穀物」としては、例えば小麦、米(うるち米、もち米等)、大麦、ライ麦、とうもろこし、あわ、ひえ、はと麦等を挙げることができる。「穀物の胚乳または当該胚乳を胚芽や表皮を付けた状態で碾いて調製される粉(穀粉)」としては、例えば小麦粉(例えば、強力粉、薄力粉、準強力粉、中力粉、全粒粉等)、米粉(上新粉、上用粉、餅粉、白玉粉、玄米粉等)、大麦粉、ライ麦粉、とうもろこし粉、あわ粉、ひえ粉、はと麦粉等が挙げられる。
「澱粉質を含む穀物以外の植物種子」としては、例えば大豆、そばの種子を挙げることができ、これらの「種子の胚乳または当該胚乳を胚芽や表皮を付けた状態で碾いて調製される粉(種子粉)」としては、大豆粉、そば粉等が挙げられる。
「澱粉質を含む植物体(野菜を含む)」としては、例えば馬鈴薯や甘藷などの芋類やワラビ等の野菜が挙げられ、例えば「植物体を粉状にしたもの(植物体粉)」としては、粉末ポテトやワラビ粉等が挙げられる。
「穀物、澱粉質を含む穀物以外の植物種子、澱粉質を含む野菜またはその他の植物体から、澱粉質のみを抽出したもの(澱粉)」としては、例えばコーンスターチ、緑豆澱粉、馬鈴薯澱粉、葛粉等が挙げられる。
「加工澱粉」(天然澱粉に物理的及び/または化学的処理等を施した機能性澱粉)としては、例えば、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉などを原料澱粉として加工処理されたアセチル化アジピン酸架橋デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプン、アセチル化酸化デンプン、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、酢酸デンプン、酸化デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシプロピルリン酸架橋デンプン、リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン、リン酸化デンプン、リン酸架橋デンプン、未変性アルファ化デンプン、変性アルファ化デンプン等が挙げられる。
これらの澱粉質原料は1種単独で使用してもよいし、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
澱粉質原料として好ましくは穀粉、種子粉、植物体粉、澱粉、及び加工澱粉からなる群より選択される少なくとも1種である。澱粉質原料として、より好ましくは穀粉、種子粉、澱粉、及び加工澱粉からなる群より選択される少なくとも1種;さらに好ましくは穀粉、澱粉、及び加工澱粉からなる群より選択される少なくとも1種;特に好ましくは穀粉である。
穀粉として好ましくは小麦粉及び/または米粉であり、これらは、他の澱粉質原料、例えばライ麦粉、とうもろこし粉、馬鈴薯澱粉、加工澱粉などから選択される少なくとも1種と組み合わせて用いることができる。
本発明の湯種は、マルトジェニックα−アミラーゼを含有する限り制限されないが、当該湯種は、マルトジェニックα−アミラーゼ存在下で澱粉質原料を混捏する工程を経て製造できる。このことから、本発明において湯種には澱粉質が含有されており、湯種に含有される澱粉質は、前記澱粉質原料がマルトジェニックα−アミラーゼ存在下で混捏される工程を経て得られた湯種に含まれる前記澱粉質原料由来の澱粉質をいう。従って、本発明の湯種において澱粉質は前述の澱粉質原料に準じ、同様に説明される。
本発明の湯種において澱粉質の含有量は本発明の効果が得られる限り制限されないが、湯種中、澱粉質の含有量は4〜70重量%、好ましくは14〜60重量%、より好ましくは24〜50重量%が例示される。
また、本発明の湯種は前述の通りマルトジェニックα−アミラーゼを含有する限り制限されないが、通常、更に水を含有する。本発明の湯種において水の含有量は本発明の効果が得られる限り制限されないが、湯種中、水は28〜95重量%、好ましくは38〜85重量%、より好ましくは48〜75重量%が例示される。
