JP2015227417A - 重合体組成物及び熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】機械的強度に優れ、且つ表面硬度及び帯電防止性に優れた成形体を得ることができる重合体組成物及び熱可塑性樹脂組成物並びに得られる成形体【解決手段】アルミニウム系無機化合物(A)及び以下に示すアクリル重合体(B)を含有する重合体組成物、重合体組成物及び熱可塑性樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物及び熱可塑性樹脂組成物を使用して得られる成形体。アクリル重合体(B):炭素数4〜20の脂肪族アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(b1)単位を含有する重合体【選択図】 なし
Description
本発明は、重合体組成物及び熱可塑性樹脂組成物に関する。
ポリオレフィン樹脂は機械的性質、熱的性質、成形加工性、外観、耐久性等の特性に優れる点を生かして、自動車、家電、電子機器、建築物等の部品用材料として広く活用されている。一方、ポリオレフィン樹脂は分子構造として極性基を含有しないため、例えばアクリル樹脂と比較すると分子間相互作用に乏しく、電気が流れ難い。
従来、熱可塑性樹脂は成形品の表面が傷付き易く、静電気が発生し易いことから、これらの欠点を改善するための各種添加剤が開発されている。
例えば、ポリオレフィン樹脂の耐傷付き性を改良する方法として、ポリオレフィン樹脂に脂肪酸アミド化合物を添加して耐傷付き性を改良する方法が挙げられる。しかしながら、この方法では帯電防止性は改良されない。
また、ポリオレフィン樹脂にポリオキシエチレン含有重合体を添加して帯電防止性を改良する方法が挙げられる。しかしながら、この方法では耐傷付き性は改良されない。
更に、ポリオレフィン樹脂に上記の脂肪酸アミド化合物及びポリオキシエチレン含有重合体を添加した場合、どちらか一方の効果しか発現されない。また、脂肪酸アミド化合物の添加の場合には添加効果の持続性に限界があり、ポリオキシエチレン含有重合体の場合には添加効果が成形条件に依存することから、高極性の添加剤成分を低極性の樹脂成形体表面近傍に存在させて表面へ徐々に析出させるかスキン層を形成させる必要がある。
熱可塑性樹脂の帯電防止性を改善する方法として、例えば特許文献1には、アルミニウム系無機化合物とアクリル系樹脂を複合化する方法が提案されている。しかしながら、この方法ではポリオレフィン系樹脂の帯電防止性の改善効果としては充分ではなかった。
本発明は、機械的強度に優れ、且つ表面硬度及び帯電防止性に優れた成形体を得ることができる重合体組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、機械的強度に優れ、且つ表面硬度及び帯電防止性に優れた成形体を得ることができる熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。
更に、本発明は熱可塑性樹脂組成物を使用して得られる、機械的強度に優れ、且つ表面硬度及び帯電防止性に優れた成形体を提供することを目的とする。
前記課題は、以下の[1]〜[5]によって解決される。
[1] アルミニウム系無機化合物(A)(以下、「(A)成分」という)及び以下に示すアクリル重合体(B)(以下、「(B)成分」という)を含有する重合体組成物(以下、「本重合体組成物」という)。
[1] アルミニウム系無機化合物(A)(以下、「(A)成分」という)及び以下に示すアクリル重合体(B)(以下、「(B)成分」という)を含有する重合体組成物(以下、「本重合体組成物」という)。
アクリル重合体(B):炭素数4〜20の脂肪族アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(b1)単位を含有する重合体
[2] アルミニウム系無機化合物(A)の存在下で炭素数4〜20の脂肪族アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(b1)(以下、「(b1)成分」という)を含有する単量体又は単量体混合物を重合して得られる[1]に記載の重合体組成物。
[3] [1]に記載の重合体組成物及び熱可塑性樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物。
[4] 熱可塑性樹脂がポリオレフィンである[3]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[5] [3]又は[4]の熱可塑性樹脂組成物を使用して得られる成形体(以下、「本成形体」という)。
[2] アルミニウム系無機化合物(A)の存在下で炭素数4〜20の脂肪族アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(b1)(以下、「(b1)成分」という)を含有する単量体又は単量体混合物を重合して得られる[1]に記載の重合体組成物。
[3] [1]に記載の重合体組成物及び熱可塑性樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物。
