JP2021073985A - 穀物加工食品用の防カビ剤 - Google Patents

穀物加工食品用の防カビ剤 Download PDF

Info

Publication number
JP2021073985A
JP2021073985A JP2020175504A JP2020175504A JP2021073985A JP 2021073985 A JP2021073985 A JP 2021073985A JP 2020175504 A JP2020175504 A JP 2020175504A JP 2020175504 A JP2020175504 A JP 2020175504A JP 2021073985 A JP2021073985 A JP 2021073985A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
processed grain
bread
fungicide
grain food
processed
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2020175504A
Other languages
English (en)
Inventor
正俊 塩尻
Masatoshi Shiojiri
正俊 塩尻
耕司 宇野
Koji Uno
耕司 宇野
仁美 山口
Hitomi Yamaguchi
仁美 山口
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nagase Chemtex Corp
Original Assignee
Nagase Chemtex Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nagase Chemtex Corp filed Critical Nagase Chemtex Corp
Publication of JP2021073985A publication Critical patent/JP2021073985A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Food Preservation Except Freezing, Refrigeration, And Drying (AREA)
  • Bakery Products And Manufacturing Methods Therefor (AREA)
  • Enzymes And Modification Thereof (AREA)

Abstract

【課題】穀物加工食品の風味を向上させつつ防カビ性を示す、酵素を含む防カビ剤を提供する。【解決手段】エキソマルトテトラオヒドロラーゼを含む、穀物加工食品用の防カビ剤。【選択図】なし

