JP6372317B2 - ベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含む熱電変換材料及びこれを用いた熱電変換素子 - Google Patents

ベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含む熱電変換材料及びこれを用いた熱電変換素子 Download PDF

Info

Publication number
JP6372317B2
JP6372317B2 JP2014231426A JP2014231426A JP6372317B2 JP 6372317 B2 JP6372317 B2 JP 6372317B2 JP 2014231426 A JP2014231426 A JP 2014231426A JP 2014231426 A JP2014231426 A JP 2014231426A JP 6372317 B2 JP6372317 B2 JP 6372317B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
thermoelectric conversion
group
thiadiazole
compound
benzobis
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2014231426A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2016096242A (ja
Inventor
田中 康裕
康裕 田中
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Ube Corp
Original Assignee
Ube Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Ube Industries Ltd filed Critical Ube Industries Ltd
Priority to JP2014231426A priority Critical patent/JP6372317B2/ja
Publication of JP2016096242A publication Critical patent/JP2016096242A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6372317B2 publication Critical patent/JP6372317B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Nitrogen And Oxygen Or Sulfur-Condensed Heterocyclic Ring Systems (AREA)
  • Thin Film Transistor (AREA)

Description

本発明は、ベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含む熱電変換材料及びこれを用いた熱電変換素子に関する。
熱電変換材料は、熱エネルギーと電気エネルギーを相互に変換することが可能な材料であり、熱電発電素子やペルチェ素子に用いられている材料である。熱電変換材料としては熱電変換効率が高いことが好ましく、その性能は下記式で示される、性能指数又はパワーファクタで比較される。
性能指数 ZT = S・σ・T/κ
パワーファクタ P = S・σ
S (単位 V/K) 熱起電力(ゼーベック係数)
σ (単位 S/m) 電気伝導率
κ (単位 W/mK) 熱伝導率
T (単位 K) 絶対温度
非特許文献1には、日本の工場から出る排熱が年間27万テラカロリーであり、その内排熱温度が200℃以下の低温排熱が全体の65%を占めていると記述されている。現在のところこの低温排熱はほとんど大気中に捨てられている。この排熱を有効利用する目的で、熱電変換装置は有望視されており、室温から200℃の範囲で機能する熱電変換装置が実用上好適である。
現在、実用化されている熱電変換材料は、熱起電力および電気伝導率の高さ、300℃を越える温度域での熱電変換機能を発現できる観点から、ほとんどが無機材料である。
しかし、無機材料にはビスマス、テルル、アンチモン、鉛などが含まれるため、材料毒性がある。また、既存の工場設備の複雑多様な形状にあわせて熱電変換装置を作製することは無機材料の加工性の低さにより困難である。また、前述のような金属が含まれるため、高価であることが知られている。
有機材料の場合、無機材料に比べ材料の毒性が低く、加工性に優れ、安価に製造できることができると考えられ、無機材料の問題点は克服できると考えられる。また、有機熱電変換材料は熱伝導率が無機材料に比べ低いことが、発電効率を高めることに好適である。さらに、有機熱電変換材料では柔軟な樹脂基板上に素子を作製することも可能であるため、形状追従性に優れた柔軟な熱電変換装置を作成することができ、この点は実用上極めて有用である。
したがって、毒性の懸念が少なく、かつ加工性が高い、有機熱電変換材料の開発研究が進められてきた。
例えば特許文献1には、カーボンナノチューブと共役系高分子半導体を含む熱電変換材料が開示されている。
特許文献2には、有機半導体材料の電気伝導率を向上させる手段として、ドーピングを施す技術が記載されている。
特許文献3では、有機溶媒に可溶な有機半導体材料として、ベンゾビス(チアジアゾール)誘導体が報告されている。
非特許文献2には有機半導体を用いた、双極型熱電変換素子が開示されている。p型半導体としてペンタセン、n型半導体としてC60フラーレンが用いられている。
また、非特許文献3にはカーボンナノチューブに添加剤を加えて、その添加剤の種類によりカーボンナノチューブの性質をn型若しくはp型に制御し、それらを半導体として用いた双極型熱電変換素子が開示されている。
特開2014−33170号公報 特開2011−243809号公報 国際公開公報2013−141182号
熱電変換技術ハンドブック、NTS,(2008) Applied Physics Letters,99,093308(2011) Scientific Reports,3,3344(2013)
しかし、有機熱電変換材料は、無機熱電変換材料と比べ、材料特性として、電気伝導率、キャリア移動度、耐熱性で劣っている。また、n型有機半導体、即ち電子がキャリアとなる有機半導体に優れたものが少ないためモジュール化する場合に不利である、すなわち有機熱電変換素子では標準的な双極型熱電変換素子が作成できない。
さらに、耐熱性については、前述の通り、200℃の温度でも安定である有機半導体材料が求められる。
例えば、特許文献1では、共役系半導体高分子はすべて正孔輸送性であるp型半導体であり、電子輸送性であるn型半導体がないため、素子としては効率の良いp型とn型の半導体を用いた双極型熱電変換素子を作製することはできず、p型半導体のみからなる単極型熱電変換素子を開示するにとどまっている。したがって、熱電変換効率が十分ではなく、装置も大型化すると考えられる。
また、特許文献2には、有機半導体を熱電変換素子に応用する際に、電気伝導率を高めることが必要で、キャリア移動度とキャリア濃度を高めることも必要であると記述されている。また、キャリア移動度の数値として概ね0.1cm/Vs以上であると、熱電変換材料として適用できるとしている。しかし、有機半導体を熱電変換素子に応用する際には、さらに高いキャリア移動度が求められる。
また、非特許文献2では、p型半導体としてペンタセン、n型半導体としてC60フラーレンが用いられている。しかしながら、半導体の製膜方法として蒸着法を利用して素子作製している。蒸着法の場合、高温工程ならびに高真空工程が必要になり、ハンドリングも困難となり、製造コストも増大する。したがって、実用上の観点からは、塗布法による製膜が簡便な材料の開発が求められる。
非特許文献3では、添加剤の種類によりカーボンナノチューブの性質をn型若しくはp型に制御しているが、単層カーボンナノチューブを用いていることから、高コストとなり、工業的に好適な熱電変換素子であるとは言えない。
以上から、キャリア移動度と溶解性が高く、耐熱性が200℃以上である有機n型半導体を熱電変換素子に適用すれば、前記の電気伝導率、製造コスト、キャリア移動度、耐熱性、モジュール化の課題は解決される。
また、特許文献3では、ベンゾビス(チアジアゾール)誘導体が有機半導体材料として有用であることが記載されているが、熱電変換材料として使用するには溶解度及びキャリア移動度に一層の向上が求められた。
さらに、過去報告例のあるn型有機半導体は、溶解度が低く、空気中で不安定であり、移動度が不十分であったことから、n型有機半導体材料を熱電変換材料とすることが困難であった。したがって、熱電変換効率の高い熱電変換素子を提供することが困難であった。
以上より、本発明の課題は、以下の2点である。
(1)電子の移動度に優れ、有機溶媒に対する溶解度が高く、空気中で安定であり、耐熱性のあるベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含む熱電変換材料を提供することである。
(2)n型半導体層中にベンゾビス(チアジアゾール)誘導体が含まれた、有機熱電変換素子を提供することである。
本発明は以下の事項に関する。
1.下記一般式(1)で示される、ベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含むことを特徴とする熱電変換材料。
Figure 0006372317
(式中、R及びRは、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい複素アリール基を示す。RとRは、同一であっても異なっていても良い。)
2. 前記一般式(1)において、R及びRが共に、フェニル基と結合したチオフェン基であり、下記一般式(2)で示される、前記1に記載のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含むことを特徴とする熱電変換材料。
Figure 0006372317
(式中、Rは、直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は下記式(3)の基を示し、Rは、水素原子、直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は下記式(3)の基のいずれかを示す。但し、R及びRの少なくとも一方は、下記式(3)の基のいずれかを示し、2つのR、及び2つのRはいずれも、同一であっても異なっていてもよい。)
Figure 0006372317
(式中、Rは、直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。)
3. Rが、前記式(3)の基のいずれかであり、
が、水素原子、又は直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であることを特徴とする前記2に記載のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含むことを特徴とする熱電変換材料
4.前記一般式(2)において、Rがトリフルオロメトキシ基、及びRが水素原子であるベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含まないことを特徴とする、前記2又は3に記載の熱電変換材料。
5. Rが、直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、
が、前記式(3)の基のいずれかであることを特徴とする前記2に記載のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含むことを特徴とする熱電変換材料。
6. 前記式(3)の基が、下記式(4)の基のいずれかであることを特徴とする前記2〜5のいずれか1つに記載のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含むことを特徴とする熱電変換材料。
Figure 0006372317
(式中、Rは、直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。)
7. Rが、直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、
が、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、又はシアノ基のいずれかであることを特徴とする前記5に記載のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含むことを特徴とする熱電変換材料。
8.Rが、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、又はシアノ基のいずれかであり、
が、直鎖状又は分岐状のアルキル基であることを特徴とする前記2〜4又は6のいずれか1つに記載のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含むことを特徴とする熱電変換材料。
9. 前記一般式(1)において、R及びRが共に、芳香環に縮環した環状イミド構造を有する基であり、下記一般式(5)で示される、前記1に記載のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含むことを特徴とする熱電変換材料。
Figure 0006372317
(式中、二つのRは独立に、直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は、直鎖状若しくは分岐状のアリールアルキル基を示し(前記アルキル基及びアリールアルキル基中のアルキル基における水素原子は、フッ素原子に置換されていてもよい。)、
二つのAは独立に、酸素原子、硫黄原子、又はセレン原子を示し、
二つのZは独立に、メチン炭素、又は窒素原子を示す。)。
10.前記一般式(5)中、二つのAが硫黄原子であり、二つのZが独立にメチン炭素、又は窒素原子であり、二つのRが独立に直鎖状又は分岐状のアルキル基である、前記9に記載のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含むことを特徴とする熱電変換材料。
11.前記一般式(5)中、二つのRが炭素数5〜25の直鎖状又は分岐状のアルキル基である、前記9又は10に記載のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含むことを特徴とする熱電変換材料。
12.有機溶媒に可溶である、前記1〜11のいずれかに記載のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含むことを特徴とする熱電変換材料。
13.n型半導体を含む層が、前記1〜12のいずれか1つに記載の熱電変換材料を含むことを特徴とする熱電変換素子。
14. 熱電変換素子が、その素子中の熱電変換層が独立したn型半導体を含む層とp型半導体を含む層から成り、n型半導体を含む層とp型半導体を含む層の一端が電極により接続され、n型半導体を含む層とp型半導体を含む層の他端が、独立した電流取出し電極で構成される双極型熱電変換素子であることを特徴とする、前記13に記載の熱電変換素子。
15. 前記13又は14に記載の熱電変換素子を用いた熱電変換用装置。
16.下記一般式(1)で示される、ベンゾビス(チアジアゾール)誘導体の、熱電変換材料としての使用。
Figure 0006372317
(式中、R及びRは、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい複素アリール基を示す。RとRは、同一であっても異なっていても良い。)
本発明により、電子の移動度に優れるベンゾビス(チアジアゾール)誘導体をn型半導体層として用いた、有機熱電変換素子を提供することができる。本発明で用いるベンゾビス(チアジアゾール)誘導体は電子の移動度が高いため、熱電変換における発電効率を高めることができる。また、本発明により、たとえば、これまで高い移動度を示すn型有機半導体が存在しなかったために実現が困難であった、双極型有機熱電変換素子を作製することができる。さらに本発明で用いるベンゾビス(チアジアゾール)誘導体は溶液として塗布により熱電変換層を製膜することが可能であるので、有機熱電変換素子の大量生産に好適である。
本発明の熱電変換素子の一例として、熱電発電素子の構成を示す図である。 本発明の熱電変換素子の一例として、熱電冷却素子の構成を示す図である。 本発明の熱電変換素子の一例として、複数の素子を直列に接続した熱電発電素子の構成を示す図である。
<ベンゾビス(チアジアゾール)誘導体>
本発明で熱電変換材料に含まれる、ベンゾビス(チアジアゾール)誘導体(ベンゾビス(チアジアゾール)化合物)は、下記一般式(1)で示される。
Figure 0006372317
一般式(1)において、R及びRは、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい複素アリール基を示す。RとRは、同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
前述のアリール基は、炭素数5〜12のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、トリル基(及びその異性体)、キシリル基(及びその異性体)、ナフチル基(及びその異性体)、及びジメチルナフチル基(及びその異性体)等が挙げられる。
前述の複素アリール基は、フリル基、チオフェン基、ピロリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、ピリジル基、チアゾリル基、インドリル基、キノリル基、イソキノリル基、キナゾリル基、キノキサリル基等が挙げられる。
前述のアリール基及び複素アリール基の置換基としては、直鎖状、分岐状及び環上のアルキル基、アリール基、複素アリール基、種々の電子吸引基、電子供与基が挙げられる。
一般式(1)で示されるベンゾビス(チアジアゾール)誘導体は、例えば、市販の化合物(6)、一般式(7)、及び一般式(8)で示される化合物を用いて、以下に示す反応スキームに従って合成することができる。
Figure 0006372317
式中、R、及びRは前記と同義である。また、パラジウム触媒としては、上図記載のもの以外にも、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh)、ビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)パラジウム(Pd(PtBu)、酢酸パラジウム(Pd(OAc))、塩化パラジウム(PdCl)等のパラジウム錯体の1種又は2種以上を用いることができる。また、式中、Buはブチル基を示す。使用することができる塩基、ハロゲン化剤等としては、上図記載の試薬に限らない。
<フェニル基と結合したチオフェン基を有する誘導体>
前記一般式(1)で示される化合物群の中で、熱電変換効率の向上の観点から、R及びRが共に、フェニル基と結合したチオフェン基であり、下記一般式(2)で示される、ベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含む熱電変換材料を、好適に挙げることができる。
Figure 0006372317
(式中、Rは、直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は下記式(3)の基のいずれかを示す。Rは、水素原子、直鎖状又若しくは分岐状のアルキル基、又は下記式(3)の基のいずれかを示し、但し、R及びRの少なくとも一方は、下記式(3)の基のいずれかを示し、2つのR、及び2つのRはいずれも、同一であっても異なっていてもよい。)
Figure 0006372317
(式中、Rは、直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。)
一般式(2)において、Rが、前記式(3)の基のいずれかであり、Rが、水素原子、又は直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であることが好ましい。また、Rが、直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であり、Rが、前記式(3)の基のいずれかであることも好ましい。さらに、Rがトリフルオロメトキシ基、及びRが水素原子である誘導体を含まないことも好ましい。
