JP5630195B2 - 熱可塑性樹脂組成物およびこれを成形して得られる成形体 - Google Patents
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Description
近年、情報通信機器等の小型化が進み、携帯用の製品が増えているため、アクリル樹脂に対して、厳しい使用条件への適応が求められている。例えばアクリル樹脂を情報通信機器の前面板に用いる場合、透明性に加えて、耐傷付き性及び耐衝撃性が重視される。
特許文献2には、無機フィラーを有機物と複合化することで透明性の低下を抑制することも提案されている。しかしながら、樹脂中に複合化した無機フィラーを分散させた場合でも、耐衝撃性が低下するという課題を有している。ここにゴム成分を配合した場合でも、耐衝撃性の低下の抑制は充分ではなかった。
即ち本発明は、
1.アルミニウム系無機化合物(a1)の存在下でビニル単量体(a2)を重合して得られる無機化合物含有重合体(A)、グラフト共重合体(B)及び熱可塑性樹脂(C)を含有する熱可塑性樹脂組成物;
2.無機化合物含有重合体(A)が、アルミニウム無機化合物(a1)を含む水分散液中で、ビニル単量体(a2)を重合して得られるものである、上記1に記載の熱可塑性樹脂組成物;
3.熱可塑性樹脂(C)がアクリル樹脂である、上記1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物;および
4.上記1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を成形して得られる成形体
を提供する。
本発明の成形体は、透明性、耐傷付き性及び耐衝撃性のバランスが良好である。
形状が球状(粒状)である場合、平均粒子径は、好ましくは1nm〜1μmであり、より好ましくは1〜100nmであり、更に好ましくは1〜50nmである。本願発明では、平均粒子径は、アルミニウム系無機化合物(a1)を脱イオン水に分散させ、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定した、50%体積平均粒子径を意味する。
形状が針状(繊維状)である場合、アスペクト比5〜10,000を有することが好ましい。具体的には、繊維形状の平均口径は、好ましくは0.5〜100nmであり、より好ましくは0.5〜20nmであり、更に好ましくは0.5〜5nmである。繊維形状の平均長さ(長手方向の平均長さ)は、好ましくは5nm〜200μmであり、より好ましくは10nm〜100μmであり、更に好ましくは10nm〜50μmである。
このような反応は、水溶液中において、弱酸性で、必要に応じて加熱しながら行なうことができる。また、反応生成物は、必要に応じて、濃縮、洗浄、乾燥して用いることができる。
例えば、反応後の水溶液を弱アルカリ性にして、生成物を沈降させ、上澄み液を分離することができる。また、凍結乾燥を行なって、固形物として取り出すこともできる。
X線回折の測定では、回折角(2θ)6°、11°、16°付近に、イモゴラト特有のピークを確認することができる。TEMの観察では、アロフェンの場合には直径約5nmの粒子が凝集した形態を、イモゴライトの場合には繊維が凝集した形態を確認することができる。IRの測定では、Si−O−Al結合に由来する900〜1000cm−1付近の吸収を確認することができる。
リン酸系化合物(a3)としては、リン酸基を有するものであれば、無機化合物、有機化合物いずれでもよく、リン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩等のリン酸塩、有機ヒドロキシ化合物のリン酸モノエステル又はリン酸ジエステルが好ましい。
必要に応じて、重合を2段階で行なうことができ、例えば、所定温度で所定時間の重合を行なった後、より高い温度で保持して重合を完了させることもできる。
連鎖移動剤としては、例えば、オクチルメルカプタン及びドデシルメルカプタン及びα−メチルスチレンダイマーが挙げられる。
分散剤としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸のアルカリ金属塩、(メタ)アクリル酸のアルカリ金属塩と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体、(メタ)アクリル酸スルホアルキルのアルカリ金属塩と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体、ポリスチレンスルホン酸のアルカリ金属塩、スチレンスルホン酸のアルカリ金属塩と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体、ケン化度70〜100%のポリビニルアルコ−ル、メチルセルロ−スが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらの中では、懸濁重合時の分散安定性が良好な(メタ)アクリル酸スルホアルキルのアルカリ金属塩と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体が好ましい。
