JP6185696B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents
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すなわち、特許文献2のサイプ形状にあっては、図5に示すように、陸部が、踏面Sからの接地反力のもと、図面左から右へ向かう方向に入力を受けた場合は、深さ中央部の屈曲部100でサイプの壁面同士が接触し、紙面左側の陸部の倒れ込みを支える。一方、陸部が、踏面Sからの接地反力のもと、図面右から左へ向かう方向に入力を受けた場合は、屈曲部101及び屈曲部102でサイプの壁面同士が接触し、紙面右側の陸部の倒れ込みを支えることになる。このように、踏面からの入力方向に依存して、陸部の倒れ込みを支持する箇所はサイプ深さ方向に亘って異なることになる。特に、図示例において、陸部が図面右から左へ向かう方向に入力を受けた場合には、陸部の倒れ込みの支持箇所は屈曲部101と屈曲部102の両者となり、支持箇所がサイプ深さ方向で分散してしまうことになる。
(1)トレッドに形成した陸部に、該トレッドの踏面上でタイヤ幅方向にストレート状に延在するサイプを設けた空気入りタイヤにおいて、
前記サイプは、前記陸部の踏面からサイプ深さ方向に向かって、前記サイプの開口中心から引いた前記踏面の法線に沿って延びる垂直部と、該法線を挟んで前記サイプの幅方向の一方及び他方にそれぞれ屈曲する屈曲部とを有し、
前記屈曲部は、前記サイプの前記踏面からの深さをDとした場合、前記踏面からD/7以上D/2以下の深さに在る第1副屈曲点と、前記踏面からD/4以上3D/4以下の深さに在る主屈曲点と、前記踏面からD/2以上6D/7以下の深さに在る第2副屈曲点を介して、前記第1副屈曲点及び前記主屈曲点の間に第1傾斜部並びに、前記主屈曲点及び前記第2副屈曲点の間に第2傾斜部とを形成し、
前記屈曲部は、前記垂直部陸部底部側端及び前記第1副屈曲点を結び、前記法線方向に対し前記第1傾斜部とは逆側に傾斜する第3傾斜部と、前記第2副屈曲点から、前記法線方向に対し前記第2傾斜部とは逆側に傾斜する第4傾斜部と、を有し、
前記第1傾斜部の前記サイプの長手方向の延在面積a1と、前記サイプの前記サイプの幅方向からの正投影の投影面積Aとの比a1/A及び、前記第2傾斜部の前記サイプの長手方向の延在面積a2と、前記サイプの前記サイプの幅方向からの正投影の投影面積Aとの比a2/Aが、ともに0.1以上であり、かつa1=a2であり、
前記陸部には前記サイプが2本以上設けられ、前記踏面における隣接するサイプ相互間の、最短距離がD以上、配設間隔が10D以下であることを特徴とする空気入りタイヤ。
一方、垂直部では、タイヤ接地時における陸部踏面の巻き込みを防止して、サイプエッジの欠損を回避することができる。
なお、本発明において、「サイプの開口中心から引いた前記踏面の法線に沿って延びる垂直部」は、数学的な意味で厳密に踏面と直交している必要はなく、タイヤ接地時における陸部踏面の巻き込みを防止してサイプエッジの欠損を回避することができる範囲内で、法線方向に向かって延びていれば良い。従って、垂直部の延在方向と踏面とのなす角度は、鋭角側から測定して、例えば80°以上90°以下とすることもできる。
なお、サイプの幅方向とは、サイプ長手方向に沿って幅0.1〜1.0mmを有して開口する該サイプの、開口幅(サイプ幅)の向きである。
図1は、本実施形態の空気入りタイヤ1(以下、タイヤとも称する)のトレッド2の部分展開図を示す。
なお、図示例では、周方向溝4及び横溝5によって区画されるブロック状の陸部を示しているが、陸部3は、周方向溝4のみによって形成される、タイヤ周方向に連続するリブ状陸部であってもよい。また、陸部3は、横溝5のみによって形成される、タイヤ幅方向に連続するラグ状陸部であってもよい。なお、周方向溝4は、図示例では直線であるが、例えば、ジグザグ状、鋸歯状、波状等の非直線状であってもよい。
また、横溝5は、図示例では、タイヤ幅方向と完全に平行、換言すればタイヤ周方向に対して垂直な方向に直線状に延在しているが、横溝5は、タイヤ幅方向に対し傾斜して延在していてもよく、また、例えば、ジグザグ状、鋸歯上、波状等の非直線状であってもよい。
ここで、本発明で言うサイプ6とは、陸部3の接地時にサイプの溝壁の少なくとも一部が互いに接触する(閉じる)、幅0.1〜1.0mmの切込みのことを言う。
