JP2016044245A - 重合体組成物、熱可塑性樹脂組成物及び成形体 - Google Patents
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Abstract
【課題】透明性及び耐衝撃性等の熱可塑性樹脂の特性を損なわず、且つ表面硬度及び帯電防止性に優れた成形体、その成形体を得ることができる重合体組成物及び熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】アルミニウム系無機化合物(A)及び以下に示すアクリル重合体(B)更には必要に応じてリン酸系化合物を含有する重合体組成物、重合体組成物及び熱可塑性樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物並びに熱可塑性樹脂組成物を使用して得られる成形体。
アクリル重合体(B):芳香族(メタ)アクリレート(b1)単位を含有する重合体
【選択図】なし
【解決手段】アルミニウム系無機化合物(A)及び以下に示すアクリル重合体(B)更には必要に応じてリン酸系化合物を含有する重合体組成物、重合体組成物及び熱可塑性樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物並びに熱可塑性樹脂組成物を使用して得られる成形体。
アクリル重合体(B):芳香族(メタ)アクリレート(b1)単位を含有する重合体
【選択図】なし
Description
本発明は、重合体組成物、熱可塑性樹脂組成物及び成形体に関する。
ポリカーボネート樹脂は、機械的性質、熱的性質、成形加工性、外観、耐久性等の特性に優れる点を生かして、自動車、家電、電子機器、建築物等の部品用材料として広く活用されている。
しかしながら、ポリカーボネート樹脂の成形品は表面が傷付き易く、静電気が発生し易いことから、これらの欠点を改善するための方法が種々開発されている。
例えば、ポリカーボネート樹脂の耐傷付き性を改良する方法として、ポリカーボネート樹脂に芳香族アクリレート系重合体等の超高分子量分岐型アクリル系共重合体樹脂を添加する方法が提案されている(特許文献1)。しかしながら、この方法では帯電防止性は改良されず、ポリカーボネート樹脂本来の優れた性質の1つである耐衝撃性も低下する傾向にある。
また、ポリカーボネート樹脂にスルホン酸ホスホニウム塩及び亜リン酸エステルを添加して帯電防止性を改良する方法が提案されている(特許文献2)。しかしながら、この方法では耐傷付き性は改良されず、ポリカーボネート樹脂本来の優れた性質である機械的強度や透明性(耐黄変性)も低下する傾向にある。
更に、熱可塑性樹脂の耐傷付き性及び帯電防止性を改善する方法として、アルミニウム系無機化合物を含む水分散体中でビニル単量体を重合して得られる無機化合物含有重合体の製造方法が提案されている(特許文献3)。しかしながら、この方法では得られる樹脂がポリカーボネート樹脂の場合には表面硬度が充分とはいえず、更なる改善が望まれる。
本発明は、透明性及び耐衝撃性等の熱可塑性樹脂の特性を損なわず、且つ表面硬度及び帯電防止性に優れた成形体を得ることができる重合体組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、透明性及び耐衝撃性等の熱可塑性樹脂の特性を損なわず、且つ表面硬度及び帯電防止性に優れた成形体を得ることができる熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。
更に、本発明は本熱可塑性樹脂組成物を使用して得られる、透明性及び耐衝撃性等の熱可塑性樹脂の特性を損なわず、且つ表面硬度及び帯電防止性に優れた成形体を提供することを目的とする。
前記課題は、以下の[1]〜[15]によって解決される。
[1] アルミニウム系無機化合物(A)(以下、「(A)成分」という)及び以下に示すアクリル重合体(B)(以下、「(B)成分」という)を含有する重合体組成物(以下、「本重合体組成物」という)。
[1] アルミニウム系無機化合物(A)(以下、「(A)成分」という)及び以下に示すアクリル重合体(B)(以下、「(B)成分」という)を含有する重合体組成物(以下、「本重合体組成物」という)。
アクリル重合体(B):芳香族(メタ)アクリレート(b1)(以下、「(b1)成分」という)単位を含有する重合体
[2] 重合体組成物中に更にリン酸系化合物を含有する[1]に記載の本重合体組成物。
[3] (B)成分が、(b1)成分を含有する単量体又は単量体混合物(b)(以下、「原料(b)」という)を(A)成分の存在下で重合して得たときの重合体である[1]又は[2]に記載の本重合体組成物。
[4] (A)成分が、アロフェン、イモゴライト及びハロイサイトから選ばれる少なくとも1種である[1]〜[3]のいずれかに記載の本重合体組成物。
[5] (A)成分の水分散液に(b1)成分を含有する原料(b)及びラジカル重合開始剤を添加して懸濁重合により(B)成分を得る[3]に記載の本重合体組成物。
[6] (A)成分の水分散液が、アロフェン、イモゴライト及びハロイサイトから選ばれる少なくとも1種を含む水分散液中にリン酸系化合物を添加したものである[5]に記載の本重合体組成物。
[7] リン酸系化合物が、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとリン酸から得られるモノエステル又はジエステル及びポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとリン酸から得られるモノエステル又はジエステルから選ばれる少なくとも1種である[2]又は[6]に記載の本重合体組成物。
[8] (B)成分が、(b1)成分単位及びアルキル(メタ)アクリレート(b2)(以下、「(b2)成分」という)単位を含有する[1]〜[7]のいずれかに記載の重合体組成物。
[9] (b1)成分単位がフェニルメタクリレート単位及びベンジルメタクリレート単位から選ばれる少なくとも1種であり、(b2)成分単位がメチルメタクリレート単位である[8]に記載の本重合体組成物。
[10] (B)成分が、(b1)成分単位10〜45質量%及び(b2)成分単位55〜90質量%を含有する[8]又は[9]に記載の本重合体組成物。
[11] (A)成分の含有量が、(B)成分100質量部に対して0.05質量部以上20質量部以下である[1]〜[10]のいずれかに記載の本重合体組成物。
