次に、本発明に係るタイヤの実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態について説明する。
(1)タイヤの概略構成
図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤ1のトレッド展開図である。なお、図1には、空気入りタイヤ1のトレッド部におけるトレッド端TEの範囲内の構成が示されている。
ここで、トレッド端TEとは、空気入りタイヤ1をJATMA YEAR BOOK(2007年度版、日本自動車タイヤ協会規格)に規定されている標準リムに装着し、JATMAYEAR BOOKの適用サイズ・プライレーティングに規定される最大負荷能力に対応する空気圧を内圧として充填し、最大負荷能力を負荷したときのトレッド幅方向Twの最外の接地部分を指す。なお、使用地又は製造地において、TRA規格、ETRTO規格などが適用される場合は各々の規格に準ずる。
図1に示すように、空気入りタイヤ1には、タイヤ周方向Tcに延びる複数の周方向溝10と、複数の周方向溝10によって区画された複数の陸部列を備える。空気入りタイヤ1には、複数の周方向溝10として、2本の内側主溝11と、2本の外側主溝12とが形成されている。内側主溝11は、外側主溝12よりもトレッド幅方向Tw内側、すなわちタイヤ赤道線CL側に形成されている。
空気入りタイヤ1には、2本の内側主溝11と2本の外側主溝12とに区画されることによって、複数の陸部列が形成される。具体的に、空気入りタイヤ1には、複数の陸部列として、最もタイヤ赤道線CL側に位置するセンター陸部列30と、センター陸部列30よりもトレッド幅方向Tw外側に位置するセカンド陸部列40と、ショルダー陸部列50とが形成されている。
センター陸部列30は、2本の内側主溝11のトレッド幅方向Tw内側に形成される。センター陸部列30は、タイヤ赤道線CL上に形成される。センター陸部列30には、トレッド幅方向Twに延びるラグ溝21がタイヤ周方向Tcに所定間隔を設けて複数形成されている。また、センター陸部列30には、タイヤ周方向Tcに延びる周方向細溝13が形成されている。周方向細溝13は、タイヤ赤道線CLとの交差を繰り返しながら、タイヤ周方向Tcにジグザグ状に延びる。
センター陸部列30には、複数のラグ溝21と周方向細溝13とに区画されることによって、複数のセンターブロック部31が形成されている。センター陸部列30は、複数のセンターブロック部31によって構成されている。なお、複数のセンターブロック部31の各々のタイヤ周方向Tcに対する位置の位相は、周方向細溝13の両側で互いにずれている。
セカンド陸部列40は、センター陸部列30のトレッド幅方向Tw外側に隣接して形成される。セカンド陸部列40は、複数のラグ溝21と周方向細溝13とに区画されることによって、複数のセカンドブロック部41が形成されている。セカンド陸部列40は、複数のセカンドブロック部41によって構成されている。なお、複数のセカンドブロック部41の各々のタイヤ周方向Tcに対する位置の位相は、周方向細溝13の両側で互いにずれている。
ショルダー陸部列50は、セカンド陸部列40よりもトレッド幅方向Tw外側に位置し、セカンド陸部列40のトレッド幅方向Tw外側に隣接して形成される。ショルダー陸部列50は、複数のラグ溝22に区画されることによって、複数のショルダーブロック部51が形成されている。ショルダー陸部列50は、複数のショルダーブロック部51によって構成されている。
また、センター陸部列30と、セカンド陸部列40と、ショルダー陸部列50との各々は、トレッド幅方向Twに延びるサイプを少なくとも一つ有する。
なお、本実施形態において、サイプとは、空気入りタイヤのトレッド部が接地したときに閉じることが可能な溝幅をもつものである。具体的には、サイプは、1.5mm以下の溝幅をもつ。
具体的に、センター陸部列30には、センターブロック部31にサイプ60が形成され、セカンド陸部列40には、セカンドブロック部41にサイプ80が形成され、ショルダー陸部列50には、ショルダーブロック部51にサイプ100が形成されている。サイプ60とサイプ80とサイプ100とは、トレッド幅方向Tw及びタイヤ径方向Tdに沿って、ジグザグ状に延びる3次元サイプとして形成されている。なお、センターブロック部31とセカンドブロック部41には、マルチサイプMも形成されている。
本実施形態において、センター陸部列30は、内側陸部列を構成し、セカンド陸部列40とショルダー陸部列50との少なくとも一方は、外側陸部列を構成する。つまり、外側陸部列として、セカンド陸部列と40ショルダー陸部列50とが形成されている。また、セカンド陸部列40は、第1外側陸部列を構成し、ショルダー陸部列50は、第2外側陸部列を構成する。
(2)センターブロック部及びセカンドブロック部の形状
図2は、センターブロック部31の斜視図である。なお、センターブロック部31とセカンドブロック部41とは、外観的には、同様の形状であるため、ここでは、センターブロック部31の形状について説明する。
センターブロック部31には、複数のサイプ60と、マルチサイプMとが形成されている。具体的に、センターブロック部31は、2つのサイプ60によってタイヤ周方向Tcに区分けされる小ブロック部31A乃至31Cが形成されており、小ブロック部31A乃至31Cの各々には、マルチサイプMが形成されている。マルチサイプMは、一端が内側主溝11に開口し、他端が小ブロック部内に終端する。
