JP5881402B2 - ベンゾビスチアジアゾール化合物 - Google Patents
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以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
本発明のベンゾビスチアジアゾール化合物は、ベンゾビスチアジアゾール骨格のベンゼン環に結合した、Ar1、Ar2で表される基と1つ又は複数のR1、R2で表される置換基に含まれる電子求引性基との作用により、ベンゾビスチアジアゾールや、上記文献に開示された従来より知られたベンゾビスチアジアゾール骨格のベンゼン環に種々の置換基が結合したベンゾビスチアジアゾール化合物に比べて、LUMOのエネルギー準位が低くなり、n型有機半導体等の材料として好適に用いることができる。
また、Ar1、Ar2は、m、nの少なくとも一方が2以上の場合は、アリール基、π不足系ヘテロ芳香環基及びπ過剰系ヘテロ芳香環基からなる群より選択される少なくとも1種の基を表す。すなわち、Ar1、Ar2は、それぞれアリール基であってもよく、π不足系ヘテロ芳香環基であってもよく、π過剰系ヘテロ芳香環基であってもよい。また、アリール基、π不足系ヘテロ芳香環基及びπ過剰系ヘテロ芳香環基から選択される2種又は3種の基が結合して形成される基であってもよい。
なお、π不足系ヘテロ芳香環基には、π不足系ヘテロ芳香環が2つ以上結合して形成される基が含まれ、π過剰系ヘテロ芳香環基には、π過剰系ヘテロ芳香環が2つ以上結合して形成される基が含まれる。
また上記π過剰系ヘテロ芳香環とは、ヘテロ原子を有する芳香環であって、芳香環を形成する各炭素原子のπ電子密度がベンゼン環を構成する各炭素原子のπ電子密度よりも大きいもののことである。例えば、ピロールは窒素原子1つと炭素原子4つとから形成される5員環であるが、窒素原子上に孤立電子対があるため、6つのπ電子を有することになる。窒素原子の電気陰性度が炭素原子の電気陰性度よりも高いため、π電子はやや窒素原子に引きつけられることになるが、ピロール環を形成する4つの炭素原子上のπ電子密度は、6つの炭素原子に対して6つのπ電子があるベンゼンに比べて高くなる。したがって、ピロール環はπ過剰系ヘテロ芳香環である。
上記π過剰系ヘテロ芳香環としては、ピロール環の他、フラン、チオフェン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール等のベンゼン縮合環、イミダゾール、ピラゾール、1,2,4−トリアゾール、チアゾール、オキザゾール等のアゾールの環等が挙げられる。
これらの中でも、π不足系ヘテロ芳香環としては、ピリジン、ピラジン、キノキサリンが好ましい。このように、π不足系ヘテロ芳香環基は、ピリジン、ピラジン、キノキサリンのいずれかのπ不足系ヘテロ芳香環化合物由来の基であることは、本発明の好適な実施形態の1つである。
π不足系ヘテロ芳香環としては、より好ましくは、ピリジンである。
また、π過剰系ヘテロ芳香環としては、チオフェン、フラン、インドール、チアゾールが好ましい。より好ましくは、チオフェンである。
これらのうち、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、キノキサリン、トリアジンの環、キノリンは、2位の炭素原子でベンゾビスチアジアゾール骨格のベンゼン環の炭素原子と結合することが好ましい。ピリダジンは、3位の炭素原子でベンゾビスチアジアゾール骨格のベンゼン環の炭素原子と結合することが好ましい。
ピリジンは、3〜6位の炭素原子のいずれか1つ以上がR1又はR2で表される置換基と結合することが好ましく、より好ましくは、4〜6位の炭素原子のいずれか1つ以上がR1又はR2で表される置換基と結合することである。
ピラジンは、3、5、6位の炭素原子のいずれか1つ以上がR1又はR2で表される置換基と結合することが好ましく、より好ましくは、5、6位の炭素原子のいずれか1つ以上がR1又はR2で表される置換基と結合することである。
ピリミジンは、4〜6位の炭素原子のいずれか1つ以上がR1又はR2で表される置換基と結合することが好ましい。
ピリダジンは、5、6位の炭素原子のいずれか1つ以上がR1又はR2で表される置換基と結合することが好ましい。
キノキサリンは、5〜8位の炭素原子のいずれか1つ以上がR1又はR2で表される置換基と結合することが好ましい。
トリアジンの環は、4又は6位の炭素原子のいずれか1つ以上がR1又はR2で表される置換基と結合することが好ましい。