[12] [1]〜[11]のいずれかに記載の本重合体組成物及び熱可塑性樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物(以下、「本熱可塑性樹脂組成物」という)。
[13] 本重合体組成物1質量%以上40質量%以下及び熱可塑性樹脂60質量%以上99質量%以下を含有する[12]に記載の本熱可塑性樹脂組成物。
[14] 熱可塑性樹脂がポリカーボネート樹脂である[12]又は[13]に記載の本熱可塑性樹脂組成物。
[15] [12]〜[14]のいずれかに記載の本熱可塑性樹脂組成物を使用して得られる成形体(以下、「本成形体」という)。
[2] 重合体組成物中に更にリン酸系化合物を含有する[1]に記載の本重合体組成物。
[3] (B)成分が、(b1)成分を含有する単量体又は単量体混合物(b)(以下、「原料(b)」という)を(A)成分の存在下で重合して得たときの重合体である[1]又は[2]に記載の本重合体組成物。
[4] (A)成分が、アロフェン、イモゴライト及びハロイサイトから選ばれる少なくとも1種である[1]〜[3]のいずれかに記載の本重合体組成物。
[5] (A)成分の水分散液に(b1)成分を含有する原料(b)及びラジカル重合開始剤を添加して懸濁重合により(B)成分を得る[3]に記載の本重合体組成物。
[6] (A)成分の水分散液が、アロフェン、イモゴライト及びハロイサイトから選ばれる少なくとも1種を含む水分散液中にリン酸系化合物を添加したものである[5]に記載の本重合体組成物。
[7] リン酸系化合物が、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとリン酸から得られるモノエステル又はジエステル及びポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとリン酸から得られるモノエステル又はジエステルから選ばれる少なくとも1種である[2]又は[6]に記載の本重合体組成物。
[8] (B)成分が、(b1)成分単位及びアルキル(メタ)アクリレート(b2)(以下、「(b2)成分」という)単位を含有する[1]〜[7]のいずれかに記載の重合体組成物。
[9] (b1)成分単位がフェニルメタクリレート単位及びベンジルメタクリレート単位から選ばれる少なくとも1種であり、(b2)成分単位がメチルメタクリレート単位である[8]に記載の本重合体組成物。
[10] (B)成分が、(b1)成分単位10〜45質量%及び(b2)成分単位55〜90質量%を含有する[8]又は[9]に記載の本重合体組成物。
[11] (A)成分の含有量が、(B)成分100質量部に対して0.05質量部以上20質量部以下である[1]〜[10]のいずれかに記載の本重合体組成物。
[12] [1]〜[11]のいずれかに記載の本重合体組成物及び熱可塑性樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物(以下、「本熱可塑性樹脂組成物」という)。
[13] 本重合体組成物1質量%以上40質量%以下及び熱可塑性樹脂60質量%以上99質量%以下を含有する[12]に記載の本熱可塑性樹脂組成物。
[14] 熱可塑性樹脂がポリカーボネート樹脂である[12]又は[13]に記載の本熱可塑性樹脂組成物。
[15] [12]〜[14]のいずれかに記載の本熱可塑性樹脂組成物を使用して得られる成形体(以下、「本成形体」という)。
本重合体組成物及び本熱可塑性樹脂組成物は、透明性及び耐衝撃性等の熱可塑性樹脂の本来の特性を損なうことなく、表面硬度及び帯電防止性に優れた本成形体を得ることができ、各種樹脂成形体用材料、塗料用樹脂、トナー用バインダー樹脂等の各種樹脂原料として用いることができる。また、得られる本成形体は、自動車、家電、OA機器の部品等の各種用途に好適である。
<(A)成分>
本発明で使用される(A)成分は後述する本重合体組成物の構成成分の1つである。
本発明で使用される(A)成分は後述する本重合体組成物の構成成分の1つである。
(A)成分としては、例えば、アロフェン、イモゴライト及びハロイサイトが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を併せて使用できる。
アロフェン、イモゴライト及びハロイサイトは、火山灰土壌中に風化生成物として得られる天然物又は合成されたものを用いることができる。これらの中で、本成形体の透明性、表面硬度、帯電防止性、結晶性等の性能が優れる点で、人工的に合成されたアロフェン及びイモゴライトが好ましい。
(A)成分の形状としては、例えば、球状(粒状)、針状(繊維状)及び板状が挙げられる。アロフェンは球状、イモゴライト及びハロイサイトは針状を有する傾向にある。
(A)成分の形状が球状である場合、平均直径は1nm〜1μmが好ましい。平均直径を1nm以上とすることにより、本成形体における(A)成分の分散性を向上できる傾向にある。また、平均直径を1μm以下とすることにより、本成形体における(A)成分の分散性を向上できる傾向にある。平均直径の上限値は100nm以下がより好ましく、50nm以下が更に好ましい。
(A)成分の形状が針状である場合、平均径が0.5〜100nmで、平均長さが5〜200nmであるものが好ましい。平均径を0.5nm以上とすることにより、本成形体における(A)成分の分散性を向上できる傾向にある。また、平均径を100nm以下とすることにより、本成形体における(A)成分の分散性を向上できる傾向にある。平均径の上限値は20nm以下がより好ましく、5nm以下が更に好ましい。また、平均長さを5nm以上とすることにより、本成形体の耐傷付き性及び帯電防止性を向上できる傾向にある。更に、平均長さを200nm以下とすることにより、本成形体における(A)成分の分散性を向上できる傾向にある。平均長さの下限値は10nm以上がより好ましい。また、平均長さの上限値は100nm以下がより好ましく、50nm以下が更に好ましい。
本発明において、球状の(A)成分の平均直径は、(A)成分を脱イオン水に分散させた水分散液を使用してレーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定した、50%体積平均粒子径として求めた値である。また、針状の(A)成分の平均径及び平均長さは、電子顕微鏡像の画像解析によって求めた値である。尚、上記の水分散液は、受光器の感度に収まるように濃度を調整したものを使用した。
