JP5887712B2 - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
即ち本発明は、アルミニウム系無機化合物(a1)の存在下でビニル単量体(a2)を重合して得られる無機化合物含有重合体(A)と、フッ素樹脂(B)とを含有する熱可塑性樹脂組成物である。
形状が球状(粒状)である場合、平均粒子径は、好ましくは1nm〜1μmであり、より好ましくは1〜100nmであり、更に好ましくは1〜50nmである。本願発明では、平均粒子径は、アルミニウム系無機化合物(a1)を脱イオン水に分散させ、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定した、50%体積平均粒子径を意味する。
形状が針状(繊維状)である場合、アスペクト比5〜10,000を有することが好ましい。具体的には、繊維形状の平均口径は、好ましくは0.5〜100nmであり、より好ましくは0.5〜20nmであり、更に好ましくは0.5〜5nmである。繊維形状の平均長さ(長手方向の平均長さ)は、好ましくは5nm〜200μmであり、より好ましくは10nm〜100μmであり、更に好ましくは10nm〜50μmである。
このような反応は、水溶液中において、弱酸性で、必要に応じて加熱しながら行なうことができる。また、反応生成物は、必要に応じて、濃縮、洗浄、乾燥して用いることができる。
例えば、反応後の水溶液を弱アルカリ性にして、生成物を沈降させ、上澄み液を分離することができる。また、凍結乾燥を行なって、固形物として取り出すこともできる。
X線回折の測定では、回折角(2θ)6°、11°、16°付近に、イモゴラト特有のピークを確認することができる。TEMの観察では、アロフェンの場合には直径約5nmの粒子が凝集した形態を、イモゴライトの場合には繊維が凝集した形態を確認することができる。IRの測定では、Si−O−Al結合に由来する900〜1000cm−1付近の吸収を確認することができる。
リン酸系化合物(a3)としては、リン酸基を有するものであれば、無機化合物、有機化合物いずれでもよく、リン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩等のリン酸塩、有機ヒドロキシ化合物のリン酸モノエステル又はリン酸ジエステルが好ましい。
必要に応じて、重合を2段階で行なうことができ、例えば、所定温度で所定時間の重合を行なった後、より高い温度で保持して重合を完了させることもできる。
連鎖移動剤としては、例えば、オクチルメルカプタン及びドデシルメルカプタン及びα−メチルスチレンダイマーが挙げられる。
分散剤としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸のアルカリ金属塩、(メタ)アクリル酸のアルカリ金属塩と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体、(メタ)アクリル酸スルホアルキルのアルカリ金属塩と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体、ポリスチレンスルホン酸のアルカリ金属塩、スチレンスルホン酸のアルカリ金属塩と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体、ケン化度70〜100%のポリビニルアルコ−ル、メチルセルロ−スが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらの中では、懸濁重合時の分散安定性が良好な(メタ)アクリル酸スルホアルキルのアルカリ金属塩と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体が好ましい。
分散助剤としては、例えば、硫酸ナトリウム、硫酸マンガンが挙げられる。
乳化剤としては、公知のアニオン系乳化剤、カチオン系乳化剤及びノニオン系乳化剤を用いることができる。
本発明のアクリル樹脂(C)の分子量は、GPCによる質量平均分子量として、1万〜100万が好ましく、3万〜50万がより好ましく、5万〜20万が特に好ましい。
本発明の成形体は、自動車、家電、OA機器の部品に用いることができる。また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、塗料、トナー等のバインダー樹脂として用いることができる。
X線回折装置((株)リガク製RINT2500(商品名))を用いて、加速電圧は40kV、加速電流は300mAにより、Cu−Kα線を照射し、回折角(2θ)5〜85°の範囲における回折パターンを測定した。
透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製JEM-1200EXII(商品名))を用いて、加速電圧100KV、倍率10万倍で観察した。
フーリエ変換赤外分光光度計((株)島津製作所製FTIR−8700(商品名))を用いて、KBr法で調整した試料を、透過法により400〜4000cm-1の範囲における吸収スペクトルを測定した。
比表面積測定装置(ユアサアイオニクス(株)製モノソーブ(商品名))を用いて、試料を120℃、2時間脱気した後に測定した。
