JP5880346B2 - 光学フィルムの製造方法及び製造装置 - Google Patents

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Description

本発明は、光学フィルムの製造方法及び製造装置に関する。
光学フィルムを製造する溶融流延製膜法において、フィルム品質の均一性は、流延ダイのダイスリップからキャストローラ又はタッチローラ着地点までの、溶融樹脂のリボン安定性が大きく影響することが知られている。
通常リボンの外乱による不安定さを避けるために溶融樹脂の落とし位置とエアギャップ(前記ダイスリップからローラ着地点までの距離をいう。)を調整することが一般的であり、例えば、溶融樹脂の落とし位置をキャストローラとタッチローラの接点上にしたり、ダイスリップとローラ周りの空間の構造を工夫したりすることで外乱による膜厚ムラを防いでいた。
特許文献1には、エアギャップ周囲を遮蔽板で囲み、内部を排気して、熱や湿度などの外的ストレスによる厚さムラや位相差ムラを防止する技術が開示されている。
また、特許文献2には、流延ダイ周りにラビリンス構造の筺体、端部遮蔽板を設置し、送風あるいは吸引することで、フィルムの表面近傍の風を整流し、厚さムラを防止する技術が開示されている。
しかしながら、液晶表示装置の薄型化に伴って光学フィルムも薄膜化されており、当該薄膜化された光学フィルムは、液晶表示装置に具備した場合に、従来問題になっていなかった表示ムラが発生することが分かった。
本発明者は、この表示ムラの原因を解析する過程で、その原因が光学フィルムの微少な膜厚ムラであることを突き止めた。更に、当該膜厚ムラの原因は、製膜時の流延ダイとキャストローラ(回転支持体、又は冷却ローラともいう。)及び流延ダイとタッチローラ(挟圧回転体ともいう。)との間隙から入り込むローラの回転に伴う風の流れによって、前記リボンの表裏に温度ムラを生じ、キャストローラ上で微少な膜厚ムラを引き起こすことが分かった。
キャストローラは高温な溶融樹脂を引き取り、冷却してフィルム化するものであり、タッチローラは光学フィルムの面矯正を行うものである。当該キャストローラとタッチローラ間でフィルムを狭圧することにより光学フィルムの平面性を確保している。通常タッチローラを用いた溶融流延製膜法では狭圧した樹脂をキャストローラ上で冷却して剥離する工程を含むが、キャストローラは冷却能力を確保するため、ある程度以上の径を必要とし、タッチローラとは必ずしも径が同じとは限らない。また、ダイスの構造は片側に樹脂が吐出するスリットの間隙調整機構(ヒートボルト)を持つため、流延ダイとキャストローラ、及び流延ダイとタッチローラとの間隙の距離が異なり、微小な空間ではキャストローラ側、及びタッチローラ側からローラの回転に伴って入り込む風の流れに差が発生する。
溶融流延製膜法でのキャスト部の風周りの問題に対して、上記のような技術が提案されているが、これらの技術はキャスト部の比較的広い空間における風の流れに着目している技術であり、ローラの回転に伴う風の流れの差によるリボンの影響については考慮されておらず、上記技術をもってしても、光学フィルムの薄膜化によって新たに発生した表示装置に現れる表示ムラを解消することは困難であった。
特開2006−150806号公報 特開2009−154518号公報
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、光学フィルムの製造工程において従来は影響を及ぼさなかった流延時の微小空間で発生する風の流れを制御することで、外乱(風)による膜厚ムラを制御し、薄膜化しても表示ムラの無い光学フィルムの製造方法を提供することである。
また、当該膜厚ムラの無い光学フィルムを製造する製造装置を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、流延ダイとキャストローラ、及び流延ダイとタッチローラとの間隙の距離をそれぞれ特定の範囲及び関係に調整することで、それぞれのローラの回転方向から入り込む風の流れの差によるリボンの不安定さを解消して膜厚ムラを制御し、薄膜化しても表示ムラの無い光学フィルムの製造方法を見出し本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.熱可塑性樹脂を含む溶融物を流延ダイからキャストローラの表面にフィルム状に押し出す流延工程と、前記流延工程で押し出されたフィルム状の溶融物を、前記キャストローラとタッチローラとの挟圧部で挟圧する挟圧工程とを有する光学フィルムの製造方法であって、間隙調整手段によって、当該流延ダイと当該キャストローラとの最短距離D1と当該流延ダイと当該タッチローラとの最短距離D2それぞれ3〜30mmの範囲内とし、かつ当該最短距離の比D1/D2の値0.5〜2.0の範囲内とすることを特徴とする光学フィルムの製造方法。
.前記間隙調整手段が、前記流延ダイと前記キャストローラ、又は前記流延ダイと前記タッチローラとの少なくとも一方の間隙に部材を装着して調整する手段であることを特徴とする第項に記載の光学フィルムの製造方法。
.前記間隙調整手段が、前記流延ダイを鉛直方向から±10°の範囲内で傾斜して調整する手段であることを特徴とする第項に記載の光学フィルムの製造方法。
.前記間隙調整手段が、前記キャストローラと前記タッチローラの少なくとも一方の高さを可変して調整する手段であることを特徴とする第項に記載の光学フィルムの製造方法
.前記間隙調整手段が、前記キャストローラ側と前記タッチローラ側で非対称な形状を持つ流延ダイを用いる手段であることを特徴とする第項に記載した光学フィルムの製造方法。
.前記タッチローラが、弾性タッチローラであることを特徴とする第1項から第項までのいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
.前記キャストローラの直径が、前記タッチローラの直径より1.1倍以上大きいことを特徴とする第1項から第項までのいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
.前記熱可塑性樹脂が、セルロースエステル系樹脂、アクリル系樹脂及び環状オレフィン系樹脂から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする第1項から第項までのいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
.第1項から第9項までのいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法に用いる光学フィルムの製造装置であって、前記流延ダイと前記キャストローラとの最短距離D1と前記流延ダイと前記タッチローラとの最短距離D2をそれぞれ3〜30mmの範囲内とし、かつ当該最短距離の比D1/D2の値を0.5〜2.0の範囲内とする間隙調整手段を具備していることを特徴とする光学フィルムの製造装置。
10.前記間隙調整手段として、前記流延ダイと前記キャストローラ、又は前記流延ダイと前記タッチローラとの少なくとも一方の間隙に部材が装着されていることを特徴とする第項に記載の光学フィルムの製造装置。
11.前記間隙調整手段として、前記流延ダイが鉛直方向から±10°の範囲内で傾斜していることを特徴とする第項に記載の光学フィルムの製造装置。
12.前記間隙調整手段として、前記キャストローラと前記タッチローラの少なくとも一方の高さが可変であることを特徴とする第項に記載の光学フィルムの製造装置。
13.前記間隙調整手段として、前記キャストローラ側と前記タッチローラ側で非対称な形状を持つ流延ダイを具備していることを特徴とする第項に記載した光学フィルムの製造装置。
本発明の上記手段により、光学フィルムの製造工程において従来は影響を及ぼさなかった流延時の微小空間で発生する、キャストローラ及びタッチローラのローラの回転に伴う風の流れを制御することで、外乱(風)による膜厚ムラを制御し、薄膜化しても表示ムラの無い光学フィルムの製造方法を提供することができる。また、当該膜厚ムラの無い光学フィルムを製造する製造装置を提供することができる。
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
溶融流延製膜法の場合、エアギャップ周囲の風の流れを遮蔽板や筐体で囲み、内部を送風あるいは排気してマクロな風の流れを整えることは、比較的厚膜の光学フィルムの膜厚ムラの低減には寄与するが、光学フィルムを薄膜化していった場合、流延ダイ周辺の僅かな風の流れによって、表示ムラとなって現れるような微少な膜厚ムラを解消することは困難である。
本発明の光学フィルムの製造方法によれば、流延ダイとキャストローラ、及び流延ダイとタッチローラとの間隙に着目し、それぞれの距離を特定の範囲及び関係に調整することによって、当該ローラの回転方向から入り込む風の流れを制御し、外乱(風)による膜厚ムラの無い薄膜化された光学フィルムの製造方法を提供することができたと推定している。
流延ダイ、キャストローラ及びタッチローラの位置関係を示す概略図 流延ダイ、キャストローラ及びタッチローラのそれぞれの距離を調整する手段の模式図 流延ダイ、キャストローラ及びタッチローラのそれぞれの距離を調整する手段の模式図 光学フィルムの製造方法の実施形態を示す概略図
本発明の光学フィルムの製造方法は、溶融流延製膜法において、流延ダイとキャストローラとの最短距離D1と流延ダイとタッチローラとの最短距離D2、及び当該最短距離の比を間隙調整手段によって、それぞれ特定の範囲内に調整して流延及び挟圧を行うことを特徴とし、かかる構成により光学フィルムの製造工程において従来は影響を及ぼさなかった流延時の微小空間で発生する、キャストローラ及びタッチローラのローラの回転に伴う風の流れを制御することで、外乱(風)による膜厚ムラを制御し、薄膜化しても表示ムラの無い光学フィルムの製造方法を提供する。この特徴は、請求項1から請求項13までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、当該光学フィルムの製造方法が、間隙調整手段によって、前記最短距離D1及びD2を3〜30mmの範囲内とし、かつ前記最短距離の比D1/D2の値を0.5〜2.0の範囲内とする。当該間隙調整手段は、前記流延ダイと前記キャストローラ、又は前記流延ダイと前記タッチローラとのどちらか一方の間隙に部材を装着して調整することが好ましく、また前記流延ダイを鉛直方向から±10°の範囲内で傾斜して設置することが好ましく、更に前記キャストローラと前記タッチローラのどちらか一方の高さを可変して調整することが好ましい。また、前記キャストローラ側と前記タッチローラ側で非対称な形状を持つ流延ダイを用いることも、好ましい。いずれも、当該流延ダイとキャストローラとの最短距離D1と当該流延ダイとタッチローラとの最短距離D2を調整することによって、それぞれのローラの回転方向から入り込む風の流れを制御し、薄膜化においても外乱(風)による膜厚ムラの無い光学フィルムの製造方法を提供するものである。
