JP5886022B2 - 銅或いは銅基合金表面の酸化皮膜の除去方法 - Google Patents

銅或いは銅基合金表面の酸化皮膜の除去方法 Download PDF

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Description

本発明は、銅或いは銅基合金表面の酸化皮膜の除去方法に関し、特に詳しくは、酸洗浴中に酸化皮膜が表面に形成された銅或いは銅基合金を浸漬して酸化皮膜を除去した後、電解槽中にて酸化皮膜を含む酸洗液を電気分解してハンドリング性の良好な高純度の銅或いは銅基合金を回収し、電気分解後の酸洗液を酸洗浴中に戻して再利用を可能にする銅或いは銅基合金表面の酸化皮膜の除去方法に関する。
例えば、熱間圧延や熱間押出しなどの熱処理加工が施された後の銅或いは銅基合金は、その表面に生成された酸化被膜や微細な欠陥を除去することを目的として、酸洗或いはエッチング処理が通常に行われている。その酸洗或いはエッチング液には、硫酸や硫酸に過酸化水素を混合した硫酸系の酸や、塩酸、硝酸が用いられ、場合によっては、フッ酸やその他界面活性剤などの添加剤も共用される。近年では、資源回収の観点や排水処理の問題から、酸洗或いはエッチング処理でその液中に溶解された酸化銅や金属銅を電解法で回収すると共に、使用された酸洗液或いはエッチング液を再生利用することが広く試みられている。
特許文献1には、銅の酸洗仕上工程にて生じる銅及び硝酸を含有する廃液から、電解により硝酸及び金属銅粉末を再生し回収する方法として、銅又は銅合金製品の酸洗工程で生じる銅及び硝酸を含有する廃液を、両極のうち少なくとも陽極をフェライト電極とし、かつ、陽極と陰極との間にアニオン隔膜とカチオン隔膜との組合せ、或いは、複数の両性膜の組合せにより、陽極域、中間域及び陰極域を形成させた装置内で、陰極域のpHを0.2〜2.0の範囲内に維持しながら電解処理し、陽極域に硝酸を、陰極域に粉末状態の銅を再生させる方法が開示されている。
特許文献2には、銅合金酸洗廃液を再利用する場合に問題となる、細かい固形物となる錫酸化物、水酸化物を発生させることなく、効率的に錫を除去し、更に処理液中の銅を効率よく回収し、処理後の硫酸を再利用する方法として、廃液を40℃以上に加熱し、錫を選択的に沈降分離処理する前処理を施した後に、再生処理することを特徴とする銅合金酸洗廃液の再生方法が開示されている。
特公昭61−60148号公報 特開2003−342763号公報
従来の銅或いは銅基合金表面に形成された酸化皮膜の除去方法では、酸洗浴中にて酸化皮膜を除去した後に、その酸化皮膜を含む酸洗液を電解槽中にて電気分解して、ハンドリング性の良好な再生原料として利用可能な高純度の銅或いは銅基合金を効率良く回収することが難しく、また、電気分解後の酸洗液を酸洗浴中に戻して再利用することにも無理があった。
本発明では、上述の問題点を解決し、酸洗浴中に表面に酸化皮膜が形成された銅或いは銅基合金を浸漬して酸化皮膜を除去した後、酸化皮膜を含む酸洗液を電解槽中にて電気分解して、ハンドリング性の良好な再生原料として利用可能な高純度の銅或いは銅基合金を効率良く回収し、更に、電気分解後の酸洗液を酸洗浴中に戻し再利用することが可能な銅或いは銅基合金表面の酸化皮膜の除去方法を提供する。
本発明者らは、鋭意検討の結果、酸洗液として、硫酸:50〜400g/L、硝酸、過酸化水素、ペルオキソ二硫酸イオン、3価鉄イオンからなるグループから選択された少なくとも一つの酸化剤:1〜100g/L、芳香族スルホン酸、芳香族スルホン酸塩、アルキルアミンからなるグループから選択された少なくとも一つの添加剤:0.01〜10g/L、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸塩からなるグループから選択された少なくとも一つの添加剤:0.005〜10g/L、および硫酸銅:10〜300g/Lを含有し、表面張力が50dyn/cm未満である酸洗液を使用することにより、酸化皮膜を効率良く除去でき、除去された酸化皮膜を含む酸洗液を電解槽中にて電気分解することにより、ハンドリング性の良好な再生原料として利用可能な高純度の銅或いは銅基合金を回収できることを見出した。
更に、電気分解後の酸洗液に、酸化皮膜除去及び電気分解時に消費された分量に相当する酸化剤及び添加剤を加えて酸洗浴中に戻すことにより、酸洗液を効率良く再利用できることを見出した。
即ち、本発明の銅或いは銅基合金表面の酸化皮膜の除去方法は、銅或いは銅基合金表面に形成された酸化皮膜を除去する方法であって、硫酸:50〜400g/L、硝酸、過酸化水素、ペルオキソ二硫酸イオン、3価鉄イオンからなるグループから選択された少なくとも一つの酸化剤:1〜100g/L、芳香族スルホン酸、芳香族スルホン酸塩、アルキルアミンからなるグループから選択された少なくとも一つの添加剤:0.01〜10g/L、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸塩からなるグループから選択された少なくとも一つの添加剤:0.005〜10g/L、および硫酸銅:10〜300g/Lを含有する酸洗液を含有し、表面張力が50dyn/cm未満である酸洗浴中に、表面に酸化皮膜が形成された銅或いは銅基合金を浸漬して前記酸化皮膜を除去した後、前記除去された酸化皮膜を含む酸洗液を電解槽中にて電気分解して前記酸化皮膜中の銅或いは銅基合金を回収し、更に、電気分解後の酸洗液に前記酸化皮膜除去及び前記電気分解時に消費された分量に相当する前記酸化剤及び前記添加剤を加えた後に前記酸洗浴中に戻し、前記酸洗液として再利用することを特徴とする。
硫酸が50g/L未満では、酸化皮膜の除去効果が低下し、400g/Lを超えると、効果が飽和してコスト的に無駄となる。
酸化剤が1g/L未満では、酸化皮膜の除去効果が低下し、100g/Lを超えると、除去時に発生するガス量が増加し不都合である。発生するガスは、使用される酸化剤によるが、主にNOx、酸素ガスである。
芳香族スルホン酸、芳香族スルホン酸塩、アルキルアミンからなるグループから選択された少なくとも一つの添加剤は、銅或いは銅基合金表面に付着している前工程から持ち込まれる加工油が酸洗液を汚染していても、電気分解時に、ハンドリング性の良好な再生原料として利用可能な高純度の銅或いは銅基合金を陰極上に析出させ、陰極上で過酸化水素が還元分解されることを防ぐ。また、酸洗液中の酸化剤の安定剤として作用するため、酸化剤の消耗を抑える役割も果たす。
その添加量が、0.01g/L未満、或いは、10g/Lを超えても上述の効果は得られない。
アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸塩からなるグループから選択された少なくとも一つの添加剤は、酸洗液中でも化学的に安定で、長期間にわたりの酸洗液の表面張力を下げてミストの飛散を防止し、酸洗液の浸透力を上げて酸洗能力を高める。特に、電気分解時に陰極から発生する酸素ガスに起因する大量の硫酸ミストの飛散を防止することができる。
その添加量が、0.005g/L未満、或いは、10g/Lを超えても上述の効果は得られない。
芳香族スルホン類、芳香族スルホン酸塩、アルキルアミンからなるグループから選択された少なくとも一つの添加剤と、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸塩からなるグループから選択された少なくとも一つの添加剤との組合せにより、本発明での良好な効果を得ることができる。
硫酸銅が10g/L未満では、次のステップでの電気分解の効率が減少し、300g/Lを超えると、飽和溶解度近くになるため硫酸銅が除去液中に析出して無駄となる。
電気分解後の酸洗液に酸化皮膜除去及び電気分解時に消費された分量に相当する酸化剤及び添加剤を加えた後に酸洗浴中に戻すことにより、酸洗液として効率良く再利用することが可能となり、バッチ処理のみでなく、連続での銅或いは銅基合金表面の酸化皮膜の除去も可能となる。銅或いは銅基合金の種類にもよるが、加える(消費された)酸化剤及び添加剤量は、初期量の0.5〜10%程度である。
また、本発明の銅或いは銅基合金表面の酸化皮膜の除去方法は、前記酸洗液の表面張力が50dyn/cm未満であることを特徴とする。
主にアルキルベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸塩からなるグループから選択された少なくとも一つの添加剤により、酸洗液の表面張力を50dyn/cm未満とすることにより、電気分解時に、陰極からの酸素ガスに起因する大量の硫酸ミストの飛散を効率良く防ぐことができ、ハンドリング性の良好な再生原料として利用可能な高純度の銅或いは銅基合金を更に効率良く回収することができる。
また、本発明の再生原料として利用可能な銅或いは銅基合金は、前述の銅或いは銅基合金表面の酸化皮膜の除去方法により得られたことを特徴とする。
酸洗液には、酸化皮膜中に含まれる酸化銅或いは酸化銅基合金、或いは、金属銅或いは金属銅基合金を電気分解で回収する際に必要とされる好適で最適量の電解液成分が含有されているので、特別な手段を加えることなく、除去された酸化皮膜を含む酸洗液を電気分解することができ、効率良く、再生原料として利用可能な銅或いは銅基合金を回収することができる。
また、電気分解にて陰極上に回収された銅或いは銅基合金は、従来技術で回収されるような粉状ではなく、高純度で適度な硬さを有する板状であり、ハンドリング性も良く、洗浄が容易であり、不純物が入り難いので、回収された銅或いは銅基合金を再生原料として溶解鋳造された鋳塊は、不純物の含有量が少なく、その後の熱間圧延や熱間押出しにて割れなどの問題が発生し難い。
本発明の銅或いは銅基合金表面の酸化皮膜の除去方法では、酸洗浴中に表面に酸化皮膜が形成された銅或いは銅基合金を浸漬して酸化皮膜を除去した後、酸化皮膜を含む酸洗液を電解槽中にて電気分解することにより、ハンドリング性の良好な再生原料として利用可能な高純度の銅或いは銅基合金を効率良く回収することができ、電気分解後の酸洗液を酸洗浴中に戻し再利用することが可能となる。
本発明を実施するための一実施対応例の装置の概略図である。
図1は、本発明を実施するための一実施対応例の装置の概略図であり、本発明の酸化皮膜除去装置1では、銅或いは銅基合金表面の酸化皮膜の酸洗液2が満たされた酸洗浴3内に銅或いは銅基合金4が浸漬され、その表面の酸化皮膜が酸洗液2中に除去される。酸化皮膜は、前工程での熱処理などの程度にもよるが、厚さが0.05〜10μmであり、酸化皮膜の除去液2の温度は、30〜60℃が適切であり、浸漬時間は、30〜120分であることが好ましい。酸化皮膜が除去された銅或いは銅基合金4は、酸洗浴3から搬送され、次の工程に供される。
酸洗液2は、硫酸:50〜400g/L、硝酸、過酸化水素、ペルオキソ二硫酸イオン、3価鉄イオンからなるグループから選択された少なくとも一つの酸化剤:1〜100g/L、芳香族スルホン酸、芳香族スルホン酸塩、アルキルアミンからなるグループから選択された少なくとも一つの添加剤:0.01〜10g/L、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸塩からなるグループから選択された少なくとも一つの添加剤:0.005〜10g/L、硫酸銅:10〜300g/Lを含有する。
硫酸が50g/L未満では、酸化皮膜の除去効果が低下し、400g/Lを超えると、効果が飽和してコスト的に無駄となる。
酸化剤が1g/L未満では、酸化皮膜の除去効果が低下し、100g/Lを超えると、除去時に発生するガス量が増加し不都合である。発生するガスは、使用される酸化剤によるが、主にNOx、酸素ガスである。酸化剤としては、例えば、過酸化水素、ペルオキソ二硫酸イオン、3価鉄イオンなどを用いることができる。
芳香族スルホン酸、芳香族スルホン酸塩、アルキルアミンからなるグループから選択された少なくとも一つの添加剤は、銅或いは銅基合金表面4に付着している前工程から持ち込まれる加工油が酸洗液2を汚染しても、電気分解時に、ハンドリング性の良好な再生原料として利用可能な高純度の銅或いは銅基合金8を陰極7上に析出させることを可能とし、陰極7上で過酸化水素が還元分解されることを防ぐ。また、酸洗液2中の酸化剤の安定剤として作用するため、酸化剤の消耗を抑える役割も果たす。
その添加量が、0.01g/L未満、或いは、10g/Lを超えても上述の効果は得られない。
この添加剤としては、例えば、芳香族スルホン酸としてベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、クメンスルホン酸、フェノールスルホン酸、クレゾールスルホン酸、スルホサリチル酸、スルファニル酸が挙げられる。
アルキルアミンとしてはメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミンを用いることができる。
アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸塩からなるグループから選択された少なくとも一つの添加剤は、酸洗液2中でも化学的に安定で、長期間にわたりの酸洗液2の表面張力を下げてミストの飛散を防止し、酸洗液2の浸透力を上げて酸洗能力を高める効果もある。特に、電気分解時に陰極7から酸素ガスが発生し、大量の硫酸ミストが飛散するが、アルキルベンゼンスルホン酸を添加することにより、酸洗液の表面張力を下げ、硫酸ミストの飛散を防止することができる。
その添加量が、0.005g/L未満、或いは、10g/Lを超えても上述の効果は得られない。
この添加剤としては、例えば、オクチルベンゼンスルホン酸、ノニルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ウンデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、トリデシルベンゼンスルホン酸、テトラデシルベンゼンスルホン酸、およびこれらの混合物を用いることができる。
芳香族スルホン酸、芳香族スルホン酸塩、アルキルアミンからなるグループから選択された少なくとも一つの添加剤と、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸塩からなるグループから選択された少なくとも一つの添加剤との組合せにより、本発明の良好な効果を得ることができる。
硫酸銅が10g/L未満では、次のステップでの電気分解の効率が減少し、300g/Lを超えると、飽和溶解度近くになるため硫酸銅が除去液中に析出して無駄となる。
また、酸洗液2の表面張力は、50dyn/cm未満であることが好ましい。主にアルキルベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸塩からなるグループから選択された少なくとも一つの添加剤により、酸洗液2の表面張力を50dyn/cm未満とすることにより、電気分解時に陰極7からの酸素ガスに起因する大量の硫酸ミストの飛散を効率的に防ぐことができ、ハンドリング性の良好な再生原料として利用可能な高純度の銅或いは銅基合金8を効率良く回収することができる。
次に、酸化皮膜除去装置1内の除去された酸化皮膜を含む酸洗液Xは、電解処理装置5にポンプP1により搬送される。電解処理装置5には、陽極6、陰極7がセットされ、その間に通電することにより、除去された酸化皮膜を含む酸洗液Xが電気分解され、効率良く再生原料として利用可能な銅或いは銅基合金8が陰極7上に回収する。
陰極7は、一般的にはタフピッチ銅板を使用するが、回収される銅或いは銅基合金に合わせて最適な材料を使用することが好ましい。陽極6には酸化イリジウムコートチタン板を使用することが好ましく、酸化皮膜の程度にもよるが、電流密度3〜10A/dm2にて6〜10時間程度の電気分解を施すことにより、酸化皮膜からの銅或いは銅基合金8が、陰極7上に取扱い容易な板形状にて析出される。
酸洗液2には、酸化皮膜中に含まれる酸化銅或いは酸化銅基合金、或いは、金属銅或いは金属銅基合金を電解回収する際に必要とされる好適で最適量の電解液成分が含有されているので、特別な手段を加えることなく、除去された酸化皮膜を含む酸洗液Aを電気分解することができ、これにより、効率良く再生原料として利用可能な銅或いは銅基合金8を回収することができる。
電気分解にて陰極上に回収された銅或いは銅基合金8は、従来技術で回収されるような粉状ではなく、高純度で適度な硬さを有する板状であり、ハンドリング性も良く、洗浄が容易であり、不純物が入り難いので、回収された銅或いは銅基合金8を再生原料として溶解鋳造された鋳塊は、不純物の含有量が少なく、その後の熱間圧延や熱間押出しにて割れが発生し難いという利点を有する。
次に、電解処理装置5内の電気分解後の酸洗液Yは、分析機器により酸化皮膜除去及び電気分解時に消費された分量の酸化剤及び添加剤を検出し、それに相当する酸化剤及び添加剤C加えた後に、ポンプP2により酸化皮膜除去装置1に搬送され、酸洗液として循環再利用される。加えられる酸化剤及び添加剤Z量は、酸化皮膜の付着量や銅或いは銅基合金の種類にもよるが、消費前の量の0.5〜10%程度である。
上述の処理は、バッチ処理での対応であるが、連続処理でも良く、銅或いは銅基合金の種類及びその酸化皮膜の度合いにより、最適な浸漬時間を選定して、酸洗液2を循環させ、連続的にその表面の酸化皮膜の除去を行うことも可能である。
長さ500mm、幅100mm、厚さ30mmの三菱マテリアル株式会社製のタフピッチ銅(Cu:99.92%、O:300ppm、P:0ppm)板に、熱間圧延加工(600℃、圧下率50%)を施し、急冷して、厚さ15mmのタフピッチ銅板を作製した。このタフピッチ銅板の表面には、約0.7μmの厚さの酸化皮膜が形成されていた。
このタフピッチ銅板を表1に示す組成及び表面張力の酸洗液1m3を含有する酸洗浴に40℃にて30分間浸漬した後、洗浄して酸化皮膜を除去し、酸化被膜除去後のタフピッチ銅板の表面を目視にて観察した。
表1のAは硝酸、Bは過酸化水素、Cはペルオキソ二硫酸イオン、Dは3価鉄イオン、Eはベンゼンスルホン酸、Fはベンゼンスルホン酸ナトリウム、Gはポリオキシエチレンアミン、Hはドデシルベンゼンスルホン酸、Iはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを表す。表1にて、二種類以上添加したものについては、それらを並べて表記し、その並びの順序でそれぞれの濃度を記載した。
その結果を表1に示す。タフピッチ銅板の表面の酸化被膜が完全に除去され、ガス付着の痕跡が見られなかったものを○とし、酸化被膜が完全には除去されず、ガス付着の痕跡が見られたもの×とした。
参考として、通常の混酸(硫酸+硝酸)を酸洗液として使用したところ、40℃にて70分浸漬しなければ、酸化被膜の除去は終了せず、ガス付着の痕跡がかなり見られた。
Figure 0005886022
次に、除去された酸化皮膜を含む表1の組成の酸洗液全量を電解槽に移し、陰極にタフピッチ銅板、陽極に酸化イリジウムコートチタン板を用いて、温度40℃、電流密度5A/dm2、極間距離50mm、流速0.5m/minにて8時間電気分解を施し、陰極上に酸化皮膜からの銅を板状に析出させた。この板状銅を電解槽から回収して、平均表面粗さRa、銅の純度、表面の硬度を測定した。
(イ)銅板表面の表面粗さRaは、SPM(SIIナノテクノロジー社)を用いて測定した。
(ロ)銅板表面の硬度の測定は、MVK−G1(AKASHI社)を用いて、ビッカース硬さ試験法、JIS Z 2244に準じてN=3で行った。
(ハ)銅板の純度の測定は、銅の中に含まれる不純物を測定して、その不純物比率を100%から差し引いて求めた。
(ニ)不純物測定には、Cを除いてグロー放電質量分析装置(GD-MS:Glow Discharge Mass Spectrometry)を用いて行い、Cは脱脂した銅試料を酸素雰囲気中高周波加熱燃焼により発生するCO2ガスの赤外吸収を測定してC量に換算した。
その結果を表2に示す。
これらの結果より、実施例の板状銅は、高純度で、適度の硬度を有しており、ハンドリング性が良く、次の洗浄工程において洗浄液中のSの影響を受け難いことがわかる。
Figure 0005886022
次に、これらの板状銅を硫酸水溶液で洗浄した後、溶解鋳造して鋳塊を作製し、鋳塊中のイオウ含有量(S含有量)を測定した。S含有量は赤外吸収法にて測定した。また、その鋳塊を600℃に加熱して押出加工により棒材を成形し、割れの有無を目視にて観察した。その結果を表2に示す。
これらの結果より、実施例の板状銅より溶解鋳造した鋳塊は、鋳塊中のS含有量が小さく、その鋳塊より押出加工された棒材は、割れが無いことがわかる。
次に、電気分解後の酸洗液を分析して、酸洗液に消費された量に相当する酸化剤及び添加剤(0.002g)を加え、その全量を酸洗浴に戻し、次の酸洗液として使用して、他のタフピッチ銅の酸化皮膜の除去を実施例1〜8につき同様な手法にて実施した。これを更に2回繰り返し、計4回目の酸化皮膜除去のテストの各結果を表3に示す。これより、4回目のテストでも1回目と変わらない結果であることがわかる。
Figure 0005886022
これらの結果より、本発明の銅或いは銅基合金表面の酸化皮膜の除去方法により得られた回収銅或いは銅合金は、ハンドリング性の良好な再生原料として利用可能な高純度の銅或いは銅基合金を効率良く回収することができ、本発明での酸洗液は、消費された量に相当する酸化剤及び添加剤を加えることにより、酸洗浴中にて充分に再利用可能であることがわかる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることは可能である。
1 酸化皮膜除去装置
2 酸洗液
3 酸洗浴
4 銅或いは銅基合金
5 電解処理装置
6 陽極、
7 陰極
8 陰極上に回収された銅或いは銅基合金
P1 ポンプ
P2 ポンプ
X 酸化皮膜を含む酸洗液
Y 電気分解後の酸洗液
Z 加える酸化剤及び添加剤

Claims (2)

  1. 銅或いは銅基合金表面に形成された酸化皮膜を除去する方法であって、硫酸:50〜400g/L、硝酸、過酸化水素、ペルオキソ二硫酸イオン、3価鉄イオンからなるグループから選択された少なくとも一つの酸化剤:1〜100g/L、芳香族スルホン酸、芳香族スルホン酸塩、アルキルアミンからなるグループから選択された少なくとも一つの添加剤:0.01〜10g/L、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸塩からなるグループから選択された少なくとも一つの添加剤:0.005〜10g/L、および硫酸銅:10〜300g/Lを含有する酸洗液を含有し、表面張力が50dyn/cm未満である酸洗浴中に、表面に酸化皮膜が形成された銅或いは銅基合金を浸漬して前記酸化皮膜を除去した後、前記除去された酸化皮膜を含む酸洗液を電解槽中にて電気分解して前記酸化皮膜中の銅或いは銅基合金を回収し、更に、電気分解後の酸洗液に前記酸化皮膜除去及び前記電気分解時に消費された分量に相当する前記酸化剤及び前記添加剤を加えた後に前記酸洗浴中に戻し、前記酸洗液として再利用することを特徴とする銅或いは銅基合金表面の酸化皮膜の除去方法。
  2. 請求項1の方法において、除去された酸化皮膜を含む酸洗液を電解槽中にて電気分解して板状の銅或いは銅基合金を陰極上に析出させて回収する銅或いは銅基合金表面の酸化皮膜の除去方法。
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