JP5888887B2 - コンクリート構造物における漏水を伴うひび割れ用補修材料及び該補修材料を用いた該ひび割れの補修方法 - Google Patents

コンクリート構造物における漏水を伴うひび割れ用補修材料及び該補修材料を用いた該ひび割れの補修方法 Download PDF

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Description

本発明は、コンクリート構造物における漏水を伴うひび割れ用補修材料及び該補修材料を用いた該ひび割れの補修方法に関し、特にコンクリート構造物において漏水を伴うひび割れに用いる、自己治癒材料を含有する補修材料及び該補修材料を用いた該ひび割れの補修方法に関する。
建築又は土木構造物の構築に用いられるコンクリートは、セメント、水、骨材等を含み、セメントの水和反応によって硬化する性質を有する。この硬化後のコンクリートは、応力の作用、温度変化あるいは乾燥等による体積変化が生じること等によって、ひび割れが発生する場合がある。コンクリートにおけるひび割れは、漏水、鉄筋腐食等を発生させ、耐久性を大きく低下させる主要因となるため、ひび割れの程度が大きいと補修等を行うことが必要である。例えば、鉄道あるいは自動車用のコンクリート高架橋、トンネル等のコンクリート構造物において、コンクリート高架橋の床版及び橋脚、トンネルの覆工コンクリートに発生したひび割れに対して補修用充填材の注入や断面修復等の補修が行われる。
しかしながら、このコンクリート高架橋の床版及び橋脚、トンネルの覆工コンクリートに発生したひび割れを補修する場合、供用中の高架橋あるいはトンネルにおいて、通行止めを含む交通規制の実施等を行う必要があるため、工期が長期間に渡り、又、多大な費用がかかるという問題があった。更に、雨水や地下水により発生した漏水を伴うひび割れを補修する場合、エポキシ系樹脂やウレタン系樹脂等の有機系補修材料は、水の存在する湿潤状態では、注入不良、硬化不良、付着不良等を起こすため、補修自体が非常に困難となってしまうという問題もあった。
更に露天で供用される高架橋等のコンクリート構造物は、環境(季節や天候による温度、湿度、日射等)の変化や上部を走行する列車や車両による荷重や振動等に起因して、コンクリート構造物のひび割れ幅が経時に伴い変化する。そのため、一度ひび割れを補修しても、環境(季節や天候による温度、湿度、日射等)の変化や上部を走行する列車や車両による荷重や振動等によって再度ひび割れが発生する場合があり、これらコンクリート構造物の外部環境に起因するひび割れ幅の変化に追従する補修技術が望まれている。
かかる点に鑑みて、コンクリート構造物に修復、防水、止水工事等を行わなかった場合であっても、止水性能や耐久性を維持することができるもので、ひび割れが発生してもこれを自ら修復できる自己治癒コンクリートが開発されている(例えば、特許文献1、2、3、4参照)。
しかし、上述したような自己治癒コンクリートは、確実なひびわれ自己治癒性能が得られるものではなく、ひび割れ発生後の止水性能の更なる向上が求められている。
又、建築構造物に用いられる場合、コンクリートの打設直後の間もない期間だけでなく、長い時間が経過した後にひび割れが生じた場合であっても、十分な自己治癒性を発揮し得ることも求められている。
特に上述した特許文献4では、自己治癒性能を有する材料(アルミノシリケート、マグネシウムシリケート、炭酸塩、酸化カルシウム、膨張材等)をコンクリートに加えて、その化学的作用を利用してひび割れ発生時にコンクリート自身が能動的にひび割れを治癒する技術が提案されているが、これら自己治癒性能を有する材料は、吸水性又は膨潤性あるいは水との反応活性が高いため、コンクリートにそのまま練り混ぜるとコンクリートのスランプ低下を引き起こし、スランプ回復のため減水剤の添加量の増大をせざるを得ず、コンクリートの凝結を著しく遅延させたり、あるいは製造コストを高騰させてしまう等の問題がある。
又、特許文献5では、吹付け材料に自己治癒材料を混合してトンネル構造体の覆工コンクリートの防水(止水)を行う補修技術が提案されているが、吹付けによる大規模な補修であるため、供用中のコンクリート構造物(高架橋あるいはトンネル等)に適用した場合、コンクリート構造物の供用を中止せざるを得ないという問題があった。
特許第3658568号公報 特開2005−239482号公報 特開2007−332010号公報 特開2009−190937号公報 特開2010−180107号公報
本発明の目的は、供用中のコンクリート構造物、例えば高架橋やトンネル等に発生した漏水を伴うひび割れに対して、コンクリート構造物の供用を妨げることなく、該ひび割れを効果的に補修して漏水を止めることが可能な補修材料及び補修方法を提供することである。
本発明のコンクリート構造物における漏水を伴うひび割れの補修材料は、セメント、水及び自己治癒材料を含有するペースト(但し、ポリ塩化アルミニウムは含まない)であって、前記自己治癒材料は、層状ケイ酸塩鉱物、長石、オキシカルボン酸又はジカルボン酸を含有することを特徴とする。
また、本発明の他のコンクリート構造物における漏水を伴うひび割れの補修材料は、セメント、水、細骨材及び自己治癒材料を含有するモルタル(但し、ポリ塩化アルミニウムは含まない)であって、前記自己治癒材料は、層状ケイ酸塩鉱物、長石、オキシカルボン酸又はジカルボン酸を含有し、前記細骨材は、珪石、長石、陶石、リン酸カルシウム、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩、リチウムを含有する無機材料又は鉱物、マグネシウムを含有する無機材料又は鉱物、非晶質シリカ含有無機材料、高炉スラグからなる群より選ばれる少なくとも1種の材料であって且つ最大粒径が1mm以下であることを特徴とする、コンクリート構造物における漏水を伴うひび割れの補修材料である。
なお、本発明における最大粒径は、日本工業規格JIS Z 8801−1「試験用ふるい−第1部:金属製網ふるい」に規定される公称目開き1mmのふるいを通過することで評価したものである。
好適には、前記本発明のコンクリート構造物における漏水を伴うひび割れ用補修材料において、前記自己治癒材料は、更に、リン酸カルシウム、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩、マグネシウムを含有する無機材料又は鉱物、非晶質シリカ含有無機材料、エトリンガイト系及び/又は生石灰系膨張材、酸化カルシウム、短繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種類以上の補助材料を含有することを特徴とする。
本発明のコンクリート構造物における漏水を伴うひび割れの補修方法は、漏水を伴うひび割れが発生したコンクリート構造物において、コンクリート表面のひび割れの直上であって且つ該ひび割れ部分に沿って、コンクリート表面部分に上記本発明のいずれかの補修材料を塗布することを特徴とする、コンクリート構造物における漏水を伴うひび割れの補修方法である。
他の本発明のコンクリート構造物における漏水を伴うひび割れの補修方法は、漏水を伴うひび割れが発生したコンクリート構造物において、コンクリート表面のひび割れの直上であって且つ該ひび割れ部分に沿って削孔して複数の孔を設けた後、上記本発明のいずれかの補修材料を該孔に充填又は注入し、更に該補修材料を充填又は注入した孔を含む漏水を伴うひび割れが発生したコンクリート表面部分に上記本発明の他の補修材料を塗布することを特徴とする、コンクリート構造物における漏水を伴うひび割れの補修方法である。
好適には、上記本発明のコンクリート構造物における漏水を伴うひび割れの補修方法において、補修材料を塗布、充填又は注入する前に、下地処理材としてケイ酸塩水溶液を予め塗布することを特徴とする。
本発明のコンクリート構造物における漏水を伴うひび割れ用補修材料及び、該補修材料を用いた該ひび割れの補修方法によれば、コンクリート構造物、例えば高架橋のコンクリート上部工、床版底面及び橋脚、橋台側面、トンネルの覆工コンクリート内側に発生した漏水を伴うひび割れ、あるいはオフィスビル又はマンション等の建築構造物のスラブ、壁等に発生した漏水を伴うひび割れに対して、漏水量(漏水速度)を低下させ、自己治癒材料の治癒能力を効果的に発揮させることが可能となる。
特に、露天で供用される高架橋等のコンクリート構造物において、環境(季節や天候による温度、湿度、日射等)の変化や上部を走行する列車や車両による荷重や振動等に起因するコンクリート構造物のひび割れ幅の経時変化に対する追従性を有するため、一度修復したひび割れ部分において、ひび割れ幅が変化(ひび割れが再度発生)しても、残存する補修材料によってひび割れが再度自己治癒する。即ち、本発明による補修材料及び該補修方法によれば、ひび割れ幅の経時変化に追従可能である。
更に供用中のコンクリート構造物に発生したひび割れの漏水防止を行う際に、通行止め等の供用を妨げることなく、又は、供用中止の期間を短縮することを可能とする。
以下、本発明を好適な実施形態に基づいて説明するが、これらに限定されるものではない。