前記タッチローラが、弾性タッチローラであることが、光学フィルムの平面性を高める上で好ましく、前記キャストローラの直径が、前記タッチローラの直径より1.1倍以上大きいことがウェブを効率よく冷却し、挟圧することでムラのない光学フィルムを得る観点から、好ましい。
本発明に係る前記熱可塑性樹脂は、セルロースエステル系樹脂、アクリル系樹脂及び環状オレフィン系樹脂から選ばれる少なくとも一種であることが、液晶表示装置に用いる光学フィルムを得る上で好ましい。
本発明の光学フィルムの製造方法を実施する光学フィルムの製造装置は、前記流延ダイと前記キャストローラとの最短距離D1と前記流延ダイと前記タッチローラとの最短距離D2がそれぞれ3〜30mmの範囲内とし、かつ当該最短距離の比D1/D2の値を0.5〜2.0の範囲内とする間隙調整手段を有する製造装置であることが、外乱(風)による膜厚ムラを制御し、薄膜化において表示ムラの無い光学フィルムの製造装置を提供するものである。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
<光学フィルムの製造方法の概要>
本発明の光学フィルムの製造方法は、熱可塑性樹脂を含む溶融物を流延ダイからキャストローラの表面にフィルム状に押し出す流延工程と、前記流延工程で押し出されたフィルム状の溶融物を、前記キャストローラとタッチローラとの挟圧部で挟圧する挟圧工程とを有する光学フィルムの製造方法であって、間隙調整手段によって、当該流延ダイと当該キャストローラとの最短距離D1と当該流延ダイと当該タッチローラとの最短距離D2それぞれ3〜30mmの範囲内とし、かつ当該最短距離の比D1/D2の値0.5〜2.0の範囲内とすることを特徴とする。
本発明の光学フィルムの製造方法の特徴は、流延ダイと該キャストローラとの最短距離D1と該流延ダイと前記タッチローラとの最短距離D2をそれぞれ従来よりも狭め、かつ当該最短距離の比を特定の範囲内に調整することによって、それぞれのローラの回転方向から入り込む風の流れを制御し、外乱(風)による膜厚ムラへの影響を小さくするものである。本発明でいう上記「最短距離」とは、流延ダイの筐体部と上記ローラ表面との間隙の最短部分の距離をいう。
図1は、本発明の光学フィルムの製造方法の特徴である、流延ダイ、キャストローラ及びタッチローラの位置関係を示す概略図である。なお、本図は模式的に描いた図であり、それぞれの装置の大きさ、形状を規定するものではなく、流延ダイ、キャストローラ及びタッチローラの大きさ、形状は適宜自由に設計できる。また、図ではフィルム(溶融物)が最初にキャストローラBの表面に接触した点(P)と、フィルムがタッチローラCの表面に接触した点(P)が同一である実施形態を示したが、場合によっては、フィルムが最初にキャストローラBの表面に接触した点と、フィルムがタッチローラCの表面に接触した点が異なる場合もある。平面性をより向上する観点からは、キャストローラBの表面に接触した点(P)と、フィルムがタッチローラCの表面に接触した点(P)が同一であることが好ましい。
図1(a)は従来の溶融流延製膜法に供される、流延ダイAとキャストローラB、及びタッチローラCの位置関係を示す概略図である。従来流延ダイの下端はキャストローラBの頂点より上の位置にあり、流延ダイAとキャストローラBとの最短距離D1と、流延ダイAとタッチローラCとの最短距離D2は比較的長目であり、したがってエアギャップもある程度の距離があった。当該エアギャップはリボンの外乱による不安定さを避けるため、短縮化されることが好ましいが、前記特許文献1及び特許文献2に開示されているように、エアギャップの周辺を遮蔽して、内部のエアーを排気又は送風することで整流するという手段は提案されてきたものの、前記流延ダイとローラ間の最短距離D1及びD2を調整して、それぞれのローラの回転に伴う風の流れの差を調整し、微小空間で発生する風を整流するという技術的思想はなかった。
図1(b)は、本発明に係る流延ダイ、キャストローラ及びタッチローラの位置関係を示す概略図である。
本発明に係る流延ダイA、キャストローラB及びタッチローラCの位置関係は、流延ダイとキャストローラとの最短距離D1と流延ダイとタッチローラとの最短距離D2がそれぞれ3〜30mmの範囲内であり、かつ当該最短距離の比D1/D2の値が0.5〜2.0の範囲内であることを特徴とする。
このように本発明は、流延ダイとローラの最短距離D1及びD2を特定の範囲及び関係に調整することで、それぞれのローラの回転方向から入り込む風を整流し、それぞれの風の流れの差を調整することによって、リボンrを安定化させて薄膜であっても膜厚ムラの発生のない光学フィルムを製造することが特徴である。
本発明は、流延ダイとキャストローラの最短距離D1及び流延ダイとタッチローラとの最短距離D2をそれぞれ3〜30mmの範囲内に調整するものであるが、生産におけるメンテナンス等と本発明の効果を勘案すると、5〜20mmの範囲であることが好ましく、5〜10mmの範囲内であることがより好ましい。
本発明は、当該最短距離の比D1/D2の値を0.5〜2.0の範囲内に調整することが、それぞれのローラの回転に伴う風の流れの差を調整する上で重要であり、好ましくは0.7〜1.5の範囲内であり、より好ましくは0.9〜1.1の範囲内であり、特に好ましくは、1.0(等距離)にすることである。
当該最短距離、及び最短距離の比D1/D2の値を上記の範囲内に調整することにより、それぞれのローラの回転方向から入り込む風の流れの差を調整することが可能となる。
本発明は、本発明の効果発現の観点から、当該光学フィルムの製造方法が、間隙調整手段によって、前記流延ダイとキャストローラの最短距離D1及び前記流延ダイとタッチローラとの最短距離D2をそれぞれ3〜30mmの範囲内に調整し、かつ前記最短距離の比D1/D2の値を0.5〜2.0の範囲内とすることが好ましく、当該間隙調整手段を有する光学フィルムの製造装置を用いることが好ましい。
当該間隙調整手段の好ましい例を下記に示すが、本発明はこれらに限定されるものではなく、又間隙調整手段は適宜組み合わせて用いることが好ましい。
図2(a)に示す間隙調整手段は、前記流延ダイと前記キャストローラ、又は前記流延ダイと前記タッチローラとのどちらか一方の間隙に部材を装着して、微小空間で発生する風を整流する調整する手段である。部材の厚さは、前記最短距離D1及びD2の調整度合い、及び比D1/D2の値の調整度合いによって適宜決定される。また、当該部材の形状は特に限定されるものではないが、図2(a)で示すようなくさび状又はローラの形状に対向するようなアーチ状であることが好ましい。また、その材質は金属、プラスチックなどのいずれも適宜用いることが好ましいが、流延ダイと同様な材質のものであって表面が平滑なものを用いることが風の整流という観点からは好ましい。
図2(b)に示す間隙調整手段は、前記流延ダイを鉛直方向を0°としたときに、±10°の範囲内で傾斜して調整する手段である。本発明でいう「傾斜する」とは、鉛直方向(0°)を除いて±10°の範囲内の方向に流延ダイの鉛直方向を傾けて設置することをいう。傾斜する範囲が上記範囲内であれば、ダイスリップから重力落下するリボンの安定性に影響がなく好ましい。傾斜角度は前記最短距離D1及びD2の調整度合い、及び比D1/D2の値の調整度合いによって適宜決定される。
図3(a)に示す間隙調整手段は、前記キャストローラと前記タッチローラのどちらか一方の高さを可変して調整する手段である。図ではタッチローラCの高さをキャストローラBの高さより上げて最短距離D2を調整している。どの程度高さを変化させるかは、前記最短距離D1及びD2の調整度合い、及び比D1/D2の値の調整度合いによって適宜決定される。前記キャストローラ又は前記タッチローラの少なくとも一方のローラの高さを可変できる装置は、例えばローラの軸受け部を上下できる構造等を有することが好ましい。
図3(b)に示す間隙調整手段は、前記キャストローラ側と前記タッチローラ側で非対称な形状を持つ流延ダイを用いる手段である。図ではタッチローラ側の流延ダイ形状を非対称形とし、最短距離D2を調整している。どの程度形状を変化させるかは、前記最短距離D1及びD2の調整度合い、及び比D1/D2の値の調整度合いによって適宜決定される。
<溶融流延製膜法による光学フィルムの製造方法>
図4は、本発明の光学フィルムの製造方法の実施形態を示す概略図である。
本実施形態においては、セルロースエステル樹脂等の熱可塑性樹脂を含むフィルム材料を混合して樹脂混合物を得た後、押出し機1を用いて、押し出し温度200〜300℃程度で溶融し、リーフディスクタイプのフィルタ2などで濾過し、異物を除去する。次いで濾過した溶融物は、流延ダイ4からキャストローラ5上に溶融押し出しする。押し出されたフィルム状の溶融物は、キャストローラ5に外接するとともに、挟圧部でタッチローラ6によりキャストローラ5表面に所定の圧力で押圧される。タッチローラ6から剥離したフィルムは、キャストローラ5により搬送され、さらに、冷却ローラ7、8の順に外接して冷却固化し、剥離ローラ9によって剥離される。剥離されたフィルム17は、縦延伸装置10と横延伸装置20によりフィルムの縦(搬送方向)及び横(幅手方向)に延伸した後、巻取り装置60により巻き取られる。
流延ダイ4から押し出されたフィルムは冷却機能を有する少なくとも2つの回転体(キャストローラとタッチローラ)で冷却、面矯正される。キャストローラ、及びタッチローラはローラに限定されるものではなく、ドラムやベルトなどでもよい。
