JP2009184891A - 水中不分離性セメント組成物、プレミックスタイプ水中不分離性モルタル組成物、及び水中不分離性グラウトモルタル - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 セメント、膨張材、アルキルアリルスルフォン酸塩とアルキルアンモニウム塩を含有する粉末状増粘剤、ポリカルボン酸系減水剤、シリコーン系消泡剤、及びポリエーテル系消泡剤を含有してなる水中不分離性セメント組成物、さらにガス発泡物質を含有してなる該セメント組成物、並びに、該セメント組成物と、細骨材とを含有してなるプレミックスタイプ水中不分離性モルタル組成物であり、該モルタル組成物と水とを混練してなる水中不分離性グラウトモルタルを構成とする。
【選択図】なし
Description
以前は、通常配合のコンクリートを、コンクリートポンプ工法やトレミー工法で打設することが行われてきた。しかしながら、いずれの工法も材料分離が大きく、打設現場の水質汚染が課題となっていた。
この水中不分離性混和剤等を用いた配合で、数多くの水中工事がなされてきたが、水溶性高分子の増粘効果により、モルタル・コンクリートの粘凋性が増大するために、圧送による管内抵抗が上昇し、管の磨耗や閉塞等が生じる課題があった。
近年ではその耐震補強工事が進捗し、水中の橋脚への施工が増えてきている。そのため鋼板と橋脚との間隙部は河川の水で満たされており、使用する充填材は無収縮グラウト材の性能に加え、水中不分離性が必要である。
しかしながら、この高流動モルタルは、2段階の練混ぜで製造されるものであり、流動性の保持性能が充分ではない場合があった。
なお、本発明における部や%は特に規定しない限り質量基準で示す。
本発明に係るグラウトモルタルは、主に、水中に打設するものであるが、気中で打設することもあり、その際の乾燥収縮を補償し、ひび割れの発生を抑制する効果は特に大きいものである。
膨張材の粉末度は、ブレーン比表面積値(以下、ブレーン値という)で2,000〜8,000cm2/gが好ましく、2,500〜6,000cm2/gがより好ましい。2,000cm2/g未満ではブリーディングが生じやすくなるおそれがあり、8,000cm2/gを超えると適正な膨張率が得られなくなるおそれや、流動性が悪くなるおそれがある。
膨張材の使用量は、セメントと膨張材とからなる結合材100部中、1.5〜15部が好ましい。1.5部未満では、水と混ぜられて得られる硬化体に、適正な膨張性状が得られにくくなるおそれがあり、15部を超えると膨張量が大きくなり、硬化体が破壊するおそれがある。
本発明で使用する増粘剤は、アルキルアリルスルフォン酸塩とアルキルアンモニウム塩とを含有する粉末状増粘剤であり、その両者が水と接触した際に分子間相互作用により会合し、紐状のミセルを形成し、その構造によりレオロジー改質効果を発現するものである。
アルキルアリルスルフォン酸塩とアルキルアンモニウム塩の配合割合は、紐状のミセルを形成できれば特に限定されるものではない。通常、有効成分として、アルキルアリルスルフォン酸塩/アルキルアンモニウム塩の質量比で、1/10〜10/1の範囲が好ましい。
粉末状増粘剤の使用量は、結合材100部に対して、0.15〜0.45部が好ましい。0.15部未満では適正な水中不分離性が得られにくくなるおそれがあり、0.45部を超えると粘性が高くなりすぎ、充分な流動性が得られず、ポンプ圧送の際にホースが閉塞したり、充填性が損なわれるおそれがある。
ポリカルボン酸系減水剤の形態は、液状、粉末状のいずれもあるが、セメント組成物をドライブレンドとして配合するため、粉末状のものを使用する。
ポリカルボン酸系減水剤の使用は、結合材100部に対して、0.05〜0.30部が好ましい。0.05部未満では、適正な流動性が得られにくくなるおそれがあり、0.30部を超えるとセメント組成物と水とを練混ぜた際に、上面に多数の泡が発生したり、凝結時間が遅延するおそれがある。