本発明のコンクリート構造物における漏水を伴うひび割れの補修材料は、セメント、水及び自己治癒材料を含有するペースト(但し、ポリ塩化アルミニウムは含まない)であって、前記自己治癒材料は、層状ケイ酸塩鉱物、長石、オキシカルボン酸又はジカルボン酸を含有する、コンクリート構造物における漏水を伴うひび割れ用補修材料である。
また、他の本発明のコンクリート構造物における漏水を伴うひび割れの補修材料は、セメント、水、細骨材及び自己治癒材料を含有するモルタル(但し、ポリ塩化アルミニウムは含まない)であって、前記自己治癒材料は、層状ケイ酸塩鉱物、長石、オキシカルボン酸又はジカルボン酸を含有し、前記細骨材は、珪石、長石、陶石、リン酸カルシウム、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩、リチウムを含有する無機材料又は鉱物、マグネシウムを含有する無機材料又は鉱物、非晶質シリカ含有無機材料、高炉スラグからなる群より選ばれる少なくとも1種の材料であって且つ最大粒径が1mm以下である、コンクリート構造物における漏水を伴うひび割れの補修材料である。
即ち、本発明の補修材料は、上記自己治癒材料に、セメント及び水、又は、セメント及び水及び細骨材を加えて混練して得られた、コンクリートのひび割れ幅の経時変化に対する追従性を有するペースト又はモルタルである。
ここで、自己治癒材料は、層状ケイ酸塩鉱物、長石、オキシカルボン酸又はジカルボン酸を含む材料であり、好適には、更に、リン酸カルシウム、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩、マグネシウムを含有する無機材料又は鉱物、非晶質シリカ含有無機材料、エトリンガイト系及び/又は生石灰系膨張材、酸化カルシウム、短繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種類以上の補助材料が含有される。
前記自己治癒材料に含まれる層状ケイ酸塩鉱物(アルミノシリケート、マグネシウムシリケート)としては、粘土鉱物のカオリン族に属するカオリナイト、ハロイサイト、ディッカイト、ナクライト、オーディライト、粘土鉱物のタルク−パイロフィライト族に属するタルク(滑石)、ウィレムサイト、ケロライト(結晶性の悪いタルク)、ピメライト(結晶性の悪いウィレムライト)、パイロフィライト(葉蝋石、蝋石)、粘土鉱物のスメクタイト族に属するサポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチーブンサイト、スインホルダイト、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、ボルコンスコアイト、粘土鉱物のバーミキュライト族に属する3八面体型バーミキュライト、2八面体型バーミキュライト、粘土鉱物の雲母族に属するマスコバイト(白雲母)、フロゴパイト(金雲母)、アンナイト(鉄雲母)、イーストナイト、シデロフィライトテトラフェリ鉄雲母、ポリリシオナイト、セラドン石、鉄セラドン石、鉄アルミノセラドン石、アルミノセラドン石、砥部雲母、ソーダ雲母、セリサイト(絹雲母)、粘土鉱物の層間欠損型雲母族に属するイライト、海緑石、ブラマーライト、ウォンネサイト、粘土鉱物の脆雲母族に属するクリントナイト、キノシタ、ヒデ雲母、真珠雲母、粘土鉱物の緑泥石族に属するクリノクロア(緑泥石)、シャモサイト、ペナンタイト、ニマイト、ベイリクロア、ドンバサイト、クッケアイト、スドーアイト等が挙げられる。
これらの層状ケイ酸塩鉱物(アルミノシリケート、マグネシウムシリケート)の中では、特に、モンモリロナイト((Na,Ca)0.33(Al,Mg)2Si10(OH)・nHO、n=不定)、タルク(滑石、3MgO・4SiO・HO)の使用が好ましく、更にモンモリロナイトの中でもNa−ベントナイト、Ca−ベントナイト、酸性白土、アタパルジャイト(パリゴルスカイト、MgSi20(OH)(OH・HO、ただしMgの一部はAlに置換されている)、セピオライト(MgSi1230(OH(OH)・6〜8HO)の使用が、膨潤作用によるひび割れの自己治癒性能に優れているため、特に好ましい。
又、層状ケイ酸塩鉱物(アルミノシリケート、マグネシウムシリケート)は、粒径10〜100μm程度に粉砕された一般の工業用グレードのものを使用することができる。
更に、層状ケイ酸塩鉱物は、上記例示した鉱物を単体で、又は任意の組合せで且つ任意の混合割合で混合したものを使用することもできる。
該層状ケイ酸塩鉱物は、自己治癒材料を含む補修材料中、3〜20質量%含まれていることが、良好なひび割れの自己治癒性能を発現させる点から好ましい。
更に、前記自己治癒材料に含まれる長石としては、斜長石に属する灰長石(CaAlSi)、曹長石(NaAlSi)、灰長石及び曹長石の連続固溶体を含む鉱物、アルカリ長石に属する正長石(KAlSi)、曹長石(NaAlSi)、正長石及び曹長石の連続固溶体を含む鉱物等が挙げられる。
これらの中では、セメント等の強アルカリ性物質あるいはオキシカルボン酸又はジカルボン酸と反応しやすい灰長石の使用が特に好ましいが、安価で入手が容易な窯業原料用の曹長石、正長石を主成分とする鉱物を使用しても良い。これらは、いずれも粒径10〜100μm程度に粉砕された一般の工業用グレードのものを使用することができる。又、長石は、上記例示した鉱物を単体で、又は任意の組合せで且つ任意の混合割合で混合したものを使用することもできる。
該長石は、自己治癒材料を含む補修材料中、2〜10質量%含まれていることが、良好なひび割れの自己治癒性能を発現させる点から好ましい。
更に、前記自己治癒材料に含まれるオキシカルボン酸又はジカルボン酸としては、オキシカルボン酸(ヒドロキシカルボン酸;1分子中に水酸基とカルボキシル基をもつ化合物)では、クエン酸、L−酒石酸、リンゴ酸、乳酸等が挙げられる。ジカルボン酸(1分子中2つのカルボキシル基をもつ化合物)では、シュウ酸、マロン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、イタコン酸(メチレンコハク酸)等が挙げられる。これらの中でも、クエン酸、L−酒石酸、シュウ酸、マロン酸、フマル酸、マレイン酸が安価で入手が容易であることから特に好ましい。これらオキシカルボン酸又はジカルボン酸は、工業用グレードで、粒径10〜100μm程度に調整された粉体状態のものを使用することが好ましく、単体又は任意の種類及び粒径の異なる複数のオキシカルボン酸又はジカルボン酸を使用することもできる。オキシカルボン酸又はジカルボン酸は、自己治癒材料を含む補修材料中、0.1〜3質量%含まれていることが、良好なひび割れの自己治癒性能を発現させる点から好ましい。
本発明のコンクリート構造物における漏水を伴うひび割れの補修材料は、前記自己治癒材料混合物にセメント及び水と混練したペースト、又は、前記自己治癒材料混合物にセメント、細骨材及び水と混練したモルタルである。
該セメントとしては、ポルトランドセメント、その他の混合セメント、超速硬系セメント等を特に制限なく使用できる。ポルトランドセメントとしては、低熱、中庸熱、普通、早強、超早強、耐硫酸塩等の各種ポルトランドセメントが挙げられ、又、混合セメントとしては、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント等が挙げられる。超速硬系セメントとしては、アルミナセメント、11CaO・7Al・CaX系(XはF等のハロゲン元素)セメント、アウイン(カルシウムサルフォアルミネート(3CaO・3Al・CaSO))系セメント、更に、前述の各種セメントを通常より大きな粒度(例えば、最大粒径が100〜300μm、ブレーン比表面積が500〜2000cm/g)に調整した粗粉セメントが挙げられる。
これらの中でも、安価なポルトランドセメントが好ましく、さらにモルタルやコンクリートの硬化体のひび割れを抑制するためには、モルタルやコンクリートの硬化体の乾燥収縮(自己収縮)が小さくなるビーライト(CS)含有量の高い低熱ポルトランドセメント又は中庸熱ポルトランドセメントの使用が特に好ましい。又、各種セメントの通常より大きな粒度(例えば、最大粒径が100〜300μm、ブレーン比表面積が500〜2000cm/g)に調整した粗粉セメントを使用した場合は、補修材料の自己治癒性能の長期温存効果が向上するため好ましい。
更に、これらセメントは、上記例示したセメントを単体で、又は任意の組合せで且つ任意の混合割合で混合したものを使用することもできる。
該セメントの添加量は、前記自己治癒材料10質量部に対して50〜100質量部の範囲内が好適である。セメントの添加量が50質量部未満では、補修材料のペースト又はモルタルの強度が不足し、重力の作用によって、ひび割れの生じたコンクリートに塗布又は塗布した補修材料がダレたり、脱落(落下)する危険性が増大するため好ましくない。
一方、セメントの添加量が100質量部を超えると補修材料中の自己治癒材料の含有量が低くなり、コンクリート構造物における漏水を伴うひび割れに対する自己治癒性能が十分に得られないため好ましくない。