2つのR、及び2つのRはいずれも、同一であっても異なっていてもよいが、通常、同一であることが好ましい。
前記の直鎖状又は分岐状のアルキル基は、移動度や溶解度の観点から、炭素数が1〜30であることが好ましく、炭素数が3〜25であることがより好ましく、炭素数が5〜20であることが特に好ましい。
直鎖状又は分岐状のアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、1−メチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、3−エチルヘキシル基、2−メチルオクチル基、2−エチルオクチル基、3−メチルオクチル基、2−ヘキシルデシル基、2−オクチルドデシル基、2−デシルテトラデシル基及び3−エチルオクチル基等が挙げられる。
直鎖状のアルキル基としては、下記に示す構造のものが挙げられる。
Figure 0006372317
分岐状のアルキル基としては、下記に示す構造のものが挙げられる。
Figure 0006372317
前記の構造において、アスタリスク(*)は結合手を示す。以下においても同様である。
前記式(3)の基の中では、下記式(4)の基のいずれかが好ましい。
Figure 0006372317
(式中、Rは、直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。)
Rとしては、炭素数1〜30の直鎖状又は分岐状のアルキル基が好ましく、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状のアルキル基が好ましく、炭素数1〜15の直鎖状又は分岐状のアルキル基がより好ましい。
Rの具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、2−エチルヘキシル基、2−ヘキシルデシル基、2−オクチルドデシル基、2−デシルテトラデシル基等が挙げられる。
前記式(4)の基としては、フッ素(−F)、塩素(−Cl)、トリフルオロメチル基(−CF)、トリフルオロメトキシ基(−OCF)、シアノ基(−CN)、ニトロ基(−NO)が特に好ましく、トリフルオロメチル基(−CF)、トリフルオロメトキシ基(−OCF)、シアノ基(−CN)がさらに好ましい。
本発明の熱電変換材料に含まれる、ベンゾビス(チアジアゾール)誘導体としては、例えば、以下の式(9)〜(98)で示される化合物が挙げられる。但し、式中、Rは、直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。また、−COR、−COR、−OCORはそれぞれ次の構造を示す。
Figure 0006372317
Figure 0006372317
Figure 0006372317
Figure 0006372317
Figure 0006372317
本発明で熱電変換材料に含まれる、ベンゾビス(チアジアゾール)誘導体は、(1)Tetrahedron,53,10169(1997)、若しくは(2)Organic Lett.,12,3340(2010)等を参考にして、例えば、以下に示す反応スキーム(カップリング工程、スズ化工程、BBT化工程の3工程)に従って合成することができる。
(カップリング工程)
Figure 0006372317
Figure 0006372317
Figure 0006372317
Figure 0006372317
式中、R、及びRは前記と同義であり、Xは、ハロゲン原子を示し、臭素原子又はヨウ素原子であることが好ましい。また、パラジウム触媒(Pd catalyst)としてはテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(PdCl(PPh)、ビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)パラジウム(Pd(PtBu)、酢酸パラジウム(Pd(OAc))、塩化パラジウム(PdCl)等のパラジウム錯体の1種又は2種以上が好ましく、PdCl(PPh、Pd(Phがより好ましい。
(スズ化工程)
Figure 0006372317
Figure 0006372317
式中、R、及びRは前記と同義であり、NBSはN−ブロモスクシンイミドを示し、Buはブチル基を示す。また、塩基(Base)としてはn−BuLi(但し、Buはブチル基を示す。)、又はLDA(リチウムジイソプロピルアミド)が好ましい。
(BBT化工程)
Figure 0006372317
Figure 0006372317
式中、R、及びRは前記と同義であり、Buはブチル基を示し、Phはフェニル基を示し、AcOHは酢酸を示し、Meはメチル基を示す。
本発明の熱電変換材料に含まれる、ベンゾビス(チアジアゾール)誘導体の製造工程は、カップリング工程、スズ化工程、BBT化工程の3工程を含むが、特に限定されず、前記のカップリング工程A〜Dのうち任意の1つ、スズ化工程A〜Bのうち任意の1つ、BBT化工程A〜Bのうち任意の1つを適宜選択して組み合わせることができる。
反応終了後、得られた反応液から、例えば、濾過、濃縮、抽出、蒸留、昇華、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の一般的な操作によって、本発明の熱電変換材料に含まれる、ベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を単離・精製することができるが、溶解度の異なる不純物を除去し、化合物純度を向上させるためには、有機溶媒によるソックスレー抽出を精製工程に組み込むことが簡便で好ましい。
<環状イミド構造を有する誘導体>
前記一般式(1)で示される化合物群の中で、R及びRが共に、熱電変換効率向上の観点から、芳香環に縮環した環状イミド構造を有する基であり、下記一般式(5)で示される、ベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を、好適に挙げることができる。
Figure 0006372317
(式(5)中、二つのRは独立に、直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は、直鎖状若しくは分岐状のアリールアルキル基を示し(前記アルキル基及びアリールアルキル基中のアルキル基における水素原子は、フッ素原子に置換されていてもよい。)、
二つのAは独立に、酸素原子、硫黄原子、又はセレン原子を示し、
二つのZは独立に、メチン炭素、又は窒素原子を示す。)。
一般式(5)に示された構造より明らかな通り、本発明の熱電変換材料に含まれる、ベンゾビス(チアジアゾール)誘導体は、分子内に芳香環に縮環した環状イミド構造を有する化合物である。以下、これらの一般式における基R、A及びZについて順に説明する。
(基Rについて)
前記一般式(5)において、Rは、直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は、直鎖状若しくは分岐状のアリールアルキル基を示す。前記アルキル基、及び前記アリールアルキル基中のアルキル基における水素原子は、フッ素原子に置換されていてもよい。一般式(5)においてRはそれぞれ二つ存在するが、これらは独立であり、同一であっても異なっていてもよい。
前記直鎖状若しくは分岐状のアルキル基について、本発明の熱電変換材料に含まれるベンゾビス(チアジアゾール)誘導体の電子の移動度及び溶解度の向上の観点から、その炭素数は1〜30であることが好ましく、炭素数が3〜28であることがより好ましく、炭素数が5〜25であることが特に好ましい。また、分岐状のアルキル基については、分岐鎖及び主鎖部分が結合して環状構造を形成していてもよい。すなわち前記分岐状のアルキル基には、シクロアルキル基が含まれる。
直鎖状アルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、及びオクタデシル基等が挙げられ、さらに、下記に示す構造のものも挙げられる(なお、以上例示したものと重複しているものもある)。なお、これらのアルキル基上の水素原子は、フッ素原子に置換されていてもよい。
Figure 0006372317
以上示した構造において、アスタリスクは結合手である。以下においても同様である。
次に、分岐状アルキル基の具体例としては、例えば、イソプロピル基、1−メチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、3−エチルヘキシル基、2−メチルオクチル基、2−エチルオクチル基、3−メチルオクチル基、及び3−エチルオクチル基などが挙げられ、さらに、下記に示す構造のものも挙げられる(なお、以上例示したものと重複しているものもある)。なお、これらのアルキル基上の水素原子は、フッ素原子に置換されていてもよい。
Figure 0006372317
以上挙げた中でも、窒素原子に直接結合する炭素上での分岐を持たない分岐構造を有するアルキル基が好ましい。好適な例としては、2−メチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、3−エチルヘキシル基、2−メチルオクチル基、2−エチルオクチル基、3−メチルオクチル基、及び3−エチルオクチル基などが挙げられる。
次に、前記直鎖状若しくは分岐状のアリールアルキル基について、「直鎖状若しくは分岐状の」とはアリールアルキル基のうちアルキル基部分の構造が直鎖状又は分岐状であることを意味する。また、アリールアルキル基のアリール部分には、一般式(5)におけるN原子に結合するアルキル基以外に、一つ以上のアルキル基が結合していてもよい。
以上説明した直鎖状アリールアルキル基の例としては、ベンジル基、2−フェニルエチル基、1−ナフチルメチル基、及び2−ナフチル−2−エチル基等が挙げられる。
また、分岐状アリールアルキル基の例としては、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基、1,2−ジフェニルエチル、4−ヘキシルフェニル基、1−フェニルエチル基、及び1−(4−メチルフェニル)エチル基等が挙げられる。
(基Aについて)
前記一般式(5)において、基Aは酸素原子、硫黄原子、又はセレン原子を示す。一般式(5)において基Aは二つあるが、これらは独立であり、同一であっても異なっていてもよい。本発明で熱電変換素子に使用される、ベンゾビス(チアジアゾール)誘導体の大気安定性の観点からは、基Aは硫黄原子であることが好ましい。
(基Zについて)
前記一般式(5)において、基Zはメチン炭素、又は窒素原子を示す。一般式(5)において基Zは二つあるが、これらは独立であり、同一であっても異なっていてもよい。本発明の熱電変換材料に含まれるベンゾビス(チアジアゾール)誘導体の大気安定性の観点から、基Zとしては、メチン炭素及び窒素原子のいずれも好ましいが、原料入手の容易性の観点からは、基Zはメチン炭素であることが好ましい。
(基R、A及びZの好ましい組合せ)
以上説明した一般式(5)において、基R、Z及びAの好ましい組み合わせは、以下の通りである。すなわち本発明の熱電変換材料に含まれる、ベンゾビス(チアジアゾール)誘導体の大気安定性及び原料入手の容易性の観点から好ましい本発明の実施態様においては、一般式(5)において、基Aが硫黄原子、Zが独立にメチン炭素又は窒素原子、そしてRが直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であることが好ましく、基Aが硫黄原子、Zが独立にメチン炭素、そしてRが直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であることがより好ましい。
上述の通り一般式(5)において、2つの基A,2つの基Z及び2つの基Rはいずれも、同一であっても異なっていてもよいが、本発明の熱電変換材料に含まれるベンゾビス(チアジアゾール)誘導体の合成の容易性の点から、同一であることが好ましい。
以上説明した本発明の熱電変換材料に含まれるベンゾビス(チアジアゾール)誘導体としては、例えば、以下の式(99)〜(103)で示される化合物が挙げられる。但し、式中、Rは前記で定義したとおりである。
Figure 0006372317
(合成方法)
本発明の熱電変換材料に含まれる、一般式(5)のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体は、公知の原料及び反応を組み合わせることで合成することができるが、例えば、以下に示す反応スキームに従って合成することができる。
Figure 0006372317
以上の合成スキームにおいて、基R、A及びZは前記で定義した通りである。また、Buはブチル基を示す。
一般式(5)のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体の合成スキームについて、まずは基A及びZを環構成原子として有するジアルデヒド化合物を用意する。当該化合物は市販されているし、公知の方法により合成可能である。
前記ジアルデヒド化合物を酸化し、さらに酸無水物とし、これを、基Rを有するアミン(RNH)と反応させることで酸無水物基を開環させると同時にアミド基を形成する。これに塩化チオニル等の塩素化剤を作用させてカルボニル基の活性を高めると、再度閉環してイミド構造を形成する(N原子にはRが結合している)。
これにN−ブロモスクシンイミド(NBS)を反応させて所定の位置に臭素原子を導入し、続いてパラジウム触媒(本スキームでは1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンパラジウム(II)ジクロリド−ジクロロメタン錯体)及びテトラブチルアンモニウムアイオダイド(TBAI)の存在下、所定の有機スズ化試薬と反応させることで、前記の臭素原子が導入された位置を有機スズ化する。
このようにして得られた有機スズ化化合物と、ベンゼン環位置に臭素原子を導入したベンゾビス(チアジアゾール)とを反応させることで、一般式(5)のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体が得られる(スティルカップリング。なお、臭素原子が導入されたベンゾビス(チアジアゾール)は市販されており、公知の原料及び反応により合成も可能である)。
以上説明した、本発明の熱電変換材料に含まれるベンゾビス(チアジアゾール)誘導体の合成において使用されるパラジウム触媒としては、前記合成スキームに記載のもの以外にも、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh)、ビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)パラジウム(Pd(PtBu)、酢酸パラジウム(Pd(OAc))、塩化パラジウム(PdCl)等のパラジウム錯体の1種又は2種以上を用いることができる。パラジウム触媒の使用量としては、ベンゼン環位置に臭素原子を導入したベンゾビス(チアジアゾール)1molに対して、0.01〜0.5mol用いることが好ましい。より好ましくは0.1〜0.5mol用いることである。
さらに、使用することができる塩基、ハロゲン化剤等は、前記合成スキームに記載の試薬に限られず、前記で示された反応に従来使用されているものを特に制限なく使用することができる。
以上説明した合成スキームの反応終了後、得られた反応液から、例えば、濾過、濃縮、抽出、蒸留、昇華、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の一般的な操作によって、本発明の熱電変換材料に含まれるベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を単離・精製することができる。溶解度の異なる不純物を除去し、化合物純度を向上させるためには、有機溶媒によるソックスレー抽出を精製工程に組み込むことが簡便で好ましい。
<ベンゾビス(チアジアゾール)誘導体の溶解性>
本発明の熱電変換材料に含まれる、ベンゾビス(チアジアゾール)誘導体は、通常、水や、種々の有機溶媒、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、イソブタノール、2−ブタノール、2−エチル−1−ブタノール、n−オクタノール、ベンジルアルコール、及びテルピネオール等のアルコール類;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、及びイソホロン等のケトン類:
酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、安息香酸ブチル、サリチル酸メチル、マロン酸エチル、酢酸2−エトキシエタン、及び酢酸2−メトキシ−1−メチルエチル等のエステル類;
N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、及びヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド類;
1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、及び1,3−ジメチルイミダゾリジン−2,4−ジオン等の尿素類;
ジメチルスルホキシド、及びジエチルスルホキシド等のスルホキシド類;
スルホラン等のスルホン類;
アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、及びベンゾニトリル等のニトリル類;
γ―ブチロラクトン等のラクトン類;
ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、tert−ブチルメチルエーテル、アニソール、フェネトール、1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、1,4−ジメトキシベンゼン、1,2−メチルアニソール、1,3−メチルアニソール、1,4−メチルアニソール、1,2−メチレンジオキシベンゼン、2,3−ジヒドロベンゾフラン、フタラン、オクチルオキシベンゼン、ジフェニルエーテル、及びエチルセロソルブ等のエーテル類;
炭酸ジメチル、及び1,2−ブチレングリコールカーボネート等のカーボネート類;
チオアニソール、及びエチルフェニルスルフィド等のチオエーテル類;
ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、プソイドクメン、ヘミメリテン、デュレン、イソデュレン、プレーニテン、エチルベンゼン、クメン、tert−ブチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、トリイソプロピルベンゼン、フェニルアセチレン、インダン、メチルインダン、インデン、テトラリン、ナフタレン、1−メチルナフタレン、2−メチルナフタレン、フェニルオクタン、及びジフェニルメタン等の芳香族炭化水素類;
フェノール、1,2−クレゾール、1,3−クレゾール、1,4−クレゾール、1,2−メトキシフェノール、1,3−メトキシフェノール、及び1,4−メトキシフェノール等のフェノール類;
クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、ブロモベンゼン、1,2−ジブロモベンゼン、1,3−ジブロモベンゼン、1,4−ジクロロトルエン、1−クロロナフタレン、2,4−ジクロロトルエン、2−クロロ−1,3−ジメチルベンゼン、2-クロロトルエン、2−クロロ−1,4−ジメチルベンゼン、4−クロロ−1,2−ジメチルベンゼン、2,5−ジクロロトルエン、m−クロロトルエン、1−クロロ−2,3−ジメチルベンゼン、4−(トリフルオロメトキシ)アニソール、及びトリフルオロメトキシベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素類;
ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、及びリモネン等の脂肪族炭化水素類;
ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,3−ジクロロプロパン、及び1,2−ジブロモエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;