また、本発明の湯種は、本発明の効果を妨げない限り、前述の成分の他に必要に応じて所望の副材料を含有していてもよい。
副材料の例としては、マルトジェニックα−アミラーゼ以外の酵素類(例えば、マルトジェニックα−アミラーゼ以外のα−アミラーゼ、グルコースオキシダーゼ、リポキシゲナーゼ、グルコアミラーゼ、β−アミラーゼ、イソアミラーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ等)、パン酵母類(例えば、生イースト、ドライイースト、インスタントドライイースト等)、発酵種類(例えば、自家培養発酵種、簡易発酵種、酒種、ルヴァン種、パネトーネ種、ヨーグルト種、サワー種等)、イーストフード(例えば、無機フード、有機フード、酵素系フード等)、油脂類(例えば、ショートニング、ラード、マーガリン、バター、液状油、粉末油等)、糖(例えば、トレハロース、グルコース、フルクトース、ラクトース、砂糖、マルトース、イソマルトース等)、糖アルコール(例えば、ソルビト−ル、マルチトール、パラチニット、還元水飴等)、乳製品(例えば、乳類、粉乳類、クリーム類、チーズ類等)、卵製品、膨脹剤(重曹、炭酸アンモニウム、ベーキングパウダー等)、乳化剤(例えば、レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等)、食塩、調味料(例えば、アミノ酸、核酸等)、保存料、蛋白質、アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン酸等)、香料等が挙げられる。
これらの副材料は、単独で含有されていてもよく、2種以上を混合して含有されていてもよい。本発明の湯種がこれらの副材料を添加する場合、湯種中の副材料の含有量としては、通常0.00001重量%〜20重量%が例示され、好ましくは0.0001重量%〜10重量%が例示される。
(1−2)湯種の製造方法
本発明の湯種は、マルトジェニックα−アミラーゼ存在下で澱粉質原料を混捏する工程(以下、この工程を「湯種製造工程」ともいう)を経て製造できる。
本発明の湯種の製造方法は、このようにして本発明の湯種が製造される限り制限されないが、例えば、好ましくはマルトジェニックα−アミラーゼ存在下で前記澱粉質原料を55〜100℃程度の温度条件で混捏する工程を経て製造され、より好ましくはマルトジェニックα−アミラーゼ存在下で前記澱粉質原料と水との混合物を55〜100℃程度の温度条件で混捏する工程を経て製造される。
ここで、「55〜100℃程度の温度条件で混捏する」とは、混捏中に湯種が少なくとも一回55〜100℃の温度に達する条件で混捏することを意味する。達する温度条件(達温条件)として、より好ましくは60〜85℃程度を挙げることができる。
一例として、55℃〜100℃程度の温度条件で混捏する方法としては、前記水として、温〜熱水を使用してマルトジェニックα−アミラーゼ存在下で澱粉質原料を混捏する方法を例示することができる。かかる温〜熱水の温度としては、前記温度条件で湯種が製造できる温度であれば特に制限されないが、通常70〜100℃程度、好ましくは80〜100℃程度を例示することができる。混捏時間は2〜40分、好ましくは5〜30分が例示され、このうち少なくとも1〜30分、好ましくは3〜20分は55〜100℃の温度に達していることが例示される。
別の例として、55〜100℃程度の温度条件で混捏する他の方法としては、前記水として、常温の水を使用して、マルトジェニックα−アミラーゼ存在下で澱粉質原料を、蒸気、直火、電子レンジ、オーブン等の任意の方法で加熱しながら混捏することにより、混捏中に湯種を少なくとも一回55〜100℃程度の温度状態に達せしめる方法を例示することができる。なお、ここで常温とは、20℃±15℃(5〜35℃)、好ましくは15〜25℃を挙げることができる。混捏時間は5〜50分、好ましくは10〜40分が例示され、このうち少なくとも1〜30分、好ましくは3〜20分は55〜100℃の温度に達していることが例示される。