又、配合する水としては、上記セメントの水和反応や補修対象となるひび割れの生じたコンクリート硬化体に悪影響を及ぼす有機物、塩化物イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等を含有しなければ特に限定されず、上水道水、工業用水、地下水、河川水、雨水、蒸留水、化学分析用の高純度水(超純水、純水、イオン交換水)等が使用できる。これらの中でも、安価で品質の安定している上水道水又は工業用水の使用が好ましい。
該水の添加量は、自己治癒材料を含む補修材料及びセメントの合計量10質量部に対して2〜10質量部の範囲内が好適である。水の添加量が2質量部未満では、水が不足して、ひび割れの生じたコンクリートに対する塗布、充填、注入の用途に適したペースト又はモルタルが得られないため不適当である。一方、水の添加量が10質量部を超えると、水が過剰となり塗布又は充填(注入)に不具合が生じ、又、補修材料のペースト及びモルタルの強度が不足し、重力の作用によって、ひび割れの生じたコンクリートに塗布又は充填(注入)した補修材料がダレたり、脱落(落下)する危険性が増大するため不適当である。
更に、水の添加量を減らすためポリカルボン酸系高性能減水剤等のコンクリート用化学混和剤を併用することもできる。化学混和剤としては、液体状又は粉末状の減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤等のコンクリートに用いられる減水剤として公知のものを制限なく適用できる。化学混和剤は、上記セメントに対して、0.1〜3.0質量%含まれることが好ましい。
また、前記自己治癒材料には、必要に応じて、リン酸カルシウム、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩、マグネシウムを含有する無機材料又は鉱物、非晶質シリカ含有無機材料、エトリンガイト系及び/又は生石灰系膨張材、酸化カルシウムを含有する無機材料、短繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種類以上の補助材料を更に配合することができる。
前記自己治癒材料の補助材料となるリン酸カルシウムとしては、Ca(HPO(第1リン酸カルシウム)、CaHPO(第2リン酸カルシウム)、Ca(PO(第3リン酸カルシウム)、骨灰(リン酸カルシウム=Ca(PO)等が挙げられる。
これらのリン酸カルシウムの中では、CaHPO(第2リン酸カルシウム)は、コンクリートのひび割れ部分において、セメント鉱物の水和物として生成する水酸化カルシウム又は、該層状ケイ酸塩鉱物(マグネシウムシリケート)と反応し、結合力が高いCa(PO(OH)(ハイドロキシアパタイト=水酸燐灰石)、Ca18Mg(PO14(ウィットロッカイト)、リン酸三カルシウム、リン酸水素カルシウム二水和物、リン酸水素カルシウム無水和物、非晶質リン酸カルシウム、リン酸八カルシウム等のリン酸カルシウム化合物を生じて、ひび割れ部分に緻密な水和物を形成することができるため、特に好ましい。また、リン酸カルシウムは、粒径10〜100μm程度に粉砕された一般の工業用グレードのものを使用することが好ましく、上記例示した鉱物を単体で、又は任意の組合せで且つ任意の混合割合で混合したものを使用することもできる。
リン酸カルシウムは、自己治癒材料を含む補修材料中、1〜5質量%含まれていることが、良好なひび割れの自己治癒性能を発現させる点から好ましい。
また、前記自己治癒材料の補助材料となるアルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩としては、例えば、CaCO(炭酸カルシウム;カルサイト、アラゴナイト、バテライト)、ドロマイト(苦灰石、CaCO・MgCO)、マグネサイト(菱苦土鉱、主成分=MgCO)、LiCO(炭酸リチウム)、NaCO(炭酸ナトリウム)、KCO(炭酸カリウム)、MgCO(炭酸マグネシウム)、LiHCO(炭酸水素リチウム)、NaHCO(炭酸水素ナトリウム)、KHCO(炭酸水素カリウム)、Mg(HCO(炭酸水素マグネシウム)等が挙げられる。
これらのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩としては、LiCO(炭酸リチウム)、MgCO(炭酸マグネシウム)を含む軽質炭酸マグネシウム、CaCO(炭酸カルシウム)を含む軽質炭酸カルシウムが、コンクリートのひび割れを修復する特性に優れることから特に好ましい。アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩は、粒径10〜100μm程度に粉砕された一般の工業用グレードのものを使用することが好ましく、上記例示した材料又は鉱物を単体で、又は、任意の組合せで且つ任意の混合割合で混合したものを使用することもできる。
該アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩は、自己治癒材料を含む補修材料中、1〜5質量%含まれていることが、良好なひび割れの自己治癒性能を発現させる点から好ましい。
また、前記自己治癒材料の補助材料となるマグネシウムを含有する無機材料又は鉱物は、人工物としては、MgCO(炭酸マグネシウム)、MgO(酸化マグネシウム=マグネシア、ペリクレース)、Mg(OH)(水酸化マグネシウム=ブルーサイト)、MgSO(硫酸マグネシウム)、Mg(NO(亜硝酸マグネシウム)、Mg(NO(硝酸マグネシウム)、2MgO・3SiO・nHO(ケイ酸マグネシウム、n=不定)、MgAl(CO)(OH)16・4HO(ハイドロタルサイト)等の工業用マグネシウム化合物、フェロニッケル精錬時の副産物であるフェロニッケルスラグ除冷滓及び日本工業規格JIS A 5011−2に適合するコンクリート用骨材用のフェロニッケルスラグ細骨材等のマグネシウム含有スラグ、フォルステライト煉瓦及びマグサイト煉瓦等のマグネシウム含有耐火物等が挙げられる。又、天然物としては、マグネシウムを多量に含有するドロマイト(苦灰石、CaCO・MgCO)、マグネサイト(菱苦土鉱、主成分=MgCO)、かんらん岩=かんらん石(ヅン岩、オリビンサンド、フォルステライトサンド、ダナイトサンド等、主成分=(Mg,Fe)SiO)、蛇紋岩(3MgO・2SiO・2HO、一部ブルーサイト=Mg(OH)を含む)、角閃石(Mg(Si11(OH)、ただし石綿=アスベストを含むものは除く)、輝石、頑火輝石(エンスタタイト=MgSi)、透輝石(CaMgSi)、コーリンガイト(Mg10FeCO(OH)24・2HO)、スジクレナイト(MgFe(OH)16CO・4HO)、パイロオーライト(MgFe(OH)16CO・4HO)、ブルグナテライテ(MgFe(OH)13CO・4HO)、ネスケホニト(MgCO・3HO)等のマグネシウム含有鉱物等が挙げられる。
これらマグネシウムを含有する無機材料又は鉱物は、一部膨張反応性を有する場合があるため、自己治癒材料を含む補修材料ペースト硬化体及び補修材料モルタル硬化体のポップアウトを避けるため、粒径10〜100μm程度に粉砕された一般の工業用グレードのものを使用することが好ましく、ひび割れの自己治癒速度を重視する場合は、高価ではあるがマグネシウム含有量の高い炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウムの使用が好ましい。
一方、製造コストの低減を図るためには、マグネシウム含有量は低いが、極めて安価なマグネシウムを含有する鉱物及びスラグ、耐火物の使用が好ましい。
これらマグネシウムを含有する無機材料及び鉱物は、上記例示した無機材料又は鉱物を単体で、又は任意の組合せで且つ任意の混合割合で混合したものを使用することもできる。該マグネシウムを含有する無機材料及び鉱物は、自己治癒材料を含む補修材料中、1〜5質量%含まれていることが、良好なひび割れの自己治癒性能を発現させる点から好ましい。
また、前記自己治癒材料の補助材料となる非晶質シリカ含有無機材料としては、非晶質(ガラス質)のシリカ(二酸化ケイ素=SiO))を少なくとも50質量%以上含有し、いわゆるポゾラン反応性を有する無機材料及び鉱物である。該非晶質シリカ含有無機材料の人造物としては、フライアッシュ(石炭灰)、シリカフューム(フュームドシリカ)、電融ジルコニア製造時に回収されるシリカ質微粉末、光ファイバー等のシリカガラス製造時に回収されるシリカ質微粉末、金属シリコン(Si、ケイ素)を燃焼(酸化)させて製造する合成シリカ質微粉末、ケイ素塩化物を気化し高温の水素炎中において気相反応によって合成するシリカ質微粉末、ケイ酸ソーダ水溶液のpHを調整して合成する沈降性シリカ又はシリカゲル、もみ殻又は稲わらの燃焼灰、カオリン鉱物(カオリナイト=Al・2SiO・2HO、ディカイト(Al・2SiO・2HO)、ハロイサイト(Al・2SiO・4HO)等)を500〜900℃程度で焼成したメタカオリン等に代表される焼成粘土、窯業から発生する廃材(廃瓦、廃煉瓦、廃陶器、廃陶磁器等)、製鋼時に発生する高炉フューム等が挙げられる。又、該非晶質シリカ含有無機材料の天然物としては、珪酸質白土、凝灰岩(流紋岩質凝灰岩、ゼオライト質凝灰岩等)、デイサイト、珪藻土、酸性火山岩、火山灰、シラス等が挙げられる。