サイプ6は、踏面Sの、サイプの開口中心から引いた前記踏面の法線に沿って延びる垂直部10及び、前記法線を挟んで一方及び他方にそれぞれ屈曲する屈曲部11を有しており、陸部3をタイヤ周方向に分割するように、陸部3の底部近傍まで連続して形成されている。屈曲部11は、垂直部10に対してタイヤ周方向の前後方向、図示例で言えば、左右方向に傾斜して折り返すように形成されている。
なお、以下で説明するサイプ6の各寸法は、図3で示すように、サイプ6の幅方向中央線C(一点鎖線)により規定されるものである。また、以下の説明における図3の断面上の「点」、「部」は、実際には、それぞれ「線」、「面」を成すものであり、よって、当該サイプ6は、サイプ幅の断面形状を長手方向に延在させてなる三次元構造を有するものとして説明する。
そして、踏面SからD/4以上D/3以下の深さ領域にて、垂直部10から、踏面Sの法線方向に対し一方側に向かって傾斜する面、ここでは紙面右下側に向かって傾斜する傾斜部14が形成されている。続いて、踏面SからD/3以上D/2以下の深さ領域にて、深さD/3の位置に在る第1副屈曲点Q1を介して、前記一方側とは反対の他方側に向かって傾斜する面、ここでは紙面左下側に向かって傾斜する第1傾斜部12が形成されている。続いて、踏面SからD/2以上2D/3以下の深さ領域にて、深さD/2の位置に在る主屈曲点Pを介して前記一方側に傾斜する面、ここでは紙面右下側に向かって傾斜する第2傾斜部13が形成されている。続いて、踏面Sから2D/3以上3D/4以下までの深さ領域にて、深さ2D/3の位置に在る第2副屈曲点Q2を介して、前記他方側に向かって傾斜する面、ここでは紙面左下側に向かって傾斜する傾斜部15が形成されている。さらに、傾斜部15の陸部底部側端から陸部の底部に向かって、法線方向(Z方向)に沿って直線状となる部分16が形成されている。
上述したとおり、サイプの幅方向とは、サイプ長手方向に沿って幅0.1〜1.0mmを有して開口する該サイプの、開口幅(サイプ幅K)の向きであり、該サイプ幅は、踏面Sからサイプ深さDに亘ってほぼ一定である。
ここにおいて、サイプ深さDと、サイプの長手方向長さLとを乗じて得た面積をサイプの投影面積Aとしたとき、
第1傾斜部12の面積a1と該サイプの投影面積Aとの比a1/A及び、第2傾斜部13の面積a2と該サイプの投影面積Aとの比a2/Aを、ともに0.1以上とすることが肝要である。
つまり、図3を用いて説明すれば、陸部3が、路面から、紙面左から右へ向かう方向の入力を受けた場合には、第1傾斜部12で、サイプ6により分断された陸部の壁面同士が強く接触し、その摩擦力によって、路面からの入力側、ここでは紙面左側の陸部が支えられて倒れ込み変形が抑制される。一方、陸部3が、路面から、紙面右から左へ向かう方向の入力を受けた場合には、第2傾斜部13で、サイプ6により分断された陸部の壁面同士が強く接触し、その摩擦力によって、路面からの入力側、ここでは紙面右側の陸部が支えられて倒れ込み変形が抑制される。
一方で、サイプの配設間隔の低減に伴うエッジ成分の減少を抑制する観点から、上記配設間隔は10D以下とすることが好ましい。
つまり、踏面Sにおけるサイプ間隔が大きい、又は、踏面Sに占めるサイプの割合が小さい場合、従来の、踏面の法線方向に直線状に延びるサイプを配設すると、陸部内におけるサイプ密度も小さくなるため、陸部の壁面の倒れこみ変形を回避することが難しい。そこで、このような条件下では、踏面Sのサイプ密度を大きくせずとも、陸部内部のサイプ密度を大きくすることのできる、本発明のサイプ6が有効に作用するということである。
特には、センター領域のサイプ密度TLC/RCが前記の範囲かつ0.0001/mm以上であり、ショルダー領域の前記サイプ密度TLS/RSが前記の範囲かつ0.0001/mm以上であることが好ましい。
また、比較例タイヤ9は、サイプの形状を、垂直部を設けることなく踏面側からサイプ深さ方向に6回屈曲してジグザグ状(振幅一定の三角波形状)に延びる屈曲部を有する形状としたこと以外は、発明例タイヤ1と同様である。なお、サイプの屈曲方向と、法線に直交する方向とのなす角度は30.256°であり、サイプは、屈曲部の陸部底部側端から陸部の底部に向かって法線方向に沿って延びる長さ0.49Dの部分を有している。
結果を表2に示す。なお、表2に示す摩擦係数は、従来例を100とする指数表示で表したものであり、数値が大きいほど性能が良いことを示す。
2 トレッド
3 陸部
4 周方向溝