2,6−ジメチルピリジン、及び2,6−ジtert-ブチルピリジン等のピリジン類
などに可溶である。
「水や有機溶媒に可溶」であるとは、常圧で、沸点以下、好ましくは80℃以下、より好ましくはより好ましくは15℃から30℃以下の水又は有機溶媒に対し、好ましくは0.03wt%以上、より好ましくは0.1wt%以上の溶解度を有することを意味する。なお、本発明の熱電変換材料に含まれる、ベンゾビス(チアジアゾール)誘導体は、水及び全ての有機溶媒に可溶であることが求められるわけではなく、水、又は例えば前記に挙げた有機溶媒の少なくとも一種に可溶である。また有機溶媒には、複数の有機溶媒の混合溶媒も含まれるものとし、本発明の熱電変換材料に含まれるベンゾビス(チアジアゾール)誘導体はいずれかの有機溶媒単独には可溶でないが、混合溶媒には可溶である場合もあり得る。
有機溶媒としては、以下に説明する本発明の熱電変換材料作製時に使用される、有機半導体インクの有機半導体薄膜の製膜性およびその半導体特性の観点から、前記に挙げた中でも、ハロゲン化芳香族炭化水素類、芳香族炭化水素類、及びハロゲン化脂肪族炭化水素類を好適に使用することができる。
好適なハロゲン化芳香族炭化水素類としては、クロロベンゼン、及び1,2−ジクロロベンゼンが挙げられる。
好適な芳香族炭化水素類としては、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、シクロヘキシルベンゼン、及び1−メチルナフタレンが挙げられる。
好適なハロゲン化脂肪族炭化水素類としては、クロロホルム、及び1,2−ジクロロエタンが挙げられる。
さらに、前記と同様な観点から好適なその他の有機溶媒としては、安息香酸メチル、サリチル酸メチル、アニソール、4−メチルアニソール、及びメタクレゾールが挙げられる。
<ベンゾビス(チアジアゾール)誘導体の半導体特性>
以上説明した本発明の熱電変換材料に含まれるベンゾビス(チアジアゾール)誘導体は、前記一般式(1)で示される、ベンゾビス(チアジアゾール)環を中心とし、これにアリール基又は複素アリール基を有しているため、優れたn型有機半導体材料として利用することができる。
しかも、ベンゾビス(チアジアゾール)誘導体は、p型半導体特性よりもn型半導体特性を優勢に示すため、トランジスタ素子等における有機半導体材料として極めて有用である。
なお、本明細書において、「p型半導体特性よりもn型半導体特性を優勢に示す」とは、以下に挙げる条件を満たすときである。
n型の電界効果移動度が、p型の電界効果移動度に比べて10倍以上であること。
(ベンゾビス(チアジアゾール)誘導体の安定性)
本発明の熱電変換材料に含まれるベンゾビス(チアジアゾール)誘導体は、熱に対する安定性が非常に高く、350℃まで加熱しても分解しない。また、当該誘導体は大気に対する安定性も高く、大気中で当該誘導体を使用したトランジスタ素子を作製しても高い移動度を得ることができる。また、作製したトランジスタ素子は大気中で放置しても、電子の移動度が変化しない。
<有機半導体インク>
以上説明したとおり、本発明の熱電変換材料に含まれるベンゾビス(チアジアゾール)誘導体はn型半導体特性を示し、しかも大気中で安定で通常水や有機溶媒にも可溶であるので、水や有機溶媒に溶解させ、得られた溶液を有機半導体インクとして利用することができる。なお、これらの水や有機溶媒は単独で使用してもよく、二種以上を混合して使用してもよい。
有機半導体インクとできると、扱いが容易であり保存も可能である。さらに有機半導体層の形成方法としては一般に蒸着及び塗布が挙げられるが、蒸着には高熱源かつ高真空が必要になるため、塗布に比べてコストが非常に高い。すなわち本発明の熱電変換材料に含まれるベンゾビス(チアジアゾール)誘導体のインクを利用すれば、有機半導体層の形成コストを大幅に下げることができる。
さらに本発明の熱電変換材料に含まれるベンゾビス(チアジアゾール)誘導体は大気中で安定であるので、塗布を大気中で行うことができ、窒素ガスやアルゴンガスのような不活性ガス雰囲気を作り出す必要もなく、この点でもコスト削減が図れる。
本発明の熱電変換素子作製時に使用される有機半導体インクは、前述のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体1種以上を含むものであり、さらに他の有機半導体1種以上を含むこともできる。さらに本発明の熱電変換素子作製時に使用される有機半導体インクには、インクの粘度を調整するための添加剤、インクの親水性若しくは撥水性を制御するための添加剤、酸化防止剤、光安定剤、表面調整剤(レベリング剤)、界面活性剤、保存安定剤、滑剤、濡れ性改良材及びカップリング剤など、インクの物性を制御する添加剤を含むことができる。
前記インクの粘度を調整するための添加剤としては、絶縁性の高分子化合物が挙げられる。絶縁性高分子化合物とは、合成樹脂、プラスチック、及び合成ゴムなどであり、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエステル、フェノール樹脂、アクリル樹脂、アミド樹脂、ナイロン、ビニロン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、アクリルゴム、アクリロニトリルゴム、及びウレタンゴムなどである。これらの添加により、有機半導体インクの粘度の最適化や製膜性の向上などが図られる。
本発明の熱電変換材料に含まれるベンゾビス(チアジアゾール)誘導体の有機半導体インク中の含有量は特に限定されず、適宜選択することができ、例えば0.001wt%〜10wt%程度とすることができ、さらに0.01wt%〜1wt%程度が製膜性の観点から好適である。また、前記インクが他の有機半導体を含む場合には、これらと前記ベンゾビス(チアジアゾール)誘導体の含有量の合計は、例えば0.001〜10wt%とすることができる。また、前記の各種添加剤の添加量は、従来公知の範囲から適宜選択することができる。
前記他の有機半導体としては、例えば、高分子半導体化合物が挙げられる。ここでの高分子半導体化合物とは、半導体特性を示すことを特徴とする高分子化合物であり、具体的には、ポリアセチレン系高分子、ポリジアセチレン系高分子、ポリパラフェニレン系高分子、ポリアニリン系高分子、ポリトリフェニルアミン系高分子、ポリチオフェン系高分子、ポリピロール系高分子、ポリパラフェニレンビニレン系高分子、ポリエチレンジオキシチオフェン系高分子、ナフタレンジイミドを一成分とする共重合高分子、ペリレンジイミドを一成分とする共重合高分子、ジケトピロロピロールを一成分とする共重合高分子、及びカーボンナノチューブなどが挙げられる。
これらの高分子半導体化合物の中でも、ポリアニリン系高分子、ポリチオフェン系高分子、ポリピロール系高分子、ポリパラフェニレンビニレン系高分子、ナフタレンジイミドを一成分とする共重合高分子、ペリレンジイミドを一成分とする共重合高分子、ジケトピロロピロールを一成分とする共重合高分子、及びカーボンナノチューブなどが好適である。
さらに他の有機半導体として、例えば、本発明の熱電変換材料に含まれるベンゾビス(チアジアゾール)誘導体以外の低分子半導体化合物が挙げられる。ここでの低分子半導体化合物とは、半導体特性を示すことを特徴とする低分子化合物であり、具体的には、アセン、フェニレンビニレン、トリフェニルアミン、フルオレン、アザアセン、チエノアセン、チオフェン、ベンゾチオフェン、チエノチオフェン、チアゾール、チアゾロチアゾール、テトラチアフルバレン、フタロシアニン、ポルフィリン、ナフタレンジイミド、ペリレンジイミド、ベンゾチアジアゾール、ナフトビスチアジアゾール、ジケトピロロピロール、フラーレン及びこれらの誘導体などが挙げられる。
これらの低分子半導体化合物の中でも、アセン、チエノアセン、チオフェン、チエノチオフェン、テトラチアフルバレン、ナフタレンジイミド、ペリレンジイミド、ジケトピロロピロール、フラーレン及びこれらの誘導体などが好適である。
また、他の有機半導体として、例えば、Chem.Rev.,2012,Vol.112,pp.2208−2267に記載の有機半導体も挙げることができる。
さらに本発明の熱電変換素子作製時に使用される有機半導体インクは、必要に応じて、添加成分として、導電性の高分子化合物を含むことができる。ここでの導電性高分子化合物とは、電気伝導性を示すことを特徴とする高分子化合物であり、具体的には、ポリアセチレン系高分子、ポリジアセチレン系高分子、ポリパラフェニレン系高分子、ポリアニリン系高分子、ポリトリフェニルアミン系高分子、ポリチオフェン系高分子、ポリピロール系高分子、ポリパラフェニレンビニレン系高分子、ポリエチレンジオキシチオフェン系高分子、ポリエチレンジオキシチオフェン・ポリスチレンスルホン酸の混合物(一般名、PEDOT−PSS)、及びカーボンナノチューブなどが挙げられる。
これらの導電性高分子化合物の中でも、ポリアセチレン系高分子、ポリパラフェニレン系高分子、ポリアニリン系高分子、ポリトリフェニルアミン系高分子、ポリチオフェン系高分子、ポリピロール系高分子、ポリパラフェニレンビニレン系高分子、及びカーボンナノチューブなどが好適である。これらの添加の効果としては、インクの粘度の最適化や製膜性の向上などに加えてキャリア移動度の向上が挙げられる。
また、本発明の熱電変換素子作製時に使用される有機半導体インクは、必要に応じて、下記の低分子化合物をインクの物性を制御する添加剤として含むことができる。具体的には、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、及びイコサン等の脂肪族炭化水素、
ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、及びエイコサノール等の脂肪族アルコール、
ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、ノナデシルアミン、及びエイコシルアミン等の脂肪族アミン、
ヘキサンチオール、ヘプタンチオール、オクタンチオール、ノナンチオール、デカンチオール、ウンデカンチオール、ドデカンチオール、トリデカンチオール、テトラデカンチオール、ペンタデカンチオール、ヘキサデカンチオール、ヘプタデカンチオール、オクタデカンチオール、ノナデカンチオール、エイコサンチオール、フェニルメタンチオール、(2−メチルフェニル)メタンチオール、(3−メチルフェニル)メタンチオール、(4−メチルフェニル)メタンチオール、(2−フルオロフェニル)メタンチオール、(3−フルオロフェニル)メタンチオール、(4−フルオロフェニル)メタンチオール、及び2−フェニルエタンチオール等の脂肪族チオール、並びに、
ベンゼンチオール、2−メチルベンゼンチオール、3−メチルベンゼンチオール、4−メチルベンゼンチオール、2−エチルベンゼンチオール、3−エチルベンゼンチオール、4−エチルベンゼンチオール、2−アミノベンゼンチオール、3−アミノベンゼンチオール、4−アミノベンゼンチオール、2−イソプロピルベンゼンチオール、3−イソプロピルベンゼンチオール、4−イソプロピルベンゼンチオール、2−(ジメチルアミノ)ベンゼンチオール、3−(ジメチルアミノ)ベンゼンチオール、及び4−(ジメチルアミノ)ベンゼンチオール等の芳香族チオールが挙げられる。
これらの添加の効果としては、有機半導体インクの粘度の最適化や製膜性の向上などに加えてキャリア移動度の向上が挙げられる。これらの低分子化合物の中でも、インクの濡れ性の向上により移動度の向上を図る目的で、脂肪族チオール、及び芳香族チオールが好適である。
以上説明した本発明の熱電変換素子作製時に使用される有機半導体インクを塗布することで、本発明の熱電変換材料に含まれるベンゾビス(チアジアゾール)誘導体の層、又は薄膜を形成することができる。なお、本発明の熱電変換素子作製時に使用される有機半導体インクの塗布は、公知の方法、例えば、スピンコート法、ドロップキャスト法、キャスト法、及びラングミュア−ブロジェット法などで行うことができる。また塗布法として、一般に印刷の技法として知られる公知の方法を用いることも可能で、例えば、インクジェット法、スクリーン法、オフセット法、グラビア法、フレキソ法、及びマイクロコンタクト法などで印刷を行うことができる。
なお、本発明の熱電変換素子作製時に使用される有機半導体インクを基材上に塗布した後に、溶媒成分が除去されると、本発明の熱電変換材料に含まれるベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含む層、又は含む薄膜(以下、有機半導体層とも称する)が形成されるが、溶媒成分除去条件は適宜選択することができる。
例えば溶媒成分を室温下で自然乾燥若しくは風乾することが好ましいが、溶媒の沸点が高く除去しにくい場合は、室温付近で減圧下で溶媒除去するか、50℃〜200℃程度に加熱して溶媒除去するか、若しくは両者を併用し減圧下で加熱処理することができる。
さらに本発明の熱電変換素子作製時に使用されるベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含む層、又は含む薄膜の半導体特性を向上させる目的で、前記層又は薄膜を加熱処理することができる。この場合の加熱処理条件は適宜選択することができ、例えば、50℃〜250℃程度で、0.1時間〜24時間、加熱処理する方法が挙げられる。この工程は溶媒除去工程を兼ねてもよい。
また、前記層又は薄膜の半導体特性を向上させる目的で、当該層又は薄膜を溶媒蒸気に曝露する処理を施してもよい。
本工程に用いられる溶媒としては、水や、種々の有機溶媒、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、イソブタノール、2−ブタノール、2−エチル−1−ブタノール、n−オクタノール、ベンジルアルコール、及びテルピネオール等のアルコール類;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、及びイソホロン等のケトン類:
酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、安息香酸ブチル、サリチル酸メチル、マロン酸エチル、酢酸2−エトキシエタン、及び酢酸2−メトキシ−1−メチルエチル等のエステル類;
N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、及びヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド類;
1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、及び1,3−ジメチルイミダゾリジン−2,4−ジオン等の尿素類;
ジメチルスルホキシド、及びジエチルスルホキシド等のスルホキシド類;
スルホラン等のスルホン類;
アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、及びベンゾニトリル等のニトリル類;
γ―ブチロラクトン等のラクトン類;
ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、tert−ブチルメチルエーテル、アニソール、フェネトール、1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、1,4−ジメトキシベンゼン、1,2−メチルアニソール、1,3−メチルアニソール、1,4−メチルアニソール、1,2−メチレンジオキシベンゼン、2,3−ジヒドロベンゾフラン、フタラン、オクチルオキシベンゼン、ジフェニルエーテル、及びエチルセロソルブ等のエーテル類;
炭酸ジメチル、及び1,2−ブチレングリコールカーボネート等のカーボネート類;
チオアニソール、及びエチルフェニルスルフィド等のチオエーテル類;
ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、プソイドクメン、ヘミメリテン、デュレン、イソデュレン、プレーニテン、エチルベンゼン、クメン、tert−ブチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、トリイソプロピルベンゼン、フェニルアセチレン、インダン、メチルインダン、インデン、テトラリン、ナフタレン、1−メチルナフタレン、2−メチルナフタレン、フェニルオクタン、及びジフェニルメタン等の芳香族炭化水素類;
フェノール、1,2−クレゾール、1,3−クレゾール、1,4−クレゾール、1,2−メトキシフェノール、1,3−メトキシフェノール、及び1,4−メトキシフェノール等のフェノール類;
クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、ブロモベンゼン、1,2−ジブロモベンゼン、1,3−ジブロモベンゼン、1,4−ジクロロトルエン、1−クロロナフタレン、2,4−ジクロロトルエン、2−クロロ−1,3−ジメチルベンゼン、2-クロロトルエン、2−クロロ−1,4−ジメチルベンゼン、4−クロロ−1,2−ジメチルベンゼン、2,5−ジクロロトルエン、m−クロロトルエン、1−クロロ−2,3−ジメチルベンゼン、4−(トリフルオロメトキシ)アニソール、及びトリフルオロメトキシベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素類;
ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、及びリモネン等の脂肪族炭化水素類;
ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,3−ジクロロプロパン、及び1,2−ジブロモエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;
2,6−ジメチルピリジン、及び2,6−ジtert-ブチルピリジン等のピリジン類
などが挙げられる。
これらの中でも、ハロゲン化芳香族炭化水素類、芳香族炭化水素類、及びハロゲン化脂肪族炭化水素類を好適に使用することができる。
好適なハロゲン化芳香族炭化水素類としては、クロロベンゼン、及び1,2−ジクロロベンゼンが挙げられる。
好適な芳香族炭化水素類としては、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、シクロヘキシルベンゼン、及び1−メチルナフタレンが挙げられる。
好適なハロゲン化脂肪族炭化水素類としては、クロロホルム、及び1,2−ジクロロエタンが挙げられる。
その他の好適な溶媒としては、安息香酸メチル、サリチル酸メチル、アニソール、4−メチルアニソール、及びメタクレゾールが挙げられる。
なお、これらの溶媒は、単独で使用してもよく、二種以上を混合して使用してもよい。
溶媒蒸気曝露処理工程は、例えば、ベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含む層、又は含む薄膜と溶媒とを、直接前記層又は薄膜と溶媒(液体状態のもの)とが触れないようにしつつ、密閉性のある空間に静置することで達成される。溶媒蒸気の量を増やすために、溶媒を40℃〜150℃程度に加温してもよい。この溶媒蒸気曝露処理工程の後には、当該工程で前記層又は薄膜に付着した溶媒を除去するために、前記と同様の乾燥や加熱処理を適宜選択して実施することができる。
以上の通り、本発明の熱電変換材料に含まれる、ベンゾビス(チアジアゾール)誘導体は、電子の移動度および耐熱性に優れ、熱電変換材料に供することができる。
本発明の熱電変換材料に含まれるベンゾビス(チアジアゾール)誘導体は、熱電変換材料として、単独で用いてもよいし、溶媒や前述のインクの物性を制御する添加剤、後述するドナー性の化合物等を含有していてもよい。熱電変換材料中における、これらの化合物の含有量は、特に限定されるものではなく、熱電材料に要求される特性等に応じて、最適な量を選択する。
本発明の熱電変換材料は、前記の各成分に加えて、他の成分を含んでいてもよい。塗布時のムラを防ぐ観点からは、界面活性剤を含有することができる。分散安定性を向上させるために、水酸化リチウム、過硫酸アンモニウム、紫外線吸収剤、重合禁止剤、レベリング添加剤、マット剤などを含有させることができる。膜強度、粘度を調整する観点からは、シリカ、チタニア、ジルコニア等の無機微粒子、(架橋)ポリマー微粒子、シランカップリング剤、ワックス類などを含有させることができる。特に、シリカ、チタニアの添加は、粘度増加による、分散性の向上の観点で好ましい。他にも、酸化防止剤、対光安定剤、耐熱安定剤、可塑剤等を適宜含有してもよい。これらの成分の含有量は、熱電変換材料の全質量に対し、0.01〜5質量%程度であることが好ましい。
