JP5520797B2 - 押出樹脂板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、押出樹脂板の製造方法に関し、より詳細には、加熱後の樹脂板の反り変形を抑制し得る押出樹脂板の製造方法に関する。
熱可塑性樹脂からなる押出樹脂板は、照明のカバーや看板、建材や電気製品、携帯電話や液晶テレビのような光学用途など、広い範囲で利用されている。一般に、熱可塑性樹脂からなる押出樹脂板を製造する場合、ダイから押し出された溶融樹脂を2本の冷却ロールに巻きかけ、これらのロール間に挟み込んで冷却しながら板状に成形する。冷却の際には、徐々に冷却を行うために、2本の冷却ロール以降に3本またはそれ以上の冷却ロールを順次セットして、できるだけ押出樹脂板に歪みが残らないような工夫もなされている。
歪みやムラが抑制された平滑な押出樹脂板を製造する方法としては、特許文献1および2には、ダイから押し出される溶融熱可塑性樹脂を、第1ロールと第2ロールとの間に挟み込み、第2ロールに巻き掛けた状態で、さらに第2ロールと第3ロールとの間に挟み込んで成形・冷却して、熱可塑性樹脂からなる押出樹脂板を製造することが開示されている。
このような熱可塑性樹脂からなる押出樹脂板は、上記のように照明のカバーや看板、建材や電気製品、携帯電話や液晶テレビのような光学用途など、熱に曝されるような高温環境下で使用されることが多い。
しかし、高温環境下で使用し続けると、特許文献1および2に開示されるような押出樹脂板は反り変形を生じ、使用に支障をきたす場合がある。また、特許文献1および2で得られる押出樹脂板には、光学用途などに適合させる上で、表面に荒れなどのない良好な外観を有することが求められる。
特開2009−137206号公報 特開2009−143019号公報
本発明の課題は、外観に優れ、かつ高温環境下での使用に対しても反り変形が抑制される押出樹脂板の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下の構成からなる解決手段を見出し、本発明を完成するに至った。
(1)熱可塑性樹脂を押出機で溶融混練して、ダイから押出成形し、少なくとも3本の冷却ロールで冷却して押出樹脂板を得る押出樹脂板の製造方法であって、
少なくとも3本の冷却ロールにおいて、最終冷却ロールを第3冷却ロール、最終冷却ロールより1つ手前の冷却ロールを第2冷却ロール、および最終冷却ロールより2つ手前の冷却ロールを第1冷却ロールとする場合に、第3冷却ロールの回転軸と第2冷却ロールの回転軸とを結ぶ直線L1が、第2冷却ロールの回転軸と第1冷却ロールの回転軸とを結ぶ直線L2に対して、溶融樹脂が第3冷却ロールに巻きかかる側と反対側の方向に3〜25度の傾きを有し、
前記溶融樹脂を、第3冷却ロールと第2冷却ロールとの間に挟み込み、冷却ロール間で圧着して成形することを特徴とする押出樹脂板の製造方法。
(2)前記L1が前記L2に対して、溶融樹脂が第3冷却ロールに巻きかかる側と反対側の方向に5〜25度の傾きを有する(1)に記載の製造方法。
(3)前記熱可塑性樹脂が、ポリカーボネート樹脂またはメタクリル樹脂である(1)または(2)に記載の製造方法。
本発明に係る押出樹脂板の製造方法によれば、少なくとも3本の冷却ロールのうち、溶融樹脂を最後に接触させる最終冷却ロール(第3冷却ロール)が、特定の要件を満たすように配置されることにより、外観に優れ、かつ高温環境下での使用に対しても反り変形が抑制される押出樹脂板が得られるという効果を奏する。
(a)は、本発明の一実施態様に係る押出樹脂板の製造方法を示す概略説明図であり、(b)は、(a)において破線で囲んだ部分の拡大図である。 本発明の他の実施態様に係る押出樹脂板の製造方法において、冷却ロールを4本用いた場合の、各冷却ロールの配置を示す模式図である。 押出樹脂板の反りを示す模式図である。
本発明の樹脂板の製造方法は、熱可塑性樹脂を押出機で溶融混練して、ダイから押出成形し、少なくとも3本の冷却ロールで冷却して押出樹脂板を得る工程(押出成形工程)を含む。
押出成形工程では、まず、熱可塑性樹脂が押出機で溶融混練される。熱可塑性樹脂としては、溶融加工可能な樹脂であれば特に限定されず、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、直鎖低密度ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂、セルロースアセテート樹脂、エチレン−ビニルアセテート樹脂、アクリル−アクリロニトリル−スチレン樹脂、アクリル−塩素化ポリエチレン樹脂、エチレン−ビニルアルコール樹脂、フッ素樹脂、メタクリル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、メチルペンテン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、脂環構造含有エチレン性不飽和単量体単位を含有する樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂などの汎用またはエンジニアリングプラスチックの他に、ポリ塩化ビニル系エラストマー、塩素化ポリエチレン、エチレン−アクリル酸エチル樹脂、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー、アイオノマー樹脂、スチレン・ブタジエンブロックポリマー、エチレン−プロピレンゴム、ポリブタジエン樹脂、アクリル系ゴムなどのゴム状重合体が挙げられ、これらのうち1種を用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
