JP5887651B2 - 車両の異常検出方法 - Google Patents
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Description
1次ばね異常指標=|(P1+P4)−(P2+P3)|・・・(1)
ただし、式(1)において、P1〜P4は、いずれか一方の前記台車が有する車輪の輪重であり、P1は台車の前方右側に位置する車輪の輪重を、P2は台車の前方左側に位置する車輪の輪重を、P3は台車の後方右側に位置する車輪の輪重を、P4は台車の後方左側に位置する車輪の輪重を意味する。
本発明において、軌道に輪重センサを設けるとは、軌道を構成する左右のレールに輪重センサを取り付けることを意味する。
本発明によれば、軌道に設けた輪重センサによって測定した輪重に基づき車両の異常を検出するので、車両毎にセンサを取り付ける場合に比べて車両の異常を容易に且つ安価に検出することができる。また、車両異常の種別に応じた指標を定め、測定した輪重から算出したこの指標の値に基づき車両の異常を検出するので、車両異常の種別を判断することができる。
また、本発明によれば、前後の台車の内の少なくとも一方の台車が有する4つの車輪の輪重によって表される指標を用いるので、指標の精度が高まる、すなわち車両の異常を精度良く検出できることが期待できる。
本発明において、1次ばね異常とは台車に設けられた1次ばねの異常であり、例えば、台車に設けられたコイルばねの折損である。
1次ばねは車輪毎に設けられており、いずれかの車輪の1次ばねが異常になると、その1次ばねが設けられた車輪に掛かっていた台車の重量は、その車輪の前後方向又は左右方向に隣接する車輪に掛かる。例えば、台車の前方右側に位置する車輪の1次ばねが異常になると、前方右側に位置する車輪に掛かっていた台車の重量は、前方左側に位置する車輪又は後方右側に位置する車輪に掛かり、後方左側に位置する車輪には掛からない。このように、1次ばね異常が発生すると、その影響は、1つの台車での位置関係に関し、1次ばね異常が発生した車輪と前後方向又は左右方向に隣接する車輪に及ぶことになる。
従って、台車の前方右側及び後方左側に位置する車輪のそれぞれの輪重の合計(P1+P4)と、台車の前方左側及び後方右側に位置する車輪のそれぞれの輪重の合計(P2+P3)との差の絶対値を評価することにより、1次ばね異常を検出することができる。このことから、1次ばね異常指標を式(1)のように定めることができる。
本発明によれば、1次ばね異常を容易に且つ安価に検出することができる。
尚、測定した輪重から算出した1次ばね異常指標の値が予め定めた基準値よりも大きいときに、走行中の車両に1次ばね異常が発生したと判断することは、1次ばね異常指標と相関関係のある他の指標(例えば、1次ばね異常指標を標準化した指標)の値が、該他の指標に対して予め定めた基準値よりも大きいときに1次ばね異常が発生したと判断することを含む概念である。
2次ばね異常指標=|(P1+P3+P6+P8)−(P2+P4+P5+P7)|・・・(2)
ただし、式(2)において、P1は前方の台車の前方右側に位置する車輪の輪重を、P2は前方の台車の前方左側に位置する車輪の輪重を、P3は前方の台車の後方右側に位置する車輪の輪重を、P4は前方の台車の後方左側に位置する車輪の輪重を、P5は後方の台車の前方右側に位置する車輪の輪重を、P6は後方の台車の前方左側に位置する車輪の輪重を、P7は後方の台車の後方右側に位置する車輪の輪重を、P8は後方の台車の後方左側に位置する車輪の輪重を意味する。
本発明においても、軌道に輪重センサを設けるとは、軌道を構成する左右のレールに輪重センサを取り付けることを意味する。
また、本発明によっても、軌道に設けた輪重センサによって測定した輪重に基づき車両の異常を検出するので、車両毎にセンサを取り付ける場合に比べて車両の異常を容易に且つ安価に検出することができる。また、車両異常の種別に応じた指標を定め、測定した輪重から算出したこの指標の値に基づき車両の異常を検出するので、車両異常の種別を判断することができる。
また、本発明によっても、前後の台車の内の少なくとも一方の台車が有する4つの車輪の輪重によって表される指標を用いるので、指標の精度が高まる、すなわち車両の異常を精度良く検出できることが期待できる。
本発明において、2次ばね異常とは台車に設けられた2次ばねの異常であり、例えば、台車に設けられた空気ばねの異常である。
2次ばねは前後の台車の左右それぞれ、換言すれば車両の前後左右に設けられており、いずれかの台車の2次ばねが異常になって車両の重量を支持できなくなると、その台車の2次ばねが設けられた側の車輪に掛かっていた車両の重量は、その2次ばねの前後又は左右方向に隣接する2次ばねの近傍の車輪に掛かることになる。
