JP5372729B2 - 多結晶シリコン製造用の反応炉の排出管の閉塞防止方法及び閉塞防止装置 - Google Patents
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Description
本発明は、多結晶シリコン製造用の反応炉の排出管の閉塞を防止するための閉塞防止方法及びそれを行うための閉塞防止装置に関するものであり、更に詳しくは、太陽電池用高純度多結晶シリコン製造用の反応炉の排出管の閉塞を防止するための閉塞防止方法及びそれを行うための閉塞防止装置に関するものに関するものである。
近年の太陽電池の普及に伴い、多結晶シリコンの需要は急増している。従来、高純度の多結晶シリコンを製造する方法としてシーメンス法(Siemens Method)が挙げられる。シーメンス法はトリクロロシラン(SiHCl3)を水素(H2)によって還元する方法である。シーメンス法により製造される多結晶シリコンは純度がイレブン−ナイン(11−N)と非常に高く、半導体用シリコンとして使用されている。太陽電池用シリコンもこの半導体用シリコンとして製造された製品の一部を使用してきたが、11−Nほどの純度を必要としない点とシーメンス法が多くの電力を消費する点から、太陽電池用シリコンに適した安価な製造方法が求められている。
このような中、太陽電池用シリコンの製造方法として、亜鉛還元法による多結晶シリコンの製造方法が提案されており、その反応は下記式(1):
SiCl4 + 2Zn = Si + 2ZnCl2 (1)
により示すものである。
SiCl4 + 2Zn = Si + 2ZnCl2 (1)
により示すものである。
亜鉛還元法による多結晶シリコンの製造方法では、製造される多結晶シリコンの純度はシックス−ナイン(6−N)程度であり、半導体用シリコンに比べると純度は低いものの、シーメンス法と比較して5倍程度にも達する程反応効率に優れ且つ製造コストも有利な製造方法である。
多結晶シリコンの製造方法としては、例えば、反応容器内で液体または気体状態の四塩化珪素を溶融亜鉛で還元し、生成した多結晶シリコンと塩化亜鉛とを含有する混合物を反応容器外に取り出し、前記混合物を分離容器に収容し、混合物中の塩化亜鉛を分離してのち、多結晶シリコンを分離容器から回収することを特徴とする多結晶シリコンの製造方法(特許文献1)や、反応容器内で液体または気体状態の四塩化珪素を溶融亜鉛で還元し、生成した多結晶シリコンと塩化亜鉛とを含有する混合物を反応容器外に取り出してのち、前記混合物中の塩化亜鉛を分離して、多結晶シリコンを回収する高純度シリコンの製造方法であって、分離された塩化亜鉛を電気分解して金属亜鉛と塩素を回収し、回収された金属亜鉛を再び前記四塩化珪素の還元剤として用いるとともに、回収された塩素を水素と合成させて塩化水素とし、前記四塩化珪素を生成するための金属シリコンの塩化処理に用いることを特徴とする高純度シリコンの製造方法(特許文献2)が報告されている。
特許文献1および2はいずれも液体または気体状態の四塩化珪素を溶融亜鉛で還元している。しかし、溶融亜鉛を用いる方法では、多結晶シリコンが粉状となり、後処理の煩雑さや不純物処理の難しさ及びキャスティングの困難さのために高コストになるという問題がある。
そこで、四塩化珪素蒸気と亜鉛蒸気を用いて亜鉛還元法を行うシリコンの製造方法としては、例えば、鉛直方向に立設された反応管に加熱しながら反応管の側周面に設けられた亜鉛蒸気供給口より亜鉛蒸気を供給するとともに、四塩化珪素蒸気を前記亜鉛蒸気供給口よりも下方から反応管の中心軸に沿って上方に向かって吐出させて、反応管内の温度分布を側周面側よりも中心軸側のほうが低くなるようにしてシリコン粉を製造する方法が報告されている(特許文献3)。
また、反応容器内に珪素化合物供給配管と亜鉛供給配管を有し、反応容器内の整流部材を通してシリコンを含む反応生成ガスを反応容器外に排出するシリコン製造装置も報告されている(特許文献4)。
特許文献3、4はともにシリコンを含む反応生成ガスを反応容器外に排出するもので、得られるシリコンはシリコン粉である。ところが、粉状のシリコンはインゴット製造のために溶融する際、非常に熔解し難いという問題に加え、単位重量当たりの表面積が大きいことから純度が低くなり利用価値が乏しいという問題があった。
このため、得られるシリコンの形状としてはある程度の大きさを有する針状又はフレーク状が好ましい。針状又はフレーク状のシリコンを製造する方法としては、例えば、高純度四塩化珪素及び高純度亜鉛をそれぞれ気化させて、ガス化雰囲気において反応を行うことにより、製品として取り出すシリコンの多くが針状又はフレーク状である太陽電池用高純度シリコンの製造方法が報告されている(特許文献5)。
特許文献5では、反応炉の内部に通電可能なタンタル芯またはシリコン芯を有し、この芯棒の温度を反応温度よりも上げることで反応炉よりも芯棒に針状、フレーク状のシリコンを析出させるものである。
四塩化珪素蒸気と亜鉛蒸気を反応炉内で反応させて、生成した多結晶シリコンを反応炉内に析出させる亜鉛還元法による多結晶シリコンの製造では、通常、反応率が70%程度であるため、未反応の原料蒸気が、反応炉の排出管を通って、反応炉外に排出されることになる。そして、未反応の原料蒸気が反応炉の排出管を通るときに、四塩化珪素蒸気と亜鉛蒸気の反応が起こり、反応炉の排出管内にシリコンが析出する。
そのため、特許文献5等の従来の反応炉には、析出したシリコンが、反応炉の排出管を閉塞してしまうという問題があった。排出管が完全に閉塞してしまうと、反応炉での運転を止めるしかない。このとき、運転を止めるのが間に合わずに、反応炉内の内圧が高くなり過ぎてしまうと、原料蒸気が亜鉛の蒸発気器へと逆流する。そうなると、亜鉛の供給側から、溶融亜鉛が吹き出す等、非常に危険である。
そこで、本発明の目的は、亜鉛還元法により多結晶シリコンを製造する際、反応炉の排出管にシリコンが析出して排出管を閉塞するのを防止することにある。