<有機熱電変換素子>
次に、本発明の有機熱電変換素子について説明する。本発明の有熱電変換素子は、有機熱電変換層が前記ベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含むものである。前記ベンゾビス(チアジアゾール)誘導体は、耐熱性が高く、分子の配向方向を揃えやすく、高キャリア移動度を達成できるので、有機熱電変換素子に用いると効果的である。本発明の熱電変換素子として、具体的には、熱電発電素子や熱電冷却素子が挙げられる。
本発明の有機熱電変換素子は、n型半導体を含む層がベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含む以外、公知の構造、材料を使用することができる。
図1に、本発明の有機熱電変換素子の一例の構成を示す。図1に示す有機熱電変換素子は、n型半導体を含む熱電変換層12とp型半導体を含む熱電変換層13がその一端で電極11で接続され、多端の電極14および15から適宜導線16を介して、外部負荷回路へ電気エネルギーを供給するものである。電極11を電極14および15より高温にすることで熱エネルギーが電気エネルギーへと変換されて供給される。
電極11、n型半導体を含む熱電変換層12、p型半導体を含む熱電変換層13、電極14および15は同一基材の上に置くことができ、また、電気的に同一の構成を直列に接続することにより多くの電気エネルギーを供給することができる。
図2に、本発明の有機熱電変換素子の一例の構成を示す。図2に示す有機熱電変換素子は、n型半導体を含む熱電変換層22とp型半導体を含む熱電変換層23がその一端で電極21で接続され、多端の電極24および25から適宜導線26を介して、直流電源に接続される。直流電源から供給される電気エネルギーが熱エネルギーへと変換され、電極21では吸熱となり、一方の電極24および25より放熱される。電極21、n型半導体を含む熱電変換層22、p型半導体を含む熱電変換層23、電極24および25は同一基材の上に置くことができる。
基材としては、ガラス板など絶縁性があれば良いが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリイミドなど各種樹脂基材を用いること、素子に柔軟性を付与することができ実用上好適である。
電極11、14、15、21、24、25としては、例えば、金、白金、クロム、タングステン、タンタル、ニッケル、銅、アルミニウム、銀、マグネシウム、カルシウム等の金属、あるいはそれらの合金、およびポリシリコン、アモルファスシリコン、カーボンブラック、グラファイト、スズドープ酸化インジウム(ITO)、酸化亜鉛、導電性ポリマー等の材料を用いることができ、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、RFスパッタ法又は印刷法等の周知の作製方法により形成することができる。
n型半導体を含む熱電変換層12、22は、本発明の熱電変換材料に含まれるベンゾビス(チアジアゾール)誘導体1種以上を含み、例えば、真空蒸着法やスピンコート等の周知の膜作製方法により形成することができる。本発明の熱電変換材料に含まれるベンゾビス(チアジアゾール)誘導体は有機溶媒に可溶であるため、塗布(印刷)法によりn型半導体を含む熱電変換層12、22を形成することができる。また、n型半導体を含む熱電変換層12、22は、他の化合物1種以上を含むこともできる。また、n型半導体を含む熱電変換層12、22は他の化合物の層と多層構造を有しても良い。
n型半導体を含む熱電変換層12、22に、他の化合物1種以上を混合することで、電気伝導率を制御することができる。この目的で混合する化合物としては、ドナー性の化合物が候補として挙げられ、例えば、テトラチアフルバレン、炭酸セシウム、フッ化リチウムなどを挙げることができる。
n型半導体を含む熱電変換層12、22に、他の化合物の層と多層構造とすることで、電気伝導率を制御することができる。この目的で多層構造とする化合物としては、ドナー性の化合物が候補として挙げられ、例えば、テトラチアフルバレン、炭酸セシウム、フッ化リチウムなどを挙げることができる。
p型半導体を含む熱電変換層13、23は、公知のp型有機半導体1種以上を含み、例えば、真空蒸着法やスピンコート等の周知の膜作製方法により形成することができる。また、p型半導体を含む熱電変換層13、23は、他の化合物1種以上を含むこともできる。また、p型半導体を含む熱電変換層13、23は他の化合物の層と多層構造を有しても良い。
p型半導体としては、ペンタセン誘導体、ベンゾチエノベンゾチオフェン誘導体、ジナフトチオフェン誘導体、ジナフトチエノチオフェン誘導体、ポリチオフェン誘導体など公知の高移動度の半導体を用いれば良い。
p型半導体を含む熱電変換層13、23に、他の化合物1種以上を混合することで、電気伝導率を制御することができる。この目的で混合する化合物としては、アクセプター性の化合物が候補として挙げられ、例えば、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン、ジクロロジシアノベンゾキノン、三酸化タングステン、三酸化モリブデンなどを挙げることができる。
p型半導体を含む熱電変換層13、23に、他の化合物の層と多層構造とすることで、電気伝導率を制御することができる。この目的で混合する化合物としては、アクセプター性の化合物が候補として挙げられ、例えば、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン、ジクロロジシアノベンゾキノン、三酸化タングステン、三酸化モリブデンなどを挙げることができる。
前述のn型半導体を含む熱電変換層、又はp型半導体を含む熱電変換層にドーパントを添加してもよい。一般に、ドーパントは、有機化合物の電気伝導率σを高めるために添加される。さらに、ドーパントの添加量は、特に限定されるものではなく、ドーパント及び有機化合物の種類、熱電材料に要求される特性等に応じて、最適な量を選択する。
ドーパントには、有機化合物から電子を受け取るアクセプタードーパント(p型ドーパント) と、有機化合物に電子を与えるドナードーパント(n型ドーパント) がある。
導電性高分子に添加するアクセプタードーパントとしては、具体的には、PF、BF 、BCl等のルイス酸;HSO、HClO、リン酸等のプロトン酸;2−ナフタレンスルホン酸、カンファースルホン酸等の有機酸;鉄、チタン、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンタルのハロゲン化物等の遷移金属化合物等が挙げられる。
また、ドナードーパントとしては、具体的には、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;カルシウム、ストロンチウム等のアルカリ土類金属;ユーロピウム等のランタノイド金属;RN、R、RAs 、R(R:アルキル基)、アセチルコリン、等が挙げられる。
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
キャリア移動度について、有機薄膜トランジスタ素子(以下有機TFTと略す)を作製し、その電界効果移動度により評価した。また耐熱性について、熱重量−示差熱分析(TG−DTA)および示差走査熱量分析(DSC)により評価した。
[溶解性の評価]
合成した化合物の溶解性の評価は次の方法で行った。
約2−3mgの化合物を精秤し、設定した溶質濃度(0.5wt%、0.3wt%、0.2wt%、0.1wt%、0.05wt%、または0.03wt%)になるように各溶媒を加え、所定の温度で30分撹拌した後、溶質(合成した化合物)が完全に溶解しているか否かを外観目視で評価し、溶解性の評価結果とした。溶媒にはクロロホルム(沸点61℃)、トルエン(沸点111℃)、キシレン(沸点144℃)、メシチレン(沸点165℃)、クロロベンゼン(沸点130℃)、パラクロロトルエン(沸点162℃)、オルトジクロロベンゼン(沸点181℃)を用いた。
[有機TFTの作製・評価]
以下の実施例では、特に各項に記載のない限り、下記の有機TFTの作製手順に従い、シリコン基板上にボトムゲート−トップコンタクト素子を作製し、評価を行った。
(有機TFTの作製手順)
スピンコート法による有機半導体層の作製を経る場合、
(TFT基板の作製)−(スピンコート法による有機半導体層の作製)−(ソース電極およびドレイン電極の作製)
又は、
(TFT基板の作製)−(TFTの基板の表面修飾)−(スピンコート法による有機半導体層の作製)−(ソース電極およびドレイン電極の作製)
の手順で有機TFTを作製した。
(TFT基板の作製)
有機TFTの基板として、表面に膜厚200nmの熱酸化シリコンを形成した市販のシリコンウェハを用いた。シリコンウェハは低抵抗のものとし、有機TFTのゲート電極としても機能させた。また、酸化シリコン膜をゲート絶縁膜として用いた。前記シリコンウェハは、過酸化水素水と硫酸の混合液で洗浄し、次工程で使用する直前にUVオゾン処理により表面を清浄して用いた。このように処理した基板を以降「ベア基板」と表記する。
(TFTの基板の表面修飾)
「ベア基板」を市販のヘキサメチルジシラザンに浸漬して12時間以上静置し、基板表面を修飾した。このように処理した基板を以降「HMDS修飾基板」と表記する。
「ベア基板」に、市販のポリビニルフェノールとメラミンから調製したプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを溶媒とする、ポリビニルフェノールとメラミンの混合溶液をスピンコートし、次いで180℃で1時間加熱して、基板表面におよそ20nmのポリビニルフェノール−メラミン薄膜を作製した。このように処理した基板を以降「PVP基板」と表記する。
(スピンコート法による有機半導体層の作製)
合成した誘導体(有機半導体化合物)を用いて、各項に記載の溶媒、溶質濃度の溶液(有機半導体インク)を作成し、その半導体インクを用いてスピンコート法により各項に記載の基板上に、膜厚約20〜50nmの有機半導体層を形成した。その後必要に応じて、各項に記載の条件で、熱アニールを施した。スピンコートと熱アニールは、特に各項に記載がない限り、窒素雰囲気下で実施した。
(ソース電極およびドレイン電極の作製)
前記有機半導体層上に、金属マスクを用いて金を真空蒸着法で製膜することにより、ソース電極とドレイン電極を形成した。有機TFTのチャネル幅およびチャネル長はそれぞれ1000μmおよび70μmとした。また、電極層膜厚は約50nmとした。
(電界効果移動度の評価)
電界効果移動度(μ)は、KEITHLEY社の半導体特性評価システム4200−SCS型を用いて、作製した有機TFTの伝達特性を測定した結果から求めた。
電界効果移動度(μ)は、ドレイン電流Iを表わす下式(式A)を用いて算出することができる。
=(W/2L)μC(V−V … (式A)
ここで、LおよびWはチャネル長およびチャネル幅である。また、Cは絶縁層の単位面積当たりの容量である。Vはゲート電圧であり、Vはしきい値電圧である。前記伝達特性測定から、あるゲート電圧時におけるしきい値電圧とドレイン電流の値が示されるので、電界効果移動度を求めることができる。
<参考例1>
[化合物(C2)(前記式(10)の化合物;4,8−ビス[5−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)チオフェン−2−イル]ベンゾ[1,2−c:4,5−c’]ビス[1,2,5]チアジアゾール)の合成]
Figure 0006372317
(工程1−1;化合物(C2a)の合成)
攪拌装置を備えた容量30mLのガラス製反応容器に、1−ヨード−3−(トリフルオロメチル)ベンゼンを3.0g(11mmol)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)を0.77g(0.11mmol)、2−(トリブチルスズ)チオフェン6.16g(16.5mmol)及び無水トルエン15mLを加え、内温約100℃で5時間反応させた。反応終了後、溶媒を濃縮し、ヘキサン50mLを加え、シリカゲル:炭酸カリウム=90:10(重量%)を通じてろ過した。ろ液を濃縮し、濃縮残分を8.23gを得て、次いでシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、白色固体として化合物(C2a)を2.2g得た。
化合物(C2a)の物性値は以下の通りであった。なお、以下、特に断りがない場合、測定は室温(25℃)で行った。
H−NMR(400MHz;CDCl;δ(ppm));7.10−7.12(m、1H)、7.33−7.38(m、2H)、7.47−7.54(m、2H)、7.76−7.78(m、1H)、7.84(brs、1H)
(工程1−2:化合物(C2b)の合成)
攪拌装置を備えた容量30mLのガラス製反応容器に、化合物(C2a)を2.1g(9.0mmol)及び、無水テトラヒドロフラン20mLを加え、内温−60℃以下を保ちながら、1.6mol/Lのn−ブチルリチウムヘキサン溶液を6.76mL(10.8mmol)加え、同温度で30分撹拌したのち、同温度でトリブチルスズクロリド3.52g(10.8mmol)を加えて、室温まで昇温し、1夜撹拌した。THF−水混液を加えて反応停止したのち、溶媒を留去した。濃縮物にヘキサンを加え、シリカゲル:炭酸カリウム=90:10(重量%)を通じてろ過した。ろ液を濃縮し、逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、淡黄色液体として化合物(C2b)を4.61g得た。
化合物(C2b)の物性値は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz;CDCl;δ(ppm));0.86−0.95(m、9H)、1.03−1.24(m、6H)、1.26−1.42(m、6H)、1.48−1.72(m、6H)、7.15−7.16(m、1H)、7.46−7.48(m、3H)、7.77−7.79(m、1H)、7.85(brs、1H)
(工程1−3:化合物(C2)の合成)
攪拌装置を備えた容量30mLのガラス製反応容器に、化合物(C2b)を4.46g(5.32mmol)、Organic Lett.,Vol.12,No.15,p.3340(2010)に記載の方法を参照して合成したジブロモベンゾビスチアジアゾール(化合物(6))0.468g(1.33mmol)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)を0.280g(0.40mmol)及び無水トルエン15mLを加え、内温約100℃で6時間反応させた。反応液を濾過して粗体0.68gを得た。粗体の一部を昇華精製し、緑色固体として化合物(C2)を0.22g得た。
化合物(C2)の物性値は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz;1,2−ジクロロベンゼン−d:100℃;δ(ppm));7.57−7.61(m、2H)、7.66−7.68(m、2H)、7.71−7.72(m、2H)、8.05−8.07(m、2H)、8.25(brs、2H)、9.28−9.29(m、2H)
化合物(C2)の25℃での溶解性を評価したところ、25℃で0.03wt%の化合物(C2)がトルエンに完全に溶解し、また、メシチレンにも完全に溶解した。また、100℃で0.1wt%の化合物(C2)がトルエンに完全に溶解した。また、0.1wt%の化合物(C2)がメシチレン、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼンのいずれにも80℃で完全に溶解した。また、0.3wt%の化合物(C2)がクロロベンゼンにも100℃で完全に溶解した。また、0.5wt%の化合物(C2)がオルトジクロロベンゼンにも100℃で完全に溶解した。
TG−DTAおよびDSC分析の結果、熱分解開始温度は360℃以上、融点277℃、20℃から融点までに相転移挙動がなく、熱安定性に優れていることが分かった。
<参考例2>
[化合物(C24)(前記式(78)の化合物;4,8−ビス[5−(3−オクチル−4−(トリフルオロメチル)フェニル)チオフェン−2−イル]ベンゾ[1,2−c:4,5−c’]ビス[1,2,5]チアジアゾール))の合成]
(工程2−1:化合物(C24)の合成)
Figure 0006372317
攪拌装置を備えた容量250Lのガラス製反応容器に、炭酸ナトリウム7.2g(68.0mmol)、2−チオフェンボロン酸2.6g(20.4mmol)、4−ブロモ−2−クロロベンゾトリフルオライド2.5mL(17.0mmol)、トルエン102mL、エタノール51mL、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム2.0g(1.7mmol)を加え、80℃で16時間反応させた。反応物に水を加え塩化メチレンで抽出した後、硫酸マグネシウムで乾燥し溶媒を減圧留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製し白色固体として化合物(C24c)を4.4g得た。
化合物(C24c)の物性値は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz;CDCl;δ(ppm));7.13−7.17(m、1H)、7.43−7.46(m、2H)、7.60−7.62(m、1H)、7.70(d、1H)、7.78(d、1H)
EI−MS;262(M)
攪拌装置を備えた容量250Lのガラス製反応容器に、化合物(C24c)1.8g(7.0mmol)、オクチルボロン酸1.7g(10.5mmol)、リン酸カリウム3.7g(17.5mmol)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル574.7mg(1.4mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム320.5mg(0.35mmol)、トルエン21mL、エタノール51mLを加え、80℃で16時間反応させた。反応物に水を加えジエチルエーテルで抽出した後、硫酸マグネシウムで乾燥し溶媒を減圧留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製し無色液体として化合物(C24d)を2.3g得た。
化合物(C24d)の物性値は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz;CDCl;δ(ppm));0.88(t、3H)、1.28−1.46(m、10H)、1.61−1.69(m、2H)、2.77−2.81(m、2H)、7.11−7.14(m、1H)、7.37−7.38(m、1H)、7.42−7.43(m、1H)、7.51−7.53(m、1H)、7.58−7.62(m、2H)
EI−MS;340(M)
攪拌装置を備えた容量50mlのガラス製反応容器に、化合物(C24d)を1.0g(3.0mmol)及び、無水テトラヒドロフラン18mlを加え、内温−73℃を保ちながら1.6規定のノルマルブチルリチウム−ヘキサン溶液を2.1ml加え、同温度で1時間攪拌した後、同温度でトリブチルスズクロリド0.9ml(3.3mmol)を加えて室温まで昇温し1時間攪拌した。メタノールを加えクエンチした後、溶媒を留去した。得られた反応粗生成物にヘキサンを加えシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)によって精製することにより、無色液体として化合物(C24e)を1.9g得た。
化合物(C24e)の物性値は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz;CDCl;δ(ppm));0.87−0.93(m、12H)、1.13−1.17(m、4H)、1.29−1.46(m、14H)、1.56−1.69(m、12H)、2.76−2.80(m、2H)、7.18(d、1H)、7.51−7.57(m、2H)、7.58−7.60(m、2H)
FD−MS;629(M)
攪拌装置を備えた容量30mLのガラス製反応容器に、化合物(C24e)を1.8g(2.8mmol)、ジブロモベンゾビスチアジアゾール246.4mg(0.7mmol)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)を147.4mg(0.2mmol)及び無水トルエン10.5mLを加え、内温約100℃で6時間反応させた。反応液を濃縮しヘキサンを加え沈殿物を濾取することにより粗体2.1gを得た。得られた粗体をソックスレー抽出(トルエン)し抽出液を−26℃まで冷却、再結晶することを繰り返すことにより、暗緑色粉末として化合物(C24)を259.7mg得た。