例えば、前方の台車の右側の2次ばねが異常になると、前方の台車の右側に位置する車輪(前後の車輪)に掛かっていた車両の重量は、前方の台車の左側に位置する車輪(前後の車輪)又は後方の台車の右側に位置する車輪(前後の車輪)に掛かり、後方の台車の左側に位置する車輪には掛からない。このように、2次ばね異常が発生すると、その影響は、車両での位置関係に関し、異常が発生した2次ばねと前後方向又は左右方向に隣接する2次ばねの近傍の車輪に及ぶことになる。
従って、前方の台車の右側及び後方の台車の左側に位置する車輪のそれぞれの輪重の合計(P1+P3+P6+P8)と、前方の台車の左側及び後方の台車の右側に位置する車輪のそれぞれの輪重の合計(P2+P4+P5+P7)との差の絶対値を評価することにより、2次ばね異常を検出することができる。このことから、2次ばね異常指標を式(2)のように定めることができる。
本発明によれば、2次ばね異常を容易に且つ安価に検出することができる。
尚、測定した輪重から算出した2次ばね異常指標の値が予め定めた基準値よりも大きいときに、走行中の車両に2次ばね異常が発生したと判断することは、2次ばね異常指標と相関関係のある他の指標(例えば、2次ばね異常指標を標準化した指標)の値が、該他の指標に対して予め定めた基準値よりも大きいときに2次ばね異常が発生したと判断することを含む概念である。
第1静止輪重アンバランス異常指標=|(P1+P3+P5+P7)−(P2+P4+P6+P8)|・・・(3)
第2静止輪重アンバランス異常指標=|(P1+P4)−(P2+P3)|・・・(4)
第3静止輪重アンバランス異常指標=|(P5+P8)−(P6+P7)|・・・(5)
第4静止輪重アンバランス異常指標=|(P1+P3)+(P6+P8)−(P2+P4)−(P5+P7)|・・・(6)
ただし、式(3)〜式(6)において、P1は前方の台車の前方右側に位置する車輪の輪重を、P2は前方の台車の前方左側に位置する車輪の輪重を、P3は前方の台車の後方右側に位置する車輪の輪重を、P4は前方の台車の後方左側に位置する車輪の輪重を、P5は後方の台車の前方右側に位置する車輪の輪重を、P6は後方の台車の前方左側に位置する車輪の輪重を、P7は後方の台車の後方右側に位置する車輪の輪重を、P8は後方の台車の後方左側に位置する車輪の輪重を意味する。
本発明においても、軌道に輪重センサを設けるとは、軌道を構成する左右のレールに輪重センサを取り付けることを意味する。
また、本発明によっても、軌道に設けた輪重センサによって測定した輪重に基づき車両の異常を検出するので、車両毎にセンサを取り付ける場合に比べて車両の異常を容易に且つ安価に検出することができる。また、車両異常の種別に応じた指標を定め、測定した輪重から算出したこの指標の値に基づき車両の異常を検出するので、車両異常の種別を判断することができる。
本発明において、静止輪重アンバランス異常とは車両の有する8つの車輪に掛かる車両の重量のバランスが崩れる異常である。
静止輪重アンバランス異常の種別には、車両の左右の偏心、台車のねじれ、及び車両のねじれ等がある。
車両の左右の偏心は、車両の右側に位置する車輪の輪重の合計と、車両の左側に位置する車輪の輪重の合計とのバランスが崩れることなので、車両の左右の偏心に対応する静止輪重アンバランス異常の指標(第1静止輪重アンバランス異常指標)は、式(3)で表すことができる。
台車のねじれは、1つの台車における2つの対角方向のうち、一方の対角方向に位置する車輪の輪重の合計と、他方の対角方向に位置する車輪の輪重の合計とのバランスが崩れることなので、台車のねじれに対応する静止輪重アンバランス異常の指標(第2及び第3静止輪重アンバランス異常指標)は、式(4)及び式(5)で表すことができる。
車両のねじれは、車両における2つの対角方向のうち、一方の対角方向に位置する車輪の輪重の合計と、他方の対角方向に位置する車輪の輪重の合計とのバランスが崩れることなので、車両のねじれに対応する静止輪重アンバランス異常の指標(第4静止輪重アンバランス異常指標)は、式(6)で表すことができる。
本発明によれば、静止輪重アンバランス異常を容易に且つ安価に検出することができる。
尚、測定した輪重から算出したいずれかの静止輪重アンバランス異常指標の値が予め定めた基準値よりも大きいときに、走行中の車両に静止輪重アンバランス異常が発生したと判断することは、各静止輪重アンバランス異常指標と相関関係のある他の指標(例えば、各静止輪重アンバランス異常指標を標準化した指標)が、該他の指標に対して予め定めた基準値よりも大きいときに静止輪重アンバランス異常が発生したと判断することを含む概念である。
