JP2013244811A - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】陸部にサイプを設けた空気入りタイヤにおいて、サイプエッジの欠損の発生を抑制しつつ、氷雪路面及び乾燥路面の双方において、制動・駆動性能等をより向上させる。
【解決手段】トレッドの陸部に配設されたサイプが、該陸部の踏面の法線を挟んで、サイプの幅方向の一方及び他方にそれぞれ屈曲する部分がサイプの長手方向へ連続する屈曲域と、該屈曲域の長手方向のいずれか一方側又は両側に連なる平板状域とを有し、屈曲域は、踏面からサイプ深さ方向に向かって、前記法線に沿って延びる垂直部と、踏面からのサイプ深さをDとした場合に、踏面からD/7以上D/2以下に在る第1副屈曲点、踏面からD/4以上3D/4以下に在る主屈曲点、踏面からD/2以上6D/7以下に在る第2副屈曲点を介して、第1副屈曲点及び主屈曲点の間に第1傾斜部並びに、主屈曲点及び第2副屈曲点の間に第2傾斜部が形成された屈曲部を有する。
【選択図】図3
【解決手段】トレッドの陸部に配設されたサイプが、該陸部の踏面の法線を挟んで、サイプの幅方向の一方及び他方にそれぞれ屈曲する部分がサイプの長手方向へ連続する屈曲域と、該屈曲域の長手方向のいずれか一方側又は両側に連なる平板状域とを有し、屈曲域は、踏面からサイプ深さ方向に向かって、前記法線に沿って延びる垂直部と、踏面からのサイプ深さをDとした場合に、踏面からD/7以上D/2以下に在る第1副屈曲点、踏面からD/4以上3D/4以下に在る主屈曲点、踏面からD/2以上6D/7以下に在る第2副屈曲点を介して、第1副屈曲点及び主屈曲点の間に第1傾斜部並びに、主屈曲点及び第2副屈曲点の間に第2傾斜部が形成された屈曲部を有する。
【選択図】図3
Description
この発明は、トレッドに陸部を有し、該陸部に1本以上のサイプを設けた空気入りタイヤに関する。
従来、空気入りタイヤにおいて、氷雪路面上で良好な走行性能を発揮するために、トレッドに設けられた陸部に対して複数本のサイプを設けて、エッジ成分を増加させることが行われている。
しかし、サイプの本数を増加させると、エッジ成分は増加するものの、陸部の剛性が低下してしまう。そうすると、制動・駆動又は旋回時にタイヤへ荷重負荷がかかった際、陸部に倒れ込み変形が生じ、タイヤと路面との接地面積が減少して、接地性が悪化するという問題が生じる。
そこで、特許文献1では、陸部に形成するサイプを、踏面側からタイヤ径方向内側に複数回屈曲してジグザグ状に延びる形状にすることによって、陸部の倒れ込み変形を抑制して接地性を維持した、空気入りタイヤを提案している。
ところが、氷雪路面上のみならず、摩擦係数が高くて大きな力が入力される乾燥路面上でも使用するオールシーズン用タイヤへの、上記技術の適用を考慮した場合、特許文献1のサイプ形状では、特に乾燥路面での入力時、踏面近傍のサイプエッジが踏面と路面との間に巻き込まれて、サイプエッジが欠損してしまうことが問題になる。
これに対し特許文献2では、図6に示すような、陸部の踏面Sから法線方向に延びる垂直部と、該垂直部に続いて踏面Sの接線の前後方向に屈曲しながら陸部の底部方向に延びる屈曲部とを有するサイプを使用することを提案している。かかる構成によれば、屈曲部にて陸部の倒れ込み変形を抑制するとともに、垂直部にてサイプエッジの欠損を抑制することができる。
ここで近年、氷雪路面及び乾燥路面の双方における走行性能をより高い次元で向上させることが切望されており、陸部に設けるサイプ形状にあっては、さらなる改善の余地が残されていた。
そこで本発明は、トレッドの陸部に1本以上のサイプを設けた空気入りタイヤにおいて、サイプエッジの欠損の発生を抑制しつつ、陸部の倒れ込み変形を十分に抑制して陸部の接地性を向上させ、氷雪路面及び乾燥路面の双方において、制動性能及び駆動性能をより向上させることを目的とする。
発明者が、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねたところ、特許文献2のサイプ形状では、タイヤ転動時に、陸部に対する踏面からの入力方向によって、陸部の倒れ込みを支え合う箇所がタイヤ径方向であるサイプ深さ方向で異なり、支え合いの効果が分散することを発見した。
すなわち、特許文献2のサイプ形状にあっては、図6に示すように、陸部が、踏面Sからの接地反力のもと、図面左から右へ向かう方向に入力を受けた場合は、深さ中央部の屈曲部100でサイプの壁面同士が接触し、紙面左側の陸部の倒れ込みを支える。一方、陸部が、踏面Sからの接地反力のもと、図面右から左へ向かう方向に入力を受けた場合は、屈曲部101及び屈曲部102でサイプの壁面同士が接触し、紙面右側の陸部の倒れ込みを支えることになる。このように、踏面からの入力方向に依存して、陸部の倒れ込みを支持する箇所はサイプ深さ方向に亘って異なることになる。特に、図示例において、陸部が図面右から左へ向かう方向に入力を受けた場合には、陸部の倒れ込みの支持箇所は屈曲部101と屈曲部102の両者となり、支持箇所がサイプ深さ方向で分散してしまうことになる。
すなわち、特許文献2のサイプ形状にあっては、図6に示すように、陸部が、踏面Sからの接地反力のもと、図面左から右へ向かう方向に入力を受けた場合は、深さ中央部の屈曲部100でサイプの壁面同士が接触し、紙面左側の陸部の倒れ込みを支える。一方、陸部が、踏面Sからの接地反力のもと、図面右から左へ向かう方向に入力を受けた場合は、屈曲部101及び屈曲部102でサイプの壁面同士が接触し、紙面右側の陸部の倒れ込みを支えることになる。このように、踏面からの入力方向に依存して、陸部の倒れ込みを支持する箇所はサイプ深さ方向に亘って異なることになる。特に、図示例において、陸部が図面右から左へ向かう方向に入力を受けた場合には、陸部の倒れ込みの支持箇所は屈曲部101と屈曲部102の両者となり、支持箇所がサイプ深さ方向で分散してしまうことになる。