センターブロック部31に形成されるサイプ60は、一端が内側主溝11に開口し、他端が周方向細溝13に開口する。つまり、サイプ60は、オープンサイプとして形成されている。
また、セカンドブロック部41にも、複数のサイプ80と、マルチサイプMとが形成されている。セカンド陸部列40を構成するセカンドブロック部41の内、トレッド幅方向Tw内側に形成されるセカンドブロック部41に形成されるマルチサイプMは、一端が内側主溝11に開口し、他端が小ブロック部内に終端する。また、かかるセカンドブロック部41に形成されるサイプ80は、一端が内側主溝11に開口し、他端が周方向細溝13に開口する。
セカンド陸部列40を構成するセカンドブロック部41の内、トレッド幅方向Tw外側に形成されるセカンドブロック部41に形成されるマルチサイプMは、一端が外側主溝12に開口し、他端が小ブロック部内に終端する。また、かかるセカンドブロック部41に形成されるサイプ80は、一端が外側主溝12に開口し、他端が周方向細溝13に開口する。
(3)サイプの形状
次に、サイプ60とサイプ80との形状について具体的に説明する。なお、サイプ60とサイプ80とは、接地面Sにおける開口部の形状は同様であるが、センターブロック部31とセカンドブロック部41との内部における形状が互いに異なる。
まず、図3乃至4を参照して、サイプ60の構成について説明する。図3(a)は、図2に示したX−X矢視から見た一方のサイプ壁面60Pの正面図である。図3(b)は、サイプ60の接地面Sにおける平面図である。図4は、図2に示したY−Y矢視から見た他方のサイプ壁面60Qの正面図である。
図3に示すように、サイプ60によって形成された一方のサイプ壁面60Pには、一方のサイプ壁面において、他方のサイプ壁面60Q(図3には不図示)に向けて突出する尾根部列が形成されている。具体的に、一方のサイプ壁面60Pには、サイプ延在方向中央かつタイヤ径方向Td外側端で互いに合流する合流部Cを形成している2本の尾根部61a、62aと、合流部Cから接地面S側に延び出して接地面Sに直交する尾根部69と、が形成されている。つまり、一方のサイプ壁面60Pにおいて、合流部Cから2方向に延びる尾根部列が形成されている。この合流部Cはサイプ壁面60Pの延在方向中央線J上に位置しており、サイプ壁面60Pの形状は延在中央線Jに対して対称、すなわちトレッド幅方向Twに対称となっている。
2本の尾根部61a、62aは、タイヤ径方向Td内側にかけて徐々に互いに離れるように、合流部Cからそれぞれサイプの両端側(図3(a)に示す、サイプ延在方向における一端E1側及び他端E2側)に向けて直線状に延び出している。つまり、2本の尾根部61a、62aはV字状を描いている。
本実施形態では、2本の尾根部61a、62aの延在方向とタイヤ径方向Tdとがなす傾斜角度θ1(以下、第1傾斜角度θ1)は同一に形成されている。また、この第1傾斜角度θ1は20〜70度の範囲内とされている。
また、尾根部62aからサイプ延在方向一端E1側にかけて、谷部64bと尾根部62bとが交互に平行に配列されている。そして、接地面S側においても、尾根部69からサイプ延在方向の一端側E1にかけて、谷部64bと尾根部62bとが交互に平行に配列されている。更に、尾根部62aのタイヤ径方向Td内側において、谷部64aが、尾根部62aと平行に形成されている。
尾根部61aからサイプ延在方向の他端E2側にかけても、谷部63bと尾根部61bとが交互に平行に配列されている。そして、接地面S側においても、尾根部69からサイプ延在方向の一端E1側にかけて、谷部63bと尾根部61bとが交互に平行に配列されている。更に、尾根部61aのタイヤ径方向Td内側において、谷部63aが、尾根部61aと平行に形成されている。
図4に示すように、サイプ壁面60Pに対向する他方のサイプ壁面60Qには、一方のサイプ壁面60Pから離れる向きに突出し、尾根部列と噛み合うように2方向に延びる谷部列が形成されている。具体的に、サイプ壁面60Qには、サイプ壁面60Pに係合するように、尾根部や谷部が形成されている。例えば、サイプ壁面60Pの尾根部61a、62aに対向する位置に、尾根部61a、62aと係合する谷部71a、72aが形成され、尾根部69に対向する位置に、尾根部69と係合する谷部79が形成されている。
このような構成により、合流部Cよりもサイプ深さが浅いサイプ部分では、トレッド幅方向Twに沿ってジグザグ状に延びるサイプ部分、すなわち尾根部69、61b、62bと、谷部79、63b、64bとが、タイヤ径方向Tdに平行となっているサイプ部分(以下、径平行型サイプ部分R1)が形成されている。
そして、合流部Cよりもサイプ深さが深いサイプ部分では、タイヤ径方向Tdに対して斜め方向であるSF方向及びSK方向(何れも図3(a)参照)にジグザグ状に延びるサイプ部分(以下、V字型サイプ部分R2)が形成されている。
次に、セカンドブロック部41に形成されるサイプ80の構成について説明する。図5(a)は、一方のサイプ壁面80Pの正面図である。図5(b)は、サイプ80の接地面Sにおける平面図である。
図5に示すように、サイプ80によって形成された一方のサイプ壁面80Pにも、上述したサイプ壁面60Pと同様に、他方のサイプ壁面80Qに向けて突出する尾根部列が形成されている。具体的に、一方のサイプ壁面80Pには、サイプ延在方向中央かつタイヤ径方向Td外側端で互いに合流する合流部Cを形成している2本の尾根部81a、82aと、合流部Cから接地面S側に延び出して接地面Sに直交する尾根部89と、が形成されている。この合流部Cはサイプ壁面80Pの延在方向中央線J上に位置しており、サイプ壁面80Pの形状は延在中央線Jに対して対称、すなわちトレッド幅方向Twに対称となっている。