該非晶質シリカ含有無機材料としては、安価で入手の容易なフライアッシュ(石炭灰)の使用が好ましく、フライアッシュとしては、日本工業規格JIS A 6201「コンクリート用フライアッシュ」に定められたI種規格品、II種規格品、III種規格品、IV種規格品、最大粒径が10〜20μm程度の特定粒径(粒度分布)に調整された分級フライアッシュ、加圧流動床石炭灰(PFBC)に代表されるCaOを10質量%以上含有する高カルシウム型のフライアッシュ等が挙げられる。これらの中では、不純物の少ないJISのI種又はII種の規格適合品、分級フライアッシュ、CaOを10質量%以上含有する高カルシウム型のフライアッシュの使用がより好ましく、更に分級フライアッシュ、CaOを10質量%以上含有する高カルシウム型のフライアッシュは、ポゾラン反応性が高いので特に好ましい。
これらの非晶質シリカ含有無機材料は、粒径10〜100μm程度に調整された一般の工業用グレードのものを使用することが好ましく、上記例示した材料を単体で、又は任意の組合せで且つ任意の混合割合で混合したものを使用することもできる。
該非晶質シリカ含有無機材料は、自己治癒材料を含む補修材料中、良好なひび割れの自己治癒性能を発現させる点から1〜10質量%含まれていることが好ましい。
また、前記自己治癒材料の補助材料となる前記エトリンガイト系及び/又は生石灰系膨張材としては、市販のエトリンガイト系(カルシウムサルフォアルミネート系)膨張材、生石灰系膨張材、エトリンガイト−生石灰複合系膨張材、膨張材の有効成分であるアウイン=カルシウムサルフォアルミネート(3CaO・3Al・CaSO)あるいは遊離石灰(CaO)あるいは遊離石膏(CaSO)を含有するセメントクリンカ又はセメント、非焼成の膨張材成分含有材料(石膏、アウイン、酸化カルシウムの粉末をそれぞれ任意の組合せ及び混合比率で混合したもので、混合後に焼成処理を施さないもの)等が挙げられる。これら膨張材又は非焼成の膨張材成分含有材料の中でも品質の安定している日本工業規格JIS A 6202「コンクリート用膨張材」の規格を満足するものが好ましい。
該膨張材材料は、粒径10〜100μm程度に調整された一般の工業用グレードのものを使用することが好ましく、上記例示した材料を単体で、又は任意の組合せで且つ任意の混合割合で混合したものを使用することもできる。自己治癒材料を含む補修材料中に、1〜10質量%含まれていることが、良好なひび割れの自己治癒性能を発現させる点から好ましい。
また、前記自己治癒材料の補助材料となる酸化カルシウム(生石灰、CaO)を含有する材料としては、市販の製銑焼結用生石灰、製鋼転炉用生石灰、硬焼(死焼)生石灰、土質改良用生石灰、製鋼時の副産物で酸化カルシウムを多量に含む転炉スラグ及び電気炉還元スラグ等が挙げられる。
本発明では、通常の生石灰より消化速度(水和反応速度)が遅い硬焼(死焼)生石灰、超硬焼生石灰の使用が好ましい。酸化カルシウムを含有する材料は、水との反応によりCa(OH)を生じるが、この反応は体積膨張であり、膨張材としても機能する。
また、前記アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩と、該酸化カルシウムを含有する無機材料を組み合わせることで、これらの両成分の反応による炭酸カルシウム(カルサイト、CaCO)等の安定性の高い反応生成物をコンクリートのひび割れに部分に析出(生成)させることができ、一層優れたひび割れ自己治癒性能が得られるようになる。
又、これら酸化カルシウムを含有する無機材料は、一部膨張反応性を有する場合があるため、自己治癒材料を含む補修材料ペースト硬化体及び補修材料モルタル硬化体のポップアウトを避けるため、粒径10〜100μm程度に調整された粉体を使用することが好ましく、単体又は任意の種類及び粒径の異なる複数の酸化カルシウムを使用することもできる。
該酸化カルシウムを含有する材料は、自己治癒材料を含む補修材料中に、1〜10質量%含まれていることが、良好なひび割れの自己治癒性能を発現させる点から好ましい。
また、前記自己治癒材料の補助材料となる短繊維としては、アスベスト(石綿)のように人体に有害な短繊維を除けば特に制限されず、高分子繊維、無機繊維、金属繊維等のいずれの材質のものでも使用することができる。
高分子繊維としては、ビニロン系高分子繊維、ポリプロピレン系高分子繊維、ポリビニルアルコール系高分子繊維、ポリアクリル系高分子繊維、ポリアクリルニトリル系高分子繊維、ポリアミド系高分子繊維、ポリウレタン系高分子繊維、セルロース系高分子繊維、レーヨン系高分子繊維、アセテート系高分子繊維等が挙げられる。
無機繊維としては、耐アルカリ性ガラス繊維、ロックウール、スラグウール、ワラストナイト繊維、塩基性硫酸マグネシウム繊維、チタン酸カリウム繊維、アタパルジャイト(パリゴルスカイト)、セピオライト、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等が挙げられる。金属繊維としては、鋼繊維、高張力鋼繊維、ステンレス繊維等が挙げられる。
これらの中では、有機繊維としては安価なビニロン系高分子繊維、ポリプロピレン系高分子繊維の使用が好ましい。無機繊維としては、自己治癒材料及びセメントとの親和性の高いロックウール、スラグウール、ワラストナイト繊維、塩基性硫酸マグネシウム繊維、チタン酸カリウム繊維、アタパルジャイト(パリゴルスカイト)、セピオライトの使用が好ましく、自己治癒材料(アルミノシリケート、マグネシウムシリケート)の組成(成分)を有する塩基性硫酸マグネシウム繊維、アタパルジャイト(パリゴルスカイト)、セピオライトの使用が特に好ましい。
該短繊維の形状は、繊維長が6mm以下、繊維直径が0.1mm以下のものが好ましい。短繊維は単独で使用しても良いが、又、材質及び形状の異なる複数の短繊維を任意の組合せ且つ任意の混合割合で混合したものを使用することもできる。
該短繊維は、自己治癒材料を含む補修材料中に、0.1〜5体積%含まれていることが、補修材料の曲げ強度向上あるいは剥落防止の点から好ましい。
本発明の補修材料に用いる細骨材としては、珪石、長石、陶石、リン酸カルシウム、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩、リチウムを含有する無機材料又は鉱物、マグネシウムを含有する無機材料又は鉱物、非晶質シリカ含有無機材料、高炉スラグからなる群より選ばれる少なくとも1種の材料を最大粒径1mm以下に粒度調整したものをモルタルの細骨材として使用することができる。
最大粒径が1mmを超えると、本発明の補修材料(モルタル)をコンクリート表面のひび割れの直上であって且つ該ひび割れ部分に沿って、コンクリート表面部分に塗布する際の施工性が悪化し、又、補修材料の塗布厚が過大(過剰)となり、塗布後の補修材料が重力の作用により剥落し易く、あるいは塗布した補修材料そのものにひび割れが発生し易くなるため好ましくない。特に補修材料の塗布厚さを1mm以下に設定できなくなるため好ましくない。
また、細骨材の総添加量は、前記自己治癒材料及びセメントを合算した1質量部に対して5質量部以下が好適である。珪石を含む細骨材の添加量が5質量部を超えると補修材料中の自己治癒材料の含有量が低くなり、コンクリート構造物における漏水を伴うひび割れに対する自己治癒性能が十分に得られないため好ましくない。従って、前記補修材料(モルタル)に使用する細骨材混合総量は、補修材料(モルタル)のひび割れ修復能力及び製造コストを勘案して、自己治癒材料及びセメントを合算した1質量部に対して5質量部以下とすることが好ましい。
前記モルタルの細骨材となる珪石としては、天然産の珪石及び珪砂等が挙げられる。
これらの中では、安価で入手が容易な窯業原料用あるいは建材原料用の珪石粉末及び珪砂の使用が好ましい。これらは、いずれも粒径1mm以下に粒度調整(粉砕)された一般の工業用グレードのものを使用することができる。又、該珪石は、前記例示した鉱物を単体で、又は任意の組合せで且つ任意の混合割合で混合したものを使用することもできる。
また、前記モルタルの細骨材となる長石としては、斜長石に属する灰長石(CaAlSi)、曹長石(NaAlSi)、灰長石及び曹長石の連続固溶体を含む鉱物、アルカリ長石に属する正長石(KAlSi)、曹長石(NaAlSi)、正長石及び曹長石の連続固溶体を含む鉱物等が挙げられる。
これらの中では、セメント等の強アルカリ性物質あるいはオキシカルボン酸又はジカルボン酸と反応しやすい灰長石の使用が特に好ましいが、安価で入手が容易な窯業原料用の曹長石、正長石を主成分とする鉱物を使用しても良い。これらは、いずれも粒径1mm以下に粒度調整された一般の工業用グレードのものを使用することができる。又、長石は、前記例示した鉱物を単体で、又は任意の組合せで且つ任意の混合割合で混合したものを使用することもできる。
また、前記モルタルの細骨材となる陶石としては、微細な石英(SiO)及び絹雲母(セリサイト;KAlAlSi10(OH))の粒子を含有する窯業用原料及びそれらを含む鉱物等が挙げられる。
これらの中では、天草陶石等の安価で入手が容易な窯業用陶石を主成分とする鉱物の使用が好ましい。これらは、いずれも粒径1mm以下に粒度調整された一般の工業用グレードのものを使用することができる。又、陶石は、前記例示した鉱物を単体で、又は任意の組合せで且つ任意の混合割合で混合したものを使用することもできる。