化合物(C24)の物性値は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz;CCl;δ(ppm));1.07−1.10(m、6H)、1.48−1.67(m、20H)、1.90−1.98(m、4H)、3.06−3.10(m、4H)、7.80−7.85(m、6H)、8.00(s、2H)、9.30(d、2H)
FD−MS;871(M)
化合物(C24)の溶解性を評価したところ、60℃で0.2wt%の化合物(C24)がクロロホルムに完全に溶解した。また、60℃で0.3wt%の化合物(C24)がオルトジクロロベンゼン、トルエン、メシチレン、1−メチルナフタレンに完全に溶解した。
TG−DTAおよびDSC分析の結果、熱分解開始温度は370℃以上、融点254℃、―50℃から融点までに相転移挙動がなく、熱安定性に優れていることが分かった。
<参考例3>
[化合物(C25)(前記式(50)の化合物;4,8−ビス[5−(4−オクチル−3−(トリフルオロメチル)フェニル)チオフェン−2−イル]ベンゾ[1,2−c:4,5−c’]ビス[1,2,5]チアジアゾール))の合成]
(工程3−1:化合物(C25)の合成)
Figure 0006372317
4−ブロモ−2−クロロベンゾトリフルオライドの代わりに5−ブロモ−2−クロロベンゾトリフルオライドを用いた以外は、参考例2と同様にして化合物(C25)を得た。
化合物(C25c)の物性値は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz;CDCl;δ(ppm));7.11−7.14(m、1H)、7.38−7.40(m、2H)、7.53(d、1H)、7.71−7.74(m、1H)、7.92(d、1H)
EI−MS;262(M)
化合物(C25d)の物性値は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz;CDCl;δ(ppm));0.89(t、3H)、1.27−1.44(m、10H)、1.59−1.66(m、2H)、2.75−2.79(m、2H)、7.08−7.14(m、1H)、7.32−7.41(m、3H)、7.69−7.72(m、1H)、7.83(d、1H)
EI−MS;340(M)
化合物(C25e)の物性値は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz;CDCl;δ(ppm));0.91−0.94(m、12H)、1.12−1.17(m、4H)、1.25−1.40(m、18H)、1.56−1.66(m、8H)、2.74−2.78(m、2H)、7.16(d、1H)、7.35(d、1H)、7.45−7.46(m、1H)、7.70−7.72(m、1H)、7.83(d、1H)
FD−MS;629(M)
化合物(C25)の物性値は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz;CCl;δ(ppm));1.08−1.11(m、6H)、1.49−1.66(m、20H)、1.86−1.94(m、4H)、3.03−3.07(m、4H)、7.54(d、2H)、7.72(d、2H)、8.01−8.03(m、2H)、8.28(s、2H)、9.28(d、2H)
FD−MS;871(M)
化合物(C25)の溶解性を評価したところ、60℃で0.2wt%の化合物(C25)がクロロホルムに完全に溶解した。また、60℃で0.3wt%の化合物(C25)がオルトジクロロベンゼン、トルエン、メシチレン、1−メチルナフタレンに完全に溶解した。
TG−DTAおよびDSC分析の結果、熱分解開始温度は368℃以上、融点224℃、―50℃から融点までに相転移挙動がなく、熱安定性に優れていることが分かった。
<参考例4>
[化合物(C29)(前記式(96)の化合物;4,8−ビス[5−(4−シアノ−3−(2−メチルヘキシル)フェニル)チオフェン−2−イル]ベンゾ[1,2−c:4,5−c’]ビス[1,2,5]チアジアゾール))の合成]
(工程4−1:化合物(C29)の合成)
Figure 0006372317
4−ブロモ−2−クロロベンゾトリフルオライドの代わりに4−ブロモ−2−クロロベンゾニトリルを用いた以外は、参考例3と同様にして化合物(C29c)を得た。
化合物(C29c)の物性値は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz;CDCl;δ(ppm));7.14−7.17(m、1H)、7.46−7.48(m、2H)、7.60−7.62(m、1H)、7.66−7.69(m、1H)、7.77(d、1H)
EI−MS;219(M)
攪拌装置を備えた容量50mLのガラス製反応容器に、2−エチルヘキシルマグネシウムブロマイド17.4mL(17.4mmol:濃度1.0M/ジエチルエーテル溶液)を入れ0℃に冷却し、塩化亜鉛(II)15.8mL(17.4mmol:濃度1.1M/ジエチルエーテル溶液)を加え、同温度で1時間攪拌した後、溶媒を留去しテトラヒドロフラン35mLを加え2−エチルヘキシル亜鉛クロライド溶液とした。攪拌装置を備えた容量100mLのガラス製反応容器にトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム531.1mg(0.58mmol)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル952.4mg(2.3mmol)、テトラヒドロフラン23mLを加え、室温で15分間攪拌し、化合物(C29c)2.6g(11.6mmol)を加えた後、0℃に冷却し先に調整した2−エチルヘキシル亜鉛クロライド溶液を加えた後、50℃で3時間反応させた。メタノールを加えクエンチした後、溶媒を留去し飽和塩化アンモニウム水溶液を加えジエチルエーテルで抽出、硫酸マグネシウムで乾燥し溶媒を減圧留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=95:5)で精製し白色固体として化合物(C29d)を3.1g得た。
化合物(C29d)の物性値は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz;CDCl;δ(ppm));0.86−0.93(m、6H)、1.26−1.41(m、8H)、1.71−1.77(m、1H)、2.78(d、2H)、7.13−7.15(m、1H)、7.41−7.45(m、2H)、7.52−7.54(m、2H)、7.60−7.62(m、1H)
EI−MS;297(M)
攪拌装置を備えた容量100mLのガラス製反応容器に、化合物(C29d)を3.5g(11.8mmol)及び、無水テトラヒドロフラン35mLを加え、内温−75℃を保ちながら1.1Mのリチウムジイソプロピルアミドヘキサン−テトラヒドロフラン溶液を11.9mL加え、同温度で1時間攪拌した後、同温度でトリブチルスズクロリド3.5mL(13.0mmol)を加えて室温まで昇温し1時間攪拌した。メタノールを加えクエンチした後、溶媒を留去した。得られた反応粗生成物にヘキサンを加えシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=50:1容量%)によって精製することにより、薄黄色液体として化合物(C29e)を4.6g得た。
化合物(C29e)の物性値は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz;CDCl;δ(ppm));0.86−0.93(m、15H)、1.11−1.41(m、22H)、1.56−1.65(m、5H)、2.78(d、2H)、7.19(d、1H)、7.52−7.55(m、3H)、7.58−7.60(m、1H)
FD−MS;586(M)
攪拌装置を備えた容量50mLのガラス製反応容器に、化合物(C29e)を4.6g(7.8mmol)、ジブロモベンゾビスチアジアゾール683.8mg(1.9mmol)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)を408.5mg(0.58mmol)及び無水トルエン30mLを加え、内温約100℃で7時間反応させた。反応液を濃縮しヘキサンを加え沈殿物を濾取することにより粗体1.96gを得た。得られた粗体をソックスレー抽出(クロロホルム)し抽出液を−26℃まで冷却、再結晶することを繰り返すことにより、濃緑色粉末として化合物(C29)を307.1mg得た。
化合物(C29)の物性値は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz;CCl;δ(ppm));1.08−1.15(m、12H)、1.49−1.64(m、16H)、2.03−2.08(m、2H)、3.04(d、4H)、7.70(d、2H)、7.78−7.81(m、4H)、7.94(d、2H)、9.29(d、2H)
FD−MS;785(M)
化合物(C29)の溶解性を評価したところ、60℃で0.1wt%の化合物(C29)がクロロホルムに、0.3wt%の化合物(C29)が1−メチルナフタレンに完全に溶解した。
TG−DTAおよびDSC分析の結果、熱分解開始温度は379℃以上、融点262℃、―50℃から融点までに相転移挙動がなく、熱安定性に優れていることが分かった。
<参考例5>
[化合物(C30)(前記式(78)の化合物;4,8−ビス[5−(3−(2−メチルヘキシル)−4−(トリフルオロメチル)フェニル)チオフェン−2−イル]ベンゾ[1,2−c:4,5−c’]ビス[1,2,5]チアジアゾール))の合成]
(工程5−1:化合物(C30)の合成)
Figure 0006372317
攪拌装置を備えた容量100mLのガラス製反応容器に、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム457.9mg(0.5mmol)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル821.1mg(2.0mmol)、テトラヒドロフラン20mLを加え、室温で15分間攪拌し、化合物(C24c)2.6g(10.0mmol)を加えた後、0℃に冷却し2−エチルヘキシルマグネシウムブロマイド30mL(15.0mmol:濃度0.5M/テトラヒドロフラン溶液)を加えた後、室温で4時間反応させた。メタノールを加えクエンチした後、溶媒を留去し飽和塩化アンモニウム水溶液を加えジエチルエーテルで抽出、硫酸マグネシウムで乾燥し溶媒を減圧留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製し薄黄色液体として化合物(C30d)を2.7g得た。
化合物(C30d)の物性値は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz;CDCl;δ(ppm));0.85−0.93(m、6H)、1.25−1.41(m、8H)、1.71−1.74(m、1H)、2.74−2.76(m、2H)、7.12−7.15(m、1H)、7.37−7.46(m、2H)、7.52−7.65(m、3H)
EI−MS;340(M)
攪拌装置を備えた容量100mLのガラス製反応容器に、化合物(C30d)を1.7g(5.0mmol)及び、無水テトラヒドロフラン30mLを加え、内温−74℃を保ちながら1.6Mのノルマルブチルリチウム−ヘキサン溶液を3.4mL加え、同温度で1時間攪拌した後、同温度でトリブチルスズクロリド1.5mL(5.5mmol)を加えて室温まで昇温し1時間攪拌した。メタノールを加えクエンチした後、溶媒を留去した。得られた反応粗生成物にヘキサンを加えシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)によって精製することにより、薄黄色液体として化合物(C30e)を3.1g得た。
化合物(C30e)の物性値は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz;CDCl;δ(ppm));0.80−0.93(m、15H)、1.11−1.64(m、27H)、2.74(d、2H)7.18(d、1H)、7.51−7.54(m、2H)、7.57(s、1H)、7.60(d、1H)
FD−MS;629(M)
攪拌装置を備えた容量50mLのガラス製反応容器に、化合物(C30e)を3.0g(4.8mmol)、ジブロモベンゾビスチアジアゾール422.4mg(1.2mmol)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)を252.7mg(0.36mmol)及び無水トルエン18mLを加え、内温約100℃で7時間反応させた。反応液を濃縮しヘキサンを加え沈殿物を濾取することにより粗体733.8mgを得た。得られた粗体をソックスレー抽出(トルエン及びクロロホルム)し抽出液を−26℃まで冷却、再結晶することを繰り返すことにより、暗緑色粉末として化合物(C30)を242.3mg得た。
化合物(C30)の物性値は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz;CCl;δ(ppm));1.08−1.14(m、12H)、1.49−1.66(m、16H)、2.03−2.08(m、2H)、3.01−3.09(m、4H)、7.80−7.84(m、6H)、8.01(s、2H)、9.30(d、2H)
FD−MS;870(M)
化合物(C30)の溶解性を評価したところ、60℃で0.2wt%の化合物(C30)がクロロホルムに完全に溶解した。また、60℃で0.3wt%の化合物(C30)が1−メチルナフタレンに完全に溶解した。また、80℃で0.3wt%の化合物(C30)がトルエン、メシチレン、オルトジクロロベンゼンに完全に溶解した。
TG−DTAおよびDSC分析の結果、熱分解開始温度は379℃以上、融点230℃、―50℃から融点までに相転移挙動がなく、熱安定性に優れていることが分かった。
<参考例6>
[化合物(C12−6)(前記式(100)の化合物)の合成]
Figure 0006372317
(工程6−1:化合物(C12−0−f)の合成)
Figure 0006372317
攪拌装置を備えた容量1Lのガラス製反応容器に、硝酸銀34.8g(205.0mmol)水100mLを加え溶液とし、水酸化ナトリウム16.4g(410.0mmol)水205mL溶液を加え室温で15分攪拌した後、2,3−チオフェンジカルボキシアルデヒド7.0g(50.0mmol)エタノール250mL溶液を1.5時間掛けて滴下した。室温で2時間攪拌した後、吸引濾過し濾液を濃縮後、氷水で冷却し2規定塩酸水溶液を加えpH1とした。沈殿物を吸引濾過し減圧乾燥することで、薄黄土色粉末として化合物(C12−0−f)を7.4g得た。
化合物(C12−0−f)の物性値は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz;(CDCO;δ(ppm));7.72(d、1H)、7.94(d、1H)
EI−MS;172(M+)、CI−MS;173(M+1)
(工程6−2:化合物(C12−0−e)の合成)
Figure 0006372317
攪拌装置を備えた容量250mLのガラス製反応容器に、化合物(C12−0−f)6.9g(40.0mmol)無水酢酸160mLを加え、室温から135℃に昇温し、135℃で16時間反応させた。無水酢酸を減圧留去後、トルエンを加え65℃で加熱溶解し、不溶物を濾別後、ヘキサンを加え析出した沈殿物を濾取し薄茶色固体として化合物(C12−0−e)を5.6g得た。
化合物(C12−0−e)の物性値は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz;(CDCO;δ(ppm));7.58(d、1H)、8.43(d、1H)
EI−MS;154(M+)
(工程6−3:化合物(C12−6−d)の合成)
Figure 0006372317
攪拌装置を備えた容量250mLのガラス製反応容器に、化合物(C12−0−e)1.7g(11.0mmol)トルエン164mLを加え、氷冷し5℃とした後、ノルマルヘキシルアミン1.5mL(11.5mmol)を加え、室温で4時間反応させた。トルエンを減圧留去後、ジエチルエーテルを加え沈殿物を濾取し白色固体として化合物(C12−6−d)を2.6g得た。
化合物(C12−6−d)の物性値は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz;CDCl;δ(ppm));Major product:0.86−0.92(m、3H)、1.29−1.43(m、6H)、1.62−1.77(m、2H)、3.45−3.52(m、2H)、6.74(s、1H)、7.33(d、1H)、7.58(d、1H)Minor product:0.86−0.92(m、3H)、1.29−1.43(m、6H)、1.62−1.77(m、2H)、3.45−3.52(m、2H)、7.10(s、1H)、7.40(d、1H)、7.79(s、1H)
EI−MS;255(M+)、CI−MS;256(M+1)
化合物(C12−6−d)は分離精製せずに、次の工程に用いた。
(工程6−4:化合物(C12−6−c)の合成)
攪拌装置を備えた容量50mLのガラス製反応容器に、化合物(C12−6−d)255.3mg(1.0mmol)塩化チオニル19.7mLを加え、室温から90℃に昇温し、90℃で3時間反応させた。塩化チオニルを減圧留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:塩化メチレン:酢酸エチル=5:1:1)で精製し薄黄色固体として化合物(C12−6−c)を218.4mg得た。
化合物(C12−6−c)の物性値は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz;(CDCl;δ(ppm));0.84−0.92(m、3H)、1.26−1.34(m、6H)、1.49−1.66(m、2H)、3.52−3.61(m、2H)、7.29(d、1H)、7.78(d、1H)
EI−MS;237(M+)
Figure 0006372317
(工程6−5:化合物(C12−6−b)の合成)
Figure 0006372317
攪拌装置を備えた容量100mLのガラス製反応容器に、化合物(C12−6−c)1.8g(1.8mmol)トリフルオロ酢酸45mL、硫酸15mL、N−ブロモスクシンイミド1.48g(8.34mmol)を加え、室温で3時間反応させた。反応物に水を加え塩化メチレンで抽出した後、硫酸マグネシウムで乾燥し溶媒を減圧留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で精製し薄黄色固体として化合物(C12−6−b)を2.3g得た。
化合物(C12−6−b)の物性値は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz;(CDCl;δ(ppm));0.86−0.90(m、3H)、1.27−1.33(m、6H)、1.57−1.62(m、2H)、3.51−3.57(m、2H)、7.31(s、1H)
EI−MS;317(M+)
(工程6−6:化合物(C12−6−a)の合成)
Figure 0006372317
攪拌装置を備えた容量15mLのガラス製反応容器に、化合物(C12−6−b)158.1mg(0.5mmol)テトラブチルアンモニウムアイオダイド738.7mg(2.0mmol)、ビストリブチルスズ1.0mL(2.0mmol)、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンパラジウム(II)ジクロリド−ジクロロメタン錯体40.8mg(0.05mmol)1,4−ジオキサン5mLを加え、70℃で4時間反応させた。1,4−ジオキサンを減圧留去後、アミノプロピル基修飾シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製し無色液体として化合物(C12−6−a)を34.2mg得た。
