JP5867845B2 - 保湿性エタノールの製造方法 - Google Patents

保湿性エタノールの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、アルコール発酵により得られるエステル類に関する。
日本人のアルコールに対する嗜好の変化や飲酒人口の減少などにより、この10年間で日本酒の生産量は半分以下にまで激減している。この影響で、昭和28年には福井県内に69社あった酒造会社は、現在では37社にまで激減し、一部を除いて発酵タンクの年間稼働率も約3割程度に落ち込むなど、低迷が続いている。また米の消費も年々減少しており、政府の減反政策によって作付けも制限されている状況であるが、備蓄米の買い入れや輸入米などにより「米余り」がさらに加速することが懸念されており、新たな需要開拓が強く求められている。
このような現状を鑑み、酒造会社は経営の多角化を、また米の生産農家は米以外の作付けを検討する必要に迫られているが、伝統的に行われてきた酒造や農業の形態を即座に変えることは事実上困難である。したがって、現在の事業形態を維持しつつ、現状の設備を利用した新たなビジネスモデルの創出を図る取り組みが求められている。
近年、新たな燃料としてのバイオエタノール製造が盛んに行われている。バイオエタノールは、石油に替わるエネルギー資源として、さらに廃棄物の削減にもつながる地球にやさしいエネルギー資源として期待されている。バイオエタノールは一般にサトウキビやトウモロコシを発酵・醸造させて製造されることが知られているが、炭素源となりうる植物であれば理論的にはどのような植物でも原料とすることができる。例えば特許文献1には、余剰米の有効利用を図る観点から、米を発酵させてエタノールを製造する方法が開示されている。また特許文献2には、デンプン質を含む原料から発酵によりエタノールを製造する方法が開示されている。
特開2009−11198号公報 特開2005−65695号公報
ところで、エタノールを殺菌・消毒などの目的で利用する場合、市販の消毒用エタノールや除菌・防腐用アルコールは手肌への刺激性が強く、また手肌の脂質を奪うことによって肌荒れを生じるため、皮膚が弱い場合や皮膚に病気がある場合には使用することができなかった。一方でこの問題を解決するため、消毒・除菌剤自体をジェル化した製品や保護成分を添加した製品も存在するが、べとつくなど使用後の感触の悪さが依然として存在し、今のところそれほど受け入れられているとはいえない。また昨今のいわゆる新型インフルエンザ(H1N1)の流行により、国内では除菌関連商品の製造が、なかでも除菌用途のアルコール製品の供給が強く望まれている。なかでも特に保湿性・低刺激性成分を含む殺菌・消毒用アルコールの製造が強く望まれている。
このような課題に直面した本発明者らは、コメを原料とした消毒・殺菌用エタノールを製造する過程で、発酵・醸造工程で生成されるエステル類に、エタノールによる手肌への刺激・肌荒れを弱める効果があり、さらに手肌の潤いを高める効果があることを初めて見いだした。
本発明者らはこれらの知見に基づいてさらに鋭意研究を行った結果、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、
[1]デンプン質物または含糖質物由来の原料を発酵させて得られるエステル類を含有する、保湿性エタノール;
[2]デンプン質物または含糖質物がコメである、[1]に記載の保湿性エタノール;
[3]除菌または消毒用である、[1]または[2]に記載の保湿性エタノール;
[4]発酵が、清酒酵母によってなされる、[3]に記載の保湿性エタノール;
[5]エステル類が、カルボン酸エステルである、[1]〜[4]のいずれか一に記載の保湿性エタノール;
[6]エステル類が、酢酸イソアル、カプロン酸エチル、オクタン酸エチル、酢酸2−フェニルエチルおよびデカン酸エチルからなる群から選択される、[1]〜[4]のいずれか一に記載の保湿性エタノール;
[7]デンプン質物または含糖質物由来の原料を発酵させて得られるエステル類を含有する、皮膚外用剤;
[8]エステル類が、カルボン酸エステルである、[7]に記載の皮膚外用剤;
[9]発酵が、清酒酵母によってなされる、[7]または[8]に記載の皮膚外用剤;