また、前記リン酸カルシウムとしては、天然産のCaHPO(第2リン酸カルシウム)、骨灰(リン酸カルシウム=Ca(PO)、Ca(HPO(第1リン酸カルシウム)、Ca(PO(第3リン酸カルシウム)等が挙げられる。
これらの中では、CaHPO(第2リン酸カルシウム)は、セメント鉱物の水和物として生成する水酸化カルシウムや前記の層状ケイ酸塩鉱物(マグネシウムシリケート)と反応し、結合力が高いCa(PO(OH)(ハイドロキシアパタイト=水酸燐灰石)、Ca18Mg(PO14(ウィットロッカイト)、リン酸三カルシウム、リン酸水素カルシウム二水和物、リン酸水素カルシウム無水和物、非晶質リン酸カルシウム、リン酸八カルシウム等のリン酸カルシウム化合物を生じて、ひび割れ部分に緻密な水和物を析出(生成)させることができるため、特に好ましい。又、リン酸カルシウムは、粒径1mm以下に粒度調整された一般の工業用グレードのものを使用することが好ましく、前記例示した鉱物を単体で、又は任意の組合せで且つ任意の混合割合で混合したものを使用することもできる。
また、前記モルタルの細骨材となるアルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩としては、天然産の無機炭酸塩が好適であり、例えば、CaCO(炭酸カルシウム;カルサイト、アラゴナイト、バテライト)ドロマイト(苦灰石;CaCO・MgCO)、マグネサイト(菱苦土鉱、主成分=MgCO)等が挙げられる。
これらの中では、CaCO(カルサイト)を主成分とする石灰石、CaCO(アラゴライト)を主成分とする貝殻、MgCO(炭酸マグネシウム)を主成分とするドロマイトが、コンクリートのひび割れを修復する特性に優れることから特に好ましい。又、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩は、粒径1mm以下に粒度調整された一般の工業用グレードのものを使用することが好ましく、前記例示したアルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩を単体で、又は任意の組合せで且つ任意の混合割合で混合したものを使用することもできる。
また、前記モルタルの細骨材となるリチウムを含有する無機材料又は鉱物としては、天然物のペタライト(葉長石;LiAlSi10)、スポジュメン(リシア輝石;LiAlSi)、レピドライト(リシア雲母=K(Li,Al)(AlSi10)(OH,F))、アンブリゴナイト、モンテブラサイト、ビキタアイト等のリチウム含有鉱物が挙げられる。
これらの中では、安価なペタライト(葉長石)、スポジュメン(リシア輝石)等のリチウム含有鉱物の使用が好ましい。又、リチウムを含有する無機材料又は鉱物は、粒径1mm以下に粉砕された一般の工業用グレードのものをモルタルの細骨材として使用することが好ましい。又、リチウムを含有する無機材料又は鉱物は、前記例示した無機材料又は鉱物を単体で、あるいは任意の組合せで且つ任意の混合割合で混合したものを使用することもできる。
また、前記モルタルの細骨材となるマグネシウムを含有する無機材料又は鉱物は、人工物としては、MgCO(炭酸マグネシウム)、MgO(酸化マグネシウム=マグネシア、ペリクレース)、Mg(OH)(水酸化マグネシウム=ブルーサイト)、MgSO(硫酸マグネシウム)、Mg(NO(亜硝酸マグネシウム)、Mg(NO(硝酸マグネシウム)、2MgO・3SiO・nHO(ケイ酸マグネシウム、n=不定)、MgAl(CO)(OH)16・4HO(ハイドロタルサイト)等の工業用マグネシウム化合物、フェロニッケル精錬時の副産物であるフェロニッケルスラグ除冷滓及び日本工業規格JIS A 5011−2に適合するコンクリート用骨材用のフェロニッケルスラグ細骨材等のマグネシウム含有スラグ、フォルステライト煉瓦及びマグサイト煉瓦等のマグネシウム含有耐火物等が挙げられる。又、天然物としては、マグネシウムを多量に含有するドロマイト(苦灰石、CaCO・MgCO)、マグネサイト(菱苦土鉱、主成分=MgCO)、かんらん岩=かんらん石(ヅン岩、オリビンサンド、フォルステライトサンド、ダナイトサンド等、主成分=(Mg,Fe)SiO)、蛇紋岩(3MgO・2SiO・2HO、一部ブルーサイト=Mg(OH)を含む)、角閃石(Mg(Si11(OH)、ただし石綿=アスベストを含むものは除く)、輝石、頑火輝石(エンスタタイト=MgSi)、透輝石(CaMgSi
)、コーリンガイト(Mg10FeCO(OH)24・2HO)、スジクレナイト(MgFe(OH)16CO・4HO)、パイロオーライト(MgFe(OH)16CO・4HO)、ブルグナテライテ(MgFe(OH)13CO・4HO)、ネスケホニト(MgCO・3HO)等のマグネシウム含有鉱物等が挙げられる。
これらの中では、安価なドロマイト、又は、セメントとの反応性を有するかんらん岩、フェロニッケルスラグ細骨材等の使用が好ましい。コンクリートに有害な膨張性を含有しない無機材料又は鉱物であれば、前記例示した無機材料又は鉱物を単体で、又は任意の組合せで且つ任意の混合割合で混合したものを使用することもできる。
また、前記モルタルの細骨材となる非晶質シリカ含有無機材料は、非晶質(ガラス質)のシリカ(二酸化ケイ素=SiO)を少なくとも50質量%以上含有し、いわゆるポゾラン反応性を有する無機材料及び鉱物である。該非晶質シリカ含有無機材料の人造物としては、フライアッシュ(石炭灰)の粗粉、カオリン鉱物(カオリナイト=Al・2SiO・2HO、ディカイト(Al・2SiO・2HO)、ハロイサイト(Al・2SiO・4HO)等)を500〜900℃程度で焼成したメタカオリン等に代表される焼成粘土、窯業から発生する廃材(廃瓦、廃煉瓦、廃陶器、廃陶磁器等)等が挙げられる。又、該非晶質シリカ含有無機材料の天然物としては、珪酸質白土、凝灰岩(流紋岩質凝灰岩、ゼオライト質凝灰岩等)、デイサイト、珪藻土、酸性火山岩、火山灰、シラス等が挙げられる。
これらの中では、安価で入手の容易なフライアッシュ(石炭灰)の粗粉(シンダーアッシュ、炉底灰)、あるいは、珪酸質白土、凝灰岩(流紋岩質凝灰岩、ゼオライト質凝灰岩等)、デイサイト、珪藻土、酸性火山岩、火山灰、シラス等の使用が好ましい。これら非晶質シリカ含有無機材料は、粒径1mm以下に調整された一般の工業用グレードのものを使用することが好ましく、前記例示した材料を単体で、又は任意の組合せで且つ任意の混合割合で混合したものを使用することもできる。
また、前記モルタルの細骨材となる高炉スラグとしては、製鋼時の副産物である高炉水砕スラグ細骨材、高炉除冷スラグ等が挙げられる。
これらの中では、高炉水砕スラグの中でも品質が安定し入手の容易な、JIS A 5011−1「コンクリート用スラグ骨材−第1部:高炉スラグ骨材」に定められた高炉スラグ粗骨材又は高炉スラグ細骨材を、粒径1mm以下に粉砕したものの使用が好ましい。これら潜在水硬性を有する材料は、前記例示した材料を単体で、又は任意の組合せで且つ任意の混合割合で混合したものを使用することもできる。
前述の各材料を混合して得られた自己治癒材料を含むペースト又はモルタルを、漏水を伴うひび割れが生じたコンクリート面に適用した場合、かかるコンクリートに対して優れた自己治癒性を付与でき、又長期間に渡ってこの自己治癒性を維持することが可能となる。
上記効果の要因については、明らかではないが、次のように推測される。
即ち、本発明で使用する補修材料に含まれる自己治癒性を有する材料は、コンクリートのひび割れ部において、水との水和反応により不溶性且つ膨張性を有する水和物を生成し、この水和物の膨張によってひび割れ部を充填することができる。又、自己治癒性を有する材料中の層状ケイ酸塩鉱物は、水との反応によって膨潤し、その後、他の自己治癒材料から生成する水和物又は溶出する成分と組み合わされて、ひび割れ部分に不溶性の析出物を形成することができる。これらを塗布又は塗布及び充填したコンクリートにおいて、ひび割れ部に水が浸入した際には、まず、膨潤性を有する層状ケイ酸塩鉱物が即座に膨潤してコンクリート中の空隙を先に埋め、コンクリートにおける水和物が析出可能な空間を減少させる。
そして、これに続いて、長石と、オキシカルボン酸又はジカルボン酸の反応によって溶出する成分が拡散等によってひび割れ部に移動することで、ひび割れ部を選択的に閉塞(自己治癒)することにより、優れた効果を発揮することができると考えられる。
また、必要に応じてひび割れの自己治癒能力を促進する補助材料(リン酸カルシウム、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩、マグネシウムを含有する無機材料又は鉱物、非晶質シリカ含有無機材料、エトリンガイト系及び/又は生石灰系膨張材、酸化カルシウムを含有する材料、短繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種の材料)を添加することで、漏水を伴うひび割れの自己修復作用を更に向上させることができる。