[4] 熱可塑性樹脂がポリオレフィンである[3]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[5] [3]又は[4]の熱可塑性樹脂組成物を使用して得られる成形体(以下、「本成形体」という)。
本発明の重合体組成物及び熱可塑性樹脂組成物は成形外観、機械的強度等の本来の性質を損なうことなく、表面硬度及び帯電防止性に優れた成形体を得ることができ、各種樹脂成形体用材料、塗料用樹脂、トナー用バインダー樹脂等の各種樹脂原料として用いることができる。また、得られる本成形体は、自動車、家電、OA機器の部品等の用途に好適である。
<(A)成分>
本発明で使用される(A)成分は後述する本重合体組成物の構成成分の1つである。
本発明で使用される(A)成分は後述する本重合体組成物の構成成分の1つである。
(A)成分としては、例えば、アロフェン、イモゴライト及びハロイサイトが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を併せて使用できる。
アロフェン、イモゴライト及びハロイサイトは火山灰土壌中に風化生成物として得られる天然物又は合成されたものを用いることができる。これらの中で、得られる成形体の外観、表面硬度、帯電防止性、結晶性等の性能が優れる点で、人工的に合成されたアロフェン及びイモゴライトが好ましい。
(A)成分の形状としては、例えば、球状(粒状)、針状(繊維状)及び板状が挙げられる。アロフェンは球状、イモゴライト及びハロイサイトは針状を有する傾向にある。
(A)成分の形状が球状である場合、平均口径は1nm〜1μmが好ましい。平均口径を1nm以上とすることにより、本成形体における(A)成分の分散性を向上できる傾向にある。また、平均口径を1μm以下とすることにより、本成形体における(A)成分の分散性を向上できる傾向にある。平均口径の上限値は100nm以下がより好ましく、50nm以下が更に好ましい。
(A)成分の形状が針状である場合、平均口径が0.5〜100nmで、平均長さが5〜200nmであるものが好ましい。平均口径を0.5nm以上とすることにより、本成形体における(A)成分の分散性を向上できる傾向にある。また、平均口径を100nm以下とすることにより、本成形体における(A)成分の分散性を向上できる傾向にある。平均口径の上限値は20nm以下がより好ましく、5nm以下が更に好ましい。また、平均長さを5nm以上とすることにより、本成形体の耐傷付き性及び帯電防止性を向上できる傾向にある。更に、平均長さを200nm以下とすることにより、本成形体における(A)成分の分散性を向上できる傾向にある。平均長さの下限値は10nm以上がより好ましい。また、平均長さの上限値は100nm以下がより好ましく、50nm以下が更に好ましい。
本発明において、球状の(A)成分の平均口径は、(A)成分を脱イオン水に分散させた水分散液を使用し、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定した、50%体積平均粒子径として求めた値である。また、針状の(A)成分の平均口径及び平均長さは、電子顕微鏡像の画像解析によって求めた値である。尚、上記の水分散液は、受光器の感度に収まるように濃度を調整したものを使用した。
アロフェン、イモゴライト又はハロイサイトを合成する方法としては、例えば、オルト珪酸ナトリウムと塩化アルミニウムを反応させる方法が挙げられる。この反応は、例えば、水溶液の状態で、弱酸性下で、必要に応じて加熱しながら行なうことができる。また、反応生成物である(A)成分を、必要に応じて、濃縮、洗浄及び乾燥することができる。例えば、反応後の水溶液を弱アルカリ性にして、反応生成物を沈降させ、上澄み液を分離して(A)成分を得ることができる。また、反応後の水溶液を凍結乾燥して(A)成分の固形物として取り出すこともできる。
上記の方法において、本重合体組成物の製造工程での安定性、得られる成形体の外観及び物性が良好である点で、反応生成物を濃縮、洗浄及び乾燥せずに、反応後の弱酸性水溶液のままで、(A)成分として用いることが好ましい。
上記の合成方法で得られる反応生成物がイモゴライト又はハロイサイトであることを確認する方法としては、例えば、X線回折、透過型電子顕微鏡(TEM)又は赤外吸収スペクトル(IR)の測定による方法が挙げられる。
X線回折の測定による方法では、回折角(2θ)6°、11°、16°付近に、イモゴラト特有のピークを確認することができる。また、回折角(2θ)12°、20°、25°にハロイサイト特有のピークを確認することができる。
TEMの観察による方法では、アロフェンの場合には直径約5nmの粒子が凝集した形態を確認することができる。また、イモゴライトの場合には繊維が凝集した形態を確認することができる。更に、ハロイサイトの場合には繊維が凝集した形態により確認することができる。
IRの測定による方法では、Si−O−Al結合に由来する900〜1,000cm-1付近の吸収を確認することができる。
本発明においては、(A)成分としてアロフェン、イモゴライト又はハロイサイトを使用する場合は、本成形体における(A)成分の分散性の点で、(A)成分をリン酸系化合物(1)で処理することが好ましい。(A)成分をリン酸系化合物(1)で処理する方法としては、例えば、アロフェン、イモゴライト又はハロイサイトを含む水分散液中にリン酸系化合物(1)を添加する方法が挙げられる。