これらの中でも光学特性が良好であることから、ポリカーボネート樹脂、メタクリル樹脂、スチレン系樹脂、および脂環構造含有エチレン性不飽和単量体単位を含有する樹脂から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ポリカーボネート樹脂およびメタクリル樹脂がより好ましい。また、熱可塑性樹脂は、少なくとも2種の熱可塑性樹脂を積層して構成してもよい。すなわち本発明では、2台以上の押出機を用いて、2種以上の熱可塑性樹脂をそれぞれ溶融混練して共押出し、2層以上の熱可塑性樹脂層を有する積層構成としてもよい。この場合には、積層される各々の熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂が、ポリカーボネート樹脂、メタクリル樹脂、スチレン系樹脂、および脂環構造含有エチレン性不飽和単量体単位を含有する樹脂から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。
ポリカーボネート樹脂としては、二価フェノールとカーボネート前駆体とを界面重縮合法、溶融エステル交換法で反応させて得られるものの他、カーボネートプレポリマーを固相エステル交換法により重合させたもの、または環状カーボネート化合物を開環重合法により重合させて得られるものなどが挙げられる。
二価フェノールとしては、例えばハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3−イソプロピル−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−フェニル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}フルオレン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−o−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルエステル等が挙げられ、これらは単独または2種以上を混合して使用してもよい。
中でもビスフェノールA、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンおよびα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンからなる群より選ばれた少なくとも1種のビスフェノールより得られる単独重合体または共重合体が好ましく、特に、ビスフェノールAの単独重合体、および1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンとビスフェノールA、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパンおよびα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンから選択される少なくとも1種の二価フェノールとの共重合体が好ましい。
カーボネート前駆体としては、例えばカルボニルハライド、カーボネートエステルまたはハロホルメートなどが使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメートなどが挙げられる。
メタクリル樹脂とは、単量体単位としてメタクリル酸メチル単位を50重量%以上含む重合体である。メタクリル酸メチル単位の含有量は、好ましくは70重量%以上であり、100重量%であってもよい。メタクリル酸メチル単位が100重量%の重合体は、メタクリル酸メチルを単独で重合させて得られるメタクリル酸メチル単独重合体である。