キノリンは、4〜8位の炭素原子のいずれか1つ以上がR1又はR2で表される置換基と結合することが好ましい。
上記Ar1、Ar2がπ不足系ヘテロ芳香環由来の基と、アリール基及び/又はπ過剰系ヘテロ芳香環化合物由来の基とが結合して形成される基である場合、上記π不足系ヘテロ芳香環由来の基におけるベンゾビスチアジアゾール骨格のベンゼン環の炭素原子と結合するための好ましい炭素原子や、R1又はR2で表される置換基と結合するための好ましい炭素原子において、アリール基及び/又はπ過剰系ヘテロ芳香環化合物由来の基や、ベンゾビスチアジアゾール骨格のベンゼン環の炭素原子、R1又はR2で表される置換基との結合が形成されることが好ましい。
これらのうち、ピロール、フラン、チオフェン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、イミダゾール、チアゾール、オキザゾールは、2位の炭素原子でベンゾビスチアジアゾール骨格のベンゼン環の炭素原子と結合することが好ましい。ピラゾール、1,2,4−トリアゾールは、5位の炭素原子でベンゾビスチアジアゾール骨格のベンゼン環の炭素原子と結合することが好ましい。
ピロール、フラン、チオフェンは、4又は5位の炭素原子のいずれか1つ以上がR1又はR2で表される置換基と結合することが好ましい。なお、ピロールは、環を形成する窒素原子がR1又はR2で表される置換基と結合していてもよい。
ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドールは、4〜7位の炭素原子のいずれか1つ以上がR1又はR2で表される置換基と結合することが好ましい。
イミダゾール、チアゾール、オキザゾールは、4又は5位の炭素原子のいずれか1つ以上がR1又はR2で表される置換基と結合することが好ましい。
ピラゾールは、4、5位の炭素原子のいずれか1つ以上がR1又はR2で表される置換基と結合することが好ましい。
1,2,4−トリアゾールは、3位の炭素原子のいずれか1つ以上がR1又はR2で表される置換基と結合することが好ましい。
上記Ar1、Ar2がπ過剰系ヘテロ芳香環由来の基と、アリール基及び/又はπ不足系ヘテロ芳香環化合物由来の基とが結合して形成される基である場合、上記π過剰系ヘテロ芳香環由来の基におけるベンゾビスチアジアゾール骨格のベンゼン環の炭素原子と結合するための好ましい炭素原子や、R1又はR2で表される置換基と結合するための好ましい炭素原子において、アリール基及び/又はπ不足系ヘテロ芳香環化合物由来の基や、ベンゾビスチアジアゾール骨格のベンゼン環の炭素原子、R1又はR2で表される置換基との結合が形成されることが好ましい。
上記アリール基としては、下記式(2−1)〜(2−9)で表される化合物のいずれかに由来する2価の基が好ましい。より好ましくは、(2−1)である。
上記Ar1、Ar2がビフェニル由来の基、すなわち、下記式(2−2)で表される化合物由来の基である場合、ビフェニルの1位又は2位の炭素がベンゾビスチアジアゾール骨格のベンゼン環の炭素原子と結合し、ビフェニルの5位、1’位、2’位、3’位、5’位又は6’位の炭素のいずれか1つ以上がR1又はR2で表される置換基と結合することが好ましい。
上記Ar1、Ar2がナフタレン又は1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン由来の基、すなわち、下記式(2−3)又は(2−4)で表される化合物由来の基である場合、ナフタレン又は1,2,3,4−テトラヒドロナフタレンの2位の炭素がベンゾビスチアジアゾール骨格のベンゼン環の炭素原子と結合し、ナフタレン又は1,2,3,4−テトラヒドロナフタレンの5〜8位の炭素原子のいずれか1つ以上がR1又はR2で表される置換基と結合することが好ましい。
上記Ar1、Ar2がフルオレン由来の基、すなわち、下記式(2−5)で表される化合物由来の基である場合、フルオレンの2位の炭素がベンゾビスチアジアゾール骨格のベンゼン環の炭素原子と結合し、フルオレンの7位又は9位の炭素原子のいずれか1つ以上がR1又はR2で表される置換基と結合することが好ましい。
上記Ar1、Ar2がインデン由来の基、すなわち、下記式(2−6)で表される化合物由来の基である場合、インデンの2位の炭素がベンゾビスチアジアゾール骨格のベンゼン環の炭素原子と結合し、インデンの4〜7位の炭素原子のいずれか1つ以上がR1又はR2で表される置換基と結合することが好ましい。