キャストローラ5は、肉厚が20〜30mm程度のシームレスな鋼管製で、表面が鏡面に仕上げられている。その内部には、冷却液を流す配管が配置されており、配管を流れる冷却液によってローラ上のフィルムから熱を吸収できるように構成されている。キャストローラ5に好ましい材質は、炭素鋼、ステンレス鋼などが挙げられる。キャストローラ5の直径は特に制限はないが、後述するタッチローラの直径より1.1倍以上大きいことが、ウェブを効率よく冷却し、挟圧することでムラのない光学フィルムを得る観点から好ましく、110〜1000mmの範囲内であることが好ましく、200〜1000mmの範囲内であることがより好ましい。
キャストローラ5の温度は、樹脂混合物のガラス転移温度(Tg)以下、添加剤の融点以上に設定するのが、好ましい。フィルムのキャストローラ5表面に接触した後のフィルムの温度低下は20〜50℃の範囲内が望ましい。キャストローラ5でのフィルムの温度低下が大きすぎると、不均一な収縮により膜厚ムラが大きくなってしまう。キャストローラ5に続いて冷却ローラ7及び冷却ローラ8を設置することはフィルムの平面性を向上する上で好ましく、それぞれ5〜30℃の範囲内で段階的に温度低下することが好ましい。
一方、タッチローラ6は、フィルムに対してキャストローラ5の反対側よりキャストローラ5の方向にフィルムを挟圧する目的の回転体である。
タッチローラ6の表面は金属であることが好ましく、厚さは0.1〜10.0mmの範囲である。好ましくは0.2〜6.0mmの範囲である。タッチローラの表面は、クロムメッキなどの処理が施されており、表面粗さは、最大高さRyで0.1μm以下とすることが好ましく、更に0.05μm以下とすることが好ましい。ローラ表面が平滑であるほど、得られるフィルムの表面も平滑にできる。
挟圧工程において、タッチローラ6が、外周に金属円筒を有する弾性ローラ(弾性金属ローラ)よりなるものであることが好ましい。
すなわち、タッチローラ6の圧力が不均一になると、フィルムに配向ムラが発生し、これが表示装置では明暗のムラになってしまう。均一な圧力でフィルムを面矯正するためには、上記のような外周に金属円筒を有する弾性タッチローラが好ましい。
タッチローラ6の表面の金属の材質は、平滑で、適度な弾性があり、耐久性があることが求められる。炭素鋼、ステンレス、チタン、電鋳法で製造されたニッケルなどが好ましく用いることができる。さらにその表面の硬度を上げたり、樹脂との剥離性を改良するため、ハードクロムメッキや、ニッケルメッキ、非晶質クロムメッキなどや、セラミック溶射等の表面処理を施すことが好ましい。表面加工した表面はさらに研磨し、上述した表面粗さとすることが好ましい。
タッチローラ6は、金属製外筒と内筒との2重構造になっており、その間に冷却流体を流せるように空間を有する二重筒の構成である。
内筒は、炭素鋼、ステンレス、アルミニウム、チタンなどの軽量で剛性のある金属製内筒であることが好ましい。内筒に剛性をもたせることで、ローラの回転ぶれを抑えることができる。内筒の肉厚は、外筒の2〜10倍の範囲とすることで十分な剛性が得られる。内筒にはさらにシリコーン、フッ素ゴムなどの樹脂製弾性材料が被覆されていてもよい。
冷却流体を流す空間の構造は、ローラ表面の温度を均一に制御できるものであればよく、例えば幅手方向に行きと戻りが交互に流れるようにしたり、スパイラル状に流れるようにすることでローラ表面の温度分布の小さい温度制御ができる。冷却流体は、特に制限はなく、使用する温度域に合わせて、水やオイルを使用できる。タッチローラ6の温度は60〜160℃が好ましく、より好ましくは70〜150℃である。
タッチローラ6は、中央部の外径が両端部の外径よりも大きい太鼓型に設定されることが好ましい。タッチローラは、その両端部を加圧手段でフィルムに押圧するのが一般的であるが、この場合、タッチローラが撓むため、端部にいくほど強く押圧されてしまう現象がある。ローラを太鼓型にすることで高度に均一な押圧が可能となる。
タッチローラ6の直径(金属製外筒の直径)は、100〜500mmの範囲内であることが好ましい。タッチローラ6の有効幅は、挟圧するフィルム幅よりも広い必要がある。タッチローラ6の中央部の半径と端部の半径との差(以下、クラウニング量と呼ぶ)により、フィルムの中央部に発生するスジなどのムラを防止することができる。クラウニング量は、50〜300μmの範囲が好ましい。
弾性タッチローラとしては、特開平03−124425号、特開平08−224772号、特開平07−100960号、特開平10−272676号、WO97/028950号、特開平11−235747号、特開2002−36332号、特開2005−172940号や特開2005−280217号に記載されているような表面が薄膜金属スリーブ被覆シリコンゴムローラを使用することができる。
キャストローラ5とタッチローラ6とは、フィルムを挟圧するように、フィルムの平面に対して反対側の位置に設置する。キャストローラ5とタッチローラ6とは、フィルムと面で接触しても、線で接触してもかまわない。
本実施形態による光学フィルムの製造方法において、溶融押し出しの条件は、他のポリエステルなどの熱可塑性樹脂に用いられる条件と同様にして行うことができる。材料はあらかじめ乾燥させておくことが好ましい。真空又は減圧乾燥機や除湿熱風乾燥機などで水分を1000ppm以下、好ましくは200ppm以下に乾燥させることが望ましい。
例えば熱風や真空又は減圧下で乾燥した樹脂を押出し機1を用いて、押し出し温度200〜300℃程度で溶融し、リーフディスクタイプのフィルタ2などで濾過し、異物を除去する。
供給ホッパー(図示略)から押出し機1へ導入する際は、真空下又は減圧下や不活性ガス雰囲気下にして、酸化分解等を防止することが好ましい。
可塑剤などの添加剤をあらかじめ混合しない場合は、押出し機の途中で練り込んでもよい。均一に添加するために、スタチックミキサー3などの混合装置を用いることが好ましい。
熱可塑性樹脂と、その他必要により添加される安定化剤等の添加剤は、溶融する前に混合しておくことが好ましい。混合は、混合機等により行ってもよく、また、前記したように樹脂調製過程において混合してもよい。混合機を使用する場合は、V型混合機、円錐スクリュー型混合機、水平円筒型混合機等、一般的な混合機を用いることができる。
上記のようにフィルム構成材料を混合した後に、その混合物を押出し機1を用いて直接溶融して製膜するようにしてもよいが、一旦、フィルム構成材料をペレット化した後、該ペレットを押出し機1で溶融して製膜するようにしてもよい。また、フィルム構成材料が、融点の異なる複数の材料を含む場合には、融点の低い材料のみが溶融する温度で一旦、半溶融物(溶融した融点の低い材料と、固体のままの融点の高い材料が混合した状態)を作製し、半溶融物を押出し機1に投入して製膜することも可能である。フィルム構成材料に熱分解しやすい材料が含まれる場合には、溶融回数を減らす目的で、ペレットを作製せずに直接製膜する方法や、上記のようなおこし状の半溶融物を作ってから製膜する方法が好ましい。
押出し機1は、市場で入手可能な種々の押出し機を使用可能であるが、溶融混練押出し機が好ましく、単軸押出し機でも2軸押出し機でも良い。フィルム構成材料からペレットを作製せずに、直接製膜を行う場合、適当な混練度が必要であるため2軸押出し機を用いることが好ましいが、単軸押出し機でも、スクリューの形状をマドック型、ユニメルト型、ダルメージ等の混練型のスクリューに変更することにより、適度の混練が得られるので、使用可能である。フィルム構成材料として、一旦、ペレットや半溶融物を使用する場合は、単軸押出し機でも2軸押出し機でも使用可能である。
押出し機1内及び押し出した後の冷却工程は、窒素ガス等の不活性ガスで置換するか、あるいは減圧することにより、酸素の濃度を下げることが好ましい。
押出し機1内のフィルム構成材料の溶融温度は、フィルム構成材料の粘度や吐出量、製造するシートの厚さ等によって好ましい条件が異なるが、一般的には、フィルム(樹脂混合物)のガラス転移温度Tgに対して、Tg以上、Tg+150℃以下、好ましくはTg+10℃以上、Tg+120℃以下である。押出し時の溶融粘度は、1〜10000Pa・sの範囲、好ましくは10〜1000Pa・sの範囲である。また、押出し機1内でのフィルム構成材料の滞留時間は短い方が好ましく、60分以内、好ましくは30分以内、より好ましくは20分以内である。滞留時間は、押出し機1の種類、押し出す条件にも左右されるが、材料の供給量やL/D、スクリュー回転数、スクリューの溝の深さ等を調整することにより短縮することが可能である。
押出し機1のスクリューの形状や回転数等は、フィルム構成材料の粘度や吐出量等により適宜選択される。本実施形態において押出し機1でのせん断速度は、1/秒〜10000/秒の範囲、好ましくは5/秒〜1000/秒の範囲、より好ましくは10/秒〜100/秒の範囲である。押出し機1としては、一般的にプラスチック成形機として市販されている押出し機を使用することができる。
押出し機1から押し出されたフィルム構成材料は、流延ダイ4に送られ、流延ダイ4からフィルム状に押し出される。
押出し機1から吐出される溶融物は、流延ダイ4に供給される。流延ダイ4はシートやフィルムを製造するために用いられるものであれば特に限定はされない。一般的に用いられるTダイ、フィッシュテールダイ、ハンガーコートダイのいずれのタイプでもよい。流延ダイ4の材質としては、ハードクロム、炭化クロム、窒化クロム、炭化チタン、炭窒化チタン、窒化チタン、超鋼、セラミック(タングステンカーバイド、酸化アルミ、酸化クロム)などを溶射若しくはメッキし、表面加工としてバフ、#1000番手以降の砥石を用いるラッピング、#1000番手以上のダイヤモンド砥石を用いる平面切削(切削方向は樹脂の流れ方向に垂直な方向)、電解研磨、電解複合研磨などの加工を施したものなどが挙げられる。
流延ダイ4のリップ部の好ましい材質は、流延ダイ4と同様である。またリップ部の表面精度は0.5S以下が好ましく、0.2S以下がより好ましい。
流延ダイ4のスリットは、そのギャップが調整可能なように構成されている。通常、流延ダイ4のスリットを形成する一対のリップのうち、一方は剛性の低い変形しやすいフレキシブルリップであり、他方は固定リップである。そして、多数のヒートボルトが流延ダイ4の幅方向すなわちスリットの長さ方向に一定ピッチで配列されている。各ヒートボルトには、埋め込み電気ヒータと冷却媒体通路とを具えたブロックが設けられ、ブロックを常時空冷しながら、埋め込み電気ヒータの入力を増減してブロックの温度を上下させ、これによりヒートボルトを熱伸縮させて、フレキシブルリップを変位させてフィルムの厚さを調整する。ヒートボルトは、好ましくは、長さ20〜40cmの範囲、直径7〜14mmの範囲を有し、複数、例えば数十本のヒートボルトが、好ましくはピッチ20〜40mmの範囲で配列されている。スリットギャップは、通常200〜1000μmの範囲内、好ましくは300〜800μmの範囲内、より好ましくは400〜600μmの範囲内である。