メタクリル樹脂は、メタクリル酸メチルと、該メタクリル酸メチルと共重合し得る他の単量体との共重合体であってもよい。メタクリル酸メチルと共重合し得る他の単量体としては、例えばメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステル類などが挙げられる。かかるメタクリル酸エステル類としては、例えばメタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどが挙げられる。また、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチルなどのアクリル酸エステル類、メタクリル酸、アクリル酸などの不飽和酸類、クロロスチレン、ブロモスチレン等のハロゲン化スチレン類、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなどのアルキルスチレン類などの置換スチレン類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、無水マレイン酸、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなども挙げられる。かかる単量体は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、メタクリル樹脂は、ゴム状重合体を添加して樹脂組成物としてもよい。これにより、成形時に割れ難くなるので、収率を向上させることができる。ゴム状重合体としては、例えばアクリル系多層構造重合体、5〜80重量部のゴム状重合体にエチレン性不飽和単量体を95〜20重量部の割合でグラフト重合させたグラフト共重合体などが挙げられる。
アクリル系多層構造重合体としては、例えばゴム弾性の層またはエラストマーの層を20〜60重量部の割合で内在し、最外に硬質層を有するものが挙げられ、最内層として硬質層をさらに有していてもよい。
ゴム弾性の層またはエラストマーの層は、ガラス転移点(Tg)が25℃未満のアクリル系重合体の層であり、例えば低級アルキルアクリレートおよびメタクリレート、低級アルコキシアクリレート、シアノエチルアクリレート、アクリルアミド、ヒドロキシ低級アルキルアクリレート、ヒドロキシ低級メタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸などのモノエチレン性不飽和単量体の1種以上をアリルメタクリレートや多官能単量体などで架橋させた重合体からなる。
硬質層は、Tgが25℃以上のアクリル系重合体の層であり、炭素数1〜4個のアルキル基を有するアルキルメタクリレートを単独または主成分とし、他のアルキルメタクリレートやアルキルアクリレート、スチレン、置換スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの共重合可能な単官能単量体の重合体からなり、さらに多官能単量体を加えて重合させた架橋重合体でもよい。上述したゴム状重合体としては、例えば特公昭55−27576号公報、特開平6−80739号公報、特開昭49−23292号公報などに記載されているものを用いることができる。
5〜80重量部のゴム状重合体にエチレン性不飽和単量体を95〜20重量部の割合でグラフト重合させたグラフト共重合体において、前記ゴム状重合体としては、例えばポリブタジエンゴム、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体ゴム、スチレン/ブタジエン共重合体ゴム等のジエン系ゴム、ポリブチルアクリレート、ポリプロピルアクリレート、ポリ−2−エチルヘキシルアクリレート等のアクリル系ゴム、およびエチレン/プロピレン/非共役ジエン系ゴム等が挙げられる。また、前記エチレン性単量体としては、例えばスチレン、アクリロニトリル、アルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、アクリル系不飽和単量体が好ましく、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。上述したグラフト共重合体としては、例えば特開昭55−147514号公報、特公昭47−9740号公報などに記載されているものを用いることができる。
ゴム状重合体の添加量は、メタクリル酸メチル系樹脂100重量部に対して、0〜100重量部であるのが好ましく、3〜50重量部であるのがより好ましい。ゴム状重合体の添加量があまり多いと、押出板の剛性が低下するので好ましくない。
スチレン系樹脂とは、スチレン系単官能単量体単位を主成分とする重合体であり、具体的には、スチレン系単官能単量体単位を50重量%以上含む重合体である。スチレン系樹脂は、スチレン系単官能単量体の単独重合体であってもよいし、スチレン系単官能単量体およびこれと共重合可能な単官能単量体の共重合体であってもよい。
スチレン系単官能単量体としては、例えばスチレンの他、置換スチレンなどが挙げられる。置換スチレンとしては、例えばクロロスチレン、ブロモスチレンなどのハロゲン化スチレン類、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなどのアルキルスチレン類などが挙げられる。すなわちスチレン系単官能単量体は、スチレン骨格を有し、ラジカル重合可能な二重結合を分子内に1個有する化合物である。