2本の尾根部81a、82aは、タイヤ径方向Td内側にかけて徐々に互いに離れるように、合流部Cからそれぞれサイプの両端側(図5(a)に示す、サイプ延在方向における一端E1側及び他端E2側)に向けて直線状に延び出している。つまり、2本の尾根部81a、82aはV字状を描いている。
本実施形態では、2本の尾根部81a、82aの延在方向とタイヤ径方向Tdとがなす傾斜角度θ2(以下、第2傾斜角度θ2)は同一に形成されている。また、この第2傾斜角度θ2は20〜70度の範囲内とされている。
また、尾根部82aからサイプ延在方向の一端E1側にかけて、谷部84bと尾根部82bとが交互に平行に配列されている。そして、接地面S側において、尾根部89からサイプ延在方向の一端E1側にかけて、谷部84bと尾根部82bとが交互に平行に配列されている。更に、尾根部82aのタイヤ径方向Td内側において、谷部84aと尾根部86aとが、尾根部82aと平行に順次形成されている。
尾根部81aからサイプ延在方向の他端E2側にかけても、谷部83bと尾根部81bとが交互に平行に配列されている。そして、接地面S側において、尾根部69からサイプ延在方向の一端E1側にかけて、谷部83bと尾根部81bとが交互に平行に配列されている。更に、尾根部81aのタイヤ径方向Td内側において、谷部83aと尾根部85aとが、尾根部81aと平行に順次形成されている。
図6に示すように、サイプ壁面80Pに対向する他方のサイプ壁面80Qには、一方のサイプ壁面80Pから離れる向きに突出し、尾根部列と噛み合うように谷部列が形成されている。具体的に、サイプ壁面80Qには、サイプ壁面80Pに係合するように、尾根部や谷部が形成されている。例えば、サイプ壁面80Pの尾根部81a、82aに対向する位置に、尾根部81a、82aと係合する谷部91a、92aが形成され、尾根部89に対向する位置に、尾根部89と係合する谷部99が形成されている。
このような構成により、サイプ80も、合流部Cよりもサイプ深さが浅いサイプ部分では、トレッド幅方向Twに沿ってジグザグ状に延びる径平行型サイプ部分R1が形成されている。そして、サイプ80も、合流部Cよりもサイプ深さが深いサイプ部分では、タイヤ径方向Tdに対して斜め方向であるSF方向及びSK方向にジグザグ状に延びるV字型サイプ部分R2が形成されている。
ここで、本実施形態において、センターブロック部31に形成される尾根部列の延在方向とタイヤ径方向Tdとがなす第1傾斜角度θ1は、セカンドブロック部41に形成される尾根部列の延在方向とタイヤ径方向Tdとがなす第2傾斜角度θ2よりも小さい。また、この第1傾斜角度θ1と、第2傾斜角度θ2とは、20〜70度の範囲内であることから、第1傾斜角度θ1と、第2傾斜角度θ2とは、20度≦第1傾斜角度θ1<第2傾斜角度θ2≦70度の関係を満たす。また、第1傾斜角度θ1と、第2傾斜角度θ2との角度差は、5度以上であることが好ましい。なお、角度差は、10度であることがより好ましい。
なお、センターブロック部31に形成される尾根部列の延在方向が変化(屈曲)する場合、すなわち、センターブロック部31に形成される尾根部列の延在方向が複数設けられている場合、それぞれの尾根部列の延在方向と、タイヤ径方向Tdとがなす傾斜角度の平均角度を、第1傾斜角度θ1として算出することが好ましい。なお、セカンドブロック部41に形成される尾根部列が変化する場合においても同様である。
また、セカンドブロック部41に形成される尾根部の間隔D2は、センターブロック部31に形成される尾根部の間隔D1よりも狭くなるように構成されている。そして、センターブロック部31では、V字型サイプ部分R2において、一方のサイプ壁面60Pに形成される尾根部列は、6つの尾根部(尾根部62a、62b、62b及び尾根部61a、61b、61b)によって構成されている。一方、セカンドブロック部41では、V字型サイプ部分R2において、サイプ壁面60Pに形成される尾根部列は、8つの尾根部(尾根部82a、82b、82b、86a及び尾根部81a、81b、81b、83b)によって構成されている。すなわち、V字型サイプ部分R2において、セカンドブロック部41に形成される尾根部の数は、センターブロック部31に形成される尾根部の数よりも多くなるように構成されている。
(4)作用・効果
空気入りタイヤ1は、センター陸部列30と、セカンド陸部列40とを有し、それぞれの陸部列には、サイプ60と、サイプ80とが形成されている。センター陸部列30は、複数のセンターブロック部31によって構成されており、セカンド陸部列40は、複数のセカンドブロック部41によって構成されている。
センターブロック部31には、一方のサイプ壁面60Pに2方向に延びる尾根部列が形成されるとともに、他方のサイプ壁面60Qに2方向に延びる尾根部列と噛み合うように2方向に延びる谷部列が形成される。2方向に延びる尾根部列は、サイプ両端E1、E2側よりも内側で互いに合流する合流部Cを形成するとともに、タイヤ径方向Td内側にかけて徐々に互いに離れるようにサイプ両端E1、E2側に向けて延び出している。
一方、セカンドブロック部41にも、一方のサイプ壁面80Pに2方向に延びる尾根部列が形成されるとともに、他方のサイプ壁面80Qにも2方向に延びる尾根部列と噛み合うように2方向に延びる谷部列が形成される。2方向に延びる尾根部列は、サイプ両端E1、E2側よりも内側で互いに合流する合流部Cを形成するとともに、タイヤ径方向Td内側にかけて徐々に互いに離れるようにサイプ両端E1、E2側に向けて延び出している。