本実施形態においては、溶融させた樹脂混合物を押し出し機に取り付けた流延ダイ4からフィルム状樹脂に押し出し、押し出されたフィルム状樹脂を少なくとも2つの回転体に密着させて成形して引き取る工程を有する。
キャストローラ5及びタッチローラ6の表面精度は高いことが好ましく、表面粗さは、最大高さRyで0.1μm以下とすることが好ましく、更に0.05μm以下とすることが好ましい。
タッチローラ6は、押圧手段により、フィルムをキャストローラ5に押し付けることが好ましい。このときのタッチローラ6がフィルムを押し付ける線圧は、油圧ピストン等によって調整でき、好ましくは0.1〜100N/mm、より好ましくは1〜50N/mmである。
またキャストローラ5、若しくはタッチローラ6はフィルムとの接着の均一性を高めるためにローラの両端の直径を細くしたり、フレキシブルなローラ面を持たせることもできる。
流延ダイ4の開口部(リップ)からキャストローラ5までの部分を70kPa以下に減圧させると、ダイラインの矯正効果がより大きく発現する。好ましくは減圧は50kPa以上70kPa以下である。流延ダイ4のリップからキャストローラ5までの部分の圧力を70kPa以下に保つ方法としては、特に制限はないが、流延ダイ4からローラ周辺を耐圧部材で覆い、減圧するなどの方法がある。このとき、吸引装置は、装置自体が溶融物から吐出される揮発物の付着場所にならないようヒータで加熱するなどの処置を施すことが好ましい。吸引圧が小さすぎると昇華物を効果的に吸引できないため、適当な吸引圧とする必要がある。
流延ダイ4から溶融状態のフィルム状の樹脂を、キャストローラ5、冷却ローラ7、及び冷却ローラ8に順次密着させて搬送しながら冷却固化させ、樹脂フィルム17を得る。
図4に示す本発明の実施形態では、冷却ローラ8から剥離ローラ9によって剥離した冷却固化されたフィルム17は、縦延伸装置10に導入されて、搬送方向(MD方向)にローラ延伸される。
次いで、縦延伸後のフィルムは、横延伸装置(テンター)20に導き、そこでフィルム17を横方向(幅手方向)に延伸する。この横延伸により、フィルム中の分子が配向される。
延伸倍率は、それぞれ最終的には流延方向に1.0〜2.0倍、幅方向に1.01〜2.5倍の範囲とすることが好ましく、流延方向に1.01〜1.5倍、幅方向に1.05〜2.0倍の範囲で行うことが、必要とされるリターデーション値を得るためにより好ましい。
横延伸後、フィルム17の端部をスリッター19により製品となる幅にスリットして裁ち落とした後、エンボスリング53及びバックローラ52よりなるナール加工装置によりナール加工(エンボッシング加工)をフィルム両端部に施し、巻取り装置60によって巻き取ることにより、光学フィルム(元巻き)F中の貼り付きや、擦り傷の発生を防止する。
ナール加工の方法は、凸凹のパターンを側面に有する金属リングを加熱や加圧により加工することができる。なお、フィルム両端部のクリップの把持部分は通常、変形しており、フィルム製品として使用できないので、切除されて、原料として再利用される。
使用する巻取り機は、一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法などの巻き取り方法で巻き取ることができる。
なお、横延伸後のナール加工を施す工程、及びフィルム端部の厚膜部を切除するスリッター加工工程を巻き取り工程の前に行っても良い。
上記のように本発明の光学フィルムの製造方法を用いて製造された光学フィルムは、膜厚ムラがなく高品質であることから、液晶表示用部材、特に偏光板用保護フィルムに用いられ、偏光板に用いることができる。
次いで、本発明の光学フィルムの製造方法において、用いられる素材について順次説明する。
<熱可塑性樹脂>
本発明による光学フィルムの主材料である熱可塑性樹脂は、製造が容易であること、光学的に透明であること、位相差を制御し易いことなどが好ましい要件として挙げられる。
上記の性質を有する熱可塑性樹脂であれば、特に限定はないが、例えば、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロースエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、ナイロン等を挙げることができる。中でも、セルロースエステル系樹脂、アクリル系樹脂及び環状オレフィン系樹脂が好ましく、特にセルロースエステル系樹脂が好ましい。
本発明の製造方法で製造された光学フィルムを構成する材料は、これらの樹脂、必要により安定化剤、可塑剤、紫外線吸収剤、滑り剤としてのマット剤、リターデーション制御剤が含まれる。これらの材料は、目的とする光学フィルムの要求特性により適宜選択される。
〈セルロースエステル系樹脂〉
本発明に好ましく用いられるセルロースエステル系樹脂としては、特に限定されないが、エステル基は炭素数2〜22程度の直鎖又は分岐のカルボン酸エステルであることが好ましく、これらのカルボン酸は環を形成してもよく、芳香族カルボン酸のエステルでもよい。なお、これらのカルボン酸は置換基を有してもよい。セルロースエステル系樹脂としては、特に炭素数が6以下の低級脂肪酸エステルであることが好ましい。
好ましいセルロースエステル系樹脂として、具体的には、セルロースアセテートの他に、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートブチレートのようなアセチル基の他にプロピオネート基又はブチレート基が結合したセルロースの混合脂肪酸エステルを挙げることができる。この中で特にセルロースアセテートプロピオネートが好ましい。
本発明に用いられるセルロースアセテートプロピオネートとしては、下記式(i)及び(ii)の置換度を同時に満たすことが好ましい。
式(i):2.0≦X+Y≦2.9
式(ii):0≦X≦2.5
(式中、Xはアセチル基の置換度を示す。Yはプロピオニル基の置換度を示す。)
これらアシル基の置換度の測定方法はASTM−D817−96に準じて測定することができる。
総アシル基置換度が大きい方が寸法変化、ヘイズ、吸水性が良化する。
本発明に使用できるセルロースエステル系樹脂は目的に叶う光学特性を得るために置換度の異なる樹脂を混合して用いても良い。混合比としては10:90〜90:10(質量比)の範囲内が好ましい。
本発明に使用できるセルロースエステル系樹脂は樹脂単独で用いることができるが、他の二種類以上の樹脂と混合して用いることもできる。混合する樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル樹脂等が挙げられる。中でも、アクリル樹脂が好ましく使用される。
本発明に用いられるセルロースに混合することのできる他の樹脂の混合比としては、10:90〜90:10(質量比)の範囲内が好ましい。
本発明に用いられるセルロースに混合することのできる他の樹脂の数平均分子量は2000〜150000の範囲が好ましい。
本発明に用いられるセルロースエステル系樹脂の数平均分子量は、60000〜300000の範囲が、得られるフィルムの機械的強度が強く好ましい。更に70000〜200000のものが好ましく用いられる。
セルロースエステル系樹脂の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnの値は、1.4〜3.0の範囲であることが好ましい。
セルロースエステル系樹脂や混合する樹脂の重量平均分子量Mw、数平均分子量Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。測定条件の一例は以下のとおりであるが、これに限られることはなく、同等の測定方法を用いることも可能である。
溶媒:メチレンクロライド
カラム:Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用する)
カラム温度:25℃
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ:L6000(日立製作所(株)製)
流量:1.0ml/min
校正曲線:標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500の13サンプルによる校正曲線を使用する。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
本発明に用いられるセルロースエステル系樹脂の原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ、ケナフなどを挙げることができる。またそれらから得られたセルロースエステル系樹脂はそれぞれ任意の割合で混合使用することができる。
本発明に用いられるセルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロースエステル系樹脂は、公知の方法により製造することができる。具体的には特開平10−45804号公報に記載の方法を参考にして合成することができる。
本発明で用いられるセルロースエステル系樹脂はフィルムにしたときの輝点異物が少ないものであることが好ましい。輝点異物はセルロース樹脂に含まれるヒドロキシ基のエステル化部分が未反応であることがその原因の1つと考えられ、輝点異物の少ないセルロース樹脂を用いることと、加熱溶融したセルロース樹脂を濾過することによって異物を除去し、輝点異物を低減することができる。
〈アクリル系樹脂〉
本発明に用いられるアクリル樹脂には、メタクリル樹脂も含まれる。アクリル樹脂としては、特に制限されるものではないが、メチルメタクリレート単位が50〜99質量%、及びこれと共重合可能な他の単量体単位の総量が1〜50質量%からなるものが好ましい。
共重合可能な他の単量体としては、アルキル数の炭素数が2〜18のアルキルメタクリレート、アルキル数の炭素数が1〜18のアルキルアクリレート、アクリロイルモルホリンやN,N−ジメチルアクリルアミドなどのアミド基を有するビニルモノマー、エステル部分に炭素数5〜22の脂環式炭化水素基を有するメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステルや、アクリル酸、メタクリル酸等のα、β−不飽和酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和基含有二価カルボン酸、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα、β−不飽和ニトリル、無水マレイン酸、マレイミド、N−置換マレイミド、無水グルタル酸、等が挙げられ、これらは単独で、あるいは2種以上の単量体を併用して用いることができる。