スチレン系単官能単量体と共重合可能な単官能単量体とは、ラジカル重合可能な二重結合を分子内に1個有し、この二重結合でスチレン系単官能単量体と共重合可能な化合物であって、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどのメタクリル酸エステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチルなどのアクリル酸エステル類、アクリロニトリルなどが挙げられ、メタクリル酸メチルなどのメタクリル酸エステル類が好ましく用いられ、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。
スチレン系樹脂は、ゴム状重合体を添加して樹脂組成物としてもよい。ゴム状重合体としては、上述したメタクリル酸メチル系樹脂へ添加することができるゴム状重合体と同じものを用いることができる。ゴム状重合体の添加量は、スチレン系樹脂100重量部に対して、0〜100重量部であるのが好ましく、3〜50重量部であるのがより好ましい。ゴム状重合体の添加量があまり多いと、押出板の剛性が低下するので好ましくない。
脂環構造含有エチレン性不飽和単量体単位を含有する樹脂としては、例えばノルボルネン系重合体、ビニル脂環式炭化水素系重合体などが挙げられる。当該樹脂は、重合体の繰り返し単位中に脂環式構造を含有するのが特徴である。脂環式構造は、主鎖および/または側鎖のいずれに有していてもよいが、光透過性の観点からは、主鎖に脂環式構造を含有するものが好ましい。
脂環構造含有エチレン性不飽和単量体単位を含有する樹脂の具体例としては、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素系重合体、およびこれらの水素添加物などが挙げられる。これらの中でも、光透過性の観点から、ノルボルネン系重合体水素添加物、ビニル脂環式炭化水素系重合体またはその水素化物等が好ましく、ノルボルネン系重合体水素添加物がより好ましい。
なお、熱可塑性樹脂には、目的に応じて、例えば光拡散剤や艶消し剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、耐衝撃剤、高分子型帯電防止剤、酸化防止剤、難燃剤、滑剤、染料、顔料などを添加してもよい。
熱可塑性樹脂を溶融混練する温度は、特に限定されず、用いる熱可塑性樹脂の融点を考慮して適宜設定すればよい。
押出機で溶融混練された溶融樹脂は、ダイから押出成形され、少なくとも3本の冷却ロールで冷却して押出樹脂板に成形される。以下、図1を参照して、本発明に係る押出樹脂板の製造方法を詳細に説明する。
図1(a)は、本発明の一実施態様に係る押出樹脂板の製造方法を示す概略説明図である。図1(a)に示すように、熱可塑性樹脂を押出機1、2に投入して、上述のように溶融混練を行う。なお、図1では、2台の押出機を使用しているが、押出機の数は、1台でもよく3台以上でもよく、樹脂層の積層数や用いる樹脂の種類によって、適宜変更すればよい。
溶融混練された樹脂は、ダイ3に供給され、ダイ3から板状の溶融樹脂4として押出される。図1に示すように、2台の押出機を用いた場合は、押出機1、2それぞれにおいて熱可塑性樹脂が溶融混練され、ダイ3から共押出されて積層一体化された板状の溶融樹脂4が得られる。
押出機1、2としては、例えば、一軸押出機、二軸押出機などが挙げられる。ダイ3としては、通常、Tダイが用いられる。熱可塑性樹脂を単層で押出する場合は、単層のTダイが用いられる。2種以上の熱可塑性樹脂を積層して共押出する場合は、フィードブロックとTダイとを組み合わせて用いたり、マルチマニホールドダイなどが用いられる。
ダイ3から押出された溶融樹脂4は、冷却ユニット5で成形・冷却される。冷却ユニット5は、少なくとも3本の冷却ロール51、52、53を備えている。
本発明に係る押出樹脂板の製造方法では、冷却ユニットにおいて、少なくとも3本の冷却ロール51、52、53の全てが、ほぼ水平方向に対向配置されるのではなく、図1(a)に示すように、溶融樹脂4を最後に接触させる最終冷却ロール(第3冷却ロール)53が、最終冷却ロールより1つ手前の冷却ロール(第2冷却ロール)52および最終冷却ロールより2つ手前の冷却ロール(第1冷却ロール)51とずれて配置されている。すなわち、少なくとも3本の冷却ロール51、52、53において、第3冷却ロール53の回転軸53Aと第2冷却ロール52の回転軸52Aとを結ぶ直線L1が、第2冷却ロール52の回転軸52Aと第1冷却ロール51の回転軸51Aとを結ぶ直線L2に対して、溶融樹脂4が第3冷却ロール53に巻きかかる側と反対側の方向に3〜25度の傾きを有する。
例えば、図1(a)では、ダイ3から押出された溶融樹脂4は、第1冷却ロール51と第2冷却ロール52との間に供給され、第2冷却ロール52の下部を約半周して、第2冷却ロール52と第3冷却ロール53との間に供給される。したがって、図1(a)では、第2冷却ロール52と第3冷却ロール53との間に供給される溶融樹脂4は、第3冷却ロール53の上部に巻きかかるため、第3冷却ロール53は、溶融樹脂4が第3冷却ロール53に巻きかかる上部と反対側の方向、すなわち、直線L1と直線L2とのなす角θが3〜25度となるように、第1冷却ロール51および第2冷却ロール52よりも下部に配置される。
