JP5888337B2 - クロロポリシランの製造方法および流動床反応装置 - Google Patents

クロロポリシランの製造方法および流動床反応装置 Download PDF

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Description

本発明は、クロロポリシランの製造方法および流動床反応装置に関し、さらに詳しくは、半導体材料などに重用されるクロロポリシランの製造方法およびクロロポリシランの製造に好適な流動床反応装置に関するものである。
従来、シリコンウェハの原料として、SiH(モノシラン)、SiHCl(トリクロロシラン)、SiCl(テトラクロロシラン)などのケイ素モノマーやその製造方法が知られていたが、近年では、エレクトロニクス技術の発達により、基板上にアモルファスシリコン膜や酸化ケイ素膜などの膜を形成する化学蒸着法(CVD法)を低温、高速で実施できる材料として、Si(ジシラン)等の高次シランが注目を集め、高次シランの原料としてSiCl等のクロロポリシランの需要が増加しているため、効率の良い製造方法が求められている。
例えば特許文献1には、高純度シリコンの残余物から、気相流動床反応器を用いてSiとClとを反応させ、SiCl(テトラクロロシラン)を製造する方法が開示されており、反応器外へ運ばれ得るSi粒子を回収する集塵機が反応器内に設けられていることの記載があるが、SiとClとの反応でクロロポリシラン等の高次塩化物が生成しうることについては記載がなく、SiCl以外の生成物が想定されていないので、高沸点の高次塩化物が生成した場合に、上記回収装置で凝縮または析出や閉塞の問題が起き得ることやその対策についても全く考慮されていなかった。
特許文献2には、SiとClとの反応において、銅または銅化合物触媒を用いることにより、クロロポリシランを効率よく得ることができることが開示されているが、固定層反応器を用いた製造方法だけしか記載がなく、流動床反応装置において発生しうる、反応器外へ運ばれ得る粉の捕捉や高沸点の高次塩化物による閉塞の対策などについても検討はされていなかった。
特許文献3には、金属シリコン粉末とHClガスを反応させてSiHCl(トリクロロシラン)を製造する方法が開示されている。反応器は気相流動床反応器であり、反応器の底部から供給されたHClガスによって金属シリコン粉末を流動させながら反応させてSiHClを得ている。なお、特許文献3には、反応器から排出されるSiHClを含む反応流体中の粗粒子をサイクロンで分離して反応炉内に戻すとともに反応流体中の微小粒子をフィルターで除去することが記載されている。
特許文献3が特許文献1および2の反応と大きく異なる点は、反応にHClガスを用いる点であり、この反応ではSiHClが定量的に生成するので、高沸点の高次塩化物が生成して閉塞を引き起こす恐れはないが、特許文献3においては、粗大粒子である未反応のケイ素粒子と不純物塩化物の微粒子とが発生するため、サイクロン等の粗大粒子分離手段とフィルターとを併用してこれらの粒子を分けて捕捉し、未反応のケイ素粒子は再度反応原料としてリサイクルできることが開示されていた。
特表2010−526013号公報 特開昭63−233007号公報 特開2010−10703号公報
本出願人により、SiとClとを反応させてSiClなどのクロロポリシランを製造する方法において、振動式反応器を用いることが提案されている。しかしながら、振動式反応器を用いた場合には、ケイ素粒子の塩素化反応中に未反応のケイ素粒子の一部が舞い上がって留出成分を留出させる留出口から流出し、歩留まりが低下するという問題があった。なお、これに対し、例えばフィルターを用いてケイ素粒子の流出を抑えたとしても、高次ケイ素塩化物の付着によってフィルターが閉塞するという新たな問題も発生するおそれがある。
本発明が解決しようとする課題は、流動反応によってクロロポリシランを得る際に、歩留まりを向上できるとともに副生し得る高次ケイ素塩化物の付着による閉塞を抑えたクロロポリシランの製造方法を提供することにある。また、他の課題としては、上記クロロポリシランの製造に好適な流動床反応装置を提供することにある。
上記課題を解決するため本発明に係るクロロポリシランの製造方法は、流動させたケイ素粒子またはケイ素合金粒子に塩素ガスを反応させてクロロポリシランを得る際に、反応槽内部において、前記ケイ素粒子またはケイ素合金粒子が流動する範囲よりも上側で、留出成分を留出させる留出口の手前に、流動によって舞い上がる微粒子が前記留出口から流出するのを抑える出口フィルターを設けるとともに、前記出口フィルターの温度を210〜350℃の範囲内に設定することを要旨とするものである。
この際、前記ケイ素粒子またはケイ素合金粒子を流動させる流動方法は振動流動であることが好ましい。
また、前記出口フィルターの孔径を5〜500μmの範囲内に設定することが好ましい。
また、前記出口フィルターに加えて、該出口フィルターを通過した微粒子が前記留出成分を貯留する受器に流出するのを抑える第2フィルターを設けることが好ましい。
さらに、前記出口フィルターの材質は、焼結金属、焼結セラミックス、および、ポリテトラフルオロエチレンから選択される1種または2種以上であり、前記第2フィルターの材質は、焼結金属、焼結セラミックス、および、ポリテトラフルオロエチレンから選択される1種または2種以上であることが好ましい。
そして、前記出口フィルターあるいは前記第2フィルターを使用後にアルカリ処理して再使用しても良い。
一方、本発明に係る流動床反応装置は、原料粒子を流動させる反応槽に留出成分を留出させる留出口が設けられ、前記反応槽内において前記留出口の手前に、流動によって舞い上がる微粒子が前記留出口から流出するのを抑える出口フィルターが設けられているとともに、該出口フィルターの温度を制御する温度制御部が設けられていることを要旨とするものである。
この際、前記留出口は、前記反応槽の上部に設けられていることが好ましい。