本発明者らは、上記従来技術における課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、亜鉛還元法により多結晶シリコンを製造する際、反応炉内の圧力が、多結晶シリコンの製造開始時の圧力より、1〜15kPa上昇したときに、析出物の除去部材で、反応炉の排出管内に析出した析出物を掻き出すことにより、効率良く且つ連続的に閉塞なく反応炉を運転できること等を見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明(1)は、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気を反応炉に供給し、該反応炉から排出ガスを排出して、該反応炉内で四塩化珪素蒸気と亜鉛蒸気の反応を行い、該反応炉内で生成する多結晶シリコンを析出させる多結晶シリコンの製造方法において、該反応炉内の圧力が、多結晶シリコンの製造開始時の圧力に比べ、1〜15kPa上昇したときに、析出物除去部材で、反応炉の排出管内に析出した析出物を、該反応炉の排出管外に掻き出す析出物除去操作を行うことを特徴とする多結晶シリコン製造用の反応炉の排出管の閉塞防止方法を提供するものである。
また、本発明(2)は、四塩化珪素蒸気と亜鉛蒸気を反応させて多結晶シリコンを製造するための多結晶シリコン製造用の反応炉に設置される該反応炉の排出管の閉塞防止装置であり、該反応炉の排出管内の析出物を掻き出すための析出物除去部材と、該反応炉の排出管内で該析出物除去部材を移動させるためのモーターと、該反応炉内の圧力を測定するための圧力計と、該圧力計からの圧力値の信号が入力され、該反応炉内の圧力が多結晶シリコンの製造開始時の圧力に比べ、1〜15kPa上昇したときに、該モーターに起動信号を出力する制御手段と、を有することを特徴とする多結晶シリコン製造用の排出管の閉塞防止装置を提供するものである。
本発明によれば、亜鉛還元法により多結晶シリコンを製造する際、反応炉の排出管にシリコンが析出することにより排出管が閉塞するのを防止することができる。そのため、本発明によれば、亜鉛還元法による多結晶シリコンの製造を安定して安全且つ効率的に行える。
本発明の多結晶シリコン製造用の反応炉の排出管の閉塞防止装置及び本発明の多結晶シリコン製造用の反応炉の排出管の閉塞防止方法について、図1〜図5を参照して説明する。図1は、本発明の多結晶シリコン製造用の反応炉の排出管の閉塞防止装置が設置される反応炉の形態例の模式的な端面図である。図2は、図1に示す反応炉に、本発明の多結晶シリコン製造用の反応炉の排出管の閉塞防止装置が設置されている模式図である。図3は、図2中の二点鎖線で囲った部分を端面図で表わした図である。なお、図2及び図3では、説明の都合上、反応炉の記載を簡略化した。図4は、反応炉の排出管内をロッドが移動する様子を示す模式的な端面図であり、(4−1)は、析出物除去操作が行われる前の待機状態のロッドの位置を示す図であり、(4−2)は、ロッドが反応炉の排出管内を移動した後のロッドの位置を示す図である。図5は、析出物除去部材の形態例を示す模式図である。
図1中、反応炉20は、縦長の円筒形状を有する側壁部1と、該側壁部1の上下を塞ぐ蓋部2(2a、2b)と、該反応炉20を加熱するためのヒーター5と、からなる。該反応炉20の上部には、四塩化珪素蒸気9の供給管7及び亜鉛蒸気10の供給管8が付設されており、該反応炉20の下部には、排出ガス11を該反応炉20の外に排出するための反応炉の排出管6が付設されている。また、該反応炉20内には、炭化珪素棒の固定部材4を介して炭化珪素棒3が設置されている。詳細には、該炭化珪素棒の固定部材4が、該側壁部1の内壁に形成されている炉内壁つば部12に引っ掛けられることより、該炭化珪素棒3は、該反応炉20の内部に下向きに突き出るように設置されている。なお、該側壁部1と該蓋部2とは、例えば、それぞれのつば部の間にシール材を挟み込み、つば部同士をボルト締めすること等により、密閉されている。
該四塩化珪素蒸気の供給管7の一端は、該反応炉20の内部に位置し、他端は、四塩化珪素の蒸発器に繋がっている。また、該亜鉛蒸気の供給管8の一端は、該反応炉20の内部に位置し、他端は、亜鉛の蒸発器に繋がっている。
そして、図2及び図3に示すように、該反応炉20には、ロッド22と、ロッド支持部材30と、モーター23と、回転軸24と、ロッド保持容器26と、圧力計21と、制御手段25と、からなる多結晶シリコン製造用の反応炉の排出管の閉塞防止装置が設置されている。
該ロッド22は、該反応炉の排出管6内に析出したシリコンを、該反応炉の排出管6の外に掻き出すための析出物除去部材である。
該ロッド支持部材30は、該ロッド22が該反応炉の排出管6内へ移動可能なように取り付けられる析出物除去部材の支持部材である。
該モーター23は、該ロッド22を反応炉の排出管6内へ移動させるためのモーターである。
該回転軸24は、該ロッド支持部材30の内部に配設され、該モーター23の回転を該ロッド22に伝達するための回転軸である。
該ロッド保持容器26は、該ロッド支持部材30が設置されることにより、該ロッド22を内部に保持するための保持容器である。該ロッド保持容器26には、該反応炉の排出管の連結管27及び排出ガスの送付管29が付設されている。
該反応炉の排出管の連結管27は、該反応炉の排出管6と連結している。また、該排出ガスの送付管29は、排出ガス11、すなわち、四塩化珪素と亜鉛が反応する際に生成する塩化亜鉛ガス及び未反応ガスである四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気を回収するための回収装置(図示せず)に繋がっている。そのため、該排出ガス11は、該反応炉20から該反応炉の排出管6を通り、該ロッド保持容器26を経て、該排出ガスの送付管29を通り、図示しない該回収装置へと移送される。
該圧力計21は、該反応炉20内の圧力を測定するための圧力計である。
該制御手段25は、該圧力計21と繋がっており、該圧力計21から伝達される圧力値の信号14を取り込む。先ず、製造開始時の該反応炉20内の圧力値を取り込んで記録し、次いで、製造中の該反応炉20内の圧力値を連続的に又は一定間隔に取り込む。そして、圧力値を取り込む毎に、製造開始時の圧力と比べたときの反応炉内の圧力上昇値を計算する。また、該制御手段25は、該モーター23と繋がっており、算出された該圧力上昇値が、予め設定した値に達したときは、該モーター23を起動させるための起動信号15を、該モーター23に出力する。なお、図2及び図3では、各信号の伝達経路を点線で示した。