Description

本発明は、穀物加工食品用の防カビ剤、ならびにそれを用いた、穀物加工食品のカビの発生を抑制する方法、穀物加工食品の製造方法、および穀物加工食品に関する。また、本発明は、非酵素性の防カビ剤の使用量が低減された穀物加工食品、および穀物加工食品中の非酵素性の防カビ剤の使用量を低減する方法に関する。
食品の保存期間を延長させるために、微生物、特にカビの発生を抑制することが求められている。プロピオン酸カルシウム等の化学物質が防カビ性を有することが知られているが、食品の風味を低下させることがあり、また、化学物質を添加することへの消費者の抵抗が大きい。
天然由来の防カビ剤として、酵素を用いることも知られている。特許文献1はキチナーゼを含む、食品用の防カビ剤を開示している。
一方、エキソマルトテトラオヒドロラーゼ(G4生成酵素)は、澱粉の非還元末端からマルトテトラオース単位でオリゴ糖を切り出すエキソ型のアミラーゼであり、澱粉糖化工業においてマルトオリゴ糖を製造する酵素として用いられている。特許文献2は、エキソマルトテトラオヒドロラーゼが、パンの老化を防止する作用を有することを開示している。
特開第2014−195444号公報 特表第2007−526752号公報
本発明は、穀物加工食品の風味を向上させつつ防カビ性を示す、酵素を含む防カビ剤を提供することを課題とする。
本発明者らは、各種酵素について穀物加工食品におけるカビの発生を防止する効果を研究した結果、エキソマルトテトラオヒドロラーゼが防カビ剤として有用であることを見出し、本発明の完成に至った。
すなわち、本発明は、エキソマルトテトラオヒドロラーゼを含む、穀物加工食品用の防カビ剤に関する。
エキソマルトテトラオヒドロラーゼがシュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)由来であることが好ましい。
エキソマルトテトラオヒドロラーゼが非遺伝子組換え酵素であることが好ましい。
穀物加工食品がパンであることが好ましい。
また、本発明は、穀物加工食品材料、または穀物加工食品に前記防カビ剤を配合する工程を含む、穀物加工食品のカビの発生の防止方法に関する。
また、本発明は、前記防カビ剤を含み、非酵素性の防カビ剤の使用量が低減された、穀物加工食品に関する。前記穀物加工食品は、非酵素性の防カビ剤を含まないことが好ましい。
また、本発明は、穀物加工食品材料、または穀物加工食品に前記防カビ剤を配合する工程を含む、穀物加工食品の製造方法に関する。
また、本発明は、穀物加工食品材料、または穀物加工食品に前記防カビ剤、および非酵素性の防カビ剤を配合する工程を含む、穀物加工食品の製造方法に関する。
また、本発明は、穀物加工食品材料、または穀物加工食品に前記防カビ剤を配合する工程を含む、穀物加工食品中の非酵素性の防カビ剤の使用量を低減する方法に関する。
本発明の防カビ剤は、穀物加工食品に強制接種したカビに対しても高い効果を発揮する。さらに、有効成分としてエキソマルトテトラオヒドロラーゼを含むため、防カビ効果と、穀物加工食品の風味向上効果を同時に達成できる。
ストレート法で製造したパンにおけるパン分離カビの生育スコアを示す。 中種法で製造したパンにおけるパン分離カビの生育スコアを示す。 ストレート法で製造したパンにおけるPenicillium expansumの生育スコアを示す。 中種法で製造したパンにおけるPenicillium expansumの生育スコアを示す。 ストレート法で製造したパンにおけるAspergillus nigerの生育スコアを示す。 中種法で製造したパンにおけるAspergillus nigerの生育スコアを示す。 ストレート法で製造したパンにおけるPenicillium chrysogenumの生育スコアを示す。 中種法で製造したパンにおけるPenicillium chrysogenumの生育スコアを示す。 ストレート法で製造したスーパー大麦入り二玉パンにおけるパン分離カビの生育スコアを示す。
(1)エキソマルトテトラオヒドロラーゼ
本発明の穀物加工食品用の防カビ剤は、エキソマルトテトラオヒドロラーゼを含む。エキソマルトテトラオヒドロラーゼは、澱粉をエキソ型で加水分解する酵素であり、4分子のグルコースからなるマルトテトラオースを生成する酵素である。
エキソマルトテトラオヒドロラーゼの由来は特に限定されず、微生物由来、動物由来、植物由来のものが挙げられるが、入手容易性の観点から微生物由来が好ましい。微生物としてはシュードモナス属、バシラス属が挙げられる。シュードモナス属の微生物としてはシュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)、シュードモナス・サッカロフィリア(Pseudomonas saccharophilia)、シュードモナス エスピー(Pseudomonas sp.)が挙げられる。バシラス属の微生物としてはバシラス・サーキュランス(Bacillus circulans)、バシラス エスピー(Bacillus sp.)が挙げられる。これらの中でも、シュードモナス属由来であることがより好ましく、シュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)由来であることがさらに好ましい。また、エキソマルトテトラオヒドロラーゼとしては、起源となる微生物、動物、または植物から抽出したもの、微生物細胞で大量生産させたもののいずれを用いてもよい。また、遺伝子組み換え型エキソマルトテトラオヒドロラーゼを用いることもできるが、非遺伝子組み換え(Non−GMO)品であることが好ましい。
エキソマルトテトラオヒドロラーゼは、以下の(A)、(B)、または(C)のポリペプチドであることが好ましい。
(A)配列番号1に示すアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(B)配列番号1に示すアミノ酸配列と85%以上の配列同一性を示し、澱粉をエキソ型で加水分解してマルトテトラオースを生成する活性を有するポリペプチド;