混捏(練り上げ)は、特に制限されず、定法に従って行うことができる。簡便には、例えば縦型高速ミキサー等の混合機を用いて混捏する方法を挙げることができる。
また、本発明の湯種の製造方法は前述の通り湯種製造工程が実施され且つ離水が防止されてなる湯種が得られる限り制限されないが、前記混捏前に、マルトジェニックα−アミラーゼ存在下で澱粉質原料を、所望の温度で一定時間、酵素分解処理してもよい。酵素分解処理時の温度は使用する酵素や澱粉質原料等の特性に応じて適宜設定すればよく、0〜60℃、好ましくは10〜50℃で、10〜1440分、好ましくは30〜600分が挙げられるがこれらに制限されない。
また、本発明の湯種の製造方法において、例えば澱粉質原料に対して必要に応じて所望の処理を行ってもよく、例えば澱粉質原料として生米や米粉などを使用する場合には、澱粉質原料をマルトジェニックα−アミラーゼと接触させる前に、あらかじめ前記澱粉質原料に対して炊き上げ等の処理を行ってもよい。
また、本発明の湯種の製造方法においては更に加圧加熱処理を行ってもよく、例えば前記混捏後に、得られた混捏物に対して加圧加熱処理を行ってもよい。あるいは、好ましくは室温等の任意の温度下、マルトジェニックα−アミラーゼ存在下で、前記澱粉質原料を混捏して、より好ましくは室温等の任意の温度下、マルトジェニックα−アミラーゼ存在下で、前記澱粉質原料と水とを混捏して、得られた混捏物に対して加圧加熱処理を行ってもよい。この場合、得られた混捏物を加圧加熱処理に耐える素材のものに充填してから加圧加熱処理を行ってもよい。加圧加熱処理としては、前記混捏物を1〜3kg/cmG程度、好ましくは1〜2.5kg/cmG程度に加圧して、100〜150℃程度、好ましくは100〜130℃程度加熱する方法を例示できる。加圧加熱処理時間は1〜60分が例示され、好ましくは3〜40分が例示される。
湯種の製造に使用するマルトジェニックα−アミラーゼと澱粉質原料の量は本発明の湯種が製造できる限り制限されず、製造される(得られる)湯種中(100重量%)のマルトジェニックα−アミラーゼと澱粉質の含有量に換算して、マルトジェニックα−アミラーゼは0.00001〜0.5重量%、好ましくは0.0002〜0.3重量%、より好ましくは0.0005〜0.05重量%が例示され、湯種中、澱粉質は4〜70重量%、好ましくは14〜60重量%、より好ましくは24〜50重量%が例示される。かかる量になるように、湯種の製造に使用する澱粉質原料100重量部に対するマルトジェニックα−アミラーゼの量としては0.0001〜1重量部、好ましくは0.001〜0.5重量部、より好ましくは0.002〜0.15重量部を挙げることができ、かかる範囲から適宜設定調整することができる。
同様に、湯種の製造に使用する水の量も本発明の湯種が製造できる限り制限されないが、製造される湯種中の水分量に換算して前述の通り28〜95重量%、好ましくは38〜85重量%、より好ましくは48〜75重量%がとなるように例示される。
かかる水分量になるように、湯種の製造に使用する澱粉質原料100重量部に対する水分量としては50〜1100重量部、好ましくは80〜600重量部、より好ましくは100〜400重量部を挙げることができ、かかる範囲から適宜設定調整することができる。
また、本発明の湯種の製造方法において前記澱粉質原料に、必要に応じて所望の前記副材料を混合してもよく、また、前述の通り湯種製造工程が実施され且つ離水が防止されてなる湯種が得られる限り、当該副材料はいずれの処理段階で混合してもよく、当業者が適宜決定すればよい。副材料も、製造される湯種中で副材料が前述の含有量となる量に換算して、適宜混合すればよい。