図2及び図3に示す該反応炉20を用いて多結晶シリコンを製造しながら、該反応炉の排出管6の閉塞防止方法を行う方法について説明する。先ず、四塩化珪素及び亜鉛をそれぞれの蒸発器により気化させて、四塩化珪素蒸気9を四塩化珪素蒸気の供給管7から、亜鉛蒸気10を亜鉛蒸気の供給管8から、該ヒーター5により加熱されている該反応炉20内に供給しつつ、排出ガス11を該反応炉の排出管6から、該反応炉20の外へ排出する。このとき、該反応炉20内では、四塩化珪素と亜鉛が反応して、多結晶シリコンが生成するが、該反応炉20内には、該炭化珪素棒3が設置されているので、生成した多結晶シリコンが、該炭化珪素棒3に析出する。そして、該反応炉20の上部から四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気を供給し、該反応炉20の下部から該排出ガス11を排出しているので、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気は、該反応炉20の上部から下向きに移動しており、その流れに沿うように該炭化珪素棒3が存在しているので、該炭化珪素棒3を覆うように、多結晶シリコンの結晶が成長する。また、四塩化珪素と亜鉛の反応により、塩化亜鉛も生成するが、塩化亜鉛ガスは、未反応の四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気と共に、排出ガス11として、該反応炉の排出管6から反応炉の外へ排出される。
該反応炉20で、多結晶シリコンの製造を行っている間、該反応炉の排出管6の閉塞防止方法を行う。先ず、該反応炉20への四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気の供給を開始して、該反応炉20で多結晶シリコンの製造を開始した時の反応炉内の圧力を、該圧力計21で測定する。その圧力値は入力信号として、該制御装置25に伝達されるので、該制御手段25に、製造開始時の圧力値を取り込み、記録させる。
そのまま、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気の供給を続け、該反応炉20内で、四塩化珪素と亜鉛の反応を行い、該反応炉20内に多結晶シリコンを析出させつつ、該反応炉の排出管6から該排出ガス11を該反応炉20の外に排出する。多結晶シリコンの製造を行っている間、連続的に又は一定間隔で、該圧力計21から伝達される反応炉内の圧力値の信号を、該制御装置25に取り込ませ、該制御手段25で、圧力値の取り込み毎に、多結晶シリコンの製造開始時の圧力と比べたときの反応炉内の圧力の圧力上昇値を計算させる。そして、算出された圧力上昇値が、予め設定した値に達したときは、該モーター23に起動信号を出力するように、該制御手段25をプログラミングする。
該起動信号を受け取った該モーター23は、該ロッド22を、該反応炉の排出管6内に移動させる。このとき、該ロッド22を、図4の(4−1)に示す位置から、(4−2)に示すように、ロッドの先端221が、該側壁部1から突き出す位置まで移動させる。該ロッド22の移動により、該反応炉の排出管6内の析出物は、該反応炉の排出管6から掻き出され、排出管入口28から該反応炉20内に排出されることにより、該反応炉の排出管6内から除去される。その後、再び、該ロッド22を移動させて、図4の(4−1)に示す位置まで戻す。このようにして、析出物除去操作を行う。
次いで、該析出物除去操作を行った後も、該反応炉20内の圧力を測定しながら、四塩化珪素と亜鉛の反応を行い、再び、該圧力上昇値が、予め設定した値に達したときは、該析出物除去操作を行う。また、該制御手段25には、そのようなプログラミングをする。
すなわち、本発明の多結晶シリコン製造用の反応炉の排出管の閉塞防止装置は、四塩化珪素蒸気と亜鉛蒸気を反応させて多結晶シリコンを製造するための多結晶シリコン製造用の反応炉に設置される該反応炉の排出管の閉塞防止装置であり、該反応炉の排出管内の析出物を掻き出すための析出物除去部材と、該反応炉の排出管内で該析出物除去部材を移動させるためのモーターと、該反応炉内の圧力を測定するための圧力計と、該圧力計からの圧力値の信号が入力され、該反応炉内の圧力が多結晶シリコンの製造開始時の圧力に比べ、1〜15kPa上昇したときに、該モーターに起動信号を出力する制御手段と、を有することを特徴とする多結晶シリコン製造用の反応炉の排出管の閉塞防止装置である。
該析出物除去部材は、該反応炉の排出管内に析出した析出物を、該反応炉の排出管の外に掻き出して、該反応炉の排出管内の析出物を除去するための部材である。該析出物除去部材の材質としては、耐熱性及び強度を考慮して適宜選択されるが、例えば、石英、炭化珪素、窒化珪素等が挙げられる。また、該析出物除去部材の形状としては、特に制限されず、例えば、図5の(5−1)に示すように、横長の円柱形状のロッド22や、(5−2)に示すように、細長い軸部223の先端に、円柱状の先端部224を有する析出物除去部材225等が挙げられる。なお、図5中の左側の図は側面図であり、右側の図は、左側の図を向かって右側から見たときの図である。
該モーターは、該析出物除去部材を、該反応炉の排出管内に移動させるためのモーターである。なお、図2及び図3では、該モーター23と、該ロッド支持部材30と、該回転軸24とにより、該ロッド22の該反応炉の排出管6内への移動が行われる形態例を記載したが、本発明では、この形態例に限定されず、該析出物除去部材を該反応炉の排出管内へと移動できる形態であればよい。
また、該析出物除去部材による該析出物の除去は、図2〜図4に示すように、待機状態では、該反応炉の排出管の外に該ロッド22を保持しておき、該反応炉の排出管の外から、該反応炉の中に向かって、該ロッド22を挿入することによって行われてもよく、あるいは、待機状態では、図5の(5−2)に示す該析出物除去部材225の該先端部224を該反応炉内に、該軸部223を該反応炉の排出管内に保持しておき、該反応炉の排出管の入口側から、該反応炉の排出管の出口側に向かって、該析出物除去部材225を引き抜くことによって行われてもよい。