また、本発明のアクリル樹脂としては、環構造を有してもよく、具体的には、ラクトン環構造、無水グルタル酸構造、グルタルイミド構造、N−置換マレイミド構造及び無水マレイン酸構造、ピラン環構造が挙げられる。
これらの中でも、共重合体の耐熱分解性や流動性の観点から、アルキル数の炭素数が1〜18のアルキルアクリレート、アクリロイルモルホリンやジメチルアクリルアミドなどのアミド基を有するビニルモノマー、エステル部分に炭素数5〜22の脂環式炭化水素基を有するメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステル、N−置換マレイミド構造、ピラン環構造等が好ましい。
アルキル数の炭素数が1〜18のアルキルアクリレートの具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどが挙げられ、好ましくは、メチルアクリレートが挙げられる。
アミド基を有するビニルモノマーの具体例としては、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、アクリロイルピロリジン、アクリロイルピペリジン、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−ブチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、メタクリロイルモルホリン、N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、メタクリロイルピロリジン、メタクリロイルピペリジン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、ビニルピロリドン等が挙げられる。好ましくは、アクリロイルモルホリン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、ビニルピロリドンが挙げられる。
エステル部分に炭素数5〜22の脂環式炭化水素基を有するメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステルの具体例としては、例えば、アクリル酸シクロペンチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸メチルシクロヘキシル、アクリル酸トリメチルシクロヘキシル、アクリル酸ノルボルニル、アクリル酸ノルボルニルメチル、アクリル酸シアノノルボルニル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸ボルニル、アクリル酸メンチル、アクリル酸フェンチル、アクリル酸アダマンチル、アクリル酸ジメチルアダマンチル、アクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−イル、アクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−4−メチル、アクリル酸シクロデシル、メタクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸メチルシクロヘキシル、メタクリル酸トリメチルシクロヘキシル、メタクリル酸ノルボルニル、メタクリル酸ノルボルニルメチル、メタクリル酸シアノノルボルニル、メタクリル酸フェニルノルボルニル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ボルニル、メタクリル酸メンチル、メタクリル酸フェンチル、メタクリル酸アダマンチル、メタクリル酸ジメチルアダマンチル、メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−イル、メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−4−メチル、メタクリル酸シクロデシル、メタクリル酸ジシクロペンタニル等が挙げられる。
好ましくは、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、メタクリル酸ジメチルアダマンチルなどが挙げられる。
N−置換マレイミドとしては、例えば、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−i−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−i−ブチルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(2−クロロフェニル)マレイミド、N−(4−クロロフェニル)マレイミド、N−(4−ブロモフェニル)フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(2−エチルフェニルマレイミド、N−(2−メトキシフェニル)マレイミド、N−(2,4,6−トリメチルフェニル)マレイミド、N−(4−ベンジルフェニル)マレイミド、N−(2,4,6−トリブロモフェニル)マレイミド等が挙げられる。
好ましくは、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどが挙げられる。
これらのモノマーは市販のものをそのまま使用することができる。
本発明で用いられるアクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は20000以上であることが好ましい。アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、20000〜1000000の範囲内であることが更に好ましく、50000〜600000の範囲内であることが特に好ましく、100000〜400000の範囲であることが最も好ましい。アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)の上限値は、製造上の観点から1000000以下とされることが好ましい形態である。
本発明に用いられるアクリル系樹脂の重量平均分子量は、前述のゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。
本発明に用いることのできるアクリル系樹脂の製造方法としては、懸濁重合、乳化重合、塊状重合、あるいは溶液重合等の公知の方法のいずれを用いても良い。ここで、重合開始剤としては、通常のパーオキサイド系及びアゾ系のものを用いることができ、また、レドックス系とすることもできる。
重合温度については、懸濁又は乳化重合では30〜100℃、塊状又は溶液重合では80〜160℃で実施しうる。得られた共重合体の還元粘度を制御するために、アルキルメルカプタン等を連鎖移動剤として用いて重合を実施することもできる。
上記のアクリル樹脂系以外にも、公知のアクリル系樹脂を用いることができ、例えば特開2008−9378号公報に記載のようなラクトン環単位を有するアクリル系樹脂は耐熱性が高く、好ましく用いられる。
(メタ)アクリル系樹脂の具体例として、例えば、デルペット60N、80N(旭化成ケミカルズ(株)製)、ダイヤナールBR52、BR80、BR83、BR85、BR88(三菱レイヨン(株)製)、KT75(電気化学工業(株)製)、特開2004−70296号公報に記載の分子内に環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂、分子内架橋や分子内環化反応により得られる高Tg(メタ)アクリル樹脂系が挙げられる。
〈環状オレフィン系樹脂〉
本発明に好ましく用いられる環状オレフィン系樹脂(シクロオレフィン系樹脂ともいう。)の具体的としては、好ましくはノルボルネン系樹脂である。環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称であり、例えば、特開平1−240517号公報、特開平3−14882号公報、特開平3−122137号公報等に記載されている樹脂が挙げられる。具体例としては、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレン等のα−オレフィンとその共重合体(代表的にはランダム共重合体)、及び、これらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体、並びに、それらの水素化物などが挙げられる。環状オレフィンの具体例としては、ノルボルネン系モノマーが挙げられる。
環状オレフィン系樹脂としては、種々の製品が市販されている。具体例としては、日本ゼオン株式会社製の商品名「ゼオネックス」、「ゼオノア」、JSR株式会社製の商品名「アートン」、TICONA社製の商品名「トーパス」、三井化学株式会社製の商品名「APEL」が挙げられる。
光学フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは50〜100質量%の範囲内、より好ましくは50〜99質量%の範囲内、さらに好ましくは60〜98質量%の範囲内、特に好ましくは70〜97質量%の範囲内である。上記熱可塑性樹脂の含有量が50質量%以上の場合、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性等が十分に発現できる。
〈可塑剤〉
可塑剤としては、特に限定しないが、好ましく用いられる可塑剤としては、リン酸エステル系では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等、グリコール酸エステル系では、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等を使用するのが好ましい。