ここで、車両の有する車輪の輪重を測定するには、軌道を構成する左右のレールに1対の輪重センサを取り付ければよく、輪重センサが設けられた箇所を通過する車輪の輪重を順次測定することにより、車両が有する車輪の輪重を全て測定することができるので、測定した輪重に基づき車両異常の種別に応じた指標の値を算出することができる。このとき、左右のレールに取り付けた各輪重センサの位置が車両の走行方向について互いに前後方向にズレていても、各輪重センサで測定された輪重から指標の値を算出することができる。しかしながら、左右のレールに取り付けた各輪重センサの位置が車両の走行方向について互いに前後方向にズレていると、各輪重センサで測定した輪重が同時に測定したものではないので、輪重の左右のバランスを精度良く測定できず、算出する指標の値の精度が悪くなる虞がある。
そこで、前記設置ステップにおいて、いずれか一方の前記台車が有する前後いずれか1対の車輪の輪重を同時に測定可能なように前記輪重センサを前記軌道に設けることが好ましい。
斯かる好ましい方法によれば、1つの台車が有する左右1対の車輪の輪重を同時に測定可能なように輪重センサが軌道の左右のレールに取り付けられるので、輪重の左右のバランスを精度良く測定でき、算出する指標の値の精度が良くなる。また、輪重センサが1対で良いので、低コストにすることができる。
斯かる好ましい方法によれば、1つの台車が有する4つの車輪の輪重を同時に測定可能であるため、台車が有する4つの車輪の輪重によって表される指標の値、例えば1次ばね異常指標の値を精度良く算出することができる。
斯かる好ましい方法によれば、車両が有する8つの車輪の輪重を同時に測定可能であるため、車両が有する8つの車輪の輪重によって表される指標の値、例えば2次ばね異常指標の値や静止輪重アンバランス異常指標の値を精度良く算出することができる。
図1は、本実施形態に係る車両の異常検出方法に用いる車両異常検出装置の一例を示す構成図である。
車両異常検出装置1は、軌道を構成する左右のレールRに設けられ車両2の有する車輪3の輪重を測定する輪重センサ11と、輪重センサ11から送信された輪重のデータを演算し、後述する車両異常に関する指標を算出する演算部12を備えている。
輪重センサ11は、例えば、歪ゲージ13を用いて構成されている。本実施形態では、輪重センサ11が歪ゲージ13を用いて構成されている場合を例として説明する。演算部12には、車両異常を検出するための指標を算出するプログラムがインストールされている。
図2は、レールに設けられた輪重センサを説明する図であり、図2(a)は、輪重センサを構成する歪ゲージがレールに貼られた状態の概略図であり、図2(b)は、歪ゲージの結線図であり、図2(c)は、歪ゲージで測定された輪重の波形を示す図である。図2(a)では、歪ゲージを貼り付けられたレールの両側面の側面視を図の上下に展開して示している。
歪ゲージ13からなる直交形抵抗歪計4枚(合計8ゲージ分)が2枚ずつレールRの両側の側面(腹部)に貼り付けられている。そして、各歪ゲージ13は、中立軸に対して45°傾斜している。1つの輪重センサ11は、このようにしてレールRに貼られた4枚の直交形抵抗歪計を用いて構成されている。輪重センサ11について更に説明すると、輪重センサ11は、8個の歪ゲージ13と、それらの歪ゲージ13を結線する導線と、導線を覆うシールド等から構成されている。
この直交形抵抗歪計4枚を図2(b)のように結線して車輪通過時の歪波形を記録すると、測定断面の歪波形が打ち消したり合成されたりして、図2(c)に示すように、突起状の波形が記録される。この場合、突起の高さが輪重に比例する。
輪重センサ11は、軌道を構成する左右のレールRに1対、設けられている。輪重センサ11が、通過する車輪3の輪重を順次測定することにより、車両2が有する車輪3の輪重を全て測定することができるので、測定した輪重から後述する車両異常の種別毎の各指標を演算部12が算出することができる。このように、輪重センサ11が1対で良いので、低コストにすることができる。
車両2は、前後左右にそれぞれ車輪3を有する台車4を前後に1対具備する。
車輪3は、1次ばね5に支持されて台車4に取り付けられている。1次ばね5としては、例えばコイルばね51を用いることができる。本実施形態では、コイルばね51を用いている場合を例として説明する。そして、台車4は、左右に2次ばね6を有している。2次ばね6としては、例えば空気ばね61を用いることができる。本実施形態では、空気ばね61を用いている場合を例として説明する。