アロフェン、イモゴライト又はハロイサイトを合成する方法としては、例えば、オルト珪酸ナトリウムと塩化アルミニウムを反応させる方法が挙げられる。この反応は、例えば、水溶液の状態で、弱酸性下で、必要に応じて加熱しながら行なうことができる。また、反応生成物である(A)成分を、必要に応じて、濃縮、洗浄及び乾燥することができる。例えば、反応後の水溶液を弱アルカリ性にして、反応生成物を沈降させ、上澄み液を分離して(A)成分を得ることができる。また、反応後の水溶液を凍結乾燥して(A)成分の固形物として取り出すこともできる。
上記の方法において、本重合体組成物の製造工程での安定性並びに本成形体の透明性及び物性が良好である点で、反応生成物を濃縮、洗浄及び乾燥せずに、反応後の弱酸性水溶液のままで、(A)成分として用いることが好ましい。
上記の合成方法で得られる反応生成物がイモゴライト又はハロイサイトであることを確認する方法としては、例えば、X線回折、透過型電子顕微鏡(TEM)又は赤外吸収スペクトル(IR)の測定による方法が挙げられる。
X線回折の測定による方法では、回折角(2θ)6°、11°、16°付近に、イモゴラト特有のピークを確認することができる。また、回折角(2θ)12°、20°、25°にハロイサイト特有のピークを確認することができる。
TEMの観察による方法では、アロフェンの場合には直径約5nmの粒子が凝集した形態を確認することができる。また、イモゴライトの場合には繊維が凝集した形態を確認することができる。更に、ハロイサイトの場合には繊維が凝集した形態により確認することができる。
IRの測定による方法では、Si−O−Al結合に由来する900〜1,000cm-1付近の吸収を確認することができる。
イモゴライト及びハロイサイトは構成成分及び形状が同等であるが、分子構造だけが異なる。即ち、イモゴライトが内側にSi、外側にAlが配座する筒型であるのに対して、ハロイサイトは内側にAlが、外側にSiが配座する。
本発明において、(A)成分は水等の分散媒に(A)成分を分散させた分散液として使用することができる。
分散媒として水を使用した場合、水分散液中において、(A)成分を一次凝集の状態で分散させてもよく、二次凝集した状態で分散させてもよいが、本成形体の透明性をより良好とする点で、(A)成分を一次凝集の状態で分散させるのが好ましい。
水分散液中の水としては、例えば、イオン交換水が挙げられる。
水分散液中の水の量としては、本重合体組成物を得る際の重合の安定性及び生産性が優れる点で、(A)成分100質量部に対し、10〜10,000質量部が好ましく、100〜2,000質量部がより好ましい。
<(B)成分>
本発明で使用される(B)成分は、後述する(b1)成分単位を含有する重合体である。
(B)成分は、質量平均分子量が10,000以上30,000以下であることが好ましい。質量平均分子量が10,000以上30,000以下でポリカーボネート樹脂との相容性が特に良好となる傾向にあり、本成形体の透明性に優れる傾向にある。
(B)成分中の(b1)成分単位の含有量としては、本成形体の透明性の点で、1〜100質量%が好ましい。
本発明においては(B)成分は(b1)成分単位以外に後述する(b2)成分単位を含有することができる。
本発明で使用される熱可塑性樹脂がポリカーボネート樹脂である場合、(B)成分は、(b1)成分単位及び後述する(b2)成分単位を含有することが好ましい。
(B)成分中の(b1)成分単位の含有率と(b2)成分単位の含有率は、(b1)成分単位の含有率と(b2)成分単位の合計量を100質量%としたとき、(b1)成分単位5〜50質量%及び(b2)成分単位50〜95質量%が好ましく、(b1)成分単位10〜45質量%及び(b2)成分単位55〜90質量%がより好ましい。(B)成分中の(b1)成分単位の含有量が5質量%以上で、本熱可塑性樹脂組成物において本重合体組成物の配合比率を増やしても透明性(耐水白化性)を高く保つことができる傾向にある。また、(B)成分中の(b1)成分単位が50質量%以下で、本成形体の表面硬度が優れる傾向にある。一方、(b2)成分単位が50質量%以上で、本成形体の表面硬度が優れる傾向にある。
本発明においては、(B)成分中には、必要に応じて(b1)成分単位及び(b2)成分単位以外の、その他の単量体単位を含有することができる。
その他の単量体単位を構成するその他の単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体;ブタジエン、イソプレン、ジメチルブタジエン等のジエン系単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル系単量体;酢酸ビニル、酪酸ビニル等のカルボン酸ビニル系単量体;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン系単量体、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等のモノカルボン酸及びジカルボン酸等のエチレン系不飽和カルボン酸単量体、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル単量体、マレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−メチルマレイミド等のマレイミド単量体並びにジビニルベンゼン、1,3−ブチレンジメタクリレート等の架橋剤が挙げられる。これらの単量体は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
(B)成分を得る方法としては、例えば、(A)成分の存在下で原料(b)を重合することにより得る方法が挙げられる。
本発明においては、必要に応じて、原料(b)中にアルキルメルカプタン等の連鎖移動剤を添加して(B)成分の分子量を調整することができる。
原料(b)の重合方法としては、例えば、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法及び塊状重合法が挙げられる。これらの中で、(B)成分の形状や取扱い性の点で塊状重合法及び懸濁重合法が好ましく、懸濁重合法がより好ましい。
原料(b)の重合には、公知の乳化剤、分散剤及び重合開始剤を用いることができる。
<(b1)成分>