化合物(C12−6−a)の物性値は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz;(CDCl;δ(ppm));0.83−0.94(m、12H)、1.10−1.39(m、20H)、1.54−1.63(m、6H)、3.52−3.56(m、2H)、7.30(s、1H)
FD−MS;526(M+)
(工程6−7:化合物(C12−6)の合成)
Figure 0006372317
攪拌装置を備えた容量100mLのガラス製反応容器に、化合物(C12−6−a)を3.0g(5.7mmol)、ジブロモベンゾビスチアジアゾール(化合物(6)503.4mg(1.4mmol)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)を301.1mg(0.4mmol)及び無水トルエン29mLを加え、内温約100℃で6時間反応させた。トルエンを減圧留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(塩化メチレン)で精製し濃緑色固体として化合物(C12−6)を309.9mg得た。
化合物(C12−6)の物性値は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz;(CDCl;δ(ppm));0.89−0.92(m、6H)、1.33−1.40(m、12H)、1.65−1.73(m、4H)、3.63−3.67(m、4H)、9.23(s、1H)
FD−MS;664(M+)
TG−DTAおよびDSC分析の結果、熱分解開始温度は360℃以上、融点286℃、―20℃から融点までに相転移挙動がなく、熱安定性に優れていることが分かった。
<参考例E−1>
参考例1で得られた化合物(C2)を用いて、「PVP基板」上にスピンコート法によりTFT素子を作製し、評価を行った。
(有機半導体層の作製条件)
化合物(C2)をクロロベンゼンに0.3wt%となるように加え、130℃で加熱し作成した溶液(有機半導体インク)の0.18mLを「PVP基板」上に滴下し、1000rpmで30秒間スピンコートを行い、膜厚約20nmの有機半導体層を形成した。その後、有機半導体層を形成した「PVP基板」を120℃で35分間加熱した。膜の外観を目視で観察したところ、均一な膜を形成し、良好に製膜できていることを確認した。
(有機TFTの評価)
作製した有機TFTを、ドレイン電圧が100Vの条件で伝達特性を測定したところ、この有機TFTはn型の半導体特性を示した。
前記(式A)を用いて電界効果移動度(μ)を計算した結果、「PVP基板」上の化合物(C2)の有機TFTでは、3.4×10−1cm/Vsの電界効果移動度が得られることが分かった。
<参考例E−2>
参考例1で得られた化合物(C2)を用いて、「CYC基板」上にスピンコート法によりTFT素子を作製し、評価を行った。
(有機半導体層の作製条件)
化合物(C2)をクロロベンゼンに0.3wt%となるように加え、130℃で加熱し作成した溶液(有機半導体インク)の0.18mLを「CYC基板」上に滴下し、1000rpmで30秒間スピンコートを行い、膜厚約20nmの有機半導体層を形成した。その後、有機半導体層を形成した「CYC基板」を150℃で35分間加熱した。膜の外観を目視で観察したところ、均一な膜を形成し、良好に製膜できていることを確認した。
(有機TFTの評価)
作製した有機TFTを、ドレイン電圧が100Vの条件で伝達特性を測定したところ、この有機TFTはn型の半導体特性を示した。
前記(式A)を用いて電界効果移動度(μ)を計算した結果、「CYC基板」上の化合物(C2)の有機TFTでは、4.5×10−1cm/Vsの電界効果移動度が得られることが分かった。
<参考例E−3>
参考例2で得られた化合物(C24)を用いて、「ベア基板」上にスピンコート法によりTFT素子を作製し、評価を行った。
(有機半導体層の作製条件)
化合物(C24)をクロロホルムに0.1wt%となるように加え、70℃で加熱し作成した溶液(有機半導体インク)の0.18mLを「ベア基板」上に滴下し、1000rpmで30秒間スピンコートを行い、膜厚約20nmの有機半導体層を形成した。その後、有機半導体層を形成した「ベア基板」を180℃で35分間加熱した。膜の外観を目視で観察したところ、均一な膜を形成し、良好に製膜できていることを確認した。
(有機TFTの評価)
作製した有機TFTを、ドレイン電圧が100Vの条件で伝達特性を測定したところ、この有機TFTはn型の半導体特性を示した。
前記(式A)を用いて電界効果移動度(μ)を計算した結果、「ベア基板」上の化合物(C24)の有機TFTでは、7.3×10−1cm/Vsの電界効果移動度が得られることが分かった。
<参考例E−4>
参考例2で得られた化合物(C24)を用いて、「PVP基板」上にスピンコート法によりTFT素子を作製し、評価を行った。
(有機半導体層の作製条件)
化合物(C24)をクロロホルムに0.1wt%となるように加え、70℃で加熱し作成した溶液(有機半導体インク)の0.18mLを「PVP基板」上に滴下し、1000rpmで30秒間スピンコートを行い、膜厚約20nmの有機半導体層を形成した。その後、有機半導体層を形成した「PVP基板」を150℃で35分間加熱した。膜の外観を目視で観察したところ、均一な膜を形成し、良好に製膜できていることを確認した。
(有機TFTの評価)
作製した有機TFTを、ドレイン電圧が100Vの条件で伝達特性を測定したところ、この有機TFTはn型の半導体特性を示した。
前記(式A)を用いて電界効果移動度(μ)を計算した結果、「PVP基板」上の化合物(C24)の有機TFTでは、8.5×10−1cm/Vsの電界効果移動度が得られることが分かった。
<参考例E−5>
参考例3で得られた化合物(C25)を用いて、「ベア基板」上にスピンコート法によりTFT素子を作製し、評価を行った。
(有機半導体層の作製条件)
化合物(C25)をクロロホルムに0.1wt%となるように加え、70℃で加熱し作成した溶液(有機半導体インク)の0.18mLを「ベア基板」上に滴下し、1000rpmで30秒間スピンコートを行い、膜厚約20nmの有機半導体層を形成した。その後、有機半導体層を形成した「ベア基板」を180℃で35分間加熱した。膜の外観を目視で観察したところ、均一な膜を形成し、良好に製膜できていることを確認した。
(有機TFTの評価)
作製した有機TFTを、ドレイン電圧が100Vの条件で伝達特性を測定したところ、この有機TFTはn型の半導体特性を示した。
前記(式A)を用いて電界効果移動度(μ)を計算した結果、「ベア基板」上の化合物(C25)の有機TFTでは、4.4×10−1cm/Vsの電界効果移動度が得られることが分かった。
<実施例E−6>
参考例3で得られた化合物(C25)を用いて、「PVP基板」上にスピンコート法によりTFT素子を作製し、評価を行った。
(有機半導体層の作製条件)
化合物(C25)をクロロホルムに0.1wt%となるように加え、70℃で加熱し作成した溶液(有機半導体インク)の0.18mLを「PVP基板」上に滴下し、1000rpmで30秒間スピンコートを行い、膜厚約20nmの有機半導体層を形成した。その後、有機半導体層を形成した「PVP基板」を180℃で35分間加熱した。膜の外観を目視で観察したところ、均一な膜を形成し、良好に製膜できていることを確認した。
(有機TFTの評価)
作製した有機TFTを、ドレイン電圧が100Vの条件で伝達特性を測定したところ、この有機TFTはn型の半導体特性を示した。
前記(式A)を用いて電界効果移動度(μ)を計算した結果、「PVP基板」上の化合物(C25)の有機TFTでは、1.1×10cm/Vsの電界効果移動度が得られることが分かった。
<参考例E−7>
参考例4で得られた化合物(C29)を用いて、「ベア基板」上にスピンコート法によりTFT素子を作製し、評価を行った。
(有機半導体層の作製条件)
化合物(C29)をクロロホルムに0.1wt%となるように加え、60℃で加熱し作成した溶液(有機半導体インク)の0.18mLを「ベア基板」上に滴下し、1000rpmで30秒間スピンコートを行い、膜厚約20nmの有機半導体層を形成した。その後、有機半導体層を形成した「ベア基板」を180℃で35分間加熱した。膜の外観を目視で観察したところ、均一な膜を形成し、良好に製膜できていることを確認した。
(有機TFTの評価)
作製した有機TFTを、ドレイン電圧が100Vの条件で伝達特性を測定したところ、この有機TFTはn型の半導体特性を示した。
前記(式A)を用いて電界効果移動度(μ)を計算した結果、「ベア基板」上の化合物(C29)の有機TFTでは、2.0×10cm/Vsの電界効果移動度が得られることが分かった。
<参考例E−8>
参考例4で得られた化合物(C29)を用いて、「PVP基板」上にスピンコート法によりTFT素子を作製し、評価を行った。
(有機半導体層の作製条件)
化合物(C29)をクロロホルムに0.1wt%となるように加え、60℃で加熱し作成した溶液(有機半導体インク)の0.18mLを「PVP基板」上に滴下し、1000rpmで30秒間スピンコートを行い、膜厚約20nmの有機半導体層を形成した。その後、有機半導体層を形成した「PVP基板」を180℃で35分間加熱した。膜の外観を目視で観察したところ、均一な膜を形成し、良好に製膜できていることを確認した。
(有機TFTの評価)
作製した有機TFTを、ドレイン電圧が100Vの条件で伝達特性を測定したところ、この有機TFTはn型の半導体特性を示した。
前記(式A)を用いて電界効果移動度(μ)を計算した結果、「PVP基板」上の化合物(C29)の有機TFTでは、1.8×10cm/Vsの電界効果移動度が得られることが分かった。
<参考例E−9>
参考例5で得られた化合物(C30)を用いて、「ベア基板」上にスピンコート法によりTFT素子を作製し、評価を行った。
(有機半導体層の作製条件)
化合物(C30)をクロロホルムに0.1wt%となるように加え、60℃で加熱し作成した溶液(有機半導体インク)の0.18mLを「ベア基板」上に滴下し、1000rpmで30秒間スピンコートを行い、膜厚約20nmの有機半導体層を形成した。その後、有機半導体層を形成した「ベア基板」を180℃で35分間加熱した。膜の外観を目視で観察したところ、均一な膜を形成し、良好に製膜できていることを確認した。
(有機TFTの評価)
作製した有機TFTを、ドレイン電圧が100Vの条件で伝達特性を測定したところ、この有機TFTはn型の半導体特性を示した。
前記(式A)を用いて電界効果移動度(μ)を計算した結果、「ベア基板」上の化合物(C30)の有機TFTでは、8.9×10−1cm/Vsの電界効果移動度が得られることが分かった。
<参考例E−10>
参考例5で得られた化合物(C30)を用いて、「PVP基板」上にスピンコート法によりTFT素子を作製し、評価を行った。
(有機半導体層の作製条件)
化合物(C30)をクロロホルムに0.1wt%となるように加え、60℃で加熱し作成した溶液(有機半導体インク)の0.18mLを「PVP基板」上に滴下し、1000rpmで30秒間スピンコートを行い、膜厚約20nmの有機半導体層を形成した。その後、有機半導体層を形成した「PVP基板」を180℃で35分間加熱した。膜の外観を目視で観察したところ、均一な膜を形成し、良好に製膜できていることを確認した。
(有機TFTの評価)
作製した有機TFTを、ドレイン電圧が100Vの条件で伝達特性を測定したところ、この有機TFTはn型の半導体特性を示した。
前記(式A)を用いて電界効果移動度(μ)を計算した結果、「PVP基板」上の化合物(C30)の有機TFTでは、1.7×10cm/Vsの電界効果移動度が得られることが分かった。
<参考例E−11>
参考例6で得られた化合物(C12−6)を用いて、「ベア基板」上にスピンコート法によりTFT素子を作製し、評価を行った。
(有機半導体層の作製条件)
化合物(C12−6)をクロロホルムに0.1wt%となるように加え、室温で溶解し調整した溶液(有機半導体インク)の0.18mLを「ベア基板」上に滴下し、1000rpmで30秒間スピンコートを行い、膜厚約20nmの有機半導体層を形成した。その後、有機半導体層を形成した「ベア基板」を180℃で35分間加熱した。
(有機TFTの評価)
作製した有機TFTを、ドレイン電圧が100Vの条件で伝達特性を測定したところ、この有機TFTはn型の半導体特性を示した。
前記(式A)を用いて電界効果移動度(μ)を計算した結果、「ベア基板」上の化合物(C12−6)の有機TFTでは、3.9×10−1cm/Vsの電界効果移動度が得られることが分かった。
<参考例E−12>
参考例6で得られた化合物(C12−6)を用いて、「PVP基板」上にスピンコート法によりTFT素子を作製し、評価を行った。
(有機半導体層の作製条件)
化合物(C12−6)をクロロホルムに0.1wt%となるように加え、室温で溶解し調整した溶液(有機半導体インク)の0.18mLを「PVP基板」上に滴下し、1000rpmで30秒間スピンコートを行い、膜厚約20nmの有機半導体層を形成した。その後、有機半導体層を形成した「PVP基板」を120℃で35分間加熱した。
(有機TFTの評価)
作製した有機TFTを、ドレイン電圧が100Vの条件で伝達特性を測定したところ、この有機TFTはn型の半導体特性を示した。
前記(式A)を用いて電界効果移動度(μ)を計算した結果、「PVP基板」上の化合物(C12−6)の有機TFTでは、2.9×10−1cm/Vsの電界効果移動度が得られることが分かった。
以上の結果から、本発明の熱電変換材料に含まれるベンゾビス(チアジアゾール)誘導体は、200℃以上の耐熱性と高い電界効果移動度を示すことが確認でき、熱電変換材料として好適であることが分かった。
<実施例1>
(基板の調整)
基板37として膜厚125μmのポリエチレンナフタレート(以下、PENと略す)を用い、表面平滑化および表面濡れ性の制御の目的で、市販のポリビニルフェノールとメラミンから調製したプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを溶媒とする、ポリビニルフェノールとメラミンの混合溶液をスピンコートし、次いで180℃で1時間加熱して、基板表面におよそ20nmのポリビニルフェノール−メラミン薄膜(以下PVP薄膜と略す)を作製する。
(基板の親溶媒化処理によるパターン形成による熱電変換材料の塗布調製)
熱電変換層(3mm×20mmを5mm間隔で6本)の形状に合わせたメタルマスクを、PVP薄膜を積層したPEN基板のPVP薄膜側にのせ、紫外光オゾン処理をすることで、熱電変換層の形状の部分のみ親溶媒化処理することができる。
化合物(C12−6)をクロロホルムに0.1wt%となるように加え、室温で溶解し調整した溶液を図3の3か所のn型半導体を含む熱電変換層32の部分に塗布し、溶媒を乾燥させ、次いで180℃で35分間加熱すると化合物(C12−6)を含む薄膜が形成される。
電気伝導性制御層として、CsCOの0.01wt%エタノール溶液を図3の3か所のn型半導体を含む熱電変換層32の部分、すなわち化合物(C12−6)を含む薄膜の上に塗布し、溶媒を乾燥させると、n型半導体を含む熱電変換層32が2層積層膜として形成され、化合物(C12−6)を含む熱電変換材料が調製される。
同様に市販の2,7−ジオクチル[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(以下C8−BTBTと略す)をクロロホルムに0.1wt%となるように加え、室温で溶解し調整した溶液を図3の3か所のp型半導体を含む熱電変換層33の部分に塗布し、溶媒を乾燥させるとC8−BTBTを含む薄膜が形成される。
電気伝導性制御層として、MoOの0.01wt%水溶液を図3の3か所のp型半導体を含む熱電変換層33の部分、すなわちC8−BTBTを含む薄膜の上に塗布し、溶媒を乾燥させると、C8−BTBTを含む熱電変換層33が2層積層膜として形成され、C8−BTBTを含む熱電変換材料が調製される。
(熱電変換機能の評価)
銅箔テープを3mm×11mmに切断し両端の3mm部分が、図3の電極31、34、35、および36に示すように、各半導体を含む熱電変換層の端部3mmに重なるように接合すると、3対の双極型熱電変換素子が直列に接合された、双極型熱電発電素子が得られる。
電極34、35、36を大気開放とし、出力取出し電極34、35間に、電流・電圧計を接続し、高温部電極31をホットプレートに接触させ、ホットプレートの温度を大気よりも高くすると、大気とホットプレートの温度差に応じた電気エネルギーの出力が確認できる。
<実施例2>
(基板の調整)
基板37として膜厚125μmのポリエチレンナフタレート(以下、PENと略す)を用い、表面平滑化および表面濡れ性の制御の目的で、市販のポリビニルフェノールとメラミンから調製したプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを溶媒とする、ポリビニルフェノールとメラミンの混合溶液をスピンコートし、次いで180℃で1時間加熱して、基板表面におよそ20nmのポリビニルフェノール−メラミン薄膜(以下PVP薄膜と略す)を作製する。
(基板上への隔壁作製によるパターン形成による熱電変換材料の塗布調製)
PVP薄膜を積層したPEN基板のPVP薄膜側に、市販のテフロン(登録商標)AF1600Xを1wt%でフロリナートTMFC−43に溶解した溶液を用いて、熱電変換層(3mm×20mmを5mm間隔で6本)に相当する長方形の隔壁パターンを描画し、100℃で30分加熱して、隔壁を作製する。
化合物(C12−6)をクロロホルムに0.1wt%となるように加え、室温で溶解し調整した溶液を図3の3か所の隔壁で囲まれたn型半導体を含む熱電変換層32の部分に塗布し、溶媒を乾燥させ、次いで180℃で35分間加熱すると化合物(C12−6)を含む薄膜が形成される。
電気伝導性制御層として、CsCOの0.01wt%エタノール溶液を図3の3か所のn型半導体を含む熱電変換層32の部分、すなわち化合物(C12−6)を含む薄膜の上に塗布し、溶媒を乾燥させると、n型半導体を含む熱電変換層32が2層積層膜として形成され、化合物(C12−6)を含む熱電変換材料が調製される。
同様に市販のC8−BTBTをクロロホルムに0.1wt%となるように加え、室温で溶解し調整した溶液を図3の3か所の隔壁で囲まれたp型半導体を含む熱電変換層33の部分に塗布し、溶媒を乾燥させるとC8−BTBTを含む薄膜が形成される。
電気伝導性制御層として、MoOの0.01wt%水溶液を図3の3か所のp型半導体を含む熱電変換層33の部分、すなわちC8−BTBTを含む薄膜の上に塗布し、溶媒を乾燥させると、C8−BTBTを含む熱電変換層33が2層積層膜として形成され、C8−BTBTを含む熱電変換材料が調製される。
(熱電変換機能の評価)
銅箔テープを3mm×11mmに切断し両端の3mm部分が、図3の電極31、34、35、および36に示すように、各半導体を含む熱電変換層の端部3mmに重なるように接合すると、3対の双極型熱電変換素子が直列に接合された、双極型熱電発電素子が得られる。
電極34、35、36を大気開放とし、出力取出し電極34、35間に、電流・電圧計を接続し、高温部電極31をホットプレートに接触させ、ホットプレートの温度を大気よりも高くすると、大気とホットプレートの温度差に応じた電気エネルギーの出力が確認できる。
前記と同様の操作で、化合物(C2)、(C24)、(C25)、及び(C30)についても、温度差に応じた電気エネルギーの出力を確認することができる。
本発明により、電子の移動度に優れるベンゾビス(チアジアゾール)誘導体をn型半導体層として用いた、有機熱電変換素子を提供することができる。本発明で用いるベンゾビス(チアジアゾール)誘導体は電子の移動度が高いため、熱電変換における発電効率を高めることができる。また、これまで高い移動度を示すn型有機半導体が存在しなかったために実現が困難であった、双極型有機熱電変換素子を作製することができる。さらに本発明で用いるベンゾビス(チアジアゾール)誘導体は溶液として塗布により熱電変換層を製膜することが可能であるので、有機熱電変換素子の大量生産に好適である。
11 電極 高温側
12 n型半導体を含む熱電変換層
13 p型半導体を含む熱電変換層
14 電極 放熱側
15 電極 放熱側
16 導線
17 外部負荷回路
21 電極 吸熱側
22 n型半導体を含む熱電変換層
23 p型半導体を含む熱電変換層
24 電極 放熱側
25 電極 放熱側
26 導線
27 直流電源
31 半導体接続電極 高温側
32 n型半導体を含む熱電変換層
33 p型半導体を含む熱電変換層
34 出力取出し電極(負極)
35 出力取出し電極(正極)
36 半導体接続電極 放熱側
37 基板