そこで発明者は、支え合いの効果がサイプ深さ方向に分散することを回避できれば、より有効に陸部の倒れ込みを抑制できるとの着想に基づき、さらに研究を重ねた。その結果、サイプを、サイプ深さの中央領域で屈曲させて、サイプ深さの中央領域にて2つの比較的大きな傾斜面を設け、且つ、該傾斜面の面積を適正化することによって、陸部への入力方向に依存することなく、どちらの入力方向であっても同程度の深さ位置で陸部の支え合いを実現できること、しかも、支え合う深さ位置をサイプ深さの中央領域に集中させることで、陸部の倒れ込み変形を有効に抑制して、特に、乾燥路面における制動・駆動性能又は旋回時のコーナリング性能を格段に向上できることを見出した。さらに、屈曲域のサイプの長手方向端部に平板状域を設けることによって、氷雪路面における制動・駆動性能も改善できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)タイヤのトレッドに形成した陸部に、1本以上のサイプを設けた空気入りタイヤであって、
前記サイプは、前記陸部の踏面の、前記サイプの開口中心から引いた法線を挟んで前記サイプの幅方向の一方及び他方にそれぞれ屈曲する部分が、前記サイプの長手方向へ連続する屈曲域と、前記屈曲域の前記長手方向のいずれか一方側又は両側に、前記法線に沿って延びる直線部が前記長手方向へ連なる平板状域とを有し、
前記屈曲域は、前記踏面からサイプ深さ方向に向かって、前記法線に沿って延びる垂直部と、前記サイプの前記踏面からの深さをDとした場合に、前記踏面からD/7以上D/2以下の深さに在る第1副屈曲点、前記踏面からD/4以上3D/4以下の深さに在る主屈曲点、前記踏面からD/2以上6D/7以下の深さに在る第2副屈曲点を介して、前記第1副屈曲点及び前記主屈曲点の間に第1傾斜部並びに、前記主屈曲点及び前記第2副屈曲点の間に第2傾斜部が形成された屈曲部と、を有することを特徴とする空気入りタイヤ。
(1)タイヤのトレッドに形成した陸部に、1本以上のサイプを設けた空気入りタイヤであって、
前記サイプは、前記陸部の踏面の、前記サイプの開口中心から引いた法線を挟んで前記サイプの幅方向の一方及び他方にそれぞれ屈曲する部分が、前記サイプの長手方向へ連続する屈曲域と、前記屈曲域の前記長手方向のいずれか一方側又は両側に、前記法線に沿って延びる直線部が前記長手方向へ連なる平板状域とを有し、
前記屈曲域は、前記踏面からサイプ深さ方向に向かって、前記法線に沿って延びる垂直部と、前記サイプの前記踏面からの深さをDとした場合に、前記踏面からD/7以上D/2以下の深さに在る第1副屈曲点、前記踏面からD/4以上3D/4以下の深さに在る主屈曲点、前記踏面からD/2以上6D/7以下の深さに在る第2副屈曲点を介して、前記第1副屈曲点及び前記主屈曲点の間に第1傾斜部並びに、前記主屈曲点及び前記第2副屈曲点の間に第2傾斜部が形成された屈曲部と、を有することを特徴とする空気入りタイヤ。
本発明による空気入りタイヤによれば、タイヤ転動時、前記屈曲域の屈曲部では、サイプを挟んで対向する凹凸部同士が噛み合い、陸部の倒れ込みを抑制することができる。しかも、サイプの深さ中央領域に2つの傾斜面が適切な面積にわたって形成され、各面で陸部の倒れ込みを支持するため、倒れ込み抑制程度を、踏面からの入力方向に依存することなく同程度にできるとともに、陸部の深さ中央領域で陸部を支持することから、倒れ込み抑制の効果を格段に向上させることが可能となる。一方、前記屈曲域の垂直部では、タイヤ接地時における陸部踏面の巻き込みを防止して、サイプエッジの欠損を回避することができる。
以上のことから、屈曲域では、乾燥路面における制動性能及び駆動性能を向上させることが可能となる。
また、平板状域は、屈曲することなく直線状に延びるサイプ部分を構成するため、氷雪路において、屈曲域に比べて倒れ込み制限が少なくなり、エッジ部での引っ掻き効果が期待される。そのため、サイプの長手方向端部のいずれか一方側又は両側を平板状域にすることにより、乾燥路面のみならず、氷雪路面での制動性能及び駆動性能を向上させることができる。さらに、該平板状域をサイプの長手方向端部に設けることで、タイヤの加硫工程におけるサイプの成形を容易にすることもできる。
なお、本発明において、「サイプの開口中心から引いた法線に沿って延びる垂直部」は、数学的な意味で厳密に踏面と直交している必要はなく、タイヤ接地時における陸部踏面の巻き込みを防止してサイプエッジの欠損を回避することができる範囲内で、法線方向に向かって延びていれば良い。従って、垂直部の延在方向と踏面とのなす角度は、鋭角側から測定して、例えば80°以上90°以下とすることもできる。
また、サイプの幅方向とは、サイプ長手方向に沿って幅0.1〜1.0mmを有して開口する該サイプの、開口幅(サイプ幅)の向きである。
以上のことから、屈曲域では、乾燥路面における制動性能及び駆動性能を向上させることが可能となる。
また、平板状域は、屈曲することなく直線状に延びるサイプ部分を構成するため、氷雪路において、屈曲域に比べて倒れ込み制限が少なくなり、エッジ部での引っ掻き効果が期待される。そのため、サイプの長手方向端部のいずれか一方側又は両側を平板状域にすることにより、乾燥路面のみならず、氷雪路面での制動性能及び駆動性能を向上させることができる。さらに、該平板状域をサイプの長手方向端部に設けることで、タイヤの加硫工程におけるサイプの成形を容易にすることもできる。
なお、本発明において、「サイプの開口中心から引いた法線に沿って延びる垂直部」は、数学的な意味で厳密に踏面と直交している必要はなく、タイヤ接地時における陸部踏面の巻き込みを防止してサイプエッジの欠損を回避することができる範囲内で、法線方向に向かって延びていれば良い。従って、垂直部の延在方向と踏面とのなす角度は、鋭角側から測定して、例えば80°以上90°以下とすることもできる。
また、サイプの幅方向とは、サイプ長手方向に沿って幅0.1〜1.0mmを有して開口する該サイプの、開口幅(サイプ幅)の向きである。
(2)前記平板状域の前記長手方向の長さが、前記サイプの長手方向長さの1%以上95%以下であることを特徴とする、前記(1)に記載の空気入りタイヤ。
前記割合をかかる範囲内にすると、平板状域における陸部の倒れ込みによってトレッドのエッジ部の引っ掻き効果を十分に得ながら、屈曲域では陸部の倒れ込みを抑制できるため、トレッド全体において、陸部の過剰な倒れ込みを回避することができる。このようにして、前記サイプの長手方向端部にて氷雪上性能を改善すると同時に、サイプの長手方向中央では、陸部の倒れ込みを抑制してドライ性能を高められるため、氷雪路面及び乾燥路面双方における制動性能及び駆動性能を、高い次元で両立させることができる。