本発明で使用される(b1)成分は、(B)成分を構成する単量体単位の1つを形成するための原料成分で、エステル部分に芳香族基を有する(メタ)アクリレートである。
(b1)成分としては、例えば、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート及びナフチル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、本熱可塑性樹脂組成物の透明性が良好である点で、フェニルメタクリレート及びベンジルメタクリレートが好ましく、フェニルメタクリレートがより好ましい。
尚、本発明において(メタ)アクリレートは、アクリレート及びメタクリレートから選ばれる少なくとも1種を意味する。
<(b2)成分>
本発明で使用される(b2)成分は、(B)成分を構成する単量体単位の1つを形成するための原料成分である。
(b2)成分としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(b1)成分以外の(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、メチルメタクリレートが好ましい。(B)成分中のメチルメタクリレート単位はポリカーボネート樹脂との相容性に優れ、本熱可塑性樹脂組成物の表面硬度を向上できる傾向にあり、後述する熱可塑性樹脂としてポリカーボネート樹脂を使用する場合に好ましい。また、熱可塑性樹脂としてポリカーボネート樹脂を使用する場合には、(B)成分が(b1)成分単位としてフェニルメタクリレート単位及びベンジルメタクリレート単位から選ばれる少なくとも1種を有し、(b2)成分単位としてメチルメタクリレート単位を有するものが好ましい。
<リン酸系化合物>
リン酸系化合物は本重合体組成物中に必要に応じて含有される成分である。リン酸系化合物は本成形体中における(A)成分の分散性を良好とすることができる傾向にある。(A)成分としてアロフェン、イモゴライト又はハロイサイトを使用する場合には、本重合体組成物中にリン酸系化合物を含有させることが(A)成分の分散性の点で好ましい。
リン酸系化合物としては、例えば、リン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩等のリン酸塩及び有機ヒドロキシ化合物とリン酸から得られるリン酸モノエステル又はリン酸ジエステル等のリン酸エステルが挙げられる。
上記のリン酸エステルの合成に用いる有機ヒドロキシ化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のビニル基含有アルコール並びにプロパノール、ブタノール、ペンタノール、シクロペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ヘプタノール、シクロヘプタノール、オクタノール、シクロオクタノール、ノナノール、デカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ヘプタデカノール、メトキシエタノール、トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロプロパノール、フェノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール及びトリエチレングリコールが挙げられる。
これらの中で、本成形体の透明性及び表面硬度が優れる点で、ビニル基含有アルコールが好ましい。
ビニル基含有アルコールを用いて得られるリン酸エステルとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとリン酸から得られるモノエステル又はジエステル及びポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとリン酸から得られるモノエステル又はジエステルが挙げられる。
リン酸系化合物の市販品としては、例えば、ホスマーM、ホスマーPE、ホスマーP(以上、ユニケミカル(株)製);JPA−514、JPA−514M(以上、城北化学工業(株)製);ライトエステルP−1M、ライトアクリレートP−1A(以上、共栄社化学(株)製);MR200(大八化学工業(株)製);カヤマー(日本化薬(株)製);及びエチレングリコール・メタクリレート・ホスフェート(アルドリッチ社製)が挙げられる。これらの市販品は、モノエステルとジエステルとの混合物の場合もあり、不純物として、ビニル基を含有しない成分が含まれている場合もあるが、リン酸系化合物としてそのまま用いることができる。これらは単独で又は2種以上を併せて使用できる。
<本重合体組成物>
本重合体組成物は(A)成分及び(B)成分更には必要に応じてリン酸系化合物を含有するものである。
本重合体組成物中の(A)成分の含有量は、(B)成分100質量部に対し、0.00001〜100質量部が好ましい。(A)成分の使用量が0.00001質量部以上で、本成形体の耐傷付き性及び帯電防止性が向上する傾向にある。また、(A)成分の含有量が100質量部以下で本重合体組成物の成形加工性が向上する傾向にある。(A)成分の含有量の下限値は0.001質量部以上がより好ましく、0.01質量部以上が更に好ましく、0.05質量部以上が特に好ましい。また、(A)成分の含有量の上限値は50質量部以下がより好ましく、30質量部以下が更に好ましく、20質量部以下が特に好ましい。
本重合体組成物中のリン酸系化合物の含有量は、(A)成分100質量部に対して1〜10,000質量部が好ましい。リン酸系化合物の添加量が1質量部以上で本成形体おける(A)成分の分散性が向上する傾向にある。また、リン酸系化合物の添加量が10,000質量部以下で本成形体の耐水性及び耐候性に優れる傾向にある。リン酸系化合物の添加量の下限値は2質量部以上がより好ましく、5質量部以上が更に好ましい。また、リン酸系化合物の添加量の上限値は1,000質量部以下がより好ましく、500質量部以下が更に好ましく、200質量部以下が特に好ましい。
本重合体組成物には、必要に応じて、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、可塑剤、顔料等の各種添加剤及びガラス繊維、炭素繊維、タルク、炭酸カルシウム、ケナフ、バクテリアセルロース等のフィラーを含有させることができる。