シリコーン系消泡剤の使用量は、結合材100部に対して、0.005〜0.10部が好ましい。0.005部未満では、連行した空気が抜けず、圧縮強度の増進ができないおそれがあり、0.10部を超えて使用しても、空気量の低減効果の増大がないばかりでなく、水中不分離性が低下し、水質を汚濁したり、水中で打設した際の強度が低下するおそれがある。
ポリエーテル系消泡剤の使用量は、結合材100部に対して、0.001〜0.010部が好ましい。0.001部未満では、流動性の保持性能の向上に効果がなくなるおそれがあり、0.010部を超えると粘性が小さくなり、水中不分離性が低下し、水質を汚濁したり、水中で打設した際の強度が低下するおそれがある。
ガス発泡物質としては、ステアリン酸で表面処理した燐片状のアルミニウム粉末やアトマイズ製法で製造したアルミニウム粉末や、アゾ化合物、ニトロソ化合物、及びヒドラジン誘導体等のアルカリ雰囲気下で窒素ガスを発泡する物質や、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム、及び過炭酸アンモニウムなどの過炭酸塩、過ホウ酸ナトリウムや過ホウ酸カリウムなどの過ホウ酸塩、過マンガン酸ナトリウムや過マンガン酸カリウムなどの過マンガン酸塩、並びに、過酸化水素等の過酸化物質が使用可能である。
ガス発泡物質の使用量は、結合材100部に対して、アルミニウム粉末は0.0005〜0.003部、窒素ガス発泡物質は0.01〜0.5部、過酸化物質は0.01〜0.1部が好ましい。この範囲未満では、沈下を防止できなくなるおそれがあり、この範囲を超えると、ガス発泡量が多くなり、硬化体の膨張率が大きくなりすぎ、硬化体の強度低下をまねくおそれがある。
細骨材は、発熱量や寸法変化の低減や、耐久性の確保の観点で重要な役割を果たすもので、具体例としては、例えば、川砂、山砂、及び海砂の他、ケイ砂系細骨材、石灰石系細骨材、高炉水砕スラグ系細骨材、及び再生骨材等が挙げられるが特に限定されるものではないが、プレミックスの観点から、乾燥した細骨材が好ましい。
細骨材の粒度は、粗粒率(F.M.)で1.2〜3.0が好ましく、1.5〜2.7がより好ましい。1.2未満では良好な流動性が得られない場合があり、3.0を超えると水中不分離性が低下し、水質を汚濁したり、水中で打設した際の強度が低下するおそれがある。
細骨材の使用量は、結合100部に対して、50〜200部が好ましい。50部未満では大量打設した際、熱ひび割れが発生するおそれがあり、200部を超えると充分な圧縮強度が得られなくなるおそれがある。
粗骨材としては、JIS A 5005で規定されるも砕石の他、JIS A 5011-1、JIS A 5011-2、JIS A 5011-3、及びJIS A 5011-4で規定されるスラグ骨材や、一般的に言われている玉砂利や豆砂利も使用可能である。
粗骨材の粒径は、Gmaxで25mm以下が好ましく、20mm以下がより好ましい。Gmaxが大きいと、作業性が損なわれるおそれがある。
コンクリート中の細骨材と粗骨材の配合割合比は、s/a(細骨材率)45〜75%が好ましい。この範囲外では、水和熱を抑制することができなくなるおそれがあったり、適正な作業性、流動性が得られなくなるおそれがある。
フライアッシュは、JIS A 6201に記載されたフライアッシュI種が好ましい。
フライアッシュの使用量は、セメント、膨張材、及びフライアッシュからなる結合材中、5〜20部をセメントと置換えて使用可能である。
セメント97部と膨張材A3部からなる結合材と、結合材100部に対して、表1に示す増粘剤と減水剤aと、シリコーン系消泡剤0.05部とポリエーテル系消泡剤0.005部とを配合し、セメント組成物を調製した。調製したセメント組成物に、結合材100部に対して、80部の細骨材を配合し、V型ミキサにて混合してモルタル組成物を調製した。