Claims (16)

  1. 下記一般式(1)で示される、ベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含むことを特徴とする熱電変換材料。
    Figure 0006372317
    (式中、R及びRは、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい複素アリール基を示す。RとRは、同一であっても異なっていても良い。)
  2. 前記一般式(1)において、R及びRが共に、フェニル基と結合したチオフェン基であり、下記一般式(2)で示される、請求項1に記載のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含むことを特徴とする熱電変換材料。
    Figure 0006372317
    (式中、Rは、直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は下記式(3)の基を示し、Rは、水素原子、直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は下記式(3)の基のいずれかを示す。但し、R及びRの少なくとも一方は、下記式(3)の基のいずれかを示し、2つのR、及び2つのRはいずれも、同一であっても異なっていてもよい。)
    Figure 0006372317
    (式中、Rは、直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。)
  3. が、前記式(3)の基のいずれかであり、
    が、水素原子、又は直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であることを特徴とする請求項2に記載のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含むことを特徴とする熱電変換材料。
  4. 前記一般式(2)において、Rがトリフルオロメトキシ基、及びRが水素原子であるベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含まないことを特徴とする、請求項2又は3に記載の熱電変換材料。
  5. が、直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、
    が、前記式(3)の基のいずれかであることを特徴とする請求項2に記載のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含むことを特徴とする熱電変換材料。
  6. 前記式(3)の基が、下記式(4)の基のいずれかであることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1つに記載のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含むことを特徴とする熱電変換材料。
    Figure 0006372317
    (式中、Rは、直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。)
  7. が、直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、
    が、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、又はシアノ基のいずれかであることを特徴とする請求項5に記載のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含むことを特徴とする熱電変換材料。
  8. が、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、又はシアノ基のいずれかであり、
    が、直鎖状又は分岐状のアルキル基であることを特徴とする請求項2〜4又は6のいずれか1つに記載のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含むことを特徴とする熱電変換材料。
  9. 前記一般式(1)において、R及びRが共に、芳香環に縮環した環状イミド構造を有する基であり、下記一般式(5)で示される、請求項1に記載のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含むことを特徴とする熱電変換材料。
    Figure 0006372317
    (式中、二つのRは独立に、直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は、直鎖状若しくは分岐状のアリールアルキル基を示し(前記アルキル基及びアリールアルキル基中のアルキル基における水素原子は、フッ素原子に置換されていてもよい。)、
    二つのAは独立に、酸素原子、硫黄原子、又はセレン原子を示し、
    二つのZは独立に、メチン炭素、又は窒素原子を示す。)。
  10. 前記一般式(5)中、二つのAが硫黄原子であり、二つのZが独立にメチン炭素又は窒素原子であり、二つのRが独立に直鎖状又は分岐状のアルキル基である、請求項9に記載のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含むことを特徴とする熱電変換材料。
  11. 前記一般式(5)中、二つのRが炭素数5〜25の直鎖状又は分岐状のアルキル基である、請求項9又は10に記載のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含むことを特徴とする熱電変換材料。
  12. 有機溶媒に可溶である、請求項1〜11のいずれか一項に記載のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含むことを特徴とする熱電変換材料。
  13. n型半導体を含む層が、請求項1〜12のいずれか一項に記載の熱電変換材料を含むことを特徴とする熱電変換素子。
  14. 熱電変換素子が、その素子中の熱電変換層が独立したn型半導体を含む層とp型半導体を含む層から成り、n型半導体を含む層とp型半導体を含む層の一端が電極により接続され、n型半導体を含む層とp型半導体を含む層の他端が、独立した電流取出し電極で構成される双極型熱電変換素子であることを特徴とする、請求項13に記載の熱電変換素子。
  15. 請求項13又は14に記載の熱電変換素子を用いた熱電変換用装置。
  16. 下記一般式(1)で示される、ベンゾビス(チアジアゾール)化合物の、熱電変換材料としての使用。
    Figure 0006372317
    (式中、R及びRは、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい複素アリール基を示す。RとRは、同一であっても異なっていても良い。)
JP2014231426A 2014-11-14 2014-11-14 ベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含む熱電変換材料及びこれを用いた熱電変換素子 Expired - Fee Related JP6372317B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014231426A JP6372317B2 (ja) 2014-11-14 2014-11-14 ベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含む熱電変換材料及びこれを用いた熱電変換素子