(3)前記第1傾斜部の前記サイプの長手方向の延在面積a1と、前記サイプの幅方向からの正投影の投影面積Aとの比a1/A及び、前記第2傾斜部の前記サイプの長手方向の延在面積a2と、前記サイプの幅方向からの正投影の投影面積Aとの比a2/Aが、ともに0.1以上0.5以下であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の空気入りタイヤ。
このように、前記第1傾斜部及び前記第2傾斜部の面積を適切な範囲に維持することによって、本発明の効果を十分に発揮させることができる。
(4)前記第1傾斜部の、前記踏面の接線方向の距離W1は0<W1≦D/3であり、前記第2傾斜部の、前記踏面の接線方向の距離W2は0<W2≦D/3であることを特徴とする、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
かかる構成によれば、サイプを挟んで対向する陸部同士がより有効に噛み合って、陸部の倒れ込みをより効果的に抑制することができる。
(5)前記陸部には前記サイプが2本以上設けられ、前記踏面における隣接するサイプ相互間の最短距離がD以上であることを特徴とする、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
かかる構成によれば、氷雪路面のみならず、乾燥路面においても、制動性能及び駆動性能をより向上させるのに有利である。
(6)前記サイプの踏面における長手方向長さを全サイプで合計した値TLの、前記陸部の総面積Rに対する割合を示す、サイプ密度TL/Rが、0.1/mm以下であることを特徴とする、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
一般に、タイヤ回転時に陸部の踏面が路面からの接地反力を受けた場合、特に、陸部内のサイプ密度が比較的小さいと、陸部の壁面が大きく膨出変形し易く、隣接する陸部同士が接触する。従って、上記のようにサイプ密度の比較的小さい陸部に対し、本発明に特徴的なサイプ形状を適用することで、サイプ形状による陸部の倒れ込み変形の抑制効果をより有効に発揮させることが可能となる。
(7)前記トレッドの端部相互間の中点である1/2点と前記トレッド端との中点である1/4点相互間に跨るセンター領域における、前記サイプの前記踏面における長手方向長さを全サイプで合計した値TLCの、前記陸部の総面積RCに対する割合を示すサイプ密度TLC/RCが0.25/mm以下、且つ前記1/4点から前記トレッド端までのショルダー領域における、前記サイプの前記踏面における長手方向長さを全サイプで合計した値TLSの、前記陸部の総面積RSに対する割合を示すサイプ密度TLS/RSが0.2/mm以下であることを特徴とする、前記(1)〜(6)のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
一般に、トレッドのセンター領域のサイプ密度は、ショルダー領域のサイプ密度に比べて大きいため、サイプ密度を領域毎に規定することで、本発明の効果をより発揮することができる。
(8)前記垂直部の前記踏面からの法線方向の長さは、D/7以上であることを特徴とする、前記(1)〜(7)のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
かかる構成によれば、サイプ内に、陸部踏面の巻き込みを防止する垂直部を設けつつ、同時に、陸部の倒れ込みを抑制する屈曲部を充分に確保することができる。
(9)前記サイプの長手方向は、タイヤ幅方向であることを特徴とする、前記(1)〜(8)のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
かかる構成によれば、サイプの垂直部及び屈曲部による上述の機能を、より効果的に発揮することができる。
本発明によれば、トレッドの陸部に1本以上のサイプを設けた空気入りタイヤにおいて、サイプエッジの欠損の発生を抑制しつつ、陸部の倒れ込み変形を十分に抑制して陸部の接地性を向上させ、氷雪路面及び乾燥路面の双方において、制動性能及び駆動性能をより向上させることができる。
以下、本発明に従う空気入りタイヤの一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態の空気入りタイヤ1(以下、タイヤとも称する)のトレッド2の部分展開図を示す。
図1は、本実施形態の空気入りタイヤ1(以下、タイヤとも称する)のトレッド2の部分展開図を示す。
なお、図示は省略するが、このタイヤ1は、左右のサイドウォールと、両サイドウォール間に跨ってトレッド2を備えるクラウン部が連なり、一方のサイドウォール部からクラウン部を通り、他方のサイドウォール部にわたって延びる、有機繊維コード或いはスチールコードのプライからなるカーカスと、このカーカスとトレッド間に配置したスチールコード層からなるベルトを備える。
トレッド2は、リブ状、ラグ状又はブロック状の陸部3を有する。図1の例では、タイヤ周方向(図1で示すY方向)に延びる周方向溝4と、この周方向溝4と交差してタイヤ幅方向(図1で示すX方向)に延びる複数本の横溝5とによって、ブロック状の陸部3が複数区画形成されている。
なお、図示例では、周方向溝4及び横溝5によって区画されるブロック状の陸部を示しているが、陸部3は、周方向溝4のみによって形成される、タイヤ周方向に連続するリブ状陸部であってもよい。また、陸部3は、横溝5のみによって形成される、タイヤ幅方向に連続するラグ状陸部であってもよい。なお、周方向溝4は、図示例では直線であるが、例えば、ジグザグ状、鋸歯状、波状等の非直線状であってもよい。
また、横溝5は、図示例では、タイヤ幅方向と完全に平行、換言すればタイヤ周方向に対して垂直な方向に直線状に延在しているが、横溝5は、タイヤ幅方向に対し傾斜して延在していてもよく、また、例えば、ジグザグ状、鋸歯上、波状等の非直線状であってもよい。
なお、図示例では、周方向溝4及び横溝5によって区画されるブロック状の陸部を示しているが、陸部3は、周方向溝4のみによって形成される、タイヤ周方向に連続するリブ状陸部であってもよい。また、陸部3は、横溝5のみによって形成される、タイヤ幅方向に連続するラグ状陸部であってもよい。なお、周方向溝4は、図示例では直線であるが、例えば、ジグザグ状、鋸歯状、波状等の非直線状であってもよい。