尚、以下の説明において、P1は前方台車の前方右側の車輪の輪重を、P2は前方台車の前方左側の車輪の輪重を、P3は前方台車の後方右側の車輪の輪重を、P4は前方台車の後方左側の車輪の輪重を、P5は後方台車の前方右側の車輪の輪重を、P6は後方台車の前方左側の車輪の輪重を、P7は後方台車の後方右側の車輪の輪重を、P8は後方台車の後方左側の車輪の輪重を示す。
車両異常の種別が1次ばね異常である場合について、説明する。
いずれかの車輪3の1次ばね5であるコイルばね51が、例えば折損して輪重を支持できなくなると、そのコイルばね51が設けられた車輪3に掛かっていた台車4の重量は、その車輪3の前後方向又は左右方向に隣接する車輪3に掛かる。例えば、台車4の前方右側の車輪3のコイルばね51が折損すると、前方右側の車輪3に掛かっていた台車4の重量は、前方左側の車輪3又は後方右側の車輪3に掛かり、後方左側の車輪3には掛からない。このように、1次ばね異常が発生すると、その影響は、台車4での位置関係において、その車輪3と対角方向の位置の車輪3には及ばずに、前後方向又は左右方向に隣接する車輪3に及ぶことになる。
従って、前方台車4の前方右側及び後方左側の車輪3のそれぞれの輪重の合計(P1+P4)と、前方台車4の前方左側及び後方右側の車輪3のそれぞれの輪重の合計(P2+P3)との差の絶対値、又は、後方台車4の前方右側及び後方左側の車輪3のそれぞれの輪重の合計(P5+P8)と、後方台車4の前方左側及び後方右側の車輪3のそれぞれの輪重の合計(P6+P7)との差の絶対値を評価することにより、1次ばね異常を検出することができる。このことから、1次ばね異常指標を式(11)及び式(12)のように定めることができる。
1次ばね異常指標=|(P1+P4)−(P2+P3)|・・・(11)
1次ばね異常指標=|(P5+P8)−(P6+P7)|・・・(12)
そして、軌道に設けられた輪重センサ11によって前方又は後方の台車4の内の少なくとも一方の台車4が有する4つの車輪3の輪重を測定する(測定ステップ)。指標が、4つの車輪の輪重によって表されるので、指標の精度が良くなる。
そして、測定された輪重データが演算部12に送られ、演算部12は、予めインストールされたプログラムによって1次ばね異常指標を算出する。オペレータは、算出された1次ばね異常指標が予め定めた基準値より大きければ、1次ばね異常が発生していると判断する(検出ステップ)。判断する基準値は、輪重センサ11が設けられた箇所の軌道の曲率や車両の重量に応じて定めればよい。
このようにして、レールに設けた輪重センサ11によって測定した輪重から得た1次ばね異常指標によって判断できるので、車両に種々のセンサを取り付ける場合に比べて1次ばね異常を容易に且つ安価に検出することができる。
2次ばね6である空気ばね61は、前後の台車4の左側及び右側のそれぞれ、換言すれば車両2の前後左右に設けられている。いずれかの台車4の空気ばね61が異常になって車両の重量を支持できなくなると、その台車4の空気ばね61が設けられた側の車輪3に掛かっていた車両の重量は、その空気ばね61の前後方向又は左右方向に隣接する空気ばね61の近傍の車輪3に掛かることになる。
例えば、前方台車4の右側の空気ばね61が異常になると、前方台車4の右側の車輪3に掛かっていた車両の重量は、前方台車4の左側の車輪3又は後方台車4の右側の車輪3に掛かり、後方台車4の左側の車輪3には掛からない。このように、空気ばね61異常が発生すると、その影響は、車両2での位置関係において、その空気ばね61と対角方向の位置にある空気ばね61の近傍の車輪3には及ばずに、その空気ばね61と前後方向又は左右方向に隣接する空気ばね61の近傍の車輪3に及ぶことになる。
従って、前方台車右側及び後方台車左側の車輪3のそれぞれの輪重の合計(P1+P3+P6+P8)と、前方台車左側及び後方台車右側の車輪3のそれぞれの輪重の合計(P2+P4+P5+P7)との差の絶対値を評価することにより、2次ばね異常を検出することができる。このことから、2次ばね異常指標を式(13)のように定めることができる。
2次ばね異常指標=|(P1+P3+P6+P8)−(P2+P4+P5+P7)|・・・(13)
そして、軌道に設けられた輪重センサ11によって車両2が有する8つの車輪3の輪重を測定する(測定ステップ)。
そして、測定された輪重データが演算部12に送られ、演算部12は、予めインストールされたプログラムによって2次ばね異常指標を算出する。オペレータは、算出された2次ばね異常指標が予め定めた基準値より大きければ、2次ばね異常が発生していると判断する(検出ステップ)。判断する基準値は、輪重センサ11が設けられた箇所の軌道の曲率や車両の重量に応じて定めればよい。