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014231426A JP6372317B2 (ja) 2014-11-14 2014-11-14 ベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含む熱電変換材料及びこれを用いた熱電変換素子

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2016096242A JP2016096242A (ja) 2016-05-26
JP6372317B2 true JP6372317B2 (ja) 2018-08-15

Family

ID=56071892

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014231426A Expired - Fee Related JP6372317B2 (ja) 2014-11-14 2014-11-14 ベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含む熱電変換材料及びこれを用いた熱電変換素子

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6372317B2 (ja)

Families Citing this family (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN106058034B (zh) * 2016-07-12 2023-04-28 北京服装学院 一种(1,3-二硫-2-羰基)稠合的萘二酰亚胺/碳纳米管复合热电材料制备方法
JP6885066B2 (ja) * 2017-01-13 2021-06-09 セイコーエプソン株式会社 化合物、発光素子用化合物、発光素子、発光装置、光源、認証装置および電子機器
JP2019106410A (ja) * 2017-12-08 2019-06-27 株式会社東芝 熱電変換素子、及び熱電変換素子の製造方法
CN109232474B (zh) * 2018-09-27 2021-08-06 武汉尚赛光电科技有限公司 1,2,4-噻二唑类化合物及其制备方法和用途
JP7400442B2 (ja) * 2019-12-23 2023-12-19 東洋インキScホールディングス株式会社 熱電変換材料および熱電変換素子

Family Cites Families (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH10340786A (ja) * 1997-06-09 1998-12-22 Toyo Ink Mfg Co Ltd 有機エレクトロルミネッセンス素子材料およびそれを使用した有機エレクトロルミネッセンス素子
DE10229370A1 (de) * 2002-06-29 2004-01-15 Covion Organic Semiconductors Gmbh 2,1,3-Benzothiadiazole
JP5773568B2 (ja) * 2006-10-11 2015-09-02 メルク パテント ゲーエムベーハー シロール含有ポリマーを用いた光電池
JP5756778B2 (ja) * 2011-03-28 2015-07-29 富士フイルム株式会社 導電性組成物、当該組成物を用いた導電性膜及びその製造方法
JP5881402B2 (ja) * 2011-12-14 2016-03-09 株式会社日本触媒 ベンゾビスチアジアゾール化合物
EP2829542B1 (en) * 2012-03-23 2018-07-11 UBE Industries, Ltd. Benzobis(thiadiazole) derivative and organic electronics device using same

Also Published As

Publication number Publication date
JP2016096242A (ja) 2016-05-26

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6372317B2 (ja) ベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含む熱電変換材料及びこれを用いた熱電変換素子
JP5155852B2 (ja) アリール−エチレン置換芳香族化合物および有機半導体としてのその使用
JP6427101B2 (ja) ベンゾビス(チアジアゾール)誘導体、それを含むインク、およびそれを用いた有機エレクトロニクスデバイス
JP5867583B2 (ja) 新規なカルコゲン含有有機化合物およびその用途
JP5615459B2 (ja) ベンゾチエノベンゾチオフェン誘導体、有機半導体材料、及び有機トランジスタ
JP5622585B2 (ja) 新規な複素環式化合物及びその利用
JP5454139B2 (ja) カーボンナノチューブ複合体、有機半導体コンポジットならびに電界効果型トランジスタ
JP6008158B2 (ja) カルコゲン含有有機化合物およびその用途
CN104321327A (zh) 苯并双(噻二唑)衍生物及含有其的有机电子装置
KR20120043009A (ko) 신규한 유기 반도체 재료 및 이것을 이용한 전자 디바이스
JPWO2016024567A1 (ja) ベンゾビス(チアジアゾール)誘導体、それを含むインク、及びそれを用いた有機エレクトロニクスデバイス
JP6656508B2 (ja) ベンゾチエノベンゾチオフェン誘導体、有機半導体材料、及び有機トランジスタ
JP6279434B2 (ja) ベンゾビス(チアジアゾール)誘導体及び有機エレクトロニクスデバイス
JP2017025047A (ja) ベンゾビス(チアジアゾール)誘導体、それを含むインク、及びそれを用いた有機エレクトロニクスデバイス
Bilkay et al. Solution processable TIPS-benzodithiophene small molecules with improved semiconducting properties in organic field effect transistors
JP2015048346A (ja) ジナフトチオフェン化合物、ジナフトチオフェン化合物を含む有機薄膜トランジスタ用組成物、及びそれを用いた有機薄膜トランジスタ
JP2007277553A (ja) 連結されたアリールアミンポリマおよびそれから作製された電子デバイス
JP6678515B2 (ja) 化合物、組成物、および有機半導体デバイス
JP2013191821A (ja) 有機半導体デバイスとその製造方法、および化合物
JP2018168138A (ja) 含酸素炭化水素基を含むベンゾビス(チアジアゾール)誘導体、それを含むインク、及びそれを用いた有機エレクトロニクスデバイス
JP2017052707A (ja) ベンゾチエノベンゾチオフェン誘導体、有機半導体材料、及び有機トランジスタ
JP5578414B2 (ja) テトラチアフルバレン誘導体を用いた有機トランジスタ及びその製造方法
JP5650107B2 (ja) チエノピラジン化合物、およびそれを含有した電界効果トランジスタ
TW201841923A (zh) 有機半導體及其製造方法
WO2020241582A1 (ja) 有機トランジスタ材料及び有機トランジスタ

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20170921

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20180524

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20180619

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20180702

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6372317

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313113

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees