現在の積層電子部品は大気雰囲気に近い酸素分圧下で熱処理を行う要望が顕著である。特に積層セラミックコンデンサにおいては、大容量・小型化の傾向が強い。積層セラミックコンデンサは誘電体層と内部電極層が交互に複数積層された構造であり、大容量・小型化に伴いそれぞれの層は薄層化されていく。
積層セラミックコンデンサの製造方法の一つに、焼成後に内部電極層となる内部電極シートと、焼成後に誘電体層となるグリーンシートと、を交互に積層した積層体を焼成する方法がある。
内部電極シートには、主にニッケル金属粒子が含まれ、グリーンシートには、誘電体粉末が含まれている。
内部電極シートは、例えば、ニッケル金属粒子を含む内部電極ペーストをグリーンシート上に塗布することにより形成される。
しかし、薄層化に伴い誘電体層を形成するグリーンシートは非常に薄くなる。誘電体層の厚みは薄くなればなるほど、誘電体層の欠陥による内部電極層のショートが多発し、また信頼性等の諸電気特性が悪化する傾向となってしまう。
一方で、信頼性等の諸電気特性を改善する手法として、誘電体及び内部電極を焼結させた後の、誘電体層の再酸化熱処理が挙げられる。誘電体を焼結させる際は、内部電極として主に用いられているニッケル金属粒子が酸化しない低酸素分圧下で、焼成を行うのが一般的である。しかしながら、低酸素分圧下で焼成を行った場合、誘電体層を構成している酸化物中の酸素欠陥量が多くなる。このような酸素欠陥を補うため、焼成後に焼成時よりも高い酸素分圧下にて再酸化熱処理を行う。
しかし、再酸化熱処理を行ったとしても、焼成時に発生した誘電体層の酸素欠陥を十分に補うことが難しく、またより高い酸素分圧下における再酸化熱処理では、内部電極層を形成しているニッケル金属が酸化してしまい、内部電極層が十分な導電性を得ることができない。
このような内部電極層の酸化を防止する一般的な手法としては、パラジウム、白金といった貴金属を内部電極として用いることが考えられる。しかし、これらの貴金属は高価であることから、材料に掛かるコストが顕著に上昇するという問題がある。
再酸化熱処理による内部電極層の酸化防止に対応した試みとして特許文献1に、ニッケル金属粒子の結晶性を高め、より単結晶に近い粒子を用いることにより、結晶子界面で発生する酸化を抑制する手法が開示されている。(文献消し)
しかしながら、特許文献1に記載されている手法においては、低結晶性ニッケル金属粒子に比べ耐酸化効果は認められるが、通常の焼成及び再酸化熱処理時の雰囲気条件をより高い酸素分圧へ変更することは難しい。
また、内部電極層を構成するニッケル金属粒子の熱処理時の酸化を防ぐ他の方法としては、ニッケル金属粒子に酸化物等を被覆させ、酸素分子がニッケル金属粒子と接触するのを防ぐ手法がとられている。酸化物等を被覆させる一般的な手法は、ニッケル金属粒子を溶液中に分散させ、被覆させたい化合物若しくはその前駆体等を付着させる。それらの熱処理等を行い、ニッケル金属粒子に酸化物等の被覆膜を付与する。
このような観点から、特許文献2には、ニッケル金属粒子に酸化マンガン等を被覆することにより、熱処理時にニッケル金属粒子の酸化を防止する方法が開示されている。
しかしながら、特許文献2に開示の方法では、溶液中のニッケル金属粒子の分散状態で被覆性にバラつきが発生し、加えて被覆時にニッケル金属粒子が凝集してしまうという課題がある。また、このような方法においては、被覆されたニッケル金属粒子をペースト化する際、分散工程にて被覆された酸化物等が剥がれ落ちることが懸念される。これらのことより、酸化防止効果としては十分とはいえない。
また、特許文献3および4には、電極層を形成する導体金属粒子に微量の異種元素を加えた合金粒子を用いることにより、導体金属の酸化を抑制する手法が開示されている。
しかし、特許文献3および4に記載されている手法では、導体金属粒子の酸化防止に効果は認められるものの、大気雰囲気に近い酸素分圧下においては、十分な酸化防止効果を得ることは難しい。
特許文献5には、ニッケル金属粒子にアルミニウム金属粒子を配合した外部電極が開示されている。
しかしながら、この手法を内部電極に用いた場合、還元雰囲気下においてもアルミニウム粉末は酸化し酸化アルミニウムとなるため、大気雰囲気に近い酸素分圧下においても、十分な酸化防止効果が得られることは難しい。
さらに、内部電極の耐酸化性を向上させる技術課題に対する解決手法として、特許文献6にはNiAl合金粉末を用いた電極を焼成することにより、内部電極としてNiAl合金を有する積層セラミック素子の開示がある。しかし、ニッケルとアルミニウムからなる合金には組成比にて特定の結晶構造があるが、特許文献6には焼結抑制に効果的な結晶構造が明確に示されていない。これにより特定の結晶構造を有していないNiAl合金では、通常の積層セラミックコンデンサの焼成に用いられる還元雰囲気下においても、NiAl合金中のアルミニウムが酸化し酸化アルミニウムなり易いため、大気雰囲気に近い酸素分圧下においても一定の酸化防止効果は認められるものの、生成した酸化アルミニウムによって内部電極層が十分な導電性を確保できない可能性がある。