5 横溝
6、6a、6b、6c、6d サイプ
10 垂直部
11 屈曲部
12 第1傾斜部
13 第2傾斜部
14、15 傾斜部
A サイプの幅方向からの正投影の面積
C サイプの幅方向中央線
D サイプ深さ
E 第1傾斜部12の長さ
F 第2傾斜部13の長さ
K サイプ幅
L サイプの長手方向長さ
P 主屈曲点
Q1 第1副屈曲点
Q2 第2副屈曲点
S 陸部3の踏面
W1 第1傾斜部12の、サイプ幅方向の距離
W2 第2傾斜部13の、サイプ幅方向の距離
H 垂直部10の踏面Sからの法線方向の長さ
X タイヤ幅方向
Y タイヤ周方向
Z 踏面Sから陸部の底部に向かう法線方向(タイヤ径方向)
a1 第1傾斜部12の、サイプ長手方向の延在面積
a2 第2傾斜部13の、サイプ長手方向の延在面積
Claims (6)
- トレッドに形成した陸部に、該トレッドの踏面上でタイヤ幅方向にストレート状に延在するサイプを設けた空気入りタイヤにおいて、
前記サイプは、前記陸部の踏面からサイプ深さ方向に向かって、前記サイプの開口中心から引いた前記踏面の法線に沿って延びる垂直部と、該法線を挟んで前記サイプの幅方向の一方及び他方にそれぞれ屈曲する屈曲部とを有し、
前記屈曲部は、前記サイプの前記踏面からの深さをDとした場合、前記踏面からD/7以上D/2以下の深さに在る第1副屈曲点と、前記踏面からD/4以上3D/4以下の深さに在る主屈曲点と、前記踏面からD/2以上6D/7以下の深さに在る第2副屈曲点を介して、前記第1副屈曲点及び前記主屈曲点の間に第1傾斜部並びに、前記主屈曲点及び前記第2副屈曲点の間に第2傾斜部とを形成し、
前記屈曲部は、前記垂直部の陸部底部側端及び前記第1副屈曲点を結び、前記法線方向に対し前記第1傾斜部とは逆側に傾斜する第3傾斜部と、前記第2副屈曲点から、前記法線方向に対し前記第2傾斜部とは逆側に傾斜する第4傾斜部と、を有し、
前記第1傾斜部の前記サイプの長手方向の延在面積a1と、前記サイプの前記サイプの幅方向からの正投影の投影面積Aとの比a1/A及び、前記第2傾斜部の前記サイプの長手方向の延在面積a2と、前記サイプの前記サイプの幅方向からの正投影の投影面積Aとの比a2/Aが、ともに0.1以上であり、かつa1=a2であり、
前記陸部には前記サイプが2本以上設けられ、前記踏面における隣接するサイプ相互間の、最短距離がD以上、配設間隔が10D以下であることを特徴とする空気入りタイヤ。 - 前記比a1/A及び前記比a2/Aが、ともに0.5以下であることを特徴とする、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- 前記第1傾斜部の、前記踏面の接線方向の距離W1は0<W1≦D/3であり、前記第2傾斜部の、前記踏面の接線方向の距離W2は0<W2≦D/3であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
- 前記サイプは、前記トレッドの踏面で前記陸部を形成する一方の周方向溝から他方の周方向溝まで前記陸部を横断し、前記サイプの前記踏面における長手方向長さを全サイプで合計した値TLの、前記陸部の総面積Rに対する割合を示す、サイプ密度TL/Rが、0.1/mm以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記トレッドの端部相互間の中点である1/2点と前記トレッド端との中点である1/4点相互間に跨るセンター領域における、前記サイプの前記踏面における長手方向長さを全サイプで合計した値TLCの、前記陸部の総面積RCに対する割合を示すサイプ密度TLC/RCが0.25/mm以下、且つ前記1/4点から前記トレッド端までのショルダー領域における、前記サイプの前記踏面における長手方向長さを全サイプで合計した値TLSの、前記陸部の総面積RSに対する割合を示すサイプ密度TLS/RSが0.2/mm以下であり、サイプ密度TLC/RCは、サイプ密度TLS/RSよりも大きいことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記垂直部の前記踏面からの法線方向の長さは、D/7以上であることを特徴とする、
請求項1〜5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
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