また、前記出口フィルターに加えて、該出口フィルターを通過した微粒子が前記留出成分を貯留する受器に流出するのを抑える第2フィルターが、前記反応槽内または前記反応槽外に設けられていることが好ましい。
本発明に係るクロロポリシランの製造方法によれば、反応槽内部の特定位置に設けられた出口フィルターにより、ケイ素粒子またはケイ素合金粒子が留出口から流出するのを抑えられるため、歩留まりを向上できる。また、これらのケイ素原料粒子以外の、例えば塩素化反応によって生成し得る他の微粒子が留出口から流出するのも抑えられるため、配管の閉塞や留出成分に微粒子の不純物が混ざるのも抑えることができる。そしてこのとき、出口フィルターの温度を210〜350℃の範囲内に設定するので、副生し得る高次ケイ素塩化物が出口フィルターに付着してこれを閉塞するのを抑えることができる。
この際、出口フィルターの孔径を5〜500μmの範囲内に設定すると、微粒子が留出口から流出するのを抑える効果に優れる。
また、出口フィルターに加えて上記第2フィルターを設けると、仮に微粒子の一部が出口フィルターを通過したとしても、留出成分を貯留する受器に微粒子が流出するのを抑えることができる。これによって、留出成分に微粒子の不純物が混ざるのを抑えることができる。
さらに、上記出口フィルターあるいは上記第2フィルターを使用後にアルカリ処理して再使用すれば、コストの低減を図ることができるとともに、フィルターの廃棄物を減らすことができるので、環境に優しいものとすることができる。
そして、本発明に係る流動床反応装置を用いれば、反応槽内部の特定位置に設けられた出口フィルターにより、ケイ素粒子またはケイ素合金粒子が留出口から流出するのを抑えられるため、歩留まりを向上できる。また、これらのケイ素原料粒子以外の、例えば塩素化反応によって生成し得る他の微粒子が留出口から流出するのも抑えられるため、配管の閉塞や留出成分に微粒子の不純物が混ざるのも抑えることができる。そしてこのとき、温度制御部によって出口フィルターの温度を210〜350℃の範囲内に設定すれば、副生し得る高次ケイ素塩化物が出口フィルターに付着してこれを閉塞するのを抑えることができる。
このとき、出口フィルターに加えて、出口フィルターを通過した微粒子が留出成分を貯留する受器に流出するのを抑える第2フィルターが、反応槽内または反応槽外に設けられていれば、仮に微粒子の一部が出口フィルターを通過したとしても、留出成分を貯留する受器に微粒子が流出するのを抑えることができる。これによって、留出成分に微粒子の不純物が混ざるのを抑えることができる。
本発明の一実施形態に係る振動流動床反応装置の概略図である。 出口フィルターを拡大して示した断面図である。 出口フィルターの温度を測定する温度計の設置部分を拡大して示した断面図である。 図1において、出口フィルターの設置部分を拡大して示した断面図である。 出口フィルターに加えて第2フィルターを備えた振動流動床反応装置の各フィルターの設置部分を拡大して示した断面図である。 実施例1で捕捉された微粒子の粒度分布を示したグラフである。
次に、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明に係るクロロポリシランの製造方法は、流動させたケイ素粒子またはケイ素合金粒子(以下、これらを総称してケイ素原料ということがある。)に塩素ガスを反応させて、高収率で六塩化二ケイ素を得るものである。塩素化反応に際しては、所定の反応槽内でケイ素原料と塩素ガスとを反応させる。反応槽としては、温度調節機構と、反応槽内に入れたケイ素原料を流動させる流動機構と、を備えているものであれば、特に限定されるものではない。温度調節機構としては、ジャケット式や内部熱交換式、反応槽を温度調節された熱媒を含む室内に置く方法などが応用でき、熱媒は気体でも液体でもよい。
流動機構としては、例えば、反応槽に外部から力を加える機構や、反応槽内のケイ素原料に直接力を加える機構などが挙げられる。反応槽に外部から力を加える機構としては、反応槽に振動を与えて反応槽内のケイ素原料を振動流動させる振動流動や、反応層全体を回転させて反応槽内のケイ素原料を撹拌流動させる撹拌流動などが挙げられる。撹拌流動は、例えばロータリーキルンやコニカル乾燥機などを用いて行うことができる。反応槽内のケイ素原料に直接力を加える機構としては、反応槽内に撹拌羽根を備えた機構や、反応槽内に気体や液体などの流体を流動させてその流動する力を利用して反応槽内のケイ素原料を流動させる機構などが挙げられる。撹拌羽根としては、パドル式のものなどが挙げられる。流動機構は、これらの機構のうちの一つよりなるものであっても良いし、複数の機構を組み合わせたものであっても良い。流動機構としては、好ましくは振動流動である。振動流動においては、攪拌羽根を用いた機構のような回転シール部分がないため、反応槽内のガスの漏えいが抑えられる点で好ましい。振動流動においては、例えば振動流動層反応槽を用いることができる。
以下、流動機構の一例として振動流動を例に挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は振動流動に特に限定されるものではない。
図1は、本発明に係るクロロポリシランの製造方法(以下、本製造方法ということがある。)において好適に用いられる、本発明に係る振動流動床反応装置の一実施形態を示した概略図である。図2は、出口フィルターを拡大して示した断面図である。図3は、出口フィルターの温度を測定する温度計の設置部分を拡大して示した断面図である。図4は、図1において、出口フィルターの設置部分を拡大して示した断面図である。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る振動流動床反応装置10は、ケイ素原料などの原料粒子を入れる円筒横型の反応槽12を備えている。この反応槽12の軸方向の両端はフランジ14a,14bによって閉鎖されている。反応槽12の上部には、反応槽12内に原料粒子を供給するための原料粒子供給口16、反応槽12内に塩素ガスなどの原料ガスを供給するための原料ガス供給口18、反応槽12から気体状の反応生成物(留出成分)を留出させるための留出口20が設けられている。