分散助剤としては、例えば、硫酸ナトリウム、硫酸マンガンが挙げられる。
乳化剤としては、公知のアニオン系乳化剤、カチオン系乳化剤及びノニオン系乳化剤を用いることができる。
本発明においては、上述の無機化合物含有重合体の製造方法を、当該無機化合物を含めないことを除き同一の操作で実施して得られた重合体の質量平均分子量を、無機化合物含有重合体(A)の推定分子量とする。無機化合物含有重合体(A)の推定分子量は、ゲルパーミションクロマトグラフィー(GPC)による質量平均分子量として、1万〜100万が好ましく、3万〜50万がより好ましく、5万〜20万が特に好ましい。
ゴム重合体としては、例えば、(メタ)アクリレート系ゴム、ブタジエン系ゴム、シロキサン系ゴムが挙げられる。ゴム重合体は、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらの中では、得られる熱可塑性樹脂組成物の透明性、耐候性、耐水性が良好となることから、(メタ)アクリレート系ゴムが好ましい。
多官能ビニル単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート;アリル(メタ)アクリレートが挙げられる。
これらの中では、得られる熱可塑性樹脂組成物の透明性、耐候性、耐衝撃性が良好となることから、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、スチレンが好ましく、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチルアクリレート、スチレンがより好ましい。
乳化系のラジカル重合法では、公知の乳化剤及び重合開始剤を用いる。乳化剤及び重合開始剤としては、無機化合物含有重合体(A)の製造で例示したものを用いることができる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、スチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂は、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらの中では、得られる熱可塑性樹脂組成物の透明性、耐候性が良好となることから、アクリル樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂(C)の分子量は、GPCによる質量平均分子量として、1万〜100万が好ましく、3万〜50万がより好ましく、5万〜20万が特に好ましい。
熱可塑性樹脂組成物(100質量%)中の、各成分の配合比率は、熱可塑性樹脂組成物の透明性、耐候性、耐衝撃性が良好となることから、(A)0.001〜98質量%、(B)1〜98.999質量%、(C)1〜98.999質量%が好ましく、(A)0.01〜30質量%、(B)5〜69.99質量%、(C)30〜94.99質量%がより好ましく、(A)0.1〜10質量%、(B)10〜49.9質量%、(C)50〜89.9質量%が更に好ましい。
この成形により、シート状、フィルム状等、各種形状の成形体を得ることができる。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、塗料、トナー等のバインダー樹脂として用いることができる。
X線回折装置((株)リガク製RINT2500(商品名))を用いて、加速電圧は40kV、加速電流は300mAにより、Cu−Kα線を照射し、回折角(2θ)5〜85°の範囲における回折パターンを測定した。
透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製JEM-1200EXII(商品名))を用いて、加速電圧100KV、倍率10万倍で観察した。
フーリエ変換赤外分光光度計((株)島津製作所製FTIR−8700(商品名))を用いて、KBr法で調整した試料を、透過法により400〜4000cm−1の範囲における吸収スペクトルを測定した。
比表面積測定装置(ユアサアイオニクス(株)製モノソーブ(商品名))を用いて、試料を120℃、2時間脱気した後に測定した。
重合体の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(ウォーターズ社製GPC150C(商品名))を用いて測定した。尚、スタンダードとしてポリメチルメタクリレート、移動相としてクロロホルムを用いた。