このようにして、レールに設けた輪重センサ11によって測定した輪重から得た2次ばね異常指標によって判断できるので、車両に種々のセンサを取り付ける場合に比べて2次ばね異常を容易に且つ安価に検出することができる。
静止輪重アンバランス異常とは車両2の有する8つの車輪に掛かる車両2の重量のバランスが崩れている異常であり、静止輪重アンバランス異常には、車両2の左右の偏心、台車4のねじれ、及び車両2のねじれ等がある。
車両2の左右の偏心は、車両2の右側の車輪3の輪重の合計と、車両2の左側の車輪3の輪重の合計とのバランスが崩れることなので、車両2の左右の偏心による静止輪重アンバランス異常の指標は、式(14)で表すことができる。
静止輪重アンバランス異常指標(1)=|(P1+P3+P5+P7)−(P2+P4+P6+P8)|・・・(14)
台車4のねじれは、台車4での2つの対角方向において、一方の対角方向にある車輪3の輪重の合計と、他方の対角方向にある車輪3の輪重の合計とのバランスが崩れることなので、台車4のねじれによる静止輪重アンバランス異常の指標は、式(15)及び式(16)で表すことができる。
静止輪重アンバランス異常指標(2)=|(P1+P4)−(P2+P3)|・・・(15)
静止輪重アンバランス異常指標(3)=|(P5+P8)−(P6+P7)|・・・(16)
車両2のねじれは、車両2での2つの対角方向において、一方の対角方向にある車輪3の輪重の合計と、他方の対角方向にある車輪3の輪重の合計とのバランスが崩れることなので、車両2のねじれによる静止輪重アンバランス異常の指標は、式(17)で表すことができる。
静止輪重アンバランス異常指標(4)=|(P1+P3)+(P6+P8)−(P2+P4)−(P5+P7)|・・・(17)
そして、軌道に設けられた輪重センサ11によって車両2が有する8つの車輪3の輪重を測定する(測定ステップ)。
そして、測定された輪重データが演算部12に送られ、演算部12は、予めインストールされたプログラムによって静止輪重アンバランス異常指標(1)〜(4)を算出する。オペレータは、算出された静止輪重アンバランス異常指標(1)〜(4)のいずれかが予め定めたそれぞれの基準値よりも大きいときに、静止輪重アンバランス異常が発生していると判断する(検出ステップ)。判断する基準値は、輪重センサ11が設けられた箇所の軌道の曲率や車両の重量に応じて定めればよい。
このようにして、レールに設けた輪重センサ11によって測定した輪重から得た静止輪重アンバランス異常指標によって判断できるので、車両に種々のセンサを取り付ける場合に比べて静止輪重アンバランス異常を容易に且つ安価に検出することができる。
尚、上述した各検出ステップにおいて、車両異常の種別毎の指標の算出を演算部12で行ったが、演算部12を用いずに、人が算出してもよい。また、車両異常の種別毎の指標を基準値と比較して行う異常が発生しているか否かの判断を自動で行うようにしてもよい。
そこで、好ましくは、輪重センサ11は、台車4が有する左右の1対の車輪の輪重を同時に測定可能なようにレールRに設けるとよい。このことにより、輪重の左右のバランスを精度良く測定でき、各指標の精度が良くなる。
また、輪重センサ11を、車両2が有する8つの車輪3の輪重を同時に測定可能なようにレールRに設けてもよい。車両2が有する8つの車輪3の輪重を同時に測定するので、車両2が有する8つの車輪3の輪重によって表される指標、例えば2次ばね異常指標を精度良く算出することができる。
例えば、1軸の車輪を有する台車を車両が前後に1対具備する構成や、3軸の車輪を有する台車を車両が前後に1対具備する構成や、2軸の車輪を前後に有する台車を車両が前後3台に有する構成でもよい。それぞれの構成の車両において、少なくとも台車が有する左右1対以上の車輪の輪重によって表される指標を車両異常の種別毎に定めればよい。
コイルばねが正常である場合と、折損した場合とでの1次ばね異常指標の値の変化を、車両の走行速度及び乗車状況の条件を下記のようにして調べた。軌道は半径120mの円曲線区間とし、前方の台車の前方の外軌側と内軌側の車輪の1次ばねを折損させて調べた。輪重の測定は前方の台車の車輪で行った。
走行速度は、10km/h、40km/hの2条件とした。
乗車状況は、空車、定員、250%満車の3条件とした。
そして、各条件の影響を比べ易いように、1次ばね異常指標そのものでなく、1次ばね異常指標を下記の式で標準化した標準化1次ばね異常指標で、コイルばねが正常である場合と、折損した場合とでのその値の変化を調べた。
