(実施の形態1)
以下本発明を実施の形態1に係るコンバインを示す図面に基づいて詳述する。図1はコンバインの略示側面図、図2はコンバインの略示平面図、図3はコンバインの略示背面図、図4はコンバインにおける穀粒の搬送経路を略示する部分拡大側面図である。
図1〜図4に示すように、コンバインは圃場を走行するクローラ1を備えており、該クローラ1上にシャーシ100が設けてある。該シャーシ100上に脱穀部2が設けてあり、該脱穀部2の前方には、フィーダ室3を介して刈取部4が設けてある。脱穀部2の横側方には穀粒タンク5が設けてあり、該穀粒タンク5の前側に運転部6が設けてある。
前記脱穀部2の下方に揺動選別装置9が配してある。該揺動選別装置9の下方に、スクリュー式の一番コンベア8が軸方向を横方向にして設けてある。該一番コンベア8の終端部にバケット式の揚穀コンベア7が立設してある。該揚穀コンベア7は、上下に長い箱状のケーシング70と、該ケーシング70内にて上下に離隔して軸支された二つのスプロケット14、15と、両スプロケット14、15の間に巻回されたコンベアチェーン16と、該コンベアチェーン16に固定された複数のバケット17とを備える。
揚穀コンベア7は、その下部に下側に突出した断面円弧状の受部(不図示)を備える。前揚穀コンベア7の上部は穀粒タンク5に接続してある。揺動選別装置9で選別された穀粒は、一番コンベア8によって揚穀コンベア7の前記受部に搬送される。該受部の穀粒は、スプロケット14、15及びコンベアチェーン16の駆動によってバケット17に掬い上げられ、揚穀コンベア7の上部に搬送される。
穀粒タンク5の上部において、揚穀コンベア7との接続部分に後述するレベリングディスク150(図5参照)が設けてある。レベリングディスク150は上下方向を回転軸方向としている。揚穀コンベア7の上部に搬送された穀粒はバケット17によって、穀粒タンク5に向けて投入される。投入された穀粒は、回転するレベリングディスク150に弾き飛ばされて、穀粒タンク5内に均一に分散する。
穀粒タンク5の下部に下部樋(不図示)が設けてあり、該下部樋に、スクリュー式の搬出コンベア11が設けてある。該搬出コンベア11の終端部に、受継ぎケース12を介して、バケット式の穀粒排出装置13の下部が接続してある。穀粒排出装置13は、穀粒タンク5内に貯留された穀粒を穀粒排出装置13の上部から外部に排出する。
穀粒排出装置13の上部に排出口13aが設けてあり、該排出口13aは、中継ぎ搬送装置69を介して、穀粒を機体後方又は側方に搬送可能な細長い筒状のコンベア式搬送装置170に連結している。穀粒排出装置13によって穀粒タンク5から排出された穀粒は、コンベア式搬送装置170によって外部のタンクなどに移送される。
図5は揚穀コンベア7の上部付近の構成を略示する拡大断面図である。
揚穀コンベア7のケーシング70は、コンベアチェーン16の周囲を覆う上下に長い複数の側面部71と、コンベアチェーン16の上側に配置された天井部72とを備える。側面部71はコンベアチェーン16の中途部の周囲に配してあり、一の側面部71は穀粒タンク5に隣接している。天井部72は側面部71の上部を覆っており、穀粒タンク5側に突出している。天井部72における突出した部分は穀粒タンク5の上面部に連結している。該上面部には開口5aが設けてあり、該開口5aと天井部72内側とは連通している。
穀粒タンク5内にて、開口5aの近傍に穀粒を弾き飛ばすレベリングディスク150が設けてある。レベリングディスク150は、支持部材154を介して穀粒タンク5に支持されている。図5に示すように、バケット17は、スプロケット14の周囲を回って折り返し移動する場合に、穀粒タンク5に穀粒を投入する。投入された穀粒はレベリングディスク150に至る。レベリングディスク150は穀粒を弾き飛ばし、穀粒タンク5内に穀粒が平均的に貯留する。なおレベリングディスク150は図示しないエンジンからの動力によって回転する。レベリングディスク150の回転数はエンジン回転数に連動している。
図6はレベリングディスク150を略示する平面図、図7はレベリングディスク150を略示する斜視図、図8は羽根部の傾斜角度を説明する説明図、図9は穀粒タンク5内の構成を略示する断面図である。
穀粒タンク5内の上側に、穀粒タンク5の上面部に対向しており、レベリングディスク150を支持する支持部材154が設けてある。該支持部材154には、上下方向を軸方向とした回転可能な回転軸155が立設している。レベリングディスク150は、上下方向を回転軸方向としたディスク部153と、該ディスク部153の上面に立設し、回転中心の周囲に放射状に配された複数の羽根部151、152(投入羽根)とを備える。回転軸155は、ディスク部153の中心部に連結している。支持部材154の下側にモータ156が設けてあり、該モータ156の出力軸は回転軸155に連結している。モータ156の駆動によって、ディスク部153は回転し、羽根部151、152は穀粒を弾き飛ばす。
ディスク部153は長辺及び短辺を交互に配した八角形をなす水平板153aと、該水平板153aの長辺に連なり、水平板153aに向けて下降傾斜した傾斜板153bとを備える。水平板153aの底面には、羽根部151に対応する位置に上方に窪んだ凹部153cが形成してある。傾斜板153bは、下底が上底よりも長い台形状をなし、下底側が前記長辺に連なっている。