また、横溝5は、図示例では、タイヤ幅方向と完全に平行、換言すればタイヤ周方向に対して垂直な方向に直線状に延在しているが、横溝5は、タイヤ幅方向に対し傾斜して延在していてもよく、また、例えば、ジグザグ状、鋸歯上、波状等の非直線状であってもよい。
そして、陸部3には、1本以上のサイプ6、ここではタイヤ幅方向(X方向)に延びる4本のサイプ6a〜6dが、一方の周方向溝4から他方の周方向溝4まで陸部3を横断するように、且つ、タイヤ周方向(Y方向)に一定の間隔を空けて形成されている。
ここで、本発明で言うサイプ6とは、陸部3の接地時にサイプの溝壁の少なくとも一部が互いに接触する(閉じる)、幅0.1〜1.0mmの切込みのことを言う。
なお、図1では、サイプ6のタイヤ幅方向長さと陸部のタイヤ幅方向長さとが等しく、陸部3が、サイプ6によって周方向に分断されるように配設されているが、サイプ6の長手方向長さは該陸部3のタイヤ幅方向長さよりも短くてもよい。この場合、当該サイプは、その一端が陸部3の片側に開口して他端が陸部内に止まるか、両端が陸部内に止まることになる。
ここで、本発明で言うサイプ6とは、陸部3の接地時にサイプの溝壁の少なくとも一部が互いに接触する(閉じる)、幅0.1〜1.0mmの切込みのことを言う。
なお、図1では、サイプ6のタイヤ幅方向長さと陸部のタイヤ幅方向長さとが等しく、陸部3が、サイプ6によって周方向に分断されるように配設されているが、サイプ6の長手方向長さは該陸部3のタイヤ幅方向長さよりも短くてもよい。この場合、当該サイプは、その一端が陸部3の片側に開口して他端が陸部内に止まるか、両端が陸部内に止まることになる。
次に、図2(a)、(b)及び(c)は、図1の陸部3を、サイプ6の幅方向面で切断した際の断面図である。すなわち、図2(a)は、図1に示すサイプ6の、長手方向一方端付近におけるA−A線に沿う断面図であり、同様に、(b)はサイプ6の長手方向中央におけるB−B線、(c)はサイプ6の長手方向他方端付近におけるC−C線に沿う断面図である。
ここにおいて、図2(a)〜(c)のサイプ6の断面形状が示すように、サイプ6は、踏面Sの、サイプの開口中心から引いた法線に沿って延びる垂直部10及び、前記法線を挟んで一方及び他方にそれぞれ屈曲する屈曲部11が、サイプの長手方向に連続する屈曲域Mと、陸部3の踏面Sからサイプ深さ方向に直線状に延びる直線部9が、サイプの長手方向に連続する平板状域Nと、から成る。
ここにおいて、図2(a)〜(c)のサイプ6の断面形状が示すように、サイプ6は、踏面Sの、サイプの開口中心から引いた法線に沿って延びる垂直部10及び、前記法線を挟んで一方及び他方にそれぞれ屈曲する屈曲部11が、サイプの長手方向に連続する屈曲域Mと、陸部3の踏面Sからサイプ深さ方向に直線状に延びる直線部9が、サイプの長手方向に連続する平板状域Nと、から成る。
次に、該サイプの形状について、図3を参照しながら詳しく説明する。サイプ6は、一定の開口幅の下にトレッド陸部の両壁面に囲まれることで形成される空間であるが、ここでは、サイプ6の幅方向中心線におけるサイプ形状を、サイプ6の長手方向にわたって形成される面として、図3(a)に表している。
図3(a)に示すように、サイプ6は、踏面Sからサイプ深さ方向に向かって形成される垂直部10及び屈曲部11を、サイプの長手方向に延在させて成る屈曲域Mと、この屈曲域Mの長手方向の両端側に、踏面Sからサイプ深さ方向に向かって直線状に延びる直線部9を連ねて成る平板状域N1及びN2と、を有する。なお、同図では、屈曲域Mと平板状域N1及びN2との境界を一点鎖線で表している。また、破線で示されるのは、平板状域N1に隠れて紙面手前からは見えない、屈曲部11の部分である。
このように、サイプ6は、サイプの長手方向中央に屈曲域Mと、サイプの長手方向両端に平板状域N1及びN2と、を有している。
図3(a)に示すように、サイプ6は、踏面Sからサイプ深さ方向に向かって形成される垂直部10及び屈曲部11を、サイプの長手方向に延在させて成る屈曲域Mと、この屈曲域Mの長手方向の両端側に、踏面Sからサイプ深さ方向に向かって直線状に延びる直線部9を連ねて成る平板状域N1及びN2と、を有する。なお、同図では、屈曲域Mと平板状域N1及びN2との境界を一点鎖線で表している。また、破線で示されるのは、平板状域N1に隠れて紙面手前からは見えない、屈曲部11の部分である。
このように、サイプ6は、サイプの長手方向中央に屈曲域Mと、サイプの長手方向両端に平板状域N1及びN2と、を有している。
かかる構成によれば、サイプの長手方向中央一帯に位置する屈曲域Mでは、踏面付近に垂直部10を設けて、タイヤ接地時にサイプのエッジが路面と路面との間に巻き込まれるのを防止することにより、氷雪路面のみならず、摩擦係数が高く大きな力が入力される乾燥路面においても、サイプエッジが欠損するのを回避することができる。また、屈曲部11にて陸部3の倒れ込み変形を抑制して接地性を維持するため、乾燥路面における制動性能及び駆動性能を向上させることができる。
また、サイプの長手方向端部に位置する平板状域N1及びN2では、屈曲することなく直線状に延びるサイプ部分を構成するため、屈曲域に比べて陸部の倒れ込み制限が少なくなり、エッジ部による引っ掻き効果が十分に得られ、氷雪路面における制動性能及び駆動性能を向上させることができる。
また、サイプの長手方向端部に位置する平板状域N1及びN2では、屈曲することなく直線状に延びるサイプ部分を構成するため、屈曲域に比べて陸部の倒れ込み制限が少なくなり、エッジ部による引っ掻き効果が十分に得られ、氷雪路面における制動性能及び駆動性能を向上させることができる。
さて、次に示す図5は、図2(b)におけるサイプ6の拡大図である。つまり、サイプ6の、屈曲域Mにおけるサイプ幅方向の断面形状を示している。この図5を用いて、該サイプ6の垂直部10及び、本発明の特徴の1つである屈曲部11の構成をより具体的に説明する。
なお、以下で説明するサイプ6の各寸法は、図5で示すように、サイプ6の幅方向中央線C(一点鎖線)により規定されるものである。また、以下の説明における図5の断面上の「点」、「部」は、実際には、それぞれ「線」、「面」を成すものであり、よって、当該サイプ6は、図3及び図4に示したように、サイプ幅の断面形状を長手方向に延在させてなる三次元構造を有するものとして説明する。
