JP6866547B2 - 防水材 - Google Patents
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Description
このようなひび割れの発生により、雨水や地下水の浸入が起り、漏水発生による苦情や資産価値の低下あるいは瑕疵発生による将来的な不安を生じることになる。このようなひび割れに起因する欠陥を解消すべく、コンクリート躯体にひび割れが生じても水が浸入しないように、例えば屋上防水や地下ピット壁防水などの防水工事を、アスファルト防水、シート防水、あるいはウレタン、FRP、ポリマーセメント、ゴムアスファルト、珪酸質系浸透性塗布液などにより施すことが知られている。
しかしながら、このような防水工事では、例えばコンクリートの含水率の適切性、長すぎる工程あるいは熟練工の不足などが問題となり、十分な防水効果を得られないことが問題視されている。また、防水工事には、防水材として有機材料を用いることが多く、有機材料は紫外線等による劣化で耐久性が十分でなくそのため定期的補修を必要とするなどの問題のあることも知られている。
しかしながら、上記の如きひび割れ修復材等を用いる方法では、修復材がひび割れ中に円滑に浸入しなかったり、未修復部分からの再劣化が発生して修復部分との境界面で性質の違いを発現して劣化を防止することにならなかったりあるいは建築物の使用中の修復では時間的な制約があって修復工事が長期に亘るなどの改善すべき点があることも知られている。
特許文献2には、膨張材と無機質セメント結晶増殖材を含有する自己治療コンクリートが記載され、これはひびが発生したとき、浸入した水と膨張材と上記増殖材とが反応して膨張と析出物の生成を生み出し、それによりひび割れを自己治療しようとするものである。
特許文献3には、炭酸基を有する塩又はカルボキシル基を有する化合物を含むセメント組成物が記載され、このセメント組成物を含むコンクリートにひび割れが生じたときには、浸入した水と上記塩や化合物とが反応し炭酸化合物を析出して、同様にひび割れを修復しようとするものである。
特許文献4には、膨張性アルミノシリケートを含有するセメント混和材が記載されている。これも、ひび割れに浸入した水と膨張性アルミノシリケートとが反応して不活性の析出物を生成するのを利用してひび割れを自己治療しようとするものである。
特許文献6には、水ガラスを含み、水ガラスとセメント組成物中の水酸化カルシウムとが反応して生成するケイ酸カルシウムを、経時的にゲル化可能としたコンクリート改質剤が開示されている。
本発明のさらに他の目的は、上記補修用モルタルを用いた、ひび割れの補修方法を提供することにある。
このような結晶性層状珪酸ナトリウムは、工業的に入手可能であり、具体的には、株式会社トクヤマ製 製品名「プリフィード」(Na2Si2O5)などが挙げられる。
結晶性層状珪酸ナトリウムは、粉末状や顆粒状の物があるが、好ましくは10〜100μm、より好ましくは30〜80μmの範囲にある平均粒径を持つ粒子として含有される。
結晶性層状珪酸ナトリウムは、本発明のドライモルタル中に、セメント100質量部に対し、好ましくは3〜10質量部含有され、より好ましくは3〜8質量部、さらに好ましくは4〜7質量部の範囲にある量で含有される。結晶性層状珪酸ナトリウムが3重量部未満の場合は、塗布作業後モルタルの硬化が不十分となり、ドライアウト現象を生じる。他方10重量部を超えるとモルタルを水と練り混ぜると結晶性層状珪酸ナトリウムとセメントとが急激に反応してモルタルフローが短時間で低下するため、塗布作業が困難となる。また、モルタルの密実性も低下するため圧縮強度や防水性が低下するので好ましくない。
これらの中でも、安価なポルトランドセメントが好ましい。
これらセメントは、単体で、又は任意の組合せで且つ任意の混合割合で混合したものとして使用することもできる。
これらの中では、安価で入手が容易な窯業原料用あるいは建材原料用の珪石粉末及び珪砂の使用が好ましい。これらは、いずれも粒径1mm以下に粒度調整(粉砕)された一般の工業用グレードのものを使用することができる。長石としては、例えば灰長石、曹長石、正長石、曹長石が挙げられる。陶石としては、粒径1mm以下に粒度調整された一般の工業用グレードのものを使用することができる。