重合体の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(ウォーターズ社製GPC150C(商品名))を用いて測定した。尚、スタンダードとしてポリメチルメタクリレート、移動相としてクロロホルムを用いた。
各実施例で得られたフィルム(厚み200μm)の外観を目視観察した。以下の基準により評価を行った。
○:原料として用いた無機成分の存在を、目視では確認できなかった。
△:原料として用いた無機成分の存在は、目視で確認可能であり、凝集・偏在していたが、明らかな材料強度低下には至っておらず、物性評価を続けた。
×:原料として用いた無機成分の存在は、目視で確認可能であり、凝集・偏在しており、材料強度低下が認められ、物性評価は中止した。
原料として用いた樹脂、あるいは、得られた樹脂組成物を測定試料として、熱分析装置(セイコー電子工業(株)製DSC220(商品名))を用い、窒素気流下、200℃に昇温後、40℃/分で冷却しながら、ポリフッ化ビニリデン成分の結晶化温度(Tc)を求めた。
得られたフィルム(厚み200μm)を試料として、全光線透過率(Tt)及びヘーズ(Hz)を、JIS−K7105に準拠して測定した。
各実施例で得られたフィルム(厚み200μm)について、JIS−K5400に準拠して、成形品表面で鉛筆引っ掻き試験を行った。測定は、基材としてPMMA製シート(厚み3mm)の上に、フィルム試験片を載せて実施した。なお、「2B−B」は2Bでは傷が付くことはないが、Bでは傷が僅かについたり、つかなかったりすることを意味する。
各実施例で得られたフィルム(厚み200μm)の表面を乾いた綿布で10回摩擦した後、成形体表面を平面上のたばこの灰に一定の距離を隔てて近づけた際の、灰の付着性を評価した。尚、評価は、23℃、50%RHの環境下で行なった。また、成形体は、予めこの環境下で一日放置して用いた。
○ 50mmの距離まで近づけても灰が付着しないが、10mmの距離まで近づけると灰が付着する。
× 50mmの距離で灰が付着する。
PVDF ポリフッ化ビニリデン:アルケマ社製カイナー720(商品名)
PMMA ポリメチルメタクリレート:三菱レイヨン(株)製アクリペット、VH(商品名)
金属チタン製の撹拌機付き反応容器(内容積60L) にSi濃度0.01Mのオルト珪酸ナトリウム溶液9.0Lを入れ、撹拌した。次にAl濃度0.01Mの塩化アルミニウム溶液を20L入れ、30分撹拌した。
次いで、0.01MのNaOH溶液20.0Lを1時間かけて添加した。このときのサスペンションのpHは5.7(25℃)であった。そして、このサスペンションを95℃に昇温させ、48時間保持した後、24時間かけて室温まで冷却した。このときの反応サスペンションは、極めて透明度の高いものであった。固形分は0.04%であった。
製造例1で得られたアルミニウム系無機化合物(a1)の水分散液を、凍結乾燥機でマイナス40℃から徐々に昇温して、28時間の乾燥を行ない、粉体を得た。
得られた粉体について以下の分析を行った。この分析結果から、アルミニウム系無機化合物(a1)がイモゴライトであることを確認した。
X線回折:回折角(2θ)6°、11°、16°付近にブロードなピークがみられた。
TEM:繊維状の像がみられた。
IR:Si−O−Al結合に由来する950〜1000cm-1付近のダブレット吸収がみられた。
これらの特徴はイモゴライト特有のものである。
また得られたアルミニウム系無機化合物(a1)のBET比表面積を測定したところ、325m2/gであった。
攪拌装置、加熱装置、温度センサー、コンデンサー、窒素導入口を備えた反応容器に、製造例1で得られたアルミニウム系無機化合物(a1)の水分散液1000部((a1)の固形分として0.4部)を仕込み、室温で攪拌した。
10%アンモニア水溶液10部(固形分換算)を加えて30分攪拌した後、アシッドホスホオキシエチルメタクリル酸エステル(商品名「ホスマーM」、ユニケミカル(株)製)0.04部を加えて30分攪拌した。
次いで、メチルメタクリレート(MMA)99部、メチルアクリレート(MA)1部、オクチルメルカプタン(OM)0.1部、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.05部を添加した。窒素気流下で80℃に昇温して、2時間攪拌した後、90℃に昇温して30分攪拌した。内容物を冷却した後、生成物を分離、乾燥し、無機化合物含有重合体(A1)を得た。
得られた無機化合物含有重合体(A1)の分子量を推定するため、製造例3を、アルミニウム系無機化合物(a1)を含めないことを除き、同一の操作で実施した。得られた重合体の質量平均分子量をGPCにより測定したところ10万であり、これを無機化合物含有重合体(A1)の質量平均分子量とした。
アルミニウム系無機化合物(a1)の水分散液を300部、((a1)の固形分として0.12部)、水601部、アシッドホスホオキシエチルメタクリル酸エステル(商品名「ホスマーM」、ユニケミカル(株)製)を0.012部用いたこと以外は、製造例3と同様にして、無機化合物含有重合体(A2)を得た。