一方で、NiAl金属間化合物(結晶構造:B2構造)は、それ自体に比較的良好な耐酸化性を有しているが、大気雰囲気に近い酸素分圧下においては酸化が進み、酸化物の影響により十分な導電性を確保できない。
以上より、いずれの手法を試みたとしても、大気雰囲気に近い酸素分圧下で熱処理を行う積層セラミックコンデンサや積層PTC等の電子部品においては、内部電極層の十分な酸化抑制効果は期待できず、焼成後の内部電極層が導体としての機能を消失してしまう。
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、熱処理時に内部電極層を形成する導体の酸化が抑制され、導電性が良好な電極焼結体を提供することである。また、本発明のその他の目的は、熱処理時に内部電極層を形成する導体の酸化が抑制された内部電極層を含む積層電子部品を提供することである。さらに、本発明のその他の目的は、熱処理時に内部電極層を形成する導体の酸化を抑制することができる内部電極ペースト、該内部電極ペーストを用いた電極焼結体の製造方法および積層電子部品の製造方法を提供することである。
本発明者等は、電極焼結体または内部電極層の一部を、NiAl金属間化合物とし、さらに該電極焼結体または内部電極層に特定の元素を含有させた構成とすることで、熱処理時に内部電極層を形成する導体の酸化が抑制された電極焼結体を提供できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、上記課題を解決する本発明は、
電極焼結体が、ニッケルおよびアルミニウムからなる金属間化合物を含む。
本発明の電極焼結体によれば、熱処理時に内部電極層を形成する導体の酸化が抑制され、導電性が良好な電極焼結体を得ることができる。
本発明の電極焼結体は、好ましくは、前記金属間化合物が、NiAl(結晶構造:B2構造)を含む。
本発明の電極焼結体は、好ましくは、前記金属間化合物が、Ni3Al(結晶構造:L12構造)を含む。
本発明の電極焼結体は、好ましくは、前記金属間化合物が、NiAl(結晶構造:B2構造)およびNi3Al(結晶構造:L12構造)を含む。
本発明の電極焼結体は、好ましくは、Zr、Hf、Sc、Y、La及びCeのうち少なくともいずれか一つを含む。
本発明の電極焼結体によれば、前記電極焼結体にニッケルおよびアルミニウムからなる金属間化合物を含み、さらにZr、Hf、Sc、Y、La及びCeのうち少なくともいずれか一つを含むことにより、熱処理時に内部電極層を形成する導体の酸化が抑制された電極焼結体を得ることにより、導電性が良好な電極焼結体を得ることができる。
本発明の電極焼結体は、好ましくは、前記金属間化合物がNiAlを含み、前記電極焼結体に含まれるニッケル及びアルミニウムの含有量を100質量部としたときに、Zr、Hf、Sc、Y、La及びCeのうち少なくともいずれか一つの含有量が、0.01質量部〜1質量部である。
さらに本発明の電極焼結体は、前記電極焼結体に含まれるニッケル及びアルミニウムの含有量を100質量部としたときに、Zr、Hf、Sc、Y、La及びCeの総含有量、すなわちZr、Hf、Sc、Y、La及びCeの二種以上が含有されている場合の総含有量が、0.01質量部〜1質量部であってもよい。
本発明は、
誘電体層と、内部電極層と、が交互に複数重ねられた積層体を有する積層電子部品であって、
前記内部電極層が、ニッケルおよびアルミニウムからなる金属間化合物を含む積層電子部品である。
本発明によれば、熱処理時に内部電極層を形成する導体の酸化が抑えられた内部電極層を得ることができるため、酸化体積膨張による内部電極層と誘電体層の間のデラミネーションの発生率が低く、クラックの発生率が低く、構造欠陥が抑えられた積層電子部品を得ることができる。
本発明の積層電子部品は、好ましくは、前記内部電極層が、NiAl(結晶構造:B2構造)を含む。
本発明の積層電子部品は、好ましくは、前記内部電極層が、Ni3Al(結晶構造:L12構造)を含む。
本発明の積層電子部品は、好ましくは、前記内部電極層が、NiAl(結晶構造:B2構造)およびNi3Al(結晶構造:L12構造)を含む。
本発明の積層電子部品は、好ましくは、前記内部電極層が、Zr、Hf、Sc、Y、La及びCeのうち少なくともいずれか一つを含む。
本発明の積層電子部品は、前記内部電極層にZr、Hf、Sc、Y、La及びCeのうち少なくともいずれか一つを含むことにより、熱処理時に内部電極層を形成する導体の酸化が抑制された電極焼結体を得ることにより、導電性が良好な電極焼結体を得ることができる。