上記Ar1、Ar2がインダン由来の基、すなわち、下記式(2−7)で表される化合物由来の基である場合、インダンの6位の炭素がベンゾビスチアジアゾール骨格のベンゼン環の炭素原子と結合し、インダンの1〜3位の炭素原子のいずれか1つ以上がR1又はR2で表される置換基と結合することが好ましい。
上記Ar1、Ar2がアントラセン由来の基、すなわち、下記式(2−8)で表される化合物由来の基である場合、アントラセンの2位の炭素原子がベンゾビスチアジアゾール骨格のベンゼン環の炭素原子と結合し、アントラセンの5〜10位の炭素原子のいずれか1つ以上がR1又はR2で表される置換基と結合することが好ましい。
上記Ar1、Ar2がピレン由来の基、すなわち、下記式(2−9)で表される化合物由来の基である場合、ピレンの1位の炭素原子がベンゾビスチアジアゾール骨格のベンゼン環の炭素原子と結合し、ピレンの4〜10位の炭素原子のいずれか1つ以上がR1又はR2で表される置換基と結合することが好ましい。
アリール基とπ過剰系ヘテロ芳香環由来の基とが結合して形成される基として好ましくは、ベンゼン環とチオフェン環とが結合して形成される基、ベンゼン環とフラン環とが結合して形成される基、ベンゼン環とピロール環とが結合して形成される基、ベンゼン環とチアゾール環とが結合して形成される基である。
π不足系ヘテロ芳香環由来の基とπ過剰系ヘテロ芳香環由来の基とが結合して形成される基として好ましくは、ピリジン環とチアゾール環とが結合して形成される基である。
これらの中でも、アリール基とπ不足系ヘテロ芳香環由来の基とが結合して形成される基、又は、アリール基とπ過剰系ヘテロ芳香環由来の基とが結合して形成される基が好ましい。より好ましくは、アリール基とπ不足系ヘテロ芳香環由来の基とが結合して形成される基である。
すなわち、式(1)におけるAr1、Ar2がアリール基及び/又はπ不足系ヘテロ芳香環基であることは本発明の好適な実施形態の1つである。
R1、R2は、それぞれ少なくとも1つが電子求引性基である置換基であるが、R1、R2で表される置換基の全てが電子求引性基であることが好ましい。
R1、R2は、同一であってもよく、異なっていてもよいが、同一の構造であることが好ましい。また、R1が複数ある場合、すなわち、mが2以上の場合、複数のR1は同一であってもよく、異なっていてもよいが、同一の構造であることが好ましい。R2が複数ある場合についても同様である。
上記式(1)におけるm、nは、2〜6が好ましい。R1、R2は、それぞれ電子求引性基を少なくとも1つ有する置換基であるが、上記のようにR1、R2で表される置換基の全てが電子求引性基であることが好ましく、Ar1、Ar2に結合する電子求引性基の数がそれぞれ2〜6であることがより好ましい。n型有機半導体材料において、LUMOのエネルギー準位は大気中のトランジスタ性能に大きな影響を与えることになるが、式(1)で表されるベンゾビスチアジアゾール化合物において、Ar1、Ar2に結合する電子求引性基の数が多くなるとLUMOのエネルギー順位がより低くなり、n型有機半導体材料として大気中での使用においてもより安定な化合物となる。一方、Ar1、Ar2に結合する電子求引性基の数が多くなると精製が困難となることがあるためAr1、Ar2に結合する電子求引性基の数は、より好ましくは、それぞれ2〜4である。
上記R1、R2で表される置換基のうち、電子求引性基以外の置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、このような置換基がAr1やAr2に結合してもよい。
下記(3−1)〜(3−3)における2つの*は、2つの*の部分でアリール基、π不足系ヘテロ芳香環化合物由来の基、π過剰系ヘテロ芳香環化合物由来の基のいずれかの基の環構造を形成する隣り合う2つの炭素に結合することを意味する。当該隣り合う2つの炭素原子同士の結合と下記(3−1)〜(3−3)の構造とにより環構造が形成されることになる。
本発明のベンゾビスチアジアゾール化合物の製造方法は、上記式(1)で表される構造のベンゾビスチアジアゾール化合物が製造されることとなる限り特に制限されないが、ジブロモジニトロベンゾチアジアゾール(下記化合物(A))を出発物質として以下の反応経路を経て合成する方法が好ましい。
この反応は、R1 m−Ar1−SnBu3で表される有機スズ化合物及びR2 n−Ar2−SnBu3で表される有機スズ化合物を、ジブロモジニトロベンゾチアジアゾール1molに対してこれらの化合物の合計が2.0〜3.0molとなる量添加して行うことが好ましい。より好ましくは、2.1〜2.8molであり、更に好ましくは、2.2〜2.4molである。
