以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る車両用制御装置のブロック図である。図1に示す車両用制御装置1は、自車両の運転者の走行を支援するものであって、エンジンの自動停止及び自動始動を行うアイドルストップ機能と、先行車両との車間距離に基づいて先行車両に追従して走行する追従走行機能とを備えたものである。
このような車両用制御装置1は、図1に示すように、先行車状態検出センサ11と、車輪速センサ12と、ブレーキペダル操作検出センサ13とを備えている。また、車両用制御装置1は、先行車状態演算部(加速度検出手段)20と、自車両車速演算部30と、ブレーキペダル操作検出処理部40と、アクセサリスイッチ50(図1ではACC SWと記載)とを備えている。さらに、車両用制御装置1は、先行車追従制御部60と、ブレーキ油圧制御部(自動停車制御手段、自動発進制御手段)70と、エンジン制御部80とを備えている。
先行車状態検出センサ11は、例えばレーザレーダセンサにより構成されており、レーザ光を出射する出射部と、先行車両等にて反射したレーザ光を受信する受信部とを備えている。車輪速センサ12は、自車両の車輪軸近傍に取り付けられ、車輪の回転数に応じたパルスを出力するものである。ブレーキペダル操作検出センサ13は、自車両のブレーキペダルの操作に応じた信号を出力するものである。
先行車状態演算部20は、出射したレーザ光と受信した反射光との関係から先行車両の状態を演算するものである。この先行車状態演算部20は、レーザ光を出射してから反射光として受信されるまでの時間や受信の際の入射角度などから、先行車両の存在の有無、先行車両との車間距離、及び先行車両との相対速度などを演算する。
自車両車速演算部30は、車輪速センサ12からのパルス信号と車輪の外径とから、自車両の速度を演算するものである。ブレーキペダル操作検出処理部40は、ブレーキペダル操作検出センサ13から受信した信号に基づいてブレーキペダルの操作結果を求めるものである。アクセサリスイッチ50は、自車両のメータ、オーディオ、ヘッドライト及びブレーキランプ等への電力供給を可能とするスイッチである。
図2は、図1に示した先行車追従制御部60の詳細を示すブロック図である。なお、図2では、接続関係を明確とするために、先行車追従制御部60以外の構成についても図示する。
図2に示す先行車追従制御部60は、アイドルストップ機能と追従走行機能とを実現するための制御部である。この先行車追従制御部60は、先行車情報取得部61と、自車情報取得部62と、設定車速設定部63と、設定車間距離設定部64と、追従走行制御部(発進加速度演算手段、停止加速度演算手段)65と、エンジン自動停止判断部66と、エンジン再始動判断部67とを備えている。
先行車情報取得部61は、先行車両の情報を取得するものである。具体的に先行車情報取得部61は、先行車状態演算部20から、先行車両の有無を示す先行車補足状態と、先行車両との車間距離と、先行車両の速度(車速ゼロの停止状態を含む)と、先行車両の加速度との情報を取得する。また、先行車情報取得部61は、取得した上記情報を追従走行制御部65と、エンジン自動停止判断部66と、エンジン再始動判断部67とに出力する。
自車情報取得部62は、自車情報を取得するものである。具体的に自車情報取得部62は、自車両車速演算部30から自車両の車速情報を取得し、ブレーキペダル操作検出処理部40からブレーキペダルの操作結果の情報を取得する。また、自車情報取得部62は、取得した上記情報を追従走行制御部65と、エンジン自動停止判断部66と、エンジン再始動判断部67とに出力する。
設定車速設定部63は、自車情報取得部62からの自車両の車速情報と、アクセサリスイッチ50のスイッチ情報とに基づいて、設定車速を設定するものである。具体的にアクセサリスイッチ50は、追従走行制御の開始スイッチ、追従走行制御の終了スイッチ、及び、設定車速を設定するスイッチを備えている。設定車速設定部63は、追従走行制御の開始スイッチが操作されると、スイッチ操作時における自車両の車速を設定車速として設定する。また、設定車速設定部63は、追従走行制御の開始スイッチが操作された後に、設定車速を設定するスイッチが操作されると、スイッチ操作に応じて設定車速に変更する。また、設定車速設定部63は、設定車速の情報を追従走行制御部65に送信する。