更に必要に応じてひび割れの自己治癒能力を促進する細骨材(珪石、長石、陶石、リン酸カルシウム、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩、リチウムを含有する無機材料又は鉱物、マグネシウムを含有する無機材料又は鉱物、非晶質シリカ含有無機材料、高炉スラグからなる群より選ばれる少なくとも1種の材料)を混合することで、漏水を伴うひび割れの自己修復作用を保持しつつ、補修の施工性(充填性、塗布性状)及び施工後の補修材料の安定性(耐久性)を向上させることが可能となる。
本発明のコンクリート構造物における漏水を伴うひび割れの補修方法は、前記自己治癒材料を含むペースト又はモルタルである補修材料を、コンクリート表面のひび割れの直上であって且つ該ひび割れ部分に沿って、コンクリート表面部分に塗布する補修方法である。
本発明の他のコンクリート構造物における漏水を伴うひび割れの補修方法は、漏水を伴うひび割れが発生したコンクリート構造物において、コンクリート表面のひび割れの直上であって且つ該ひび割れ部分に沿って削孔して複数の孔を設けた後、前記自己治癒材料を含むペースト又はモルタルである補修材料を該孔に充填又は注入し、更に該補修材料を充填又は注入した孔を含む漏水を伴うひび割れが発生したコンクリート表面部分に前記自己治癒材料を含むペースト又はモルタルである補修材料を塗布する、補修方法である。
好ましくは、上記本発明のコンクリート構造物における漏水を伴うひび割れの補修方法において、前記自己治癒材料を含むペースト又はモルタルの補修材料を塗布、充填又は注入する前に、更に下地処理材としてケイ酸塩水溶液を予め塗布することが望ましい。
無機系の自己治癒材料は、ひび割れの自己治癒性能に優れているが、単純にコンクリート表面のひび割れ部分にのみ自己治癒材料を含む補修材料を充填した場合には、充填量が極めて微量であるためひび割れの自己治癒効果が十分ではない場合があり、そのため、本発明のコンクリート構造物のひび割れ補修方法は、自己治癒材料を含むペースト又はモルタルをコンクリート表面のひび割れの直上であって且つ該ひび割れ部分に沿って、コンクリート表面部分に塗布することによって、コンクリート表面部分のひび割れを閉塞させ、漏水量(漏水速度)を大幅に低下させて、止水することができる。
又、コンクリート表面のひび割れの直上であって且つ該ひび割れ部分に沿って削孔して複数の孔を設けた後、自己治癒材料を含むペースト又はモルタルを該孔に充填又は注入し、更に該補修材料を充填又は注入した孔を含む漏水を伴うひび割れが発生したコンクリート表面部分に前記に例示した自己治癒材料を含むペースト又はモルタルを塗布することによって、コンクリート表面部分のひび割れを閉塞させ、漏水量(漏水速度)を塗布のみを行った場合より更に低下させることができる。充填したペースト又はモルタルに含まれる自己治癒材料から、ひび割れを自己治癒させる有効成分、例えば析出物の前駆体となる各種金属イオンあるいは微粒子等の濃度が増大し、拡散等の作用によって、コンクリート表面より深い位置に存在するひび割れをも効果的に閉塞して自己治癒させることが可能となる。
本発明のコンクリート構造物における漏水を伴うひび割れの補修方法は、補修対象となるひび割れの幅が、コンクリート表面部において0.3mmを超える場合にも適用することが可能である。
本発明のコンクリート構造物のひび割れの補修方法が適用できるコンクリート構造物は特に限定されず、任意の土木・建築構造物に適用でき、例えば、高架橋のコンクリート上部工、床版底面及び橋脚、橋台側面、トンネルの覆工コンクリート内側に発生した漏水を伴うひび割れ、あるいは、オフィスビル又はマンション等の建築構造物のスラブ、壁等に発生したひび割れ等に適用することが可能である。又、露天で供用される高架橋等のコンクリート構造物において、環境(季節や天候による温度、湿度、日射等)の変化や上部を走行する列車や車両による荷重や振動等に起因するコンクリート構造物のひび割れ幅の経時変化に対する追従性を有するため、一度修復したひび割れ部分においてひび割れ幅が変化(ひび割れが再度発生)しても、塗布部又は充填部に残存する未反応の補修材料によってひび割れが再度修復される。即ち、本発明による補修材料及び該補修方法によれば、ひび割れ幅の経時変化に追従してひび割れの自己修復が可能である。本発明においては、例えば、橋梁のコンクリート床版下面及び橋脚側面、トンネルの覆工コンクリート内面のいずれかに発生したひび割れに対してのみ補修を行うため、供用中のコンクリート構造物の供用を妨げることがない、又は供用を妨げることが少ない。
更に、本発明の自己治癒材料を含むペースト又はモルタルを塗布、充填又は注入する前に、下地処理材としてケイ酸塩水溶液を予め塗布することが好ましく、使用するケイ酸塩水溶液は、ケイ酸ナトリウム水溶液(水ガラス=NaO・nSiO・xHO、n=2〜4)、ケイフッ化マグネシウム(ヘキサフルオロケイ酸マグネシウム)、ケイフッ化ナトリウム水溶液等が挙げられる。
これらの中では、安価で且つ入手の容易なケイ酸ナトリウム水溶液(水ガラス)の使用が好ましい。ケイ酸ナトリウム水溶液(水ガラス)は、コンクリートに塗布すると、コンクリート中に存在するセメント水和物である水酸化カルシウムと反応し、不溶性のケイ酸カルシウム化合物(水和物)を生じて、ひび割れ部分に緻密な水和物を形成することができる。ケイ酸ナトリウム水溶液(水ガラス)の濃度は、58質量%(1号ケイ酸ソーダ)、52質量%(2号ケイ酸ソーダ)、42質量%(3号ケイ酸ソーダ)等の工業用グレードのものを原液のまま、あるいは水で適宜希釈して使用することが好ましく、塗布量は、コンクリート表面にダレが生じない程度が好ましい。又、塗布したケイ酸塩水溶液が十分に含浸した後に、ひび割れを有するコンクリート表面、削孔部にケイ酸塩水溶液を予め塗布した後、更に自己治癒材料を含むペースト又はモルタルを塗布又は充填及び塗布を行うのが好ましい。
本発明のコンクリート構造物のひび割れの補修方法は、ひび割れが発生したコンクリート構造物のコンクリート表面のひび割れの直上で自己治癒材料を含むペースト又はモルタルをひび割れ面に塗布する。この際、重力の作用による補修材料のダレあるいは脱落又は、剥落を防止するため、硬練りのペースト又はモルタルとする。又、塗布に際しては、研掃したコンクリート表面に残留する切子(削り粉)を高圧空気、あるいはブラシ等で除去した後、手指、左官鏝、ローラー、はけ、吹きつけ装置等を使用して適宜塗布することが好ましい。
詳細には、塗布は、補修対象となるコンクリート表面に生じたひび割れに沿って、ひび割れ補修材料を塗布する。例えば、前記ディスクグラインダ、電動ブラシ等を用いてひび割れ部分を中心に幅30〜100mm程度、帯状に研掃した部分に、ひび割れ補修材料を塗布厚0.5〜3mmの範囲内で塗布することが好ましい。なお、塗布厚が0.5mm未満では、自己治癒材料を含む補修材料が不足してひび割れからの漏水量の低減効果が不十分になるため好ましくない。又、塗布厚が3mmを超えると、塗布の労力が過大となり、更に自己治癒材料を含む補修材料が過剰で、工法上、不経済となるため好ましくない。
本発明のコンクリート構造物のひび割れの補修方法は、ひび割れが発生したコンクリート構造物のコンクリート表面のひび割れの直上であって且つ該ひび割れ部分に沿って削孔して複数の削孔を設ける。該削孔は、ひび割れ部分を含んで設けられ、ひび割れ部分に沿って、複数設けられる。該削孔部に自己治癒材料を含むペースト又はモルタルを充填又は注入する。該削孔の大きさは、直径10〜30mm及び深さ20〜60mm、孔の間隔は40〜100mmの範囲内であることが好ましい。
なお、本発明を適用できるコンクリート構造物のひび割れは、特に限定されず、例えば、ひび割れ幅が0.3mm前後でかつコンクリート部材を貫通する漏水を伴うひび割れに好適に適用することができる。
詳細には、削孔は、補修対象となるコンクリート表面に生じたひび割れ部分に沿って、即ち、ひび割れ部分を含んで、ディスクグラインダ、電動ブラシ等を用いてひび割れ部分を中心に幅30〜100mm程度、帯状に研掃した後、ハンマドリル等の一般的な削孔機器を使用して、コンクリート構造物中の鉄筋、シース管等を損傷させないように、これらを避けて削孔する。
削孔の深さは、鉄筋のかぶり厚さ程度とすることが好ましい。なお、孔の直径が10mm未満及び深さ20mm未満、孔の間隔が100mmを越えると自己治癒材料を含む補修材料が不足してひび割れの自己治癒が不十分になるため好ましくない。又、孔の直径が30mm超及び深さ60mm超、孔の間隔が40mm未満の場合は、削孔作業及び補修材料の充填作業の労力が過大となり、更に自己治癒材料を含む補修材料が過剰となり、工法上不経済となるため好ましくない。
また、本発明に使用する自己治癒材料を含む補修材料は、コンクリート構造物、例えば橋梁のコンクリート床版下面及び橋脚側面、トンネルの覆工コンクリート内面等のひび割れ部分を一部削孔して、該削孔に充填する際に、重力の作用による補修材料のダレあるいは脱落(落下)を防止するため、硬練りのペースト又はモルタルとすることが好ましい。
ひび割れ補修材料の充填に際しては、削孔した孔の内部に残留する切子(削り粉)を高圧空気あるいはブラシ等で除去した後、手指、金属棒、樹脂棒あるいは注入装置等を使用して適宜充填することができる。
本発明のコンクリート構造物のひび割れの補修方法においては、前記複数の削孔にひび割れ補修材料を充填した後、該削孔を設けたコンクリート表面に生じたひび割れに沿って、即ち、該削孔を含むひび割れ部分を含んで該ひび割れ部分に沿って、ひび割れ補修材料を塗布する。