該析出物除去部材は、回転可動に取り付けられていてもよい。例えば、該ロッド22が、該ロッド支持部材30に、回転可動に設置されていてもよい。そして、該析出物除去部材が回転可動であることが、析出物の除去が容易になる点で好ましい。
該圧力計の設置位置は、該反応炉内の圧力を測定できる位置であれば、特に制限されない。
該制御手段は、該圧力計からの圧力値の信号を取り込み、該圧力値に基づいて、多結晶シリコンの製造開始時の圧力と比べたときの反応炉内の圧力の圧力上昇値を計算し、その値が予め設置した値に達したときに、つまり、該反応炉内の圧力が、製造開始時の圧力に比べ、予め設定した圧力上昇値分上昇したときに、該モーターに起動信号を出力できるようにプログラミングされているパーソナルコンピューター等の電子計算機である。
本発明の多結晶シリコン製造用の反応炉の排出管の閉塞防止方法は、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気を反応炉に供給し、該反応炉から排出ガスを排出して、該反応炉内で四塩化珪素蒸気と亜鉛蒸気の反応を行い、該反応炉内で生成する多結晶シリコンを析出させる多結晶シリコンの製造方法において、該反応炉内の圧力が、多結晶シリコンの製造開始時の圧力に比べ、1〜15kPa上昇したときに、析出物除去部材で、反応炉の排出管内に析出した析出物を、該反応炉の排出管外に掻き出す析出物除去操作を行うことを特徴とする多結晶シリコン製造用の反応炉の排出管の閉塞防止方法である。
該反応炉は、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気を反応炉に供給し、該反応炉から排出ガスを排出して、該反応炉内で四塩化珪素蒸気と亜鉛蒸気の反応を行い、該反応炉内で生成する多結晶シリコンを析出させることができるものであれば、特に制限されない。
該反応炉内は1000℃程度の温度となるため、該反応炉の材質としては、透明石英、不透明石英等の石英、炭化珪素、窒化珪素等が挙げられ、寿命や析出した多結晶シリコンを取り除く際に取り扱い易い点で、炭化珪素、窒化珪素が好ましく、また、コスト面からは、石英が好ましい。また、反応炉の構造等によっては、反応時の加熱温度に耐えられるのであれば、該反応炉の材質としては、特に制限されない。また、該反応炉の側壁部と蓋部が、異なる材質であってもよい。
そして、該反応炉としては、好ましくは、四塩化珪素と亜鉛を反応させて多結晶シリコンを生成させる反応炉であって、上部に四塩化珪素蒸気の供給管及び亜鉛蒸気の供給管を有し且つ下部に排出ガスの排出管を有する反応炉であり、析出棒、好ましくは炭化珪素棒が該反応炉内に設置されている多結晶シリコン製造用の反応炉(以下、反応炉(A)とも記載する。)である。
このような反応炉(A)の形状は、反応炉の上部から反応炉内に供給された四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気が、反応炉の上部から下部に向かって下向きに移動しながら反応するような形状、すなわち、縦長の形状である。言い換えると、該反応炉(A)の形状は、原料蒸気及び排出ガスが、反応炉の上部から下部に向かって流れる形状である。該反応炉(A)の大きさは、特に限定されないが、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気の供給条件によって、適宜選択される。一般的には、好ましくは、該反応炉の縦方向の長さは、1,000〜6,000mmであり、円筒形状の場合、直径が200〜2,000mmである。
該炭化珪素棒等の該析出棒は、該反応炉(A)内に設置される。該析出棒としては、炭化珪素棒、窒化珪素棒、タンタル棒、シリコン棒が挙げられ、炭化珪素棒が好ましい。該炭化珪素棒(析出棒)の形状としては、角柱状、円柱状が好ましく、特に、円柱状が好ましい。該炭化珪素棒(析出棒)の形状が円柱状の場合、該炭化珪素棒(析出棒)の直径は、強度や加工面から、1〜20cmが好ましく、2〜10cmが特に好ましい。また、該炭化珪素棒(析出棒)の固定部材4の下側から該排出管6の上側の間に存在する該炭化珪素棒(析出棒)の長さは、50〜1,200mmが好ましく、100〜1,100mmが特に好ましく、200〜1,000mmが更に好ましい。
該炭化珪素棒は、炭化珪素の成形体であるが、通常、炭化珪素の成形体は、多数の細孔を有する多孔質体である。そして、該炭化珪素棒は、多孔質の炭化珪素にシリコンが含浸されているシリコン含浸炭化珪素棒であることが、含浸されているシリコンが、反応により生成する多結晶シリコンの結晶の種となり、炭化珪素棒への多結晶シリコンの析出を促進できる点で好ましい。該シリコン含浸炭化珪素棒では、炭化珪素:含浸シリコンの質量比が、80:20〜95:5であることが好ましく、80:20〜90:10であることが特に好ましい。該シリコン含浸炭化珪素棒は、多孔質の炭化珪素棒を、溶融シリコン中に浸漬し、溶融シリコンを炭化珪素の孔に含浸させることにより得られる。
また、シリコンが含浸されていない多孔質の炭化珪素棒であっても、該反応炉内に設置され、四塩化珪素蒸気と亜鉛蒸気の反応が行われた場合、反応の初期の段階では、炭化珪素棒の外側近傍の多孔質構造内で、四塩化珪素蒸気と亜鉛蒸気との接触が起こり、そこでシリコンが生成するので、炭化珪素棒の外側近傍は、孔内にシリコンが含浸されているのと同様な状態になる。そのため、シリコンが含浸されていない多孔質の炭化珪素棒でもよく、特に、該炭化珪素棒が繰り返し使用される場合は、シリコンが含浸されていない多孔質の炭化珪素棒は、繰り返し使用により、シリコンが含浸されている多孔質の炭化珪素棒と同様な状態になる。
該炭化珪素棒(析出棒)の設置本数は、1本であっても、2本以上であってもよい。また、該炭化珪素棒(析出棒)の設置位置は、特に限定されない。例えば、該炭化珪素棒(析出棒)が4本の場合、図6に示すように、該炭化珪素棒3(析出棒)は、該側壁部1(反応炉)の中心を中心とする円弧上に、等間隔に設置されることが好ましい。なお、該炭化珪素棒(析出棒)の設置本数及び設置位置は、原料蒸気の供給条件等の反応条件、反応炉の大きさ等により、多結晶シリコンが効率よく析出するように、適宜選択される。図6は、該反応炉20を水平方向に切ったときの端面図である。図6では、説明の都合上、該側壁と該炭化珪素棒のみを記載した。