反応槽内において、留出口の手前には出口フィルター22が設けられている。出口フィルター22は、図2に示すように、留出口のフランジ24の中央部分に設けられた留出成分が通過する通過孔24aに位置を合わせて一体的に取り付けられており、留出成分は、出口フィルター22を経由して通過孔24aを通過し、反応槽12の外に留出する。
反応槽12の外側には、反応槽12の加熱・除熱を行う熱媒を循環させるためのジャケット28が設けられている。熱媒としては、蒸気や熱媒オイルなどを用いることができる。熱媒温度は、図示しない温度制御部により温度制御され、これにより反応温度の制御が可能になっている。ジャケット28は出口フィルター22の周囲も覆っており、温度制御部の温度制御により出口フィルター22の温度も反応槽12の温度とともに温度制御される。出口フィルター22の温度は、熱電対などを用いて測定することができる。図3に示すように、出口フィルター22よりも外側で出口フィルター22に近い留出成分の流路内には、熱電対を設置するための鞘管26が設けられている。この鞘管26に熱電対を設置することにより、出口フィルター22の温度を測定することができる。
反応槽12の底部には、偏心モータ30の出力30aが連結されており、この偏心モータ30の回転により、反応槽12には周方向への円振動が与えられる。原料粒子供給口16には、反応槽12の円振動を吸収するフレキシブルホース32を介して原料粒子供給部34が接続されている。原料粒子供給部34は、ケイ素原料の他、後述する銅、銅化合物などの触媒の仕込みにも使用することができ、また、これらを塩素化反応中に反応槽12内に追加する場合にも使用することができる。これらの追加を行うことで、反応槽12内に仕込んだ粉量が塩素化反応によって減少した場合に、その粉面を一定レベルに維持することができる。また、留出口20には、反応槽12の円振動を吸収するフレキシブルホース36を介して留出成分を貯留するための受器38が接続されており、受器38までの途中のラインには、中間トラップ40を介して、留出成分を凝縮させる冷却部42が設けられている。原料ガス供給口18には塩素ガスなどの原料ガスを反応槽12内の所定の場所に吹き込むための吹き込み管44が取り付けられている。吹き込み管44の先端は、反応槽12内の所定の場所に配置されており、この吹き込み管44の先端が原料ガスの吹き出し口となる。吹き込み管44の基端は、反応槽12の外側に配置され、原料ガス供給ライン46が接続されている。原料ガス供給ライン46の流量調節バルブ48によって反応槽12内に供給する原料ガスの流量調節(供給停止も含む)が可能になっている。原料ガスは、フローメータを用いて所定量に調節することができる。
反応槽12は、細長いほど伝熱面積が大きくとれるので、この観点からいえば細長いほど好ましいが、細長すぎると内部の溶接が難しくなって製作しにくく、また、細長くなるほど反応槽12が重くなり偏心モータ30の所要動力が増加する。したがって、反応槽12は、長さLと内径Dとの比率L/Dを1〜10の範囲内に設定することが好ましい。また、伝熱面積、製作しやすさ、動力などの観点から、L/Dを2〜5の範囲内に設定することがより好ましい。
反応槽12の振動は、偏心モータ30による反応槽12の円運動によって引き起こされる。この円運動により、例えば図4の矢印で示すように、反応槽12内に入れられた原料粒子は、反応槽12内で周方向に回転流動(振動流動)する。これに伴い、原料粒子の粉面(粒子層と気相部との界面)は上下する。実線Hは、静置状態における粒体の粉面を表したものである。破線H’は、振動流動状態における粉面の位置を表したものである。
ここで、本製造方法では、図1に示すような振動流動床反応装置を用いてケイ素原料を振動流動させながらケイ素原料に塩素ガスを接触させて反応させることによりクロロポリシランを得る。本製造方法では、ケイ素原料と塩素ガスとを反応させるため、クロロシランの混合物が得られる。クロロシランを一般式で示すと以下の通りである。
(式1)
SiCl2n+2
ただし、式1において、nは1以上の整数である。
クロロシランの具体例としては、SiCl、SiCl、SiCl、SiCl10、SiCl12、SiCl14などを挙げることができる。これらのうちで、生成物として好ましいものは、式1においてnが2以上の整数であるクロロポリシランであり、さらに好ましくはSiCl、SiCl、SiCl10であり、特に有用なものはSiClである。SiClは、生成したクロロシラン全体の中で10質量%以上であることが好ましい。より好ましくは20質量%以上である。
そして、本製造方法では、反応槽12の内部において、ケイ素原料が振動流動する範囲(図4のH’までの範囲)よりも上側で、留出成分を留出させる留出口20の手前に、出口フィルター22を設ける。すなわち、反応槽12の内部において、振動流動するケイ素原料が直接当たらないところで、留出成分を留出させる留出口20の手前に出口フィルター22を設ける。
反応槽12内では、ケイ素原料の振動流動(衝突等)によりケイ素原料の微粉(微粒子)が生成したり、ケイ素原料中の不純物の塩素化物などからなる微粉(微粒子)が生成したりする。これらの反応槽12内で生成した微粒子は、留出成分とともに配管を通って留出成分を貯留するための受器38などに流出するおそれがある。また、受器38などに流出する途中の配管内に蓄積するおそれもある。これにより、歩留まりの低下や、留出成分の純度の低下、配管の閉塞などが起きるおそれがある。
出口フィルター22は、このような微粒子が反応槽12の外へ流出するのを抑え、舞い上がった微粒子をケイ素原料が振動流動する範囲に戻すものである。本製造方法では、振動によってケイ素原料を流動させているため、仮に出口フィルター22の表面に微粒子が付着しても、付着した微粒子は振動によって出口フィルター22の表面から落下する。これにより、舞い上がった微粒子をケイ素原料が振動流動する範囲に戻すことができる。このように、出口フィルター22の表面に微粒子が堆積するのが抑えられるため、微粒子による出口フィルター22の閉塞が抑えられ、長時間の使用に耐えることができる。