このようにして製造された湯種は、そのままベーカリー製品用生地の原料(材料)として使用されてもよいし、当該生地の原料として使用されるまで、常温保存、冷蔵保存及び/または冷凍保存されてよい。本発明が対象とする湯種には、常温状態の湯種、冷蔵状態の湯種、冷凍状態の湯種が含まれる。また、本発明が対象とする湯種には、例えば冷蔵されたのちに冷凍された湯種、冷蔵状態から常温に戻された湯種、冷凍状態から解凍された湯種も含まれる。
湯種の常温保存条件としては、例えば、練り上げられた湯種をポリエチレン製フィルム等の気密性フィルムに空気を抜いて密封し、15℃〜25℃の温度帯で1時間〜24時間保管する条件を挙げることができる。また、湯種の冷蔵保存条件としては、例えば、練り上げられた湯種をポリエチレン製フィルム等の気密性フィルムに空気を抜いて密封し、−2℃〜5℃の温度帯で12時間〜480時間保管する条件を挙げることができる。また冷凍保存条件としては、例えば、ポリプロピレン製フィルム等の気密性フィルムに空気を抜いて密封し、−18℃〜−40℃の温度帯で24時間〜2年間の保管する条件を挙げることができる。かかる冷凍保存された湯種は、保管期間を経た後に、解凍して使用することができる。また、例えば、前述において加圧加熱処理に耐える素材のものに充填されて加圧加熱処理が行われた湯種については、そのまま常温保存、冷蔵保存、冷凍保存等をしてもよい。
このようにして得られる本発明の湯種は離水が有意に抑制されてなるものである。特に、本発明の湯種は、冷蔵保存及び/または冷凍保存された場合であっても、これに伴う離水が有意に抑制されてなるものである。冷蔵保存及び/または冷凍保存にともない生じる離水とは、例えば湯種を冷蔵及び/または冷凍する際に生じる離水、冷蔵した湯種を常温に戻す際に生じる離水、冷凍した湯種を解凍する際に生じる離水などが例示される。
本発明によれば保存時の湯種における離水、特に冷蔵及び/または冷凍保存時の湯種における離水を有意に抑制できることから、保存後であっても湯種において所定量の水分が保持され、湯種自体の品質が一層均一となり安定する。そして、湯種自体の品質が安定することから、その後に得られるベーカリー製品用生地やベーカリー製品の製造において適正な加水が実現され、また、澱粉質と水との適切なバランスが維持されていることから、所望のベーカリー製品用生地やベーカリー製品を一層ムラなく(コンスタントに)製造することができる。また、離水により生じうる湯種の残渣がベーカリー製品用生地中に粒状で残ることもなく均一な生地が獲得でき、ひいては一層質の高いベーカリー製品を製造することができる。
このように、本発明の湯種を用いることによって、ベーカリー製品用生地や最終的に得られるベーカリー製品の品質やその安定性の向上を図ることができ、ひいてはベーカリー製品における独特の食感等の湯種の効果も向上できる。この観点から、本発明の湯種は、工業的に生産されるベーカリー製品用生地やベーカリー製品に適した湯種として特に有用である。
(2)ベーカリー製品用生地、ベーカリー製品及びそれらの製造方法
本発明の湯種はベーカリー製品用生地の原料として使用され、すなわち、本発明においてベーカリー製品用生地は、前記湯種を原料として製造されることを特徴とする。本発明のベーカリー製品用生地は、前記湯種を原料として製造される限り制限されないが、例えば、前記湯種を原料として、これと原材料(以下、「生地製造用原材料」ともいう)を混捏して、更に必要に応じて水を混捏して製造される(以下、この工程を「生地製造工程」ともいう)。具体的には、前記湯種、原材料、必要に応じて水をミキサーに投入して、混捏する工程を経て、本発明のベーカリー製品用生地を製造することができる。なお、ベーカリー製品とは前述と同様に説明される。
ベーカリー製品用生地における本発明の湯種の含有量としては、ベーカリー製品用生地中、湯種の含有量が2〜50重量%、好ましくは5〜40重量%、より好ましくは7〜30重量%が例示される。