例えば、前記ディスクグラインダ、電動ブラシ等を用いてひび割れ部分を中心に幅30〜100mm程度、帯状に研掃した部分に、ひび割れ補修材料を塗布厚0.5〜3mmの範囲内で塗布することが好ましい。
なお、塗布厚が0.5mm未満では自己治癒材料を含む補修材料が不足してひび割れからの漏水量の低減効果が不十分になるため好ましくない。又、塗布厚が3mmを超えると、塗布の労力が過大となり、更に自己治癒材料を含む補修材料が過剰で、工法上、不経済となるため好ましくない。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[使用機器]
V型ミキサ(自己治癒材料=粉体のプレミックス用、容量50リットル、200V三相モータ出力2.6kW)
モルタルミキサ(ペースト又はモルタル混練用、ホバートミキサN−50、JIS R 5201「セメントの物理試験方法」の強さ試験適合品、100V単相モータ出力125W)
コンクリートミキサ(コンクリート混練用、大平洋機工社製、二軸強制練りミキサ、SUPER DOUBLE MIXER SD−100、容量100リットル、200V三相モータ出力5.5kW)
コンクリート用耐圧試験機(円柱供試体の割裂によるひび割れ導入用、島津社製、最大載荷能力3000KN)
デジタルマイクロスコープ(ひび割れ観察用、キーエンス社製、VHX−1000)
ディスクグラインダ(コンクリート端面研掃用、日立工機社製、ディスク径125mm、100V単相モータ出力960W)
ハンマドリル(円柱供試体の端面削孔用、日立工機社製、DH42、100V単相モータ出力1140W)
[使用材料]
(1)自己治癒材料
層状ケイ酸塩鉱物:Na−ベントナイト(ウエスタンジェル、ベントナイト産業社製、米国ワイオミング産、最大粒径50μm)及びタルク(汎用タルクSSS、日本タルク社製、最大粒径50μm)
長石(カリ長石、共立窯業社製、インド産、窯業原料用、粉砕品、最大粒径100μm)
オキシカルボン酸又はジカルボン酸(無水クエン酸、扶桑化学工業社製、食品添加用、粉砕品、最大粒径100μm)
上記4種類の材料を用いて、次の表1の配合割合で1バッチの合計量が10kgとなるように計量後、V型ミキサで混合し、自己治癒材料を調製した。
Figure 0005888887
(2)補助材料
A:リン酸カルシウム(第二リン酸カルシウム、エイティーン、東洋電化工業社製、飼料用、中国産、粉砕品、最大粒径100μm)
B:アルカリ金属の炭酸塩(高純度炭酸リチウム、本庄ケミカル社製、電池材料製造用、チリ産、微粉砕品、最大粒径20μm)
C:マグネシウムを含有する無機材料又は鉱物(軽質炭酸マグネシウム、神島化学工業社製、食品添加用、最大粒径50μm)
D:非晶質シリカ含有無機材料(フライアッシュ、JIS A 6201のII種適合品、日本産、最大粒径50μm)
E:エトリンガイト(カルシウムサルフォアルミネート)系膨張材(SACS、住友大阪セメント社製、JIS R 6202適合品、最大粒径45μm)
F:酸化カルシウムを含有する無機材料(超硬焼生石灰、吉澤石灰工業社製、乾燥材用、最大粒径50μm)
G:短繊維(ビニロン短繊維、パワロンRFCS7×6、クラレ社製、繊維直径27μm、繊維長6mm、密度=1.3g/cm
上記7種類の補助材料は、表1で調整した自己治癒材料に対する内割換算で1〜15質量%の範囲で添加した(表2)。
(3)ペースト又はモルタル用材料
セメント(低熱ポルトランドセメント、住友大阪セメント社製、JIS R 5210適合品、密度=3.24g/cm
水(上水道水、千葉県船橋市産)
(4)モルタル用細骨材材料
E1=珪石(3号珪砂、東海工業社製、愛知県産、建材原料用、最大粒径2.4mm)
E2=珪石(7号珪砂N70、日瓢礦業社製、栃木県産、建材原料用、最大粒径300μm)
F=長石(カリ長石、共立窯業社製、インド産、窯業原料用、最大粒径400μm)
G=陶石(天草陶石、共立窯業社製、熊本県天草産、窯業原料用、最大粒径400μm)
H=リン酸カルシウム(第二リン酸カルシウム、エイティーン、東洋電化工業社製、中国産、飼料用、最大粒径600μm)
I=アルカリ土類金属の炭酸塩(石灰石=CaCO、近江鉱業社製、粉砕品、最大粒径600μm)
J=リチウムを含有する無機材料又は鉱物(スポジュメン=リシア輝石;LiAlSi、トウチュウ社製、オーストラリア産、窯業原料用、LiО含有=5.1%、粉砕品、最大粒径200μm)
K=マグネシウムを含有する無機材料又は鉱物(ドロマイト=MgCO、栃木県佐野市産、粉砕品、最大粒径600μm)
L=非晶質シリカ含有無機材料(別府白土=天然ポゾラン、化学組成;SiO=89%、Al=5%、大分県別府産、粉砕品、最大粒径600μm)
M=高炉スラグ(高炉水砕スラグ細骨材、JIS A 5011−1適合品の粉砕品、最大粒径900μm)
下記表2に示すように、各材料を表示する配合割合で配合して、各補修材料を得た。具体的には、前記表1の自己治癒材料を使用し、補助材料を含有しない補修用ペーストは補修材料No.2として、また、自己治癒材料を添加しない補修用ペースを比較のために補修材料No.として調製した。
さらに、前記表1の自己治癒材料及び前記(2)の7種類の補助材料を含有させた補修用ペーストを補修材料No.3〜9として調製した。
また、前記表1の自己治癒材料、前記(2)の7種類、及び前記(4)の細骨材材料9種類を使用し、下記表2に示す配合割合で、補修用モルタル(下記表2の補修材料No.10〜26)を調製した。
Figure 0005888887
(5)補修材料塗布用下地処理材
ケイ酸ナトリウム水溶液(富士化学社製、NaSiOの水溶液、JIS K 1408規定の3号ケイ酸ソーダ相当品、濃度=40〜42質量%、SiO含有量=28〜30質量%、工業用)
(6)模擬補修試験用;ひび割れ導入コンクリート円柱供試体用材料
セメント:普通ポルドランドセメント(住友大阪セメント社製、JIS R 5210適合品、密度=3.15g/cm
細骨材:千葉県富津産陸砂(表乾密度=2.55g/cm、吸水率2.1%、FM=2.65)
粗骨材:茨城県桜川市産硬質砂岩砕石2005(表乾密度=2.66g/cm、吸水率0.6%、FM=6.67)
水:上水道水
コンクリート用AE減水剤:(BASF社製、リグニンスルホン酸系、JIS A 6204適合品)
[模擬補修試験用;ひび割れ導入コンクリート円柱供試体の作製]
前記(6)のひび割れ導入コンクリート円柱供試体用各材料を用いて、水セメント質量比:50%(単位水量=175kg/m)、s/a(細骨材率;細骨材の絶対容積÷(細骨材の絶対容積+粗骨材の絶対容積))=46.5体積%の配合で、AE減水剤をセメントに対して0.4質量%を用いて、スランプ=12cm(日本工業規格 JIS A 1101)、空気量=4.5%(日本工業規格 JIS A 1128)のコンクリートを20℃恒温室で、日本工業規格 JIS A 1138「試験室におけるコンクリートの作り方」に準拠し、100リットルミキサを使用して1バッチあたり70リットルとして2バッチ練り混ぜた。練り上ったフレッシュコンクリートを用いて、日本工業規格 JIS A 1132「コンクリート強度試験用供試体の作り法」に準拠し、鋼製簡易型枠を使用して直径100mm×高さ200mmの円柱供試体を58個作製した。
作製した円柱供試体は、鋼製簡易型枠の頭部(開口部)をポリエチレン製ビニールキャップ及び輪ゴムを使用して封かん状態とし、20℃恒温室内で91日間封かん養生した。91日間の養生後、脱型し、耐圧試験機を用いて、日本工業規格 JIS A 1113「コンクリートの割裂引張強度試験方法」に準拠して、円柱供試体58個全てを割裂し、2つに破断させた。
割裂(破断)させた円柱供試体は、2つの破断面を正確に合わせ、内直径100mm×幅12mm×厚さ0.8mmの鋼製バンドを3本用いて円柱供試体の外部(側面部分)を3箇所拘束し、デジタルマイクロスコープを用いて円柱供試体に導入したひび割れ部のひび割れ幅を観察(供試体上下面をそれぞれ3箇所ずつ計測)しながら、鋼製バンドの張力を調節することによって、円柱供試体上下面の表面部分のひび割れ幅が約0.3mmとなるように調整した。ひび割れ幅を約0.3mmに調整後、円柱供試体上面(供試体作製時の型枠上部側)に通水試験用の内直径100mm×高さ100mmの塩化ビニル製パイプを接続し、円柱供試体とパイプの接続部及び円柱供試体側面のひび割れ部分に市販のシーリング材(シリコーンゴム)を塗布して止水処理を行った。
ディスクグラインダを用いて、作製した通水試験用円柱供試体58個全てに対して、塩ビパイプを接続していない供試体下面(供試体作製時の型枠底面側)の面全体の研掃を行った。研掃を終えた円柱供試体26個は、左官鏝を用いて前記表2に示すNo.1〜9のペースト又はNo.10〜26のモルタルを塩化ビニル製パイプを接続していない供試体下面(供試体作製時の型枠底面側)の面全体に厚さが約1mmとなるように塗布した(下記表3及び表4の実施例1〜24及び比較例2・3)。この他、研掃を終えた円柱供試体1個は、比較用として何も塗布しなかった(下記表4の比較例1)。