R1 m−Ar1−SnBu3で表される有機スズ化合物とR2 n−Ar2−SnBu3で表される有機スズ化合物とが同一の化合物である場合、当該1種類の化合物のジブロモジニトロベンゾチアジアゾール1molに対する使用量が上記範囲であることが好ましい。
また、R1 m−Ar1−SnBu3で表される有機スズ化合物及びR2 n−Ar2−SnBu3で表される有機スズ化合物が異なる化合物である場合、これら2種類の化合物を同じ量ずつ使用することが好ましい。
また触媒の使用量としては、ジブロモジニトロベンゾチアジアゾール1molに対して、0.001〜0.2mol用いることが好ましい。より好ましくは、0.01〜0.05mol用いることである。
配位子の使用量としては、パラジウム触媒1モルに対して、0.5〜4mol用いることが好ましい。より好ましくは、1〜2.5mol用いることである。
なお、ホスフィン配位子などの安定化剤を含む触媒(例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)パラジウム、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムなど)を用いた場合には、さらに配位子を用いる必要はない。
また、上記第1の工程における反応はフッ化セシウムを添加して攪拌して行うことが好ましい。またフッ化セシウムの使用量としては、ジブロモジニトロベンゾチアジアゾール1molに対して、2.0mol以上用いることが好ましい。より好ましくは、2.4〜4.0mol用いることである。このようにすることで反応を高い効率で進めることができ、生成物の収率を高めることができる。
上記第1の反応工程における反応時間は、5〜48時間であることが好ましい。より好ましくは、12〜24時間である。
また反応温度は、室温〜150℃が好ましい。より好ましくは、60〜120℃である。
反応は、常圧、加圧のいずれの条件で行ってもよいが、常圧で行うことが好ましい。
また、反応は、アルゴン、窒素、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
なお、ホスフィン配位子などの安定化剤を含む触媒(例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)パラジウム、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムなど)を用いた場合には、さらに配位子を用いる必要はない。
また反応温度は、室温〜150℃が好ましい。より好ましくは、60〜120℃である。
ニトロ基のアミンへの還元は、還元剤としてFe、Sn、SnCl2、Zn、Raneyニッケル等を用いることができる。また活性炭に坦持させたパラジウム金属を触媒として水素雰囲気化で水素化することによっても行うことができる。このように、ニトロ基のアミンへの還元反応は、様々な方法が知られており、例えば、実験化学講座 第5版(丸善株式会社、日本化学会編)14巻第357−358頁等の公知文献に種々の方法が記載されている。反応経路の第2の反応工程は、R1 m−Ar1−やR2 n−Ar2−の種類等に応じて、公知の方法の中から最適な方法を選択して行うことができる。
以下においては、その一例として、還元剤としてFeを用い、酢酸を溶媒として用いて行う方法について記載する。
還元剤としてFeを用いて化合物(B)のベンゼン環のニトロ基を還元してアミノ基にする場合、還元剤の使用量は、化合物(B)1molに対して1.0〜20molであることが好ましい。より好ましくは、3〜10molである。
また反応温度は、室温〜150℃が好ましい。より好ましくは、50〜100℃である。
反応は、常圧、加圧のいずれの条件で行ってもよいが、常圧で行うことが好ましい。
また、反応は、アルゴン、窒素、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
第3の反応工程は、(1)化合物CとN−チオニルアニリン(PhNSO)とを反応させる方法、(2)化合物Cと塩化チオニル(SOCl2)とを反応させる方法、のいずれかの方法を用いることができる。
第3の反応工程のこれら2種類の方法は、いずれも上記非特許文献4として記載したヨシロウ ヤマシタ(Yoshiro Yamashita)外3名、「テトラヘドロン(Tetrahedron)」、1997年、第53巻、第29号、p.10169−10178の記載を参照して行うことができる。
以下においては、このうち化合物(C)とN−チオニルアニリン(PhNSO)とを反応させる方法について記載する。