(C)配列番号1に示すアミノ酸配列において、1または複数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換および/または付加したアミノ酸配列からなり、澱粉をエキソ型で加水分解してマルトテトラオースを生成する活性を有するポリペプチド。
エキソマルトテトラオヒドロラーゼと、配列番号1に示すアミノ酸配列との配列同一性は、85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましく、98%以上がさらにより好ましく、99%以上が特に好ましく、100%が最も好ましい。アミノ酸配列の配列同一性は、配列番号1に示すアミノ酸配列と、評価対象のアミノ酸配列とを比較し、両方の配列でアミノ酸が一致した位置の数を総アミノ酸数で除して100を乗じた値で表される。
欠失、挿入、置換および/または付加されるアミノ酸の個数は、82個以下が好ましく、54個以下がより好ましく、27個以下がさらに好ましく、10個以下がさらにより好ましく、5個以下が特に好ましい。
また、エキソマルトテトラオヒドロラーゼは、以下の(a)、(b)、または(c)のDNAによりコードされるポリペプチドであることが好ましい。
(a)配列番号2に示す塩基配列を含むDNA;
(b)配列番号2に示す塩基配列と85%以上の配列同一性を示し、澱粉をエキソ型で加水分解してマルトテトラオースを生成する活性を有するポリペプチドをコードするDNA;
(c)配列番号2に示す塩基配列において、1または複数個の塩基が欠失、挿入、置換および/または付加した塩基配列からなり、澱粉をエキソ型で加水分解してマルトテトラオースを生成する活性を有するポリペプチドをコードするDNA。
エキソマルトテトラオヒドロラーゼをコードするDNAと、配列番号2に示す塩基配列との配列同一性は、85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましく、98%以上がさらにより好ましく、99%以上が特に好ましく、100%が最も好ましい。塩基配列の配列同一性は、配列番号2に示した塩基配列と評価したい塩基配列とを比較し、両方の配列で塩基が一致した位置の数を比較総塩基数で除して、さらに100を乗じた値で表される。
配列番号2に示した塩基配列において、1または複数個の塩基が欠失、挿入、置換および/または付加した塩基配列からなり、澱粉をエキソ型で加水分解してマルトテトラオースを生成する活性を有するポリペプチドをコードするDNAは、公知の遺伝子改変方法に準じて調製することができる。
欠失、挿入、置換および/または付加される塩基の数は、246個以下が好ましく、164個以下がより好ましく、82個以下がさらに好ましく、32個以下がさらにより好ましく、16個以下が特に好ましい。
なお、配列番号1に示すアミノ酸配列、および配列番号2に示す塩基配列は、それぞれ、シュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)MO−19株が有するエキソマルトテトラオヒドロラーゼのアミノ酸配列、およびその遺伝子の塩基配列である。
防カビ剤中のエキソマルトテトラオヒドロラーゼの含有量は限定されないが、防カビ剤全体重量1gあたり、6000U以上の活性を有することが好ましく、6500U以上の活性を有することがより好ましい。上限は高いほど好ましく、特に限定されないが、一般的には防カビ剤全体重量1gあたり100000U以下や50000U以下である。ここで、エキソマルトテトラオヒドロラーゼの活性は、酵素を基質澱粉に作用させ、生成した還元糖の還元力をソモギー・ネルソン変法により定量することにより測定できる。酵素活性の単位は、1分間に1μmolのグルコースに相当する還元力を生成する酵素量を1Uとする。
(2)任意成分
本発明の防カビ剤は、エキソマルトテトラオヒドロラーゼ以外に、食品に許容される成分を含んでいてもよい。このような成分としては、還元乳糖、トレハロース、キシリトール、ソルビトール、水酸化ヘミセルロースなどの各種糖類、乳化剤と重合リン酸塩との混合物が挙げられる。また、本発明の防カビ剤は、デキストリン、デンプン、加工デンプン類、乳糖などの賦形剤を含んでいてもよい。
防カビ剤の形状は特に限定されず、粉末状、顆粒状、液体状、ペースト状、固形状が挙げられる。粉末状の場合、エキソマルトテトラオヒドロラーゼを水もしくは糖液などの溶媒に溶解した後、必要に応じてデキストリンなどの賦形剤を配合した後、乾燥させて粉末状としたものであってもよい。
(3)防カビ効果
本発明において防カビとは、カビの生育を抑制することをいう。カビの生育は実施例に記載の方法により測定できる。
エキソマルトテトラオヒドロラーゼは澱粉からマルトテトラオースを生成する。穀物加工食品中にアミラーゼが含まれる場合、アミラーゼがマルトテトラオースを分解してマルトースを生じ、穀物加工食品中にマルトースを主成分とする糖質が蓄積する。マルトース等の糖分は穀物加工食品の風味を向上するため、本発明の防カビ剤は、防カビ効果と同時に、食品の風味を向上させることもできる。
本発明において防カビ効果の対象となるカビは特に限定されないが、Penicillium属(アオカビ)、Aspergillus属(クロコウジカビ)、Cladosporium属(クロカワカビ)、Fusarium属が挙げられる。Penicillium属としては、Penicillium expansum、Penicillium chrysogenum、Penicillium citrinum、Penicillium islandicumが挙げられる。Aspergillus属としては、Aspergillus niger、Aspergillus flavus、Aspergillus ochraceus、Aspergillus versicolorが挙げられる。これらの中でも、本発明の防カビ剤はPenicillium expansum、Penicillium chrysogenum、Aspergillus nigerに対して防カビ効果を有することが好ましい。