なお、以下で説明するサイプ6の各寸法は、図5で示すように、サイプ6の幅方向中央線C(一点鎖線)により規定されるものである。また、以下の説明における図5の断面上の「点」、「部」は、実際には、それぞれ「線」、「面」を成すものであり、よって、当該サイプ6は、図3及び図4に示したように、サイプ幅の断面形状を長手方向に延在させてなる三次元構造を有するものとして説明する。
本発明のタイヤにあっては、サイプ6のタイヤ径方向深さをDとした場合に、タイヤ幅方向断面において、屈曲部11が、深さ方向に向かって順に、陸部の踏面SからD/7以上D/2以下の深さ領域に在る第1副屈曲点Q1と、踏面SからD/4以上3D/4以下の深さ領域に在る主屈曲点Pと、踏面SからD/2以上6D/7以下の深さ領域に在る第2副屈曲点Q2とを有し、第1副屈曲点Q1及び主屈曲点Pを結ぶ第1傾斜部12と、主屈曲点P及び第2副屈曲点Q2を結ぶ第2傾斜部13と、を形成することが肝要である。
具体的に、図5に示すサイプ6では、まず、垂直部10が、踏面Sからサイプ深さ方向にD/4の領域にて、陸部3の踏面Sに開口し、踏面Sから陸部の底部に向かって法線方向(図5で示すZ方向)に沿って直線状に形成されている。
そして、踏面SからD/4以上D/3以下の深さ領域にて、垂直部10から、踏面Sの法線方向に対し一方側に向かって傾斜する面、ここでは紙面右下側に向かって傾斜する傾斜部14が形成されている。続いて、踏面SからD/3以上D/2以下の深さ領域にて、深さD/3の位置に在る第1副屈曲点Q1を介して、前記一方側とは反対の他方側に向かって傾斜する面、ここでは紙面左下側に向かって傾斜する第1傾斜部12が形成されている。続いて、踏面SからD/2以上2D/3以下の深さ領域にて、深さD/2の位置に在る主屈曲点Pを介して前記一方側に傾斜する面、ここでは紙面右下側に向かって傾斜する第2傾斜部13が形成されている。続いて、踏面Sから2D/3以上3D/4以下までの深さ領域にて、深さ2D/3の位置に在る第2副屈曲点Q2を介して、前記他方側に向かって傾斜する面、ここでは紙面左下側に向かって傾斜する傾斜部15が形成されている。さらに、傾斜部15の陸部底部側端から陸部の底部に向かって、法線方向(Z方向)に沿って直線状となる部分16が形成されている。
なお、サイプの幅方向とは、サイプ長手方向に沿って幅0.1〜1.0mmを有して開口する該サイプの、開口幅(サイプ幅K)の向きであり、該サイプ幅は、踏面Sからサイプ深さDに亘ってほぼ一定である。
そして、踏面SからD/4以上D/3以下の深さ領域にて、垂直部10から、踏面Sの法線方向に対し一方側に向かって傾斜する面、ここでは紙面右下側に向かって傾斜する傾斜部14が形成されている。続いて、踏面SからD/3以上D/2以下の深さ領域にて、深さD/3の位置に在る第1副屈曲点Q1を介して、前記一方側とは反対の他方側に向かって傾斜する面、ここでは紙面左下側に向かって傾斜する第1傾斜部12が形成されている。続いて、踏面SからD/2以上2D/3以下の深さ領域にて、深さD/2の位置に在る主屈曲点Pを介して前記一方側に傾斜する面、ここでは紙面右下側に向かって傾斜する第2傾斜部13が形成されている。続いて、踏面Sから2D/3以上3D/4以下までの深さ領域にて、深さ2D/3の位置に在る第2副屈曲点Q2を介して、前記他方側に向かって傾斜する面、ここでは紙面左下側に向かって傾斜する傾斜部15が形成されている。さらに、傾斜部15の陸部底部側端から陸部の底部に向かって、法線方向(Z方向)に沿って直線状となる部分16が形成されている。
なお、サイプの幅方向とは、サイプ長手方向に沿って幅0.1〜1.0mmを有して開口する該サイプの、開口幅(サイプ幅K)の向きであり、該サイプ幅は、踏面Sからサイプ深さDに亘ってほぼ一定である。
このように、サイプ6は、主屈曲点P、第1副屈曲点Q1、第2副屈曲点Q2の屈曲点を介して、踏面Sの接線方向に屈曲する形状を有するため、タイヤの転動時に、サイプ6により分断された対向する壁面同士が互いに接触して、陸部の倒れ込みを抑制することができる。
そして本発明にあっては、サイプ6が、踏面Sからのサイプ深さD/7以上6D/7以下の中央領域内において、上記三つの屈曲点により形成される比較的大きな2つの傾斜面、すなわち、第1傾斜部12及び第2傾斜部13を有し、これらの面でサイプ6の壁面同士が強く接触し合って、陸部の倒れ込みが抑制されることになる。
つまり、図5を用いて説明すれば、陸部3が、路面から、紙面左から右へ向かう方向の入力を受けた場合には、第1傾斜部12で、サイプ6により分断された陸部の壁面同士が強く接触し、その摩擦力によって、路面からの入力側、ここでは紙面左側の陸部が支えられて倒れ込み変形が抑制される。一方、陸部3が、路面から、紙面右から左へ向かう方向の入力を受けた場合には、第2傾斜部13で、サイプ6により分断された陸部の壁面同士が強く接触し、その摩擦力によって、路面からの入力側、ここでは紙面右側の陸部が支えられて倒れ込み変形が抑制される。
つまり、図5を用いて説明すれば、陸部3が、路面から、紙面左から右へ向かう方向の入力を受けた場合には、第1傾斜部12で、サイプ6により分断された陸部の壁面同士が強く接触し、その摩擦力によって、路面からの入力側、ここでは紙面左側の陸部が支えられて倒れ込み変形が抑制される。一方、陸部3が、路面から、紙面右から左へ向かう方向の入力を受けた場合には、第2傾斜部13で、サイプ6により分断された陸部の壁面同士が強く接触し、その摩擦力によって、路面からの入力側、ここでは紙面右側の陸部が支えられて倒れ込み変形が抑制される。
次に、図4に示すのは、屈曲域Mの片側にのみ平板状域を設けた例である。
上述したように、図3に示したサイプ6は、サイプの長手方向両端に平板状域N1及びN2を有しているが、図4に示すように、サイプの長手方向の一方端のみに平板状域Nを有することもできる。かかる構成においても、平板状域N1及びN2を有する場合と同様の効果が期待できる。
上述したように、図3に示したサイプ6は、サイプの長手方向両端に平板状域N1及びN2を有しているが、図4に示すように、サイプの長手方向の一方端のみに平板状域Nを有することもできる。かかる構成においても、平板状域N1及びN2を有する場合と同様の効果が期待できる。
また、図3及び図4において、平板状域Nのサイプ深さは、屈曲域Mの深さに等しいが、該平板状域のサイプ深さは、屈曲域Mの深さと異なっていてもよい。
さらに、平板状域Nの長手方向長さが、前記サイプの長手方向長さLの1%以上95%以下とすることが好ましい。