本発明の積層電子部品は、前記内部電極層に含まれるニッケル及びアルミニウムの含有量を100質量部としたときに、Zr、Hf、Sc、Y、La及びCeのうち少なくともいずれか一つの含有量が、0.01質量部〜1質量部である。
前記内部電極層に含まれるニッケル及びアルミニウムの含有量を100質量部としたときに、Zr、Hf、Sc、Y、La及びCeの総含有量が、0.01質量部〜1質量部であってもよい。
本発明は、
導体粒子原料と、バインダと、溶剤と、を含み、
前記導体粒子原料が、ニッケル及びアルミニウムからなる金属間化合物を含み、さらに前記導体粒子原料は、Zr、Hf、Sc、Y、La及びCeのうち少なくともいずれか一つを含む、内部電極ペーストである。
本発明の内部電極ペーストを用いることで、導体粒子原料の耐酸化性を向上させ、内部電極層の熱処理時に内部電極層を形成する導体の酸化を抑えることができ、なおかつ緻密な電極焼結体を得ることにより内部電極層の導電性を良好にすることができる。
本発明の内部電極ペーストは、好ましくは、導体粒子原料として前記金属間化合物がNiAl(結晶構造:B2構造)を含む。
本発明の内部電極ペーストは、好ましくは、導体粒子原料として前記金属間化合物がNi3Al(結晶構造:L12構造)を含む。
本発明の内部電極ペーストは、好ましくは、導体粒子原料として前記金属間化合物がNiAl(結晶構造:B2構造)及びNi3Al(結晶構造:L12構造)を含む。
本発明の内部電極ペーストは、好ましくは、導体粒子原料として、Zr、Hf、Sc、Y、La及びCeのうち少なくともいずれか一つを含む。
本発明の内部電極ペーストは、前記導体粒子原料がニッケル及びアルミニウムからなる金属間化合物を含み、さらに前記導体粒子原料に含まれるニッケル及びアルミニウムの含有量を100質量部としたときに、Zr、Hf、Sc、Y、La及びCeのうち少なくともいずれか一つの含有量が、0.01質量部〜1質量部である。
前記導体粒子原料に含まれるニッケル及びアルミニウムの含有量を100質量部としたときに、Zr、Hf、Sc、Y、La及びCeの総含有量が、0.01質量部〜1質量部であってもよい。
また、本発明は、
電極焼結体の製造方法であって、
前記内部電極ペーストを被印刷体の上に溶工し、電極成形体を得る工程と、
前記電極成形体を焼成する工程と、
を有する。
また、本発明は、
積層電子部品の製造方法であって、
誘電体粉末とバインダとを含むグリーンシートと、前記内部電極ペーストから得られる内部電極シートと、を交互に複数重ねて、積層体を得る工程と、
前記積層体を焼成する工程と、
を有する。
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
積層セラミックコンデンサ1
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサ1は、誘電体層2と内部電極層3とが交互に積層された構成のコンデンサ素子本体10を有する。このコンデンサ素子本体10の両端部には、素子本体10の内部で交互に配置された内部電極層3と各々導通する一対の外部電極4が形成してある。コンデンサ素子本体10の形状に特に制限はないが、通常、直方体状とされる。また、その寸法にも特に制限はなく、用途に応じて適当な寸法とすればよい。
内部電極層3は、各端面がコンデンサ素子本体10の対向する2端部の表面に交互に露出するように積層してある。また、一対の外部電極4は、コンデンサ素子本体10の両端部に形成され、交互に配置された内部電極層3の露出端面に接続されて、コンデンサ回路を構成する。
誘電体層2
誘電体層2は、後述するグリーンシートが焼成されて形成され、その材質は特に限定されず、例えば、チタン酸バリウム、チタン酸バリウムカルシウム、チタン酸ジルコン酸バリウムカルシウム、チタン酸バリウムストロンチウム、チタン酸ジルコン酸バリウムなどを主成分とした誘電体材料で構成される。
図1に示す誘電体層2の厚みは、特に限定されないが、1.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.4〜0.9μmである。誘電体層2をこの厚みとすることで、小型化しても容量が大きい電子部品を得ることができる。
内部電極層3
本実施形態の内部電極層は、ニッケルおよびアルミニウムからなる金属間化合物(以下では、「NiAl系金属間化合物」とする。)を含む。NiAl系金属間化合物としては、NiAl、Ni3Alから選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、より好ましくは、NiAlである。
さらに、本実施形態の内部電極層は、Zr、Hf、Sc、Y、La及びCeのうち少なくともいずれか一つを含む。