リン酸系化合物(1)としては、例えば、リン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩等のリン酸塩及び有機ヒドロキシ化合物のリン酸モノエステル又はリン酸ジエステル等のリン酸エステルが挙げられる。
上記のリン酸エステルの生成に用いる有機ヒドロキシ化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のビニル基含有アルコール並びにプロパノール、ブタノール、ペンタノール、シクロペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ヘプタノール、シクロヘプタノール、オクタノール、シクロオクタノール、ノナノール、デカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ヘプタデカノール、メトキシエタノール、トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロプロパノール、フェノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール及びトリエチレングリコールが挙げられる。
これらの中で、本成形体の外観、表面硬度及び結晶性が優れる点で、ビニル基含有アルコールが好ましい。
ビニル基含有アルコールを用いて得られるリン酸エステルとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとリン酸から得られるモノエステル又はジエステル並びにポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとリン酸から得られるモノエステル又はジエステルが挙げられる。
リン酸系化合物(1)の市販品としては、例えば、ホスマーM、ホスマーPE、ホスマーP(以上、ユニケミカル(株)製);JPA−514、JPA−514M(以上、城北化学工業(株)製);ライトエステルP−1M、ライトアクリレートP−1A(以上、共栄社化学(株)製);MR200(大八化学工業(株)製);カヤマー(日本化薬(株)製);及びエチレングリコール・メタクリレート・ホスフェート(アルドリッチ社製)が挙げられる。これらの市販品は、モノエステルとジエステルとの混合物の場合もあり、不純物として、ビニル基を含有しない成分が含まれている場合もあるが、リン酸系化合物(1)としてそのまま用いることができる。
これらは単独で又は2種以上を併せて使用できる。
本発明において、(A)成分は水等の分散媒に(A)成分を分散させた分散液として用いることができる。
分散媒として水を使用した場合、水分散液中において、(A)成分を一次粒径の状態で分散させてもよく、二次凝集した状態で分散させてもよいが、本成形体の透明性をより良好とする点で、(A)成分を一次粒径の状態で分散させるのが好ましい。
本成形体中の(A)成分の分散性を良好とするために、本分散液中にリン酸系化合物(2)を添加することができる。
リン酸系化合物(2)としては、例えば、リン酸系化合物(1)と同様のものが挙げられ、リン酸系化合物(1)と同じでも異なっていてもよい。リン酸系化合物(2)は単独で又は2種以上を併せて使用できる。
水分散液中の水としては、例えば、イオン交換水が挙げられる。
水分散液中の水の量としては、本重合体組成物を得る際の重合の安定性及び生産性が優れる点で、(A)成分100質量部に対し、10〜10,000質量部が好ましく、100〜2,000質量部がより好ましい。
リン酸系化合物(2)の添加量は、(A)成分100質量部に対して1〜10,000質量部が好ましい。リン酸系化合物(2)の添加量が1質量部以上で本成形体おける(A)成分の分散性が向上する傾向にある。また、リン酸系化合物(2)の添加量が10,000質量部以下で本成形体の耐水性及び耐候性に優れる傾向にある。リン酸系化合物(2)の添加量の下限値は2質量部以上がより好ましく、5質量部以上が更に好ましい。また、リン酸系化合物(2)の添加量の上限値は1,000質量部以下がより好ましく、500質量部以下が更に好ましく、200質量部以下が特に好ましい。
本発明においては、必要に応じて水分散液中に分散剤及び必要に応じて分散助剤を含有することができる。
分散剤としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸のアルカリ金属塩、(メタ)アクリル酸のアルカリ金属塩と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体、(メタ)アクリル酸スルホアルキルのアルカリ金属塩と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体、ポリスチレンスルホン酸のアルカリ金属塩、スチレンスルホン酸のアルカリ金属塩と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体、ケン化度70〜100%のポリビニルアルコ−ル及びメチルセルロ−スが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を併せて使用できる。これらの分散剤の中では、懸濁重合時の分散安定性が良好な(メタ)アクリル酸スルホアルキルのアルカリ金属塩と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体が好ましい。