ところで、本製造方法では、目的とするSiCl以外に、反応条件に応じてSiClなどの高次ケイ素塩化物が副生し得る。高次ケイ素塩化物は、目的とするSiClよりも高沸点であり、反応温度では気体として留出されても、留出途中で冷却されることにより凝縮や析出をするおそれがある。そのため、本製造方法では、出口フィルター22の温度を210〜350℃の範囲内に設定する。これにより、副生し得る高次ケイ素塩化物が出口フィルター22に付着して閉塞するのを抑えることができる。
副生し得るSiClの沸点は216℃である。反応時には、供給ガスの気流があるため、出口フィルター22の温度が210℃以上であれば、副生し得る高次ケイ素塩化物が出口フィルター22に凝縮や析出することを抑えることができる。この理由から、出口フィルター22の温度の下限を210℃に設定している。一方、生成するSiClは350℃より分解を開始する。SiClの分解を抑えるなどの理由から、出口フィルター22の温度の上限を350℃に設定している。
出口フィルター22の温度としては、より好ましくは220〜250℃の範囲内である。出口フィルター22の温度が220℃以上であれば、確実にSiClの凝縮を抑えることができる。また、出口フィルター22の温度が250℃以下であれば、フィルターの熱劣化を抑えることができる。
出口フィルター22の温度は、例えば出口フィルター22の周囲を覆うジャケットの熱媒の温度を制御することにより温度制御することができる。出口フィルター22の周囲を覆うジャケットは、図1に示す振動流動床反応装置10のように、反応槽12の周囲を覆うジャケット28と一体となっていて、出口フィルター22の温度を反応槽12の温度と同じ温度に制御するようにしても良いし、反応槽12の周囲を覆うジャケット28とは別体となっていて、反応槽12の温度制御部とは別個の温度制御部により出口フィルター22の温度を制御するようにしても良い。
出口フィルター22は、高温環境に曝されることから、高温環境に耐え得るものであることが好ましい。このようなフィルターの材質としては、焼結金属、焼結セラミックス、高耐熱性の含フッ素樹脂などを挙げることができる。焼結金属の金属としては、ステンレス(SUS304、SUS316、SUS316Lなど)やその他の耐食性材料として、ハステロイ(商品名)、インコネル(商品名)等の耐食性合金や、窯業系材料の炭化ケイ素(シリコンカーバイド)、アルミナ、ジルコニア、ムライトなどを挙げることができる。含フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などを挙げることができる。また、これらの材料をコーティングや被覆等の方法で組み合わせたものも用いることができる。これらは、単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
出口フィルター22の孔径としては、5〜500μmの範囲内であることが好ましい。より好ましくは10〜200μmの範囲内、さらに好ましくは20〜100μmの範囲内である。出口フィルター22の孔径が5μm以上であれば、生成する微粒子の出口フィルター22への閉塞が抑えられやすい。一方、出口フィルター22の孔径が500μm以下であれば、生成する微粒子の出口フィルター22からの流出が抑えられやすい。
出口フィルター22が例えば含フッ素樹脂などの樹脂膜よりなる膜フィルターである場合には、孔径に代えて、目付や通気量などにより微粒子の捕捉性を評価することができる。膜フィルターの目付としては、100〜500g/cmの範囲内であることが好ましい。より好ましくは200〜400g/cmの範囲内である。膜フィルターの通気量としては、1.0〜7.0cm/cm/secの範囲内であることが好ましい。より好ましくは2.0〜5.0cm/cm/secの範囲内である。
本製造方法においては、出口フィルター22を1つで、反応槽12内で生成する微粒子が流出するのを抑えるようにしても良いし、出口フィルター22に加えて第2フィルターを用い、2段のフィルターで、反応槽12内で生成する微粒子が流出するのを抑えるようにしても良い。第2フィルターは、出口フィルター22を通過した微粒子が流出しないようにするものである。第2フィルターを用いることにより、微粒子の流出を抑える効果はより高まる。また、3段以上のフィルターで、反応槽12内で生成する微粒子が流出するのを抑えるようにしても良い。3段以上のフィルターとすることにより、微粒子の流出を抑える効果はさらに高まる。
第2フィルターを用いる場合には、第2フィルターは、反応槽12内に設けても良いし、反応槽12外に設けても良い。反応槽12内に第2フィルターを設ける場合には、出口フィルター22を通過した微粒子が留出口20から流出しないように抑えることができる。反応槽12外に第2フィルターを設ける場合には、出口フィルター22を通過した微粒子が、留出口20から流出しても、留出成分を貯留する受器38に流出するのを抑えることができる。
図5には、出口フィルター22に加えて第2フィルターを用い、第2フィルターを反応槽12外に設置する構成の一例を示す。第2フィルター50は、留出成分を凝縮させる冷却部42の手前の配管途中に設置されている。第2フィルター50を収容している保護管52は、一方端面が閉塞された円筒体で構成されており、開放端面には、留出成分が通過する通過孔を中央部分に備えたフランジ54が取り付けられている。第2フィルター50は、このフランジ54の通過孔に位置を合わせて一体的に取り付けられている。反応槽12から留出した留出成分は、第2フィルター50を経由して通過孔を通過した後、留出成分を凝縮させる冷却部42で凝縮され、受器38に貯められる。