上記細骨材は1種単体としてあるいは2種以上の混合物で用いることができる。
細骨材は、好ましくはセメント100質量部に対し100〜200質量部となる範囲で用いられる。細骨材の使用量が上限を超えるとひび割れの補修力が低下し易く、下限より少ないとモルタルの寸法変化が大きくなり接着力が低下する。
本発明では、牡蠣ガラを加熱プレス加工し微粉砕したものが好ましい。このような牡蠣ガラは工業的に入手が可能で、具体的には株式会社くれブランド製 製品名「牡蠣殻ナノパウダー」等が挙げられる。
本発明における貝殻パウダーとしては、平均粒径を0.5〜5μm程度に粒度調整して使用するのが好ましい。このような粒度に調製されることにより、モルタルを塗り付けた際に、コンクリート表面の微細な凹凸にモルタルが入り込みくさび状に硬化しモルタルの接着強度を向上されることができる。
これらの貝殻パウダーは、セメント100質量部に対し3〜10質量部含有され、好ましくは3〜8質量部、さらに好ましくは4〜7質量部の範囲である量で含有される。貝殻パウダーの使用量が3質量部未満の場合、モルタルの接着強度が得られず好ましくない。10質量部を超える場合、多孔質な貝殻パウダーの吸水性により塗布作業性を得るための練り混ぜ水量が増加するため、モルタルが強度低下を引き起こし好ましくない。
本発明のドライモルタルは、セメント、細骨材および結晶性層状珪酸ケイ酸ナトリウムの他に、種々の品質改良材例えば膨張材、非晶質シリカ含有無機材料、減水剤、増粘剤等を含有することができる。
石灰系膨張材は、セメント100質量部に対し2〜10質量部の範囲となる量で用いるのが好ましい。石灰系膨張材の使用量が2質量部未満の場合、硬化後のモルタルの寸法変化が大きくなり、コンクリートとモルタル界面でひずみ差が生じ界面剥離等が生じやすくなる。他方10質量部を超える場合には、硬化後に外部より水が浸入するとモルタルが異常膨張を起こしコンクリートから剥離を生じるため好ましくない。
非晶質シリカ含有無機材料は、モルタルの塗布作業性を向上させるために用いられる。
非晶質シリカ含有無機材料としては、非晶質(ガラス質)のシリカ(二酸化ケイ素=SiO2)を少なくとも50質量%以上含有し、いわゆるポゾラン反応性を有する無機材料及び鉱物である。該非晶質シリカ含有無機材料としては、フライアッシュ(石炭灰)、カオリン鉱物(カオリナイト、ディカイト、焼成粘土、窯業から発生する廃材(廃瓦、廃煉瓦、廃陶器、廃陶磁器等)等の他、天然物として、珪酸質白土、凝灰岩(流紋岩質凝灰岩、ゼオライト質凝灰岩等)、デイサイト、珪藻土、酸性火山岩、火山灰、シラス等が挙げられる。
これらの中では、安価で入手の容易なフライアッシュ(石炭灰)、珪酸質白土、凝灰岩、デイサイト、珪藻土、酸性火山岩、火山灰、シラス等が好ましい。また、高炉スラグとしては、製鋼時の副産物である高炉水砕スラグ、高炉除冷スラグ等の粉砕物が挙げられる。
非晶質シリカ含有無機材料は、セメント100質量部に対し15質量部以下となる量で用いることができる使用量が15質量部を超える場合は塗布作業後にダレを生じやすくなるため好ましくない。
減水剤はモルタル調整時の水の添加量を減らすために用いられる。ナフタレンスルホン酸系、メラミン系、ポリカルボン酸系等の粉末減水剤を挙げることができるが、ポリカルボン酸系減水剤が好ましく用いられる。減水剤は、セメント100質量部に対し0.25〜1.0質量部となる量で好ましく用いられる。
使用量が0.25質量部未満の場合、減水効果が十分に得られず、塗布作業性を確保するために練り混ぜ水を増加する必要が生じるため強度低下や硬化後の寸法変化が増加する。他方1.0質量部を超えると塗布作業後にダレを生じる。
本発明のモルタルは、ひび割れを発生したコンクリート構造物の当該ひび割れ部分に後発的に塗布してひび割れを修復することができる。本発明のモルタルは、このような後発的な使用法の他に、未だひび割れが発生していない、コンクリート構造物の外壁表面に予め塗布しておく態様で使用することもできる。後者の使用法によれば、コンクリート構造物の建設時あるいはその後であっても、外壁表面に一様に施すことができるため、施工が容易なだけでなく、短期間で終了することができ、しかもひび割れが発生した初期の段階から、当該ひび割れ中に、水と共に、結晶性層状珪酸ナトリウムおよびモルタルの成分が補充されるので、ひび割れの修復が速やかに且つひび割れの初期の段階から開始できる利点がある。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。本発明はかかる実施例により何ら制限されるものではない。