標準化1次ばね異常指標=|(1次ばね異常指標−正常時台車ねじれ成分)|/(基準車両重量の半分)
ただし、正常時台車ねじれ成分は、1次ばねが正常な場合で、空車状態で、走行速度が40km/hの時の下式の値とした。
正常時台車ねじれ成分=|(P1+P4)−(P2+P3)|
また、基準車両重量は、1台車当たりの空車荷重である。
図5は、1次ばねが正常な場合と折損した場合との標準化1次ばね異常指標のグラフである。
外軌側の車輪でも内軌側の車輪でも、コイルばねが折損すると、車両の走行速度や乗車状況に拘らず、標準化1次ばね異常指標は、正常時よりも著しく大きくなっている。
従って、標準化1次ばね異常指標によって、1次ばねの異常を検出できる。この標準化1次ばね異常指標と1次ばね異常指標とは相関関係にあるので、当然に、1次ばね異常指標によって、1次ばねの異常を検出できる。
このように、標準化1次ばね異常指標を用いて1次ばねの異常を検出することは、1次ばね異常指標を用いて1次ばねの異常を検出することと実質的に同じである。
空気ばねが正常である場合と故障した場合とでの2次ばね異常指標の値の変化を、車両の走行速度及び乗車状況の条件を下記のようにして調べた。軌道は半径120mの円曲線区間とし、前方台車の左、又は右の空気ばねの排気系、又は給気系を故意に故障させて調べた。走行速度は、10km/h、40km/hの2条件とした。
乗車状況は、空車、定員、250%満車の3条件とした。
そして、各条件の影響を比べ易いように、2次ばね異常指標そのものでなく、2次ばね異常指標を下記の式で標準化した標準化2次ばね異常指標で、空気ばねが正常である場合と故障した場合とでのその値の変化を調べた。
標準化2次ばね異常指標=|(2次ばね異常指標−正常時車両ねじれ成分)|/(基準車両重量)
ただし、正常時車両ねじれ成分は、2次ばねが正常な場合で、空車状態で、走行速度が40km/hの時の下式の値とした。
正常時車両ねじれ成分=|(P1+P3+P6+P8)−(P2+P4+P5+P7)|
また、基準車両重量は、1台車当たりの空車荷重である。
図6は、2次ばねが正常な場合と故障した場合との標準化2次ばね異常指標のグラフである。
外軌側でも内軌側でも空気ばねの排気系又は給気系が故障すると、車両の走行速度や乗車状況に拘らず、標準化2次ばね異常指標は、正常時よりも著しく大きくなっている。
従って、標準化2次ばね異常指標によって、2次ばねの異常を検出できる。この標準化2次ばね異常指標と、2次ばね異常指標とは正の相関関係にあるので、当然に、2次ばね異常指標によって、2次ばねの異常を検出できる。
このように、標準化2次ばね異常指標を用いて2次ばねの異常を検出することは、2次ばね異常指標を用いて2次ばねの異常を検出することと実質的に同じである。
3・・・車輪
4・・・台車
11・・・輪重センサ
13・・・歪ゲージ
Claims (9)
- 前後に左右2対の車輪を有する台車を前後に1対具備する車両が軌道上を走行している際に、該車両の異常を検出する車両の異常検出方法であって、
前記軌道に車輪の輪重を測定するための輪重センサを予め設ける設置ステップと、
車両異常を検出するための指標であって、少なくとも一方の前記台車が有する4つの車輪の輪重によって表される指標を前記車両異常の種別に応じて予め定める指標定義ステップと、
前記軌道に設けられた輪重センサによって少なくとも一方の前記台車が有する4つの車輪の輪重を測定する測定ステップと、
前記測定ステップにおいて測定した輪重から、前記指標定義ステップにおいて定めた指標の値を算出し、該算出した指標の値に基づいて、前記走行中の車両の異常を検出する検出ステップとを含み、
前記指標定義ステップにおいて、前記車両異常の種別が1次ばね異常であるときの指標である1次ばね異常指標を下記の式(1)のように定め、
前記検出ステップにおいて、前記測定ステップにおいて測定した輪重から、前記1次ばね異常指標の値を算出し、該算出した前記1次ばね異常指標の値が予め定めた基準値よりも大きいときに、前記走行中の車両に1次ばね異常が発生したと判断することを特徴とする車両の異常検出方法。
1次ばね異常指標=|(P1+P4)−(P2+P3)|・・・(1)
ただし、式(1)において、P1〜P4は、いずれか一方の前記台車が有する車輪の輪重であり、P1は台車の前方右側に位置する車輪の輪重を、P2は台車の前方左側に位置する車輪の輪重を、P3は台車の後方右側に位置する車輪の輪重を、P4は台車の後方左側に位置する車輪の輪重を意味する。 - 前後に左右2対の車輪を有する台車を前後に1対具備する車両が軌道上を走行している際に、該車両の異常を検出する車両の異常検出方法であって、
前記軌道に車輪の輪重を測定するための輪重センサを予め設ける設置ステップと、