このように、センターブロック部31のサイプ60と、セカンドブロック部41のサイプ80とは、2方向に延びる尾根部列と2方向に延びる谷部列とが、V字状に形成された3次元サイプである。
空気入りタイヤ1は、センターブロック部31及びセカンドブロック部41において、上述したサイプ60、80を形成することによって、接地面Sに入力が付与される際に、尾根部列と谷部列とが互いに支え合い、センターブロック部31及びセカンドブロック部41が倒れ込み難くなる。よって、センターブロック部31及びセカンドブロック部41は、サイプ60、80によって接地面Sに形成される角部のエッジ効果を確保できるので、氷上性能を確保することが可能になる。
また、空気入りタイヤ1は、センターブロック部31及びセカンドブロック部41において、上述したサイプ60、80を形成することによって、センターブロック部31及びセカンドブロック部41のそれぞれの内部に、V字状の排水経路を確保することが可能になるため、排水性能が向上し、氷上性能を確保することができる。
また、センターブロック部31において、サイプ60によって形成される尾根部列の延在方向とタイヤ径方向Tdとがなす第1傾斜角度θ1は、セカンドブロック部41において、サイプ80に形成される尾根部列の延在方向とタイヤ径方向Tdとがなす第2傾斜角度θ2よりも小さい。
かかる空気入りタイヤ1では、サイプ80によって形成される尾根部列と谷部列との支え合う力が、サイプ60によって形成される尾根部列と谷部列との支え合う力よりも大きくなるので、セカンドブロック部41の剛性が、センターブロック部31の剛性よりも大きくすることができる。つまり、セカンドブロック部41によって構成されるセカンド陸部列40のタイヤ径方向Tdの入力に対する剛性が、センターブロック部31によって構成されるセンター陸部列30のタイヤ径方向Tdの入力に対する剛性よりも大きくすることができる。
よって、かかる空気入りタイヤ1によれば、タイヤ接地面に剪断力が与えられた際に、セカンド陸部列40に付与される剪断力を増加させることが可能になるため、センター陸部列30に付与される剪断力を抑制できる。すなわち、かかる空気入りタイヤ1によれば、センター陸部列30に発生するセンター摩耗を抑制することが可能になる。このように、かかる空気入りタイヤ1によれば、氷上性能を確保しつつ、タイヤ赤道線側に位置するセンター陸部列30に発生する偏摩耗、すなわちセンター摩耗を抑制することが可能になる。
ここで、センター摩耗を抑制する一つの方法として、セカンドブロック部41に形成されるサイプの深さを、センターブロック部31に形成されるサイプの深さよりも浅くすることによって、セカンドブロック部41の剛性を高め、センターブロック部31とセカンドブロック部41との剪断力の差を調整するという方法も考えられる。しかし、この場合、セカンドブロック部41に形成されるサイプが早期に消滅し、氷上性能の低下が早まるので好ましくない。本実施形態に係る空気入りタイヤ1では、セカンドブロック部41に形成されるサイプ80の深さを調整すること無く、センター摩耗を抑制することが可能になるので、氷上性能を長期にわたって維持することが可能になる。なお、センターブロック部31における尾根部列の第1傾斜角度θ1と、セカンドブロック部41における尾根部列の第2傾斜角度θ2とを考慮した上で、サイプ80の深さを調整することも可能である。
また、空気入りタイヤ1では、第1傾斜角度θ1と第2傾斜角度θ2との角度差が、5度以上となるように構成されている。この場合、セカンドブロック部41の剛性を適切に高めて、センターブロック部31の剛性を抑制することが可能になる。
また、空気入りタイヤ1では、第1傾斜角度θ1と第2傾斜角度θ2とが、20〜70度の範囲内である。第1傾斜角度θ1と第2傾斜角度θ2とが、20度よりも小さいと、サイプ壁面同士の接触力が弱くなり易やすく、また、70度よりも大きいと、サイプ壁面同士の接触力が強くなり過ぎて外れ易くなる。
また、空気入りタイヤ1では、サイプ60、80によって区分けされる小ブロック部にマルチサイプMが形成されているので、センターブロック部31及びセカンドブロック部41のエッジ効果が高まり、氷上性能を向上させることができる。また、マルチサイプMは、一端が周方向溝に開口し他端が小ブロック部内に終端するので、両端が内側主溝11又は外側主溝12に開口するオープンサイプを形成する場合に比べて、小ブロック部の剛性の大幅な低下を抑制できる。
なお、上述した実施形態では、センターブロック部31に形成されるサイプ60と、セカンドブロック部41に形成されるサイプ80とに着目して説明したが、ショルダーブロック部51においても、サイプ100によって2方向に延びる尾根部列と、2方向に延びる谷部列とを形成するようにしてもよい。また、ショルダーブロック部51が有するサイプ100によって形成される尾根部列の延在方向とタイヤ径方向Tdとがなす傾斜角度を、第3傾斜角度θ3とした場合、セカンドブロック部41の第2傾斜角度θ2は、第3傾斜角度θ3以下であることが好ましい。このような構成の空気入りタイヤ1では、トレッド幅方向Tw外側に形成されるセカンド陸部列40の剛性よりも、ショルダー陸部列50の剛性を高めることができる。つまり、センター陸部列30の剛性<セカンド陸部列40の剛性≦ショルダー陸部列50の剛性という関係をみたすことができる。このような空気入りタイヤ1によれば、トレッド部における陸部列の剛性をトレッド幅方向Tw外側に向かうにつれて段階的に高めることができる。よって、トレッド幅方向Tw内側に向かうにつれて徐々に高くなる剪断力を適切に緩和して、タイヤ赤道線CL側に発生するセンター摩耗を一層抑制できる。