羽根部151、152は、水平板153a上に固定された第1固定板151a、152aと、傾斜板153bに固定された第2固定板151b、152bと、該第2固定板151b、152b及び第1固定板151a、152aに連結しており、上方に突出した羽根板151c、152cとを備える。第1固定板151a、152a及び第2固定板151b、152bは、水平板153a及び傾斜板153bの連結部分にて離隔するように、水平板153a及び傾斜板153bの上にそれぞれボルト締めしてある。羽根板151c、152cは第1固定板151a、152a及び第2固定板151b、152bの縁部分に連なり、第1固定板151a、152a及び第2固定板151b、152bに向けて下降傾斜している。
一の羽根部151における第1固定板151aには、前記凹部153cに倣う上方に突出した凸部151dが形成してあり、凹部153cの底面部分外側に、凸部151dの内側が嵌合している。なおディスク部153は磁性体からなり、例えば金属からなる。図8に示すように、一の羽根部151及び他の羽根部152における第1固定板151a、152aに対する羽根板151c、152cの角度をそれぞれθ1、θ2とした場合、θ1はθ2よりも大きい。
ディスク部153及び支持部材154の間に、一の羽根部151の通過を検出するピックアップセンサ158(通過検出手段)が設けてある。ピックアップセンサ158はホール素子などを有する磁気センサである。回転軸155からピックアップセンサ158までの距離と、回転軸155から凹部153cまでの距離は略等しく、ディスク部153の回転によって凹部153cはピックアップセンサ158の上を通過する。凹部153cが通過した場合、ピックアップセンサ158から信号が出力される。
図9に示すように、穀粒タンク5内において、穀粒タンク5の上面部から、穀粒量検出センサ52を支持する支持杆50が垂下している。支持杆50はL形をなし、その下端はレベリングディスク150に向けて屈曲している。支持杆50の下端部には上下方向に平行な固定板51が設けてあり、固定板51はその一面をレベリングディスク150に対向させてある。
固定板51の一面には、穀粒量を検出する穀粒量検出センサ52が固定してある。穀粒量検出センサ52は、歪みゲージ及び回路基板などを備える。穀粒量検出センサ52は、衝突した穀粒の衝撃値を検出することができる構成であればよい。例えば歪みゲージに代えて、圧電素子を備えてもよい。
図9に示すように、穀粒タンク5の上部において、レベリングディスク150の下側に押圧式スイッチ55が設けてある。図9に示す一点鎖線は、穀粒タンク5が満杯になった場合に、貯留した穀粒と上方空間との境界を表している。穀粒タンク5が満杯になった場合、押圧式スイッチ55は貯留した穀粒に押圧され、後述する制御部100に信号を出力する。
穀粒量検出センサ52は穀粒タンク5内の上側に配置してあるので、押圧式スイッチ55が押圧された場合(穀粒タンク5が満杯である場合)でも、穀粒に埋もれることはない。
図6及び図7に示すように、ディスク部153の周囲に、穀粒を案内する平面視C状をなす案内板156が設けてある。案内板156の径方向内側の面は案内面をなし、該案内面に沿って案内経路が構成されている。案内板156は案内経路の始端から中途までを構成する本体部156aと、該本体部156aに連なり、案内経路の中途から終端までを構成する終端部156bとを備える。本体部156aは半環形の帯状をなし、ディスク部153の周縁部の半分以上を囲んでいる。
終端部156bは湾曲した帯状をなし、本体部156aの端部(案内経路の中途)から、本体部156aと同様な曲率で周方向に延出している。本体部156a及び終端部156bはボルト締めしてある。終端部156bの下部分には、終端部156bの端面から本体部156aとの連結部分の手前まで、切欠156cが形成してある。
バケットからレベリングディスク150に投入された穀粒は、回転する羽根部151、152によって、回転軸155を中心にして周方向(図6において時計回り)に移動する。穀粒には遠心力が作用し、穀粒は案内板156に沿って移動し、終端部156bの切欠156cまたは案内部の両端の間から弾き飛ばされる。
本体部156aとの連結部分側における切欠156cの端部及び回転軸155の回転中心を通過する線を第1境界線201とし、終端部156bの連結部分における外接線を第2境界線202とし、終端部156bの先端部における外接線を第3境界線203とし、案内板156の始端を通過し、案内板156の周方向に交差する方向に平行な線を第4境界線204とする(図6及び図7参照)。なお第1境界線201及び第2境界線202は、案内経路の終端側にて、案内板156の案内面又は案内面の延長面を挟んでレベリングディスク150の反対側に位置している。
第1境界線201及び第2境界線202の間の領域(図6及び図7に示すハッチング部分参照)においては、少量の穀粒が切欠156cから穀粒タンク5に投入されるので、離散した少量の穀粒が移動する。また第2境界線202及び第3境界線203の間の領域においては、横広がりに連続した帯状の穀粒群が穀粒タンク5に投入されるので、多量の連続した穀粒が移動する。
第3境界線203及び第4境界線204の間の領域(図6及び図7に示すハッチング部分参照)においては、多量の穀粒を弾き飛ばした後に羽根板151c、152c上に残留した少量の穀粒が穀粒タンク5に投入されるので、離散した少量の穀粒が移動する。以下第1境界線201及び第2境界線202の間の領域並びに第3境界線203及び第4境界線204の間の領域を離散領域といい、第2境界線202及び第3境界線203の間の領域を連続領域という。穀粒量検出センサ52は離散領域内に配置してあり、穀粒量検出センサ52には、穀粒が瞬間的に当接する。なお離散領域及び連続領域は平面視による領域を示す。