設定車間距離設定部64は、アクセサリスイッチ50のスイッチ情報に基づいて、設定車間距離を設定するものである。具体的にアクセサリスイッチ50は、設定車間距離を変更するスイッチを有し、このスイッチが操作される毎に、設定車間距離が「長」「中」「短」と変更されるようになっている。設定車間距離設定部64は、このようなアクセサリスイッチ50にて指定される「長」「中」「短」の情報から、設定車間距離を設定することとなる。また、設定車間距離設定部64は、設定車間距離の情報を追従走行制御部65に送信する。
追従走行制御部65は、追従走行制御の演算を行うものである。具体的に追従走行制御部65は、先行車情報取得部61からの先行車補足状態と先行車両との車間距離と先行車両の速度と先行車両の加速度、自車情報取得部62からの自車両の速度、設定車速設定部63からの設定車速、及び、設定車間距離設定部64からの設定車間距離に基づいて、ブレーキ油圧指令値と、エンジントルク指令値と、追従制御情報とを演算する。また、追従走行制御部65は、演算により得られたブレーキ油圧指令値の情報をブレーキ油圧制御部70に送信し、エンジントルク指令値の情報をエンジン制御部80に送信する。さらに、追従走行制御部65は、追従制御情報をエンジン自動停止判断部66と、エンジン再始動判断部67とを送信する。
エンジン自動停止判断部66は、エンジンを自動停止すべきか否かを判断するものである。具体的にエンジン自動停止判断部66は、自車情報取得部62からのブレーキペダル操作結果の情報、追従走行制御部65からの追従制御情報、エンジン再始動判断部67により前回処理時にエンジンが再始動されたか否かの情報に基づいて、エンジンを自動停止すべきか否かを判断する。この際、エンジン自動停止判断部66は、上記情報が予め定められたエンジンの自動停止条件を満たすか否かを判断することにより、エンジンを自動停止すべきか否かを判断する。また、エンジン自動停止判断部66は、エンジンを自動停止すべきか否かの判断結果の情報をエンジン制御部80に出力する。
エンジン再始動判断部67は、自動停止させられたエンジンを再始動するか否かを判断するものである。具体的にエンジン再始動判断部67は、先行車情報取得部61からの先行車両との車間距離の情報、自車情報取得部62からのブレーキペダル操作結果の情報、追従走行制御部65からの追従制御情報、及び、エンジン自動停止判断部66からのエンジンの自動停止に関する情報に基づいて、エンジンを再始動すべきか否かを判断する。この際、エンジン再始動判断部67は、上記情報が予め定められたエンジンの再始動条件を満たすか否かを判断することにより、自動停止させられたエンジンを再始動するか否かを判断する。また、エンジン再始動判断部67は、エンジンを再始動すべきか否かの判断結果の情報をエンジン制御部80に出力する。
図3は、図1に示したブレーキ油圧制御部70及びエンジン制御部80の詳細を示すブロック図である。なお、図3では、接続関係を明確とするために、ブレーキ油圧制御部70及びエンジン制御部80以外の構成についても図示する。
図3に示すブレーキ油圧制御部70は、ブレーキ油圧の制御を行うものである。このブレーキ油圧制御部70は、自車両が先行車両の追従制御中である場合、ブレーキ油圧が先行車追従制御部60から送信されたブレーキ油圧指令値となるようにブレーキアクチュエータを制御する。
エンジン制御部80は、エンジントルク制御部(自動停車制御手段、自動発進制御手段)81と、エンジン自動停止処理部(自動停止手段)82と、エンジン再始動処理部(再始動手段)83とを備えている。
エンジントルク制御部81は、エンジントルクの制御を行うものである。具体的にエンジントルク制御部81は、自車両が設定車速による一定速度走行である場合や、自車両が先行車両の追従制御中である場合、エンジントルクが先行車追従制御部60から送信されたエンジントルク指令値となるようにエンジンスロットルを制御する。
エンジン自動停止処理部82は、エンジンの自動停止を行うものである。具体的にエンジン自動停止処理部82は、自車両が先行車両の追従制御中において、エンジン自動停止判断部66によりエンジンを自動停止させると判断された場合、エンジンを自動停止させる。なお、エンジン自動停止処理部82は、自車両が先行車両の追従制御中でない場合においても、エンジン自動停止判断部66によりエンジンを自動停止させると判断されるとエンジンを自動停止させるが、その手法は多数あり公知の適切な手法が用いられる。
エンジン再始動処理部83は、エンジンの再始動を行うものである。具体的にエンジン再始動処理部83は、自車両が先行車両の追従制御中において、エンジン再始動判断部67によりエンジンを再始動させると判断された場合、エンジンを再始動させる。なお、エンジン再始動処理部83は、自車両が先行車両の追従制御中でない場合においても、エンジン再始動判断部67によりエンジンを再始動させると判断されたとき、エンジンを再始動させるが、その手法は多数あり公知の適切な手法が用いられる。