(5)比較評価
次に、本発明の効果を更に明確にするために、以下の比較例及び実施例に係る空気入りタイヤを用いて行った比較評価について説明する。なお、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
(5.1)各空気入りタイヤの構成
まず、比較評価にあたり、比較例1乃至2に係る空気入りタイヤと、実施例1乃至3に係る空気入りタイヤとを準備した。表1には、各空気入りタイヤ1の構成が示されている。なお、各空気入りタイヤは、サイプの構成を除き、他の構成は同一である。
また、本試験では、各空気入りタイヤのタイヤサイズを全て11R22.5/16PRとした。全ての空気入りタイヤについて、適用リムを7.50のリムとし、内圧を900kPaとし、正規荷重を負荷した状態で試験を行った。ここで、「正規荷重」とは、JATMAが発行する2008年版のYEAR BOOKに定められた適用サイズ・プライレーティングにおける最大荷重を指す。
比較例1に係る空気入りタイヤ1は、センターブロック部31に形成される尾根部列の第1傾斜角度θ1と、セカンドブロック部41に形成される尾根部列の第2傾斜角度θ2とが、34度であり、同一であるものを用いた。また、比較例1に係る空気入りタイヤは、センターブロック部31に形成されるサイプ60の深さを10mmとし、セカンドブロック部41に形成されるサイプ80の深さ10mmとした。
比較例2に係る空気入りタイヤ1は、センターブロック部31に形成される尾根部列の第1傾斜角度θ1と、セカンドブロック部41に形成される尾根部列の第2傾斜角度θ2とが、34度であり、同一であるものを用いた。また、比較例2に係る空気入りタイヤは、センターブロック部31に形成されるサイプ60の深さを10mmとし、セカンドブロック部41に形成されるサイプ80の深さ6mmとした。
実施例1に係る空気入りタイヤは、センターブロック部31に形成される尾根部列の第1傾斜角度θ1を34度とし、セカンドブロック部41に形成される尾根部列の第2傾斜角度θ2を38度としたものを用いた。つまり、角度差が4度であるものを用いた。なお、センターブロック部31に形成されるサイプ60の深さを10mmとし、セカンドブロック部41に形成されるサイプ80の深さを10mmとした。
実施例2に係る空気入りタイヤは、センターブロック部31に形成される尾根部列の第1傾斜角度θ1を34度とし、セカンドブロック部41に形成される尾根部列の第2傾斜角度θ2を39度としたものを用いた。つまり、角度差が5度であるものを用いた。なお、センターブロック部31に形成されるサイプ60の深さを10mmとし、セカンドブロック部41に形成されるサイプ80の深さを10mmとした。
実施例3に係る空気入りタイヤは、センターブロック部31に形成される尾根部列の第1傾斜角度θ1を34度とし、セカンドブロック部41に形成される尾根部列の第2傾斜角度θ2を45度としたものを用いた。つまり、角度差が11度であるものを用いた。なお、センターブロック部31に形成されるサイプ60の深さを10mmとし、セカンドブロック部41に形成されるサイプ80の深さを10mmとした。
(5.2)評価結果
次に、各空気入りタイヤを用いて行った評価結果について、表1を参照しながら説明する。
(5.2.1)新品時氷上性能評価
新品時氷上性能評価では、新品時(未使用)の各空気入りタイヤを車両に装着して、氷路面上における発進加速度を測定した。そして、比較例1のタイヤの発進加速度に基づく評価指数を100とし、比較例2のタイヤ、実施例1乃至3のタイヤについては相対評価となる評価指数を算出した。
表1の評価結果では評価指数が大きいほど発進加速性能に優れていること、すなわち、新品時氷上性能が高いことを示す。表1から判るように、新品時氷上性能は、いずれのタイヤも同様であった。
(5.2.2)摩耗後氷上性能評価
摩耗後氷上性能評価では、各空気入りタイヤのトレッド部を6mm研磨して、新品時氷上性能評価と同様の試験を行って評価した。表1に示すように、比較例1のタイヤと、実施例1乃至3に係る空気入りタイヤは、比較例2のタイヤに比べて、氷上性能が高いことがわかった。この結果から、比較例2のタイヤは、セカンドブロック部41に形成されるサイプ80の深さが浅いため、摩耗が進展した場合に、氷上性能が著しく低下することがわかった。
(5.2.3)摩耗ライフ評価
車両に装着して所定距離を走行し、タイヤ全体の摩耗量(摩耗率40%の時点における全溝の摩耗量平均)に基づいて、摩耗ライフ(タイヤ寿命)を推定した。比較例1のタイヤの摩耗量に基づく評価指数を100とし、実施例1乃至3のタイヤ、比較例2のタイヤについては相対評価となる評価指数を算出した。表1の評価結果では評価指数が大きいほど摩耗ライフが長いことを示す。表1に示すように、比較例1のタイヤに比べて、比較例2のタイヤと、実施例1乃至3のタイヤとが摩耗ライフに優れていることがわかった。
(5.2.4)耐センター摩耗性能評価
車両に装着して所定距離を走行し、内側主溝11と外側主溝12との摩耗量の差に基づいて、耐センター摩耗性能を評価した。なお、摩耗量の差が小さいほど耐センター摩耗性能に優れていることを示す。表1に示すように、比較例1のタイヤに比べて、比較例2のタイヤと、実施例1乃至3のタイヤとが耐センター摩耗性能に優れていることがわかった。
(5.2.5)総合評価