本重合体組成物は、例えば、(A)成分を含む水分散液中で原料(b)を重合することにより得ることができる。
水分散液中での原料(b)の重合方法としては、例えば、懸濁重合法、ミニエマルション重合法及び乳化重合法が挙げられる。上記の重合方法の具体例としては、(A)成分の水分散液に原料(b)を添加し、次いで懸濁重合する方法が挙げられる。
原料(b)の重合に際しては、必要に応じて水分散液及び原料(b)から選ばれる少なくとも一種にラジカル重合開始剤を添加することができる。
ラジカル重合開始剤としては、例えば、t−ブチルハイドロパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジt−ブチルパーオキサイド、ジt−アミルパーオキサイド、ジt−ヘキシルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジイソプロピルパーオキシカーボネート等の有機過酸化物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;及びアゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を併せて使用できる。
上記のラジカル重合開始剤の中で、温水や加熱オイルで制御可能な温度範囲でラジカルを発生させることができる点で、t−ブチルハイドロパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、アゾビスイソブチロニトリル及びアゾビス2,4−ジメチルバレロニトリルが好ましい。また、上記の有機過酸化物や過硫酸塩は還元剤と組み合わせてレドックス系重合開始剤として用いることもできる。
上記の重合温度は、例えば、65〜100℃で行なうことができる。また、重合時間は、例えば、1〜10時間で行なうことができる。重合の雰囲気は、必要に応じて窒素雰囲気下で行なうことができる。
上記の重合においては、重合を2段階以上の多段階で行なうことができ、例えば、所定温度で所定時間の重合を行なった後、より高い温度で保持して重合を完了させることもできる。
原料(b)の重合においては、必要に応じて連鎖移動剤、乳化剤、分散剤、分散助剤等の重合用添加剤を用いることができる。
連鎖移動剤としては、例えば、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン及びα−メチルスチレンダイマーが挙げられる。
乳化剤としては、例えば、公知のアニオン系乳化剤、カチオン系乳化剤及びノニオン系乳化剤が挙げられる。
原料(b)の分散重合法として乳化重合を用いた場合、ラテックスから凝固等の凝集処理により本重合体組成物を粉体として回収することができる。
分散剤としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸のアルカリ金属塩、(メタ)アクリル酸のアルカリ金属塩と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体、(メタ)アクリル酸スルホアルキルのアルカリ金属塩と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体、ポリスチレンスルホン酸のアルカリ金属塩、スチレンスルホン酸のアルカリ金属塩と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体、ケン化度70〜100%のポリビニルアルコ−ル及びメチルセルロ−スが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を併せて使用できる。これらの分散剤の中では、懸濁重合時の分散安定性が良好な(メタ)アクリル酸スルホアルキルのアルカリ金属塩と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体が好ましい。
分散助剤としては、例えば、硫酸ナトリウム及び硫酸マンガンが挙げられる。
本重合体組成物中にリン酸系化合物を含有させる方法としては、例えば、(A)成分の水分散液中にリン酸系化合物を添加する方法が挙げられる。
<熱可塑性樹脂>
本発明で使用される熱可塑性樹脂は、後述する本熱可塑性樹脂組成物の構成成分の1つである。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート等のポリ(メタ)アクリレート、メチルメタクリレート−アクリレート共重合体等の(メタ)アクリル共重合体;ポリスチレン、高耐衝撃性ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、水素添加スチレン−ブタジエン共重合体等のスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩化ビニル系樹脂;ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、環状オレフィン含有重合体等のオレフィン樹脂;ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート等の脂肪族ポリエステル樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレングリコールテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル樹脂;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)等のジヒドロキシジアリール化合物を、ホスゲン又は炭酸ジエステル化合物と反応させて得られる重合体等のポリカーボネート樹脂;ポリオキシメチレン;ポリフェニレンエーテル;ポリエーテルケトン及びポリエーテルエーテルケトンが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を併せて使用できる。
これらの中で、本成形体の耐衝撃性及び透明性が優れる点で、ポリカーボネート樹脂が好ましい。
<本熱可塑性樹脂組成物>
本熱可塑性樹脂組成物は本重合体組成物及び熱可塑性樹脂を含有するものである。
本熱可塑性樹脂組成物中の本重合体組成物と熱可塑性樹脂の混合割合としては、本熱可塑性樹脂組成物の帯電防止性及び耐傷付き性が優れる点で、本重合体組成物0.1質量%以上70質量%以下及び熱可塑性樹脂30質量%以上99.9質量%以下が好ましく、重合体組成物1質量%以上40質量%以下及び熱可塑性樹脂60質量%以上99質量%以下がより好ましい。