グラフト共重合体が含有するゴム重合体の質量平均粒子径を、以下のように測定した。
得られたラテックスを脱イオン水で希釈して、固形分約3%の希釈ラテックスとし、その0.1mlを試料として、米国MATEC社製CHDF2000型粒度分布測定装置を用い、流速1.4ml/分、圧力約2.76MPa(約4000psi)、温度35℃の条件で測定した。
測定では、粒子分離用キャピラリー式カートリッジおよびキャリア液を用い、液性はほぼ中性にした。尚、測定前には、米国DUKE社製の粒子径既知の単分散ポリスチレンを標準粒子径物質とし、20〜800nmの合計12点の粒子径を測定して、検量線を作成した。
各実施例で得られた成形体の外観を目視観察した。以下の基準により評価を行なった。
○:無機化合物の存在を目視で確認できなかった。
△:無機化合物の存在を目視で確認できた。成形体の強度低下は認められなかった。
×:無機化合物の存在を目視で確認できた。成形体の強度低下が認められた。
各実施例で得られた成形体について、JIS−K7111に準拠して、シャルピー衝撃強度(単位:kJ/m2)を測定した。測定は、長さ80mm×幅10mm×厚さ4mmの試験片を調製し、エッジワイズ、タイプAノッチ付きの条件で実施した。
各実施例で得られた成形体について、JIS−K5600に準拠して、鉛筆引っ掻き試験を行なった。測定は、長さ50mm×幅50mm×厚さ3mmの試験片で実施した。
各実施例で得られた成形体について、JIS−K7105に準拠して、全光線透過率及びヘーズを測定した。測定は、長さ50mm×幅50mm×厚さ3mmの試験片で実施した。
各実施例で得られた成形体について、JIS−K7202に準拠して、ロックウェル硬度をMスケールで測定した。測定は、長さ50mm×幅50mm×厚さ3mmの試験片を調製し、これを2枚重ねて実施した。
各実施例で得られた成形体の表面を乾いた綿布で10回摩擦した後、成形体表面を平面上のたばこの灰に一定の距離を隔てて近づけた際の、灰の付着性を評価した。尚、評価は、23℃、50%RHの環境下で行なった。また、成形体は、予めこの環境下で一日放置して用いた。
○:10mmの距離まで近づけても灰が付着しない。
△:50mmの距離まで近づけても灰が付着しないが、10mmの距離まで近づけると灰が付着する。
×:50mmの距離で灰が付着する。
金属チタン製の撹拌機付き反応容器(内容積60L)に、Si濃度0.01Mのオルト珪酸ナトリウム溶液8.6Lを入れ、撹拌した。次にAl濃度0.01Mの塩化アルミニウム溶液21Lを入れ、30分撹拌した。
次いで、0.01MのNaOH溶液18.5Lを1時間かけて添加した。このときのサスペンションのpHは4.5(25℃)であった。そして、このサスペンションを95℃に昇温させ、24時間保持した後、24時間かけて室温まで冷却した。
このときの反応サスペンションのpHは4.2で、極めて透明度の高いものであった。得られた(a1)の水分散液の固形分は0.04%であった。
製造例1で得られたアルミニウム系無機化合物(a1)の水分散液を、凍結乾燥機でマイナス40℃から徐々に昇温して、28時間の乾燥を行ない、粉体を得た。
得られた粉体について、以下の分析を行なった。この分析結果から、アルミニウム系無機化合物(a1)が、イモゴライトであることを確認した。
TEM:繊維状の像がみられた。
IR:Si−O−Al結合に由来する950〜1000cm−1付近のダブレット吸収がみられた。
これらの特徴はイモゴライト特有のものである。
また、得られたアルミニウム系無機化合物(a1)のBET比表面積は、325m2/gであった。
攪拌装置、加熱装置、温度計、冷却管、窒素導入管を備えた反応容器に、製造例1で得られたアルミニウム系無機化合物(a1)の水分散液1000部((a1)の固形分として0.4部)を仕込み、室温で攪拌した。
10%アンモニア水溶液10部を加えて30分攪拌した後、アシッドホスホオキシエチルメタクリル酸エステル(商品名「ホスマーM」、ユニケミカル(株)製)0.04部を加えて30分攪拌した。
窒素気流下で80℃に昇温して、2時間攪拌した後、90℃に昇温して30分攪拌した。反応容器を冷却した後、生成物を分離、乾燥し、無機化合物含有重合体(A1)を得た。
得られた無機化合物含有重合体(A1)の分子量を推定するため、製造例3を、アルミニウム系無機化合物(a1)を含めないことを除き、同一の操作で実施した。得られた重合体の質量平均分子量をGPCにより測定したところ10万であり、これを無機化合物含有重合体(A1)の推定分子量とした。
アルミニウム系無機化合物(a1)の水分散液を300部((a1)の固形分として0.12部)用い、アシッドホスホオキシエチルメタクリル酸エステル(商品名「ホスマーM」、ユニケミカル(株)製)を0.012部用いたこと以外は、製造例3と同様にして、無機化合物含有重合体(A2)を得た。