次に、本実施形態に係る車両用制御装置1の処理の概要を説明する。まず、自車両の運転者がアクセサリスイッチ50を操作し、追従制御を開始させたとする。この際、設定車速設定部63は設定車速を設定すると共に、設定車間距離設定部64は車間距離を設定する。そして、これらの情報は追従走行制御部65に送信される。
追従走行制御部65は、現在における先行車両との車間距離が設定車間距離設定部64により設定される車間距離よりも大きい場合、設定車速で走行するようにブレーキ油圧指令値と、エンジントルク指令値とを算出する。そして、追従走行制御部65は、ブレーキ油圧指令値とエンジントルク指令値との情報を送信し、ブレーキ油圧制御部70とエンジン制御部80のエンジントルク制御部81は指令値に基づいて車両制御を行う。
また、現在の車間距離が設定車間距離設定部64により設定される車間距離以下となった場合、追従走行制御部65は、車間距離を維持するようにブレーキ油圧指令値と、エンジントルク指令値とを算出する。そして、追従走行制御部65は、上記と同様に車両制御を行う。
また、先行車両が停止するなどの自車両の停止条件が成立した場合、追従走行制御部65は先行車両に追従して自車両を自動停止させる。
また、エンジン自動停止判断部66は、先行車追従制御部65とは別にエンジンの自動停止判断を行っており、予め定められたエンジンの自動停止条件を満たすか否かを判断している。この際、エンジン自動停止判断部66は、例えばブレーキペダルが踏み込まれているか、エアコンが作動しているか、前回処理においてエンジンの再始動条件を満たしていないかなど、エンジンを停止させても支障がない場合、エンジンを停止させると判断する。そして、エンジン自動停止判断部66は、エンジン自動停止処理部82に対してエンジンの自動停止判断結果を送信する。エンジン自動停止処理部82は、自動停止判断結果がエンジンを自動停止させるものである場合、エンジンを自動停止させることとなる。
また、エンジン再始動判断部67は、先行車追従制御部65及びエンジン自動停止判断部66とは別にエンジンの再始動判断を行っており、予め定められたエンジンの再始動条件を満たすか否かを判断している。この際、エンジン再始動判断部67は、エンジンの自動停止後であるか、車間距離が設定車間距離より大きくなったかなど、エンジンを再始動させるべきと判断できる場合に、エンジンを再始動させると判断する。そして、エンジン再始動判断部67は、エンジン再始動処理部83に対してエンジンの再始動判断結果を送信する。エンジン再始動処理部83は、再始動判断結果がエンジンを再始動させるものである場合、エンジンを再始動させることとなる。
さらに、本実施形態においては以下に示す特徴的な手法によりエンジンを再始動させる。まず、先行車状態演算部20は、先行車状態検出センサ11からの信号に基づいて、先行車両の加速度を算出する。追従走行制御部65は、先行車情報取得部61から送信される先行車両の加速度に基づいて、自車両を自動発進させる際の発進目標加速度を演算する。すなわち、追従走行制御部65は、例えば先行車両に追従して自車両が自動停止し、その後先行車両が発進する場合に自車両をどの程度の加速度で発進させるかを示す発進目標加速度(目標加速度の1種)を演算する。この際、発進目標加速度は、先行車両の加速度が大きくなるほど、大きな値となるように演算される。エンジン再始動判断部67は、この発進目標加速度をエンジンの再始動条件の1つとし、再始動条件を満たす場合にエンジンを再始動させることとなる。
これにより、例えば、先行車両が急発進した場合には先行車両に追従すべく発進目標加
速度が高くされ、エンジンの始動タイミングを早くでき、自車両と先行車両の車間距離が長くなり過ぎるという違和感を軽減することが可能となる。また、先行車両が緩発進した場合には発進目標加速度が小さくされ、エンジンの始動タイミングを遅くでき、自車両と先行車両の車間距離が短いにも拘わらず自車両が発進してしまうという違和感を軽減することが可能となる。従って、適切なタイミングで自動停止後のエンジンを再始動させることができることとなる。
具体的にエンジン再始動判断部67は、発進目標加速度が所定値より大きいことを再始動条件の1つとしている。ここで、所定値とは、例えばクリープトルクによる自車両発進時の加速度である。この場合、少なくとも発進目標加速度がクリープトルク加速度を超えない限り、エンジンが再始動されることがない。これにより、クリープトルク加速度以下の走行という自車両についてほぼ走行する必要がない場合には、エンジンを再始動させることなく、不要なエンジン始動を防止してアイドルストップ効果が低下してしまう事態を抑制することができる。
