JP2015048346A - ジナフトチオフェン化合物、ジナフトチオフェン化合物を含む有機薄膜トランジスタ用組成物、及びそれを用いた有機薄膜トランジスタ - Google Patents

ジナフトチオフェン化合物、ジナフトチオフェン化合物を含む有機薄膜トランジスタ用組成物、及びそれを用いた有機薄膜トランジスタ Download PDF

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Satoshi Hachiya
聡 蜂屋
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Abstract

【課題】高移動度で作動する有機薄膜トランジスタを製造可能なジナフトチオフェン化合物を提供する。【解決手段】下記式(A)で表わされるジナフトチオフェン化合物。但し、R1〜R12の少なくとも1つは、下記式(1)で表わされる置換基であり、Yは、置換もしくは無置換の炭素数4〜30のアルキル基である。【選択図】なし

Description

本発明は、ジナフトチオフェン化合物、ジナフトチオフェン化合物を含む有機薄膜トランジスタ用組成物、及びそれを用いた有機薄膜トランジスタに関する。
薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)は、液晶表示装置等の表示用のスイッチング素子として広く用いられている。代表的なTFTは、基板上にゲート電極、絶縁体層、半導体層をこの順に有し、当該半導体層上に、所定の間隔をあけて形成されたソース電極及びドレイン電極を有している。
有機半導体層はチャネル領域を成しており、ゲート電極に印加される電圧でソース電極とドレイン電極の間に流れる電流が制御されることによってオン/オフ動作する。
従来、このTFTは、アモルファスや多結晶のシリコンを用いて作製されていたが、このようなシリコンを用いたTFTの作製に用いられるCVD(化学気相成長)装置は、非常に高価であり、TFTを用いた表示装置等の大型化は、製造コストの大幅な増加を伴うという問題点があった。また、アモルファスや多結晶のシリコンを成膜するプロセスは非常に高い温度下で行われるので、基板として使用可能な材料の種類が限られてしまうため、軽量な樹脂基板等は使用できないという問題があった。
上記の問題を解決するために、アモルファスや多結晶のシリコンに代えて有機物を用いたTFT(以下、有機TFTと略記する場合がある。)が提案されている。
有機物でTFTを形成する際に用いる成膜方法として真空蒸着法や塗布法等が知られているが、これらの成膜方法によれば、製造コストの上昇を抑えつつ素子の大型化が実現可能になり、成膜時に必要となるプロセス温度を比較的低温にすることができる。このため、有機TFTでは、基板に用いる材料の選択時の制限が少ないといった利点があり、その実用化が期待されており、盛んに研究報告がなされている。
有機TFTの有機物半導体層に用いるp型FET(電界効果トランジスタ)材料としては、共役系ポリマーやチオフェン等の多量体、金属フタロシアニン化合物、ペンタセン等の縮合芳香族炭化水素等が、単体又は他の化合物との混合物の状態で用いられている。また、n型FET材料としては、例えば、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボキシルジアンヒドライド(NTCDA)、11,11,12,12−テトラシアノナフト−2,6−キノジメタン(TCNNQD)、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボキシルジイミド(NTCDI)や、フッ素化フタロシアニンが知られている。
一方、有機TFTと同じように電気伝導を用いるデバイスとして有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子がある。有機EL素子では、一般に100nm以下の超薄膜に、膜厚方向に10V/cm以上の強電界を印加して強制的に電荷を流しているのに対し、有機TFTの場合には、数μm以上の距離を10V/cm以下の電界で高速に電荷を流す必要があるため、有機TFTに用いられる有機物自体に、さらなる電気伝導性が必要であった。
従来の有機TFTにおける上記有機半導体材料は電界効果移動度が小さく、応答速度が遅く、トランジスタとしての高速応答性に問題があった。また、オン/オフ比も小さかった。
尚、ここで言うオン/オフ比とは、ゲート電圧をかけたとき(オン)のソース−ドレイン間に流れる電流を、ゲート電圧をかけないとき(オフ)のソース−ドレイン間に流れる電流で割った値である。オン電流とは、通常、ゲート電圧を増加させていき、ソース−ドレイン間に流れる電流が飽和したときの電流値(飽和電流)である。
電界効果移動度が大きく、応答速度が早いTFTを得るために、例えば特許文献1はアリールエチニレン基を有する化合物を開示している。特許文献1では、素子の作製において、基板に単分子膜処理を施し、さらに基板を加熱しながらアリールエチニレン基を有する化合物を蒸着で成膜することにより、高い移動度を得ている。しかしながら、このような処理は複雑であるという問題があった。
有機TFTの代表的な材料としてペンタセンが挙げられ、特許文献1及び2では、ペンタセンを有機半導体層に用いた有機TFTを作製している。しかしながら、ペンタセンは大気中における安定性が低いという欠点があるため、素子作製直後は非常に高い移動度を示すものの、時間の経過と共に移動度が低下してしまう。さらに、難溶性のため安価な塗布法に適用できないという欠点を有していた。
特許文献3は、以下に示すような基本骨格を有するジナフトチオフェン誘導体を開示し、有機半導体材料としての有用性が示唆している。しかし、有機トランジスタに使用した場合の性能は開示されておらず、ジナフトチオフェン誘導体が有機トランジスタとして有用であるかどうかの開示はない。
Figure 2015048346
特許文献4は、ジナフトチオフェンを有機トランジスタに使用できることを開示するが、当該ジナフトチオフェンの具体的構造は開示しておらず、有機薄膜トランジスタとして有用なジナフトチオフェンの縮環構造及び置換基を開示しない。
特開平5−55568号公報 特開2001−94107号公報 特開2007−197400号公報 特開2012−174805号公報
本発明の目的は、高移動度で作動する有機薄膜トランジスタを製造可能なジナフトチオフェン化合物を提供することである。
本発明の他の目的は、優れたトランジスタ特性を有する有機薄膜トランジスタを提供することである。
本発明によれば、以下の下記式(A)で表わされるジナフトチオフェン化合物が提供される。
Figure 2015048346
(式(A)中、
〜R12の少なくとも1つは、下記式(1)で表わされる置換基である。
前記式(1)で表わされる置換基ではないR〜R12は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数4〜30のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数4〜30のアルケニル基、置換もしくは無置換の炭素数4〜30のアルキニル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、又は置換もしくは無置換の環形成原子数4〜30の複素環基である。)
Figure 2015048346
(式(1)中、
Xは、硫黄原子、置換もしくは無置換の炭素数4〜30のアルキニレン基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、又は置換もしくは無置換の環形成原子数4〜30の複素環基である。
Yは、置換もしくは無置換の炭素数4〜30のアルキル基である。
nは0〜2までの整数である。n=0の場合、Xは単結合である。)
本発明によれば、高移動度で作動する有機薄膜トランジスタを製造かのうなジナフトチオフェン化合物が提供できる。
本発明によれば、優れたトランジスタ特性を有する有機薄膜トランジスタが提供できる。
有機薄膜トランジスタの素子の一実施形態を示す図である。 有機薄膜トランジスタの素子の一実施形態を示す図である。 有機薄膜トランジスタの素子の一実施形態を示す図である。 有機薄膜トランジスタの素子の一実施形態を示す図である。 有機薄膜トランジスタの素子の一実施形態を示す図である。 有機薄膜トランジスタの素子の一実施形態を示す図である。
[ジナフトチオフェン化合物]
本発明の一形態に係るジナフトチオフェン化合物は、下記式(A)で表わされる。
Figure 2015048346
(式(A)中、
〜R12の少なくとも1つは、下記式(1)で表わされる置換基である。
前記式(1)で表わされる置換基ではないR〜R12は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数4〜30のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数4〜30のアルケニル基、置換もしくは無置換の炭素数4〜30のアルキニル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、又は置換もしくは無置換の環形成原子数4〜30の複素環基である。)
Figure 2015048346
(式(1)中、
Xは、硫黄原子、置換もしくは無置換の炭素数4〜30のアルキニレン基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、又は置換もしくは無置換の環形成原子数4〜30の複素環基である。
Yは、置換もしくは無置換の炭素数4〜30のアルキル基である。
nは0〜2までの整数である。n=0の場合、Xは単結合である。)
有機トランジスタの活性層は微結晶薄膜であり、当該微結晶薄膜中の結晶のパッキング状態がトランジスタ性能に大きく影響する。微結晶中における分子のパッキングは分子構造に大きく依存し、式(A)で表わされるジナフトチオフェン化合物は、炭素数4以上のアルキル基を側鎖として有することで、良好な結晶のパッキング状態が得られ、優れたトランジスタ性能を示すことができる。
印刷、インクジェット等の湿式成膜を用いて有機薄膜トランジスタを製造する場合、有機トランジスタ材料は、有機溶媒に対する溶解性が高いことが必要である。しかしながら、一般にジナフトチオフェン骨格を含む縮合多環芳香族化合物は、有機溶媒に対する溶解性がきわめて低く、湿式成膜は困難である。