以上の結果から、比較例1のタイヤに比べて、比較例2のタイヤと、実施例1乃至3のタイヤが、耐センター摩耗性能に優れていることが証明された。但し、比較例2のタイヤは、摩耗が進展すると、氷上性能が著しく低下するため、総合評価としては、実施例1乃至3のタイヤが優れていることが証明された。
また、実施例1乃至2を比較すると、実施例2のタイヤの方が耐センター摩耗性能に優れていることが判った。これにより、センターブロック部31に形成される尾根部列の第1傾斜角度θ1と、セカンドブロック部41に形成される尾根部列の第2傾斜角度θ2との角度差が、5度以上であるタイヤの方が、優れていることが証明された。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、上述した第1実施形態に係る空気入りタイヤ1と比較して、サイプの溝底部に空隙部分が形成されている点で異なる。以下に、本実施形態に係る空気入りタイヤ1の構成について、上述した第1実施形態との差異に着目して説明する。
(1)センターブロック部及びセカンドブロック部の構成
図7には、本実施形態に係る空気入りタイヤ1におけるセンターブロック部31の斜視図が示されている。なお、センターブロック部31とセカンドブロック部41とは、外観的には、同様の形状であるため、ここでは、センターブロック部31の形状について説明する。図7に示すように、センターブロック部31には、複数のサイプ160と、マルチサイプMとが形成されている。
また、本実施形態に係るサイプ160の溝底部には、一方のサイプ壁面と他方のサイプ壁面との間隔が広がる空隙部分200が形成されている。また、空隙部分200におけるサイプ幅方向断面の形状は、涙滴形状である。なお、センターブロック部31に形成されるサイプ160と、セカンドブロック部41に形成されるサイプ180の詳細な構成については後述する。
(2)サイプの形状
次に、サイプ160の形状について、図8乃至9を参照して説明する。図8(a)は、一方のサイプ壁面160Pの正面図である。図8(b)は、サイプ160の接地面Sにおける平面図である。図9は、他方のサイプ壁面160Qの正面図である。
図8に示すように、センターブロック部31において、サイプ160によって形成されたサイプ壁面160Pには、尾根部61a、62aと、合流部Cから接地面S側に延び出して接地面Sに直交する尾根部69と、が形成されている。また、谷部64bと尾根部62bとが交互に平行に配列されるとともに、谷部64aが、尾根部62aと平行に形成されている。また、谷部63bと尾根部61bとが交互に平行に配列され、谷部63aが、尾根部61aと平行に形成されている。なお、これらの尾根部61a、61b、62a、62b、69の構成と、谷部63a、63b、64a、64bの構成とは、上述した第1実施形態と同様である。
本実施形態に係るサイプ壁面160Pには、サイプの溝底部Rxにおいて、他方のサイプ壁面160Qとの間隔が広がる空隙部分200が形成されている。また、尾根部列のタイヤ径方向Td内側の端部REは、空隙部分200のタイヤ径方向Td外側の端部200Eよりも、タイヤ径方向Td内側に位置する。
例えば、尾根部61aのタイヤ径方向Td内側の端部REは、空隙部分200のタイヤ径方向Td外側の端部200Eよりも、タイヤ径方向Td内側に位置する。また、谷部63bのタイヤ径方向Td内側の端部VEも、空隙部分200のタイヤ径方向Td外側の端部200Eよりも、タイヤ径方向Td内側に位置する。
つまり、サイプ160の深さH1と、空隙部分200のタイヤ径方向の長さH2と、接地面Sから尾根部61aのタイヤ径方向Td内側の端部REの深さH3とは、H1<H2+H3の関係を満たす。
また、尾根部列のタイヤ径方向Td内側の端部REは、空隙部分200のタイヤ径方向Td外側の端部200Eから、空隙部分200の10〜30%の範囲内に位置する。
具体的に、図8(a)に示すように、空隙部分200のタイヤ径方向Td外側の端部200Eと、尾根部61aのタイヤ径方向Td内側の端部REとのタイヤ径方向Tdにおける長さをDXとすると、10%≦DX/H2≦30%の関係を満たす。
また、図9に示すように、サイプ壁面160Pに対向する他方のサイプ壁面160Qには、尾根部列に噛み合うように谷部列が形成されており、かかる谷部列のタイヤ径方向Td内側の端部VEも、空隙部分200のタイヤ径方向Td外側の端部200Eよりも、タイヤ径方向Td内側に位置する。
例えば、サイプ壁面60Pの尾根部61a、62aに対向する位置に、尾根部61a、62aと係合する谷部71a、72aが形成されており、谷部71a、72aのタイヤ径方向Td内側の端部VEも、空隙部分200のタイヤ径方向Td外側の端部200Eよりも、タイヤ径方向Td内側に位置する。
次に、セカンドブロック部41に形成されるサイプ180の構成について説明する。図10(a)は、一方のサイプ壁面180Pの正面図である。図10(b)は、サイプ180の接地面Sにおける平面図である。
図10に示すように、サイプ180によって形成された一方のサイプ壁面180Pにも、空隙部分200が形成されている。なお、サイプ壁面180Pにおいて、尾根部81a、81b、82a、82b、85a、86a、89の構成と、谷部83a、83b、84a、84bの構成とは、上述した第1実施形態と同様である。