該炭化珪素棒(析出棒)の設置方法であるが、図1では、該炭化珪素棒3(析出棒)が該炭化珪素棒の固定部材4に固定され、該炭化珪素棒(析出棒)の固定部材4が、該炉内壁つば部12に引っ掛けられることにより、該炭化珪素棒(析出棒)が、該反応炉内に設置される旨を記載したが、これに限定されるものではない。例えば、図1中、炉内壁つば部を排出管6の付設位置より下方に形成させ、その炉内壁つば部に、該炭化珪素棒(析出棒)が固定されている該炭化珪素棒(析出棒)の固定部材を引っ掛けることにより、該炭化珪素棒の固定部材の上側から該反応炉内に上向きに突き出すように該炭化珪素棒(析出棒)を設置する方法や、該蓋部2bに、該炭化珪素棒(析出棒)を固定する方法等、該反応炉の下から上に向かって、該炭化珪素棒(析出棒)を立てるように設置する方法が挙げられる。
また、該炭化珪素棒の温度を、反応炉内の温度よりも高温に設定するために、該炭化珪素棒の内部には、加熱用のヒーターが装備されていてもよい。
該反応炉(A)では、該四塩化珪素蒸気の供給管及び該亜鉛蒸気の供給管が、該反応炉の上部に付設される。また、該反応炉の排出管は、該反応炉(A)の下部に付設される。そして、該反応炉(A)では、該反応炉内で原料蒸気の下方向の流れが形成され、反応炉内で四塩化珪素と亜鉛の反応を起こさせることができるような位置(上下方向の位置)に、該四塩化珪素蒸気の供給管及び該亜鉛蒸気の供給管と、該反応炉の排出管とが付設される。
該四塩化珪素蒸気の供給管及び該亜鉛蒸気の供給管の形状及び配置であるが、例えば、図7の(7−1)に示すように、該四塩化珪素蒸気の供給管及び該亜鉛蒸気の供給管の水平部が直線上に並ぶようにし、(7−2)に示すように、供給管の先をL字形状にして、供給管の出口を下向きにする形態例が挙げられる。また、図8に示すように、該四塩化珪素蒸気の供給管及び該亜鉛蒸気の供給管の水平部が直線上に並ばないようにする形態例が挙げられる。図8に示す形態例では、該四塩化珪素蒸気及び該亜鉛蒸気は、該反応炉内を旋回するように移動する。なお、図7及び図8は、四塩化珪素蒸気の供給管及び亜鉛蒸気の供給管の設置位置及び形状の形態例を示す模式図であり、図7の(7−1)及び図8は、四塩化珪素蒸気の供給管及び亜鉛蒸気の供給管を上側から見たときの図であり、図7の(7−2)は、垂直方向に切ったときの端面図である。図7及び図8では、側壁部と四塩化珪素蒸気の供給管及び亜鉛蒸気の供給管のみを記載した。
該反応炉(A)の側壁の周囲には、ヒーターが設置される。該ヒーターとしては、電気ヒーターが好ましい。
そして、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気を反応炉の上部から供給し、該反応炉の下部から排出ガスを排出して、該反応炉内で四塩化珪素蒸気と亜鉛蒸気の反応を行いつつ、生成する多結晶シリコンを反応炉内に析出させて、多結晶シリコンの製造を行う。
四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気を用いる亜鉛還元法による多結晶シリコンの製造においては、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気が、反応炉内で激しく撹拌されると、直径が3μm以下の細粒状の多結晶シリコンが生成するが、このような細粒状の多結晶シリコンは、充填密度が低く溶融に時間がかかる。一方、四塩化珪素蒸気と亜鉛蒸気とが、該反応炉内で穏やかに接触すると、好ましくは線速5cm/秒以下の速度で接触すると、樹枝状、針状又は板状の多結晶シリコンが生成するが、このような樹枝状、針状又は板状の多結晶シリコンは、細粒状の多結晶シリコンに比べ、溶融し易く、溶融時間が短くなる。そのため、本発明の多結晶シリコンの製造方法では、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気が、該反応炉内で激しく撹拌されないような条件、すなわち、直径が3μm以下の細粒状の多結晶シリコンが生成し難い条件で、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気を、該反応炉に供給する。つまり、本発明の多結晶シリコンの製造方法では、樹枝状、針状又は板状の多結晶シリコンが生成し易い原料蒸気の供給条件で、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気を、該反応炉に供給する。樹枝状、針状又は板状の多結晶シリコンが生成し易い原料蒸気の供給条件は、該反応炉の大きさ、該炭化珪素棒の設置位置又は設置本数等により、適宜選択される。
四塩化珪素蒸気と亜鉛蒸気の供給量比率(モル比)は、四塩化珪素蒸気:亜鉛蒸気=0.9:2〜1.2:2であり、好ましくは1:2〜1.2:2であり、特に好ましくは1:2〜1.1:2である。また、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気は、窒素ガス等の不活性ガスで希釈されていてもよい。
亜鉛の沸点は、「化学便覧」(日本化学会編)によると907℃であるため、該反応炉内の温度が、亜鉛の沸点である907℃以上になるように、該反応炉を加熱する。該反応炉内の温度は、907〜1,200℃、好ましくは930〜1,100℃である。また、該反応炉内の圧力は、好ましくは0〜700kPaG、特に好ましくは0〜500kPaGである。上記範囲に反応条件を設定することで、該炭化珪素棒に安定的に多結晶シリコンを析出させることが可能となる。
該炭化珪素棒として、ヒータが内装されているものを1本又は2本以上使用し、該炭化珪素棒を加熱してもよい。その際、該反応炉内に設置されている炭化珪素棒の全てを加熱してもよいし、一部を加熱してもよい。また、該炭化珪素棒の加熱開始時期は、多結晶シリコンが該炭化珪素棒への析出を開始する前、つまり、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気の供給前であってもよく、あるいは、該炭化珪素棒にある程度の多結晶シリコンが析出してからでもよい。