20℃環境下において、そのモルタル組成物を、結合材100部に対して、表1に示す水で混練してグラウトモルタルを調製した。
調製したグラウトモルタルの流動性、水中不分離性、粘性、ブリーディング、圧縮強度、及び水中気中強度比を評価した。結果を表1に併記する。
セメント :普通ポルトランドセメント、市販品、ブレーン値3,300cm2/g
膨張材A :カルシウムアルミノフェライト系膨張材、市販品、ブレーン値2,900cm2/g
増粘剤イ :アルキルアリルスルフォン酸塩とアルキルアンモニウム塩を含有する粉末状増粘剤、市販品
増粘剤ロ :メチルセルロース系増粘剤、市販品
増粘剤ハ :アクリル系増粘剤、市販品
減水剤a :粉末状ポリカルボン酸系、市販品
シリコーン系消泡剤:粉末状、市販品
ポリエーテル系消泡剤:粉末状、市販品
細骨材 :石灰砂、F.M.=2.02
水 :上水道水
流動性 :内径φ50mm×高さ100mmのフローコーンに、練上り直後のモルタルを充填し、コーン引上げ後、3分間経過したときのモルタルの広がりを測定。
水中不分離性:口径18mmの漏斗により、モルタルを水中自由落下させた場合の水の濁りを目視で評価した。水の濁りがひどい場合を不可、水の濁りがある場合を可、若干水の濁りがある場合を良、水の濁りがない場合を優とした。
粘性 :流動性試験においてフローコーン側面へのモルタルの付着量の多少により評価。フローコーン側面へのモルタルの付着量が、極めて多い場合を不可、多い場合を可、少ない場合を良、ほとんどない場合を優とした。
ブリーディング:JSCE-F522に準じブリーディングを測定。
圧縮強度 :φ50×100mmの型枠を使用し、20℃恒温室内にて試験体を作製し、材齢1日で脱型し、その後20℃水中養生を行い、材齢28日の圧縮強度を測定し、気中圧縮強度とする。
水中気中強度比:φ50×100mmの型枠を使用し、型枠を20℃水中内に水没させ、上方よりモルタルを流し込み、水中にて作製した試験体を、材齢1日で脱型し、その後20℃水中養生を行い、材齢28日の圧縮強度を測定し、水中圧縮強度とする。水中圧縮強度と気中圧縮強度の比を水中気中強度比とした。
セメント97部と膨張材A3部からなる結合材と、結合材100部に対して、増粘剤イ0.30部と減水剤a0.15部と、表2に示すシリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、及びガス発泡物質、並びに、細骨材80部を使用してグラウトモルタルを調製したこと以外は、実験例1と同様に行い、調製したグラウトモルタルの流動性、水中不分離性、粘性、ブリーディング、初期膨張率、圧縮強度、及び水中気中強度比を評価した。結果を表2に併記する。
ガス発泡物質:ステアリン酸処理アルミニウム粉末、市販品
流動性 :実験例1と同様な方法で、練上り直後と30分経過したモルタルについて測定。
初期膨張率:φ5×10cmの型枠に練混ぜたモルタルを型詰し、光センサーにて打設直後から材齢24時間までの鉛直方向の長さ変化率を測定、表中の−は収縮側、+は膨張側
セメント97部と膨張材A3部からなる結合材と、結合材100部に対して、増粘剤イ0.30部、シリコーン系消泡剤0.05部、ポリエーテル系消泡剤0.005部、及びガス発泡物質0.001部と、表3に示す減水剤、細骨材、及び水とを使用したこと以外は実験例1と同様に行い、流動性、水中不分離性、粘性、圧縮強度、及び水中気中強度比を評価した。結果を表3に併記する。
減水剤b :粉末状ナフタレン減水剤、市販品
減水剤c :粉末状メラミン系減水剤、市販品