また、一方のサイプ壁面180Pにおいて、尾根部列のタイヤ径方向Td内側の端部REは、空隙部分200のタイヤ径方向Td外側の端部200Eよりも、タイヤ径方向Td内側に位置する。例えば、尾根部81aのタイヤ径方向Td内側の端部REは、空隙部分200のタイヤ径方向Td外側の端部200Eよりも、タイヤ径方向Td内側に位置する。また、谷部83bのタイヤ径方向Td内側の端部VEも、空隙部分200のタイヤ径方向Td外側の端部200Eよりも、タイヤ径方向Td内側に位置する。
なお、尾根部列のタイヤ径方向Td内側の端部REは、空隙部分200のタイヤ径方向Td外側の端部200Eから、空隙部分200の10〜30%の範囲内に位置する。
例えば、図10(a)に示すように、空隙部分200のタイヤ径方向Td外側の端部200Eと、尾根部81aのタイヤ径方向Td内側の端部REとのタイヤ径方向Tdにおける長さをDXとすると、10%≦DX/H2≦30%の関係を満たす。
(3)作用・効果
空気入りタイヤ1によれば、サイプ160、180の溝底部には、一方のサイプ壁面と他方のサイプ壁面との間隔が広がる空隙部分200が形成されており、尾根部列のタイヤ径方向Td内側の端部REは、空隙部分200の内部に位置する。このような空気入りタイヤ1によれば、サイプ160、180によってV字状の排水経路が形成されるとともに、この排水経路を空隙部分200に確実に到達させることができる。
ここで、図11には、従来技術に係るサイプ壁面300Pが示されている。また、図12(a)には、従来技術に係る空気入りタイヤにおいて、トレッド部に入力が付与された際のサイプ壁面300Pとサイプ壁面300Qとの接触領域A1が示されている。図12(b)には、本実施形態に係る空気入りタイヤ1において、トレッド部に入力が付与された際のサイプ壁面160Pとサイプ壁面160Qとの接触領域A2が示されている。
図11に示すように、従来技術に係るサイプ壁面300Pでは、尾根部361a、362aのタイヤ径方向Td内側の端部REが、空隙部分200のタイヤ径方向Td外側の端部200Eよりもタイヤ径方向Td外側に位置する。また、接地面Sから尾根部361a、362aのタイヤ径方向Td内側の端部REまでの深さH4と、空隙部分200のタイヤ径方向Td外側の端部200Eとの間隔DYの範囲に、平面部分RYが形成されていた。
その結果、従来技術に係る空気入りタイヤでは、トレッド部に入力が付与されると、図12(a)に示すように、サイプ壁面300Pとサイプ壁面300Qとの接触領域A1において、空隙部分200との排水経路が閉塞する閉塞部分Azが発生していた。
本実施形態に係る空気入りタイヤ1では、尾根部列のタイヤ径方向Td内側の端部REが、空隙部分200のタイヤ径方向Td外側の端部200Eよりも、タイヤ径方向Td内側に位置するので、図12(b)に示すように、閉塞部分Azを形成することなく、排水経路が空隙部分200に到達させることが可能になる。
このように、かかる空気入りタイヤ1によれば、サイプ160、180の閉塞によって排水性能が低下することを抑制し、氷上性能を確実に高めることができる。
また、かかる空気入りタイヤ1によれば、サイプ160、180の溝底部に空隙部分200を形成することによって、サイプ160、180の溝底部に亀裂が発生することを抑制できるので、タイヤの耐久性能も高めることが可能になる。
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1では、尾根部列のタイヤ径方向Td内側の端部REは、空隙部分200のタイヤ径方向Td外側の端部200Eから、空隙部分200の10〜30%の範囲内に位置する。かかる空気入りタイヤ1では、尾根部列のタイヤ径方向Td内側の端部REが、空隙部分の10%未満の位置であると、排水経路が空隙部分に十分に到達しない場合があり、排水性能が向上しにくい。一方、空隙部分の30%よりも大きい位置になると、タイヤ成型時における空隙部分200の成型が困難となる。
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1では、空隙部分200におけるサイプ幅方向断面の形状は、涙滴形状である。かかる空気入りタイヤ1によれば、空隙部分200を形成する一方のサイプ壁面160Pと他方のサイプ壁面160Qとが、タイヤ径方向Tdに向かってなだらかに傾斜するので、タイヤ成型時における釜抜け性を確保することが可能になり、ブロック欠けによる品質の低下を抑制できる。
なお、上述した実施形態では、センターブロック部31に形成されるサイプ160と、セカンドブロック部41に形成されるサイプ180とに着目して説明したが、ショルダーブロック部51においても、サイプ100の溝底部に空隙部分200を形成するようにしてもよい。
さらに、上述した実施形態では、センターブロック部31に形成されるサイプ160と、セカンドブロック部41に形成されるサイプ180との両方に空隙部分200が形成されている場合を例に挙げて説明したが、少なくとも一方に空隙部分200が形成されていてもよい。
(4)比較評価
次に、本発明の効果を更に明確にするために、以下の比較例及び実施例に係る空気入りタイヤを用いて行った比較評価について説明する。なお、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
(4.1)各空気入りタイヤの構成
まず、比較評価にあたり、比較例1に係る空気入りタイヤと、実施例1乃至4に係る空気入りタイヤとを準備した。表2には、各空気入りタイヤの構成が示されている。なお、各空気入りタイヤは、サイプの構成を除き、他の構成は同一である。また、各空気入りタイヤにおいて、サイプの深さH1(10mm)と、空隙部分200のタイヤ径方向Tdにおける長さR2(4mm)とは、同一とした。