式(A)で表わされるジナフトチオフェン化合物は、ジナフトチオフェン骨格が、さらにアルキル基を側鎖として有することで溶解性が向上している。側鎖のコンホメーション自由度が高いほど溶解性は向上するが、式(A)において、アルキル基の炭素数は4以上であり、優れた溶解を示すことができる。
式(A)で表わされるジナフトチオフェン化合物が、式(1)で表わされる置換基を2以上有する場合、複数の式(1)で表わされる置換基は、それぞれ同じでも異なってもよい。
上記式(A)において、好ましくはR〜R、R〜R及びR10〜R12が水素原子である。
式(1)で表わされる置換基において、n=0の場合、式(1)で表わされる置換基は−Yとなる。また、n=2である場合、2つのXは互いに同じでも異なってもよい。
上記式(1)で表わされる置換基において、好ましくはn=0である。
以下、式(A)のR〜R12の各置換基について説明する。
尚、本発明において、「置換もしくは無置換の・・・・」の「無置換」とは、水素原子が結合していることを意味する。また、水素原子とは、中性子数が異なる同位体、即ち、軽水素(protium)、重水素(deuterium)、三重水素(tritium)を包含する。
また、「環形成炭素」とは飽和環、不飽和環、又は芳香環を構成する炭素原子を意味し、「環形成原子」とはヘテロ環(飽和環、不飽和環、及び芳香環を含む)を構成する炭素原子及びヘテロ原子を意味する。
炭素数4〜30のアルキル基としては、例えばn−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコサニル基、n−ヘニコサンニル基、n−ドコサニル基、n−トリコサニル基、n−テトラコサニル基、n−ペンタコサニル基、n−ヘキサコサニル基、n−ヘプタコサニル基、n−オクタコサニル基、n−ノナコサニル基、n−トリアコンタニル基等が挙げられる。
上記アルキル基の炭素数は、好ましくは5〜20であり、より好ましくは5〜10である。
アルキル基は直鎖でも分枝でもよい。
炭素数4〜30のアルケニル基としては、例えばブテニル基、ペンテニル基、ペンタジエニル基、ヘキセニル基、ヘキサジエニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、オクタジエニル基、2−エチルヘキセニル基、デセニル基等が挙げられる。
炭素数4〜30のアルキニル基としては、例えばブチニル基、ペンチニル基、フェニルペンチニル基、4−チエニルペンチニル基等が挙げられる。
式(1)で表わされる置換基の炭素数4〜30のアルキニレン基としては、上記アルキニル基の対応する残基が挙げられる。
環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基(アリール基)としては、例えばフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、フルオレニル基、クリセニル基、ピレニル基、ペリレニル基、テトラセニル基、ペンタセニル基、フルオランテニル基等が挙げられる。
式(1)で表わされる環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基としては、上記芳香族炭化水素基の対応する残基が挙げられる。
環形成原子数4〜30の複素環基としては、例えばピリジル基、ピラジル基、インドリル基、アクリジニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ナフチリジニル基、キノキサリル基、フェナジニル基、フェノリアジニル基、フェノキサジニル基、ジアザアントラセニル基、ピリドキノリル基、ピリミドキナゾリル基、ピラジノキノキサリル基、フェナントロリル基、チオフェニル基、ジチエノフェニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、キノリニル基、カルバゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、ベンゾジチオフェニル基、[1]ベンゾチエノ[3,2−b]ベンゾチオフェニル基、チエノチオフェニル基、ジチエノチオフェニル基、ベンゾジフラニル基、チアゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基、ジチアインダセニル基、ジチアインデノインデニル基、ジベンゾセレノフェニル基、ジセレナインダセニル基、ジセレナインデノインデニル基、ジベンゾシロリル基等が挙げられる。
式(1)で表わされる環形成原子数4〜30の複素環基としては、上記複素環基の対応する残基が挙げられる。
環形成炭素数6〜30のアリールオキシ基は、−OXで表される基であり、Xは環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基であって、Xの例としては、上記芳香族炭化水素基で説明したものと同様の基が挙げられる。
式(A)において、炭素数4〜30のアルキル基、炭素数4〜30のアルケニル基、炭素数4〜30のアルキニル基、環形成炭素数6〜30のアリールオキシ基、環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、環形成原子数4〜30の複素環基は、それぞれさらに他の置換基で置換されていてもよく、当該置換基としては、ハロゲン原子、炭素数4〜30のアルコキシ基、炭素数1〜30のハロアルコキシ基、炭素数1〜30のハロアルキルチオ基、炭素数1〜30のアルキルチオ基、環形成炭素数6〜60の芳香族炭化水素基、環形成原子数3〜60の芳香族複素環基が挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
例えば炭素数4〜30のアルキル基にハロゲン原子が置換した炭素数4〜30のハロアルキル基としては、2−クロロイソブチル基、1,2−ジクロロエチル基、2,3−ジクロロ−t−ブチル基、2−ブロモイソブチル基、2,3−ジブロモ−t−ブチル基、2−ヨードイソブチル基、2,3−ジヨード−t−ブチル基、2−フルオロイソブチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロシクロヘキシル基等が挙げられる。
炭素数1〜30のアルキルチオ基は、−SXで表される基であり、Xとしては、前記アルキル基で説明したものと同様の例が挙げられる。
炭素数1〜30のハロアルキルチオ基は、−SXで表される基であり、Xとしては、前記ハロアルキル基で説明したものと同様の例が挙げられる。
式(A)で表わされるジナフトチオフェン化合物の具体例を以下に示す。但し、式(A)で表わされるジナフトチオフェン化合物は下記具体例に限定されない。
Figure 2015048346
Figure 2015048346
Figure 2015048346
Figure 2015048346
[ジナフトチオフェン化合物の製造方法]
本発明の一形態に係るジナフトチオフェン化合物は、例えば以下の合成スキームに従って合成することができる。
Figure 2015048346
(工程1)
工程1では、まず、アルキルアニリンにハロゲンユニット(X)を結合させる。
ハロゲン化試薬としては、臭素化の場合は例えばN−ブロモスクシンイミド(NBS)、臭素等が挙げられ、塩素化の場合はN−クロロスクシンイミド(NCS)、塩素等が挙げられ、ヨウ素化の場合はベンジルトリメチルアンモニウムジクロロヨージド(BTMAICl)、2塩化ヨウ素等が挙げられる。これらハロゲン化試薬のうち、反応試薬の毒性が比較的低く、取扱いが容易であるという点から、臭素、NBS、BTMAICl等が好ましい。
(工程2)
工程2は、アミノ基をXとは異なるハロゲン基(X)に変換する工程であり、一般的なザンドマイヤー反応を使用することができる。
ジアゾニウム塩の調製に際しては、水溶液系の場合は亜硝酸ナトリウムが好ましく、非水系の場合は亜硝酸イソアミル、亜硝酸t−ブチル等の亜硝酸エステル類が好ましい。調製したジアゾニウム塩は銅化合物と反応させることにより、目的のハロゲン化合物を得ることができる。この場合の銅化合物としては、水溶液系の場合は塩化第一銅や臭化第一銅、非水系の場合は塩化第二銅や臭化第二銅等を用いることができる。ヨウ素化の場合は銅化合物を用いる必要はなく、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム等のアルカリ金属ヨウ化物を用いることで目的のヨウ素化化合物を合成することができる。
(工程3)
工程3は、2つのハロゲン基の1つ(X)をアルデヒド基に変換する工程であり、ハロゲン基を一旦アリールリチウムやアリールマグネシウムハライド(グリニャール試薬)等の典型金属化合物に変換したのち、ホルミル化源と反応させることにより、目的とするアルデヒド化合物を合成することができる。
アリールリチウムに変換する場合の反応試薬としては、リチウム金属を直接作用させる方法や、n−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムに代表されるアルキルリチウム試薬を反応させるギルマン反応(ハロゲン−メタル交換反応)等を用いることができる。これらのうち、安全性が高く、高収率を与えるという面からn−ブチルリチウムが好ましい。
また、グリニャール試薬に変換する場合は、金属マグネシウムを直接作用させる、又はイソプロピルマグンシウムクロリド、n−ブチルマグネシウムブロミド等に代表されるアルキルグリニャール試薬を作用させるグリニャール交換反応を利用する方法がある。これら方法のうち、グリニャール交換反応は低温で反応させることができ、ハロゲン間の選択性を出しやすいという理由で好ましい。ホルミル化源としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N−ホルミルピペリジン等のギ酸アミド類が好ましい。
(工程4)
工程4は、以下に示すチオフェンユニットとフェニル基を結合させる工程であり、一般的なクロスカップリング反応を利用することができる。