前述したように、一の羽根部151及び他の羽根部152、152、152における第1固定板151a、152aに対する羽根板151c、152cの角度をそれぞれθ1、θ2とした場合、θ1はθ2よりも大きい。図8に示す二つの実線間の領域は、一の羽根部151によって投入された穀粒が移動する領域(以下第1領域301という)を示す。
図8に示す二点鎖線間の領域は、他の羽根部152、152、152によって投入された穀粒が移動する領域(以下第2領域302という)を示す。図8に示すように、第1領域301には、第2領域302に重畳しない領域が、上側に存在する。穀粒量検出センサ52は、第1領域301内において、第2領域302に重畳しない上側の領域に配置してある。そのため穀粒量検出センサ52には、一の羽根部151によって投入された穀粒のみが当接する。なお第1領域301及び第2領域302は側面視による領域を示す。
前記穀粒量検出センサ52及びピックアップセンサ158からの出力に基づいて、穀粒タンク5に貯留する穀粒量を演算する制御部100がコンバインに搭載されている。図10は制御部100の構成を示すブロック図、図11はエンジンの回転数及び係数βの関係を示すテーブルである。
制御部100は内部バス100gにより相互に接続されたCPU(Central Processing Unit)100a、ROM(Read Only Memory)100b、RAM(Random Access Memory)100c及びEEPROM(Electrically Erasable and Progrmmable Read Only Memory)100dを備えている。CPU100aはROM100bに記憶された制御プログラムをRAM100cに読み込み、該制御プログラムに従って、穀粒量の演算を実行する。なおCPU100aはタイマを内蔵している。
EEPROM100dには、LUT(Look Up Table) 100hが格納してある。
LUT100hには、エンジンの回転数及び係数βの関係を示すテーブルが記憶されている(図11参照)。該テーブルは、「エンジン回転数」欄及び「係数β」欄を備えており、各欄の各行には、エンジン回転数と、エンジン回転数に対応した係数βの値(β1〜β6)が格納されている。なおエンジン回転数の大小は、スプロケット14、15の回転数の大小に対応している。なお回転数は単位時間(例えば1分)あたりの回転数を示す。
またEEPROM100dには、補正変数Xが設定してあり、該補正変数Xには必要に応じて値が格納される。また、穀粒量検出センサ52の検出値を穀粒量の算出対象に含めるか否かを判定するための閾値αが設定してある。
エンジンから刈取部4及び脱穀部2への動力伝達経路上に、動力伝達経路を切断又は接続する刈取・脱穀クラッチ46が設けてある。またエンジンの出力軸付近には、エンジン回転数を検出するエンジン回転数センサ40が設けてある。前記運転部6内には、図示しないダッシュボードパネルが設けてあり、該ダッシュボードパネルに、刈取及び脱穀を行うための刈取スイッチ80並びに情報を表示する表示部83等が配置してある。
制御部100は出力インタフェース100fを介して、刈取・脱穀クラッチ46に切断/接続信号を出力する。また制御部100は出力インタフェース100fを介して、表示部83に所定の映像を表示することを示す表示信号を出力する。
刈取スイッチ80、穀粒量検出センサ52、ピックアップセンサ158、エンジン回転数センサ40及び押圧式スイッチ55の各出力信号は入力インタフェース100eを介して制御部100に入力されている。なお刈取スイッチ80のオンオフに対応して、刈取・脱穀クラッチ46が切断/接続される。
押圧式スイッチ55から制御部100に信号が入力された場合、制御部100は表示部83に信号を出力し、表示部83は穀粒タンク5が満杯であることを示す情報を表示する。これにより、操作者は穀粒タンク5が満杯であることを容易に認識することができる。穀粒タンク5が満杯の場合、一般に操作者は収穫作業を終了する。従って押圧式スイッチ55が押圧された場合、収穫作業は終了し、穀粒量検出センサ52が穀粒に埋もれることを確実に回避することができる。
CPU100aは、穀粒量検出センサ52の出力信号に係る検出値を積算し、閾値αと比較して積算対象に含めるか否かを判定する。そして積算対象に含める検出値をピックアップセンサ158の出力信号に係る検出値に同期させてEEPROM100dに記憶する。図12は穀粒量検出センサ52の検出値とピックアップセンサ158の検出値との関係を示すグラフの一例である。
図12Aは、時間と穀粒量検出センサ52の検出値との関係を示すグラフである。穀粒量検出センサ52の検出値は穀粒の衝突による歪み量を示しており、所定のサンプリング数における移動平均値である。図12Bは、時間とピックアップセンサ158の検出値との関係を示すグラフである。ピックアップセンサ158の検出値は、バケット17による穀粒投入期間の起算点を示している。なお以下の説明において図12の周期Pの添字は適宜省略する。
ピックアップセンサ158の検出値は、パルス波として検出され、パルス波の間隔が一の羽根板が通過した後、次に一の羽根板が通過するまでの期間、換言すれば一の羽根板の通過周期Pに相当する。CPU100aは、周期Pに対応した所定の周期(例えば100[ms])で穀粒量検出センサ52の検出値を取り込み、EEPROM100dに記憶する。またCPU100aは、ピックアップセンサ158からパルス波が入力される都度、タイムスタンプを作成し、該タイムスタンプを、パルス波が入力された時に穀粒量検出センサ52から入力された検出値に紐付けて、EEPROM100dに記憶する。