通常、焼成後に内部電極層となる内部電極シートと、焼成後に誘電体層となるグリーンシートと、は、交互に積層した後、還元雰囲気下にて同時焼成される。この際の焼成温度は誘電体層を構成する誘電体粉末の焼結温度の1200℃〜1350℃程度に設定される。その後再酸化熱処理を、焼成時より高い酸素分圧下で行い、その再酸化熱処理温度は950℃〜1100℃程度に設定される。しかし、内部電極シートを構成する導体粒子原料は一定以上の酸素分圧下で焼成若しくは再酸化熱処理を行うと、上記導体粒子原料が酸化してしまう。特に0.1Pa以上の酸素分圧下での焼成若しくは熱処理においては、一般的に内部電極を構成する導体粒子として用いられているニッケル金属粒子は酸化してしまい、その結果十分な導電性が得られなくなっていた。
しかし、本実施形態では、内部電極層を構成する導体粒子原料が、NiAl系金属間化合物と、Zr、Hf、Sc、Y、La及びCeのうち少なくともいずれか一つを含むことにより、導体粒子原料及び内部電極層を形成する導体の耐酸化性が向上し、熱処理時に内部電極層を形成する導体の酸化が抑えられ、その結果、内部電極層の十分な導電性を確保することが可能となる。これにより、コンデンサ容量を向上させることができるとともに、酸化体積膨張による内部電極層と誘電体層の間のデラミネーションや積層体中のクラックといった構造欠陥を抑えることができる。
本実施形態では、前記導体原料粒子をもとに形成される内部電極層は、NiAl系金属間化合物を含むことが好ましい。
前記内部電極層は、好ましくは、前記NiAl系金属間化合物と、さらにZr、Hf、Sc、Y、La及びCeのうち少なくともいずれか一つを含む。
本実施形態では、前記内部電極層に含まれるニッケル及びアルミニウムの含有量を100質量部としたときに、Zr、Hf、Sc、Y、La及びCeのうち少なくともいずれか一つの含有量が0.01質量部〜1質量部であることが好ましい。ニッケル及びアルミニウムに対するZr、Hf、Sc、Y、La及びCeの比率をこの範囲にすることで、内部電極層の酸化を抑えることができ、内部電極層に十分な導電性を確保することができる。このような観点から、前記内部電極層に含まれるニッケル及びアルミニウムの含有量を100質量部としたときに、Zr、Hf、Sc、Y、La及びCe含有量が、より好ましくは、0.05質量部〜0.7質量部、さらに好ましくは0.1質量部〜0.5質量部である。
本実施形態では、前記内部電極層に含まれるニッケル及びアルミニウムの含有量を100質量部としたときに、Zr、Hf、Sc、Y、La及びCeの総含有量が、0.01質量部〜1質量部であることが好ましい。ニッケル及びアルミニウムに対するZr、Hf、Sc、Y、La及びCeの総含有量の比率をこの範囲にすることで、内部電極層の酸化を抑えることができ、内部電極層に十分な導電性を確保することができる。このような観点から、前記内部電極層に含まれるニッケル及びアルミニウムの含有量を100質量部としたときに、Zr、Hf、Sc、Y、La及びCeの総含有量が、より好ましくは、0.1質量部〜0.7質量部である。
さらに、本実施形態では、前記内部電極層に微量のAl2O3(酸化アルミニウム)が含まれていてもよい。後述する導体粒子原料として、ニッケル及びアルミニウムを含ませることで、焼結後に、結果として、NiAl金属間化合物、Ni3Al金属間化合物や、微量のAl2O3が含まれることがある。導体粒子原料として用いているニッケル及びアルミニウムが焼成中に変化し、他のNiAl系金属間化合物の形態を安定的にとるためである。なお、内部電極層中のAl2O3の含有量としては、内部電極層100mol%に対して、10mol%以下であることが好ましい。
内部電極層3の厚みは特に限定されないが、2.0μm以下であることが好ましい。
外部電極4
図1に示す外部電極4に含有される導電材は特に限定されないが、本発明では安価なニッケル、銅や、これらの合金を用いることができる。外部電極4の厚さは用途等に応じて適宜決定すればよい。
積層セラミックコンデンサの製造方法
次に、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造方法を説明する。
まず、焼成後に図1に示す誘電体層2を構成することになるグリーンシートを製造するために、誘電体ペーストを準備する。
本実施形態では、誘電体ペーストは、誘電体粉末と、バインダと、溶剤と、必要に応じて、各種分散剤、可塑剤、誘電体、副成分化合物、ガラスフリット、絶縁体などから選択される添加物と、をボールミルなどで混練し、スラリー化することにより得られる。
次に、焼成後に図1に示す内部電極層3を構成することになる内部電極シートを形成するために、内部電極ペーストを準備する。
本実施形態の内部電極ペーストは、導体粒子原料と、バインダと、溶剤と、をボールミルなどで混練し、スラリー化することに得られる。なお、内部電極ペーストには、必要に応じて粘着付与剤や誘電体粉末などを添加してもよい。