[10]エステル類が、酢酸イソアル、カプロン酸エチル、オクタン酸エチル、酢酸2−フェニルエチルおよびデカン酸エチルからなる群から選択される、[7]〜[9]のいずれか一に記載の皮膚外用剤;
[11]酢酸イソアル、カプロン酸エチル、オクタン酸エチル、酢酸2−フェニルエチルおよびデカン酸エチルからなる群から選択されるエステル類を含有する、皮膚外用剤;[12]デンプン質物または含糖質物由来の原料を発酵させて粗製エタノールを得る工程を含む、保湿性エタノールの製造方法;
[13]さらに粗製エタノールを蒸留してエステル類を含有するエタノールを共沸する工程を含む、[12]に記載の製造方法;
[14]発酵が、清酒酵母によってなされる、[12]または[13]に記載の製造方法;
[15]発酵が、並行複発酵によりなされる、[12]または[13]に記載の製造方法;
[16]0℃〜25℃で発酵を行うことを特徴とする、[14]または[15]に記載の製造方法;
[17]デンプン質物または含糖質物がコメである、[12]〜[16]のいずれか一に記載の製造方法;
[18]保湿性エタノールが除菌または消毒用である、[12]〜[17]のいずれか一に記載の製造方法;
などに関する。
本発明により得られる保湿性エタノールは、通常のエタノールと同様の消毒・殺菌効果を有しつつ、エタノールの刺激により生じる肌荒れを防止し、肌を保護すると共に、手肌の保湿性を高めることができる。
また本発明の保湿性エタノールにおける保湿成分であるエステル類は、手肌に対する高い保湿・保護効果を有するため、消毒・殺菌用エタノールにおける保湿成分として適用するばかりでなく、化粧品や医薬をはじめとした皮膚外用剤の分野における保湿・保護成分として利用することができる。
図1は、本発明の保湿性エタノールのMC/MS成分分析の結果である。実線は比較例1で得られたエタノール、点線は実施例1で得られたエタノールを示す。また各丸数字は、ピークの位置を示す。
本発明で得られる保湿性エタノールは、デンプン質物または含糖質物由来の原料を発酵させて得られるエステル類を含有することを特徴とする。
(1)原料
本明細書中「デンプン質物」とは、デンプン質を主成分とする食物であって、その含有デンプン質が主として用いられるものをいい、糖化後の微生物発酵が可能なものであれば特に限定されない。デンプン質物の例としては、コメ、ムギ、イモ類(ジャガイモ、サツマイモを含む)、マメ、トウモロコシ、キャッサバ、麦類、タピオカなどが挙げられる。またこれらのデンプン質物の品種は特に限定されない。本発明の保湿性エタノールの原料として好ましいデンプンの原料(物質)は、コメである。
デンプン質物としてコメを使用する場合、精米する必要はなく、玄米のままであっても使用することができる。また利用価値の低い、古米や屑米、残飯などを使用することもできる。なお本発明の保湿性エタノールの製造に際し、有効成分であるエステル類の産生を高める観点から、原料としては精米であることが望ましい。エステル類は後述するアルコール発酵に用いる酵母(好ましくは、清酒酵母(清酒醸造用酵母ともいう))がストレスを感じる発酵条件下で多く産生されるため、栄養価の高いコメの外殻は取り除かれることが望ましいためである。
本発明の保湿性エタノールの製造において、原料として上記デンプン質物を適用する際には、後述するアルコール発酵の前処理としてデンプン質物を糖化させる必要がある。デンプン質物の糖化方法としては特に限定されず、自体公知のデンプン糖化方法が適用され、例えば、アミラーゼによる糖化、麹による糖化などが挙げられる。
本発明においては、上記デンプン糖化方法のなかでも麹による糖化が好ましく用いられる。麹の種類としては、デンプン質物、例えばコメの糖化が可能なものであれば特に限定されない。麹により糖化を行うことで、酵母による発酵によって製造されるエステル類が、効率よく製造され得る。
なお一般のアルコール(エタノール)製造における糖化工程では、麹を用いることは無く、酵素剤(アミラーゼなど)を用いることが一般的であり、通常の消毒用アルコールなどの製造においては、糖化工程で麹を用いることは想定し得ないと考えられる。
本明細書中「含糖質物」とは、糖質を主成分とする食物であって、その含有糖分が主として用いられるものをいい、微生物発酵が可能なものであれば特に限定されない。含糖質物の例としては、砂糖(ショ糖)、グルコース、マルトース、糖蜜、蜂蜜、果物(果糖)、トウキビ、サトウダイコン、サツマイモ、菓子類(消費期限切れ商品など)などが挙げられる。またこれらの含糖質物の品種は特に限定されない。本発明の保湿性エタノールを製造する際には、これらの含糖質物を発酵させる。