チオフェンユニットとしてボロン酸及びそのエステル(M=B(OH)、B(OR)等)を用いる場合は、一般的な鈴木−宮浦カップリングの条件下で反応させることができる。チオフェンユニットとして有機亜鉛化合物(M=ZnCl、ZnBr等)を用いる場合は、一般的な根岸カップリングの条件で反応させることができ、チオフェンユニットとして有機すず化合物(M=SnBu、SnMe等)を用いる場合は、一般的なStilleカップリングの条件で反応させることができる。これらのうち、有機金属化合物の毒性が低く、取扱いが容易であるという点から、鈴木−宮浦カップリングが好ましい。
Figure 2015048346
上記いずれのクロスカップリング反応においても、反応はパラジウムやニッケル等を触媒とし、配位子としてホスフィン類を添加することが好ましい。
金属触媒としては、高収率を与えるという面からパラジウムが好ましい。ホスフィン類としては、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリt−ブチルホスフィン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノプロパン)(DPPP)、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(BINAP)、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニル(CyJohnPhos)、2,4,6−トリイソプロピル−2’−ジシクロヘキシルホスフィノビフェニル(XPhos)、2,6−ジメトキシ−2’−ジシクロヘキシルホスフィノビフェニル(SPhos)等を用いることができる。一般に、チオフェンα位の金属化合物は分解しやすいため、反応を加速するため電子過剰で立体的にかさ高いホスフィン配位子XPhos、SPhos等を用いることが好ましい。
また、鈴木−宮浦カップリングにおいて、反応を促進するため、塩基を用いる場合は、ナトリウムt−ブトキシド、カリウムt−ブトキシド、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、リン酸カリウム等を用いることができる。これらのうち、高収率を与えるという点から炭酸ナトリウム及びン酸カリウムが好ましい。
(工程5)
工程5は、ホルミル基をエノールエーテルに変換する工程であり、一般的なWittig反応の条件を用いることができる。即ち、トリフェニルホスホニウム塩に塩基を作用させイリドを発生させたのち、ホルミル体を反応させてエノールエーテルを形成させる。
ホスホニウム塩としては、例えばアルコキシメチルトリフェニルホスホニウムを用いるが、安価で入手しやすいという理由からメトキシメチルトリフェニルホスホニウムクロリドが好ましい。
イリドを発生させるための塩基としては、n−ブチルリチウム、カリウムt−ブトキシド等を用いることができるが、取扱いが容易であるという理由からカリウムt−ブトキシドが好ましい。
(工程6)
工程6は、エノールエーテルを閉環させ最終物を得る工程であり、反応試薬として塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸等のプロトン酸を用いることができる。これらのうち、有機溶媒に可溶で高収率を与えるという理由からメタンスルホン酸が好ましい。
尚、例えば得られたジナフトチオフェン化合物をトランジスタのような電子デバイスの材料として使用する場合、純度の高い材料を用いることにより電界効果移動度やオン/オフ比を高めることができる。従って、必要に応じて、製造したジナフトチオフェン化合物を、カラムクロマトグラフィー、再結晶、蒸留、昇華等の手法により精製することが望ましい。好ましくはこれらの精製方法を繰り返し用いたり、複数の方法を組み合わせたりすることにより、得られたジナフトチオフェン化合物の純度を向上させる。さらに精製の最終工程として昇華精製を少なくとも2回以上繰り返すことが望ましい。
上述の手法を用いることにより、ジナフトチオフェン化合物のHPLC(高速液体クロマトグラフィー)で測定した純度を90%以上とすると好ましく、純度95%以上とするとさらに好ましく、純度99%以上とすると特に好ましい。
[有機薄膜トランジスタ用組成物]
本発明の一形態に係るジナフトチオフェン化合物は、有機薄膜トランジスタの有機半導体層材料として好適に使用できる。本発明の一形態に係るジナフトチオフェン化合物は酸化安定性に優れるので、当該ジナフトチオフェン化合物を用いた有機薄膜トランジスタは、そのトランジスタ特性の経時劣化を低減することができる。
ジナフトチオフェン化合物を有機薄膜トランジスタ用材料として使用する場合は、本発明の一形態に係るジナフトチオフェン化合物は、有機溶媒に対して高い溶解性を有するので、ジナフトチオフェン化合物を含む有機薄膜トランジスタ用組成物として使用するとよい。組成物とすることで有機薄膜トランジスタの製造の際に塗布法を適用することができる。
本発明の一形態に係る有機薄膜トランジスタ用組成物は、本発明の一形態に係るジナフトチオフェン化合物を含めばよく、溶媒に溶解させる材料は、ジナフトチオフェン化合物のみからなる材料、又はさらに他の成分を含む混合物からなる材料でもよい。
上記他の成分としては、ウンデセン酸、ドデセン酸等の脂肪族カルボン酸;ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等の汎用高分子;ポリヘキシルチオフェン、ポリジヘキシルフルオレン等の導電性高分子;他の低分子有機半導体材料等が挙げられる。これらのうち、高移動度を与えるという面から、汎用高分子、導電性高分子、低分子有機半導体材料が好ましい。
[有機薄膜トランジスタ]
本発明の一形態に係る有機薄膜トランジスタは、本発明の一形態に係るジナフトチオフェン化合物を含む有機薄膜トランジスタであり、好ましくは少なくとも基板上にゲート電極、ソース電極及びドレイン電極の3端子、絶縁体層並びに有機半導体層が設けられ、ソース−ドレイン間電流をゲート電極に電圧を印加することによって制御する有機薄膜トランジスタにおいて、有機半導体層が本発明の一形態に係るジナフトチオフェン化合物を含む有機薄膜トランジスタである。
尚、有機薄膜トランジスタの構造は、上記に限定されず、有機半導体層の成分以外が公知の素子構成を有するものであってもよい。
有機薄膜トランジスタの素子構成の具体例を図を用いて説明する。図1〜4は、それぞれ本発明の一形態に係る有機薄膜トランジスタの一実施体を示す図である。
図1の有機薄膜トランジスタ1は、基板10上に、相互に所定の間隔をあけて対向するように形成されたソース電極11及びドレイン電極12を有する。そして、ソース電極11、ドレイン電極12及びそれらの間の間隙を覆うように有機半導体層13が形成され、さらに、絶縁体層14が積層されている。絶縁体層14の上部であって、かつソース電極11及びドレイン電極12の間の間隙上にゲート電極15が形成されている。
図2の有機薄膜トランジスタ2は、基板10上に、ゲート電極15及び絶縁体層14をこの順に有し、絶縁体層14上に、所定の間隔をあけて形成された一対のソース電極11及びドレイン電極12を有し、その上に有機半導体層13が形成される。有機半導体層13がチャネル領域を成しており、ゲート電極15に印加される電圧でソース電極11とドレイン電極12の間に流れる電流が制御されることによってオン/オフ動作する。
図3の有機薄膜トランジスタ3は、基板10上に、ゲート電極15、絶縁体層14及び有機半導体層13をこの順に有し、有機半導体層13上に、所定の間隔をあけて形成された一対のソース電極11及びドレイン電極12を有する。
図4の有機薄膜トランジスタ4は、基板10上に有機半導体層13を有し、有機半導体層13上に、所定の間隔をあけて形成された一対のソース電極11及びドレイン電極12を有する。そして、さらに絶縁体層14及びゲート電極15をこの順に有している。
本発明の有機薄膜トランジスタは、上記の素子構成の他にも、種々の構成が提案されている。本発明の有機薄膜トランジスタは、ゲート電極に印加される電圧でソース電極とドレイン電極の間に流れる電流が制御されることによってオン/オフ動作や増幅等の効果が発現する仕組みを有すれば、上記素子構成に限定されるものではない。
例えば、産業技術総合研究所の吉田らにより第49回応用物理学関係連合講演会講演予稿集27a−M−3(2002年3月)において提案されたトップアンドボトムコンタクト型有機薄膜トランジスタ(図5参照)や、千葉大学の工藤らにより電気学会論文誌118−A(1998)1440頁において提案された縦形の有機薄膜トランジスタ(図6参照)のような素子構成を有するものであってもよい。
有機薄膜トランジスタは、電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)構造を有しており、上述したとおり、電極の位置、層の積層順等によりいくつかの構成がある。有機薄膜トランジスタは、有機半導体層(有機化合物層)と、相互に所定の間隔をあけて対向するように形成されたソース電極及びドレイン電極と、ソース電極、ドレイン電極からそれぞれ所定の距離をあけて形成されたゲート電極とを有し、ゲート電極に電圧を印加することによってソース−ドレイン電極間に流れる電流を制御する。ここで、ソース電極とドレイン電極の間隔は本発明の有機薄膜トランジスタを用いる用途によって決定され、通常は0.1μm〜1mm、好ましくは1μm〜100μm、さらに好ましくは5μm〜100μmである。
以下、有機薄膜トランジスタの構成部材について説明する。
(有機半導体層)
有機半導体層は、好ましくは本発明の一形態に係るジナフトチオフェン化合物を含む。有機半導体層がジナフトチオフェン化合物を含む場合、当該ジナフトチオフェン化合物は、1種単独でも2種以上でもよい。
また、有機半導体層は、ペンタセン、チオフェンオリゴマー等の公知の半導体材料を含んでもよい。
有機半導体層は、複数の化合物の混合物からなる薄膜又は積層体であってもよい。
有機半導体層の膜厚は、特に制限されることはないが、通常、0.5nm〜1μmであり、2nm〜250nmであると好ましい。
有機半導体層の形成方法は特に限定されることはなく公知の方法を適用でき、例えば、分子線蒸着法(MBE法)、真空蒸着法、化学蒸着、材料を溶媒に溶かした溶液のディッピング法、スピンコーティング法、キャスティング法、バーコート法、ロールコート法、インクジェット法等の印刷、塗布法及びベーキング、エレクトロポリマライゼーション、分子ビーム蒸着、溶液からのセルフ・アセンブリ、及びこれらの組合せた方法を用いることができる。これら形成方法のうち、好ましくは塗布法である。