本実施形態の内部電極ペーストに含まれる前記導体粒子原料は、ニッケル及びアルミニウムからなり、NiAl系金属間化合物を含む。該NiAl系金属間化合物は、特にNiAlであることが好ましい。本実施形態では、導体粒子原料がNiAl系金属間化合物を含んで構成されることにより、導体粒子の耐酸化性が向上し、熱処理時の内部電極の酸化が抑えられ、内部電極層の導電性の低下を防止することができる。
また、前記導体粒子原料は、Zr、Hf、Sc、Y、La及びCeのうち少なくともいずれか一つを含むことが好ましい。
本発明の内部電極ペーストは、内部電極ペースト中の導体粒子中にZr、Hf、Sc、Y、La及びCeのうち少なくともいずれか一つを含むことにより、熱処理時に内部電極層を形成する導体の酸化が抑制された電極焼結体を得ることにより、導電性が良好な電極焼結体を得ることができる。
前記導体粒子原料に含まれるニッケル及びアルミニウムの含有量を100質量部としたときに、Zr、Hf、Sc、Y、La及びCeのうち少なくともいずれか一つの含有量が、0.01質量部〜1質量部である。Zr、Hf、Sc、Y、La及びCeの比率をこの範囲にすることで、導体粒子原料の耐酸化性が向上し、熱処理時に内部電極の酸化を抑え、内部電極層に十分な導電性を確保することができる。
前記導体粒子原料に含まれるニッケル及びアルミニウムの含有量を100質量部としたときに、Zr、Hf、Sc、Y、La及びCeの総含有量が、0.01質量部〜1質量部である。Zr、Hf、Sc、Y、La及びCeの総含有量の比率をこの範囲にすることで、導体粒子原料の耐酸化性が向上し、熱処理時に内部電極の酸化を抑え、内部電極層に十分な導電性を確保することができる。
次いで、誘電体ペーストからなるグリーンシートと、内部電極ペーストからなる内部電極シートと、を交互に積層してグリーンチップを得る。
得られたグリーンチップは、脱バインダされ、焼成され、必要に応じて熱処理されて、焼結体で構成されるコンデンサ素子本体となる。
なお、本実施形態における脱バインダの昇温速度は、5〜300℃/時間であることが好ましい。脱バインダの昇温速度をこの範囲にすることで、急激な脱ガスによって素子に発生するクラックを防止することができる。このような観点から、脱バインダの昇温速度は10〜50℃/時間であることがより好ましい。
また、脱バインダの保持温度は、好ましくは200〜400℃であることが好ましい。脱バインダの保持温度をこの範囲にすることで、脱バインダ処理時に内部電極粒子の焼結を未然にすることができる。このような観点から、脱バインダの保持温度は250〜350℃であることがより好ましい。
さらに、脱バインダの保持時間は、0.5〜20時間であることが好ましく、脱バインダの保持時間をこの範囲にすることで、バインダを十分に除去することができる。このような観点から、脱バインダの保持時間は1〜10時間であることがより好ましい。
脱バインダの雰囲気ガスとしては、大気雰囲気若しくはN2とH2の混合ガスのいずれも使用できる。
本実施形態における焼成の昇温速度は5〜500℃/時間であることが好ましい。焼成の昇温速度をこの範囲にすることで、誘電体層と電極層の焼成収縮差を低減し、クラックの発生を防止することができる。このような観点から、焼成の昇温速度は200〜300℃/時間であることがより好ましい。
焼成の保持温度は1200〜1350℃であることが好ましい。焼成の保持温度をこの範囲にすることで、誘電体を十分に焼成することができる。このような観点から、焼成の保持温度は、1200〜1300℃であることがより好ましい。本実施形態によれば、焼成の保持温度をこのように高温に設定しても、導体粒子原料の耐酸化性が高いため、内部電極層の酸化が抑えられる。
焼成の保持時間は0.5〜8時間であることが好ましい。焼成の保持時間をこの範囲にすることで、誘電体を十分に焼成することができる。このような観点から、焼成の保持時間は、1〜3時間であることがより好ましい。
焼成の雰囲気ガスとしては、大気雰囲気若しくはN2とH2の混合ガスのいずれも使用できるが、導体粒子の酸化防止よりN2とH2の混合ガスが好ましい。
本実施形態における再酸化熱処理の昇温速度は5〜500℃/時間であることが好ましい。再酸化熱処理の昇温速度をこの範囲にすることで、誘電体層と電極層の熱膨張収縮差を低減し、クラックの発生を防止することができる。このような観点から、再酸化熱処理の昇温速度は200〜300℃/時間であることがより好ましい。
再酸化熱処理の保持温度は900〜1100℃であることが好ましい。再酸化熱処理の保持温度をこの範囲にすることで、誘電体層中の酸素欠陥を十分に補うことができる。このような観点から、再酸化熱処理の保持温度は、950〜1050℃であることがより好ましい。本実施形態によれば、再酸化熱処理の保持温度をこのように高温に設定しても、内部電極を構成している導体の耐酸化性が高いため、内部電極層の酸化が抑えられる。