車両異常を検出するための指標であって、少なくとも一方の前記台車が有する4つの車輪の輪重によって表される指標を前記車両異常の種別に応じて予め定める指標定義ステップと、
前記軌道に設けられた輪重センサによって少なくとも一方の前記台車が有する4つの車輪の輪重を測定する測定ステップと、
前記測定ステップにおいて測定した輪重から、前記指標定義ステップにおいて定めた指標の値を算出し、該算出した指標の値に基づいて、前記走行中の車両の異常を検出する検出ステップとを含み、
前記指標定義ステップにおいて、前記車両異常の種別が2次ばね異常であるときの指標である2次ばね異常指標を下記の式(2)のように定め、
前記検出ステップにおいて、前記測定ステップにおいて測定した輪重から、前記2次ばね異常指標の値を算出し、該算出した前記2次ばね異常指標の値が予め定めた基準値よりも大きいときに、前記走行中の車両に2次ばね異常が発生したと判断することを特徴とする車両の異常検出方法。
2次ばね異常指標=|(P1+P3+P6+P8)−(P2+P4+P5+P7)|・・・(2)
ただし、式(2)において、P1は前方の台車の前方右側に位置する車輪の輪重を、P2は前方の台車の前方左側に位置する車輪の輪重を、P3は前方の台車の後方右側に位置する車輪の輪重を、P4は前方の台車の後方左側に位置する車輪の輪重を、P5は後方の台車の前方右側に位置する車輪の輪重を、P6は後方の台車の前方左側に位置する車輪の輪重を、P7は後方の台車の後方右側に位置する車輪の輪重を、P8は後方の台車の後方左側に位置する車輪の輪重を意味する。 - 前後に左右2対の車輪を有する台車を前後に1対具備する車両が軌道上を走行している際に、該車両の異常を検出する車両の異常検出方法であって、
前記軌道に車輪の輪重を測定するための輪重センサを予め設ける設置ステップと、
車両異常を検出するための指標であって、少なくとも一方の前記台車が有する4つの車輪の輪重によって表される指標を前記車両異常の種別に応じて予め定める指標定義ステップと、
前記軌道に設けられた輪重センサによって少なくとも一方の前記台車が有する4つの車輪の輪重を測定する測定ステップと、
前記測定ステップにおいて測定した輪重から、前記指標定義ステップにおいて定めた指標の値を算出し、該算出した指標の値に基づいて、前記走行中の車両の異常を検出する検出ステップとを含み、
前記指標定義ステップにおいて、前記車両異常の種別が静止輪重アンバランス異常であるときの指標である第1静止輪重アンバランス異常指標、第2静止輪重アンバランス異常指標、第3静止輪重アンバランス異常指標及び第4静止輪重アンバランス異常指標をそれぞれ下記の式(3)、式(4)、式(5)及び式(6)のように定め、
前記検出ステップにおいて、前記測定ステップにおいて測定した輪重から、前記第1〜第4静止輪重アンバランス異常指標の値を算出し、該算出した前記第1〜第4静止輪重アンバランス異常指標の値のいずれかが予め定めたそれぞれの基準値よりも大きいときに、前記走行中の車両に静止輪重アンバランス異常が発生したと判断することを特徴とする車両の異常検出方法。
第1静止輪重アンバランス異常指標=|(P1+P3+P5+P7)−(P2+P4+P6+P8)|・・・(3)
第2静止輪重アンバランス異常指標=|(P1+P4)−(P2+P3)|・・・(4)
第3静止輪重アンバランス異常指標=|(P5+P8)−(P6+P7)|・・・(5)
第4静止輪重アンバランス異常指標=|(P1+P3)+(P6+P8)−(P2+P4)−(P5+P7)|・・・(6)
ただし、式(3)〜式(6)において、P1は前方の台車の前方右側に位置する車輪の輪重を、P2は前方の台車の前方左側に位置する車輪の輪重を、P3は前方の台車の後方右側に位置する車輪の輪重を、P4は前方の台車の後方左側に位置する車輪の輪重を、P5は後方の台車の前方右側に位置する車輪の輪重を、P6は後方の台車の前方左側に位置する車輪の輪重を、P7は後方の台車の後方右側に位置する車輪の輪重を、P8は後方の台車の後方左側に位置する車輪の輪重を意味する。 - 前後に左右2対の車輪を有する台車を前後に1対具備する車両が軌道上を走行している際に、該車両の異常を検出する車両の異常検出方法であって、
前記軌道に車輪の輪重を測定するための輪重センサを予め設ける設置ステップと、
車両異常を検出するための指標であって、少なくとも一方の前記台車が有する4つの車輪の輪重によって表される指標を前記車両異常の種別に応じて予め定める指標定義ステップと、
前記軌道に設けられた輪重センサによって少なくとも一方の前記台車が有する4つの車輪の輪重を測定する測定ステップと、