かかる構成によれば、平板状域における陸部の倒れ込みによって、トレッドのエッジ部の引っ掻き効果を十分に得ながら、屈曲域では陸部の倒れ込みを抑制できるため、トレッド全体において、陸部の過剰な倒れ込みを回避することができる。このようにして、前記サイプの長手方向端部にて氷雪上性能を改善すると同時に、サイプの長手方向中央では、陸部の倒れ込みを抑制してドライ性能高められるため、氷雪路面及び乾燥路面双方における制動性能及び駆動性能を、バランス良く向上させることができる。
また、サイプ6の長手方向長さが、踏面Sの同方向の長さよりも短い場合、すなわち、サイプ6の長手方向端部が縦溝4に開口せず陸部内に止まる場合には、該端部側に平板状域を設けることが有利である。なぜなら、加硫成型後に、製品タイヤから金型を確実に且つ、サイプ周りを欠損することなく抜くことができ、製造上有益であるからである。
なお、平板状域Nがサイプ長手方向両端部にある場合において、平板状域Nの長手方向長さとは、2つの平板状域N1及びN2を足した長さを意味する。よって、平板状域Nがサイプの長手方向の一方端にのみある場合も、平板状域NがN1及びN2に分かれて両端にある場合も、サイプの長手方向の長さLに対する、平板状域Nの長さの好適範囲は同じである。
なお、平板状域Nがサイプ長手方向両端部にある場合において、平板状域Nの長手方向長さとは、2つの平板状域N1及びN2を足した長さを意味する。よって、平板状域Nがサイプの長手方向の一方端にのみある場合も、平板状域NがN1及びN2に分かれて両端にある場合も、サイプの長手方向の長さLに対する、平板状域Nの長さの好適範囲は同じである。
ここで、再び、図3及び図4を参照する。図3(b)は図3(a)を、図4(b)は図4(a)を、サイプの幅方向から正投影した投影面である。ここにおいて、第1傾斜部12の面積、すなわち、第1傾斜部12の端辺長さEと、屈曲域Mの長手方向長さとを乗じて求まる面積(E×M)をa1とし、同様にして、第2傾斜部13の面積、すなわち、第2傾斜部13の端辺長さFと、屈曲域Mの長手方向長さとを乗じて求まる面積(F×M)をa2とする。
さらに、図3(b)及び図4(b)において、サイプ深さDと、屈曲域Mの長手方向長さとを乗じて求まる面積(D×M)を、サイプの屈曲域Mの投影面積Aとしたとき、上記の第1傾斜部12の面積a1とサイプの屈曲域Mのサイプ幅方向からの投影面積Aとの比a1/A及び、上記の第2傾斜部13の面積a2と該サイプの屈曲域Mのサイプ幅方向からの投影面積Aとの比a2/Aを、ともに0.1以上0.5以下とすることが肝要である。
さらに、図3(b)及び図4(b)において、サイプ深さDと、屈曲域Mの長手方向長さとを乗じて求まる面積(D×M)を、サイプの屈曲域Mの投影面積Aとしたとき、上記の第1傾斜部12の面積a1とサイプの屈曲域Mのサイプ幅方向からの投影面積Aとの比a1/A及び、上記の第2傾斜部13の面積a2と該サイプの屈曲域Mのサイプ幅方向からの投影面積Aとの比a2/Aを、ともに0.1以上0.5以下とすることが肝要である。
なぜならば、前記比a1/A及びa2/Aがが0.1以上であれば、両傾斜部の面積を十分に確保できるため、入力時に、傾斜部の壁面同士が接触する際に生じる摩擦力が増加し、陸部の倒れ込み変形をより有効に抑制することができるためである。一方、前記比が0.5を超えると、タイヤの製造が困難であるため、前記比を0.5以下とするのが好ましい。
なお、上記サイプ6において、第1傾斜部12の、踏面Sの接線方向の距離、すなわちサイプの長手方向に対する直交方向の距離W1は、0<W1≦D/3であることが好ましく、第2傾斜部13の、踏面Sの接線方向の距離、すなわちサイプの長手方向に対する直交方向の距離W2は、0<W2≦D/3であることが好ましい。
距離W1及びW2を0より大きくすることで、サイプを挟んで対向する陸部同士が接触する第1傾斜部12及び第2傾斜部13が形成され、上記の通り、陸部の倒れ込み変形を抑制することができるからである。また、距離W1及びW2をD/3以下とするのは、タイヤ加硫後に、金型が抜け難くなるのを回避することができ、製造上有利だからである。
また、上述のサイプ形状は、1つの陸部3に対してサイプ6が2本以上設けられている場合に、踏面Sにおける隣接するサイプ相互間の最短距離である、サイプ6の配設間隔がD以上である際に、特に効果的である。
このように、サイプ6を一定以上の間隔で配設すれば、陸部踏面の巻き込みを防止する垂直部を設けつつ、同時に、陸部の倒れこみを抑制する屈曲部を十分に確保することができる。また、サイプ6の相互間隔が狭くなりすぎることでタイヤ表面の剛性が低下するのを防ぎ、本発明の主旨である、ドライ性能に優れて、氷雪路面のみならず乾燥路面においても、制動性能及び駆動性能を向上させる効果を十分に発揮させるためでもある。
一方で、サイプの配設間隔の低減に伴うエッジ成分の減少を抑制する観点から、上記配設間隔は10D以下とすることが好ましい。
一方で、サイプの配設間隔の低減に伴うエッジ成分の減少を抑制する観点から、上記配設間隔は10D以下とすることが好ましい。
また、サイプ6の配設間隔をD以上とした上で、本発明では、サイプ6の踏面Sにおける長手方向長さを全サイプで合計した値TLの、陸部の総面積Rに対する割合を示す、サイプ密度TL/Rを、0.1/mm以下とする。特には、サイプ密度TL/Rが前記の範囲かつ0.0001/mm以上であることが好ましい。
一般的に、タイヤ回転時に陸部3の踏面Sが路面からの接地反力を受けた場合、特に、陸部内のサイプ密度が比較的小さいと、陸部の壁面が大きく膨出変形し易く、隣接する陸部同士が接触し易くなる。従って、屈曲部11を有する本発明の特徴的なサイプ形状の、陸部の倒れ込み変形を抑制するという上述までの効果は、特に、陸部3に対して上記のサイプの配設間隔がD以上、且つ、かかるサイプ密度が0.1/mm以下にてサイプ6を設けた場合に、有利に作用する。
つまり、踏面Sにおけるサイプ間隔が大きい、又は、踏面Sに占めるサイプの割合が小さい場合、従来の、踏面の法線方向に直線状に延びるサイプを配設すると、陸部内におけるサイプ密度も小さくなるため、陸部の壁面の倒れこみ変形を回避することが難しい。そこで、このような条件下では、踏面Sのサイプ密度を大きくせずとも、陸部内部のサイプ密度を大きくすることのできる、本発明のサイプ6が有効に作用するということである。