第2フィルター50においても、副生し得る高次ケイ素塩化物は凝縮や析出をしないことが好ましい。この観点から、第2フィルター50の温度を所定の温度に設定することが好ましい。具体的には、第2フィルター50の温度としては、220〜250℃の範囲内であることが好ましい。第2フィルター50の温度は、公知の温度調整装置を用いて温度制御することにより所定の温度に設定することができる。
第2フィルター50の材質としては、焼結金属、焼結セラミックス、高耐熱性の含フッ素樹脂などを挙げることができる。第2フィルター50の孔径としては、5〜500μmの範囲内であることが好ましい。より好ましくは10〜200μmの範囲内、さらに好ましくは20〜100μmの範囲内である。第2フィルター50が膜フィルターである場合には、目付としては、100〜500g/cmの範囲内であることが好ましい。より好ましくは200〜400g/cmの範囲内である。また、通気量としては、1.0〜7.0cm/cm/secの範囲内であることが好ましい。より好ましくは2.0〜5.0cm/cm/secの範囲内である。
出口フィルター22に加えて第2フィルター50を用いる場合には、例えば出口フィルター22で粗粒子の流出を抑え、第2フィルター50で粗粒子よりも微細な微粒子の流出を抑えるように組み合わせることができる。このような構成であれば、出口フィルター22表面での微粒子による閉塞が抑えられやすくなる。
この場合の組み合わせ例としては、孔径の大きい(例えば100μm以上)の焼結金属フィルター(出口フィルター22)と孔径の小さい(例えば20μm以下)の焼結金属フィルター(第2フィルター50)との組み合わせ、孔径の大きい焼結金属フィルター(出口フィルター22)とPTFEフィルター(第2フィルター50)との組み合わせ、孔径の小さい焼結金属フィルター(出口フィルター22)とPTFEフィルター(第2フィルター50)との組み合わせ、目付あるいは通気量の大きいPTFEフィルター(出口フィルター22)と目付あるいは通気量の小さいPTFEフィルター(第2フィルター50)との組み合わせなどを挙げることができる。
焼結金属フィルターは、耐熱性に非常に優れ(耐熱温度500℃以上)、物理的強度に優れるが、孔径が小さくなる(例えば50μm以下)と微粒子により閉塞しやすい傾向にある。一方、PTFEフィルターは、耐熱性にやや劣り(耐熱温度260℃)、物理的強度にもやや劣るが、微粒子の捕集性能に非常に優れ、微粒子による閉塞も生じにくい傾向にある。このことから、特に好ましい組み合わせとしては、孔径の大きい(例えば100μm以上)焼結金属フィルター(出口フィルター22)とPTFEフィルター(第2フィルター50)との組み合わせを挙げることができる。
この組み合わせによれば、比較的高温に設定した反応槽12内部では、孔径の大きい耐熱性に優れる焼結金属フィルターを出口フィルター22として用いて粗粒子の流出を抑え、ある程度温度が下がった反応槽12外部では、微粒子の捕集性能に優れるPTFEフィルターを第2フィルター50として用いて微粒子の流出を抑えることができる。これにより、出口フィルター22の熱劣化や微粒子による閉塞、高次ケイ素塩化物の凝縮や析出を抑えつつ、微粒子の捕集性能を向上させることができる。
出口フィルター22や第2フィルター50は、使用後にアルカリ処理して再使用することができる。これにより、コストの低減を図ることができるとともに、フィルターの廃棄物を減らすことができるので、環境に優しいものとすることができる。アルカリ処理に用いるアルカリとしては、NaOH水溶液、KOH水溶液、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)などを挙げることができる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。アルカリ処理を行うのに特に好適なフィルターとしては、耐薬品性に優れるなどの観点から、PTFEフィルターを挙げることができる。
原料ガスの塩素ガスは、高純度のものを希釈することなくそのまま供給しても良いが、希釈ガスを併用して混合ガスを供給することが好ましい。希釈ガスを併用することにより、塩素ガス濃度が低下するため、ケイ素原料との反応がマイルドになって反応熱による温度上昇を抑えることができる。また、希釈ガスにより反応熱を吹き込み場所から持ち出すことができるため、除熱効果も期待できる。
希釈ガスは、ケイ素原料との反応性に乏しい(反応しない)ガスであることが好ましい。このようなガスとしては、窒素、アルゴンなどの不活性ガスや、四塩化ケイ素などの副生ガスなどを挙げることができる。これらの内では、安価で使いやすいので、窒素が好ましい。
希釈ガスを併用する場合、希釈ガスを用いる効果に優れるなどの観点から、塩素ガス濃度は90質量%以下であることが好ましい。より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。一方、ケイ素原料との反応性を確保するなどの観点から、塩素ガス濃度は0.1質量%以上であることが好ましい。より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上である。
また、本発明においては、希釈ガスや塩素ガスに水分が含まれると、生成したクロロポリシランが加水分解し、収率を下げる原因となるため、含まれる水分は少ないほうが好ましい。希釈ガスに関する好ましい水分量は10000体積ppm以下であり、より好ましくは5000体積ppm以下、特に好ましくは1500体積ppm以下である。塩素ガスに関しては、好ましい水分量は5000体積ppm以下であり、より好ましくは1000体積ppm以下、特に好ましくは500体積ppm以下である。下限は特にないが、水分を除去精製したり、設備の気密を保つためのコストを考慮すると、希釈ガスおよび塩素共に0.01体積ppb以上のものが好ましく、より好ましくは0.1体積ppb以上である。