ベーカリー製品用生地の製造に用いる原材料(生地製造用原材料)としては、例えば前述する澱粉質原料;塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム等);パン酵母類(例えば、生イースト、ドライイースト、インスタントドライイースト等)、発酵種類(自家培養発酵種、簡易発酵種、酒種、ルヴァン種、パネトーネ種、ヨーグルト種、サワー種等);イーストフード(例えば、無機フード、有機フード、酵素系フード等);油脂類(例えば、ショートニング、ラード、マーガリン、バター、液状油、粉末油等);糖(例えば、トレハロース、グルコース、フルクトース、ラクトース、砂糖、マルトース、イソマルトース等);糖アルコール(例えば、ソルビトール、マルチトール、パラチニット、還元水飴等);乳製品(例えば、乳類、粉乳類、クリーム類、チーズ類等);卵製品;膨張剤(例えば、重曹、炭酸アンモニウム、ベーキングパウダー等);乳化剤(例えば、レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等);酵素類;調味料(例えば、アミノ酸、核酸等);保存料;蛋白質;アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン酸等);香料等が挙げられる。
原材料として少なくとも澱粉を含む可食性原料、すなわち澱粉質原料を用いることが好ましく、澱粉質原料なかでも小麦粉(例えば、強力粉、薄力粉、準強力粉、中力粉等)、大麦粉、米粉、ライ麦粉、とうもろこし粉、あわ粉、ひえ粉、はと麦粉等の穀粉;大豆、そばなどの澱粉質を含む植物種子の粉体(種子粉)(例えば、大豆粉、そば粉等);馬鈴薯、ワラビ等の野菜類を含む植物体の粉体(植物体粉)(例えば、粉末ポテト、ワラビ粉等);穀物、澱粉質を含む植物種子、澱粉質を含む野菜等の植物体、その他の植物体から、澱粉質のみを抽出したもの(澱粉)(例えば、コーンスターチ、緑豆澱粉、馬鈴薯澱粉、葛粉等);さらに、それらの澱粉を使用した加工澱粉(例えばタピオカエーテル化澱粉、小麦アルファ化澱粉等)を用いることがより好ましい。
澱粉質原料の使用量は、湯種の製造に使用した澱粉質原料の量(湯種中の澱粉質の量)を100重量部とした場合に0〜10000重量部が好ましく、100〜2500重量部がさらに好ましい。
澱粉質原料以外の原材料や水の量は、従来公知の湯種製法の条件に従ってベーカリー製品用生地が製造できる範囲で、当業者が適宜設定すればよい。
前述のようにベーカリー製品用生地は、前述する本発明の湯種と少なくとも澱粉質原料を混捏することによって製造でき、これらが混捏される限り制限されず、例えば、本発明の湯種と生地製造用原材料とを一度に混捏することによっても製造でき、また、ベーカリー製品用生地を構成する生地製造用原材料をあらかじめ混合しておき、得られた混合物を湯種と混合することによっても製造できる。混捏時間や温度等の条件や操作は、従来公知の湯種製法の条件に従って当業者が適宜設定すればよい。
このようにして得られたベーカリー製品用生地を用いて、定法に従って、ベーカリー製品を製造することができる。ベーカリー製品は前述の通り説明され、例えば、ベーカリー製品が、パン類の場合は、生地製造工程に続いて、生地発酵工程、加熱処理工程に移る。生地発酵工程及び加熱処理工程における各操作やその条件には、常法の製パン工程で採用される操作及び条件が採用される。加熱処理工程は、ベーカリー製品の種類に応じて、焼成する、蒸す、蒸し焼きにする、油で揚げる等の方法によって行なわれる。
本発明の前述の湯種を使用したベーカリー製品用生地やベーカリー製品においては適正な加水が実現され、また、澱粉質と水との適切なバランスが維持されており、このような本発明によれば、所望のベーカリー製品用生地やベーカリー製品を一層ムラなく(コンスタントに)製造することができる。また、離水により生じうる湯種の残渣がベーカリー製品用生地中に粒状で残ることもなく均一な生地が獲得できる点から、本発明のベーカリー製品は一層高い質をコンスタントに備える。このように、前記湯種を用いる本発明のベーカリー製品用生地やベーカリー製品はその品質や安定性が向上されており、ベーカリー製品における独特の食感等の湯種の効果も向上されている。