本発明の防カビ剤は有効成分としてエキソマルトテトラオヒドロラーゼを含むため、本発明の防カビ剤を含む穀物加工食品では、非酵素性の防カビ剤の使用量を低減できる。本発明の防カビ剤を含む穀物加工食品は、非酵素性の防カビ剤を含まないことが好ましい。非酵素性の防カビ剤としては、プロピオン酸、安息香酸、ソルビン酸、酢酸、乳酸、クエン酸、グリシン、ポリリジンまたはこれらの塩が挙げられる。塩としては、カルシウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩が挙げられる。また、非酵素性の防カビ剤として、オルトフェニルフェノール、ビフェニル、チアベンダゾール、イマザリルなども挙げられる。本発明の防カビ剤を含む穀物加工食品では、プロピオン酸の含有量が0.25重量%以下であることが好ましく、安息香酸の含有量が0.25重量%以下であることが好ましい。
(4)穀物加工食品
防カビ剤を適用する穀物加工食品は、穀物を加工して得られる食品であれば特に限定されない。穀物としては、小麦、米、小豆、とうもろこし、タピオカ、葛、ライ麦、大麦、スーパー大麦、そば、サツマイモ、ジャガイモ、長いも、里芋、ユリ根、レンコン、レンズ豆、ひよこ豆、いんげん豆、エンドウ豆、そら豆、落花生、白花豆、大豆、うぐいす豆が挙げられる。この中でも、小麦、米が好ましい。小麦加工食品としては、パン、ケーキ、クッキー、カステラ、うどん、パスタ、麩が挙げられる。米加工食品としては、もち、まんじゅう、団子、おにぎり、おこわ、粥、あられが挙げられる。小豆加工食品としては、小豆餡、赤飯、小豆粥、うぐいす豆の豆菓子、羊羹、お汁粉、ぜんざい、アイスキャンディーが挙げられる。とうもろこし加工食品としては、コーンクリーム、コーンクリームコロッケ、コーンクリームシチューが挙げられる。また、とうもろこし加工食品として、コーンスターチを利用した牛乳プリン等の菓子も挙げられる。タピオカ加工食品としては、わらび餅、タピオカパール、タピオカドリンク、葛餅、ポンデケージョが挙げられる。葛加工食品としては、葛餅、ごま豆腐が挙げられる。これらの中でも、エキソマルトテトラオヒドロラーゼによる風味の向上効果と防カビ効果を達成しやすい点で、小麦加工食品が好ましく、パン、ケーキ、カステラがより好ましい。
防カビ剤の穀物加工食品への適用方法は特に限定されず、穀物加工食品の製造途中で材料に配合してもよいし、穀物加工食品の製造後に配合してもよい。穀物加工食品の製造後に配合する方法としては、防カビ剤を含む液体を穀物加工食品の外側から噴霧する方法が挙げられる。よって、本発明の別の一態様として、穀物加工食品材料、または穀物加工食品に、本発明の防カビ剤を配合する工程を含む、穀物加工食品のカビの発生の防止方法が挙げられる。
防カビ剤を穀物加工食品の製造途中で穀物加工食品材料と配合する場合において、穀物加工食品の製造方法に加熱工程が含まれる場合には、防カビ剤は加熱工程の前に添加してもよく、加熱工程の後に添加してもよい。防カビ剤を加熱工程の前に添加する場合、防カビ剤は加熱工程までの間に作用する。防カビ剤を加熱工程の後に添加する場合、穀物加工食品の製造後、長期にわたり防カビ効果が維持される。一方、酵素タンパク質であるエキソマルトテトラオヒドロラーゼは、pH7.0、55℃以上で60分の処理や、pH7.0、60℃以上で15分の処理により熱変性して活性を失う。穀物加工食品への配合後に高温で加熱する場合、熱変性されたエキソマルトテトラオヒドロラーゼは、食品に含まれる他のタンパク質と同様に体内で消化吸収される。
エキソマルトテトラオヒドロラーゼの添加量は、穀物加工食品によって異なるが、食品100gあたり20〜500Uが好ましく、50〜300Uがより好ましく、80〜120Uがさらに好ましい。エキソマルトテトラオヒドロラーゼの活性の定義は前述した通りである。
(5)パン
以下に、穀物加工食品としてパンを製造する場合の製法を記載する。防カビ剤は、製造後のパンに適用してもよいが、風味の向上効果と防カビ効果の両方を達成しやすい点で、パン生地材料に添加することが好ましい。
パン生地の主な材料は、小麦粉(薄力粉、中力粉、強力粉、全粒粉、グラハム粉など)、大麦粉、スーパー大麦粉、オーツ麦粉、ライ麦粉、大豆粉、米粉などが挙げられる。その他に、イースト(例えば、生イースト、ドライイースト、インスタントドライイーストなど)、糖分(例えば、上白糖、グラニュー糖、三温糖、黒糖などの砂糖、異性化糖、粉飴、水あめ、糖アルコール、オリゴ糖、トレハロースなど)、食塩、乳成分(例えば、牛乳、クリーム、全粉乳、脱脂粉乳、乳タンパク質、濃縮乳など)、油脂(例えば、ショートニング、マーガリン、バター、液状油、乳化油脂など)、水、卵(全卵、卵黄、卵白、乾燥卵、凍結卵など)、ベーキングパウダーなどが挙げられる。
防カビ剤をパン生地材料に添加する場合、パン生地材料に防カビ剤を配合して混捏することが好ましい。「混捏」(ミキシング)とは、パン生地材料を混合して捏ねることである。混捏は、通常のパンの製造において用いられる条件で行うことができる。
パン生地の製造および焼成は、通常の方法で行うことができる。パン生地の製造法としては、中種法(スポンジ法)、直捏(ストレート)法、冷蔵法、冷凍法、液種法(水種法)、サワー種法、酒種法、ホップ種法、中麺法(浸漬法)、チョリーウッド法、連続製パン法が挙げられる。
中種法では、小麦粉の一部または全部を先に発酵させて中種を製造し、その後、残りの小麦粉や材料を加えて本捏を行う。中種法において、防カビ剤を中種材料、または本捏材料どちらに配合しても効果を発揮するが、中種材料に配合することが好ましい。
ストレート法では、最初からすべての材料を混合し、発酵させて生地を製造する。ストレート法の場合には、防カビ剤を他のパン生地材料とともに最初から配合することが好ましい。
パン生地中の防カビ剤の含有量は、その際の製パン法に用いられる条件に応じて適宜選択できる。例えば、50〜400ppm(350〜2800U/kg強力粉)が好ましく、100〜300ppm(700〜2100U/kg強力粉)がより好ましく、150〜250ppm(1050〜1750U/kg強力粉)がさらに好ましい。エキソマルトテトラオヒドロラーゼの活性の定義は前述した通りである。