本発明の一形態に係るジナフトチオフェン化合物を用いて塗布法で有機半導体層を形成する場合、当該ジナフトチオフェン化合物は、加熱することなく、適する溶媒に溶解することができる。
使用する溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン等のハロゲン系溶媒;トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラリン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ピリジン、キノリン等の芳香族溶媒;シクロヘキサン、デカリン、シクロオクタジエン等の炭化水素委溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン性溶媒;ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、アニソール、フェネトール、ジフェニルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ジブチルテレフタレート等のエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトエミド、N−メチルピロリジノン等のアミド系溶媒;アセトニトリル、ブチロニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒;二硫化炭素、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の硫黄系溶媒等が挙げられる。
有機半導体層の結晶性を向上させることにより、電界効果移動度を向上させることができるので、成膜方法に関わらず成膜後にアニーリングを実施すると高性能デバイスが得られるため好ましい。
上記アニーリングの温度は50〜200℃が好ましく、70〜200℃であるとさらに好ましく、処理時間は10分〜12時間が好ましく、1〜10時間であるとさらに好ましい。
(基板)
有機薄膜トランジスタにおける基板は、有機薄膜トランジスタの構造を支持する役目を担う。基板の材料としてはガラスの他、金属酸化物や窒化物等の無機化合物、プラスチックフィルム(PET,PES,PC)や金属基板又はこれら複合体や積層体等も用いることが可能である。また、基板以外の構成要素により有機薄膜トランジスタの構造を十分に支持し得る場合には、基板を使用しないことも可能である。
基板の材料としてはシリコン(Si)ウエハが用いられることが多いが、Si自体をゲート電極兼基板として用いることができる。また、Siの表面を酸化し、SiOを形成して絶縁層として活用することも可能である。この場合、基板兼ゲート電極のSi基板にリード線接続用の電極として、Au等の金属層を成膜することもある。
(電極)
有機薄膜トランジスタにおける、ゲート電極、ソース電極及びドレイン電極の材料としては、導電性材料であれば特に限定されず、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン、鉛、タンタル、インジウム、パラジウム、テルル、レニウム、イリジウム、アルミニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、モリブデン、タングステン、酸化スズ・アンチモン、酸化インジウム・スズ(ITO)、フッ素ドープ酸化亜鉛、亜鉛、炭素、グラファイト、グラッシーカーボン、銀ペースト及びカーボンペースト、リチウム、ベリリウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、マンガン、ジルコニウム、ガリウム、ニオブ、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、アルミニウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム混合物、リチウム/アルミニウム混合物等が用いられる。
電極の形成方法としては、例えば、蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタリング、大気圧プラズマ法、イオンプレーティング、化学気相蒸着、電着、無電解メッキ、スピンコーティング、印刷又はインクジェット等が挙げられる。
また、必要に応じて行うパターニングの方法としては、上記の方法を用いて形成した導電性薄膜を、公知のフォトリソグラフ法やリフトオフ法を用いて電極形成する方法、アルミニウムや銅等の金属箔上に熱転写、インクジェット等により、レジストを形成しエッチングする方法等がある。
電極の膜厚は電流の導通さえあれば特に制限はないが、好ましくは0.2nm〜10μm、さらに好ましくは4nm〜300nmの範囲である。この好ましい範囲内であれば、膜厚が薄いことにより抵抗が高くなり電圧降下を生じることがない。また、上記膜厚の範囲は、厚すぎないため膜形成に時間がかからず、保護層や有機半導体層等他の層を積層する場合に、段差が生じることが無く積層膜が円滑にできる。
ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極の他の形成方法としては、上記の導電性材料を含む、溶液、ペースト、インク、分散液等の流動性電極材料を用いて形成する、特に、導電性ポリマー、又は白金、金、銀、銅を含有する金属微粒子を含む流動性電極材料を用いて形成する方法が好ましい。
溶媒や分散媒体としては、有機半導体へのダメージを抑制するため、水を60質量%以上、好ましくは90質量%以上含有する溶媒又は分散媒体であることが好ましい。金属微粒子を含有する分散物としては、例えば、公知の導電性ペースト等を用いてもよいが、通常、粒子径が0.5nm〜50nm、1nm〜10nmの金属微粒子を含有する分散物であると好ましい。
金属微粒子の材料としては、例えば、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン、鉛、タンタル、インジウム、パラジウム、テルル、レニウム、イリジウム、アルミニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、モリブデン、タングステン、亜鉛等を用いることができる。
これらの金属微粒子を、主に有機材料からなる分散安定剤を用いて、水や任意の有機溶剤である分散媒中に分散した分散物を用いて電極を形成するのが好ましい。
金属微粒子の分散物の製造方法としては、ガス中蒸発法、スパッタリング法、金属蒸気合成法等の物理的生成法や、コロイド法、共沈法等の、液相で金属イオンを還元して金属微粒子を生成する化学的生成法が挙げられ、好ましくは、特開平11−76800号公報、同11−80647号公報、同11−319538号公報、特開2000−239853号公報等に示されたコロイド法、特開2001−254185号公報、同2001−53028号公報、同2001−35255号公報、同2000−124157号公報、同2000−123634号公報等に記載されたガス中蒸発法により製造された金属微粒子の分散物である。
金属微粒子分散物を用いて直接インクジェット法によりパターニングしてもよく、塗工膜からリソグラフやレーザーアブレーション等により形成してもよい。また凸版、凹版、平版、スクリーン印刷等の印刷法でパターニングする方法も用いることができる。電極を成形し、溶媒を乾燥させた後、必要に応じて100℃〜300℃、好ましくは150℃〜200℃の範囲で形状様に加熱することにより、金属微粒子を熱融着させ、目的の形状を有する電極パターンを形成できる。
ゲート電極、ソース電極及びドレイン電極の他の材料として、ドーピング等で導電率を向上させた公知の導電性ポリマーを用いることも好ましい。例えば、導電性ポリアニリン、導電性ポリピロール、導電性ポリチオフェン(ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体等)、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸(PSS)の錯体(PEDOT:PSS)等が好適に用いられる。
これらの材料を用いることによりソース電極とドレイン電極の有機半導体層との接触抵抗を低減することができる。形成方法もインクジェット法によりパターニングしてもよく、塗工膜からリソグラフやレーザーアブレーション等により形成してもよい。また凸版、凹版、平版、スクリーン印刷等の印刷法でパターニングする方法も用いることができる。
特にソース電極及びドレイン電極を形成する材料は、上述した例の中でも有機半導体層との接触面において電気抵抗が少ないものが好ましい。この際の電気抵抗は、即ち電流制御デバイスを作製したとき電界効果移動度と対応しており、大きな移動度を得るためにはできるだけ抵抗が小さいことが必要である。これは一般に電極材料の仕事関数と有機半導体層のエネルギー準位との大小関係で決まる。
電極材料の仕事関数(W)をa、有機半導体層のイオン化ポテンシャルを(Ip)をb、有機半導体層の電子親和力(Af)をcとすると、以下の関係式を満たすことが好ましい。ここで、a、b及びcはいずれも真空準位を基準とする正の値である。
p型有機薄膜トランジスタの場合には、b−a<1.5eV(式(I))であることが好ましく、さらに好ましくはb−a<1.0eVである。有機半導体層との関係において上記関係が維持できれば高性能なデバイスを得ることができるが、特に電極材料の仕事関数はできるだけ大きいものを選ぶことが好ましく、仕事関数4.0eV以上であることが好ましく、さらに好ましくは仕事関数4.2eV以上である。
金属の仕事関数の値は、例えば化学便覧基礎編II−493頁(改訂3版 日本化学会編 丸善株式会社発行1983年)に記載されている4.0eV又はそれ以上の仕事関数をもつ有効金属の前記リストから選別すればよい。
高仕事関数金属は、主としてAg(4.26,4.52,4.64,4.74eV),Al(4.06,4.24,4.41eV),Au(5.1,5.37,5.47eV),Be(4.98eV),Bi(4.34eV),Cd(4.08eV),Co(5.0eV),Cu(4.65eV),Fe(4.5,4.67,4.81eV),Ga(4.3eV),Hg(4.4eV),Ir(5.42,5.76eV),Mn(4.1eV),Mo(4.53,4.55,4.95eV),Nb(4.02,4.36,4.87eV),Ni(5.04,5.22,5.35eV),Os(5.93eV),Pb(4.25eV),Pt(5.64eV),Pd(5.55eV),Re(4.72eV),Ru(4.71eV),Sb(4.55,4.7eV),Sn(4.42eV),Ta(4.0,4.15,4.8eV),Ti(4.33eV),V(4.3eV),W(4.47,4.63,5.25eV),Zr(4.05eV)等である。
