JP5875390B2 - 高温での水中不分離性に優れた可塑性セメント系混練物 - Google Patents
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Description
ウェランガム、ダイユータンガムは増粘剤として知られているが、発明者らの研究によれば、これらの一方または双方をセメント系混練物(すなわちコンクリートまたはモルタル混練物)に多量添加したとき、高温での水中不分離性に優れた可塑性セメント系混練物が得られる。
対象がコンクリート混練物である場合、施工性の面から打設箇所の想定温度T℃におけるスランプ値が8.0cm以上に調整されていることが望ましい。15.0cm以上であることがより好ましい。一方、T℃におけるスランプ値が25.0cm以上になると、可塑性が不十分となるので好ましくない。ただし、スランプ値が25.0cm未満であっても配合によっては可塑性が不十分となる場合もある。したがって、打設箇所の想定温度T℃においてスランプ値が8.0cm以上25.0cm未満、好ましくは15.0cm以上25.0cm未満となり、かつ用途に応じて十分な可塑性を呈するように配合調整することが望まれる。
打設箇所の想定温度T℃における水中不分離性については、コンクリート用水中不分離性混和剤品質規格(案)JSCE−D 104−2007に準じて混練物試料をT℃の水中に落下させた場合の濁度を評価指標とすることができる。発明者らは、この濁度と、目視による濁りの評価を総合的に種々検討したところ、当該濁度が50ppm未満となれば可塑性グラウトの用途において実用的な水中不分離性を有すると評価できることがわかった。濁度が20ppm未満となれば特に優れた水中不分離性を有すると評価できる。
可塑性セメント系材料の用途を考慮すると、硬化までの時間を十分に確保したい場合が想定される。その場合には混和材料として高性能減水剤を含有させることが有効である。高性能減水剤はモルタル・コンクリート用の混和剤として市販されているものを適用することができる。高性能AE減水剤を適用してもよい。種々検討の結果、高性能減水剤の含有量はセメント100質量部に対し0.3〜3.0質量部とすることが効果的である。
本発明で対象とするセメント系混練物は、従来の可塑性グラウトのように粘土、固化材、ベントナイト、急硬剤、ポリマー、水ガラス等を組み合わせた複雑な配合設計に従う必要はなく、混和材料としてウェランガムおよびダイユータンガムの1種または2種を必須とする以外は基本的に一般的なコンクリートまたはモルタル用材料で構成することができる。具体的には水、セメント、骨材および混和材料からなる配合とする。その混和材料としてはウェランガム、ダイユータンガムを含有する他は、必要に応じて高性能(AE)減水剤を含有することができ、さらに必要に応じてコンクリートやモルタルに一般的に使用されている混和材料を含有してもよい。セメントの一部を石灰石微粉末、フライアッシュ等の粉体成分で置換する配合も可能である。
水、セメント、骨材、さらに必要に応じて高性能減水剤を混練してベース混練物を製造する工程、
打設箇所の想定温度をT℃とするとき、コンクリート用水中不分離性混和剤品質規格(案)JSCE−D 104−2007に準じて混練物の試料をT℃の水中に落下させた場合の濁度が50ppm未満となり、かつT℃でのスランプ値が8.0cm以上25.0cm未満またはモルタルフロー値が10.0cm以上25.0cm未満となるように、前記ベース混練物にウェランガムおよびダイユータンガムの1種または2種を単位水量(kg/m3)に対し1.5〜10.0質量%の含有量範囲で混合する工程、
を有する高温での水中不分離性に優れた可塑性セメント系混練物の製造方法。
ここで、上記T℃は45〜100℃の間に設定することが特に効果的である。上記ベース混練物はレディーミクストコンクリートまたはモルタル工場で調製することができる。
〔増粘剤〕
・セルロース系;三井化学産資(株)製、ハイドロクリートUWB
・ウェランガム;三晶(株)製、ウェランガムKIA96
・ダイユータンガム;三晶(株)製、ケルコクリートDG
〔高性能減水剤〕
・高性能AE減水剤;(株)フローリック製、フローリックSF500S
各混練物のサンプルを20℃、45℃、60℃、80℃の各温度で60分間湯煎したのち、ただちにスランプ試験またはモルタルフロー試験を行った。
◎:スランプ値15.0cm以上25.0cm未満かつ可塑性高いと判断される場合
○:スランプ値8.0cm以上15.0cm未満かつ可塑性高いと判断される場合、およびスランプ値8.0cm以上25.0cm未満かつ可塑性やや低いと判断される場合
△:スランプ値8.0cm未満または25.0cm以上の場合(ただし下記×評価を除く)、およびスランプ値8.0cm以上25.0cm未満かつ可塑性低いと判断される場合
×:可塑性なし(材料分離を含む)の場合
◎:モルタルフロー値15.0cm以上25.0cm未満かつ可塑性高いと判断される場合
○:モルタルフロー値10.0cm以上15.0cm未満かつ可塑性高いと判断される場合、およびモルタルフロー値10.0cm以上25.0cm未満かつ可塑性やや低いと判断される場合
△:モルタルフロー値10.0cm未満または25.0cm以上の場合(ただし下記×評価を除く)、および10.0cm以上25.0cm未満かつ可塑性低いと判断される場合
×:可塑性なし(材料分離を含む)の場合
各混練物について、コンクリート用水中不分離性混和剤品質規格(案)JSCE−D 104−2007に準じて当該混練物の試料を20℃、45℃、60℃、80℃の各温度の水中に落下させた場合の濁度を求めた。前述のように、この濁度が50ppm未満であれば可塑性セメント系材料の用途で実用的な水中不分離性を有すると評価でき、20ppm未満であれば特に優れた水中不分離性を有すると言える。ここでは水中不分離性について以下の4段階に評価を分類し、○評価および◎評価を合格と判定した。
◎; 濁度:20ppm未満
○; 濁度:20ppm以上50ppm未満
△; 濁度:50ppm以上150ppm未満
×; 濁度:150ppm以上
なお、表1中、増粘剤の数値は水100質量部に対する質量部を表示してあり、高性能減水剤の数値はセメント100質量部に対する質量部を表示してある。
Claims (2)
- 水、セメント、骨材および混和材料を練混ぜたセメント系混練物であって、混和材料としてウェランガムおよびダイユータンガムの1種または2種を水100質量部に対し合計1.5〜10.0質量部含有し、45℃におけるスランプ値が8.0cm以上25.0cm未満または45℃におけるモルタルフロー値が10.0cm以上25.0cm未満となるように配合調整されており、かつ45〜80℃の温度範囲内に、コンクリート用水中不分離性混和剤品質規格(案)JSCE−D 104−2007に準じて当該混練物の試料を水中落下させた場合の濁度が50ppm未満となり、かつスランプ値が8.0cm以上25.0cm未満またはモルタルフロー値が10.0cm以上25.0cm未満となるとなる温度T(℃)を有するセメント系混練物。
- 混和材料として、高性能減水剤をセメント100質量部に対し0.3〜3.0質量部含有することにより遅延性を付与した請求項1に記載のセメント系混練物。
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