(3)湯種の離水抑制方法
本発明は、さらに湯種の離水を抑制する方法を提供する。具体的には、本発明は湯種の保存時、特に冷凍保存及び/または冷蔵保存に伴う離水を抑制する方法を提供する。
本発明の湯種の離水抑制方法は、マルトジェニックα−アミラーゼを用いて湯種を製造することによって、特にマルトジェニックα−アミラーゼ存在下で澱粉質原料を混捏することによって実施することができる。
当該離水抑制方法においてマルトジェニックα−アミラーゼと澱粉質原料は、前述の「(1)湯種及び湯種の製造方法」に記載されるものと同様のものが例示される。当該離水抑制方法において混捏されるマルトジェニックα−アミラーゼと澱粉質原料の量は本発明の効果が得られる限り制限されないが、これらの量は、マルトジェニックα−アミラーゼ存在下で澱粉質原料を混捏することによって得られる湯種における含有量に換算して、マルトジェニックα−アミラーゼは0.00001〜0.5重量%、好ましくは0.0002〜0.3重量%、より好ましくは0.0005〜0.05重量%が例示され、澱粉質として4〜70重量%、好ましくは14〜60重量%、より好ましくは24〜50重量%が例示される。
このように混捏することによって、得られた湯種の離水を有意に抑制することができ、特に得られた湯種の冷凍及び/または冷蔵に伴う離水を有意に抑制することができる。
なお、当該離水抑制方法においては澱粉質についても前述の通りである。また、当該離水抑制方法では更に水や副材料を用いてもよく、これらについても前述のものが例示される。また、当該離水抑制方法において水や副材料の量、また、混捏方法や混捏条件についても、前述の「(1)湯種及び湯種の製造方法」に記載された通りある。
本発明の離水抑制方法は、湯種保存時の離水を抑制するものであり、後述する実施例から明らかなように、湯種においてマルトジェニックα−アミラーゼを含有する場合に、その離水が明らかに抑制される。このことから、例えば、マルトジェニックα−アミラーゼを用いて製造された湯種と、マルトジェニックα−アミラーゼを用いていない湯種と比較して、前者において離水が抑制されている場合に、本発明の離水抑制方法が実施されていると判断できる。離水が抑制されているかどうか、また、離水の程度は、後述する実施例に記載の測定方法等を用いて、適宜測定できる。
あるいは、本発明の離水抑制方法は、湯種中にマルトジェニックα−アミラーゼが存在しているか否かでも判断することができ、湯種中にマルトジェニックα−アミラーゼが存在している場合には本発明の離水抑制方法が実施されていると判断できる。湯種中にマルトジェニックα−アミラーゼが存在しているかどうかは、前述と同様にして決定できる。
このような湯種の離水抑制方法によれば、湯種保存時の離水を有意に抑制できる。このように、本発明によれば湯種における離水を有意に抑制できることから、保存後であっても湯種において所定量の水分が保持され、湯種自体の品質が一層均一となり安定する。そして、湯種自体の品質が安定することから、その後に得られるベーカリー製品用生地やベーカリー製品の製造において適正な加水が実現され、また、澱粉質と水との適切なバランスが維持されていることから所望のベーカリー製品用生地やベーカリー製品をコンスタントに製造することができる。また、離水により生じうる湯種の残渣がベーカリー製品用生地中に粒状で残ることもなく、均一な生地が獲得できる。このような本発明の湯種の離水抑制方法によれば、ベーカリー製品用生地や最終的に得られるベーカリー製品の品質やその安定性の向上を図ることができ、ひいてはベーカリー製品における湯種の効果も向上できる。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない
1.湯種の製造