本発明においては、本熱可塑性樹脂組成物中に必要に応じて酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、可塑剤、顔料等の各種添加剤及びガラス繊維、炭素繊維、タルク、炭酸カルシウム、ケナフ、バクテリアセルロース等のフィラーを含有することができる。
本重合体組成物に熱可塑性樹脂並びに必要に応じて各種添加剤及びフィラーから選ばれる少なくとも1種をブレンドする場合のブレンド方法としては、例えば、バッチ式のニーダー及び単軸又は多軸の押出機等を用いた溶融ブレンド法が挙げられる。
<本成形体>
本成形体は本熱可塑性樹脂組成物を使用して得られるものである。
本成形体は、必要に応じて発泡体とすることができる。
発泡体の製造方法としては、例えば、本熱可塑性樹脂組成物から得られる成形物を炭酸ガス雰囲気で高温高圧の雰囲気下に載置した後に常温常圧に戻す方法が挙げられる。
本熱可塑性樹脂組成物から本成形体を得るための成形方法としては、例えば、押出成形法、射出成形法、プレス成形法、インフレーション成形法及びカレンダ成形法が挙げられる。
以下に、本発明を実施例により説明する。以下、「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。また、各種評価を以下に示す方法で実施した。
<(A)成分の同定>
(1)X線回折
X線回折装置((株)リガク製、商品名:RINT2500)を用いて、(A)成分の粉体について、以下の測定条件で回折角(2θ)5〜85°の範囲における回折パターンを測定し、(A)成分に特有の吸収を示すピークにより化合物の種類を同定した。
(測定条件)
加速電圧;40kV
加速電流;300mA
照射線の種類;Cu−Kα線
(2)TEM
透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製、商品名:JEM-1200EXII)を用いて、(A)成分の粉体について、加速電圧100KV及び倍率10万倍で観察し、形状により化合物の種類を同定した。
(3)IR
フーリエ変換赤外分光光度計((株)島津製作所製、商品名:FTIR−8700)を用いて、(A)成分の粉体を使用してKBr法で調整した試料について、透過法により400〜4,000cm−1の範囲における吸収スペクトルを測定し、(A)成分に特有の吸収を示すピークにより化合物の種類を同定した。
<(A)成分のBET比表面積>
比表面積測定装置(ユアサアイオニクス(株)製、商品名:モノソーブ)を用いて、(A)成分の試料を120℃で2時間脱気した後に(A)成分の比表面積を測定した。
<(B)成分の評価>
(1)質量平均分子量
(B)成分の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを使用し、以下の条件で測定して得られた値である。
装置:東ソー(株)製HLC−8220GPC
カラム:東ソー(株)製TSKGel SuperHZM−M(内径4.6mm×長さ150mm)4本
溶離液:THF(テトラヒドロフラン)
流速:0.35ml/分
温度:40℃
試料濃度:0.1%
試料注入量:10μl
検出器:RI(UV)
<成形体の評価>
(1)透明性
成形体を目視で観察し、次の基準で判定した。
○:成形体を通して成形体の裏側にある物を認識できた。
×:成形体を通して成形体の裏側にある物を認識できなかった。
(2)帯電防止性
成形体の表面を乾いた綿布で10回摩擦した後、成形体の表面を、平面上に載置されたタバコの灰から10mmの距離となるように近づけた。その時の成形体の表面への灰の付着性及び飛散性について観察し、帯電防止性を評価した。尚、評価は23℃及び50%RHの環境下で行なった。また、評価には23℃及び50%RHの環境下に24時間放置した成形体を用いた。
○:成形体の表面に灰が付着又は飛散せず、帯電防止性は良好。
×:成形体の表面に灰が付着又は飛散し、帯電防止性不良。
(3)耐傷付き性
JIS K−5400に準拠して、成形体の表面の耐傷付き性を評価した。
(4)耐衝撃性
JIS−K7111:1996に準拠して23℃及び50RHで測定し、試験片の耐衝撃性を評価した。尚、試験片の厚みを3mmとし、ノッチを入れた試験片を用いて試験を行った。試験片の成形方法を以下に記す。
<(A)成分の同定>
(1)X線回折
X線回折装置((株)リガク製、商品名:RINT2500)を用いて、(A)成分の粉体について、以下の測定条件で回折角(2θ)5〜85°の範囲における回折パターンを測定し、(A)成分に特有の吸収を示すピークにより化合物の種類を同定した。
(測定条件)
加速電圧;40kV
加速電流;300mA
照射線の種類;Cu−Kα線
(2)TEM
透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製、商品名:JEM-1200EXII)を用いて、(A)成分の粉体について、加速電圧100KV及び倍率10万倍で観察し、形状により化合物の種類を同定した。
(3)IR
フーリエ変換赤外分光光度計((株)島津製作所製、商品名:FTIR−8700)を用いて、(A)成分の粉体を使用してKBr法で調整した試料について、透過法により400〜4,000cm−1の範囲における吸収スペクトルを測定し、(A)成分に特有の吸収を示すピークにより化合物の種類を同定した。
<(A)成分のBET比表面積>
比表面積測定装置(ユアサアイオニクス(株)製、商品名:モノソーブ)を用いて、(A)成分の試料を120℃で2時間脱気した後に(A)成分の比表面積を測定した。
<(B)成分の評価>
(1)質量平均分子量
(B)成分の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを使用し、以下の条件で測定して得られた値である。
装置:東ソー(株)製HLC−8220GPC
カラム:東ソー(株)製TSKGel SuperHZM−M(内径4.6mm×長さ150mm)4本
溶離液:THF(テトラヒドロフラン)
流速:0.35ml/分
温度:40℃
試料濃度:0.1%
試料注入量:10μl
検出器:RI(UV)
<成形体の評価>
(1)透明性
成形体を目視で観察し、次の基準で判定した。
○:成形体を通して成形体の裏側にある物を認識できた。