これらの中でも、貴金属(Ag,Au,Cu,Pt),Ni,Co,Os,Fe,Ga,Ir,Mn,Mo,Pd,Re,Ru,V,Wが好ましい。金属以外では、ITO、ポリアニリンやPEDOT:PSSのような導電性ポリマー及び炭素が好ましい。電極材料としては、これら高仕事関数の物質を1種又は複数含んでいても、仕事関数が前記式(I)を満たせば特に制限を受けるものではない。
n型有機薄膜トランジスタの場合にはa−c<1.5eV(式(II))であることが好ましく、さらに好ましくはa−c<1.0eVである。有機半導体層との関係において上記関係が維持できれば高性能なデバイスを得ることができるが、特に電極材料の仕事関数はできるだけ小さいものを選ぶことが好ましく、仕事関数4.3eV以下であることが好ましく、さらに好ましくは仕事関数3.7eV以下である。
低仕事関数金属の具体例としては、例えば化学便覧基礎編II−493頁(改訂3版 日本化学会編 丸善株式会社発行1983年)に記載されている4.3eV又はそれ以下の仕事関数をもつ有効金属の前記リストから選別すればよく、Ag(4.26eV),Al(4.06,4.28eV),Ba(2.52eV),Ca(2.9eV),Ce(2.9eV),Cs(1.95eV),Er(2.97eV),Eu(2.5eV),Gd(3.1eV),Hf(3.9eV),In(4.09eV),K(2.28eV),La(3.5eV),Li(2.93eV),Mg(3.66eV),Na(2.36eV),Nd(3.2eV),Rb(4.25eV),Sc(3.5eV),Sm(2.7eV),Ta(4.0,4.15eV),Y(3.1eV),Yb(2.6eV),Zn(3.63eV)等が挙げられる。これらの中でも、Ba,Ca,Cs,Er,Eu,Gd,Hf,K,La,Li,Mg,Na,Nd,Rb,Y,Yb,Znが好ましい。
電極材料としては、これら低仕事関数の物質を1種又は複数含んでいても、仕事関数が前記式(II)を満たせば特に制限を受けるものではない。ただし、低仕事関数金属は、大気中の水分や酸素に触れると容易に劣化してしまうので、必要に応じてAgやAuのような空気中で安定な金属で被覆することが望ましい。被覆に必要な膜厚は10nm以上必要であり、膜厚が熱くなるほど酸素や水から保護することができるが、実用上、生産性を上げる等の理由から1μm以下にすることが望ましい。
有機薄膜トランジスタは、例えば、注入効率を向上させる目的で、有機半導体層とソース電極及びドレイン電極との間に、バッファ層を設けてもよい。
バッファ層としてはn型有機薄膜トランジスタに対しては有機ELの陰極に用いられるLiF、LiO、CsF、NaCO、KCl、MgF、CaCO等のアルカリ金属、アルカリ土類金属イオン結合を持つ化合物が望ましい。また、Alq(トリス(8−キシリノール)アルミニウム)等有機ELで電子注入層、電子輸送層として用いられる化合物を挿入してもよい。
p型有機薄膜トランジスタに対してはFeCl、TCNQ(テトラシアノキノジメタン)、F4−TCNQ(テトラフルオロキノジメタン)、HAT(ヘキサシアノヘキサアザトリフェニレン)等のシアノ化合物、CFxやGeO、SiO、MoO、V、VO、V、MnO、Mn、ZrO、WO、TiO、In、ZnO、NiO、HfO、Ta、ReO、PbO等のアルカリ金属、アルカリ土類金属以外の金属酸化物、ZnS、ZnSe等の無機化合物が望ましい。
これら酸化物は多くの場合、酸素欠損を起こし、これが正孔注入に好適である。さらにはTPD(テトラフェニルジアミノジフェニル)やNPD(ジフェニルナフチルジアミン)等のアミン系化合物やCuPc(銅フタロシアニン)等の有機EL素子において正孔注入層、正孔輸送層として用いられる化合物でもよい。
また、上記の化合物2種類以上からなる混合物が望ましい。
バッファ層は、キャリアの注入障壁を下げることにより閾値電圧を下げ、トランジスタを低電圧駆動させる効果があることが知られているが、本発明の化合物に対しては低電圧効果のみならず移動度を向上させる効果を有する。これは、有機半導体層と絶縁体層の界面にはキャリアトラップが存在し、ゲート電圧を印加してキャリア注入が起こると、最初に注入したキャリアはトラップを埋めるのに使われるが、バッファ層を挿入することにより、低電圧でトラップが埋められ移動度が向上するためである。
バッファ層は、電極と有機半導体層との間に薄く存在すればよく、その厚みは0.1nm〜30nm、好ましくは0.3nm〜20nmである。
(絶縁体層)
有機薄膜トランジスタにおける絶縁体層の材料としては、電気絶縁性を有し薄膜として形成できるものであれば特に限定されず、金属酸化物(珪素の酸化物を含む)、金属窒化物(珪素の窒化物を含む)、高分子、有機低分子等室温での電気抵抗率が10Ωcm以上の材料を用いることができ、特に、比誘電率の高い無機酸化物皮膜が好ましい。
上記無機酸化物としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコニウム酸チタン酸バリウム、ジルコニウム酸チタン酸鉛、チタン酸鉛ランタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、フッ化バリウムマグネシウム、ランタン酸化物、フッ素酸化物、マグネシウム酸化物、ビスマス酸化物、チタン酸ビスマス、ニオブ酸化物,チタン酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ストロンチウムビスマス、五酸化タンタル、タンタル酸ニオブ酸ビスマス、トリオキサイドイットリウム及びこれらを組合せたもの等が挙げられ、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタンが好ましい。
また、窒化ケイ素(Si、Si、SiON(x,y>0))、窒化アルミニウム等の無機窒化物も好適に用いることができる。
絶縁体層は、アルコキシド金属を含む前駆物質で形成されていてもよく、この前駆物質の溶液を、例えば基板に被覆し、これを熱処理を含む化学溶液処理をすることにより絶縁体層が形成される。
上記アルコキシド金属における金属としては、例えば、遷移金属、ランタノイド、又は主族元素から選択され、具体的には、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、チタン(Ti)、ビスマス(Bi)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、鉛(Pb)、ランタン(La)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、フランシウム(Fr)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ニオブ(Nb)、タリウム(Tl)、水銀(Hg)、銅(Cu)、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、スカンジウム(Sc)及びイットリウム(Y)等が挙げられる。また、前記アルコキシド金属におけるアルコキシドとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール等を含むアルコール類、メトキシエタノール、エトキシエタノール、プロポキシエタノール、ブトキシエタノール、ペントキシエタノール、ヘプトキシエタノール、メトキシプロパノール、エトキシプロパノール、プロポキシプロパノール、ブトキシプロパノール、ペントキシプロパノール、ヘプトキシプロパノールを含むアルコキシアルコール類等から誘導されるものが挙げられる。
絶縁体層を上記したような材料で構成すると、絶縁体層中に分極が発生しやすくなり、トランジスタ動作のしきい電圧を低減することができる。また、上記材料の中でも、特に、Si、Si、SiON(x,y>0)等の窒化ケイ素で絶縁体層を形成すると、空乏層がいっそう発生しやすくなり、トランジスタ動作のしきい電圧をさらに低減させることができる。
有機化合物を用いた絶縁体層としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、光ラジカル重合系、光カチオン重合系の光硬化性樹脂、アクリロニトリル成分を含有する共重合体、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ノボラック樹脂、及びシアノエチルプルラン等を用いることもできる。
その他、ワックス、ポリエチレン、ポリクロロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリオキシメチレン、ポリビニルクロライド、ポリフッ化ビニリデン、ポリメチルメタクリレート、ポリサルホン、ポリイミドシアノエチルプルラン、ポリ(ビニルフェノール)(PVP)、ポリ(メチルメタクレート)(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリオレフィン、ポリアクリルアミド、ポリ(アクリル酸)、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、ポリイミド、ポリキシリレン、エポキシ樹脂に加え、プルラン等の高い誘電率を持つ高分子材料を使用することも可能である。
絶縁体層に用いる有機化合物材料、高分子材料として、好ましいのは撥水性を有する材料である。撥水性を有することにより絶縁体層と有機半導体層との相互作用を抑え、有機半導体が本来保有している凝集性を利用して有機半導体層の結晶性を高めデバイス性能を向上させることができる。
撥水性を有する材料の例としては、YasudaらJpn.J.Appl.Phys.Vol.42(2003)pp.6614−6618に記載のポリパラキシリレン誘導体やJanos VeresらChem.Mater.,Vol.16(2004)pp.4543−4555に記載の材料が挙げられる。
また、図1及び図4に示すようなトップゲート構造を用いるときに、このような撥水性を有する材料を絶縁体層の材料として用いると、有機半導体層に与えるダメージを小さくして成膜することができるため有効な方法である。