より詳細に説明すると、エンジン再始動判断部67は、このような発進目標加速度が所定値よりも大きい状態が、所定時間継続することを再始動条件の1つとしている。これにより、例えば発進目標加速度が瞬時的に所定値よりも大きくなった場合などに、エンジンを再始動させることなく、一層不要なエンジン始動を防止してアイドルストップ効果が低下してしまう事態を抑制することができる。
さらに、所定時間は、発進目標加速度に応じて決定される。図4は、所定時間と発進目標加速度との関係を示すグラフである。図4に示すように、発進目標加速度が0.25m/s2以下の場合、所定時間は1sとされる。また、発進目標加速度が0.25m/s2より大きくなると所定時間は比例的に減少していき、発進目標加速度が1.25m/s2となると所定時間は0.5sとされる。さらに、発進目標加速度が1.25m/s2を超えても所定時間は0.5sのままである。
このように、所定時間は、発進目標加速度が大きくなるほど短くされる。これにより、先行車両が急発進して発進目標加速度が大きくなった場合には所定時間を短くしてエンジンが早期に再始動されるようにすることが可能となる。一方、先行車両が緩発進して発進目標加速度が小さくなった場合には所定時間を長くしてエンジンがやや遅めに再始動されるようにすることが可能となる。
さらに、本実施形態においては以下に示す特徴的な手法によりエンジンを自動停止させる。追従走行制御部65は、先行車情報取得部61から送信される先行車両の加速度に基づいて、自車両を自動停止させる際の停止目標加速度(目標加速度の1種)を演算する。すなわち、追従走行制御部65は、例えば先行車両に追従して自車両が自動停止する場合に自車両をどの程度の加速度で停止させるかを示す停止目標加速度を演算する。エンジン再始動判断部67は、この停止目標加速度が規定値よりも小さいことをエンジンの停止条件の1つとし、停止条件を満たす場合にエンジンを停止させることとなる。ここで、規定値とは、例えばクリープトルクによる走行から自車両が停止する際の加速度である。
これにより、少なくとも停止目標加速度が規定値より減速度が小さくならない限り、エンジンが停止されることがない。すなわち、エンジンが自動停止されるためには、自車両がクリープトルクからの停止よりも大きな減速度で減速するような停止目標加速度が算出されていることが必要となる。よって、ある程度大きな停止目標加速度が算出されて車両が停車するような場合にエンジンが自動停止されることとなり、エンジンの自動停止にあたり違和感を軽減することができる。
より詳細に説明すると、ある程度大きな減速度を有する停止目標加速度が算出されない場合にエンジンの自動停止が行われてしまうと、例えばクリープ走行時において先行車両との位置関係から何度も停止と再始動とを繰り返してしまうこともあり、非常に違和感が大きくなってしまうが、上記の如く停止目標加速度が規定値よりも小さいことを停止条件の1つとすることで、このような違和感が生じてしまうことを防止することができる。
さらに詳細に説明すると、エンジン停止判断部66は、このような停止目標加速度が規定値よりも小さく、且つ、自車両が停止している状態が、規定時間継続することを停止条件の1つとしている。これにより、例えば停止目標加速度が瞬時的に規定値よりも小さくなった場合などに、エンジンを自動停止させることなく、不要なエンジン停止を防止して運転者に与える違和感を一層軽減することができる。
次に、本実施形態に係る車両用制御方法を詳細に説明する。図5は、図2に示した追従走行制御部65の処理を示すフローチャートである。なお、図5に示す処理は所定のサンプリング時間毎に実行される。
まず、追従走行制御部65は、各種データを取得する(S1)。この処理において追従走行制御部65は、先行車情報取得部61から先行車補足状態、先行車両との車間距離、先行車両の速度、及び先行車両の加速度の情報を取得する。また、追従走行制御部65は、自車情報取得部62から自車両の速度、及びブレーキペダル操作結果の情報を取得する。さらに、追従走行制御部65は、設定車速設定部63から設定車速の情報を取得すると共に、設定車間距離設定部64から設定車距離の情報を取得する。
次いで、追従走行制御部65は、追従制御車速指令値Vaccを演算する(S2)。具体的に追従走行制御部65は、ステップS1にて取得した先行車補足状態、先行車両との車間距離、先行車両の速度、及び自車両の速度の情報に基づいて、追従制御車速指令値Vaccを算出する。なお、この処理において追従制御車速指令値Vaccは、例えば特開2003−312309号公報に記載のようにして演算される。