つまり、踏面Sにおけるサイプ間隔が大きい、又は、踏面Sに占めるサイプの割合が小さい場合、従来の、踏面の法線方向に直線状に延びるサイプを配設すると、陸部内におけるサイプ密度も小さくなるため、陸部の壁面の倒れこみ変形を回避することが難しい。そこで、このような条件下では、踏面Sのサイプ密度を大きくせずとも、陸部内部のサイプ密度を大きくすることのできる、本発明のサイプ6が有効に作用するということである。
さらに、トレッド端相互間の中点である1/2点と該トレッド端との中点である1/4点相互間に跨るセンター領域における、サイプの踏面における長手方向長さを全サイプで合計した値TLCの、陸部の総面積RCに対する割合を示すサイプ密度TLC/RCが0.25/mm以下、且つ1/4点からトレッド端までのショルダー領域における、サイプの踏面における長手方向長さを全サイプで合計した値TLSの、陸部の総面積RSに対する割合を示すサイプ密度TLS/RSが0.2/mm以下とする。
特には、センター領域のサイプ密度TLC/RCが前記の範囲かつ0.0001/mm以上であり、ショルダー領域の前記サイプ密度TLS/RSが前記の範囲かつ0.0001/mm以上であることが好ましい。
特には、センター領域のサイプ密度TLC/RCが前記の範囲かつ0.0001/mm以上であり、ショルダー領域の前記サイプ密度TLS/RSが前記の範囲かつ0.0001/mm以上であることが好ましい。
一般的に、トレッドのセンター領域のサイプ密度は、ショルダー領域のサイプ密度に比べて大きいため、サイプ密度を領域毎に規定することで、本発明の効果をより発揮することができる。
また、垂直部10の踏面Sの法線方向の長さHは、D/7以上であることが好ましい。
垂直部10の踏面Sからの法線方向の長さHが、サイプ6の深さDの1/7より短い場合には、サイプエッジ付近の剛性が不足して、巻き込み変形によりサイプエッジが欠損する恐れがあるからである。
なお、図2〜図5に示す例では、サイプ6は、傾斜部15の陸部底部側端から陸部の底部に向かって、法線方向に沿って直線状となる部分16を有するが、当該部分16を有することなく、第2副屈曲点Q2から、陸部の底部に向かって直線状であってもよい。
また、図1に示すトレッドの部分展開図では、サイプ6は、タイヤ幅方向と完全に平行な状態で延在しているが、タイヤ幅方向に対し傾斜したり、タイヤ周方向に延在したりしていてもよい。タイヤ周方向に延びるサイプ6の場合には、特に旋回時のコーナリング性能を向上させることができ、タイヤ幅方向に対し傾斜して延びるサイプ6の場合には、直進時及び旋回時の両性能を持たせることができる。
さらに、図1では、サイプ6は踏面S上でストレート状であるが、他の形状、例えばジグザグ型、波型であってもよい。また、図1では、1つの陸部3に対して4本のサイプを設けた例を示しているが、サイプ6の本数は、1〜3本、5本以上であってもよい。
本発明の効果を確認するため、本発明に従う発明例タイヤ1〜25と、従来例に従う従来例タイヤと、比較例タイヤ1〜12を試作し、各タイヤの性能評価を行った。
発明例タイヤ1は、タイヤサイズ205/55R16であって、図1のトレッドパターンを有し、1つのブロック状の陸部に対し、図2及び図3に示した実施形態のサイプを4本ずつ形成したタイヤである。サイプは、図1に示すように、踏面上でタイヤ幅方向にストレート状に延びている。サイプの各諸元は、表1に示す通りである。
発明例タイヤ2〜25は、サイプの各諸元を表1の通りに変化させたこと以外は、発明例タイヤ1と同様である。
従来例タイヤは、陸部を、サイプの幅方向面で切断した断面のサイプ形状が、図6に示す、従来のサイプ形状であること以外は、発明例タイヤ1と同様である。
比較例タイヤ1〜12は、サイプの各諸元を表1の通りに変化させたこと以外は、発明例タイヤ1と同様である。
また、比較例タイヤ12は、サイプの形状を、垂直部を設けることなく踏面側からサイプ深さ方向に6回屈曲してジグザグ状(振幅一定の三角波形状)に延びる屈曲部を有する形状としたこと以外は、発明例タイヤ1と同様である。なお、サイプの屈曲方向と、法線に直交する方向とのなす角度は30.256°であり、サイプは、屈曲部の陸部底部側端から陸部の底部に向かって法線方向に沿って延びる長さ0.49Dの部分を有している。
また、比較例タイヤ12は、サイプの形状を、垂直部を設けることなく踏面側からサイプ深さ方向に6回屈曲してジグザグ状(振幅一定の三角波形状)に延びる屈曲部を有する形状としたこと以外は、発明例タイヤ1と同様である。なお、サイプの屈曲方向と、法線に直交する方向とのなす角度は30.256°であり、サイプは、屈曲部の陸部底部側端から陸部の底部に向かって法線方向に沿って延びる長さ0.49Dの部分を有している。
(制動及び駆動性能)
上記の試作タイヤを適用リムにリム組みして規定の空気圧を充填した後、一定荷重条件下で大きなせん断力を与えた。この時に、サイプ壁面同士の接触により発揮される陸部摩擦係数を比較することにより、タイヤの制動性能及び駆動性能評価を行った。この際、陸部に対して双方向からのせん断力、すなわち、図5に示すサイプを境界に、紙面右側及び左側の双方向からの入力となるようにせん断力を与え、その平均摩擦係数を比較した。
上記の試作タイヤを適用リムにリム組みして規定の空気圧を充填した後、一定荷重条件下で大きなせん断力を与えた。この時に、サイプ壁面同士の接触により発揮される陸部摩擦係数を比較することにより、タイヤの制動性能及び駆動性能評価を行った。この際、陸部に対して双方向からのせん断力、すなわち、図5に示すサイプを境界に、紙面右側及び左側の双方向からの入力となるようにせん断力を与え、その平均摩擦係数を比較した。
(氷雪上性能)
氷雪上性能は、車両を雪路面上に設置し、車両の静止状態からアクセルを全開にし、50m走行するまでの時間(加速タイム)を計測する、雪上加速試験を行うことにより評価した。
結果を表2に示す。なお、表2に示す摩擦係数及び氷雪上性能は、従来例を100とする指数表示で表したものであり、各数値が大きいほど性能が良いことを示す。
氷雪上性能は、車両を雪路面上に設置し、車両の静止状態からアクセルを全開にし、50m走行するまでの時間(加速タイム)を計測する、雪上加速試験を行うことにより評価した。
結果を表2に示す。なお、表2に示す摩擦係数及び氷雪上性能は、従来例を100とする指数表示で表したものであり、各数値が大きいほど性能が良いことを示す。