×:成形体を通して成形体の裏側にある物を認識できなかった。
(2)帯電防止性
成形体の表面を乾いた綿布で10回摩擦した後、成形体の表面を、平面上に載置されたタバコの灰から10mmの距離となるように近づけた。その時の成形体の表面への灰の付着性及び飛散性について観察し、帯電防止性を評価した。尚、評価は23℃及び50%RHの環境下で行なった。また、評価には23℃及び50%RHの環境下に24時間放置した成形体を用いた。
○:成形体の表面に灰が付着又は飛散せず、帯電防止性は良好。
×:成形体の表面に灰が付着又は飛散し、帯電防止性不良。
(3)耐傷付き性
JIS K−5400に準拠して、成形体の表面の耐傷付き性を評価した。
(4)耐衝撃性
JIS−K7111:1996に準拠して23℃及び50RHで測定し、試験片の耐衝撃性を評価した。尚、試験片の厚みを3mmとし、ノッチを入れた試験片を用いて試験を行った。試験片の成形方法を以下に記す。
得られた溶融混練物を、プレス成形用の金型(雄型と雌型で構成され、キャビティー(形状:直方体、寸法(mm):幅15×長さ70×厚み3))に合うように量を調節し、300℃に加熱したプレス盤(王子機械(株)製油圧プレス機、最大荷重37トン、最高使用圧力210kg/cm2)を使用して加圧した。その後、溶融混練物が充填された金型を冷却し、試験片を取り出した。
[製造例1]イモゴライト水分散液の製造
金属チタン製の撹拌機付き反応容器(内容積60L)にシリコン濃度0.01モル/Lのオルト珪酸ナトリウム溶液8.6Lを入れた。次にアルミニウム濃度0.01モル/Lの塩化アルミニウム溶液21Lを入れ、30分撹拌した。
次いで、得られた溶液に0.01モル/LのNaOH溶液18.5Lを1時間かけて添加し、サスペンションを得た。得られたサスペンションのpHは4.5(25℃)であった。
次いで、サスペンションを95℃に昇温させて24時間保持した後、24時間かけて室温まで冷却し、反応サスペンションを得た。得られた反応サスペンションのpHは4.2、固形分は0.04%で、極めて透明度の高いものであった。得られた反応サスペンションは、以下の評価によりイモゴライト水分散液であることを確認した。
反応サスペンションに1%アンモニア水溶液を撹拌しながら添加して、反応サスペンションをpH9.0に調整した後、撹拌を停止して、8時間静置し、沈殿物を得た。得られた沈殿物を分別し、沈殿物を吸引式濾過器で通水濾過して、濾過液の導電度が100マイクロジーメンス以下になるまで、水洗を行ない、やや白色を帯びたペーストを得た。
得られたペーストを−40℃の凍結乾燥機で凍結した後、28時間かけて室温に戻してペーストを乾燥させて粉体を得た。得られた粉体について、X線回折、TEM及びIRの測定を行なった。X線回折パターンにおいて、回折角(2θ)6°、11°、16°付近にブロードなピークが確認された。また、TEMの観察において、粉体は繊維状であることを確認した。更に、IRの測定において、950〜1,000cm−1付近に、Si−O−Al結合に由来するイモゴライト特有のダブレット吸収を確認した。
上記評価結果より、粉体がイモゴライトであることを確認した。また、イモゴライトのBET比表面積は325m2/gであった。
実施例で使用される略称は以下の化合物を示す。
ホスマーM:リン酸系化合物(ユニケミカル(株)製アシッドホスホオキシエチルメタクリル酸エステル、商品名)
PhMA:フェニルメタクリレート
MMA:メチルメタクリレート
P(PhMA/MMA):(フェニルメタクリレート/メチルメタクリレート)共重合体
PMMA:ポリメチルメタクリレート
PC樹脂:ポリカーボネート樹脂(帝人化成(株)製、商品名:パンライトL1225)
MOA−229:(竹本油脂(株)製アルキルベンゼンスルホン酸ホスホニウム塩、商品名)
[実施例1]
温度計、冷却管及び攪拌装置を備えた反応容器に、製造例1で得たイモゴライト水分散液1,000部(固形分0.4部)を入れ、攪拌を開始した。
ホスマーM:リン酸系化合物(ユニケミカル(株)製アシッドホスホオキシエチルメタクリル酸エステル、商品名)
PhMA:フェニルメタクリレート
MMA:メチルメタクリレート
P(PhMA/MMA):(フェニルメタクリレート/メチルメタクリレート)共重合体
PMMA:ポリメチルメタクリレート
PC樹脂:ポリカーボネート樹脂(帝人化成(株)製、商品名:パンライトL1225)
MOA−229:(竹本油脂(株)製アルキルベンゼンスルホン酸ホスホニウム塩、商品名)
[実施例1]
温度計、冷却管及び攪拌装置を備えた反応容器に、製造例1で得たイモゴライト水分散液1,000部(固形分0.4部)を入れ、攪拌を開始した。
次いで、1%アンモニア水溶液10部(固形分0.1部)及び塩化カルシウム0.1部を加えて30分攪拌し、更にリン酸系化合物としてホスマーM(ユニケミカル(株)製アシッドホスホオキシエチルメタクリル酸エステル、商品名)0.03部を加えて30分攪拌した。次いで、フェニルメタクリレート80部、メチルメタクリレート20部、オクチルメルカプタン2部及びアゾビスイソブチロニトリル0.1部を仕込んだ。
その後、窒素気流下で内容物を80℃まで昇温して2時間攪拌した後、更に90℃まで昇温して30分攪拌し、粒子状の重合体組成物(1)の分散液を得た。重合体組成物(1)の分散液を冷却した後、重合体組成物(1)を濾取し、乾燥して重合体組成物(1)を得た。
得られた重合体組成物(1)及びPC樹脂を表1に示す組成で配合して得られた熱可塑性樹脂組成物を、混練射出成形機(Custom Scientific Instruments社製、商品名:CS−183)を用いて、バレル温度270℃で溶融混練し、溶融混練物を得た。
得られた溶融混練物を、プレス成形用の金型(雄型と雌型で構成され、キャビティー(形状:直方体、寸法(mm):幅15×長さ70×厚み3))に合うように量を調節し、300℃に加熱したプレス盤(王子機械(株)製油圧プレス機、最大荷重37トン、最高使用圧力210kg/cm2)を使用して加圧した。
次いで、溶融混練物が充填された金型を20℃に冷却した後、金型から成形体を取り外した。得られた成形体を用いて耐衝撃性を評価した。評価結果を表1に示す。
前記で得られた溶融混練物を使用して射出成形し、寸法20×10×2(mm)の成形体を得て、透明性、耐傷付き性及び耐電防止性を評価した。評価結果を表1に示す。
[実施例2]
熱可塑性樹脂組成物の組成を表1に示すものとする以外は実施例1と同様にして溶融混練物及び成形体を得た。評価結果を表1に示す。