化合物(C)とN−チオニルアニリン(PhNSO)とを反応させる反応では、化合物(C)1molに対してN−チオニルアニリンを2.0〜4.0mol量添加して行うことが好ましい。より好ましくは、2.1〜3.0molであり、更に好ましくは、2.2〜2.5molである。
またMe3SiClの使用量としては、化合物C1molに対して、2〜30molが好ましい。より好ましくは、5〜20molである。
また、チオニルアニリンの代わりに塩化チオニルを用いてもよいが、この場合はトリメチルシリルクロライドの使用は必要ない。
また、ピリジンや3級アミン等の塩基性溶媒以外の溶媒を用いる場合、ピリジンや3級アミン等の塩基を化合物Cに対して過剰量加える必要がある。
また反応温度は、0〜150℃が好ましい。より好ましくは、室温〜溶媒の沸点である。
反応は、常圧、加圧のいずれの条件で行ってもよいが、常圧で行うことが好ましい。
また、反応は、アルゴン、窒素、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
LUMOのエネルギー準位は、後述する実施例に記載のサイクリックボルタンメトリーにより求めることができる。また紫外線光電子分光分析によっても求めることができる。
(1H−NMR測定)
試料をテトラメチルシランを含有する重クロロホルムに溶解し、核磁気共鳴装置(Gem
ini 2000、300MHz、Varian社製)により測定した。
4,7−ジ(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)−5,6−ジニトロ−2,1,3−ベンゾチアジアゾールの合成
100mL三口フラスコに4,7−ジブロモ−5,6−ジニトロベンゾチアジアゾール(1.47g、3.83mmol)、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルトリ−n−ブチルスズ(4.25g、8.45mmol)、ビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)パラジウム(98mg、0.19mmol)、ジオキサン(52mL)を入れ、窒素雰囲気下、還流しながら12時間加熱攪拌した。反応液を室温まで冷却し、ジオキサンをロータリーエバポレーターで除去した後、残渣をクロロホルムに溶解させ、シリカゲルショートカラムに通した。クロロホルムをロータリーエバポレーターで留去し、得られた固体をメタノールで洗浄し、4,7−ジ(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)−5,6−ジニトロ−2,1,3−ベンゾチアジアゾール(1.99g、3.05mmol)を収率80%で得た。この反応は、下記反応式(7)の反応である。
得られた4,7−ジ(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)−5,6−ジニトロ−2,1,3−ベンゾチアジアゾールの物性値は以下の通りであった。
1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ:8.13(s,4H),8.03(s,2H)
4,7−ジ(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)−5,6−アミノ−2,1,3−ベンゾチアジアゾールの合成
100mL三口フラスコに4,7−ジ(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)−5,6−ジニトロ−2,1,3−ベンゾチアジアゾール(1.6g、2.46mmol)、鉄粉(2.06g、36.9mmol)、酢酸(25mL)を入れ、窒素雰囲気下、80℃で5時間加熱攪拌した。反応終了後、室温まで冷却し、水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水の順に洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後した。これをろ過し、ろ液をロータリーエバポレーターで濃縮し、4,7−ジ(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)−5,6−アミノ−2,1,3−ベンゾチアジアゾール(1.40g,2.37mmol)を収率96%で得た。この反応は、下記反応式(8)の反応である。
得られた4,7−ジ(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)−5,6−アミノ−2,1,3−ベンゾチアジアゾールの物性値は以下の通りであった。