そして、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気を下向きに移動させて、該反応炉内で四塩化珪素と亜鉛の反応を行い、多結晶シリコンを生成させながら、反応炉内で多結晶シリコンを析出させ、該反応炉(A)を用いる場合は、該炭化珪素棒(析出棒)を、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気の流れに沿うように存在させることで、該炭化珪素棒(析出棒)に、多結晶シリコンを析出させる。
また、窒素ガス等の不活性ガスの供給管を該反応炉に付設して、不活性ガスを該反応炉内に導入し、該反応炉内を不活性ガスで加圧することができる。
このように、該反応炉内で多結晶シリコンの製造を行っている間、該反応炉の排出管の閉塞防止方法を行う。先ず、該反応炉への四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気の供給を開始して、該反応炉で多結晶シリコンの製造を開始した時の反応炉内の圧力を、該圧力計で測定する。四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気を該反応炉に供給した直後からしばらくは、該反応炉内の圧力は変動するが、しばらくすると一定値になる。このときの圧力を、該反応炉で多結晶シリコンの製造を開始した時の反応炉内の圧力とする。
該反応炉で多結晶シリコンの製造を開始した時の反応炉内の圧力値の信号を、該制御装置に、入力信号として取り込み、記録させる。
そのまま、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気の供給続け、該反応炉内で、四塩化珪素と亜鉛の反応を行い、該反応炉内に多結晶シリコンを析出させつつ、該排出管から該排出ガスを該反応炉の外に排出する。そして、該排出ガスが該反応炉の排出管を通過する際に、該反応炉の排出管内にシリコンが析出するので、該反応炉の排出管が徐々に詰まっていき、その影響で、該反応炉内の圧力が徐々に上昇する。この多結晶シリコンの製造を行っている間、該制御装置で、連続的に又は一定間隔で、該反応炉内の圧力値の信号を取り込み、圧力値の取り込み毎に多結晶シリコンの製造開始時の圧力と比べたときの反応炉内の圧力の圧力上昇値を計算させる等により、製造開始時に比べた圧力上昇値を求める。そして、算出された圧力上昇値が、予め設定した値に達したときは、該モーターに起動信号を出力するように、該制御手段にプログラミングする等により、該析出物除去操作を行う。
該析出物除去操作を行うきっかけとなる該圧力上昇値は、1〜15kPaの範囲内で、反応炉内の温度、反応炉の大きさ、原料の供給量等により、適宜選択される。
本発明に係る多結晶シリコンの製造方法で多結晶シリコンの製造を行い、そのときの該反応炉内の圧力上昇値(ΔP)の経時変化を測定すると、図10に示すように、圧力上昇が変局し始める時点(図10中、B点)と、該反応炉の排出管の閉塞に繋がる圧力の急上昇が起こり始める時点(図10中、A点)が存在する。そして、A点からB点の間の圧力上昇値の範囲で、設定する圧力上昇値を選択する。この設定する圧力上昇値の範囲は、1〜15kPa、好ましくは1〜10kPaである。
該起動信号が伝達された該モーターは、該析出物除去部材を、該排出管内に移動させる。
このようにして、該反応炉内の圧力が、製造開始時の圧力に比べて、予め設定した圧力上昇値分上昇したきに、析出物除去操作を行う。そして、本発明の多結晶シリコン製造用の反応炉の排出管の閉塞防止方法では、該析出物除去操作を行った後も、該反応炉内の圧力を測定しながら、四塩化珪素と亜鉛の反応を続け、再び、該圧力上昇値が、予め設定した値に達する毎に、該析出物除去操作を繰り返し行う。
本発明では、該析出物除去部材が保持される容器内に不活性ガス供給する等により、該析出物除去操作を不活性ガス雰囲気下で行うことができる。
多結晶シリコンの製造方法が終了すると、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気の供給を止め、該反応炉を冷却した後、該反応炉内に析出した多結晶シリコンを、該反応炉の外に取り出す。該炭化珪素棒(析出棒)を設置する場合は、多結晶シリコンの製造方法が終了すると、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気の供給を止め、該反応炉を冷却した後、多結晶シリコンが析出した該炭化珪素棒(析出棒)を、該反応炉の外に取り出す。そして、析出した多結晶シリコンを該炭化珪素棒(析出棒)から掻き落して、多結晶シリコンを得る。
多結晶シリコンを掻き落した後の該炭化珪素棒は、再び、多結晶シリコンの製造にて、使用される。また、再使用する前に、該炭化珪素棒を、純水又は塩酸、硝酸、フッ化水素酸等の酸などで洗浄してもよい。
本発明に係る多結晶シリコンの製造方法により得られる多結晶シリコンは、亜鉛を還元剤に用いて製造されるため、亜鉛を含有する。本発明に係る多結晶シリコンの製造方法により得られる多結晶シリコン中の亜鉛含有量は、0.1〜100質量ppm、好ましくは0.1〜10質量ppm、特に好ましくは0.1〜1質量ppmである。多結晶シリコン中の亜鉛含有量が、上記範囲内であることにより、6−N以上の高純度の多結晶シリコンインゴットを製造することができる。なお、多結晶シリコンの純度の分析は高周波誘導プラズマ発光分析法(ICP−AES)により求められる。その分析方法は、以下に示す通りである。
得られた多結晶シリコン1.5gに、38%フッ化水素酸16mlと55%硝酸30mlを加えて、完全に溶解させた後、蒸発乾固させる。次いで、1%硝酸5mlで定溶し、ICP−AES(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製IRIS Advantage/RP型)により不純物濃度を測定して、多結晶シリコンの純度を算出する。
得られた多結晶シリコン1.5gに、38%フッ化水素酸16mlと55%硝酸30mlを加えて、完全に溶解させた後、蒸発乾固させる。次いで、1%硝酸5mlで定溶し、ICP−AES(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製IRIS Advantage/RP型)により不純物濃度を測定して、多結晶シリコンの純度を算出する。