表2から分かるように、発明例タイヤ1〜25はいずれも、従来例タイヤに比べて、平均摩擦係数及び氷雪上性能の数値が良好になった。このことから、発明例タイヤはいずれも、従来例タイヤに比べて、乾燥路面及び氷雪路面における制動・駆動性能等が高くなることが確認できた。また、比較例タイヤ1〜12の平均摩擦係数及び氷雪上性能の数値が小さいことから、主屈曲部が陸部の踏面からD/4以上3D/4以下の深さ領域に在り、且つ、トレッドに配設するサイプは、前記陸部の踏面の、前記サイプの開口中心から引いた法線を挟んでサイプの幅方向の一方及び他方にそれぞれ屈曲する部分が前記サイプの長手方向へ連続する屈曲域と、前記屈曲域の前記長手方向のいずれか一方側又は両側に連なる平板状域とを有する場合に、特に、制動性能及び駆動性能を向上できることが確認された。さらに、比較例タイヤ12では、サイプエッジの欠損の発生が確認された。
1 空気入りタイヤ
2 トレッド
3 陸部
4 周方向溝
5 横溝
6 サイプ
9 直線部
10 垂直部
11 屈曲部
12 第1傾斜部
13 第2傾斜部
14、15 傾斜部
A サイプの屈曲域の、サイプ幅方向の正投影面積
C サイプの幅方向中央線
D サイプ深さ
E 第1傾斜部12の端辺長さ
F 第2傾斜部13の端辺長さ
K サイプ幅
L サイプの長手方向長さ
M 屈曲域
N、N1、N2 平板状域
P 主屈曲点
Q1 第1副屈曲点
Q2 第2副屈曲点
S 陸部3の踏面
W1 第1傾斜部12の、サイプ幅方向の距離
W2 第2傾斜部13の、サイプ幅方向の距離
H 垂直部10の踏面Sからの法線方向の長さ
X タイヤ幅方向
Y タイヤ周方向
Z 踏面Sから陸部の底部に向かう法線方向(タイヤ径方向)
a1 屈曲域Mにおける、第1傾斜部12のサイプ長手方向の延在面積
a2 屈曲域Mにおける、第2傾斜部13のサイプ長手方向の延在面積
2 トレッド
3 陸部
4 周方向溝
5 横溝
6 サイプ
9 直線部
10 垂直部
11 屈曲部
12 第1傾斜部
13 第2傾斜部
14、15 傾斜部
A サイプの屈曲域の、サイプ幅方向の正投影面積
C サイプの幅方向中央線
D サイプ深さ
E 第1傾斜部12の端辺長さ
F 第2傾斜部13の端辺長さ
K サイプ幅
L サイプの長手方向長さ
M 屈曲域
N、N1、N2 平板状域
P 主屈曲点
Q1 第1副屈曲点
Q2 第2副屈曲点
S 陸部3の踏面
W1 第1傾斜部12の、サイプ幅方向の距離
W2 第2傾斜部13の、サイプ幅方向の距離
H 垂直部10の踏面Sからの法線方向の長さ
X タイヤ幅方向
Y タイヤ周方向
Z 踏面Sから陸部の底部に向かう法線方向(タイヤ径方向)
a1 屈曲域Mにおける、第1傾斜部12のサイプ長手方向の延在面積
a2 屈曲域Mにおける、第2傾斜部13のサイプ長手方向の延在面積
Claims (9)
- タイヤのトレッドに形成した陸部に、1本以上のサイプを設けた空気入りタイヤであって、
前記サイプは、前記陸部の踏面の、前記サイプの開口中心から引いた法線を挟んで前記サイプの幅方向の一方及び他方にそれぞれ屈曲する部分が、前記サイプの長手方向へ連続する屈曲域と、前記屈曲域の前記長手方向のいずれか一方側又は両側に、前記法線に沿って延びる直線部が前記長手方向へ連なる平板状域とを有し、
前記屈曲域は、前記踏面からサイプ深さ方向に向かって、前記法線に沿って延びる垂直部と、前記サイプの前記踏面からの深さをDとした場合に、前記踏面からD/7以上D/2以下の深さに在る第1副屈曲点、前記踏面からD/4以上3D/4以下の深さに在る主屈曲点、前記踏面からD/2以上6D/7以下の深さに在る第2副屈曲点を介して、前記第1副屈曲点及び前記主屈曲点の間に第1傾斜部並びに、前記主屈曲点及び前記第2副屈曲点の間に第2傾斜部が形成された屈曲部と、を有することを特徴とする空気入りタイヤ。 - 前記平板状域の前記長手方向の長さが、前記サイプの長手方向長さの1%以上95%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- 前記第1傾斜部の前記サイプの長手方向の延在面積a1と、前記サイプの幅方向からの正投影の投影面積Aとの比a1/A及び、前記第2傾斜部の前記サイプの長手方向の延在面積a2と、前記サイプの幅方向からの正投影の投影面積Aとの比a2/Aが、ともに0.1以上0.5以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
- 前記第1傾斜部の、前記踏面の接線方向の距離W1は0<W1≦D/3であり、前記第2傾斜部の、前記踏面の接線方向の距離W2は0<W2≦D/3であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記陸部には前記サイプが2本以上設けられ、前記踏面における隣接するサイプ相互間の最短距離がD以上であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記サイプの踏面における長手方向長さを全サイプで合計した値TLの、前記陸部の総面積Rに対する割合を示す、サイプ密度TL/Rが、0.1/mm以下であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記トレッドの端部相互間の中点である1/2点と前記トレッド端との中点である1/4点相互間に跨るセンター領域における、前記サイプの前記踏面における長手方向長さを全サイプで合計した値TLCの、前記陸部の総面積RCに対する割合を示すサイプ密度TLC/RCが0.25/mm以下、且つ前記1/4点から前記トレッド端までのショルダー領域における、前記サイプの前記踏面における長手方向長さを全サイプで合計した値TLSの、前記陸部の総面積RSに対する割合を示すサイプ密度TLS/RSが0.2/mm以下であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記垂直部の前記踏面からの法線方向の長さは、D/7以上であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記サイプの長手方向は、タイヤ幅方向であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
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