パン生地の加熱方法としては、焼成加熱、蒸し加熱が挙げられる。加熱温度は、パンの種類に応じて適宜選択できるが、焼成加熱の場合には170〜250℃が好ましく、190〜220℃がより好ましい。蒸し加熱の場合には、100〜140℃が好ましく、115〜125℃がより好ましい。パン生地の加熱時間は、10〜70分が好ましく、15〜60分がより好ましく、20〜50分がさらに好ましく、20〜40分がさらにより好ましい。
本発明の防カビ剤の適用対象となるパンとしては、例えば、食パン、二つの生地玉をケースに入れ発酵および焼成して製造されるパン(以下、二玉パンと称す)、健康パン、菓子パン(アンパン、ジャムパン、クリームパン等)、ロールパン、フランスパン、蒸しパン、調理パン、コッペパン、フルーツブレッド、コーンブレッド、バターロール、バンズ、サンドイッチ、クロワッサン、デニッシュペーストリー、乾パン、ベーグル、プレッツェルが挙げられる。このうち、アンパン、ジャムパン、クリームパン等の菓子パンや、バターロールは、バラエティパンと総称される。
(1)防カビ剤の製造
酵素原末(エキソマルトテトラオヒドロラーゼ)と賦形剤として食品に許容される成分(デキストリン)を、エキソマルトテトラオヒドロラーゼ約3%、デキストリン約97%となるように混合した後、粉砕することにより、粉末状の防カビ剤を製造した。
(2)防カビ剤を含むパンの製造(実施例)
(2−1)ストレート法による食パンの製造
防カビ剤を配合して、ストレート法により食パンを製造した。原料配合量を表1に示す。なお、表1において、防カビ剤以外の各成分の含有量は、最終的なパン種に含まれる小麦粉を100重量部としたときの重量部を示す。
Figure 2021073985
表1の原料を混合し、表2の工程により角食パンを焼成した。焼成後のパンを、焼成の1日後に厚さ1.5cmにスライスした。
Figure 2021073985
(2−2)中種法による食パンの製造
防カビ剤を配合して、中種法により食パンを製造した。原料配合量を表3に示す。なお、表3において防カビ剤以外の各成分の含有量は、本捏原料を混合後の最終的なパン種に含まれる小麦粉を100重量部としたときの重量部を示す。
Figure 2021073985
表3の中種原料を混合し、表4の工程1〜2により中種を製造した。製造された中種に、表3の本捏原料を混合し、表4の工程3〜10により角食パンを焼成した。焼成後の角食パンを、焼成の1日後に厚さ1.5cmにスライスした。
Figure 2021073985
(2−3)ストレート法によるスーパー大麦入り二玉パンの製造
防カビ剤を配合して、ストレート法によりスーパー大麦入り二玉パンを製造した。原料配合量を表5に示す。なお、表5において、防カビ剤およびビタミンC以外の各成分の含有量は、最終的なパン種に含まれる小麦粉を100重量部としたときの重量部を示す。
Figure 2021073985
表5の原料を混合し、表6の工程によりスーパー大麦入り二玉パンを焼成した。焼成後のパンを、焼成の1日後に厚さ1.5cmにスライスした。
Figure 2021073985
(3)パンの製造(比較例)
防カビ剤を配合しなかった以外は、上記と同じ手順で、ストレート法および中種法により角食パン、またストレート法によりスーパー大麦入り二玉パンを焼成した。焼成後のパンを、焼成の1日後に厚さ1.5cmにスライスした。
(4)防カビ性試験
(4−1)ストレート法および中種法により製造した食パン
下記微生物の胞子を生理食塩水に懸濁し、1滴下量(約10μl)あたり胞子を5個(低濃度播種)あるいは10個(高濃度播種)含む濃度に調製して胞子懸濁液とした。
(i)パン分離カビ(パンに自然発生したカビから分離)
(ii)Penicillium expansum NRBC 6096
(iii)Aspergillus niger NRBC 33023
(iv)Penicillium chrysogenum NRBC 32030
前述のようにストレート法または中種法で焼成し、スライスしたパンのスライス面に、胞子懸濁液を9スポット滴下することによりカビを播種した。各試験あたり2枚のパンで試験を行った。播種後のパンをポリ袋内で25℃前後の室温で静置し、スライス面におけるカビの菌糸と胞子の生育状況を、肉眼で経時的に確認した。各スポットごとに、カビを播種した付近で菌糸を確認した場合を0.5点、胞子を確認した場合を1点とし、全スポットの点数を合計してカビ生育スコアとした。静置時間とカビ生育スコアとの関係を、図1A〜図4Bに示した。
図1〜4に示すように、比較例のパンに対して、実施例のパンではいずれのカビに対しても生育を遅らせることができた。また、防カビ剤を含んでいれば、パンの製法に限らずカビの生育を遅らせることができた。防カビ剤は、Penicillium expansum、Penicillium chrysogenum、Aspergillus nigerに対しては、生育を遅らせるだけではなく、カビ生育スコアの最大値を低減することができた。
(4−2)ストレート法により製造したスーパー大麦入り二玉パン
下記微生物の胞子を生理食塩水に懸濁し、1滴下量(約10μl)あたり胞子を3個含む濃度に調製して胞子懸濁液とした。
(i)パン分離カビ(パンに自然発生したカビから分離)
前述のようにストレート法で焼成したスーパー大麦入り二玉パンをスライスし、そのスライス面に、胞子懸濁液を18スポット滴下することによりカビを播種した。各試験あたり2枚のパンで試験を行った。播種後のパンをポリ袋内で25℃前後の室温で静置し、スライス面におけるカビの菌糸と胞子の生育状況を、肉眼で経時的に確認した。各スポットごとに、カビを播種した付近で菌糸を確認した場合を0.5点、胞子を確認した場合を1点とし、全スポットの点数を合計してカビ生育スコアとした。静置時間とカビ生育スコアとの関係を、図5に示した。
図5に示すように、比較例のパンに対して、実施例のパンではカビの生育を遅らせることができた。