得られた無機化合物含有重合体(A2)の分子量を推定するため、製造例4を、アルミニウム系無機化合物(a1)を含めないことを除き、同一の操作で実施した。得られた重合体の質量平均分子量をGPCにより測定したところ10万であり、これを無機化合物含有重合体(A2)の推定分子量とした。
特開平10−182841号公報の実施例1に記載される方法によって、粒子径15nmのコロイダルシリカ(無機化合物含有重合体中の含有率:21%)が複合化したメチルメタクリレート系重合体(A’3)を得た。
撹拌装置、加熱装置、温度計、冷却管、窒素導入管を備えた反応容器内に、脱イオン水190部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.4部、硫酸第一鉄0.00004部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.00012部を仕込み、攪拌を開始し、窒素気流下80℃まで昇温した。
下記の単量体成分(M−1)の、1/10量を添加した後、15分間保持した。その後、単量体成分(M−1)の残りを50分かけて滴下した後、1時間保持して1段目の重合を完了した。
単量体成分(M−1)の重合転化率は99%以上であった。ここで、単量体成分(M−1)の重合転化率は、残存単量体をガスクロマトグラフ分析して確認した(以下、同様)。
MMA 11部
スチレン(ST) 1部
n−ブチルアクリレート(BA) 8部
1,3−ブタンジオールジメタクリレート(BDMA) 0.6部
アリルメタクリレート(AMA) 0.08部
t−ブチルハイドロパーオキサイド(TBH) 0.04部
EM−2 1部
(東邦化学(株)製フォスファノールRS−610NA(商品名))
その後、下記の単量体成分(M−2)を4時間かけて滴下し、2時間保持して2段目の重合を完了した。
単量体成分(M−2)の重合転化率は99%以上であり、得られたゴム重合体の質量平均粒子径は240nmであった。
ST 14部
BA 66部
BDMA 0.2部
AMA 1部
クメンハイドロパーオキサイド(CHP) 0.2部
EM−2 2部
その後、下記の単量体成分(M−3)を2時間20分かけて滴下し、1時間保持して3段目の重合を完了した。
単量体成分(M−3)の重合転化率は99%以上であった。
MMA 42部
BA 15部
ST 3部
TBH 0.1部
OM 0.1部
各成分を表1に示す比率で混合し、二軸押出機(PCM−30(商品名)、池貝鉄工(株)製)を用いて、バレル温度200℃で溶融混練して、熱可塑性樹脂組成物を得た。
得られた熱可塑性樹脂組成物を、射出成形機(EC20PNII(商品名)、東芝機械(株)製)を用いて成形した。得られた成形体を用いて、物性を評価した結果を表1に示す。
尚、表1に記載のPMMAは、アクリペット(品番:VH、三菱レイヨン(株)製)を示す。
[比較例1〜5]
各成分を表1に示す比率で混合し、実施例1と同様にして、物性を評価した。結果を表1に示す。
成分(A)、(B)をいずれも含まない成形体(比較例1)は、耐衝撃性が低かった。
成分(A)を含むが、成分(B)を含まない成形体(比較例2)は、耐衝撃性が低かった。
成分(B)を含むが、成分(A)を含まない成形体(比較例3)は、耐衝撃性は向上したが、元来の耐傷付き性が大幅に損なわれた。
アルミニウム系無機化合物(a1)の粉体を直接配合した成形体(比較例4)は、無機化合物の分散状態が不良であるため、測定箇所によって透過率が変化する状態であった。このため、表1には透明性の測定結果を記載していない。また、耐傷付き性も低かった。
シリカ系無機化合物含有重合体(A’)を用いた成形体(比較例5)は、本発明による成分(A)を用いた場合と比較して、耐傷付き性及び耐衝撃性が共に低かった。
Claims (3)
- アスペクト比5〜10,000及び平均口径0.5〜100nmの針状のイモゴライト(a1)の存在下で(メタ)アクリレート(a2)を重合して得られる無機化合物含有重合体(A)、ゴム重合体に対して(メタ)アクリレート成分をグラフト重合したグラフト共重合体(B)及びアクリル樹脂(C)を含有するアクリル樹脂組成物であって、前記成分(A)〜(C)の含有量が、(A)0.001〜98質量%、(B)1〜98.999質量%、(C)1〜98.999質量%であるアクリル樹脂組成物。
- 無機化合物含有重合体(A)が、イモゴライト(a1)を含む水分散液中で、(メタ)アクリレート(a2)を重合して得られるものである、請求項1に記載のアクリル樹脂組成物。
- 請求項1又は2に記載のアクリル樹脂組成物を成形して得られる成形体。
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