分散助剤としては、例えば、硫酸ナトリウム及び硫酸マンガンが挙げられる。
<(B)成分>
本発明で使用される(B)成分は、後述する(b1)成分単位を含有する重合体である。
(B)成分の質量平均分子量としては、例えば、1,000〜1,000,000程度のものが挙げられる。
<(b1)成分>
本発明で使用される(b1)成分は本重合体組成物中の(B)成分を形成するための単量体で、炭素数4〜20の脂肪族アルキル基を有するビニル単量体である。
(b1)成分としては、例えば、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、エイコイシル(メタ)クリレート等の(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を併せて使用できる。これらの中で、得られる本成形体の成形外観及び表面硬度が優れる点で、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート及びトリデシル(メタ)アクリレートが好ましい。
本発明においては、(B)成分を得るための原料(以下、「原料」という)中に必要に応じて(b1)成分以外のその他の単量体を含有させることができる。
その他の単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びその塩酸塩、シアノエチル(メタ)アクリレート、シアノブチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸;2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート等のフッ素化(メタ)アクリレート;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体;アクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩素化ビニル単量体;テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン等のフッ素化オレフィン;並びに(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
尚、本発明において、「(メタ)アクリレート」及び「(メタ)アクリル」は、それぞれ「アクリレート」又は「メタクリレート」及び「アクリル」又は「メタクリル」を示す。
<本重合体組成物>
本重合体組成物は(A)成分及び(B)成分を含有する。
本重合体組成物を得るために使用される(A)成分の使用量は、(B)成分100質量部に対し、0.00001〜100質量部が好ましい。(A)成分の使用量が0.00001質量部以上で、本成形体の耐傷付き性及び帯電防止性が向上する傾向にある。また、(A)成分の使用量が100質量部以下で本重合体組成物の成形加工性が向上する傾向にある。(A)成分の使用量の下限値は0.001質量部以上がより好ましく、0.01質量部以上が更に好ましく、0.05質量部以上が特に好ましい。また、(A)成分の使用量の上限値は50質量部以下がより好ましく、30質量部以下が更に好ましく、20質量部以下が特に好ましい。
本重合体組成物には、必要に応じて、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、可塑剤、顔料等の各種添加剤及びガラス繊維、炭素繊維、タルク、炭酸カルシウム、ケナフ、バクテリアセルロース等のフィラーを含有させることができる。
本重合体組成物は、例えば、(A)成分を含む水分散液中で(b1)成分を含有する原料を重合することにより得ることができる。
水分散液中での原料の重合方法としては、例えば、懸濁重合法、ミニエマルション重合法及び乳化重合法が挙げられる。上記の重合方法の具体例としては、(A)成分の水分散液に原料の水分散液を添加し、次いで懸濁重合する方法が挙げられる。
重合に際しては、必要に応じて水分散液及び原料から選ばれる少なくとも一種にラジカル重合開始剤を添加することができる。
ラジカル重合開始剤としては、例えば、t−ブチルハイドロパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジt−ブチルパーオキサイド、ジt−アミルパーオキサイド、ジt−ヘキシルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジイソプロピルパーオキシカーボネート等の有機過酸化物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;及びアゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を併せて使用できる。