Claims (10)

  1. エキソマルトテトラオヒドロラーゼを含む、穀物加工食品用の防カビ剤。
  2. エキソマルトテトラオヒドロラーゼがシュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)由来である、請求項1に記載の防カビ剤。
  3. エキソマルトテトラオヒドロラーゼが非遺伝子組換え酵素である、請求項1または2に記載の防カビ剤。
  4. 穀物加工食品がパンである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の防カビ剤。
  5. 穀物加工食品材料、または穀物加工食品に請求項1〜4のいずれか1項に記載の防カビ剤を配合する工程を含む、穀物加工食品のカビの発生の防止方法。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の防カビ剤を含み、非酵素性の防カビ剤の使用量が低減された、穀物加工食品。
  7. 非酵素性の防カビ剤を含まない、請求項6に記載の穀物加工食品。
  8. 穀物加工食品材料、または穀物加工食品に請求項1〜4のいずれか1項に記載の防カビ剤を配合する工程を含む、穀物加工食品の製造方法。
  9. 穀物加工食品材料、または穀物加工食品に請求項1〜4のいずれか1項に記載の防カビ剤、および非酵素性の防カビ剤を配合する工程を含む、穀物加工食品の製造方法。
  10. 穀物加工食品材料、または穀物加工食品に請求項1〜4のいずれか1項に記載の防カビ剤を配合する工程を含む、穀物加工食品中の非酵素性の防カビ剤の使用量を低減する方法。
JP2020175504A 2019-10-31 2020-10-19 穀物加工食品用の防カビ剤 Pending JP2021073985A (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019198737 2019-10-31
JP2019198737 2019-10-31