これらの原料は、そのまま後述の発酵処理に付してもよいが、発酵しやすくするために水への浸漬や蒸きょう処理を行うことが望ましい。原料により適切な処理は異なるが、当業者であれば適宜適切な処理を行うことが可能である。例えば原料としてコメを用いた場合、コメを水に数時間〜24時間浸漬後、蒸きょう処理を行う。
(2)発酵
上記デンプン質物(糖化したもの)または含糖質物を発酵させることで、本発明の保湿性エタノールの有効成分である、エタノールおよびエステル類を得る。
本発明における「発酵」とは、微生物を利用したアルコール発酵(エタノール発酵)のことをいう。より具体的には、微生物を利用することによって行われ、かつ糖質からエタノールおよびエステル類を得ることができるアルコール発酵のことをいう。
発酵に用いる微生物の種類と発酵方法については、エタノールと共にエステル類が得られる限り特に限定されないが、酵母を用いて発酵することが好ましい。酵母を用いて上記デンプン質物(糖化したもの)や上記含糖質物をアルコール発酵させることによって、エタノールおよびエステル類を生じせしめる。酵母の種類としては特に限定されることなく、通常アルコール発酵に用いられる酵母であればどのようなものであってもよいが、特に清酒酵母を好ましく用いることができる。さらに、エステル類の産生を高める観点から、遺伝子操作を行うことで特定のエステル類を過剰に産生するようにした酵母変異株を用いてもよい。このような酵母変異株としては、例えば特願2005−255738に記載の変異株が挙げられる。
発酵に用いられる酵母の量としては特に限定されず、当業者であれば各酵母に対して適切な量を適宜調整することができる。
発酵する際には、上記デンプン質物(糖化したもの)または含糖質物を破砕し、酵母培養液を加えて適切な温度管理の下発酵処理すればよい。発酵の際の反応温度は上記アルコール発酵が進行する限り特に限定されないが、通常0℃〜35℃であり、好ましくは5℃〜35℃である。
なお本発明の保湿性エタノールの製造に際し、有効成分であるエステル類の産生を高める観点から、低温環境で発酵をすすめることが望ましい。エステル類はエタノール発酵に用いる酵母がストレスを感じる発酵条件下で多く産生されるためである。当該低温環境として望ましくは0℃〜25℃、より好ましくは5℃〜20℃である。
発酵時間は酵母の種類、添加する酵母の量、デンプン質物や含糖質物の種類、温度、その他の添加物の種類などによって異なるが、当業者であれば適切な発酵時間を適宜設定することができる。本発明においては、上記低温環境において長期間発酵を行うことが望ましい。発酵時間としては、通常10日以上、好ましくは15日以上、より好ましくは18日以上である。
発酵する際には、麹による糖化工程と微生物(酵母など)による発酵工程とが同一容器中で同時に行われる、並行複発酵がなされることが望ましい。並行複発酵を行うことにより、有効成分であるエステル類が多く産生され、良質な保湿性エタノールを得ることが可能となる。
なお、並行複発酵する際には、乳酸や酵母濃度の低下を防いで酵母の増殖を促しつつ、雑菌による汚染を防ぐという観点から、仕込み段階で麹や原料(コメなど)、水などを数回に分けて発酵させる方法(段掛け法)が一般的である(仕込み回数に応じて、「何段仕込」という場合もある)。
段仕込の回数としては特に限定されるものではないが、複数回段仕込することが望ましく、例えば3段仕込、4段仕込、12段仕込などが挙げられる。仕込み回数が少ないと、発酵の進行が遅くなり原料あたりのエタノール収量が上がらない。また糖質原料や酵母量の調製が困難であり、糖濃圧迫や糖不足により酵母の活動が阻害される可能性が高まる。そして結果的に優良な酵母が活動を継続させることが困難となり、本発明の保湿性エタノールの有効成分である、エステル類が生成しがたい。
この際、麹を用いて造った酒母を用いてもよいし、それを省略しても良い。またここにさらに酵母を加えてもよい。