再酸化熱処理の保持時間は0.5〜8時間であることが好ましい。再酸化熱処理の保持時間をこの範囲にすることで、誘電体層中の酸素欠陥を十分に補うことができる。このような観点から、再酸化熱処理の保持時間は、1〜3時間であることがより好ましい。
再酸化熱処理の雰囲気ガスとしては、大気雰囲気若しくはN2とH2の混合ガス等のいずれも使用できる。
そして、得られたコンデンサ素子本体に、外部電極を形成して、積層セラミックコンデンサが製造される。
このようにして製造された本実施形態の積層セラミックコンデンサは、ハンダ付等によりプリント基板上などに実装され、各種電子機器等に使用される。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
たとえば、上述した実施形態では、本発明に係る内部電極層(電極焼結体)を適用した電子部品または内部電極ペーストを適用して得られる電子部品として積層セラミックコンデンサを例示したが、本発明に係る内部電極層(電極焼結体)または内部電極ペーストを適用する電子部品としては、積層セラミックコンデンサに限定されず、上記構成の内部電極層(電極焼結体)を有する電子部品または、内部電極ペーストを適用して得られる電子部品であれば何でも良い。
本発明によれば、内部電極ペーストに含まれている導体粒子原料が、NiAl系金属間化合物を含み、さらにZr、Hf、Sc、Y、La及びCeのうち少なくともいずれか一つを含むため、導体粒子原料の耐酸化性を向上させることが出来る。このため、内部電極ペーストから形成された内部電極シートを焼成し再酸化熱処理を施す際に、再酸化熱処理温度領域(1000℃以上)においても内部電極層を構成する導体の酸化を十分に抑制することができる。これにより、内部電極層の酸化を抑え、十分な導電性を確保した内部電極層を形成することができる。その結果、コンデンサ容量を向上させ、酸化体積膨張による内部電極層と誘電体層の間のデラミネーションや積層体中のクラックといった構造欠陥を抑えることができる。
(第1の実施形態:電極焼結体)
第1の実施形態では、実施例1〜18および比較例1〜4として、以下の方法で電極焼結体を製造し、比抵抗を測定することにより導電性を評価した。
内部電極ペーストの作製
導体粒子原料として、表1〜表3の分量でZr、Hf、Sc、Y、La及びCeを含有した平均粒径約0.4μmのニッケル及びアルミニウムからなる粒子を準備した。次いで前記導体粒子原料100質量部に対し、分散剤としてアニオン系分散剤を0.2質量部、溶剤としてジヒドロターピネオールを10質量部添加しペンティングナイフで十分に攪拌したものを導体スラリーとする。
ジヒドロターピネオールにディゾルバーで攪拌させながらエチルセルロース(平均分子量:約17万)が10質量部となるようにゆっくりと溶解させ、エチルセルロース樹脂ラッカーとした。エチルセルロースが導体粒子原料に対し2.0質量部となるようにエチルセルロース樹脂ラッカーを導体スラリーに添加しペンティングナイフで十分に攪拌し電極スラリーとした。
上述で得られた電極スラリーを3本ロールミルを用い、低シェアから中シェア、高シェア、高大シェアと各シェアで計6回混練し、粒ゲージを用い十分に分散されていることを確認した。
3本ロールで高大シェアまで混練された電極スラリーに導体粒子100質量部に対してアニオン系分散剤を0.5質量部、エチルセルロースを4質量部分添加し、3本ロールの低シェアで混合し内部電極ペーストとした。
上述で得られた内部電極ペーストをアルミホイル上に適量とり、220℃で30分乾燥させ、固形分質量を測定した。次いで、この固形分質量の測定値から、内部電極ペースト中の導体粒子の質量を求め、最終的な内部電極ペーストに対し、導体粒子質量が45質量部となるようにジヒドロターピネオールで希釈し、ペンティングナイフで十分に攪拌し、続けて自転・公転ミキサーで攪拌し、最終的な内部電極ペーストとした。
内部電極シートの作製
上述で得られた内部電極ペーストをアプリケーターを用い、剥離PETフィルム上に成膜する。成膜された内部電極ペーストを100℃/時間で乾燥し、乾燥内部電極シートを得る。尚乾燥後の内部電極シートの厚さが約30〜100μmとなるように調整する。
電極成形体の作製
作製した乾燥内部電極シートを所定の大きさに金型で打ち抜き、PETフィルムを剥離して所定枚数重ね合わせた。その後、熱プレス機を用いて60℃、2.0〜9.8MPaで圧着させた。得られた電極バルク体はダイシングソーを用い切断し、5mm×5mm×5mmの電極成形体を得た。
熱処理工程
得られた電極成形体を脱バインダ処理し、焼成、再酸化熱処理を行って電極焼結体を作製した。脱バインダ処理、焼成および再酸化熱処理の条件は下記の通りであった。
《脱バインダ》
・昇温速度:5〜300℃/時間
・保持温度:200〜400℃
・保持時間:0.5〜20時間
・雰囲気ガス:N2とH2の混合ガス
《焼成》
・昇温速度:5〜500℃/時間