図12において、穀粒がバケット17によって穀粒タンク5に投入されている場合、P/4〜3P/4の間(当接期間)に、穀粒量検出センサ52からCPU100aに穀粒の衝突による検出値が入力される。0〜P/4及び3P/4〜Pの間に穀粒量検出センサ52からCPU100aに入力された検出値は、穀粒が穀粒量検出センサ52に衝突していない場合の検出値である。穀粒量検出センサ52には、P/4〜3P/4の間に瞬間的に穀粒が衝突し、0〜P/4及び3P/4〜Pの間(非当接期間)に穀粒は衝突しない。
図12Aにおいて、閾値αは、穀粒量検出センサ52の温度特性及び機体の傾きなどの外乱によって、穀粒量検出センサ52にて検出される検出値に相当する。穀粒がレベリングディスクによって穀粒タンク5に投入されていない場合、理想的には、P/4〜3P/4の間に、穀粒量検出センサ52からCPU100aに穀粒の衝突による検出値は入力されない。しかし実際は、穀粒量検出センサ52からCPU100aに外乱による検出値(閾値α)が入力される。
CPU100aは、P/4〜3P/4の間に穀粒量検出センサ52から入力された検出値と閾値αとを比較する。該検出値に、閾値αを超過する値が含まれている場合、CPU100aは、P/4〜3P/4の間に入力された検出値を積算すべき対象に決定する(図12Aの周期P1 、P2 及びP5 における破線ハッチング部分の面積)。積算すべき値は、穀粒量検出センサ52への穀粒の衝突による力積に相当する。
検出値に、閾値αを超過する値が含まれていない場合、CPU100aは、P/4〜3P/4の間に入力された検出値を積算すべき対象から除外する(図12Aにおいて、周期P3 及びP4 部分)。
一方0〜P/4及び3P/4〜Pの間における穀粒量検出センサ52の検出値を積算した値(図12Aの実線ハッチング部分の面積)は定常偏差に相当する。該定常偏差は、エンジンの振動、凹凸のある圃場を走行中に穀粒量検出センサ52に伝播した振動及び穀粒量検出センサ52の特性などに起因する。
CPU100aは、所定の周期(例えば1[s])で、0〜P/4及び3P/4〜Pの間における穀粒量検出センサ52の検出値を積算した値に必要な処理を行い、EEPROM100dにアクセスして、補正変数Xに格納する。
CPU100aは、EEPROM100dにアクセスしてタイムスタンプを参照し、P/4〜3P/4の間における穀粒量検出センサ52の検出値を積算する。そして積算した値に含まれる定常偏差を補正変数Xに格納された値を用いて除去する。例えば積算した値から、補正変数Xに格納された値を減算する。
CPU100aは、定常偏差を除去した補正値DをRAM100cに記憶する。そして補正値Dに係数βを適用して、穀粒タンク5に貯留した穀粒量を求める。
穀粒量検出センサ52を離散領域に配した場合、定常偏差を除去する補正を実行することができる。穀粒量検出センサ52を連続領域に配置した場合、定常偏差を除去する補正を実行することができない。以下その理由を説明する。
図13は穀粒量検出センサ52の検出値とピックアップセンサ158の検出値との関係を示すグラフの一例である。図13Aは、時間と穀粒量検出センサ52の検出値との関係を示すグラフである。穀粒量検出センサ52の検出値は穀粒の衝突による歪み量を示しており、所定のサンプリング数における移動平均値である。図13Aの実線が第1領域に位置する穀粒量検出センサ52の検出値を示す。破線は、離散領域に配した穀粒量検出センサ52の検出値を示す。図13Bは、時間とピックアップセンサ158の検出値との関係を示すグラフである。なお以下の説明において図13の周期Pの添字は適宜省略する。
図7に示すように、連続領域では、横広がりに連続した帯状の穀粒群が移動する。そのため連続領域に穀粒量検出センサ52を配置した場合、周期Pの間継続して穀粒量検出センサ52に穀粒が衝突する。換言すれば、穀粒が穀粒量検出センサ52に衝突していないはずの0〜P/4及び3P/4〜Pの間に、穀粒が衝突する。
図13に示すように、穀粒タンク5に穀粒が投入されている各周期P1 、P2 、P5 において、0〜P/4及び3P/4〜Pの間の検出値は、2点鎖線にて示した検出値(離散領域に配した穀粒量検出センサ52の検出値)よりも大きい。これは穀粒が穀粒量検出センサ52に衝突していないはずの0〜P/4及び3P/4〜Pの間に、穀粒が衝突したためである。
また0〜P/4及び3P/4〜Pの間の検出値を、定常偏差を除去する補正に使用するためには、0〜P/4及び3P/4〜Pの間に穀粒が穀粒量検出センサ52に衝突していない又は衝突していないとみなせる必要がある。しかし0〜P/4及び3P/4〜Pの間に、穀粒が穀粒量検出センサ52に連続的に衝突しており、0〜P/4及び3P/4〜Pの間の検出値を、定常偏差を除去する補正に使用することはできない。
次にCPU100aによる穀粒量演算処理について説明する。図14は、CPU100aによる穀粒量演算処理を示すフローチャートである。
CPU100aは、刈取スイッチ80から信号を取り込み、刈取スイッチ80がオンであるか否か判定し(ステップS1)、刈取スイッチ80がオンになるまで待機する(ステップS1:NO)。刈取スイッチ80がオンである場合(ステップS1:YES)、CPU100aは、エンジン回転数センサ40から信号を取り込む(ステップS2)。そしてCPU100aは、EEPROM100dにアクセスしてLUT100hを参照し(ステップS3)、エンジン回転数センサ40から取り込んだ信号が示すエンジン回転数に対応する係数β(β1〜β6)を決定する(ステップS4)。