絶縁体層は、前述したような無機又は有機化合物材料を複数用いた混合層であってもよく、これらの積層構造体であってもよい。この場合、必要に応じて誘電率の高い材料と撥水性を有する材料を混合したり、積層することによりデバイスの性能を制御することもできる。
絶縁体層は、陽極酸化膜であってもよく、又は陽極酸化膜を構成として含んでもよい。陽極酸化膜は封孔処理されることが好ましい。
陽極酸化膜は、陽極酸化が可能な金属を公知の方法により陽極酸化することにより形成される。陽極酸化処理可能な金属としては、アルミニウム又はタンタルを挙げることができ、陽極酸化処理の方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。陽極酸化処理を行なうことにより、酸化被膜が形成される。
陽極酸化処理に用いられる電解液としては、多孔質酸化皮膜を形成することができるものならばいかなるものでも使用でき、一般には、硫酸、燐酸、蓚酸、クロム酸、ホウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸等あるいはこれらを2種類以上組み合わせた混酸又はそれらの塩が用いられる。
陽極酸化の処理条件は使用する電解液により種々変化するので一概に特定し得ないが、一般的には、電解液の濃度が1〜80質量%、電解液の温度5〜70℃、電流密度0.5〜60A/cm、電圧1〜100ボルト、電解時間10秒〜5分の範囲が適当である。好ましい陽極酸化処理は、電解液として硫酸、リン酸又はホウ酸の水溶液を用い、直流電流で処理する方法であるが、交流電流を用いることもできる。これらの酸の濃度は5〜45質量%であることが好ましく、電解液の温度20〜50℃、電流密度0.5〜20A/cmで20〜250秒間電解処理するのが好ましい。
絶縁体層の厚さとしては、層の厚さが薄いと有機半導体に印加される実効電圧が大きくなるので、デバイス自体の駆動電圧、閾電圧を下げることができるが、逆にソース−ゲート間のリーク電流が大きくなるので、適切な膜厚を選ぶ必要があり、通常10nm〜5μm、好ましくは50nm〜2μm、さらに好ましくは100nm〜1μmである。
絶縁体層と有機半導体層の間に、任意の配向処理を施してもよい。
配向処理の好ましい例としては、絶縁体層表面に撥水化処理等を施し絶縁体層と有機半導体層との相互作用を低減させ有機半導体層の結晶性を向上させる方法であり、具体的には、シランカップリング剤、例えば、ヘキサメチルジシラザン、オクタデシルトリクロロシラン、トリクロロメチルシラザンや、アルカン燐酸、アルカンスルホン酸、アルカンカルボン酸等の自己組織化配向膜材料を、液相又は気相状態で、絶縁膜表面に接触させ自己組織化膜を形成後、適度に乾燥処理を施す方法が挙げられる。
また、液晶の配向に用いられるように、絶縁膜表面にポリイミド等で構成された膜を設置し、その表面をラビング処理する方法も好ましい。
絶縁体層の形成方法としては、真空蒸着法、分子線エピタキシャル成長法、イオンクラスタービーム法、低エネルギーイオンビーム法、イオンプレーティング法、CVD法、スパッタリング法、特開平11−61406号公報、同11−133205号公報、特開2000−121804号公報、同2000−147209号公報、同2000−185362号公報に記載の大気圧プラズマ法等のドライプロセスや、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、デイップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法等の塗布による方法、印刷やインクジェット等のパターニングによる方法等のウェットプロセスが挙げられ、材料に応じて使用できる。
ウェットプロセスは、無機酸化物の微粒子を、任意の有機溶剤又は水に必要に応じて界面活性剤等の分散補助剤を用いて分散した液を塗布、乾燥する方法や、酸化物前駆体、例えば、アルコキシド体の溶液を塗布、乾燥する、いわゆるゾルゲル法が用いられる。
[有機薄膜トランジスタの製造方法]
有機薄膜トランジスタの製造方法としては、特に限定されず公知の方法によればよいが、所望の素子構成に従い、基板投入、ゲート電極形成、絶縁体層形成、有機半導体層形成、ソース電極形成、ドレイン電極形成までの一連の素子作製工程を全く大気に触れることなく形成すると、大気との接触による大気中の水分や酸素等による素子性能の阻害を防止できるため好ましい。
やむをえず、一度大気に触れさせなければならないときは、有機半導体層成膜以後の工程は大気に全く触れさせない工程とし、有機半導体層成膜直前には、有機半導体層を積層する面(例えば図2の有機薄膜トランジスタ2の場合は絶縁層に一部ソース電極、ドレイン電極が積層された表面)を紫外線照射、紫外線/オゾン照射、酸素プラズマ、アルゴンプラズマ等で清浄化・活性化した後、有機半導体層を積層することが好ましい。また、p型TFT材料の中には一旦大気にふれさせ、酸素等を吸着させることにより性能が向上するものもあるので、材料によっては適宜大気にふれさせる。
大気中に含まれる酸素、水等の有機半導体層に対する影響を考慮し、有機トランジスタ素子の外周面の全面又は一部に、ガスバリア層を形成してもよい。ガスバリア層を形成する材料としては、この分野で常用されるものを使用でき、例えば、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリクロロトリフロロエチレン等が挙げられる。さらに、前記絶縁体層で例示した、絶縁性を有する無機物も使用できる。
[ジナフトチオフェン化合物の合成]
実施例1
下記合成スキームにより、化合物Aを合成した。
Figure 2015048346
(中間体A1の合成)
4−n−ペンチルアニリン(9.8g,60mmol)をメタノール(220ml)及びジクロロメタン(560ml)の混合溶媒に溶かし、これに炭酸カルシウム(9.0g,90mmol,1.5eq.)、ベンジルトリメチルアンモニウムジクロロヨージド(25g,72mmol,1.2eq.)を加え、室温で3時間撹拌した。反応混合物をろ別し、溶媒留去して濃褐色オイルを得た。得られたオイルをヘキサン(250ml)に溶かし、5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液(100ml)で2回、及び飽和食塩水(30ml)で1回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒留去して褐色オイルを得た。得られたオイルをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/ヘキサン+50%ジクロロメタン)で精製して赤色オイルとして中間体A1(14.3g,82%)を得た。
得られた中間体A1のNMRの結果を以下に示す:
H−NMR(CDCl,TMS)δ0.88(3H,t,J=7Hz),1.28−1.31(4H,m),1.54(2H,m),2.45(2H,t,J=7Hz),3.94(2H,bs),6.67(1H,d,J=8Hz),6.95(1H,dd,J=8Hz,2Hz),7.46(1H,d,J=2Hz).
(中間体A2の合成)
窒素雰囲気下、硫酸銅5水和物(16g,64mmol,1.3eq.)と臭化ナトリウム(10g,97mmol,1.5eq.)を水(52ml)に溶かし、55℃に加熱した、この溶液に亜硫酸ナトリウム水溶液(4.2g,33mmol,0.5eq./20ml)を滴下し、55℃で30分撹拌後、室温まで放冷した。反応混合物の上澄みを捨て、沈殿した白色固体を水(100ml)で2回洗浄し、48%臭化水素酸(25ml)を加えた。こうして調製したCuBr溶液は密栓して保管した。
別のフラスコに、中間体A1(13.8g,48mmol)を48%臭化水素酸(60ml)及び水(60ml)の混合溶媒に懸濁し、ドライアイス/メタノール浴で−10℃に冷却した。これに亜硝酸ナトリウム水溶液(3.3g,48mmol,1eq./20ml)を滴下し、0℃で40分撹拌した。こうして調製したジアゾニウム塩懸濁液を、先に調製したCuBr溶液に加え、室温で2時間撹拌した。反応混合物をヘキサン(200ml)で抽出し、有機層を飽和食塩水(30ml)で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥、溶媒留去して赤色オイルを得た。得られたオイルをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/ヘキサン)で精製してピンク色オイルとして中間体A2(7.7g,45%))を得た。
得られた中間体A2のNMRの結果を以下に示す:
H−NMR(CDCl,TMS)δ0.89(3H,t,J=7Hz),1.27−1.31(4H,m),1.53−1.61(2H,m),2.50(2H,t,J=7Hz),7.00(1H,dd,J=8Hz,2Hz),7.49(1H,d,J=8Hz),7.68(1H,d,J=2Hz).
(中間体A3の合成)
窒素雰囲気下、中間体A2(7.7g,22mmol)を無水THF(35ml)に溶かし、ドライアイス/アセトン浴で−70℃に冷却した。この溶液にイソプロビルマグネシウムブロミド/テトラヒドロフラン溶液(1mol/l,22ml,22mmol)を加え、−72℃で2時間撹拌した。続いて無水ジメチルホルムアミド(3.4ml,44mmol,2eq.)を加え、−70℃で1時間撹拌後、室温で3時間撹拌した。
反応混合物を5%塩酸水溶液(100ml)で失活させ、酢酸エチル(200ml)で抽出、有機層を飽和食塩水(30ml)で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥、溶媒留去して黄色オイルを得た。得られたオイルをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/ヘキサン+17%ジクロロメタン、続いてヘキサン+33%ジクロロメタン)で精製して黄色オイルとして中間体A3(2.7g,48%)を得た。
得られた中間体A3のNMRの結果を以下に示す:
H−NMR(CDCl,TMS)δ0.89(3H,t,J=7Hz),1.28−1.31(4H,m),1.61(2H,m),2.61(2H,t,J=7Hz),7.27(1H,dd,J=8Hz,2Hz),7.54(1H,d,J=8Hz),7.73(1H,d,J=2Hz),10.35(1H,s).