前記研掃を終えた円柱供試体28個には、塩化ビニル製パイプを接続していない供試体下面(供試体作製時の型枠底面側)の面中央部のひび割れの直上、即ち、該円柱供試体下面の該ひび割れの中心部1箇所に前記ハンマドリルを使用して、直径16mm×深さ30mmの補修材料充填用の孔をあけた。
前記研掃及び削孔を行った円柱供試体26個には、削孔部に前記表2に示すNo.1〜9のペースト又はNo.10〜26のモルタルを直径10mmの丸棒鋼及び左官鏝を用いて充填した。その後、直ちに左官鏝を用いて、各供試体において孔に充填したものと同じ材料(前記表2に示すNo.1〜9のペースト又はNo.10〜26のモルタル)を該供試体の該削孔が設けられたひび割れを含む端面(塩ビパイプを接続していない供試体下面)の面全体に厚さが約1mmとなるように塗布した(下記表4の実施例25〜48及び比較例4・5)。
また、前記研掃のみ行った円柱供試体の残り3個と、研掃及び削孔を行った円柱供試体の残り2個に対して、下地処理材として前記ケイ酸ナトリウム水溶液を、塩化ビニル製パイプを接続していない供試体下面(供試体作製時の型枠底面側)の研掃面、研掃面及び削孔部分(孔の内部も含む)全体にハケで塗布した。塗布完了後、塗布面を上に向けて約30分静置し、下地処理材を十分に含浸させた後、前記表2のNо.2のペースト及びNо.10のモルタルを用いて塗布又は塗布及び充填を前記同様の方法で行った(下記表4の実施例49〜52)。又、前記研掃のみ行った円柱供試体の1個は、比較用としてケイ酸ナトリウム水溶液のみ塗布した(下記表4の比較例6)。
なお、これらの作業は全て20℃恒温室内で実施し、円柱供試体に対する通水試験(止水性の評価)は、補修材料を塗布あるいは塗布及び充填が完了した直後に開始した。
通水試験は、円柱供試体の補修面を下側にして鉄製の網棚の上に静置した後、円柱供試体上部に接続した塩化ビニル製パイプに連続して上水道水を供給し、連続通水状態とした。通水開始直後及び通水開始から7日目の5分間あたりの通水量の測定を行った。
以上のように円柱供試体端面のひび割れに対して、補修材料の塗布あるいは塗布及び充填による補修を行った後、通水試験を実施して得られた評価結果を下記表3及び表4の実施例1〜52及び比較例1〜6(補修材料未使用の場合、No.1=自己治癒材料を添加していないセメントペーストを塗布又は/及び充填した場合:2例、No.10=粒径1mmを超える細骨材を塗布又は/及び充填した場合:2例、下地処理材の塗布のみ行った場合)に示す。
1回目の通水試験(7日間通水)を終えた後、通水試験用の円柱供試体から塩化ビニル製パイプ及び鋼製バンドを取り外し、耐圧試験機を用いて、日本工業規格 JIS A 1113に準拠して、円柱供試体を割裂し、再度2つに破断させた。
1回目と同様に割裂(破断)させた円柱供試体は、2つの破断面を正確に合わせ、内直径100mm×幅12mm×厚さ0.8mmの鋼製バンドを3本用いて円柱供試体の外部(側面部分)を3箇所拘束し、デジタルマイクロスコープを用いて円柱供試体に導入したひび割れ部のひび割れ幅を観察(供試体上下面をそれぞれ3箇所ずつ計測)しながら、鋼製バンドの張力を調節することによって、円柱供試体上下面の表面部分のひび割れ幅が約0.3mmとなるように調整した。ひび割れ幅を約0.3mmに調整後、円柱供試体上面(供試体作製時の型枠上部側)に通水試験用の内径100mm×高さ100mmの塩化ビニル製パイプを接続し、パイプの接続部及び円柱供試体側面のひび割れ部分に市販のシーリング材(シリコーンゴム)を塗布して止水処理を行った。
なお、2回目の割裂によるひび割れの再導入後は、ペースト又はモルタルの塗布あるいは充填は、いっさい行わなかった。
2回目の円柱供試体に対する通水試験(止水性の評価)は、2回目の割裂によるひび割れの再導入直後に開始した。通水試験は、1回目と全く同様の方法で行った。即ち、供試体の上部に接続した塩ビ製パイプに連続して水を供給し、連続通水状態とした。通水開始直後及び通水開始から7日目の5分間あたりの通水量の測定を行った。
(施工性の評価)
補修方法の施工性の評価として、自己治癒材料を含む補修材料の塗布あるいは充填及び塗布作業が可能であるか、又、施工に関する作業量の多寡(施工効率)を以下の3段階の指標で評価した。
施工性の判定
判定◎:施工可能、作業量が極めて少なく施工効率が極めて高い
判定○:施工可能、作業量が少なく施工効率が高い
判定×:施工不可、作業困難
(通水試験;止水性の評価)
自己治癒材料を含むペースト又はモルタルを用いて、塗布あるいは充填及び塗布を行った後、該円柱供試体の上部に接続した塩化ビニル製パイプに上水道水を注水し、常時10cmの水頭を与えてコンクリート円柱供試体のひび割れからの漏水量を7日間測定して止水性の評価を、以下の5段階の指標で評価した。
止水性の評価
初期漏水量=通水開始直後の5分間あたりの漏水量
評価A:通水試験開始7日目の5分間あたりの漏水量が初期漏水量の1%以下となる場合
評価B:通水試験開始7日目の5分間あたりの漏水量が初期漏水量の1%よりも大きく、5%以下となる場合
評価C:通水試験開始7日目の5分間あたりの漏水量が初期漏水量の5%よりも大きく10%以下となる場合
評価D:通水試験開始7日目の5分間あたりの漏水量を初期漏水量の10%よりも大きく25%以下となる場合
評価E:通水試験開始7日目の5分間あたりの漏水量を初期漏水量の25%以下にすることができない場合
Figure 0005888887
Figure 0005888887
上記表3及び表4より、本発明の実施例1〜52は、施工性に問題がなく、又、漏水が極めて効果的に減少した。特にひび割れを再導入した後の2回目の通水試験においても、漏水を極めて効果的に減少させることができ、補修方法として良好であると判断されたのに対して、本発明以外の比較例1〜6の場合は、施工性に問題がある、あるいは漏水防止効果が不十分等の問題があることが明らかである。
本発明のコンクリート構造物のひび割れ補修材料及びひび割れの補修方法は、例えば、鉄道あるいは自動車用の高架橋のコンクリート上部工、床版底面及び橋脚、橋台側面、トンネルの覆工コンクリート内側に発生した漏水を伴うひび割れ、及びオフィスビル又はマンション等の建築構造物のスラブ、壁等の漏水が発生し易く、又、ひび割れの補修が困難であったコンクリート構造物に対して極めて好適に適用することができる。

Claims (6)

  1. セメント、水及び自己治癒材料を含有するペースト(但し、ポリ塩化アルミニウムは含まない)であって、前記自己治癒材料は、層状ケイ酸塩鉱物、長石、オキシカルボン酸又はジカルボン酸を含有することを特徴とする、コンクリート構造物における漏水を伴うひび割れ用補修材料。
  2. セメント、水、細骨材及び自己治癒材料を含有するモルタル(但し、ポリ塩化アルミニウムは含まない)であって、前記自己治癒材料は、層状ケイ酸塩鉱物、長石、オキシカルボン酸又はジカルボン酸を含有し、前記細骨材は、珪石、長石、陶石、リン酸カルシウム、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩、リチウムを含有する無機材料又は鉱物、マグネシウムを含有する無機材料又は鉱物、非晶質シリカ含有無機材料、高炉スラグからなる群より選ばれる少なくとも1種の材料であって且つ最大粒径が1mm以下であることを特徴とする、コンクリート構造物における漏水を伴うひび割れの補修材料。
  3. 請求項1又は2記載のコンクリート構造物における漏水を伴うひび割れ用補修材料において、前記自己治癒材料は、更に、リン酸カルシウム、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩、マグネシウムを含有する無機材料又は鉱物、非晶質シリカ含有無機材料、エトリンガイト系及び/又は生石灰系膨張材、酸化カルシウム、短繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種類以上の補助材料を含有することを特徴とする、コンクリート構造物における漏水を伴うひび割れ用補修材料。
  4. 漏水を伴うひび割れが発生したコンクリート構造物において、コンクリート表面のひび割れの直上であって且つ該ひび割れ部分に沿って、コンクリート表面部分に請求項1〜3のいずれかの項に記載の補修材料を塗布することを特徴とする、コンクリート構造物における漏水を伴うひび割れの補修方法。
  5. 漏水を伴うひび割れが発生したコンクリート構造物において、コンクリート表面のひび割れの直上であって且つ該ひび割れ部分に沿って削孔して複数の孔を設けた後、請求項1〜3のいずれかの項に記載の補修材料を該孔に充填又は注入し、更に該補修材料を充填又は注入した孔を含む漏水を伴うひび割れが発生したコンクリート表面部分に請求項1〜3のいずれか一項に記載の補修材料を塗布することを特徴とする、コンクリート構造物における漏水を伴うひび割れの補修方法。
  6. 請求項4及び5記載のコンクリート構造物における漏水を伴うひび割れの補修方法において、補修材料を塗布、充填又は注入する前に、下地処理材としてケイ酸塩水溶液を予め塗布することを特徴とする、コンクリート構造物における漏水を伴うひび割れの補修方法。
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