本発明に係る押出樹脂板の製造方法では、図1(b)に示すように、直線L1とL2とのなす角θが、3〜25度であり、好ましくは5〜25度である。この角θが3〜25度となるように、第3冷却ロール53が配置されることによって、溶融樹脂4へ内部応力が最も蓄積されやすい第2冷却ロール52と溶融樹脂4との接触時間が短縮され、溶融樹脂4への内部応力の蓄積が抑制されるため、外観に優れ、かつ高温環境下での使用に対しても反り変形が抑制される押出樹脂板が得られる。
溶融樹脂4は、第3冷却ロール53と第2冷却ロール52との間に挟み込まれて、目標厚みの間隙をもって圧着される。このように圧着されることにより、表面荒れが抑制され、外観が良好な押出樹脂板が得られる。樹脂板6の厚みは特に限定されず、例えば、樹脂板6は、好ましくは300〜2000μm、より好ましくは500〜1200μmである。
これらの冷却ロール51、52、53は、少なくとも1つのロールがモーターなどの回転駆動手段に接続されており、各ロールが所定の周速度で回転するように構成されている。
冷却ロール51、52、53としては、特に限定されず、従来の押出成形で使用されている通常の冷却ロールを採用することができる。具体例としては、ドリルドロール、スパイラルロール、金属弾性ロール、ゴムロールなどが挙げられる。冷却ロール51、52、53の表面状態は、例えば鏡面であってもよく、模様や凹凸などを有していてもよい。
冷却ロール51、52、53の表面温度(Tr)は、熱可塑性樹脂の熱変形温度(Th)に対して、好ましくは(Th−20℃)≦Tr≦(Th+20℃)、より好ましくは(Th−15℃)≦Tr≦(Th+10℃)、さらに好ましくは(Th−10℃)≦Tr≦(Th+5℃)の範囲に設定される。表面温度(Tr)が(Th−20℃)よりも低い温度になると、ロールから樹脂が剥がれやすくなり、タッチミスが発生しやすくなる傾向にある。また、表面温度(Tr)が(Th+20℃)よりも高い温度になると、ロールから樹脂が均一に剥がれ難くなり、タックマークと呼ばれるロール剥離時の衝撃による幅方向の線が発生しやすくなる傾向にある。
なお、熱可塑性樹脂の熱変形温度(Th)としては、特に限定されないが、通常、60〜200℃程度である。熱可塑性樹脂の熱変形温度(Th)は、ASTM D−648に準拠して測定される温度である。また、押出板を2種以上の異なる熱可塑性樹脂を共押出して積層構成とした場合の表面温度(Tr)については、2種以上の異なる熱可塑性樹脂のうち、熱変形温度(Th)が最も高い熱可塑性樹脂を基準とする。
冷却ロールは、3本に限られない。例えば、図2に示すように、4本の冷却ロール54、55、56、57を用いる場合、ダイ3から押出された溶融樹脂4は、冷却ロール54と第1冷却ロール55との間に供給され、第1冷却ロール55の下部を約半周して、第1冷却ロール55と第2冷却ロール56との間に供給される。次いで、溶融樹脂4は、第2冷却ロール56の上部を約半周して、第2冷却ロール56と第3冷却ロール57との間に供給される。したがって、図2では、第2冷却ロール56と第3冷却ロール57との間に供給される溶融樹脂4は、第3冷却ロール57の下部に巻きかかるため、第3冷却ロール57は、溶融樹脂4が第3冷却ロール57に巻きかかる下部と反対側の方向、すなわち、第3冷却ロール57の回転軸57Aと第2冷却ロール56の回転軸56Aとを結ぶ直線L1と、第2冷却ロール56の回転軸56Aと第1冷却ロール55の回転軸55Aとを結ぶ直線L2とのなす角θが3〜25度となるように、第1冷却ロール55および第2冷却ロール56よりも上部に配置される。
直線L1とL2とのなす角θが3〜25度となるように、第3冷却ロール(最終冷却ロール)が配置されることによって、外観に優れ、かつ高温環境下での使用に対しても反り変形が抑制される押出樹脂板が得られる。本願発明の製造方法によって得られた押出樹脂板は、照明のカバーや看板、建材や電気製品、携帯電話や液晶テレビのような光学用途など、広い範囲で利用される。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例および比較例で使用した押出装置の構成は、以下の通りである。
押出機1:スクリュー径130mm、一軸、ベント付きの押出機(日立造船(株)製)。
押出機2:スクリュー径50mm、一軸、ベント付きの押出機(日立造船(株)製)。
ダイ(I):Tダイ(樹脂吐出口幅1650mm、リップ間隔1mm(日立造船(株)製))とフィードブロック(樹脂吐出口幅150mm、2種3層分配(日立造船(株)製))との組み合わせ。
ダイ(II):Tダイ(樹脂吐出口幅1650mm、リップ間隔1mm(日立造船(株)製))とフィードブロック(樹脂吐出口幅150mm、2種2層分配(日立造船(株)製))との組み合わせ。
冷却ユニット:横型、面長1800mm、径350mmφの冷却ロール3本