なお、一般のアルコール(エタノール)製造においては、糖化工程と発酵工程が分けて行われる(単行複発酵)方法が採用される。また元々糖を持つ原料を使用する場合は、発酵工程のみを行う方法(単発酵)が採用される。したがって、一般のアルコール(エタノール)製造では、原則として段掛けという方法は行われない。そして単行複発酵や単発酵によれば、本発明における有効成分であるエステル類が産生しづらく、かつ目的の保湿性エタノールが得がたくなる可能性がある。
なお、上記発酵によって得られたもろみに対する汲水歩合については適宜設定が可能である。ところで一般的な日本酒の醸造においては、あまり多くの水を打ちすぎると得られる酒が薄くなり、また発酵の進みすぎによって味わいの薄い酒になるため、原料に対し100%(この段落において以下、重量%)から多くとも140%くらいまでしか水は打たないのが通常である。しかしながら本発明の保湿性エタノールを製造する場合の汲水歩合は、原料の重量に対して、通常140%以上、好ましくは150%以上である。140%以下の汲水では、原料当たりのアルコール収量を上げることができないことがある。
なお本明細書中、「もろみ」とは原料を発酵させて得られる、エタノール、エステル類、その他の混合物のことをいう。
発酵促進のために、得られたもろみにさらに追水を加え、強制的に発酵を進めてもよい。追水を加える際のもろみの温度については特に限定されないが、最高品温以下であることが望ましい。一般的な清酒製造に際しては最高品温前後に追水を添加するところ、本発明の保湿性エタノールの製造においては、例えば最終段仕込後2、4、6日後に追水を順次加え、上記した汲み水歩合にまで上昇させ、発酵を進行させる。
このようにしてアルコール発酵をすすめ、エタノールおよびエステル類を含む、発酵液(もろみ:本明細書中「粗製エタノール」と記載する場合もある)を生じせしめる。なお本発明の保湿性エタノールの製造に際し、有効成分であるエステル類の産生を高める観点から、発酵の最終段階でグルコースを添加してもよい。添加するグルコース量は、当業者であれば適宜決定することが可能である。得られた発酵液(もろみ)は、必要に応じて固形分を取り除くべく搾り、濾過等して精澄させる。
(3)蒸留
得られたエステル類の精製方法としては特に限定されず、当業者であれば適宜適切な精製方法を選択することが可能である。上記アルコール発酵ではエタノールとエステル類を含む発酵液(粗製エタノール)が製造される。したがって、エタノールとエステル類を同時に精製することで本発明の保湿性エタノールを得る観点から、得られた混合物からエタノールとエステル類を同時に蒸留(共沸)することによっても、エステル類を(エタノールと同時に)精製することができる。
上記(2)において得られた発酵液(粗製エタノール)は、直ちに蒸留工程に付してもよいし、発酵完了後一定時間経過したものを蒸留工程に付してもよい。発酵から蒸留までの時間としては特に限定されないが、通常、即時〜1年、好ましくは即時〜7ヶ月である。
このような蒸留(共沸)の条件としてはエタノールと共にエステル類を蒸留(共沸)することができる条件であれば特に限定されず、当業者であれば適宜設定が可能である。例えば蒸留(共沸)温度としては、エタノールの沸点である78度付近、通常約60度〜約100度、好ましくは約70度〜約100度、より好ましくは約70度〜約90度が挙げられる。蒸留する際の温度が高すぎると、エタノールおよびエステル類以外の成分が混入してくる場合があり、また蒸留する際の温度が低すぎると、得られる保湿性エタノールの収率が低下する場合がある。
蒸留操作としては、常圧/減圧、単蒸留/精留、バッチ法/連続法などの種々の蒸留法が適用可能である。なお蒸留の前に濾過工程(もろみを製造した場合は、澱のデカンテーション工程や酒粕の搾り工程を含む)等の別の精製工程を加えてもよい。
例えばバッチ法で行う場合、発酵液(粗製エタノール)を分留器温度:約70度〜約90度において共沸することで、エタノールとエステル類を同時に蒸留することができる。
(4)保湿性エタノール
本発明の保湿性エタノールに含まれるエステル類は、前記デンプン質物または前記含糖質物由来の原料を発酵させて得られるものであって、エステル特有のエステル香を有するものであれば特に限定されない。そして得られるエステル類については、発酵学の分野における当業者であれば、原料となるデンプン質物または含糖質物の種類、発酵に利用する微生物(例、酵母など)、その他の発酵条件からどのようなエステル類が得られるかを具体的に理解することができる。