(中間体A4の合成)
窒素雰囲気下、中間体A3(2.7g,11mmol,2.6eq.)、チオフェン−2,5−ジボロン酸ジピナコールエステル(1.4g,4.2mmol)、酢酸パラジウム(0.02g,0.089mmol,1%Pd)、2,6−ジメトキシ−2’−ジシクロヘキシルホスフィノビフェニル(0.1g,0.24mmol,2.7eq.to Pd)、リン酸カリウム(3.6g,17mmol,4eq.)をトルエン(20ml)及び水(2ml)の混合溶媒に懸濁し、80℃で10時間撹拌した。
反応混合物をトルエン(100ml)で希釈し、上澄みを取り、無水硫酸マグネシウムで乾燥、溶媒留去して褐色オイルを得た。得られた褐色オイルをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/ヘキサン+67%ジクロロメタン、続いてヘキサン+83%ジクロロメタン)で精製して黄色オイルとして中間体A4(1.5g,83%))を得た。
得られた中間体A4のNMRの結果を以下に示す:
H−NMR(CDCl,TMS)δ0.91(6H,t,J=7Hz),1.33−1.37(8H,m),1.68(4H,m),2.71(4H,t,J=7Hz),7.07(2H,s),7.47(2H,dd,J=8Hz,2Hz),7.51(2H,s),7.85(2H,d,J=8Hz),10.28(2H,s).
(中間体A5の合成)
窒素雰囲気下、メトキシメチルトリフェリルホスホニウムクロリド(3.6g,10mmol,3eq.)を無水THF(40ml)に懸濁し、カリウムt−ブトキシド(1.3g,12mmol,1.1eq.)を加えて室温で30分撹拌した。これに中間体A4(1.5g,3.5mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。
反応混合物に水(50ml)を加えて失活させ、酢酸エチル(200ml)で抽出、有機層を飽和食塩水(30ml)で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥、溶媒留去して黄色固体を得た。得られた黄色固体をカラムクロマトグラフィ(中性シリカゲル/ヘキサン+33%ジクロロメタン)で精製して黄色オイルとして中間体A5(1.5g,88%))を得た。
尚、得られた中間体A5は、オレフィン部のE:Z異性体混合物である、H−NMRが複雑で帰属できなかった。
(化合物Aの合成)
窒素雰囲気下、中間体A5(1.5g,3.1mmol)を無水ジクロロメタン(60ml)に溶かし、氷浴で冷却した。得られた溶液にメタンスルホン酸(0.4ml,6.2mmol,2eq.)を滴下し、氷浴1で時間撹拌後、室温で6時間撹拌した。
反応混合物をジクロロメタン(200ml)で希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100ml)、飽和食塩(50ml)水で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥、溶媒留去して淡黄色固体を得た。得られた淡黄色固体をカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/ジクロロメタン)で精製して淡黄色固体(1.2g,91%)を得た。これを沸騰ヘキサン(30ml)に懸濁し、放冷後ろ別して淡黄色固体として化合物A(0.94g)を得た。
得られた化合物AのNMRの結果を以下に示す:
H−NMR(CDCl,TMS)δ0.92(6H,t,J=7Hz),1.37−1.53(8H,m),1.76(4H,m),2.83(4H,t,J=7Hz),7.49(2H,dd,J=8Hz,2Hz),7.76(2H,s),7.83(2H,d,J=9Hz),8.15(2H,d,J=9Hz),8.18(2H,d,J=9Hz).
得られた淡黄色固体(0.94g)を窒素気流下、240℃/2.2x10Paで昇華精製することにより淡黄色固体として化合物A(0.70g)を得た。
FD−MS(フィールドディソープションマス分析)のC3032Sとしての計算値は424であり、実測値は424(M,100)であった。また、HPLCの結果は99.4%(UV254面積%)(アセトニトリル:テトラヒドロフラン=85:15)であった。
また、得られた化合物Aについて、溶媒に対する溶解性試験を実施したところ、メシチレン(1.00重量%)、テトラリン(0.75重量%)、アニソール(0.75重量%)であった。このことから、化合物Aは塗布法で成膜するために必要な溶解性を有していることがわかる。
実施例2
下記合成スキームにより、化合物Bを合成した。
Figure 2015048346
(中間体B1の合成)
4−n−オクチルアニリン(12.3g,60mmol)をメタノール(220ml)及びジクロロメタン(560ml)の混合溶媒に溶かし、これに炭酸カルシウム(9.0g,90mmol,1.5eq.)、ベンジルトリメチルアンモニウムジクロロヨージド(25g,72mmol,1.2eq.)を加え、室温で4時間撹拌した。
反応混合物をろ別し、溶媒留去して濃褐色オイルを得た。これをヘキサン(250ml)に溶かし、5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液(100ml)で2回、飽和食塩水(30ml)で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒留去して褐色オイルを得た。これをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/ヘキサン+50%ジクロロメタン)で精製して黄色固体として中間体B1(16.0g,82%)を得た。
得られた中間体B1のNMRの結果を以下に示す:
H−NMR(CDCl,TMS)δ0.88(3H,t,J=7Hz),1.26−1.29(10H,m),1.53(2H,m),2.44(2H,t,J=7Hz),3.94(2H,bs),6.67(1H,d,J=8Hz),6.94(1H,dd,J=8Hz,2Hz),7.45(1H,d,J=2Hz).
(中間体B2の合成)
窒素雰囲気下、硫酸銅5水和物(16g,64mmol,1.3eq.)と塩化ナトリウム(5.6g,96mmol,1.5eq.)を水(50ml)に溶かし、55℃に加熱した、この溶液に亜硫酸ナトリウム水溶液(4.2g,33mmol,0.5eq./20ml)を滴下し、55℃で30分撹拌後、室温まで放冷した。反応混合物の上澄みを捨て、沈殿した白色固体を水(100ml)で2回洗浄し、濃塩酸(25ml)を加えた。こうして調製したCuCl溶液は密栓して保管した。
別のフラスコに、中間体B1(16g,48mmol)を濃塩酸(50ml)及び水(40ml)の混合溶媒に懸濁し、ドライアイス/メタノール浴で−10℃に冷却した。この混合物に亜硝酸ナトリウム水溶液(3.6g,52mmol,1.1eq./20ml)を滴下し、0℃で1時間撹拌した。こうして調製したジアゾニウム塩懸濁液を、先に調製したCuCl溶液に加え、室温で3時間撹拌した。
反応混合物をヘキサン(250ml)で抽出し、有機層を飽和食塩水(30ml)で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥、溶媒留去して褐色オイルを得た。これをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/ヘキサン)で精製して無色オイルとして中間体B2(8.5g,51%))を得た。
得られた中間体B2のNMRの結果を以下に示す:
H−NMR(CDCl,TMS)δ0.89(3H,t,J=7Hz),1.27−1.29(10H,m),1.56(2H,m),2.52(2H,t,J=7Hz),7.08(1H,dd,J=8Hz,2Hz),7.32(1H,d,J=8Hz),7.67(1H,d,J=2Hz).
(中間体B3の合成)
窒素雰囲気下、中間体B2(8.5g,24mmol)を無水THF(40ml)に溶かし、ドライアイス/アセトン浴で−72℃に冷却した。この溶液にイソプロビルマグネシウムブロミド/テトラヒドロフラン溶液(1mol/l,24ml,24mmol)を加え、−72℃で2時間撹拌した。続いて無水ジメチルホルムアミド(3.7ml,48mmol,2eq.)を加え、−70℃で1時間撹拌後、室温で3時間撹拌した。
反応混合物を5%塩酸水溶液(100ml)で失活させ、酢酸エチル(200ml)で抽出、有機層を飽和食塩水(30ml)で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥、溶媒留去して黄色オイルを得た。これをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/ヘキサン+17%ジクロロメタン、続いてヘキサン+33%ジクロロメタン)で精製して無色オイルとして中間体B3(2.4g,40%)を得た。
得られた中間体B3のNMRの結果を以下に示す:
H−NMR(CDCl,TMS)δ0.88(3H,t,J=7Hz),1.26−1.30(10H,m),1.60(2H,m),2.62(2H,t,J=7Hz),7.35(2H,s),7.73(1H,s),10.47(1H,s).