そしてCPU100aは、ピックアップセンサ158及び穀粒量検出センサ52から信号を取り込み(ステップS5)、P/4〜3P/4の間の力積を積算する(ステップS6)。このとき、CPU100aは、EEPROM100dにアクセスしてタイムスタンプを参照し、P/4〜3P/4の間における穀粒量検出センサ52の検出値を積算する。なお穀粒量検出センサ52から制御部100には、検出値が一定のサンプリング周期で順次入力されており、CPU100aは、タイムスタンプを参照することによって、P/4〜3P/4の間に入力された検出値を認識することができる。
次にCPU100aは、P/4〜3P/4の間に入力された検出値に、閾値αを超過した検出値が含まれるか否かを判定する(ステップS7)。閾値αを超過した検出値が含まれない場合(ステップS7:NO)、CPU100aは、ステップS12へ処理を進める。
閾値αを超過した検出値が含まれる場合(ステップS7:YES)、CPU100aは、EEPROM100dにアクセスして補正変数Xを参照し(ステップS8)、算出した力積を補正変数Xにて補正し(ステップS9)、補正値Dを求める。例えばCPU100aは、算出した力積から補正変数Xに格納された値を減算する。なお減算は補正の一例であり、補正変数Xに格納された値に基づいて、乗算又は除算してもよい。
そしてCPU100aは、補正値Dに係数βを適用する(ステップS10)。例えば補正値Dに係数βを乗算するか又は加算する。なお係数βの乗算又は加算は、係数βの適用の例示であってこれに限定されるものではない。次にCPU100aは、係数β適用後の補正値Dを積算する(ステップS11)。なおステップS11における積算値が穀粒タンク5に貯留した穀粒量に相当する。そしてCPU100aは、刈取スイッチ80から信号を取り込み、刈取スイッチ80がオフであるか否か判定する(ステップS12)。刈取スイッチ80がオフでない場合(ステップS12:NO)、すなわち刈取スイッチ80がオンである場合、CPU100aはステップS2へ処理を戻す。刈取スイッチ80がオフである場合(ステップS12:YES)、CPU100aは処理を終了する。なお上述した穀粒量演算処理は、周期P以内に実行されるリアルタイム処理として実行することができる。なおステップS7の判定は、ステップS5の次に実行してもよい。またステップS10の処理を省略し、補正値Dを積算してもよい。
次にCPU100aによる補正値算出処理について説明する。図15はCPU100aによる補正値算出処理を示すフローチャートである。
CPU100aは、刈取スイッチ80から信号を取り込み、刈取スイッチ80がオンであるか否か判定し(ステップS21)、刈取スイッチ80がオンになるまで待機する(ステップS21:NO)。刈取スイッチ80がオンである場合(ステップS21:YES)、ピックアップセンサ158及び穀粒量検出センサ52から信号を取り込み(ステップS22)、0〜P/4及び3P/4〜Pの間における力積を積算する(ステップS23)。このとき、CPU100aは、EEPROM100dにアクセスしてタイムスタンプを参照し、0〜P/4及び3P/4〜Pの間における穀粒量検出センサ52の検出値を積算する。なお穀粒量検出センサ52から制御部100には、検出値が一定のサンプリング周期で順次入力されており、CPU100aは、タイムスタンプを参照することによって、0〜P/4及び3P/4〜Pの間に入力された検出値を認識することができる。
そしてCPU100aは、積算した値に所定の処理を実行する(ステップS24)。例えば、変動率を考慮した係数を乗算するか又は図示しないスイッチからの入力に応じて、予めEEPROM100dに設定した所定の関数を適用する。次にCPU100aは、処理を施した値を補正変数Xに格納する(ステップS25)。
そしてCPU100aは、内蔵するタイマにて経時を開始し、所定時間、例えば1[s]が経過するまで待機する(ステップS26:NO)。所定時間が経過した場合(ステップS26:YES)、CPU100aは、刈取スイッチ80から信号を取り込み、刈取スイッチ80がオフであるか否か判定する(ステップS27)。刈取スイッチ80がオンである場合(ステップS27:NO)、CPU100aは、タイマをリセットし(ステップS28)、ステップS22へ処理を戻す。刈取スイッチ80がオフである場合(ステップS27:YES)、CPU100aは処理を終了する。
上述した実施の形態において、穀粒量検出センサ52に穀粒が当接すべきでない期間0〜P/4及び3P/4〜P並びに穀粒が当接すべき期間P/4〜3P/4は例示に過ぎず、これに限定されるものではなく、当接期間及び非当接期間は各コンバインの仕様に応じて決定される。
実施の形態1に係るコンバインにあっては、非当接期間に検出された穀粒量検出センサ52の検出結果を外乱による定常偏差とみなし、当接期間に検出された検出結果を非当接期間に検出された検出結果に基づいて補正し、外乱の影響を抑制することができる。また穀粒が穀粒量検出センサ52に連続的に当接することを回避することができる。
また穀粒量検出センサ52を、案内板156の終端側にて、案内面又は案内面の延長面よりもレベリングディスク150の反対側に配置するか又は案内板156の始端及びレベリングディスク150の回転中心を通過する各線の間に配置することによって、穀粒が穀粒量検出センサ52に連続的に当接することを確実に回避する。