実施例および比較例で使用した樹脂は、以下の通りである。
ポリカーボネート樹脂1(PC1):住友ダウ(株)製の「カリバー301−10」
ポリカーボネート樹脂2(PC2):住友ダウ(株)製の「カリバー301−10」に、ベンゾトリアゾール系UVA(チヌビン360)を、「カリバー301−10」100重量%に対して0.38重量%添加した樹脂。
メタクリル樹脂1(PMMA1):メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル=94/6(質量比)の共重合体
メタクリル樹脂2(PMMA2):メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル=98/2(質量比)の共重合体
(実施例1〜10および比較例1〜5)
表1に記載の樹脂を、それぞれ第1押出機および第2押出機内で溶融混練し、Tダイが取り付けられたフィードブロックに供給し、共押出成形を行った。なお、押出機1に投入された樹脂が、中間層(3層構造の場合)または主層(2層の場合)を形成し、押出機2に投入された樹脂が、両表層(3層構造の場合)または表層(2層の場合)を形成した。
次いで、押出された溶融樹脂を、3本の冷却ロールを有する冷却ユニットで製膜し、表1に記載の総厚み(目標値)を有する2層(実施例4、5および比較例3)または3層(実施例4、5および比較例3以外)の積層樹脂板を作製した。
実施例1〜10および比較例1〜5で得られた積層樹脂板を、27.5cm(押出流れ方向に対して直交する方向)×40.0cm(押出流れ方向)の大きさに切断し、押出流れ方向に対して直交する断面における反りの程度を測定した。なお、反りの程度は、図3(a)および(b)に示すように、平坦面に置いた場合に、積層樹脂板が平坦面から最も乖離している部分の幅Wを測定した。積層樹脂板の中央部が隆起するように反っている場合を負(−)の値で(図3(a))、積層樹脂板の中央部が窪むように反っている場合を正(+)の値で(図3(b))で示した。各積層樹脂板の反りの程度を表1に示す。
次いで、27.5cm×40.0cmの大きさに切断した各積層樹脂板を、80℃の熱水に1時間浸漬し、冷却後、積層樹脂板の反りの程度を測定した。熱水への浸漬前後の反りの差が3mm未満の場合、反り変形が抑制され、実用に耐え得る樹脂板であると評価した。また、外観は目視にて評価した。これらの結果を表1に示す。
Figure 0005520797
表1に示すように、実施例1〜10で得られた積層樹脂板は、いずれも樹脂表面の外観が良好であり、かつ熱水への浸漬前後の反りの差が3mm未満であり、高温環境下でも反り変形が抑制されていることがわかる。
一方、比較例1および4では、最終冷却ロールと最終冷却ロールの1つ手前の冷却ロールとの間に挟み込んで圧着(成形)していないため、樹脂表面が荒れていた。比較例2、3および5では、最終冷却ロールスイング角度(すなわち、最終冷却ロールの回転軸および最終冷却ロールの1つ手前の冷却ロールの回転軸を結ぶ直線L1と、最終冷却ロール以外の冷却ロールの回転軸を結ぶ直線L2とのなす角度θ)が3度未満であるため、熱水への浸漬後の反り変形が著しいことがわかる。この結果から、比較例1〜5では、樹脂表面の外観と反り変形の抑制との両方を満足し得る樹脂板が得られないことがわかる。
1、2 押出機
3 ダイ
4 溶融樹脂
5 冷却ユニット
51、55 第1冷却ロール(最終冷却ロールより2つ手前の冷却ロール)
52、56 第2冷却ロール(最終冷却ロールより1つ手前の冷却ロール)
53、57 第3冷却ロール(最終冷却ロール)
54 冷却ロール
51A〜57A 冷却ロールの回転軸
6 樹脂板

Claims (3)

  1. 熱可塑性樹脂を押出機で溶融混練して、ダイから押出成形し、少なくとも3本の冷却ロールで冷却して押出樹脂板を得る押出樹脂板の製造方法であって、
    少なくとも3本の冷却ロールにおいて、最終冷却ロールを第3冷却ロール、最終冷却ロールより1つ手前の冷却ロールを第2冷却ロール、および最終冷却ロールより2つ手前の冷却ロールを第1冷却ロールとする場合に、第3冷却ロールの回転軸と第2冷却ロールの回転軸とを結ぶ直線L1が、第2冷却ロールの回転軸と第1冷却ロールの回転軸とを結ぶ直線L2に対して、溶融樹脂が第3冷却ロールに巻きかかる側と反対側の方向に3〜25度の傾きを有し、
    前記溶融樹脂を、第3冷却ロールと第2冷却ロールとの間に挟み込み、冷却ロール間で圧着して成形することを特徴とする押出樹脂板の製造方法。
  2. 前記L1が前記L2に対して、溶融樹脂が第3冷却ロールに巻きかかる側と反対側の方向に5〜25度の傾きを有する請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記熱可塑性樹脂が、ポリカーボネート樹脂またはメタクリル樹脂である請求項1または2に記載の製造方法。
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