次に、追従走行制御部65は、車速サーボ演算を行う(S3)。具体的に追従走行制御部65は、自車両の速度がステップS2にて算出した追従制御車速指令値Vaccとなるように、目標加速度を算出する。
その後、追従走行制御部65は、停止保持モードに移行する否かを判断する(S4)。ここで、停止保持モードとは、自車両が停止している状態を自動的に保持する制御を行うモードである。この処理において追従走行制御部65は、ステップS1にて取得した先行車補足状態、先行車両との車間距離、先行車両の速度、自車両の速度、及び、ステップS2にて算出した追従制御車速指令値Vaccに基づいて、停止保持モードに移行する否かを判断する。より詳細に追従走行制御部65は、例えば先行車両を補足しており、先行車両との車間距離が所定距離(例えば4m)であり、先行車両の速度が所定速度(例えば0km/h)であり、自車両の速度が所定速度(例えば0km/h)であり、且つ、追従制御車速指令値Vaccが所定の値(例えば0km/h)となる状態が、所定の時間(例えば2s)以上継続した場合に、停止保持モードに移行すると判断する。
停止保持モードに移行しないと判断した場合(S4:NO)、追従走行制御部65は、ホイールトルク分配演算を行う(S5)。この処理において追従走行制御部65は、ステップS3にて算出された目標加速度を、エンジントルク及びブレーキトルクに分配し、それぞれに応じたエンジントルク指令値及びブレーキ油圧指令値を算出する。その後、処理はステップS8に移行する。
一方、停止保持モードに移行すると判断した場合(S4:YES)、追従走行制御部65は、停止保持モードにおけるエンジントルク指令値を演算する(S6)。具体的に追従走行制御部65は、エンジントルク指令値を−200Nmなどの特定の値とする。
次いで、追従走行制御部65は、停止保持モードにおけるブレーキ油圧指令値を演算する(S7)。具体的に追従走行制御部65は、ブレーキ油圧指令値を30MPaなどの特定の値とする。なお、この処理では自車両の走行路の勾配を推定して勾配に応じたブレーキ油圧指令値を算出してもよい。
ステップS8において追従走行制御部65は、エンジントルク指令値を出力する(S8)。このとき、追従走行制御部65は、ステップS5又はステップS6において演算されたエンジントルク指令値を出力する。
その後、追従走行制御部65は、ブレーキ油圧指令値を出力する(S9)。このとき、追従走行制御部65は、ステップS5又はステップS7において演算されたブレーキ油圧指令値を出力する。
次いで、追従走行制御部65は、追従走行制御情報を出力する(S10)。この処理において追従走行制御部65は、自車両が停止保持モードであるか否かの情報をエンジン自動停止判断部66とエンジン再始動判断部67とに送信する。また、追従走行制御部65は、追従制御中であるか否かの情報をエンジン自動停止判断部66、エンジン再始動判断部67、ブレーキ油圧制御部70、及び、エンジン制御部80に送信する。
さらに、ステップS10において追従走行制御部65は、ステップS3にて演算した目標加速度をエンジン自動停止判断部66とエンジン再始動判断部67とに送信する。その後、図5に示した処理は終了する。
図6は、図2に示したエンジン自動停止判断部66の処理を示すフローチャートである。なお、図6に示す処理は所定のサンプリング時間毎に実行される。
図6に示すように、エンジン自動停止判断部66は、各種データを取得する(S11)。この処理においてエンジン自動停止判断部66は、自車情報取得部62からブレーキペダル操作結果の情報を取得すると共に、追従走行制御部65から停止保持モードであるか否かの情報を取得する。さらに、エンジン自動停止判断部66は、エンジン再始動判断部67から前回処理時におけるエンジンの再始動判断結果の情報を取得する。
加えて、本実施形態においてエンジン自動停止判断部66は、追従走行制御部65から目標加速度の情報を取得する。
次いで、エンジン自動停止判断部66は、エンジンが自動停止中であるか否かを判断する(S12)。この処理においてエンジン自動停止判断部66は、前回処理時にエンジンを自動停止させると判断しており、且つ、前回処理時にエンジンの再始動が行われていない場合、エンジンの自動停止中であると判断する(S12:YES)。そして、エンジン自動停止判断部66は、エンジンの自動停止を継続すると判断し(S17)、処理はステップS19に移行する。
一方、エンジン自動停止判断部66は、前回処理時にエンジンを自動停止させると判断しておらず、又は、前回処理時にエンジンの再始動が行われた場合、エンジンの自動停止中でないと判断する(S12:NO)。そして、エンジン自動停止判断部66は、現在停止保持モード中であるか否かを判断する(S13)。この処理においてエンジン自動停止