また、本発明に係る多結晶シリコンの製造方法により得られる多結晶シリコンの主な形状は、樹枝状、針状又は板状であり、直径が3μm以下の細粒状ではない。本発明に係る多結晶シリコンの製造方法では、樹枝状又は針状にシリコンの結晶が成長するので、大きな樹枝状又は針状のものに成長するが、得られる多結晶シリコン中には、大きな樹枝状又は針状のものの他に、板状になるものや、小さな樹枝状又は針状のものもあり、また、該炭化珪素棒から掻き落す際に樹枝状又は針状のものが砕けて、小さな樹枝状又は針状となったものもある。該樹枝状、針状又は板状の多結晶シリコンの大きさは、好ましくは100μm以上、特に好ましくは500μm以上、更に好ましくは1,000μm以上である。そして、該樹枝状、針状又は板状の多結晶シリコンとしては、50質量%以上が100μmメッシュサイズのスクリーンを通過しない樹枝状、針状又は板状の多結晶シリコンであることが好ましく、50質量%以上が500μmメッシュサイズのスクリーンを通過しない樹枝状、針状又は板状の多結晶シリコンであることが特に好ましい。なお、該樹枝状とは、図9の(9−1)に示すような、幹部31と該幹部31から伸びる枝部32とからなる形状であり、また、該針状とは、図9の(9−2)に示すような、略直線に伸びた形状であり、また、該板状とは、鱗片状、フレーク状等の略平面方向に広がった形状である。また、該樹枝状の該枝部32から更に分岐して結晶が伸びている形状もある。また、該樹枝状、針状又は板状の多結晶シリコンの大きさとは、樹枝状の場合は結晶の最も長い部分の長さ(図9の(9−1)では符号33aの長さ)を指し、針状の場合は結晶の長さ(図9の(9−2)では符号33bの長さ)を指し、板状の場合は結晶の最も長い径を指す。
四塩化珪素蒸気と亜鉛蒸気を反応させて多結晶シリコンを生成させ、該樹枝状、針状又は板状の多結晶シリコンを反応炉内に析出させるような多結晶シリコンの製造方法においては、製造を続けると、徐々に該反応炉の排出管に析出物が析出していき、該反応炉内の圧力は徐々に上昇していくが、析出物の析出量がある特定の量になったときに、急激な析出が起こり、急速に析出量が増えて、析出物が該反応炉の排出管を閉塞してしまう。
そこで、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、該樹枝状、針状又は板状の多結晶シリコンの製造においては、圧力上昇が大きくなり始める予兆があり、更に圧力上昇が大きくなると、該反応炉の排出管の閉塞につながる急速な析出が起こることを見出した。よって、該反応炉内の圧力上昇が大きくなり始める予兆が見られた時点で、析出物除去操作を行えば、該反応炉の排出管が閉塞することはない。つまり、本発明の多結晶シリコン製造用の反応炉の排出管の閉塞防止方法は、急速な析出が起こる予兆を圧力で察して、析出物除去操作を行うというものである。
一方、該反応炉の排出管の閉塞を防ぐ方法としては、一定時間が経過する毎に、析出物の除去操作を行うという方法が考えられる。ところが、このような方法は、析出物の析出が、該反応炉の排出管を閉塞させるまで一定の速度で起こるような場合には、有効かもしれないが、本発明に係る多結晶シリコンの製造方法のように、析出量がある時点から急速に増えるような場合には、製造中に何らかの要因で、予め設定していた時間より早く、析出量が急速に増える状況になってしまうと、予め設定した時間より早く急激な析出が起こって、反応炉の排出管が閉塞してしまうために、このような方法では対応できない。それに対し、本発明の多結晶シリコン製造用の反応炉の排出管の閉塞防止方法では、製造中に何らかの要因で、通常より早く析出量が急速に増える状況になったとしても、析出量が急速に増える前に、予兆となる圧力上昇を察して、該析出物除去操作を行うので、反応炉の排出管を閉塞させない。
また、短い時間間隔で析出物の除去操作を繰り返すという方法もあるが、その方法だと、除去操作が必要のない段階で、除去操作を繰り返すことになるので、無駄なエネルギーを費やすことになり、また、反応炉の排出管が破損し易くなるので、寿命を早めることになる。
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
(多結晶シリコンの製造例1)
下記反応炉において、亜鉛蒸気の供給管から1,000℃に加熱して気化させた亜鉛蒸気を反応炉内に導入し、四塩化珪素蒸気の供給管から1,000℃に加熱して気化させた四塩化珪素蒸気を反応炉に供給しつつ、反応炉内を1,000℃にして、四塩化珪素を65g/分の速度で、亜鉛を50g/分の速度で供給し、四塩化珪素と亜鉛の反応を行った。
<反応炉(図1の形態例で、炭化珪素棒の設置本数が3本の形態例)>
反応炉:内径300mm×長さ2,500mmの石英製反応管を使用
炭化珪素棒:外径30mm×長さ1,000mm、本数3本(反応炉の中心を中心とする円弧上に、等間隔に設置)、気孔率5%
四塩化珪素蒸気供給管と亜鉛蒸気供給管の垂直方向の位置関係:同一高さ
四塩化珪素蒸気供給管と亜鉛蒸気供給管の水平方向の位置関係:図8に示す位置関係
反応炉出口の排出管内径:100mm
排出管の位置:排出管6の下側が反応炉の下側の蓋部2bの上面より700mm上側
下記反応炉において、亜鉛蒸気の供給管から1,000℃に加熱して気化させた亜鉛蒸気を反応炉内に導入し、四塩化珪素蒸気の供給管から1,000℃に加熱して気化させた四塩化珪素蒸気を反応炉に供給しつつ、反応炉内を1,000℃にして、四塩化珪素を65g/分の速度で、亜鉛を50g/分の速度で供給し、四塩化珪素と亜鉛の反応を行った。
<反応炉(図1の形態例で、炭化珪素棒の設置本数が3本の形態例)>
反応炉:内径300mm×長さ2,500mmの石英製反応管を使用
炭化珪素棒:外径30mm×長さ1,000mm、本数3本(反応炉の中心を中心とする円弧上に、等間隔に設置)、気孔率5%
四塩化珪素蒸気供給管と亜鉛蒸気供給管の垂直方向の位置関係:同一高さ
四塩化珪素蒸気供給管と亜鉛蒸気供給管の水平方向の位置関係:図8に示す位置関係