上記のラジカル重合開始剤の中で、温水や加熱オイルで制御可能な温度範囲でラジカルを発生させることができる点で、t−ブチルハイドロパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、アゾビスイソブチロニトリル及びアゾビス2,4−ジメチルバレロニトリルが好ましい。また、上記の有機過酸化物や過硫酸塩は還元剤と組み合わせてレドックス系として用いることもできる。
上記の重合温度は、例えば、65〜100℃で行なうことができる。また、重合時間は、例えば、1〜10時間で行なうことができる。重合の雰囲気は、必要に応じて窒素雰囲気下で行なうことができる。
上記の重合においては、重合を2段階以上の多段階で行なうことができ、例えば、所定温度で所定時間の重合を行なった後、より高い温度で保持して重合を完了させることもできる。
原料の重合においては、必要に応じて連鎖移動剤及び分散剤、分散助剤、乳化剤等の重合用添加剤を用いることができる。
連鎖移動剤としては、例えば、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン及びα−メチルスチレンダイマーが挙げられる。
乳化剤としては、例えば、公知のアニオン系乳化剤、カチオン系乳化剤及びノニオン系乳化剤が挙げられる。
分散重合法として乳化重合を用いた場合、得られるラテックスを本成形体の成形に使用することもできるが、ラテックスから本重合体組成物を粉体として回収してもよい。
<熱可塑性樹脂組成物>
熱可塑性樹脂組成物は本重合体組成物及び熱可塑性樹脂を含有するものである。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート等のポリ(メタ)アクリレート、メチルメタクリレート−アクリレート共重合体等の(メタ)アクリル共重合体;ポリスチレン、高耐衝撃性ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、水素添加スチレン−ブタジエン共重合体等のスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩化ビニル系樹脂;ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、環状オレフィン含有重合体等のオレフィン系樹脂;ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート等の脂肪族ポリエステル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレングリコールテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル系樹脂;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)等のジヒドロキシジアリール化合物を、ホスゲン又は炭酸ジエステル化合物と反応させて得られる重合体等のポリカーボネート系樹脂;及びポリオキシメチレン、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を併せて使用できる。
これらの中で、本成形体の成形外観及び表面硬度が優れる点で、ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、環状オレフィン含有重合体等のオレフィン系樹脂が好ましく、ポリプロピレンがより好ましい。
熱可塑性樹脂組成物中の本重合体組成物と熱可塑性樹脂の混合割合としては、熱可塑性樹脂組成物の帯電防止性、耐傷付き性、流動性及び成形性が優れる点で、本重合体組成物0.1質量%以上70質量%以下及び熱可塑性樹脂30質量%以上99.9質量%以下が好ましく、重合体組成物0.5質量%以上30質量%以下及び熱可塑性樹脂70質量%以上99.5質量%以下がより好ましい。
本発明においては、熱可塑性樹脂組成物中に必要に応じて酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、可塑剤、顔料等の各種添加剤及びガラス繊維、炭素繊維、タルク、炭酸カルシウム、ケナフ、バクテリアセルロース等のフィラーを含有することができる。
本重合体組成物に熱可塑性樹脂、各種添加剤及びフィラーから選ばれる少なくとも1種をブレンドする場合のブレンド方法としては、例えば、バッチ式のニーダー及び単軸又は多軸の押出機等を用いた溶融ブレンド法が挙げられる。
<本成形体>
本成形体は熱可塑性樹脂組成物を使用して得られるものである。
本成形体は、必要に応じて発泡体とすることができる。
発泡体の製造方法としては、例えば、熱可塑性樹脂組成物の成形物を炭酸ガス雰囲気で高温高圧下に載置した後に常温常圧に戻す方法が挙げられる。
熱可塑性樹脂組成物から本成形体を得るための成形方法としては、例えば、押出成形法、射出成形法、プレス成形法、インフレーション成形法及びカレンダ成形法が挙げられる。
以下に、本発明を実施例により説明する。以下、「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。また、各種評価を以下に示す方法で実施した。