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2021073985A true JP2021073985A (ja) 2021-05-20

Family

ID=75897033

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020175504A Pending JP2021073985A (ja) 2019-10-31 2020-10-19 穀物加工食品用の防カビ剤

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2021073985A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Cauvain et al. Other cereals in breadmaking
JP4862759B2 (ja) 澱粉含有食品の製造方法及び澱粉含有食品改質用の酵素製剤
JP5907664B2 (ja) 湯種およびその製造方法
KR20040075028A (ko) 쌀가루를 주원료로 하는 발효 빵의 제조 방법
US20110151055A1 (en) Processed food and method of producing the same
JP5907799B2 (ja) 湯種及びその製造方法
JP6761631B2 (ja) ベーカリー食品用混合物
TW200939966A (en) Process for producing bakery product
JP2006504421A (ja) 熱安定性α−アミラーゼを含むフラワー系食品
JP2016514484A (ja) 機能化穀物を含むドウまたはバッター
TW201006391A (en) Process for preparing powdery basic dough
JP2021073985A (ja) 穀物加工食品用の防カビ剤
JP7499022B2 (ja) ベーカリー食品の製造方法
JP2003325140A (ja) 菓子又はパン用品質改良剤及び菓子又はパン
JP7553222B2 (ja) 湯種及びその製造方法
El Sheikha Bread: between the heritage of past and the technology of present
JP6812725B2 (ja) 製パン用油脂組成物
JP2010158194A (ja) 米粉中麺の製造方法
TW202002793A (zh) 烘焙製品用口感改良劑
US4851234A (en) Process for preparing an antistaling agent for baked goods
JPH07184529A (ja) ベーカリー類の製造方法
JP2020191812A (ja) パン類用品質向上剤、パン類の品質向上方法およびパン類の製造方法
CN111556711A (zh) 调味剂组合物和调味食品
JP2013215173A (ja) 複合パン生地、複合ベーカリー製品及びその製造方法
RU2760219C1 (ru) Способ производства лепешек

Legal Events

Date Code Title Description
A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711

Effective date: 20230619

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20230724

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20240611

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20240614