珪酸ナトリウム
結晶性層状珪酸ナトリウム:プリフィード粉末品 (株)トクヤマ社製
粉末珪酸ナトリウム:3Na (株)トクヤマ社製
セメント
NC:普通ポルトランドセメント (株)トクヤマ社製
HC:早強ポルランドセメント (株)トクヤマ社製
細骨材 :6号珪砂 山川珪砂(株)社製
貝殻パウダー:牡蠣殻ナノパウダー (株)くれブランド社製
非晶質シリカ含有無機材料:高品質フライアッシュ (株)ゼロテクノ社製
増粘剤:90MP−4000 松本油脂(株)社製
減水剤:マイティ21P (株)花王社製
水 :水道水
(1)防水材の調製
ドライモルおよび練り混ぜ水を表1に記載の割合になるようにそれぞれ計量した。
練り混ぜは、ハンドミキサー((株)東芝社製、1000rpm)を用いた。防水材の調製は樹脂製の円筒容器に計量した練り混ぜ水を入れた後、ハンドミキサーを稼働しながらドライモルタルを加え、ドライモルタル全量投入後2分間攪拌した。
(2)評価方法
モルタルの塗布作業性の評価は、モルタルフローの変化度合で行った。モルタルフローの計測は、JIS R 5201 11.フロー試験に準拠して行った。第一には、練り混ぜ直後のフロー値(F0)を計測し、塗布作業が可能で塗布後にダレを生じない範囲であるかを判定した。0打フローが210mm未満かつ15打フローが140mm以上である場合を○、それ以外を×と評価した。第二には、塗布作業においては作業効率の観点からモルタルの練り置きが発生する。この間にモルタルフローが大幅に変化すると塗布作業に支障が生じる。そこで、練り混ぜ後30分経過したモルタルのフロー値(F30)を計測しF0からの変化度合を算出した。F30/F0の値が0.85以上1.0以下を○、0.85未満または1.0超を×として評価した。
強度評価はモルタルの圧縮強度試験により行った。圧縮強度の測定は、JIS R 5201 10.強さ試験に準拠して行った。なお、成形は突き棒により行い、供試体の養生は、1日湿空養生後脱型し水中養生とした。測定の材齢は3日、7日、28日とした。
防水性の評価は、厚さ1.5cm無筋コンクリート平板5枚を用いて20×20×30cmの水槽を作製した。8箇所の目地部を1:2モルタルで接着して水槽を組み立てた。表1の割合で調製したモルタルを水槽の表面に塗布し1日間乾燥した後、水槽内に水を張り目地部からの漏水状況を観察し防水性能を確認した。
ひび割れ修復性の評価は、表1の配合で調製したモルタルを用い厚さ2mmのモルタル板を作製した。材齢1日気中養生した後、モルタル板の一部を割りひび割れを発生させた。ひび割れ幅を0.2mm程度に調整し、定期的にひび割れ部にスポイトで水を滴下した。ひび割れ部の湿潤乾燥を繰り返しながらひび割れ部分をマイクロスコープで観察して自己修復性能を確認した。
モルタルの評価結果を表2に示す。
Claims (5)
- セメント、細骨材、貝殻パウダーおよび結晶性層状珪酸ナトリウムを含有し、前記貝殻パウダーの含有量はセメント100質量部に対し、3〜10質量部であり、前記結晶性層状珪酸ナトリウムの含有量はセメント100質量部に対し、3〜10質量部であることを特徴とする、コンクリート構造物のひび割れ補修用ドライモルタル。
- 結晶性層状珪酸ナトリウムが下記式
NaxH(2−x)ySi2yO5・zH2O
ここでxは0〜2、yは1±0.1、zは0〜5の整数である
で表される化学組成を有する請求項1に記載のドライモルタル。 - 請求項1または2のドライモルタルと水との混練物からなる、コンクリート構造物のひび割れ補修用モルタル。
- ひび割れが未だ発生していないコンクリート構造物の駆体外壁表面上に、請求項1のドライモルタルと水とからなるモルタルを塗布し、ひび割れが発生したときひび割れを速やかに自己修復するようにすることを特徴とする、コンクリート構造物のひび割れ補修方法。
- 結晶性層状珪酸ナトリウムの、コンクリート構造物のひび割れ補修材としての使用。
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