ケイ素原料は、ケイ化鉄、ケイ化カルシウム、ケイ化マグネシウムなどのケイ素合金粒子であっても良いが、ケイ素合金粒子を用いた場合、塩素化工程で、塩化鉄、塩化カルシウム、塩化マグネシウムなどの他の金属塩化物が副生してクロロシランの純度を損ねやすいことから、合金ではないケイ素粒子が好ましい。
ケイ素粒子は、Fe、Ca、Mg、Al、Ti、C、Oなどの不純物の含有量が比較的多い低純度のものも用いることができるが、塩素化工程で生じる副生成物の分離の負荷が小さいなどの観点から、比較的高純度のものが好ましい。より具体的には、例えば、ケイ素粒子のケイ素純度が95質量%以上であることが好ましい。より好ましくは97質量%以上である。ただし、ケイ素粒子の不純物には、吸着水分は含まれない。なお、ケイ素粒子の吸湿性はそれほど高くはなく、工業的に製造されたものでも吸着水分は3000質量ppm以下である。ケイ素粒子は、吸着水分を含んだ状態で用いることができるが、適当な方法で乾燥してから使用することもできる。高純度のケイ素原料としては、シリコンウェハ、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、金属ケイ素などを挙げることができる。
ケイ素粒子の不純物濃度としては、塩素化工程で生じる副生成物の分離の負荷を抑えるなどの観点から、ケイ素以外の金属元素がケイ素粒子全体の中で2質量%以下であることが好ましい。より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。ケイ素以外の金属元素のうちAlやTiは、その塩化物がクロロシランと特に分離しにくいものであるため、ケイ素粒子中でより低濃度であることが望ましい。具体的には、ケイ素粒子全体の中で、Alがアルミニウム元素として0.5質量%以下、Tiがチタン元素として0.1質量%以下であることが好ましい。より好ましくはAlが0.3質量%以下、Tiが0.05質量%以下であり、さらに好ましくはAlが0.2質量%以下、Tiが0.01質量%以下である。AlやTi以外では、ケイ素粒子全体の中で、Feが0.2質量%以下、Caが0.5質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、Feが0.1質量%以下、Caが0.04質量%以下である。なお、不純物として含まれ得る炭素や酸素などの非金属元素は、金属ケイ素中に含まれることがあるが、これらに由来する副生成物はクロロシランとの分離が蒸留などの精製方法によって比較的容易であるため、その不純物濃度としては特に限定されるものではない。
一方、ケイ素原料の不純物濃度の下限については、イレブンナイングレードのシリコンウェハが知られていることから、ケイ素原料としては、不純物濃度が0.01質量ppb以上のものが適用可能である。また、工業的に安価に入手しやすいなどの観点から、ケイ素原料としては、不純物濃度が1質量ppm以上のものが特に適用しやすい。
ケイ素原料は、後述する触媒体が得られやすい、塩素化の反応が起きやすいなどの観点からいえば、比較的粒径が小さくて表面積が大きいことが好ましい。一方、ケイ素原料の粒径が小さいと、振動流動時に飛散して留出口20から流出されやすい、あるいは、留出口20の出口フィルター22を目詰まりさせやすいため、このような観点からいえば、ケイ素原料は、比較的粒径が大きいことが好ましい。したがって、これらのバランスを考慮すると、ケイ素原料の粒径としては、1μm〜5mmの範囲内であることが好ましい。より好ましくは100μm〜3mmの範囲内である。なお、ケイ素原料の粒径は、例えばレーザー回折式粒度分布計で測定することができる。この際、体積基準で粒度分布を解析して、メジアン径を粒径の代表値として用いることができる。
ケイ素原料の塩素化反応においては、反応の促進の観点から、触媒を用いることが好ましい。このような触媒としては、銅、銅化合物を挙げることができる。より具体的には、金属銅、ハロゲン化銅、硫酸銅、硝酸銅、炭酸銅、塩基性炭酸銅、有機酸銅などを挙げることができる。これらは、単独で用いることもできるし、2種以上を併用することもできる。銅化合物の酸化数は、特に限定されるものではなく、1価であっても良いし2価であっても良い。これらのうちでは、金属銅、塩化銅がより好ましく、金属銅がさらに好ましい。
上記触媒は、粒状であることが好ましい。上記触媒は、後述する触媒体が得られやすいなどの観点からいえば、比較的粒径が小さくて表面積が大きいことが好ましい。一方、上記触媒の粒径が小さいと、凝集を起こしやすいため、このような観点からいえば、上記触媒は、比較的粒径が大きいことが好ましい。したがって、これらのバランスを考慮すると、上記触媒の粒径としては、1μm〜0.2mmの範囲内であることが好ましい。より好ましくは10μm〜0.1mmの範囲内である。なお、上記触媒の粒径は、ケイ素原料と同様、メジアン径を粒径の代表値として用いることができる。
上記触媒のなかで、金属銅粉としては、湿式還元銅粉やアトマイズ銅粉、スタンプ品と呼ばれる平らに押しつぶした形状など様々な製法によるものを好適に用いることができる。また、ケイ素原料との触媒活性化反応では、電解銅粉と呼ばれる樹枝状の銅粉も好適に用いることができる。
上記触媒とケイ素原料とを接触させて所定の温度条件下で反応させることにより、ケイ素原料の塩素化反応を促進できる触媒体が得られる。触媒体を生成させる温度としては、250℃以上であることが好ましい。より好ましくは280℃以上である。一方、その温度の上限は特に限定されるものではないが、工業的な装置を考慮すると、高温に耐える装置はコストが大きくなるので、その意味での好ましい上限は400℃である。より好ましくは350℃以下である。触媒体を生成するための加熱時間としては、特に限定されるものではないが、より好ましくは10分以上24時間以内、さらに好ましくは1時間以上12時間以内である。