本発明の保湿性エタノールに含まれるエステル類としては、好ましくはカルボン酸エステルであり、より好ましくは酢酸イソアル、カプロン酸エチル、オクタン酸エチル、酢酸2−フェニルエチルおよびデカン酸エチルからなる群から選択されるエステルである。これらのエステル類は、原料としてコメを用いてアルコール発酵を適用させた際に好ましく製造され得る。なおエステル類としては、分子量が高いほど保湿性が向上する。
ところで、このようなエステル類は、通常、日本酒(特に吟醸酒)やワイン、ブランデー、ウイスキーなどの分野で周知されているように、通常酒類の「香り」成分として認識されるものである。従ってこのようなエステル類は公知であり、これらを大量に生産する清酒酵母などの育種開発もすすめられている。しかしながら、これらのエステル類の用途は、酒の香味成分(吟醸香)や、香料としての利用に限定されてきた。また吟醸酒のような高価な日本酒は、香りが飛ばないように冷やして飲むのが通常である。
本発明者らは、驚くべきことにこれらのエステル類がエタノール中で肌の保湿・保護成分として機能することを初めて発見し、さらにエステル類単独でも保湿・保護成分として機能することを初めて見出し、本発明を完成させたのである。
本発明の保湿性エタノールとしては、通常、主成分がエタノールであって、ここに上記エステル類が含まれていればよい。したがって本発明の保湿性エタノールは、アルコール発酵によって得られ、副生成物としてのエステル類を含む粗製エタノールそのものであってもよいし、アルコール発酵で得られたエステル類を自体公知の方法により抽出したものを、別途エタノールに加えて製造したものであってもよい。
本発明の保湿性エタノールには、エタノールおよびエステル類以外の成分が含まれていてもよく、このような成分としてはエステル類が有する保湿効果を妨げない限り特に限定されない。従って、保湿性や皮膚保護性を高める他の添加物、例えば水、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、尿素、多価アルコール類(グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ソルビットなど)、アロエエキス、コラーゲン、こめ油、スクワラン、などが含まれていてもよいし、通常消毒用エタノールに含まれる他のアルコール(例、メタノール、イソプロパノールなど)や変性アルコールが一部含まれていてもよい。また本発明の保湿性エタノールの効果に別の効果を付与すべく、別の有効成分を添加してもよい。このような添加物の量としては、本発明の保湿性エタノールのうち、通常0.01重量%〜40重量%、好ましくは0.5重量%〜5重量%である。
本明細書において「保湿性」とは、皮膚表面に水分を保持させることによって皮膚に潤いと柔軟性を与え、手触りや肌触りを好適にすることをいう(エモリエント効果)。従って本発明の保湿性エタノールを皮膚表面に塗布した場合、本来エタノールによって皮脂が取り除かれることにより生ずる手肌への刺激・肌荒れが弱められる一方、皮膚表面が滑らかになり、手触り、肌触りが良好となり得る。
このようにして製造される本発明の保湿性エタノールの用途は特に限定されないが、保湿性を有し、肌を保護し、かつ肌に優しいエタノールであるという観点から、除菌または消毒用として好ましく用いることができる。また上記特性から本発明の保湿性エタノールは、皮膚に塗布する医薬品や化粧品を構成する一成分として好ましく用いることが可能である。
(5)皮膚外用剤
本発明は、デンプン質物または含糖質物由来の原料を発酵させて得られるエステル類を含有する、皮膚外用剤を提供する。
本発明の皮膚外用剤は、有効成分の一つとして上記エステル類を含む皮膚外用剤であり、上記保湿性エタノールと同様、保湿性を有し、肌を保護し、かつ肌に優しい皮膚外用剤であり得る。エステル類の製造方法は前記したとおりであるが、エステル類はエタノールとは別に、単独で精製することが望ましい。このような精製方法は、当業者であれば条件を適宜決定して行うことが可能である。
本発明の皮膚外用剤は、その他の有効成分として皮膚外用適用の種々の医薬成分を含有しうる。このような医薬成分としては、ステロイド系抗炎症薬、非ステロイド系抗炎症薬、抗ヒスタミン薬、抗細菌薬、免疫抑制薬、抗ウイルス薬、抗真菌薬、抗潰瘍薬、保湿薬、局所麻酔薬などが挙げられる。