1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ:8.10(s,4H),8.00(s,2H),4.13(s,4H)
4,8−ビス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ベンゾ[1,2−c;4,5−c’]ビス[1,2,5]チアジアゾールの合成
50mL三口フラスコに、4,7−ジ(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)−5,6−アミノ−2,1,3−ベンゾチアジアゾール(1.40g、2.37mmol)を入れ、ピリジン(12mL)に溶解させた。反応容器内を窒素雰囲気下にした後、チオニルアニリンをくわえ、80℃に加熱した。トリメチルクロロシランをくわえ、80℃で5時間加熱攪拌した。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、水を加えてクロロホルムで抽出した。有機層を3N塩酸水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過した。ろ液をロータリーエバポレーターで濃縮後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン)で精製し、4,8−ビス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ベンゾ[1,2−c;4,5−c’]ビス[1,2,5]チアジアゾール(1.0g、1.62mmol)を収率68%で得た。この反応は、下記反応式(9)の反応である。
4,8−ビス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ベンゾ[1,2−c;4,5−c’]ビス[1,2,5]チアジアゾールの物性値は以下の通りであった。
1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ:8.82(s,4H),8.07(s,2H)
実施例1で得られた4,8−ビス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ベンゾ[1,2−c;4,5−c’]ビス[1,2,5]チアジアゾールの電気特性をサイクリックボルタンメトリーによる電極に対する相対的還元電位測定によって評価した。
ALS社製電気化学アナライザー605B(ALS)を用いて、試料である4,8−ビス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ベンゾ[1,2−c;4,5−c’]ビス[1,2,5]チアジアゾールを過塩素酸テトラブチルアンモニウムの0.1MTHF溶液に溶解させ、作用極に活性炭電極、対極に白金電極、参照極にAg/AgNO3を用いた三電極セルにてサイクリックボルタンメトリー(CV)測定を行った。走査範囲は0V〜−1.2Vで、走査速度は100mV/sとした。
還元電位はE1/2=−0.67Vであり、飽和カロメル電極基準に変換するとE1/2=−0.0.14Vであった。Ag/AgNO3電極を用いた場合の還元電位から飽和カロメル電極を用いた場合の還元電位への変換は、「Chemical Review 1996年 96号 第2巻 pp.877−910(879頁、Table 1)」の記載に基づき行った。
サイクリックボルタンメトリー(CV)測定結果を図1に示す。
本発明のベンゾビスチアジアゾール化合物は、いずれも4,8−ビス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ベンゾ[1,2−c;4,5−c’]ビス[1,2,5]チアジアゾールと共通する構造的特徴を有するものであり、本発明のベンゾビスチアジアゾール化合物に含まれる種々の化合物について、4,8−ビス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ベンゾ[1,2−c;4,5−c’]ビス[1,2,5]チアジアゾールと同様の特性を有し、n型有機半導体の材料として好適に用いることができる。
Claims (2)
- ベンゾビスチアジアゾール由来の骨格を有する化合物であって、該化合物は、下記式(1);
- 請求項1に記載のベンゾビスチアジアゾール化合物を含んで構成されることを特徴とするn型有機半導体。
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