また、本試験では、各空気入りタイヤのタイヤサイズを全て11R22.5/16PRとした。全ての空気入りタイヤについて、適用リムを7.50のリムとし、内圧を900kPaとし、正規荷重を負荷した状態で試験を行った。ここで、「正規荷重」とは、JATMAが発行する2008年版のYEAR BOOKに定められた適用サイズ・プライレーティングにおける最大荷重を指す。
比較例1に係る空気入りタイヤ1では、センターブロック部31及びセカンドブロック部41に形成される尾根部列のタイヤ径方向Td内側の端部REが、タイヤ接地面Sから5mmの位置であるものを用いた。よって、比較例1に係る空気入りタイヤでは、空隙部分200のタイヤ径方向Tdにおける長さR2に対して、空隙部分200における尾根部列の長さDXの割合は、0%としている。なお、比較例1に係る空気入りタイヤは、空隙部分200の断面形状を涙滴形とした。
実施例1に係る空気入りタイヤでは、センターブロック部31及びセカンドブロック部41に形成される尾根部列のタイヤ径方向Td内側の端部REが、タイヤ接地面Sから6.2mmの位置であるものを用いた。よって、実施例1に係る空気入りタイヤでは、空隙部分200のタイヤ径方向Tdにおける長さR2に対して、空隙部分200における尾根部列の長さDXの割合は、5%としている。なお、実施例1に係る空気入りタイヤは、空隙部分200の断面形状を涙滴形とした。
実施例2に係る空気入りタイヤは、センターブロック部31及びセカンドブロック部41に形成される尾根部列のタイヤ径方向Td内側の端部REが、タイヤ接地面Sから6.4mmの位置であるものを用いた。よって、実施例2に係る空気入りタイヤでは、空隙部分200のタイヤ径方向Tdにおける長さR2に対して、空隙部分200における尾根部列の長さDXの割合は、10%としている。なお、実施例2に係る空気入りタイヤは、空隙部分200の断面形状を涙滴形とした。
実施例3に係る空気入りタイヤは、センターブロック部31及びセカンドブロック部41に形成される尾根部列のタイヤ径方向Td内側の端部REが、タイヤ接地面Sから7mmの位置であるものを用いた。よって、実施例3に係る空気入りタイヤでは、空隙部分200のタイヤ径方向Tdにおける長さR2に対して、空隙部分200における尾根部列の長さDXの割合は、25%としている。なお、実施例3に係る空気入りタイヤは、空隙部分200の断面形状を涙滴形とした。
実施例4に係る空気入りタイヤは、センターブロック部31及びセカンドブロック部41に形成される尾根部列のタイヤ径方向Td内側の端部REが、タイヤ接地面Sから7.2mmの位置であるものを用いた。よって、実施例4に係る空気入りタイヤでは、空隙部分200のタイヤ径方向Tdにおける長さR2に対して、空隙部分200における尾根部列の長さDXの割合は、30%としている。なお、実施例4に係る空気入りタイヤは、空隙部分200の断面形状を涙滴形とした。
(4.2)評価結果
次に、各空気入りタイヤを用いて行った評価結果について、表2を参照しながら説明する。
(4.2.1)氷上性能評価
氷上性能評価では、新品時(未使用)の各空気入りタイヤを車両に装着して、氷路面上における発進加速度を測定した。そして、比較例1のタイヤの発進加速度に基づく評価指数を100とし、実施例1乃至4のタイヤについては相対評価となる評価指数を算出した。
表2の評価結果では評価指数が大きいほど発進加速性能に優れていること、すなわち、氷上性能が高いことを示す。表2から判るように、氷上性能は、比較例1のタイヤに比べて、実施例2乃至4のタイヤが優れていることが証明された。
(4.2.2)ブロック耐久性能評価
ブロック耐久性能評価では、車両に装着して所定距離を走行し、タイヤ全体の摩耗量の平均が所定量となった時点(摩耗率40%の時点)において、サイプの溝底部に発生するクラックを目視で確認した。表2に示すように、比較例1のタイヤと、実施例1乃至4のタイヤとは、ブロック耐久性能が同等であった。
(4.2.3)ブロック欠け評価
ブロック欠け評価では、タイヤ生成時において、サイプに発生する欠けを目視で評価した。表2に示すように、いずれのタイヤにも、ブロック欠けが見られなかった。
(4.2.4)総合評価
比較例1と実施例1乃至4とを比較すると、実施例2乃至4のタイヤが、氷上性能に優れていることが判った。これにより、空隙部分における尾根部列の形成割合は、10%以上であるタイヤの方が、より優れていることが証明された。
[その他の実施形態]
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
例えば、上述した実施形態に係る空気入りタイヤでは、センター陸部列30とセカンド陸部列40とに、ラグ溝21及び周方向細溝13が形成されている場合を例に挙げて説明したが、ラグ溝21及び周方向細溝13を形成せずに、センター陸部列30とセカンド陸部列40との各々を、1本の陸部列としてもよい。
また、主溝として、2本の内側主溝11と2本の外側主溝12とのが形成されている場合を例に挙げて説明したが、主溝は、2本以上であれば、その数に限定されない。
また、本実施形態に係る空気入りタイヤには、窒素ガスなどの不活性ガスを充填してもよい。
また、上述した実施形態に係る空気入りタイヤは、氷上性能を高める効果を有するが、雪上路面などのウェット路面においても、有用であることは無論である。
また、上述した実施形態は、組み合わせることが可能である。このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められる。