通常、皮膚外用剤には、皮膚に直接塗布:貼付するという特性上、皮膚に刺激性の強い成分を入れることは避けられる傾向にある。しかしながら、本発明の皮膚外用剤には皮膚の保湿性を保つためのエステル類が含まれているので、その他の有効成分が皮膚刺激性を呈するものであっても、皮膚自体への影響を低減して利用することができる。
本発明の皮膚外用剤の剤型としては特に限定されず、自体公知の剤型を適宜適用しうるが、皮膚に対する保湿性を有し、肌を保護し、かつ肌に優しいという効果を有する点を鑑み、塗布剤(例、軟膏剤、クリーム剤、液剤、ゲル剤、ローション剤、チック剤など)、貼付剤(例、パップ剤、プラスター剤、テープ剤、パッチ剤など)、エアゾール剤などの外用用途に適した剤型が好ましく用いられる。
本発明の皮膚外用剤は、その剤型に応じて、例えば、混和、混練、造粒、打錠、コーティング、滅菌処理、乳化などの慣用の方法で製造できる。なお、製剤の製造に関しては、例えば日本薬局方製剤総則の各項などを参照できる。
本発明の皮膚外用剤において、上記エステル類の含有量は、製剤の形態によって相違するが、通常、製剤全体に対するエステル類の量として0.01〜100重量%、好ましくは0.1〜50重量%、さらに好ましくは0.5〜20重量%程度である。
本発明の皮膚外用剤においては、その用途、上記剤型、使用目的等に応じて適宜任意の成分が配合される。そのような成分としては、通常、皮膚外用剤に適用される成分、例えば、日本薬局方、医薬品添加物規格、化粧料原料基準及び化粧料原料基準外成分規格等の公定書記載の基剤成分、界面活性剤、その他の各種成分等を挙げることができる。
上記基剤成分として具体的には、ワセリン、流動パラフィン、スクワラン等の炭化水素類、ミツロウ、ホホバ油、カルナウバワックス等のエステル類、オレイン酸トリグリセリド以外のトリグリセリド類、オリーブ油、牛脂等の油脂類、セタノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘン酸等の高級脂肪酸類、エタノール、プロパノール等の低級アルコール類、水等が挙げられる。
また、上記界面活性剤として具体的には、脂肪酸モノグリセライド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のノニオン界面活性剤、高級脂肪酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキルスルホコハク酸エステル等のアニオン界面活性剤、4級アルキルアミン塩等のカチオン界面活性剤、アルキルベタイン等の両性界面活性剤等が挙げられる。
さらにその他の各種成分として具体的には、アラビアゴム、カルボキシビニルポリマー等の増粘剤、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、グルコン酸クロルヘキシジン等の防腐剤、タルク、シリカゲル、酸化チタンの様な粉体類、トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール等の抗酸化剤、パラアミノ安息香酸誘導体、ベンゾフェノン誘導体等の紫外線吸収剤、グルタチオン誘導体等の含硫化合物、アスコルビン酸誘導体等の美白剤、グリチルリチン酸ジカリウム等の抗炎症剤、クエン酸塩、酢酸塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエタノールアミン等のpH調整剤、エデト酸ナトリウム等のキレート剤、香料、色素等、胎盤抽出物、朝鮮人参エキス、ステロール配糖体等の各種目的に応じた薬効成分などを挙げることが可能である。
さらに、本発明の皮膚外用剤には、上記エステル類以外の肌の保湿・保護成分、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール類やヒアルロン酸(塩)等を配合してもかまわない。
このようにして得られた本発明の皮膚外用剤は、その用途に応じてさらに有効成分を添加するなどして、目的に応じた活用が可能である。例えば本発明の皮膚外用剤は、皮膚用の医薬品としてだけでなく、化粧品などとしても適用可能である。通常、皮膚用の医薬品や化粧品には、皮膚に直接塗布するという特性上、皮膚に刺激性の強い成分を入れることは避けられるが、本発明の皮膚外用剤には皮膚の保湿性を保つためのエステル類が含まれているので、皮膚刺激性の成分から皮膚自体を保護することができる。よって本発明の皮膚外用剤を用いることによって、医薬品や化粧品の製造における選択の幅が広がる点で有用である。