熱可塑性樹脂組成物の組成を表1に示すものとする以外は実施例1と同様にして溶融混練物及び成形体を得た。評価結果を表1に示す。
[比較例1]
PhMA80部、MMA20部の代わりにMMA100部を用いる以外は実施例1と同様にして重合体組成物(2)を得た後、熱可塑性樹脂組成物の組成を表1に示すものとする以外は実施例1と同様にして溶融混練物及び成形体を得た。評価結果を表1に示す。
比較例1では重合体組成物の原料として(B)成分の代わりに炭素数1の脂肪族アルキル基を有する単量体単位を有するPMMAを使用しているので、得られた成形体は透明性、耐傷付き性及び帯電防止性に劣っていた。
[比較例2]
イモゴライト水分散液1,000部の代わりに水1,000部を用いる以外は実施例1と同様にして重合体組成物(3)を得た後、熱可塑性樹脂組成物の組成を表1に示すものとする以外は実施例1と同様にして溶融混練物及び成形体を得た。評価結果を表1に示す。
比較例2では重合体組成物中に(A)成分を含有していないので、得られた成形体は耐傷付き性及び帯電防止性に劣っていた。
[比較例3]
イモゴライト水分散液1,000部の代わりに水1,000部を用いる以外は実施例2と同様にして重合体組成物(3)を得た後、熱可塑性樹脂組成物の組成を表1に示すものとする以外は実施例1と同様にして溶融混練物及び成形体を得た。評価結果を表1に示す。
比較例3では重合体組成物中に(A)成分を含有していないので、得られた成形体は耐傷付き性及び帯電防止性に劣っていた。
[比較例4]
重合体組成物(3)の配合比率を増やし、熱可塑性樹脂組成物の組成を表1に示すものとする以外は比較例3と同様にして溶融混練物及び成形体を得た。評価結果を表1に示す。
比較例4では、(A)成分を含有しない重合体組成物の配合比率を増やすことにより成形体の耐傷付き性は優れていたが、耐衝撃性に劣っていた。
[比較例5]
重合体組成物(1)を使用しない以外は実施例1と同様にして溶融混練物及び成形体を得た。評価結果を表1に示す。
比較例5では熱可塑性樹脂に本重合体組成物を添加していないので、得られた成形体は耐傷付き性及び帯電防止性に劣っていた。
[比較例6]
重合体組成物(1)の代わりにMOA−229を使用し、熱可塑性樹脂組成物の組成を表1に示すものとする以外は実施例1と同様にして溶融混練物及び成形体を得た。評価結果を表1に示す。
従来の帯電防止剤として使用されているスルホン酸塩を含有する熱可塑性樹脂組成物を使用して得られる比較例6の成形体は透明性及び耐傷付き性に劣っていた。
[比較例7]
MOA−229の配合比率を減らし、熱可塑性樹脂組成物の組成を表1に示すものとする以外は比較例6と同様にして溶融混練物及び成形体を得た。評価結果を表1に示す。
スルホン酸塩の配合比率を減らした比較例7の成形体は耐衝撃性に優れていたが、耐帯電防止性に劣っていた。
Claims (15)
- アルミニウム系無機化合物(A)及び以下に示すアクリル重合体(B)を含有する重合体組成物。
アクリル重合体(B):芳香族(メタ)アクリレート(b1)単位を含有する重合体 - 重合体組成物中に更にリン酸系化合物を含有する請求項1に記載の重合体組成物。
- アクリル重合体(B)が、芳香族(メタ)アクリレート(b1)を含有する単量体又は単量体混合物(b)をアルミニウム系無機化合物(A)の存在下で重合して得たときの重合体である請求項1又は2に記載の重合体組成物。
- アルミニウム系無機化合物(A)が、アロフェン、イモゴライト及びハロイサイトから選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載の重合体組成物。
- アルミニウム系無機化合物(A)の水分散液に芳香族(メタ)アクリレート(b1)を含有する単量体又は単量体混合物(b)及びラジカル重合開始剤を添加して懸濁重合によりアクリル重合体(B)を得る請求項3に記載の重合体樹脂組成物。
- アルミニウム系無機化合物(A)の水分散液が、アロフェン、イモゴライト及びハロイサイトから選ばれる少なくとも1種を含む水分散液中にリン酸系化合物を添加したものである請求項5に記載の重合体組成物。
- リン酸系化合物が、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとリン酸から得られるモノエステル又はジエステル及びポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとリン酸から得られるモノエステル又はジエステルから選ばれる少なくとも1種である請求項2又は6に記載の重合体組成物。
- アクリル重合体(B)が、芳香族(メタ)アクリレート(b1)単位及びアルキル(メタ)アクリレート(b2)単位を含有する請求項1〜7のいずれかに記載の重合体組成物。
- 芳香族(メタ)アクリレート(b1)単位がフェニルメタクリレート単位及びベンジルメタクリレート単位から選ばれる少なくとも1種であり、アルキル(メタ)アクリレート(b2)単位がメチルメタクリレート単位である請求項8に記載の重合体組成物。
- アクリル重合体(B)が、芳香族(メタ)アクリレート(b1)単位10〜45質量%及びアルキル(メタ)アクリレート(b2)単位55〜90質量%を含有する請求項8又は9に記載の重合体組成物。
- アルミニウム系無機化合物(A)の含有量が、アクリル重合体(B)100質量部に対して0.05質量部以上20質量部以下である請求項1〜10のいずれかに記載の重合体組成物。
- 請求項1〜11のいずれかに記載の重合体組成物及び熱可塑性樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物。
- 重合体組成物1質量%以上40質量%以下及び熱可塑性樹脂60質量%以上99質量%以下を含有する請求項12に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂がポリカーボネート樹脂である請求項12又は13に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項12〜14のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を使用して得られる成形体。
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