また一の羽根部151によって投入された穀粒のみが移動する領域が穀粒タンク5内に発生し、該領域に穀粒量検出センサ52を配置する。これにより他の羽根部152によって投入された穀粒は穀粒量検出センサ52に当接しないので、例えば一の羽根部151の通過の検出に応じて、穀粒量検出センサ52は穀粒の衝突を検出し、穀粒量の演算が確実に実行される。
また穀粒量検出センサ52を穀粒タンク5内の上側に配置することで、穀粒タンク5が満杯になる前に穀粒量検出センサ52が穀粒に埋もれることを防止することができる。
(実施の形態2)
以下本発明を実施の形態2に係るコンバインを示す図面に基づいて詳述する。
図16はコンバインの揚穀コンベア7の上部付近の構成を略示する拡大断面図である。
天井部72は、上下方向に直交する天面部分72aと、該天面部分72aの周縁部に連なり、下降傾斜した複数の傾斜面部分72bと、該傾斜面部分72bの下端部から垂下した複数の連結側面部分72cとを備える。天面部分72aは、上側のスプロケット14及び穀粒タンク5に亘って、両者の上方に位置する。複数の連結側面部分72cの下端部は、穀粒タンク5から離隔した位置にある他の側面部71と、穀粒タンク5の上面部とにそれぞれ連結している。該上面部には開口5aが設けてあり、該開口5aと天井部72内側とは連通している。
天井部72内において、穀粒タンク5側に位置する傾斜面部分72bに穀粒量を検出する穀粒量検出センサ73が取り付けてある。穀粒量検出センサ73は、傾斜面部分72bから突出した取付具74を介して傾斜面部分72bに固定してあり、傾斜面部分72bから離れている。穀粒量検出センサ73は、歪みゲージ及び回路基板などを備える。穀粒量検出センサ73は、衝突した穀粒の衝撃値を検出することができる構成であればよい。例えば歪みゲージに代えて、圧電素子を備えてもよい。なお穀粒量検出センサ73と傾斜面部分72bとの離隔距離は、傾斜面部分72bによって案内された穀粒又は穀粒群が穀粒量検出センサ73に当接しない距離である。
穀粒タンク5内において、連結側面部の近傍に、穀粒を弾き飛ばすレベリングディスク150が設けてある。レベリングディスク150は、支持部材154を介して穀粒タンク5に支持されている。レベリングディスク150は、上下方向を回転軸方向としたディスク部151と、該ディスク部151の上面に立設し、回転中心の周囲に放射状に配された複数の羽根部152と、前記ディスク部151を回転駆動し、ディスク部151の下側に配されたモータ153とを備える。
図16に示すように、バケット17は、スプロケット14の周囲を回って折り返し移動する場合に、穀粒タンク5に穀粒を投入する。投入された穀粒の大半は、遠心力によって天面部分72aに向けて連続的に移動し、天面部分72a及び傾斜面部分72bを案内面として、それらの表面に沿って移動する。これらの穀粒又は穀粒群は穀粒量検出センサ73と傾斜面部分72bとの間を移動し、穀粒量検出センサ73に衝突せずに、レベリングディスク150に至る。一方、少量の穀粒が天面部分72aから離れた位置を離散的に移動し、穀粒量検出センサ73に衝突して、レベリングディスク150に至る。ディスク部151の回転によって、羽根部152は穀粒を弾き飛ばし、穀粒タンク5内に穀粒が平均的に貯留する。
図17はスプロケット14付近の構成を略示する分解斜視図である。
スプロケット14の両面に対向する各連結側面部分72cに、上下に長い楕円形の貫通孔72d1、72d2が設けてある。一方の貫通孔72d1の短径は他方の貫通孔72d2よりも長く、後述するピックアップセンサが挿入されるように設計してある。貫通孔72d1、72d2の両側にはそれぞれ雌ねじ部が設けてある。後述するチェーン軸180を支持する二つの支持板161、162が、貫通孔72d1、72d2にそれぞれ対向している。支持板161、162は、連結側面部分72cを間にしてスプロケット14の反対側に位置する。支持板161、162は貫通孔72d1、72d2に対応した挿入孔161b、162bを有している。挿入孔161b、162bの両側には上下に長い長孔161a、161a、162a、162aがそれぞれ設けてある。
一方の貫通孔72d1側に位置する支持板161には、バケット17の通過を検出するピックアップセンサ(通過検出手段)161cが設けてある。該ピックアップセンサ161cはホール素子などを有する磁気センサであり、挿入孔161b及び長孔161aの間であって、前記貫通孔72d1に挿入可能な位置にある。ピックアップセンサ161cは、コンベアチェーン16における上昇する側の列に対向している。両支持板161、162の上下位置を調整した後、長孔161a、162aにカラー164を介してボルト163を挿入し、雌ねじ部にねじ止めして、両支持板161、162が連結側面部分72cに固定される。
一方の支持板161の挿入孔161bから、スプロケット14が嵌合するチェーン軸180が挿入されており、更に両貫通孔72d1、72d2及び他方の挿入孔162bに挿入されている。チェーン軸180は、ベアリング181を介して両挿入孔161b、162bに回転可能に嵌合している。ケーシング70の内側において、チェーン軸180の中途部にカラー14aを介してスプロケット14が嵌合している。なおスプロケット15も回転可能なチェーン軸(不図示)に嵌合している。スプロケット14、15にコンベアチェーン16が掛架してあり、スプロケット14、15の回転によってコンベアチェーン16が駆動し、バケット17による穀粒の投入が行われる。
図18は固定部16c及びピックアップセンサ161cの構成を説明する略示断面図である。