セメント97部と膨張材A3部からなる結合材と、結合材100部に対して、増粘剤イ0.30部、シリコーン系消泡剤0.05部、ポリエーテル系消泡剤0.005部、及びガス発泡物質0.001部と、表4に示す減水剤a、細骨材、及び水とを使用したこと以外は実験例1と同様に行い、流動性、水中不分離性、粘性、圧縮強度、及び水中気中強度比を評価した。結果を表4に併記する。
表5に示すセメント、膨張材、及びフライアッシュからなる結合材、結合材100部に対して、増粘剤イ0.30部、減水剤0.15部、シリコーン系消泡剤0.05部、ポリエーテル系消泡剤0.005部、ガス発泡物質0.001部、細骨材80部と、及び水38部を使用したこと以外は実験例1と同様に行い、流動性、水中不分離性、ブリーディング、圧縮強度、水中気中強度比、及びひび割れ抵抗性を評価した。結果を表5に併記する。
膨張材B :カルシウムサルフォアルミネート系膨張材、ブレーン値3,000cm2/g
フライアッシュ:フライアッシュI種、市販品
ひび割れ抵抗性:屋外暴露条件下においてコンクリート版上に本発明のモルタルを厚さ5cm、横50cm、縦2mの面積で打設し、材齢2週間において観察した。ひび割れが3本以上発生した場合を不可、ひび割れが1〜2本発生した場合を可、ひび割れの発生がない場合を良とした。
セメント97部と膨張材A3部からなる結合材と、結合材100部に対して、増粘剤イ0.30部、減水剤0.15部、シリコーン系消泡剤0.05部、ポリエーテル系消泡剤0.005部、ガス発泡物質0.001部と、結合材100部に対して、細骨材80部、粗骨材(Gmax20mm)100部を配合してコンクリート組成物を調製し、結合材100部に対して、38部の水で混練し水中不分離性コンクリートを調製し実験例2と同様に、流動性、水中不分離性、粘性、ブリーディング、初期膨張率、及び圧縮強度を確認したところ、流動性、水中不分離性、及び粘性とも良好であり、ブリーディングは発生せず、充分な圧縮強度を発現し、乾燥状態に置かれた際、充分なひび割れ抵抗性の向上が達成できた。
Claims (11)
- セメント、膨張材、アルキルアリルスルフォン酸塩とアルキルアンモニウム塩を含有する粉末状増粘剤、ポリカルボン酸系減水剤、シリコーン系消泡剤、及びポリエーテル系消泡剤を含有してなる水中不分離性セメント組成物。
- さらにガス発泡物質を含有してなる請求項1に記載の水中不分離性セメント組成物。
- 膨張材が、セメントと膨張材からなる結合材100部中、1.5〜15部である請求項1又は請求項2に記載の水中不分離性セメント組成物。
- 粉末状増粘剤が、結合材100部に対して、0.15〜0.45部である請求項1〜請求項3のうちのいずれか1項に記載の水中不分離性セメント組成物。
- ポリカルボン酸系減水剤が、結合材100部に対して、0.05〜0.30部である請求項1〜請求項4のうちのいずれか1項に記載の水中不分離性セメント組成物。
- シリコーン系消泡剤が、結合材100部に対して、0.005〜0.10部である請求項1〜請求項5のうちのいずれか1項に記載の水中不分離性セメント組成物。
- ポリエーテル系消泡剤が、結合材100部に対して、0.001〜0.010部である請求項1〜請求項6のうちのいずれか1項に記載の水中不分離性セメント組成物。
- 請求項1〜請求項7のうちのいずれか1項に記載の水中不分離性セメント組成物と、細骨材とを含有してなるプレミックスタイプ水中不分離性モルタル組成物。
- 細骨材が、結合材100部に対して、50〜200部である請求項8に記載のプレミックスタイプ水中不分離性モルタル組成物。
- 請求項8又は請求項9に記載のプレミックスタイプ水中不分離性モルタル組成物と水とを混練してなる水中不分離性グラウトモルタル。
- 請求項1〜請求項7のうちのいずれか1項に記載の水中不分離性セメント組成物、細骨材、粗骨材、及び水を含有してなる水中不分離性コンクリート。
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