触媒体を得る反応は、ケイ素酸化物や銅酸化物の発生を抑えて触媒活性の低下を抑えるなどの観点から、窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気中や、水素ガスなどの還元雰囲気中、あるいは、塩素ガス雰囲気中などで行うことが好ましい。触媒体を得る反応は、上記触媒およびケイ素原料を流動させながら行うことが好ましい。流動方式としては振動流動式、気層流動式、パドル式などの公知の技術を応用できるが、上記触媒およびケイ素原料は比重の大きな粒子であり、塩素化反応での気流量が少ないことから、振動流動床式がより好ましい。
触媒体の生成は、例えばケイ素原料の塩素化反応を行ったときに反応速度が促進されていることにより確認できる。また、例えば触媒体を得る反応を行った後、未反応の触媒を抽出し、ケイ素原料中に銅成分が残っていることによっても確認できる。触媒が金属銅よりなる場合には、金属銅は硝酸に溶解するが触媒体は硝酸に溶解しないため、例えば硝酸を用いて未反応の金属銅を抽出することができる。触媒体の濃度は、ケイ素原料と触媒体との合計量のうち、好ましくは2質量ppm以上10質量%以下、さらに好ましくは5質量ppm以上5質量%以下である。
ケイ素原料の塩素化反応は、触媒体の生成後、あるいは、触媒体の生成と同時に、塩素ガスの供給を開始することにより行うことができる。ケイ素原料の塩素化反応は、クロロシランにおける六塩化二ケイ素の選択率に優れるなどの観点から、150〜300℃の範囲内で行うことが好ましい。より好ましくは170〜270℃の範囲内、さらに好ましくは200〜250℃の範囲内である。
塩素化反応の温度は、熱媒温度で調整することができる。例えば反応初期には、所定の反応温度まで温度を上げるため、熱媒の温度を高めて加熱を行うと良い。塩素化反応が進むと、反応熱による温度上昇を考慮しながら、加熱または冷却を行って所定の反応温度を維持すると良い。塩素化反応は、常圧下で行うこともできるし、加圧下あるいは減圧下で行うこともできる。加圧下では、塩素化反応の反応性がより高まる。
ケイ素原料の塩素化反応において、塩素ガスは、連続的に供給しても良いし、間欠的に供給しても良い。塩素ガスは、1箇所に供給しても良いし、複数箇所に分散して供給しても良い。また、ケイ素原料は、最初に所定量仕込んで反応終了まで追加供給しないようにしても良いし、反応途中で逐次供給して塩素化反応を連続的に行うこともできる。
塩素化反応に用いる振動流動床反応装置10では、反応槽12や吹き込み管44に、SUS304やSUS316などを用いることができる。ただし、吹き込み管44などの常時塩素ガスに接触する部分は、塩素ガスによる腐食に耐える材質にすることが好ましい。耐食性材料としては、金属系材料のハステロイ(商品名)、インコネル(商品名)等の耐食性合金や、窯業系材料の炭化ケイ素(シリコンカーバイド)、アルミナ、ジルコニア、ムライト、石英ガラスなどを挙げることができる。より好ましいのは耐食性と耐熱性に優れる窯業系材料であり、中でも特に好ましいのは耐摩耗性にも優れる炭化ケイ素である。
吹き込み管46の口径は、ケイ素原料によって閉塞されにくいなどの観点から、内径1mm以上であることが好ましく、粉の入り込みを防ぐ意味で内径30mm以下が好ましい。より好ましくは内径が2〜10mmの範囲内である。また、吹き込み管46の厚みとしては、耐食性に優れるなどの観点から、1mm以上であることが好ましい。
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
<振動流動床反応装置の構成>
図4に示す構成の振動流動床反応装置とした。反応槽には、円筒横型の反応槽(25L、内径250mm×長さ600mm)を用いた。反応槽は周方向に円振動が可能である。反応槽の円振動によりケイ素原料が振動流動される。反応温度の制御は、ジャケット内を循環する熱媒により行われる。ケイ素原料は原料粒子供給口から供給され、塩素ガスは吹き込み管から供給される。反応生成物としてクロロポリシランを含むクロロシランが留出口から留出され、冷却部で凝縮されて受器に貯められる。反応槽の上部で留出口の手前に出口フィルターを設置した。
<PTFEフィルター>
留出口のフランジに溶接した枠にPTFE製のフィルターバッグを被せ、上下両端を針金で固定することにより、図4に示す出口フィルターとした。PTFEフィルターには、ゴア社製の「ゴアフィルターバッグHDシリーズPTFE織布」を用いた。PTFEフィルターの仕様は以下の通りである。
目付:300g/cm
厚さ:0.25mm
通気量:4.0cm/cm/sec
常用使用温度:260℃
<焼結金属フィルター>
留出口のフランジに焼結金属エレメントを直接溶接することにより、図4に示す出口フィルターとした。焼結金属フィルターの仕様は以下の通りである。
材質:SUS316L
焼結体密度:4.2〜5.2g/cm
空隙率:36〜48%
使用温度:−250〜550℃
孔径:20μm、100μm
<塩素化反応>
反応槽にケイ素原料と塩素化触媒とを入れて反応槽を振動させ、反応槽を所定の温度に加熱した状態で原料ガスを供給して塩素化反応を行った。反応条件は以下の通りである。なお、塩素化反応を行うに際し、事前に触媒体の生成を行った。触媒体の生成は、塩素ガスを吹き込む前に、吹き込み管から窒素を1L/hで吹き込みながら、反応槽の熱媒温度を320℃に設定して3時間加熱し、反応槽を1500cps振幅3mmで振動させて行った。
ケイ素原料:ケイ素粒子(エルケム・ジャパン社製「Silgrain HQ」、(Silgrainはエルケム社の登録商標)、Si純度99.7質量%、メジアン粒径520μm)24kg
塩素化触媒:電解銅粉1kg
反応温度(熱媒温度):250℃
原料ガス:塩素ガス50vol%+窒素ガス50vol%
塩素ガス供給量:250L/h
窒素ガス供給量:250L/h
吹き込み管の本数:1本
振動条件:振動数1500cpm、振幅3mm
(実施例1)