<(A)成分の同定>
(1)X線回折
X線回折装置((株)リガク製、商品名:RINT2500)を用いて、(A)成分の粉体について、以下の測定条件で回折角(2θ)5〜85°の範囲における回折パターンを測定し、(A)成分に特有の吸収を示すピークにより化合物の種類を同定した。
(測定条件)
加速電圧;40kV
加速電流;300mA
照射線の種類;Cu−Kα線
(2)TEM
透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製、商品名:JEM-1200EXII)を用いて、(A)成分の粉体について、加速電圧100KV及び倍率10万倍で観察し、形状により化合物の種類を同定した。
(3)IR
フーリエ変換赤外分光光度計((株)島津製作所製、商品名:FTIR−8700)を用いて、(A)成分の粉体を使用してKBr法で調整した試料を、透過法により400〜4,000cm−1の範囲における吸収スペクトルを測定し、(A)成分に特有の吸収を示すピークにより化合物の種類を同定した。
<(A)成分のBET比表面積>
比表面積測定装置(ユアサアイオニクス(株)製、商品名:モノソーブ)を用いて、(A)成分の試料を120℃で2時間脱気した後に(A)成分の比表面積を測定した。
<成形体の評価>
(1)帯電防止性
成形体の表面を乾いた綿布で摩擦した後、成形体の表面を、平面上に載置されたタバコの灰から10mmの距離となるように近づけた。その時の成形体の表面への灰の付着性及び飛散性について観察し、成形体の表面に灰が付着又は飛散し始めたときの摩擦回数により成形体の帯電防止性を評価した。尚、評価は、23℃及び50%RHの環境下で行なった。また、成形体は、23℃及び50%RHの環境下に24時間放置したものを用いた。
(2)耐傷付き性
JIS K−5400に準拠して、成形体の表面の耐傷付き性を評価した。
(3)耐衝撃性
JIS−K7111:1996に準拠して23℃及び50RHで測定し、成形体の耐衝撃性を評価した。
(4)曲げ弾性率
JIS−K7171:1996に準拠して23℃及び50RHで成形体の曲げ弾性率を測定した。
[製造例1]イモゴライト水分散液の製造
金属チタン製の撹拌機付き反応容器(内容積60L)にシリコン濃度0.01モル/Lのオルト珪酸ナトリウム溶液8.6Lを入れた。次にアルミニウム濃度0.01モル/Lの塩化アルミニウム溶液21Lを入れ、30分撹拌した。
次いで、得られた溶液に0.01モル/LのNaOH溶液18.5Lを1時間かけて添加し、サスペンションを得た。得られたサスペンションのpHは4.5(25℃)であった。
次いで、サスペンションを95℃に昇温させて24時間保持した後、24時間かけて室温まで冷却し、反応サスペンションを得た。得られた反応サスペンションのpHは4.2、固形分は0.04%で、極めて透明度の高いものであった。得られた反応サスペンションは、以下の評価によりイモゴライト水分散液であることを確認した。
反応サスペンションに1%アンモニア水溶液を撹拌しながら添加して、反応サスペンションをpH9.0に調整した後、撹拌を停止して、8時間静置し、沈殿物を得た。得られた沈殿物を分別し、沈殿物を吸引式濾過器で通水濾過して、濾過液の導電度が100マイクロジーメンス以下になるまで、水洗を行ない、やや白色を帯びたペーストを得た。
得られたペーストを、凍結乾燥機で−40℃から28時間かけて室温に戻してペーストを乾燥させて粉体を得た。得られた粉体について、X線回折、TEM及びIRの測定を行なった。X線回折パターンにおいて、回折角(2θ)6°、11°、16°付近にブロードなピークが確認された。また、TEMの観察において、粉体は繊維状であることを確認した。更に、IRの測定において、950〜1000cm−1付近に、Si−O−Al結合に由来するイモゴライト特有のダブレット吸収を確認した。
上記評価結果より、粉体がイモゴライトであることを確認した。また、イモゴライトのBET比表面積は325m2/gであった。
[実施例1]
温度計、冷却管、攪拌装置を備えた反応容器に、製造例1で得たイモゴライト水分散液1,000部(固形分0.4部)を入れ、攪拌を開始した。
次いで、10%アンモニア水溶液10部(固形分1部)及び塩化カルシウム0.1部を加えて30分攪拌し、更にホスマーM(ユニケミカル(株)製アシッドホスホオキシエチルメタクリル酸エステル、商品名)0.04部を加えて30分攪拌した。次いで、イソブチルメタクリレート100部、オクチルメルカプタン0.1部及びアゾビスイソブチロニトリル0.05部を仕込んだ。
その後、窒素気流下で内容物を80℃まで昇温して2時間攪拌した後、更に90℃まで昇温して30分攪拌した。内容物を冷却した後、粒子状の重合体組成物(1)を濾取、乾燥した。
得られた重合体組成物(1)とノバテックFY4(日本ポリプロピレン(株)製ポリプロピレン、商品名)を表1に示す組成で配合して得られた熱可塑性樹脂組成物を、混練射出成形機(Custom Scientific Instruments社製、商品名:CS−183)を用いて、バレル温度200℃で溶融混練した後、射出成形し、寸法20×10×2(mm)の成形体を得た。評価結果を表1に示す。
表1中の略称は以下の化合物を示す。
PIBMA:ポリイソブチルメタクリレート