コンベアチェーン16は複数の外リンク16a及び内リンク16bを備えており、外リンク16a及び内リンク16bは連結されている。各内リンク16bにはバケット17を固定し、磁性体からなる固定部16cが設けてある。バケット17は、略等しい間隔を空けて所定の固定部16cに固定してある。なおバケット17が固定されない固定部16cも存在する。固定部16cの支持板161側に凹部16dが形成してある。コンベアチェーン16が駆動した場合、上昇する側の列はピックアップセンサ161cの前を通過する。凹部16dがピックアップセンサ161cの前を通過した場合、ピックアップセンサ161cから通過信号が出力され、後述する制御部に入力される。なお内リンク16bが固定部16cを兼用してもよく、この場合、内リンク16bに凹部16dが形成される。
図19は支持板161の上下位置を調整した場合におけるピックアップセンサ161cの上下位置を説明する説明図である。
支持板161、162の上下位置を調整することによって、コンベアチェーン16のテンションを調整することができる。例えば長期間の使用によってコンベアチェーン16が摩耗した場合(いわゆるコンベアチェーン16が伸びた場合)、スプロケット14を上側に移動させて、コンベアチェーン16のテンションを回復させることができる。具体的にはチェーン軸180を支持している両支持板161、162を上方に移動させて、スプロケット14を移動させる。
図19の矢印にて示すように、支持板161を上側に上昇させた場合、支持板161に固定したピックアップセンサ161cも、支持板161と同じ距離上昇する。ピックアップセンサ161cが上昇した距離は、コンベアチェーン16の伸びに対応している。
バケット17を固定した固定部16cがピックアップセンサ161cを通過するタイミングは予め測定してあり、ピックアップセンサ161cが前記タイミングに合わせて検知結果を出力し、制御部が取込むようにしてある。なお制御部が、前記タイミングに合わせてピックアップセンサ161cの出力信号を取込むようにしてもよい。そのため支持板161のみが移動し、ピックアップセンサ161cが移動しない場合、ピックアップセンサ161cの出力信号を、取込むべきタイミングで取り込むことができないため、バケット17によって投入された穀粒量を正確に演算することができない。上述したように、支持板161と同じ距離上昇することによって、制御部は、前記タイミングに合わせてピックアップセンサ161cの出力信号を取込むことができる。なお前記タイミングはスプロケット14、15の回転速度に対応して決定されるようにしてある。例えばスプロケット14、15の回転速度の遅速に応じて、ピックアップセンサ161cの出力信号を取込む時点間の長さが長短となるようにしてある。またコンバインは図示しないエンジンを備えており、該エンジンの駆動によってスプロケット14、15が回転することから、エンジンの出力軸の回転速度に対応して前記タイミングを決定してもよい。
前記穀粒量検出センサ73及びピックアップセンサ161cからの出力に基づいて、穀粒タンクに貯留する穀粒量を演算する制御部がコンバインに搭載されている。図20は制御部100の構成を示すブロック図である。
制御部100はCPU100a、ROM100b、RAM100c及びEEPROM100dを備えている。CPU100aはROM100bに記憶された制御プログラムをRAM100cに読み込み、該制御プログラムに従って、穀粒量の演算を実行する。なおCPU100aはタイマを内蔵している。
EEPROM100dには、LUT100hが格納してある。LUT100hには、エンジンの回転数及び係数βの関係を示すテーブルが記憶されている(図11参照)。エンジン回転数の大小は、スプロケット14、15の回転数の大小に対応している。なお回転数は単位時間(例えば1分)あたりの回転数を示す。またEEPROM100dには、補正変数X及び閾値αが設定してある。
穀粒量検出センサ73及びピックアップセンサ161cの各出力信号は入力インタフェース100eを介して制御部100に入力されている。
以下、前述した図12を穀粒量検出センサ73の検出値とピックアップセンサ161cの検出値との関係を示すグラフの一例として使用し、図13を天面部分72a及び傾斜面部分72b上に位置する穀粒量検出センサ73の検出値とピックアップセンサ161cの検出値との関係を示すグラフの一例として使用し、定常偏差を除去する補正について説明する。
図12において、穀粒がバケット17によって穀粒タンク5に投入されている場合、P/4〜3P/4の間(当接期間)に、穀粒量検出センサ73からCPU100aに穀粒の衝突による検出値が入力される。0〜P/4及び3P/4〜Pの間に穀粒量検出センサ73からCPU100aに入力された検出値は、穀粒が穀粒量検出センサ73に衝突していない場合の検出値である。穀粒量検出センサ73には、P/4〜3P/4の間に瞬間的に穀粒が衝突し、0〜P/4及び3P/4〜Pの間(非当接期間)に穀粒は衝突しない。
図12Aにおいて、閾値αは、穀粒量検出センサ73の温度特性及び機体の傾きなどの外乱によって、穀粒量検出センサ73にて検出される検出値に相当する。穀粒がバケット17によって穀粒タンク5に投入されていない場合、理想的には、P/4〜3P/4の間に、穀粒量検出センサ73からCPU100aに穀粒の衝突による検出値は入力されない。しかし実際は、穀粒量検出センサ73からCPU100aに外乱による検出値(閾値α)が入力される。