出口フィルターとしてPTFEフィルターを用いて塩素化反応を行った。反応終了後にPTFEフィルターの表面に付着している微粒子の粒度分布を測定したところ、捕集した微粒子の粒度分布は、図6に示すように、0.2μmを中心として0.03〜1μmの範囲と、10μmを中心として1〜100μmの範囲と、500μmを中心として100〜1000μmの範囲に、3峰性の分布を示した。原料ケイ素の粒径は520μmであり、1μm以下の微粒子は原料中にもともと含まれていたものか反応中に生成した微粒子と推察される。また、10μm前後の微粒子は1μm以下の微粒子が凝集したものと推察される。この結果から、PTFEフィルターは1μm以下の微粒子まで捕捉することができ、捕捉性能に非常に優れることが分かった。
また、PTFEフィルターを100時間連続使用したが、差圧の上昇などは見られなかった。これは、反応槽の振動や反応生成ガスでPTFEフィルターが振動し、付着した微粉の一部が落下して反応槽内に戻ったためと推察される。この結果から、PTFEフィルターを用いれば、閉塞しないで長時間使用できることが分かった。
(実施例2)
出口フィルターとして焼結金属フィルター(孔径:20μm)を用いて塩素化反応を行った。その結果、反応開始4時間でフィルター前後の差圧が0.07MPaまで上昇した。また、反応終了後に焼結金属フィルターの表面を観察したところ、フィルターの表面に微粒子が数mmの厚みで堆積しており、やや閉塞傾向であった。
(実施例3)
出口フィルターとして焼結金属フィルター(孔径:100μm)を用いて塩素化反応を行った。その結果、反応開始4時間でも、フィルター前後の差圧の上昇は見られず、反応終了後に焼結金属フィルターの表面を観察しても、フィルターの表面に微粒子が堆積する様子は確認されなかった。その一方で、粒径1μm以下の微粒子が通過する傾向にあった。
実施例1〜3では、出口フィルターの表面に高次ケイ素塩化物の付着による閉塞は観察されなかった。また、出口フィルターだけでも微粒子の流出がある程度抑えられることが分かった。したがって、本発明によれば、振動流動反応によってクロロポリシランを得る際に、歩留まりを向上できるとともに副生し得る高次ケイ素塩化物の付着による閉塞を抑えることができることが確認できた。
また、これらの結果から、出口フィルターだけで微粒子の流出を抑えるようにしても良いが、以下のような2段のフィルター構成にすると、さらに微粒子の流出を抑える効果が高まることが推察できる。すなわち、比較的高温に設定した反応槽内部には、孔径の大きい耐熱性に優れる焼結金属フィルターを出口フィルターとして用いて粗粒子の流出を抑え、ある程度温度が下がった反応槽外部には、微粒子の捕集性能に優れるPTFEフィルターを第2フィルターとして用いて微粒子の流出を抑える。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
例えば上記実施形態においては、好ましい例として円筒横型の反応槽12を用いることが示されているが、これは、ケイ素原料などの原料粒子の振動による動きを円筒縦型よりも激しくすることができるからであり、本発明においては、円筒縦型の反応槽を用いて塩素化反応を行っても良い。また、上記実施形態においては、反応槽12の軸方向の両端はフランジ14a,14bによって閉鎖されることが示されているが、反応槽のメンテナンス性を確保する観点からいえば、反応槽12の軸方向の端部の少なくとも一方をフランジとし、開閉可能な形式とすれば良い。また、上記実施形態においては、伝熱効率に優れるなどの観点から、反応槽の加熱方法としてジャケット式を採用し、ジャケット28を備えることが好ましい例として示されているが、反応槽の加熱方法としては、ジャケット式に代えて電気ヒーターを用いた方式などであっても良い。また、上記実施形態においては、反応槽12の底部に偏心モータ30の出力30aが連結されている構成が示されているが、反応槽12の底部に偏心モータを直付して偏心モータもろとも振動する構成であっても良い。
本発明に係るクロロポリシランの製造方法は、半導体用シリコンのシリコンソースとして重用されるSi(ジシラン)の原料となるSiCl(六塩化二ケイ素)を得る方法として用いることができる。

Claims (6)

  1. 流動させたケイ素粒子またはケイ素合金粒子に塩素ガスを反応させてクロロポリシランを得る際に、反応槽内部において、前記ケイ素粒子またはケイ素合金粒子が流動する範囲よりも上側で、留出成分を留出させる留出口の手前に、流動によって舞い上がる微粒子が前記留出口から流出するのを抑える出口フィルターを設けるとともに、前記出口フィルターの温度を210〜350℃の範囲内に設定することを特徴とするクロロポリシランの製造方法。
  2. 前記ケイ素粒子またはケイ素合金粒子を流動させる流動方法は振動流動であることを特徴とする請求項1に記載のクロロポリシランの製造方法。
  3. 前記出口フィルターの孔径を5〜500μmの範囲内に設定することを特徴とする請求項1または2に記載のクロロポリシランの製造方法。
  4. 前記出口フィルターに加えて、該出口フィルターを通過した微粒子が前記留出成分を貯留する受器に流出するのを抑える第2フィルターを設けることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のクロロポリシランの製造方法。
  5. 前記出口フィルターの材質は、焼結金属、焼結セラミックス、および、ポリテトラフルオロエチレンから選択される1種または2種以上であり、前記第2フィルターの材質は、焼結金属、焼結セラミックス、および、ポリテトラフルオロエチレンから選択される1種または2種以上であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のクロロポリシランの製造方法。
  6. 前記出口フィルターあるいは前記第2フィルターを使用後にアルカリ処理して再使用することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のクロロポリシランの製造方法。
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