PMMA:ポリメチルメタクリレート
FY−4:ノバテックFY−4(日本ポリプロピレン(株)製ポリプロピレン、商品名)
VH:アクリペットVH(三菱レイヨン(株)製アクリル樹脂、商品名)
エルカ酸アミド:日本精蝋(株)製脂肪酸アミド
ペレスタッド300:ポリエチレングリコール系重合体(三洋化成工業(株)製、商品名)
[実施例2]
熱可塑性樹脂組成物の組成を表1に示すものとする以外は実施例1と同様にして成形体を得た。評価結果を表1に示す。
PIBMA:ポリイソブチルメタクリレート
PMMA:ポリメチルメタクリレート
FY−4:ノバテックFY−4(日本ポリプロピレン(株)製ポリプロピレン、商品名)
VH:アクリペットVH(三菱レイヨン(株)製アクリル樹脂、商品名)
エルカ酸アミド:日本精蝋(株)製脂肪酸アミド
ペレスタッド300:ポリエチレングリコール系重合体(三洋化成工業(株)製、商品名)
[実施例2]
熱可塑性樹脂組成物の組成を表1に示すものとする以外は実施例1と同様にして成形体を得た。評価結果を表1に示す。
[比較例1]
イソブチルメタクリレート100部の代わりにメチルメタクリレート100部を用いる以外は実施例1と同様にして重合体組成物(2)及び成形体を得た。評価結果を表1に示す。
比較例1では重合体組成物の原料として(B)成分の代わりに炭素数1の脂肪族アルキル基を有する単量体単位を有するポリメチルメタクリレートを使用しているので、得られた成形体は耐傷付き性及び帯電防止性に劣っていた。
[比較例2]
イモゴライト水分散液1,000部の代わりに水1,000部を用いる以外は実施例1と同様にして重合体組成物(3)及び成形体を得た。評価結果を表1に示す。
比較例2では重合体組成物中に(A)成分を含有していないので、得られた成形体は耐傷付き性及び帯電防止性に劣っていた。
[比較例3]
重合体組成物(1)を使用しない以外は実施例1と同様にして成形体を得た。評価結果を表1に示す。
比較例3では熱可塑性樹脂に本重合体組成物を添加していないので、得られた成形体は耐傷付き性及び帯電防止性に劣っていた。
[比較例4〜6]
重合体組成物(1)の代わりに表1に示す添加剤を使用する以外は実施例1と同様にして成形体を得た。評価結果を表1に示す。
比較例4の、従来の耐傷付き抑制剤として使用されている脂肪酸アミドを含有する熱可塑性樹脂組成物を使用して得られる成形体は、帯電防止性に劣っていた。
比較例5の、従来の帯電防止剤として使用されているポリエチレングリコール系重合体を含有する熱可塑性樹脂組成物を使用して得られる成形体は、耐傷付き性及び帯電防止性に劣っていた。
比較例6の、従来の耐傷付き性抑制剤として使用されている脂肪酸アミド及び帯電防止剤として使用されているポリエチレングリコール系重合体を含有する熱可塑性樹脂組成物を使用して得られる成形体は、耐傷付き性に劣っていた。
[実施例3]
実施例1で得られた熱可塑性樹脂組成物を、混練射出成形機(Custom Scientific Instruments社製、商品名:CS−183)を用いて、バレル温度200℃で溶融混練した後、射出成形し、寸法20×10×2(mm)の試験片を得た。
得られた試験片をオートクレーブ(オーエムラボテック(株)製、容量100ml)の中に入れた。次いで、オートクレーブ内を二酸化炭素ガスで置換した後、圧力17MPa及び温度155℃の条件下で60分間保持した。容器内を常温常圧に戻し、成形体を得た。評価結果を表1に示す。得られた成形体の断面の状態を走査型電子顕微鏡により観察したところ、図1に示すように、成形体の内部に多数の気泡を有する発泡成形体が得られた。
実施例3のように、本発明の無機化合物含有複合重合体を含有する樹脂組成物を発泡させた場合には、微細な空孔を緻密に形成させることができた。
Claims (5)
- アルミニウム系無機化合物(A)及び以下に示すアクリル重合体(B)を含有する重合体組成物。
アクリル重合体(B):炭素数4〜20の脂肪族アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(b1)単位を含有する重合体 - アルミニウム系無機化合物(A)の存在下で炭素数4〜20の脂肪族アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(b1)を含有する単量体又は単量体混合物を重合して得られる請求項1に記載の重合体組成物。
- 請求項1に記載の重合体組成物及び熱可塑性樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂がポリオレフィンである請求項3に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項3又は4の熱可塑性樹脂組成物を使用して得られる成形体。
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JP2014113700A JP2015227417A (ja) | 2014-06-02 | 2014-06-02 | 重合体組成物及び熱可塑性樹脂組成物 |
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