また、多価アルコールエステル系可塑剤も好ましく、多価アルコールの例としては、例えば、アドニトール、アラビトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ヘキサントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン、ジグリセリン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ガラクチトール、グルコース、セロビオース、イノシトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることができる。特に、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが好ましい。
有機酸と3価以上の多価アルコールのエステルは、公知の方法により合成できる。有機酸と多価アルコールを、例えば、酸の存在下縮合させエステル化する方法、また、有機酸をあらかじめ酸クロライドあるいは酸無水物としておき、多価アルコールと反応させる方法、有機酸のフェニルエステルと多価アルコールを反応させる方法等があり、目的とするエステル化合物により、適宜、収率のよい方法を選択することが好ましい。
有機酸は特に限定されるものではないが、1価のカルボン酸又は1価のアルコールであることが好ましい。
この様にして得られる多価アルコールエステルの分子量には特に制限はないが、300から1500であることが好ましく、400から1000であることがさらに好ましい。分子量が大きい方が揮発し難くなるため好ましく、透湿性、セルロースエステルとの相溶性の点では小さい方が好ましい。その他の多価アルコールエステル系の可塑剤としては、具体的には特開2003−12823号公報の段落番号[0030]から[0033]記載の多価アルコールエステル系可塑剤が挙げられる。
上記の可塑剤は、必要に応じて、2種類以上を併用しても良い。この場合、リン酸エステル系の可塑剤の使用比率を50%以下とすることが、結果として、セルロースエステル系樹脂フィルムの加水分解を引き起こしにくく、耐久性に優れるため、好ましい。
リン酸エステル系の可塑剤比率は、少ない方がさらに好ましく、フタル酸エステル系やグリコール酸エステル系の可塑剤を主に使用することが、特に好ましい。
さらに、吸水率並びに水分率を特定の範囲内にするために好ましい可塑剤の添加量としては、熱可塑性樹脂に対する質量%で、3〜30質量%の範囲内であり、より好ましくは10〜25質量%、さらに好ましくは15〜25質量%の範囲内である。ここで、可塑剤の添加量が30質量%以内の場合、樹脂フィルムの機械強度・寸法安定性が良好となり好ましい。
〈酸化防止剤〉
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が適当であり、その具体例としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン及びトリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト等を挙げることができる。特に2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕及びトリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。これらの化合物の添加量は、その効果を得るために、熱可塑性樹脂に対し、質量割合で1ppm〜1.0%の範囲が好ましく、10〜1000ppmの範囲が特に好ましい。
〈酸掃去剤〉
酸掃去剤とは製造時から持ち込まれる熱可塑性樹脂中に残留する酸(プロトン酸)をトラップする役割を担う剤である。また、熱可塑性樹脂を溶融するとポリマー中の水分と熱により側鎖の加水分解が促進し、CAPならば酢酸やプロピオン酸が生成する。酸と化学的に結合できればよく、エポキシ、3級アミン、エーテル構造等を有する化合物が挙げられるが、これに限定されるものでない。
具体的には、米国特許第4,137,201号明細書に記載されている酸掃去剤としてのエポキシ化合物を含んでなるのが好ましい。このような酸掃去剤としてのエポキシ化合物は当該技術分野において既知であり、種々のポリグリコールのジグリシジルエーテル、特にポリグリコール1モル当たりに約8〜40モルのエチレンオキシドなどの縮合によって誘導されるポリグリコール、グリセロールのジグリシジルエーテルなど、金属エポキシ化合物(例えば、塩化ビニルポリマー組成物において、及び塩化ビニルポリマー組成物と共に、従来から利用されているもの)、エポキシ化エーテル縮合生成物、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(即ち、4,4′−ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン)、エポキシ化不飽和脂肪酸エステル(特に、2〜22この炭素原子の脂肪酸の4〜2個程度の炭素原子のアルキルのエステル(例えば、ブチルエポキシステアレート)など)、及び種々のエポキシ化長鎖脂肪酸トリグリセリドなど(例えば、エポキシ化大豆油などの組成物によって代表され、例示され得る、エポキシ化植物油及び他の不飽和天然油(これらは時としてエポキシ化天然グリセリド又は不飽和脂肪酸と称され、これらの脂肪酸は一般に12〜22個の炭素原子を含有している))が含まれる。
〈紫外線吸収剤〉
光学フィルムには、紫外線吸収剤を添加することが好ましい。ここで、紫外線吸収剤としては、液晶の劣化防止の点より波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の点より波長400nm以上の可視光の吸収が可及的に少ないものが、好ましく用いられる。
特に、波長370nmでの紫外線の透過率が10%以下であることが好ましく、より好ましくは該透過率が5%以下、更により好ましくは2%以下である。
用いる紫外線吸収剤としては、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられるが、これらに限定されない。
これら紫外線吸収剤の1種以上を用いていることが好ましく、異なる2種以上の紫外線吸収剤を含有してもよい。
好ましく用いられる紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤等である。不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤をセルロースエステル系樹脂フィルムに添加するという態様が特に好ましい。
紫外線吸収剤の添加方法は、アルコールやメチレンクロライド、ジオキソランなどの有機溶媒に紫外線吸収剤を溶解してからドープに添加するか、又は直接ドープ組成中に添加してもよい。無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤とセルロースエステル系樹脂中にデゾルバーやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
紫外線吸収剤の使用量は、熱可塑性樹脂に対する質量%で、0.1〜2.5質量%の範囲、好ましくは、0.5〜2.0質量%の範囲、より好ましくは0.8〜2.0質量%の範囲である。紫外線吸収剤の使用量が2.5質量%以内であると、光学フィルムの透明性が高く好ましい。
〈粘度低下剤〉
本発明において、溶融粘度を低減する目的として、水素結合性溶媒を添加することができる。水素結合性溶媒とは、J.N.イスラエルアチビリ著、「分子間力と表面力」(近藤保、大島広行訳、マグロウヒル出版、1991年)に記載されるように、電気的に陰性な原子(酸素、窒素、フッ素、塩素)と電気的に陰性な原子と共有結合した水素原子間に生ずる、水素原子媒介「結合」を生ずることができるような有機溶媒、すなわち、結合モーメントが大きく、かつ水素を含む結合、例えば、O−H(酸素水素結合)、N−H(窒素水素結合)、F−H(フッ素水素結合)を含むことで近接した分子同士が配列できるような有機溶媒をいう。これらは、セルロースエステル系樹脂の分子間水素結合よりもセルロースとの間で強い水素結合を形成する能力を有するもので、本発明で行う溶融流延製膜法においては、用いるセルロースエステル系樹脂単独のガラス転移温度よりも、水素結合性溶媒の添加によりセルロースエステル系樹脂組成物の溶融温度を低下することができる、又は同じ溶融温度においてセルロースエステル系樹脂よりも水素結合性溶媒を含むセルロース樹脂組成物の溶融粘度を低下することができる。
水素結合性溶媒としては、例えば、アルコール類:例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、2−エチルヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、ドデカノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ヘキシルセロソルブ、グリセリン等、ケトン類:アセトン、メチルエチルケトン等、カルボン酸類:例えば蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸等、エーテル類:例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等、ピロリドン類:例えば、N−メチルピロリドン等、アミン類:例えば、トリメチルアミン、ピリジン等、等を例示することができる。これら水素結合性溶媒は、単独で、又は2種以上混合して用いることができる。これらのうちでも、アルコール、ケトン、エーテル類が好ましく、特にメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、オクタノール、ドデカノール、エチレングリコール、グリセリン、アセトン、テトラヒドロフランが好ましい。さらに、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、グリセリン、アセトン、テトラヒドロフランのような水溶性溶媒が特に好ましい。ここで水溶性とは、水100gに対する溶解度が10g以上のものをいう。
〈リターデーション制御剤〉