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。
実施例1:エタノール発酵によるエタノールの製造(1)
(発酵方法)
醗酵液の製造は、次のように行った。酵母は、一般に清酒酵母と呼ばれている清酒醸造用酵母(乾燥タイプ)を使用し、醸造乳酸43gと福井県産ハナエチゼン92%精白6kgを黄麹菌で製麹した。さらに福井県産ハナエチゼン92%精白蒸米24kg、水39Lを3回に分けて投入し、その後、水を3Lずつ2日に1度(3回)、合計9L(総合計48L)を追加投入したもろみを、品温最低10℃から最高16.5℃の間で、19日間発酵を行った。
(蒸留方法)
使用機種、作業条件および作業内容は以下のとおりである。
使用機種
マイコンロータリーエバポレーター NE−2001(東京理化器械)
冷却水循環装置 CA−1112
減圧装置 DTC−41
作業条件
仕込み量 2L/回
バス温度 40℃
フラスコ回転速度 100rpm
真空度 98hpa
冷却水温度 5℃
作業内容
5L容量のフラスコを持つマイコンロータリーエバポレーターNE−2001に2Lの発酵液を仕込み、バス温度を調整して減圧蒸留を行った。ロータリーエバポレーターの回転速度を100rpm、真空度98hPaまで減圧し、バス温度を40℃に設定し加熱を行った。ロータリーエバポレーター上部のコンデンサーに冷却水循環装置CA−1112にて5℃の冷却水を循環させて蒸気を凝縮し受器に回収した。回収した液にて減圧蒸留を繰り返し行い、濃度を調節して蒸留終了とした。
以上の発酵・蒸留を経て、エタノール(1)を製造した。
実施例2:エタノール発酵によるエタノールの製造(2)
(発酵方法)
発酵液の製造は、次のように行った。酵母は、清酒醸造用酵母(乾燥タイプ)を使用し、醸造乳酸43gと糖化酵素剤、福井県産コシヒカリくず米(玄米粗挽き)30kg、水48Lを投入し、もろみ品温最低7℃から最高18.5℃の間で、30日間発酵を行った。
(蒸留方法)
バッチ式蒸留にて蒸留を行った。蒸留塔内には充填物(ディクソンパッキン)を充填し濃度が90%以上のエタノールを得た。使用機種、作業条件および作業内容は以下のとおりである。
使用機種
オイルバス OB−300 1.2KW(加藤ステンレス科学(株))
攪拌機 BL−300(新東科学)
ヒータ電圧制御装置 (轟産業(株))
3口 5Lフラスコ (柴田科学(株))
ガラス蒸留装置(蒸留塔+分留器)(柴田科学(株))
作業条件
仕込み量 3L/回
バス温度 90℃〜95℃
撹拌回転数 200rpm
ディクソンパッキン 3mm 500cc
温度制御 バス温度制御(容器内温度はモニタのみ)
分留器切替方式 蒸留塔下部温度が70℃を超えている場合のみ受け器にて液回収、蒸留塔下部温度が70℃以下なら蒸留塔側に液を戻す)
作業内容
3ツ口フラスコの中央に温度センサ付のガラス蒸留装置をセットし、その中にディクソンパッキン3mm 500ccを充填した。3ツ口フラスコの左右の口の1方には、攪拌シールを通して、攪拌翼をセットした。攪拌翼はガラス容器内の発酵液が均一になるように攪拌機BL−300にて撹拌回転数200rpmで攪拌した。3ツ口フラスコの左右の口の1方には、容器内液温検出用の温度センサを投入した。発酵液3Lをフラスコ内に入れ、オイルバスOB−300にて水を加熱し、フラスコ内の発酵液を加熱した。フラスコ内の発酵液をモニタリングしながら、蒸留装置登頂部の温度が78℃以上になるようにヒータ電圧制御装置にてオイルバスの加熱出力の調整を行った。初期の蒸留液は、エタノール濃度が低いため約30分間は蒸留塔側に蒸留液を戻した。
その後、蒸留塔下部温度が70℃を超えている場合のみ受け器にて蒸留液を回収した。蒸留塔下部温度が70℃以下なら蒸留塔側に液を戻した。約2時間から3時間加熱後、フラスコ内の発酵液の沸騰しなくなった所で蒸留終了とした。
以上の発酵・蒸留を経て、エタノール(2)を製造した。
実験例1:エタノールの皮膚への効果測定
(方法)