得られた無機化合物含有重合体(A2)の分子量を推定するため、製造例4を、アルミニウム系無機化合物(a1)を含めないことを除き、同一の操作で実施した。得られた重合体の質量平均分子量をGPCにより測定したところ10万であり、これを無機化合物含有重合体(A2)の質量平均分子量とした。
PVDFを、金型(厚み2mmの鉄板2枚、スペーサー)に挟んで、200℃に加熱したプレス盤(王子機械(株)製油圧プレス機、最大荷重37トン、最高使用圧力210kg/cm2)の間で、5分かけて、ゲージ圧を30kg/cm2まで上昇させた。金型ごと、20℃に冷却したプレス盤(庄司鉄工(株)製油圧プレス機、最大荷重100トン、常用圧力200kg/cm2、水冷式)へ移動し、5分間保持した後、金型から、フィルム状の成形物を取り外した。尚、0.2mmの厚みになるように成形条件を調整した。得られたフィルムを用いて、物性を評価した結果を、表1に示す。
PVDF及びPMMAを表1に示す割合で混合し、ニーダー(商品名「プラスチコーダー」、ブラベンダー社製、内容積50cm3)を用いて、バレル温度190℃で溶融混練した。得られたブレンド物を、比較例1と同様に成形し、物性を評価した。物性評価結果を表1に示す。
製造例3で得られた無機化合物含有重合体(A1)又は製造例4で得られた無機化合物含有重合体(A2)と、PVDFと、PMMAとを表1に示す割合で混合し、比較例2と同様の操作を行った。物性評価結果を表1に示す。
製造例2で得られた無機化合物単体(A’1)、PVDF及びPMMAを、表1に示す割合で混合し、実施例1と同様の操作を行った。物性評価結果を表1に示す。
実施例1〜3で示されるように、本発明の無機化合物含有重合体(A)、フッ素樹脂及びアクリル樹脂からなる樹脂組成物は、無機成分の分散状態が良好であり、そして透明性、耐傷付き性、帯電防止性に優れることが明らかとなった。特に、本発明による無機化合物含有重合体(A)を添加すると、アクリル樹脂成分の配合量を削減しても、樹脂組成物成形体の透明性が顕著に向上することが明らかとなった。また、アクリル樹脂(C)に替えて無機化合物含有アクリル重合体(A)を配合した実施例4では、比較例2と比較して、無機成分の分散状態が良好であり、透明性、耐傷付き性、帯電防止性に優れることが明らかとなった。
比較例3及び4で示されるように、本発明で使用される無機化合物含有重合体(A)の替わりに、無機化合物単体を用いた場合には、無機成分が不均一に凝集した樹脂組成物しか得られないため、本発明のような物性発現効果を見出すことはできない。
Claims (6)
- アロフェン、イモゴライト及びハロイサイトからなる群から選ばれる一種又は二種以上のアルミニウム系無機化合物(a1)と、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート及びヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる一種又は二種以上のビニル単量体単位からなる重合体(a2)とを含む無機化合物含有重合体(A)と、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、四フッ化エチレン−ペルフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)からなる群から選ばれる一種又は二種以上のフッ素樹脂(B)とを含有する熱可塑性樹脂組成物。
- さらにアクリル樹脂(C)を含有する、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- アロフェン、イモゴライト及びハロイサイトからなる群から選ばれる一種又は二種以上のアルミニウム系無機化合物(a1)の存在下で、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート及びヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる一種又は二種以上のビニル単量体単位(a2)を重合して得られる無機化合物含有重合体(A)と、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、四フッ化エチレン−ペルフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)からなる群から選ばれる一種又は二種以上のフッ素樹脂(B)とを混合する熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
- さらにアクリル樹脂(C)を含有する、請求項3に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
- 無機化合物含有重合体(A)の重合を、さらにリン酸エステル系化合物の存在下で行う、請求項3または4に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
- 請求項5に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法で得られる熱可塑性樹脂組成物を成形して得られる成形体の製造方法。
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