・保持温度:表1〜表3参照
・保持時間:0.5〜8時間
・雰囲気ガス:N2とH2の混合ガス
《再酸化熱処理》
・昇温速度:5〜500℃/時間
・保持温度:表1〜表3参照
・保持時間:0.5〜8時間
・雰囲気ガス:大気雰囲気ガス
評価
このようにして得られた電極焼結体の導電性(比抵抗)を以下の手法により行った。結果を表1〜表3に示す。また、得られた試料の組成は以下の方法により調べた。
《酸化度(耐酸化性)》
導体粒子原料粉末の酸化度をTG−DTAを用い、各サンプルにおいて全量酸化の1%重量が増加する温度を、酸化開始温度として測定した。この結果を表1〜表3に示す。
尚、本実施例では酸化開始温度の好ましい範囲を790℃以上として評価した。
《導電性(比抵抗)》
再酸化熱処理後に得られた5mm×5mm×0.5mmの電極焼結体を四探針法を用い、各サンプルの抵抗値を測定した。得られた各値を以下の式に代入し、比抵抗(μΩcm)を測定した。この結果を表1〜表3に示す。
比抵抗ρ(μΩcm)=抵抗値(μΩ)×抵抗補正係数4.5324×試料厚み(cm)
尚、本実施例では比抵抗値の好ましい範囲を60μΩcm未満として評価した。
《電極焼結体の組成の測定》
電極焼結体の組成は、XRDのリートベルト解析を行うことにより、測定した。尚、再酸化熱処理後、電極焼結体に含まれるNiAl系金属間化合物は、NiAl単一相若しくはNiAlとNi3Alの二相で構成されていることが確認されている。また、電極焼結体に含まれるZr、Hf、Sc、Y、La及びCeの含有量はICPによる元素分析を行うことにより、測定した。
表1〜表3より、実施例1〜18では、比抵抗が60μΩcm未満になることが確認できた。一方、比較例1〜4においては、いずれの場合においても、比抵抗は60μΩcm以上の高い値を示した。
表1〜表3より、電極焼結体に含まれるニッケル及びアルミニウムの含有量を100質量部としたとき、前記電極焼結体に含まれるZr、Hf、Sc、Y、La及びCeのうち少なくともいずれか一つの含有量が、0.01質量部〜1質量部の場合は(実施例1〜10)、前記電極焼結体に含まれるZr、Hf、Sc、Y、La及びCeのうち少なくともいずれか一つの含有量が前記0.01質量部〜1質量部の範囲外にある場合(比較例1〜2)に比べ耐酸化性が良好な(酸化開始温度が790℃以上と高い)ことが確認できた。比較例3は、耐酸化性という点では良好であった。
表1〜表3より、電極焼結体に含まれるニッケル及びアルミニウムの含有量を100質量部としたとき、前記電極焼結体に含まれるZr、Hf、Sc、Y、La及びCeの総含有量が、0.01質量部〜1質量部である場合は(実施例11〜14)、耐酸化性が良好な(酸化開始温度が高い)ことが確認できた。
さらに、表1〜表3より、電極焼結体に含まれるニッケル及びアルミニウムの含有量を100質量部としたとき、前記電極焼結体に含まれるZr、Hf、Sc、Y、La及びCeのうち少なくともいずれか一つの含有量が、0.01質量部〜1質量部である場合は(実施例1〜10)、前記電極焼結体に含まれるZr、Hf、Sc、Y、La及びCeのうち少なくともいずれか一つの含有量が上記範囲外にある場合(比較例1〜3)に比べ導電性が良好な(比抵抗が60μΩcm未満と低い)ことが確認できた。
表1〜表3より、電極焼結体に含まれるニッケル及びアルミニウムの含有量を100質量部としたとき、前記電極焼結体に含まれるZr、Hf、Sc、Y、La及びCeの総含有量が0.01質量部〜1質量部である場合は(実施例11〜14)、前記電極焼結体に含まれるZr、Hf、Sc、Y、La及びCeの総含有量が上記範囲外にある場合(比較例4)と比べ、導電性が良好な(比抵抗が低い)ことが確認できた。
図2より、NiAl系金属間化合物のうちNiAl金属間化合物は、融点が1638℃と、アルミニウム金属の融点(660℃)はもちろんのこと、ニッケル金属の融点(1455℃)に比べて高い。このため、導体粒子原料がニッケル及びアルミニウムのみからなり、かつNiAl金属間化合物を含むことにより、導体粒子原料の焼結が進み難く、良好な導電性が得られ難い(比較例1)。導体粒子原料がニッケル及びアルミニウムからなり、かつNiAl系金属間化合物を含み、さらにZr、Hf、Sc、Y、La及びCe等を含むことにより、耐酸化性が向上するが、NiAl系金属間化合物同士の焼結が阻害される傾向にある。しかしながら、Zr、Hf、Sc、Y、La及びCe等の含有量を一定の範囲とすることで、焼結を阻害することなく耐酸化性が向上し、各焼成温度(1250〜1350℃)において、比抵抗が低くなったと考えられる(実施例1〜16)。
一方で、ニッケル及びアルミニウムからなる導体粒子原料に、Zr、Hf、Sc、Y、La及びCeのうち少なくともいずれか一つが含まれ、さらにZr、Hf、Sc、Y、La及びCeの含有量が、ニッケル及びアルミニウムの含有量を100質量部としたときに、0.01質量部よりも少ない場合は(比較例1〜2)、電極焼結体が十分な耐酸化性を得ることが出来ないため酸化開始温度が低く、焼成、再酸化熱処理後に十分な導電性を得るに至っていない。