表1に示す酵素または糖と米粉(商品名こしひかりKS、たかい食品製)500gをミキサーボウルに投入し、これに熱湯(98℃)1000gを注ぎ、ミキサー(商品ケンミックスミキサー(ビーター付き)(型式KMM760、愛工舎製)を用いて攪拌した。ミキシング条件を低速(ミニマム)にして70℃で1分間混捏した。このようにして得られた湯種を300gずつビニール袋に小分けし、室温(20℃)で冷却後、−18℃の冷凍庫にて湯種を緩慢冷凍した。
2.湯種の離水測定
前記緩慢冷凍(24時間)ののちに、解凍(20℃、12時間)→再冷凍(−18℃、12時間)を繰り返して3回解凍した湯種について、離水の程度を次のようにして測定した。
まず、前記3回解凍した湯種15gをフィルター付き遠心管チューブのフィルターの上部に置き、遠心機にセットして、遠心分離(回転数3000rpm、10分間、4℃)を行った。その後、フィルター下の遠心管チューブに溜まった離水量を、重量計(パーソナル電子天びん「EK−1200I」エー・アンド・デイ社製)を用いて測定した。
3.結果
結果を以下の表1に示す。
Figure 0005907799
表1から明らかなように、湯種の製造においてマルトジェニックα−アミラーゼを用いた実施例1では、湯種15g当たりの離水量が0.1g、0g(それぞれマルトジェニックα−アミラーゼ100ppm、1000ppm)であり、コントロールと比較して離水量が顕著に減少した。
これに対して、α−アミラーゼを用いた比較例1では、1ppmでは離水量が0.6+1.8と多く、10ppmでは湯種がドロドロとなり離水量を測定することは不能な状態にあった。
また、マルトジェニックα−アミラーゼの失活温度(耐熱性)が比較的高い(85℃)ことから、失活温度が高い酵素を用いた場合に離水を効果的に抑制できると予想されたため、比較例2として、比較例1で用いたα−アミラーゼよりも失活温度が高い別のα−アミラーゼを用いて湯種の離水に対する影響を調べた。しかしながら、表1から明らかなように、比較例2ではα−アミラーゼ1ppmでは湯種15g当たりの離水量が1gであり、100ppmでは湯種がドロドロとなり離水量を測定することは不能であった。このことから、湯種の離水抑制には、単に失活温度の高い酵素を用いればよいというものでないことがわかった。
また、マルトジェニックα−アミラーゼはデンプンをマルトース単位で切断する酵素であることから、湯種中のマルトースの含有量が重要であると予想されたため、比較例3として、酵素に代えて、マルトースを用いて湯種の離水に対する影響を調べた。しかしながら、表1から明らかなように比較例3においても離水量を効果的に抑制することはできず、湯種の離水抑制には、湯種中に単にマルトースを存在させればよいというものでないことがわかった。
このことから、特にマルトジェニックα−アミラーゼを用いることによって、湯種の離水を有意に抑制できることがわかった。

Claims (10)

  1. マルトジェニックα−アミラーゼを含有することを特徴とする湯種。
  2. 更に澱粉質を含有する、請求項1に記載の湯種。
  3. 澱粉質が穀粉である、請求項2に記載の湯種。
  4. 澱粉質が小麦粉及び米粉からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項2または3に記載の湯種。
  5. 冷凍及び/または冷蔵されてなる、請求項1〜4のいずれかに記載の湯種。
  6. マルトジェニックα−アミラーゼ存在下で澱粉質原料を混捏する工程を有する、請求項1〜5のいずれかに記載する湯種の製造方法。
  7. 請求項1〜5のいずれかに記載の湯種と澱粉質原料とを混捏する工程を有する、ベーカリー製品用生地の製造方法
  8. 請求項1〜5のいずれかに記載の湯種を原料とするベーカリー製品用生地を、加熱処理する工程を有する、ベーカリー製品の製造方法
  9. マルトジェニックα−アミラーゼ存在下で澱粉質原料を混捏することを特徴とする湯種の離水抑制方法。
  10. 湯種の冷凍及び/または冷蔵に伴う離水を抑制する、請求項9に記載の離水抑制方法。
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