本発明の光学フィルムの製造方法を用いて製造された光学フィルムは、リターデーションを制御するために、欧州特許第911,656A2号明細書に記載されているような、二つ以上の芳香族環を有する芳香族化合物をリターデーション制御剤として使用することもできる。また2種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。該芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。芳香族性ヘテロ環であることが特に好ましく、芳香族性ヘテロ環は一般に不飽和ヘテロ環である。中でも1,3,5−トリアジン環を有する化合物が特に好ましい。
〈微粒子〉
光学フィルムには、フィルム同士の張り付きを防止したり、滑り性を付与したりして、ハンドリングしやすくするために、マット剤として微粒子を添加してもよい。
微粒子の種類としては、無機化合物でも有機化合物でもよい。無機化合物の微粒子の例としては、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化錫等の微粒子が挙げられる。この中では、ケイ素原子を含有する化合物であることが好ましく、特に二酸化ケイ素微粒子が好ましい。二酸化ケイ素微粒子としては、例えばアエロジル株式会社製のAEROSIL−200、200V、300、R972、R972V、R974、R976、R976S、R202、R812、R805、OX50、TT600、RY50、RX50、NY50、NAX50、NA50H、NA50Y、NX90、RY200S、RY200、RX200、R8200、RA200H、RA200HS、NA200Y、R816、R104、RY300、RX300、R106などが挙げられる。これらのうち、分散性や粒径を制御する点では、AEROSIL−200V、R972Vが好ましい。
フィルム中での微粒子の平均粒径は、滑り性付与と透明性確保の観点から50nm〜2μmの範囲が良い。好ましくは、100〜1000nmの範囲、さらに好ましくは、100〜500nmの範囲である。フィルム中での平均粒径は、断面写真を撮影して観察することで確認できる。
微粒子の場合は、1次粒径、溶媒に分散した後の粒径、フィルムに添加された後の粒径が変化する場合が多く、重要なのは、最終的にフィルム中で微粒子が樹脂と複合し凝集して形成される粒径をコントロールすることである。
微粒子の添加量は、光学フィルム中に対して、0.02〜0.5質量%の範囲、好ましくは0.04〜0.3質量%の範囲である。
〈偏光板〉
本発明の光学フィルムの製造方法を用いて製造された光学フィルムは、偏光板の保護フィルムに好適である。偏光板は、例えばポリビニルアルコールフィルムの如き延伸配向可能なフィルムを、沃素のような二色性染料で処理して延伸した偏光子の表裏に、当該光学フィルムを保護フィルムとして貼合して構成される。
なお、当該光学フィルムには、ハードコート層、防眩層、反射防止層、防汚層、帯電防止層、導電層、光学異方性層、液晶層、配向層、粘着層、接着層、下引き層等の各種機能層を付与することができる。これらの機能層は塗布あるいは蒸着、スパッタ、プラズマCVD、大気圧プラズマ処理等の方法で設けることができる。
〈液晶表示装置〉
上記本発明の製造方法を用いて製造された光学フィルムを具備した偏光板を液晶セルの少なくとも一方の面に貼合した液晶表示装置とすることによって、表示ムラがなく視認性に優れた液晶表示装置を作製することができる。本発明の製造方法で製造された光学フィルムは反射型、透過型、半透過型LCDあるいはTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型(PVA型、MVA型)、IPS型等の各種駆動方式のLCDで好ましく用いられる。特に画面が30型以上の大画面の表示装置では、色ムラや波打ちムラが少なく、長時間の鑑賞でも目が疲れないという効果があった。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
実施例1
(ペレットの準備1)
下記に示す樹脂混合物1をV型混合機で30分混合した後、ストランドダイを取り付けた二軸押出し機(PCM30(株)池貝社製)を用いて窒素雰囲気下で230℃で溶融させ、長さ4mm、直径3mmの円筒形のペレットを作製しNo.1−1とした。得られたペレットのガラス転位点(Tg)は、135℃であった。また、この時のせん断速度は、25(/s)に設定した。
(樹脂混合物1)
セルロースアセテートプロピオネート(アセチル基置換度1.4、プロピオニル基置換度1.35、数平均分子量60000) 89質量%
トリメチロールプロパントリベンゾエート (可塑剤、融点85℃) 9質量%
IRGANOX XP 420/FD(酸化防止剤、BASFジャパン社製)
0.25質量%
TINUVIN 928(紫外線吸収剤、BASFジャパン社製、融点115℃)
1.6質量%
シーホスターKEP−30(マット剤(シリカ微粒子)、日本触媒株式会社製、平均粒径0.3μm) 0.15質量%
なお、セルロースアセテートプロピオネートのアセチル基、プロピオニル基等のアシル基の置換度の測定は、ASTM−D817−96に規定の方法に準じて測定した。
(ペレットの準備2)
下記に示す樹脂混合物2をV型混合機で30分混合した後、ストランドダイを取り付けた二軸押出し機を用いて窒素雰囲気下で230℃で溶融し、長さ4mm、直径3mmの円筒形のペレットを作製しNo.1−2とした。得られたペレットのガラス転位点(Tg)は、135℃であった。
(樹脂混合物2)
アクリル系樹脂(樹脂にラクトン環構造を有するアクリル系重合体) 89質量%
トリメチロールプロパントリベンゾエート (可塑剤、融点85℃) 9質量%
IRGANOX XP 420/FD(酸化防止剤、BASFジャパン社製)
0.25質量%
TINUVIN 928(紫外線吸収剤、BASFジャパン社製、融点115℃)
1.6質量%
シーホスターKEP−30(マット剤(シリカ微粒子)、日本触媒株式会社製、平均粒径0.3μm) 0.15質量%
(アクリル系樹脂の合成)
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を付した30L反応釜に、8000gのメタクリル酸メチル(MMA)、2000gの2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)、10000gの4−メチル−2−ペンタノン(メチルイソブチルケトン、MIBK)、5gのn−ドデシルメルカプタンを仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温し、還流したところで、開始剤として5.0gのターシャリーブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(アクゾ化薬製、商品名:カヤカルボンBic−75)を添加すると同時に、10.0gのターシャリーブチルパーオキシイソプロピルカーボネートと230gのMIBKからなる溶液を2時間かけて滴下しながら、還流下(約105〜120℃)で溶液重合を行い、さらに4時間かけて熟成を行った。
得られた重合体溶液に、30gのリン酸ステアリル/リン酸ジステアリル混合物(堺化学社製、商品名:PhoslexA−18)を加え、還流下(約90〜120℃)で5時間、環化縮合反応を行った。
(ペレットの準備3)
下記に示す樹脂混合物3をV型混合機で30分混合した後、ストランドダイを取り付けた二軸押出し機を用いて窒素雰囲気下で235℃で溶融し、長さ4mm、直径3mmの円筒形のペレットを作製しNo.1−3とした。得られたペレットのガラス転位点(Tg)は、131℃であった。
(樹脂混合物3)
シクロオレフィン系樹脂(日本ゼオン(株)、ゼオノア1420R、ガラス転移温度140℃) 89質量%
トリメチロールプロパントリベンゾエート(可塑剤、融点85℃) 9質量%
IRGANOX XP 420/FD(酸化防止剤、BASFジャパン社製)
0.25質量%
TINUVIN 928(紫外線吸収剤、BASFジャパン社製、融点115℃)
1.6質量%
シーホスターKEP−30(マット剤(シリカ微粒子)、日本触媒株式会社製、平均粒径0.3μm) 0.15質量%
<光学フィルム101の製造:本発明>
準備したペレットNo.1−1を、100℃で5時間乾燥させ、含水率100ppmとし、図4に示すフィルム製膜装置を使用して下記に示す条件で光学フィルムを製造した。その際、エアギャップを120mmに調整し、かつ図2の(a)に示す様に、流延ダイAに金属製の部材Eを装着し、流延ダイの位置及び部材Eの厚さを調整して、当該流延ダイと当該キャストローラとの最短距離D1と当該流延ダイと当該タッチローラとの最短距離D2をそれぞれ3mm、D1/D2=1.0とした。
次いで下記溶融押し出し条件で、ペレットNo.1−1の溶融物を押し出した後剥離し、形成したウェブを延伸、乾燥した後延伸後のフィルムを幅2000mmになるようにスリッターでスリットした後、回収部で巻き取り、幅2000mm、膜厚40μm、長さ5000mの光学フィルムを製造し、光学フィルム試料101とした。
(溶融押出し条件)
単軸押出し機:スクリュー径90mm、L/D=30(L:スクリュー長を示す)
キャストローラ5:表面温度100℃、表面粗さは最大高さRyで0.1μm以下のステンレス鋼、ローラ径は400mmに設定した。
タッチローラ6:金属外筒、内筒、空隙部を備えている二重筒構造のものを用いた。金属外筒の材質は、ステンレスで、表面粗さは、最大高さRyで0.05μm以下とし、肉厚は、3mmとした。内筒は、アルミニウムで肉厚は、30mmとした。金属外筒と内筒との空隙部は5mmとした。この空隙部にオイルを流し、金属外筒の表面の温度を120℃にした。ローラ径は200mmに設定した。
押出し環境:材料供給口付近より窒素ガスを封入して、押出し機内を窒素雰囲気に保った。
押出し温度:240℃
流延ダイ:コートハンガータイプで、内壁にハードクロムメッキを施しており、面粗度0.1Sの鏡面に仕上げられている。流延ダイのリップ間隙は2mmに設定した。
タッチローラの押圧(線圧):20N/mm
第2冷却ローラの表面温度は30℃
フィルムの搬送速度:30m/min
TD延伸装置:ピンテンター
MD延伸率:1.5倍
TD延伸率:1.5倍
巻き取り時の張力:150N/m
<光学フィルム102〜121の作製:本発明>
光学フィルム101の作製において、ペレットの種類をNo.1−1に加えて、No.1−2及びNo.1−3を用い、エアギャップの長さを表1記載のように調整しながら、当該流延ダイAに金属製の部材Eを装着し、流延ダイの位置と高さ及び部材Eの厚さを調整して、当該流延ダイと当該キャストローラとの最短距離D1と当該流延ダイと当該タッチローラとの最短距離D2を表1のように変化させた以外は同様にして、光学フィルム102〜121を作製した。なお、それぞれのローラ径は上記間隙の距離を調整する際に、適宜変更した。