一方で、ニッケル及びアルミニウムからなる導体粒子原料に、Zr、Hf、Sc、Y、La及びCeのうち少なくともいずれか一つが含まれ、さらにZr、Hf、Sc、Y、La及びCeの総含有量が、ニッケル及びアルミニウムの含有量を100質量部としたときに、1質量部よりも多い場合は(比較例3〜4)、内部電極層が十分な耐酸化性を得ているものの、焼成、再酸化熱処理後に十分な導電性を得るに至っていない。これは、Zr、Hf、Sc、Y、La及びCe等を過剰に含有しているため、NiAl系金属間化合物の焼結が阻害されると同時に、それらの元素から構成される酸化物が析出し、導電性を阻害しているためと考えられる。
また、導体粒子原料がニッケル及びアルミニウムからなり、さらにZr、Hf、Sc、Y、La及びCeのうち少なくともいずれか一つを含む場合は(実施例3、17〜18)、大気中雰囲気中における再酸化熱処理の温度が低温域だけでなく、高温であっても、その耐酸化性により、十分な導電性を有していることが確認できた。
(第2の実施形態:積層セラミックコンデンサ)
第2の実施形態では、実施例21〜27、比較例11〜13として、以下の方法により積層セラミックコンデンサを作製し、積層体を得て、クラック発生率、静電容量を測定し、さらにHALT(highly accelerated life testing)試験(MTTF)を行った。
各内部電極ペーストの作製
第2の実施形態(実施例21〜27、比較例11〜13)では、導体粒子として、表4の分量でZr、Hf、Sc、Y、La及びCeのうち少なくともいずれか一つを含有した平均粒径約0.4μmのニッケル及びアルミニウムからなる粒子(比較例として平均粒径約0.4μmのニッケル金属粒子を追加)を準備した以外は、実施例1と同様にして内部電極ペーストを作製した。
グリーンシートを形成するための誘電体ペーストは以下の方法で作製した。BaTiO3系誘電体粉末と、有機バインダとしてのポリビニルブチラール樹脂(PVB)(重合度:800)と、溶剤としてのプロピルアルコール、キシレン、メチルエチルケトン、2−ブトキシエチルアルコール、可塑剤としてのフタル酸ジオクチルを準備した。
次に、誘電体粉末100質量部に対して、6質量部のPVBと、150質量部の溶剤と、可塑剤をそれぞれ秤量し、直径2mmのジルコニアボールとともにボールミルで21時間混練し、スラリー化して誘電体ペーストを得た。なお、可塑剤は、ポリビニルブチラール100質量部に対して50質量部添加した。
PETフィルム上に前記誘電体ペーストを塗布して得られたグリーンシートに、スクリーン印刷機を用いて、前記内部電極ペーストを160mm×160mm/パターンで印刷した。印刷された内部電極ペーストを100℃の熱風乾燥により100秒乾燥させ、内部電極印刷体とし、リールに巻き取った。
作製した内部電極印刷体を160mm×160mmでグリーンシートごとPETフィルムから剥離し、剥離熱圧着積層機を用いて、60℃、2.0〜9.8MPaで100枚積層して積層体を得た。
積層体の脱バインダと焼成および再酸化熱処理は実施例1の方法と同様に行い、積層体を得た。
このようにして得られた積層セラミックコンデンサの外形寸法は、幅、1.6mm、長さ3.2mm、厚さ1.0mmであり、内部電極層の厚みは2.0μmであった。
《静電容量の測定》
各試料について、温度25℃下、周波数1kHz、印加電圧1Vrmsを印加し静電容量を測定し、その平均を求めた。この結果を表4に示す。
《HALT試験(MTTF)》
静電容量を測定した試料について、HALT(highly accelerated life testing)試験(MTTF)を行った。試験条件は、温度150℃、電圧40V印加し、故障が生じるまでの時間を評価。この結果を表4に示す。
《クラック(デラミネーション)発生率の測定》
静電容量を測定した試料について、各試料100個ずつ樹脂で固めて研磨し、金属顕微鏡観察を行い、クラック(デラミネーション)の有無を検査した。この結果を表4に示す。
表4より、内部電極ペーストに導体粒子としてNiAl系金属間化合物が含まれ、かつZr、Hf、Sc、Y、La及びCeのうち少なくともいずれか一つが含まれる場合(実施例21〜31)は、内部電極ペーストに導体粒子としてニッケル及びアルミニウム(NiAl系金属間化合物を含む)のみが含まれる場合(比較例11)に比べ、また、従来用いられてきた内部電極ペーストに導体粒子としてニッケル金属を用いた場合(比較例12〜13)に比べ、耐酸化性が良好であるため内部電極の酸化膨張が少なくなり、クラック発生率が低く、十分な静電容量と信頼性(MTTF)が得られることが確認できた。