反応炉出口の排出管内径:100mm
排出管の位置:排出管6の下側が反応炉の下側の蓋部2bの上面より700mm上側
そして、反応開始後からの反応炉内の圧力を、1秒毎に測定した。その結果、反応開始時の反応炉内の圧力と比べたときの反応炉内の圧力上昇値が1kPaに達した時点で、グラフが変局しはじめ(図10中のB点に相当)、18kPaに達すると、急激に、圧力上昇が起こり(図10中のA点に相当)、排出管の閉塞が起こった。よって、反応炉内の圧力上昇が、1〜15kPaになったときを、急速な析出が起こる予兆と判断して、そのときに析出物除去操作を行えば、排出管の閉塞を防ぐことができることがわかった。
なお、反応炉内に、樹脂状、針状、板状の多結晶シリコンが析出していることを確認した。
なお、反応炉内に、樹脂状、針状、板状の多結晶シリコンが析出していることを確認した。
(実施例1)
上記多結晶シリコンの製造例1で用いた反応炉に、図2及び図3に示す反応炉の排出管の閉塞防止装置を設置し、上記多結晶シリコンの製造例1と同じ条件で、多結晶シリコンの製造を行った。反応炉の排出管の閉塞防止装置の電子計算機には、反応開始時の反応炉内の圧力と比べたときの反応炉内の圧力の上昇値が8kPaになる毎に、モーターに起動信号を出力するようにプログラミングした。
60時間、多結晶シリコンの製造を行ったところ、反応炉の排出管の閉塞は起こらなかった。なお、この間、反応炉の排出管の閉塞防止装置にて、析出物除去操作が1回行われた。
上記多結晶シリコンの製造例1で用いた反応炉に、図2及び図3に示す反応炉の排出管の閉塞防止装置を設置し、上記多結晶シリコンの製造例1と同じ条件で、多結晶シリコンの製造を行った。反応炉の排出管の閉塞防止装置の電子計算機には、反応開始時の反応炉内の圧力と比べたときの反応炉内の圧力の上昇値が8kPaになる毎に、モーターに起動信号を出力するようにプログラミングした。
60時間、多結晶シリコンの製造を行ったところ、反応炉の排出管の閉塞は起こらなかった。なお、この間、反応炉の排出管の閉塞防止装置にて、析出物除去操作が1回行われた。
(比較例1)
上記多結晶シリコンの製造例1で用いた反応炉を用い、且つ、図2及び図3に示す反応炉の排出管の閉塞防止装置を設置せずに、上記多結晶シリコンの製造例1と同じ条件で、多結晶シリコンの製造を行った。
60時間の多結晶シリコンの製造を試みたが、途中で反応炉の排出管の閉塞が起こり、急激な圧力上昇が見られたため、多結晶シリコンの製造を中止した。
上記多結晶シリコンの製造例1で用いた反応炉を用い、且つ、図2及び図3に示す反応炉の排出管の閉塞防止装置を設置せずに、上記多結晶シリコンの製造例1と同じ条件で、多結晶シリコンの製造を行った。
60時間の多結晶シリコンの製造を試みたが、途中で反応炉の排出管の閉塞が起こり、急激な圧力上昇が見られたため、多結晶シリコンの製造を中止した。
本発明によれば、多結晶シリコン製造用の反応炉の排出管の閉塞を防止できるので、安定して、多結晶シリコンを製造することができる。
1 反応炉の側壁
2、2a、2b 蓋部
3 炭化珪素棒
4 炭化珪素棒の固定部材
5 ヒーター
6 排出管
7 四塩化珪素蒸気の供給管
8 亜鉛蒸気の供給管
9 四塩化珪素蒸気
10 亜鉛蒸気
11 排出ガス
12 炉内壁つば部
14 圧力値の信号
15 起動信号
20 反応炉
21 圧力計
22 ロッド
23 モーター
24 回転軸
25 制御手段
26 ロッド保持容器
27 反応炉の排出管の連結管
28 排出管入口
29 排出ガスの送付管
30 ロッドの保持部材
31 幹部
32 枝部
221 ロッドの先端
223 軸部
224 先端部
225 析出物除去部材
2、2a、2b 蓋部
3 炭化珪素棒
4 炭化珪素棒の固定部材
5 ヒーター
6 排出管
7 四塩化珪素蒸気の供給管
8 亜鉛蒸気の供給管
9 四塩化珪素蒸気
10 亜鉛蒸気
11 排出ガス
12 炉内壁つば部
14 圧力値の信号
15 起動信号
20 反応炉
21 圧力計
22 ロッド
23 モーター
24 回転軸
25 制御手段
26 ロッド保持容器
27 反応炉の排出管の連結管
28 排出管入口
29 排出ガスの送付管
30 ロッドの保持部材
31 幹部
32 枝部
221 ロッドの先端
223 軸部
224 先端部
225 析出物除去部材
Claims (5)
- 四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気を反応炉に供給し、該反応炉から排出ガスを排出して、該反応炉内で四塩化珪素蒸気と亜鉛蒸気の反応を行い、該反応炉内で生成する多結晶シリコンを析出させる多結晶シリコンの製造方法において、該反応炉内の圧力が、多結晶シリコンの製造開始時の圧力に比べ、1〜15kPa上昇したときに、析出物除去部材で、反応炉の排出管内に析出した析出物を、該反応炉の排出管外に掻き出す析出物除去操作を行うことを特徴とする多結晶シリコン製造用の反応炉の排出管の閉塞防止方法。
- 前記反応炉の排出管内に、前記析出物除去部材を回転させながら挿入することを特徴とする請求項1記載の多結晶シリコン製造用の反応炉の排出管の閉塞防止方法。
- 前記析出物除去操作が、不活性ガス雰囲気下で行われることを特徴とする請求項1又は2いずれか1項記載の多結晶シリコン製造用の反応炉の排出管の閉塞防止方法。
- 四塩化珪素蒸気と亜鉛蒸気を反応させて多結晶シリコンを製造するための多結晶シリコン製造用の反応炉に設置される該反応炉の排出管の閉塞防止装置であり、該反応炉の排出管内の析出物を掻き出すための析出物除去部材と、該反応炉の排出管内で該析出物除去部材を移動させるためのモーターと、該反応炉内の圧力を測定するための圧力計と、該圧力計からの圧力値の信号が入力され、該反応炉内の圧力が多結晶シリコンの製造開始時の圧力に比べ、1〜15kPa上昇したときに、該モーターに起動信号を出力する制御手段と、を有することを特徴とする多結晶シリコン製造用の反応炉の排出管の閉塞防止装置。
- 前記析出物除去部材が、前記反応炉の排出管内で回転可動であることを特徴とする請求項4記載の多結晶シリコン製造用の反応炉の排出管の閉塞防止装置。
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