<光学フィルム122〜124、127〜129、及び132〜134の製造:比較例>
光学フィルム101の作製において部材を装着せず、エアギャップの長さを表1記載のように調整しながら、当該流延ダイと当該キャストローラとの最短距離D1と当該流延ダイと当該タッチローラとの最短距離D2を表1に記載の距離に調整した以外は同様にして、樹脂ペレット違いの比較例の光学フィルム122〜124、127〜129、及び132〜134を作製した。
<光学フィルム125、126、130、131、135、及び136の製造:比較例>
光学フィルム101の作製において、エアギャップの長さを表1記載のように調整しながら、当該流延ダイAに金属製の部材Eを装着し、流延ダイの位置と高さ及び部材Eの厚さを調整して、当該流延ダイと当該キャストローラとの最短距離D1と当該流延ダイと当該タッチローラとの最短距離D2を、表1のように変化させた以外は同様にして、樹脂ペレット違いの比較例の光学フィルム125、126、130、131、135、及び136を作製した。
<評価>
(液晶表示装置の表示ムラの評価)
〈偏光板の作製〉
厚さ120μmの長尺ロール状ポリビニルアルコールフィルムを沃素1質量部、ホウ酸4質量部を含む水溶液100質量部に浸漬し、50℃で6倍に搬送方向に延伸して偏光子を作製した。
上記作製した光学フィルム101〜136を、偏光子の両側に貼合した。セルロースエステル樹脂を用いた光学フィルムは、アルカリ鹸化処理後、完全鹸化型ポリビニルアルコール5質量%水溶液を接着剤として用いて貼合した。またアクリル系樹脂やシクロオレフィン系樹脂を用いた光学フィルムは、下記の活性エネルギー線硬化性接着剤液(カチオン型)を用いて貼合し、紫外線照射を行って接着剤を硬化して偏光板を作製した。
(活性エネルギー線硬化性接着剤液の調製:カチオン重合型)
下記の各成分を混合した後、脱泡して、活性エネルギー線硬化性接着剤液を調製した。なお、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェートは、50%プロピレンカーボネート溶液として配合し、下記にはトリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェートの固形分量を表示した。
3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート 45質量部
エポリードGT−301(ダイセル化学社製の脂環式エポキシ樹脂) 40質量部
1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル 15質量部
トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート 2.3質量部
9,10−ジブトキシアントラセン 0.1質量部
1,4−ジエトキシナフタレン 2.0質量部
〈液晶表示装置の作製〉
市販の37型TFT型カラー液晶ディスプレーブラビア(ソニー社製)の視認側の偏光板を注意深く剥離し、上記作製した偏光板を、偏光方向を合わせて張り付けて、液晶表示装置を作製した。
〈表示装置の表示ムラの評価方法〉
この様にして作製した各液晶表示装置について、目視にて、正面及び斜めから見たときの白っぽく見えるムラの有り無しにつき下記評価基準で観察した。
◎:ムラ全く見えず
○:製品としては使えるレベルのムラが散見される
△:製品としては使えるレベルのムラが見られる
×:製品として影響を及ぼすムラが認められる
得られた結果を表1に示す。
Figure 0005880346
表1に示した結果から、比較例に対して、本発明の光学フィルムの製造方法によって製造された光学フィルム101〜121は、流延ダイとキャストローラとの最短距離D1と流延ダイとタッチローラとの最短距離D2がそれぞれ3〜30mmの範囲内であり、かつ当該最短距離の比D1/D2の値が0.5〜2.0の範囲内に調整されることによって、外乱(風)によるリボンの安定性が向上し、液晶表示装置の表示ムラの問題が改善されることが確認された。
実施例2
間隙調整手段として、エアギャップの長さを表2記載のように調整しながら、図2(b)で示すように、流延ダイAを鉛直方向から±10°の範囲内で傾斜させた以外は、本発明の光学フィルム101〜121と同様に流延ダイとキャストローラとの最短距離D1と流延ダイとタッチローラとの最短距離D2を変化させて光学フィルムを作製し、実施例1と同様に表示ムラの評価をして表2に示した。
Figure 0005880346
表2に示した結果から、流延ダイを±10°の範囲内で傾斜させて上記D1、D2及びその比D1/D2の値を、本発明の光学フィルムの製造方法の範囲内に調整することによって、外乱(風)によるリボンの安定性が向上し、液晶表示装置の表示ムラの問題が実施例1を再現し改善されることが確認された。
実施例3
間隙調整手段として、エアギャップの長さを表3記載のように調整しながら、図3(a)で示すようにタッチローラのキャストローラに対する高さを変えた以外は、本発明の光学フィルム101〜121と同様にD1、D2の値を変化させて光学フィルムを作製し、実施例1と同様に表示ムラの評価をして表3に示した。
Figure 0005880346
表3に示した結果から、タッチローラのキャストローラに対する高さを変えて、上記D1、D2及びその比D1/D2の値を、本発明の光学フィルムの製造方法の範囲内に調整することによって、外乱(風)によるリボンの安定性が向上し、液晶表示装置の表示ムラの問題が実施例1を再現し改善されることが確認された。
実施例4
間隙調整手段として、エアギャップの長さを表4記載のように調整しながら、図3(b)で示すように流延ダイAを非対称形状にした以外は、本発明の光学フィルム101〜121と同様にD1、D2の値を変化させて膜厚30μmの光学フィルムを作製し、実施例1と同様に表示ムラの評価をして表4に示した。
Figure 0005880346
表4に示した結果から、流延ダイ非対称形状にして上記D1、D2及びその比D1/D2の値を、本発明の光学フィルムの製造方法の範囲内に調整することによって、外乱(風)によるリボンの安定性が向上し、液晶表示装置の表示ムラの問題が実施例1を再現し改善されることが確認された。
A 流延ダイ
B キャストローラ
C タッチローラ
E 部材
P フィルムとキャストローラの接触点
r リボン
1 押出し機
2 フィルタ
3 スタチックミキサー
4 流延ダイ
5 キャストローラ、回転支持体、冷却ローラ
6 タッチローラ、挟圧回転体
7、8 冷却ローラ
9 剥離ローラ
10 縦延伸装置
17 フィルム
19 スリッター
20 横延伸装置
52 バックローラ
53 エンボスリング
60 巻取り装置

Claims (13)

  1. 熱可塑性樹脂を含む溶融物を流延ダイからキャストローラの表面にフィルム状に押し出す流延工程と、前記流延工程で押し出されたフィルム状の溶融物を、前記キャストローラとタッチローラとの挟圧部で挟圧する挟圧工程とを有する光学フィルムの製造方法であって、間隙調整手段によって、当該流延ダイと当該キャストローラとの最短距離D1と当該流延ダイと当該タッチローラとの最短距離D2それぞれ3〜30mmの範囲内とし、かつ当該最短距離の比D1/D2の値0.5〜2.0の範囲内とすることを特徴とする光学フィルムの製造方法。
  2. 前記間隙調整手段が、前記流延ダイと前記キャストローラ、又は前記流延ダイと前記タッチローラとの少なくとも一方の間隙に部材を装着して調整する手段であることを特徴とする請求項に記載の光学フィルムの製造方法。
  3. 前記間隙調整手段が、前記流延ダイを鉛直方向から±10°の範囲内で傾斜して調整する手段であることを特徴とする請求項に記載の光学フィルムの製造方法。
  4. 前記間隙調整手段が、前記キャストローラと前記タッチローラの少なくとも一方の高さを可変して調整する手段であることを特徴とする請求項に記載の光学フィルムの製造方法
  5. 前記間隙調整手段が、前記キャストローラ側と前記タッチローラ側で非対称な形状を持つ流延ダイを用いる手段であることを特徴とする請求項に記載した光学フィルムの製造方法。
  6. 前記タッチローラが、弾性タッチローラであることを特徴とする請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
  7. 前記キャストローラの直径が、前記タッチローラの直径より1.1倍以上大きいことを特徴とする請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
  8. 前記熱可塑性樹脂が、セルロースエステル系樹脂、アクリル系樹脂及び環状オレフィン系樹脂から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
  9. 請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法に用いる光学フィルムの製造装置であって、前記流延ダイと前記キャストローラとの最短距離D1と前記流延ダイと前記タッチローラとの最短距離D2をそれぞれ3〜30mmの範囲内とし、かつ当該最短距離の比D1/D2の値を0.5〜2.0の範囲内とする間隙調整手段を具備していることを特徴とする光学フィルムの製造装置。
  10. 前記間隙調整手段として、前記流延ダイと前記キャストローラ、又は前記流延ダイと前記タッチローラとの少なくとも一方の間隙に部材が装着されていることを特徴とする請求項に記載の光学フィルムの製造装置。
  11. 前記間隙調整手段として、前記流延ダイが鉛直方向から±10°の範囲内で傾斜していることを特徴とする請求項に記載の光学フィルムの製造装置。
  12. 前記間隙調整手段として、前記キャストローラと前記タッチローラの少なくとも一方の高さが可変であることを特徴とする請求項に記載の光学フィルムの製造装置。
  13. 前記間隙調整手段として、前記キャストローラ側と前記タッチローラ側で非対称な形状を持つ流延ダイを具備していることを特徴とする請求項に記載した光学フィルムの製造装置。
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