前記測定ステップにおいて測定した輪重から、前記指標定義ステップにおいて定めた指標の値を算出し、該算出した指標の値に基づいて、前記走行中の車両の異常を検出する検出ステップとを含み、
前記指標定義ステップにおいて、前記車両異常の種別が1次ばね異常であるときの指標である1次ばね異常指標を下記の式(1)のように定め、前記車両異常の種別が2次ばね異常であるときの指標である2次ばね異常指標を下記の式(2)のように定め、なお且つ、前記車両異常の種別が静止輪重アンバランス異常であるときの指標である第1静止輪重アンバランス異常指標、第2静止輪重アンバランス異常指標、第3静止輪重アンバランス異常指標及び第4静止輪重アンバランス異常指標をそれぞれ下記の式(3)、式(4)、式(5)及び式(6)のように定め、
前記測定ステップにおいて、前記1対の台車が有する8つの車輪の輪重を測定し、
前記検出ステップにおいて、前記測定ステップにおいて測定した輪重から、前記1次ばね異常指標の値を算出し、該算出した前記1次ばね異常指標の値が予め定めた基準値よりも大きいときに、前記走行中の車両に1次ばね異常が発生したと判断し、前記測定ステップにおいて測定した輪重から、前記2次ばね異常指標の値を算出し、該算出した前記2次ばね異常指標の値が予め定めた基準値よりも大きいときに、前記走行中の車両に2次ばね異常が発生したと判断し、なお且つ、前記測定ステップにおいて測定した輪重から、前記第1〜第4静止輪重アンバランス異常指標の値を算出し、該算出した前記第1〜第4静止輪重アンバランス異常指標の値のいずれかが予め定めたそれぞれの基準値よりも大きいときに、前記走行中の車両に静止輪重アンバランス異常が発生したと判断することを特徴とする車両の異常検出方法。
1次ばね異常指標=|(P1+P4)−(P2+P3)|・・・(1)
2次ばね異常指標=|(P1+P3+P6+P8)−(P2+P4+P5+P7)|・・・(2)
第1静止輪重アンバランス異常指標=|(P1+P3+P5+P7)−(P2+P4+P6+P8)|・・・(3)
第2静止輪重アンバランス異常指標=|(P1+P4)−(P2+P3)|・・・(4)
第3静止輪重アンバランス異常指標=|(P5+P8)−(P6+P7)|・・・(5)
第4静止輪重アンバランス異常指標=|(P1+P3)+(P6+P8)−(P2+P4)−(P5+P7)|・・・(6)
ただし、式(1)において、P1〜P4は、いずれか一方の前記台車が有する車輪の輪重であり、P1は台車の前方右側に位置する車輪の輪重を、P2は台車の前方左側に位置する車輪の輪重を、P3は台車の後方右側に位置する車輪の輪重を、P4は台車の後方左側に位置する車輪の輪重を意味する。
また、式(2)〜(6)において、P1は前方の台車の前方右側に位置する車輪の輪重を、P2は前方の台車の前方左側に位置する車輪の輪重を、P3は前方の台車の後方右側に位置する車輪の輪重を、P4は前方の台車の後方左側に位置する車輪の輪重を、P5は後方の台車の前方右側に位置する車輪の輪重を、P6は後方の台車の前方左側に位置する車輪の輪重を、P7は後方の台車の後方右側に位置する車輪の輪重を、P8は後方の台車の後方左側に位置する車輪の輪重を意味する。 - 前記設置ステップにおいて、いずれか一方の前記台車が有する前後いずれか1対の車輪の輪重を同時に測定可能なように前記輪重センサを前記軌道に設けることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の車両の異常検出方法。
- 前記設置ステップにおいて、いずれか一方の前記台車が有する4つの車輪の輪重を同時に測定可能なように前記輪重センサを前記軌道に設けることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の車両の異常検出方法。
- 前記設置ステップにおいて、前記車両が有する8つの車輪の輪重を同時に測定可能なように前記輪重センサを前記軌道に設けることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の車両の異常検出方法。
- 前記輪重センサとして、歪ゲージを用いて構成されたセンサを用いることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の車両の異常検出方法。
- 前記輪重センサとして、ロードセルを用いることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の車両の異常検出方法。
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