CPU100aは、P/4〜3P/4の間に穀粒量検出センサ73から入力された検出値と閾値αとを比較する。該検出値に、閾値αを超過する値が含まれている場合、CPU100aは、P/4〜3P/4の間に入力された検出値を積算すべき対象に決定する(図12Aの周期P1 、P2 及びP5 における破線ハッチング部分の面積)。積算すべき値は、穀粒量検出センサ73への穀粒の衝突による力積に相当する。
検出値に、閾値αを超過する値が含まれていない場合、CPU100aは、P/4〜3P/4の間に入力された検出値を積算すべき対象から除外する(図12Aにおいて、周期P3 及びP4 部分)。
一方0〜P/4及び3P/4〜Pの間における穀粒量検出センサ73の検出値を積算した値(図12Aの実線ハッチング部分の面積)は定常偏差に相当する。該定常偏差は、エンジンの振動、凹凸のある圃場を走行中に穀粒量検出センサ73に伝播した振動及び穀粒量検出センサ73の特性などに起因する。
CPU100aは、所定の周期(例えば1[s])で、0〜P/4及び3P/4〜Pの間における穀粒量検出センサ73の検出値を積算した値に必要な処理を行い、EEPROM100dにアクセスして、補正変数Xに格納する。
CPU100aは、EEPROM100dにアクセスしてタイムスタンプを参照し、P/4〜3P/4の間における穀粒量検出センサ73の検出値を積算する。そして積算した値に含まれる定常偏差を補正変数Xに格納された値を用いて除去する。例えば積算した値から、補正変数Xに格納された値を減算する。
CPU100aは、定常偏差を除去した補正値DをRAM100cに記憶する。そして補正値Dに係数βを適用して、穀粒タンク5に貯留した穀粒量を求める。
穀粒量検出センサ73を天面部分72a及び傾斜面部分72bから離隔した位置に配した場合、定常偏差を除去する補正を実行することができる。穀粒量検出センサ73を天面部分72a及び傾斜面部分72b上に配置した場合、定常偏差を除去する補正を実行することができない。以下その理由を説明する。
図13Aは、時間と穀粒量検出センサ73の検出値との関係を示すグラフである。穀粒量検出センサ73の検出値は穀粒の衝突による歪み量を示しており、所定のサンプリング数における移動平均値である。図13Aの実線が天面部分72a及び傾斜面部分72b上に配置した穀粒量検出センサ73の検出値を示す。破線は、天面部分72a及び傾斜面部分72bから離隔した位置に配した穀粒量検出センサ73の検出値を示す。図13Bは、時間とピックアップセンサ161cの検出値との関係を示すグラフである。なお以下の説明において図13の周期Pの添字は適宜省略する。
図16に示すように、天面部分72a及び傾斜面部分72b上を、横広がりに連続した帯状の穀粒群が移動する。そのため天面部分72a及び傾斜面部分72b上に穀粒量検出センサ73を配置した場合、周期Pの間継続して穀粒量検出センサ73に穀粒が衝突する。換言すれば、穀粒が穀粒量検出センサ73に衝突していないはずの0〜P/4及び3P/4〜Pの間に、穀粒が衝突する。
図13に示すように、穀粒タンク5に穀粒が投入されている各周期P1 、P2 、P5 において、0〜P/4及び3P/4〜Pの間の検出値は、破線にて示した検出値(天面部分72a及び傾斜面部分72bから離隔した位置に配した穀粒量検出センサ73の検出値)よりも大きい。これは穀粒が穀粒量検出センサ73に衝突していないはずの0〜P/4及び3P/4〜Pの間に、穀粒が衝突したためである。
また0〜P/4及び3P/4〜Pの間の検出値を、定常偏差を除去する補正に使用するためには、0〜P/4及び3P/4〜Pの間に穀粒が穀粒量検出センサ73に衝突していない又は衝突していないとみなせる必要がある。しかし0〜P/4及び3P/4〜Pの間に、穀粒が穀粒量検出センサ73に連続的に衝突しており、0〜P/4及び3P/4〜Pの間の検出値を、定常偏差を除去する補正に使用することはできない。
実施の形態2に係るコンバインにおいても、実施の形態1と同様に、穀粒量演算処理(図14参照)、補正値算出処理(図15参照)が実行される。
実施の形態2に係るコンバインにあっては、バケット17から投入された穀粒が当接すべきでない期間(非当接期間)に検出された穀粒量検出センサ73の検出結果を外乱による定常偏差とみなし、当接すべき期間(当接期間)に検出された検出結果を非当接期間に検出された検出結果に基づいて補正するので、外乱の影響を抑制することができる。
また傾斜面部分72bから離隔した位置に穀粒量検出センサ73を配してあるので、少量の穀粒が当接期間に瞬間的に当接し、当接期間における検出値と、非当接期間における検出値との差異が明確になり、当接期間における検出値から非当接期間の検出値に基づいて、定常偏差を除去することができる。なお穀粒量検出センサ73は、少量の穀粒が瞬間的に当接する位置であればよく、傾斜面部分72bから離隔した位置に限定されない。例えば天面部分72aから離隔した位置であってもよい。
またコンベアチェーン16の伸びに応じて、スプロケット14、15を支持する支持板161、162の位置を調整した場合に、ピックアップセンサ161cの位置も同様に調整され、バケット17による穀粒の投入タイミングを調整後も正確に求めることができる。
実施の形態2に係るコンバインの構成の内、実施の形態1と同様な構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
今回開示した実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、特許請求の範囲内での全ての変更及び特許請求の範囲と均等の範囲が含まれることが意図される。