(中間体B4の合成)
窒素雰囲気下、中間体B3(2.4g,9.7mmol,2.6eq.)、チオフェン−2,5−ジボロン酸ジピナコールエステル(1.3g,3.9mmol)、酢酸パラジウム(0.02g,0.089mmol,1%Pd)、2,6−ジメトキシ−2’−ジシクロヘキシルホスフィノビフェニル(0.1g,0.24mmol,2.7eq.to Pd)、リン酸カリウム(3.3g,16mmol,4eq.)をトルエン(20ml)及び水(2ml)の混合溶媒に懸濁し、80℃で10時間撹拌した。
反応混合物をトルエン(100ml)で希釈し、上澄みを取り、無水硫酸マグネシウムで乾燥、溶媒留去して褐色オイルを得た。これをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/ヘキサン+5%酢酸エチル)で精製して黄色オイルとして中間体B4(1.4g,70%)を得た。
得られた中間体B4のNMRの結果を以下に示す:
H−NMR(CDCl,TMS)δ0.89(6H,t,J=7Hz),1.28−1.33(20H,m),1.67(4H,m),2.71(4H,t,J=7Hz),7.07(2H,s),7.47(2H,dd,J=8Hz,2Hz),7.50(2H,d,J=8Hz),7.85(2H,d,J=2Hz),10.28(2H, s).
(中間体B5の合成)
窒素雰囲気下、メトキシメチルトリフェリルホスホニウムクロリド(2.8g,8.2mmol,3eq.)を無水THF(30ml)に懸濁し、カリウムt−ブトキシド(1.0g,8.9mmol,1.1eq.)を加えて室温で30分撹拌した。これに中間体B4(1.4g,2.7mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。
反応混合物に水(50ml)を加えて失活させ、酢酸エチル(200ml)で抽出、有機層を飽和食塩水(30ml)で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥、溶媒留去して褐色オイルを得た。これをカラムクロマトグラフィ(中性シリカゲル/ヘキサン+33%ジクロロメタン)で精製して黄色オイルとして中間体B5(1.3g,84%))を得た。
尚、得られた中間体B5は、オレフィン部のE:Z異性体混合物である、H−NMRが複雑で帰属できなかった。
(化合物Bの合成)
窒素雰囲気下、中間体B5(1.3g,2.3mmol)を無水ジクロロメタン(50ml)に溶かし、氷浴で冷却した。これにメタンスルホン酸(0.3ml,4.6mmol,2eq.)を滴下し、氷浴1で時間撹拌後、室温で6時間撹拌した。
反応混合物をジクロロメタン(200ml)で希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100ml)、飽和食塩(50ml)水で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥、溶媒留去して淡黄色固体を得た。これをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/ジクロロメタン)で精製して淡黄色固体(1.1g,94%)を得た。これを沸騰ヘキサン(30ml)に懸濁し、放冷後ろ別して淡黄色固体として化合物B(0.85g)を得た。
得られた化合物BのNMRの結果を以下に示す:
H−NMR(CDCl,TMS)δ0.88(6H,t,J=7Hz),1.28−1.40(20H,m),1.75(4H,m),2.83(4H,t,J=7Hz),7.49(2H,dd,J=9Hz,2Hz),7.77(2H,s),7.84(2H,d,J=9Hz),8.15(2H,d,J=8Hz),8.18(2H,d,J=9Hz).
得られた固体(0.82g)を窒素気流下、270℃/2.2x10Paで昇華精製することにより白色固体として化合物B(0.78g)を得た。
FDMSのC36H40Sとしての計算値508であり、実測値は508(M,100)であった。また、HPLCの結果は、99.3%(UV254面積%)(アセトニトリル:テトラヒドロフラン=85:15)であった。
また、得られた化合物Bについて、溶媒に対する溶解性試験を実施したところ、メシチレン(1.00重量%)、テトラリン(0.50重量%)、アニソール(0.50重量%)であった。このことから、化合物Bは塗布法で成膜するために必要な溶解性を有していることがわかる。
実施例3
4−n−オクチルアニリンの代わりに4−n−ドデシルアニリンを用いた他は実施例2と同様にして、以下に示す化合物Cを合成した。
また、得られた化合物Cについて、溶媒に対する溶解性試験を実施したところ、メシチレン(1.00重量%)、テトラリン(0.40重量%)、アニソール(0.40重量%)であった。このことから、化合物Cは塗布法で成膜するために必要な溶解性を有していることがわかる。
Figure 2015048346
[有機薄膜トランジスタの製造及びその評価]
実施例4
ガラス基板を中性洗剤、純水、アセトン及びエタノールで各30分超音波洗浄した後、スパッタ法にて金(Au)を40nm成膜してゲート電極を作製した。次いで、この基板を熱CVD装置の成膜部にセットした。一方、原料の蒸発部には、絶縁体層の原料としてポリパラキシレン誘導体[ポリパラ塩化キシレン(Parylene)](商品名;diX−C,第三化成社製)250mgをシャーレに入れて設置した。熱CVD装置を真空ポンプで真空に引き、5Paまで減圧した後、蒸発部を180℃、重合部を680℃まで加熱して2時間放置し、ゲート電極上に厚さ370nmの絶縁体層を形成した。
次に、上記基板を真空蒸着装置(ULVAC社製、EX−400)に設置し、絶縁体層上に化合物Aを0.05nm/sの蒸着速度で50nm膜厚の有機半導体層を成膜した。金属マスクを通して金を50nmの膜厚で成膜することにより、互いに接しないソース電極及びドレイン電極を、間隔(チャンネル長L)が250μmになるように形成した。このとき、ソース電極とドレイン電極の幅(チャンネル幅W)を5mmとし、この積層体を100℃で1時間熱処理を行ない、有機薄膜トランジスタを作製した(図4参照)。
作製した有機薄膜トランジスタのゲート電極に、−30Vのゲート電圧VGを印加し、ソース−ドレイン間に電圧を印加して電流を流しところ、正孔が有機半導体層のチャンネル領域(ソース−ドレイン間)に誘起され、p型トランジスタとして動作した。このときの正孔の電界効果移動度μを下記式(A)より算出した。その結果、閾値電圧は−13V、移動度は1.87cm/Vsであった。
=(W/2L)・Cμ・(V−V (A)
(式中、Iはソース−ドレイン間電流、Wはチャンネル幅、Lはチャンネル長、Cはゲート絶縁体層の単位面積あたりの電気容量、Vはゲート閾値電圧、Vはゲート電圧である。)
実施例5
化合物Aの代わりに化合物Bを用いた他は、実施例4と同様にして有機薄膜トランジスタを作製し、トランジスタ性能を評価した。その結果、閾値電圧は−13Vであり、移動度は5.47cm/Vsであった。
実施例6
化合物Aの代わりに化合物Cを用いた他は、実施例4と同様にして有機薄膜トランジスタを作製し、トランジスタ性能を評価した。その結果、閾値電圧は−13Vであり、移動度は2.45cm/Vsであった。
比較例1
化合物Aの代わりに特開2007−197400に開示の下記化合物Rを用いた他は、実施例4と同様に有機薄膜トランジスタを作製し、トランジスタ性能を評価した。その結果、閾値電圧は−19V,移動度は0.006cm/Vsであった。
また、化合物Rについて、溶媒に対する溶解性試験を実施したところ、メシチレン(0.1重量%以下)、テトラリン(0.1重量%以下)、アニソール(0.1重量%以下)であり、塗布法で成膜するために必要な溶解性を有していないことがわかる。
Figure 2015048346
1,2,3,4 有機薄膜トランジスタ
10 基板
11 ソース電極
12 ドレイン電極
13 有機半導体層
14 絶縁体層
15 ゲート電極

Claims (6)

  1. 下記式(A)で表わされるジナフトチオフェン化合物。
    Figure 2015048346
    (式(A)中、
    〜R12の少なくとも1つは、下記式(1)で表わされる置換基である。
    前記式(1)で表わされる置換基ではないR〜R12は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数4〜30のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数4〜30のアルケニル基、置換もしくは無置換の炭素数4〜30のアルキニル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、又は置換もしくは無置換の環形成原子数4〜30の複素環基である。)
    Figure 2015048346
    (式(1)中、
    Xは、硫黄原子、置換もしくは無置換の炭素数4〜30のアルキニレン基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、又は置換もしくは無置換の環形成原子数4〜30の複素環基である。
    Yは、置換もしくは無置換の炭素数4〜30のアルキル基である。
    nは0〜2までの整数である。n=0の場合、Xは単結合である。)
  2. 前記式(1)で表わされる置換基において、n=0である請求項1に記載のジナフトチオフェン化合物。
  3. 前記式(A)のR〜R、R〜R及びR10〜R12が水素原子である請求項1又は2に記載のジナフトチオフェン化合物。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のジナフトチオフェン化合物を含む有機薄膜トランジスタ用組成物。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載のジナフトチオフェン化合物を含む有機薄膜トランジスタ。
  6. 少なくとも基板上にゲート電極、ソース電極及びドレイン電極の3端子、絶縁体層並びに有機半導体層が設けられ、ソース−ドレイン間電流を前記ゲート電極に電圧を印加することによって制御する有機薄膜トランジスタにおいて、
    前記有機半導体層が請求項1〜3のいずれかに記載のジナフトチオフェン化合物を含む請求項5に記載の有機薄膜トランジスタ。
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