判断部66は、ステップS11において取得した停止保持モードであるか否かの情報に基づいて判断する。
現在停止保持モードでないと判断した場合(S13:NO)、エンジン自動停止判断部66は、エンジンを自動停止させないと判断し(S18)、処理はステップS19に移行する。一方、現在停止保持モードであると判断した場合(S13:YES)、エンジン自動停止判断部66は、ステップS11にて取得した目標加速度(停止目標加速度)が規定値未満であるか否かを判断する(S14)。
停止目標加速度が規定値未満でないと判断した場合(S14:NO)、エンジン自動停止判断部66は、エンジンを自動停止させないと判断し(S18)、処理はステップS19に移行する。一方、停止目標加速度が規定値未満であると判断した場合(S14:YES)、エンジン自動停止判断部66は、停止目標加速度が規定値未満である状態が規定時間継続したか否かを判断する(S15)。なお、ステップS15の時点においては、エンジン自動停止保持モードであり自車両の速度がゼロとなっていることが確認されている。
規定時間継続していないと判断した場合(S15:NO)、エンジン自動停止判断部66は、エンジンを自動停止させないと判断し(S18)、処理はステップS19に移行する。一方、規定時間継続したと判断した場合(S15:YES)、エンジン自動停止判断部66は、予め定められたエンジンの自動停止条件(停止目標加速度以外の条件)が成立したか否かを判断する(S16)。
エンジンの自動停止条件が成立したと判断した場合(S16:YES)、エンジン自動停止判断部66は、エンジンを自動停止させると判断し(S17)、処理はステップS19に移行する。一方、エンジンの自動停止条件が成立していないと判断した場合(S16:NO)、エンジン自動停止判断部66は、エンジンを自動停止させないと判断し(S18)、処理はステップS19に移行する。
ステップS19においてエンジン自動停止判断部66は、ステップS17又はステップS18において判断されたエンジン自動停止の判断結果の情報をエンジン再始動判断部67及びエンジン制御部80に出力する(S19)。その後、図6に示す処理は終了する。
図7は、図2に示したエンジン再始動判断部67の処理を示すフローチャートである。なお、図7に示す処理は所定のサンプリング時間毎に実行される。
図7に示すように、エンジン再始動判断部67は、各種データを取得する(S21)。この処理においてエンジン再始動判断部67は、先行車情報取得部61から先行車両との車間距離、及び、自車情報取得部62からブレーキペダル操作結果の情報を取得すると共に、追従走行制御部65から停止保持モードであるか否かの情報を取得する。さらに、エンジン自動停止判断部66は、エンジン自動停止判断部66から前回処理時におけるエンジンの自動停止判断結果の情報を取得する。
加えて、本実施形態においてエンジン再始動判断部67は、追従走行制御部65から目標加速度の情報を取得する。
次いで、エンジン再始動判断部67は、エンジンが自動停止中であるか否かを判断する(S22)。この処理においてエンジン再始動判断部67は、前回処理時にエンジンを自動停止させると判断しており、且つ、前回処理時にエンジンの再始動が行われていない場合、エンジンの自動停止中であると判断する(S22:YES)。そして、エンジン再始動判断部67は、処理はステップS23に移行する。
一方、エンジン自動停止判断部66は、前回処理時にエンジンを自動停止させると判断しておらず、又は、前回処理時にエンジンの再始動が行われた場合、エンジンの自動停止中でないと判断する(S22:NO)。そして、エンジン自動停止判断部66は、エンジンを再始動させないと判断し(S28)、処理はステップS29に移行する。
ステップS23においてエンジン再始動判断部67は、現在停止保持モード中であるか否かを判断する(S23)。この処理においてエンジン再始動判断部67は、ステップS21において取得した停止保持モードであるか否かの情報に基づいて判断する。
現在停止保持モードでないと判断した場合(S23:NO)、エンジン再始動判断部67は、エンジンを再始動させると判断し(S27)、処理はステップS29に移行する。一方、現在停止保持モードであると判断した場合(S23:YES)、エンジン再始動判断部67は、予め定められたエンジンの再始動条件(発進目標加速度以外の条件)が成立したか否かを判断する(S24)。
エンジンの再始動条件が成立していないと判断した場合(S24:NO)、エンジン再始動判断部67は、エンジンを再始動させないと判断し(S28)、処理はステップS29に移行する。一方、エンジンの再始動条件が成立したと判断した場合(S24:YES)、エンジン再始動判断部67は、ステップS21にて取得した目標加速度(発進目標加速度)が所定値を超えるか否かを判断する(S25)。
停止目標加速度が規定値を超えないと判断した場合(S25:NO)、エンジン再始動判断部67は、エンジンを再始動させないと判断し(S28)、処理はステップS29に移行する。一方、発進目標加速度が所定値を超えると判断した場合(S25:YES)、エンジン再始動判断部67は、発進目標加速度が所定値を超える状態が所定時間継続したか否かを判断する(S26)。なお、所定時間は、上記したように図4に示す如く、発進目標加速度に応じて決定される。
所定時間継続していないと判断した場合(S26:NO)、エンジン再始動判断部67は、エンジンを再始動させないと判断し(S28)、処理はステップS29に移行する。一方、所定時間継続したと判断した場合(S26:YES)、エンジン再始動判断部67は、エンジンを再始動させると判断し(S27)、処理はステップS29に移行する。
ステップS29においてエンジン再始動判断部67は、ステップS27又はステップS28において判断されたエンジン再始動の判断結果の情報をエンジン自動停止判断部66及びエンジン制御部80に出力する(S19)。その後、図7に示す処理は終了する。
図8は、本実施形態に係る車両用制御装置1の動作を示すタイミングチャートであって、先行車両が緩発進した場合の動作を示している。図8に示すように、自車両は先行車両に追従走行しているとする。この際、自車両は速度V0で走行しており、車間距離は設定距離L0に保たれている。また、追従走行しているため、相対速度は「0」となっている。
そして、時刻t1において先行車両が減速し車間距離が短くなってきたとする。これにより、追従走行制御部65は、目標加速度を小さくし、自車両の速度を減少させていく。なお、時刻t1の直後において目標加速度は規定値未満となるが、自車両の速度がゼロとなっていないため、エンジン自動停止判断部66は、カウントを増加させないこととなる。すなわち、規定時間のカウントを行わないこととなる。
次いで、時刻t2において目標加速度はa1となり、時刻t3において自車両の速度がゼロとなる。このとき、先行車両と自車両とは停車状態にあり、自動停止保持モードとなり、目標加速度(停止目標加速度)は規定値未満であるため、自動停止カウンタはカウントを開始する。すなわち、停止目標加速度が規定値未満の状態が、規定時間継続しているかを計時することとなる。
そして、時刻t4において自動停止カウンタのカウント値が自動停止カウンタ閾値に達したとする。すなわち、停止目標加速度が規定値未満の状態が、規定時間継続したとする。これにより、図8のエンジン駆動状態に示すように、エンジンは停止させられることとなる。なお、この際、エアコンが使用されていないなど、他の自動停止条件が満たされているものとする。
そして、時刻t5の直前において先行車両が緩発進したとすると、目標加速度は高まり、時刻t5において所定値を超えることとなる。これにより、再始動カウンタがカウントを開始することとなる。そして、時刻t6において再始動カウンタのカウント値が再始動カウンタ閾値に達したとする。すなわち、発進目標加速度が所定値を超えた状態が所定時間継続したとする。ここで、所定時間は、上記したように図4に示す如く、発進目標加速度に応じて決定される。これにより、図8のエンジン駆動状態に示すように、エンジンは再始動させられることとなる。なお、この際、他のエンジンの再始動条件が満たされているものとする。
図9は、本実施形態に係る車両用制御装置1の動作を示すタイミングチャートであって、先行車両が急発進した場合の動作を示している。まず、時刻T1〜T4までの動作は、図8に示した時刻t1〜t4と同様である。
そして、時刻T5の直前において先行車両が急発進したとすると、目標加速度は高まり、時刻T5において所定値を超えることとなる。このとき、目標加速度(発進目標加速度)は、先行車両が緩発進したときよりも大きな値となる(図8の符号a2及び図9の符号a3参照)。また、発進目標加速度が大きな値となったため、これに応じて再始動カウンタ閾値は小さくされる。すなわち、所定時間が短くされる。
そして、時刻T6において再始動カウンタのカウント値が再始動カウンタ閾値に達したとする。すなわち、発進目標加速度が所定値を超えた状態が所定時間継続したとする。これにより、図8のエンジン駆動状態に示すように、エンジンは再始動させられることとなる。なお、この際、他のエンジンの再始動条件が満たされているものとする。
ここで、図9に示す例では、先行車両が急発進しているため、再始動カウンタ閾値が小さくなっている。このため、時刻T5から時刻T6までの時間は、図8に示した時刻t5から時刻t6までの時間よりも短くなっている。よって、先行車両が急発進した場合にはエンジンが素早く再始動されることとなり、違和感が少ないエンジンの再始動が実現されることとなる。
このようにして、本実施形態に係る車両用制御装置1及び車両用制御方法によれば、先行車両の加速度に基づいて自車両を自動発進させる際の発進目標加速度を設定し、この発進目標加速度をエンジンの再始動条件の1つとするため、先行車両が急発進した場合には先行車両に追従すべく発進目標加速度が高くされ、エンジンの始動タイミングを早くでき、違和感を軽減することが可能となる。また、先行車両が緩発進した場合には発進目標加速度が小さくされ、エンジンの始動タイミングを遅くでき、違和感を軽減することが可能となる。従って、適切なタイミングで自動停止後のエンジンを再始動させることができる。
また、発進目標加速度が所定値より大きいことを再始動条件の1つとしている。このため、例えば本実施形態のように所定値がクリープトルク発進時における加速度である場合、少なくとも発進目標加速度がクリープトルク加速度を超えない限り、エンジンが再始動されることがない。これにより、クリープトルク加速度以下の走行という自車両についてほぼ走行する必要がない場合には、エンジンを再始動させることなく、不要なエンジン始動を防止してアイドルストップ効果が低下してしまう事態を抑制することができる。
また、発進目標加速度が所定値よりも大きい状態が、所定時間継続することを、再始動条件の1つとするため、例えば発進目標加速度が瞬時的に所定値よりも大きくなった場合などに、エンジンを再始動させることなく、一層不要なエンジン始動を防止してアイドルストップ効果が低下してしまう事態を抑制することができる。
また、発進目標加速度が所定値よりも大きい状態が、発進目標加速度に応じて決定された所定時間継続して満たすことを、再始動条件の1つとする。このため、先行車両が急発進して発進目標加速度が大きくなった場合には所定時間を短くしてエンジンが早期に再始動されるようにすることが可能となる。一方、先行車両が緩発進して発進目標加速度が小さくなった場合には所定時間を長くしてエンジンがやや遅めに再始動されるようにすることが可能となる。従って、一層適切なタイミングでエンジンを始動させることができる。
また、停止目標加速度が規定値より小さいことを停止条件の1つとしている。このため、例えば本実施形態のように規定値がクリープ走行からの停止時における加速度である場合、少なくとも停止目標加速度がクリープトルクからの停止する際の減速度より減速度が大きくならない限り、エンジンが停止されることがない。すなわち、エンジンが自動停止されるためには、自車両がクリープトルクからの停止よりも大きな減速度で減速するような停止目標加速度が算出されていることが必要となる。よって、ある程度大きな減速度を有する停止目標加速度が算出されて車両が停車するような場合にエンジンが自動停止されることとなり、エンジンの自動停止にあたり違和感を軽減することができる。
より詳細に説明すると、ある程度大きな減速度を有する停止目標加速度が算出されない場合にエンジンの自動停止が行われてしまうと、例えばクリープ走行時において先行車両との位置関係から何度も停止と再始動とを繰り返してしまうこともあり、非常に違和感が大きくなってしまうが、上記の如く停止目標加速度が規定値よりも小さいことを停止条件の1つとすることで、このような違和感が生じてしまうことを防止することができる。
また、停止目標加速度が規定値よりも小さく、且つ、自車両が停止している状態が、規定時間継続して満たすことを、停止条件の1つとするため、例えば停止目標加速度が瞬時的に規定値よりも小さくなった場合などに、エンジンを自動停止させることなく、不要なエンジン停止を防止して運転者に与える違和感を一層軽減することができる。
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものでは無く、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。
例えば、上記実施形態において、所定値をクリープトルク発進時の加速度として説明したが、クリープトルク発進時の加速度に限るものではない。また、規定値についてもクリープトルクからの停止する際の減速度として説明したが、クリープトルクからの停止する際の減速度に限るものではない。