20歳以上50歳未満の健康な男女7人を被験者とし、非盲検試験により、実施例1で得られたエタノール(エタノール(1))、実施例2で得られたエタノール(エタノール(2))および/または市販の消毒用エタノールを短期間使用した際の皮膚への効果を検討した。
左右の両腕内側を評価部位とし、右腕にはエタノール(1)、左腕にはエタノール(2)および市販の消毒用エタノール(和光純薬工業株式会社製)をそれぞれ1分ごとに5回塗布した。その塗布前後に皮膚水分計にて水分量を、皮膚蒸散計にて皮膚蒸散量をそれぞれ測定した。その後、シリコン溶剤で型取りした複製(レプリカ)を採取し、このレプリカをレプリカ解析システムで解析した。塗布前と塗布後および各試験エタノール間の塗布後の皮膚の状態を数値解析により比較することで、本発明品が皮膚に与える影響の程度を検討した。
各測定の詳細は以下のとおりである。
<皮膚水分量測定>
使用機器:コルネオメーター(Corneometer CM825/CK社製)
測定箇所:右前腕内側部1箇所、左前腕内側部2箇所のマーキング中心部位を測定
検査使用値:同一箇所を5回測定し、最上値・最下値を削除した3回測定値の平均を使用
観察回数:塗布前、塗布後(塗布箇所の乾燥を確認後) 合計2回
統計解析:t−検定およびTukeyの検定
<皮膚蒸散量測定>
使用機器:テヴァメーター(TEWAMETER TM300/CK社製)
測定箇所:右前腕内側部1箇所、左前腕内側部2箇所のマーキング中心部位を測定
検査使用値:標準偏差0.5以下になった値を採用
観察回数:塗布前、塗布後(塗布箇所の乾燥を確認後) 合計2回
統計解析:t−検定およびTukeyの検定
<肌レプリカ解析>
使用機器:反射用3Dレプリカ解析システム(ASA−03RXD/アサヒバイオメッド社製)
採取箇所:右前腕内側部1箇所、左前腕内側部2箇所のマーキング中心部位を測定
評価項目:キメ個数、キメ体積率
観察回収:塗布前、塗布後(塗布箇所の乾燥を確認後) 合計2回
統計解析:t−検定およびTukeyの検定
なおレプリカ解析とは、被検者の左右両腕内側部位に液状のシリコンを塗布し凝固させることで、採取部位のキメのレプリカを作成し、これに光を当てて得られた画像から、表皮の状態を解析する方法である。
(結果)
皮膚水分量については、エタノール(1)においては塗布前後で30%以上の増加を示し、この有意な増加量は他の試験エタノールと比較して約2倍以上の増加であった(表1)。
Figure 0005867845
一方、皮膚蒸散量についても、エタノール(1)で塗布前に比べ有意な増加が認められた(表2)。
Figure 0005867845
これらの結果は、エタノール塗付により表皮部分のバリア機能が一時的に破綻し、水分蒸散量が増加したものの、エタノール(1)に含まれるエステル類の効果により、水分の皮膚への浸透性も増加し、それによって皮膚水分量が増加したことを示している。
皮膚のキメに対する効果では、試験エタノールの塗布により全群で、キメ個数および体積率の低下が認められた。しかしながら、試験前後でのキメ体積率の相対値(維持率)を比較すると、市販の消毒用エタノールが52.0%まで低下していたのに対し、エタノール(1)では78.5%、エタノール(2)では79.1%という高いキメ体積率を維持していた(表3)。またキメ個数では市販の消毒用エタノールが64.3%まで低下したのに対し、エタノール(1)では95.5%、エタノール(2)では98.4%という高いキメ体積率の維持を示した(表3)。
したがって、エタノール(1)およびエタノール(2)は、市販の消毒用エタノールと比較してキメの減少量が少ないことが明らかとなった。
Figure 0005867845
すなわち、本発明のエタノールは、市販の消毒用エタノールと比較して、皮膚へのダメージが少なく、皮膚にやさしいことが分かった。
以上のことから、本発明の保湿性エタノールは、水分の浸透性を増加させることで皮膚の乾燥を防ぐとともに潤いを保つ手肌に優しいエタノールであることが分かった。
特にエタノール(1)は、皮膚浸透性および保湿性機能において特に優れた保湿性エタノールであることが分かった。
実験例2:有効成分の同定
(方法)
実施例1および実施例2で得られたエタノールをそれぞれ質量分析装置(GC/MS)に付し、双方に含まれる成分の違いを分析した。
(GC/MS条件)
GC/MSによる測定は、Hewlett packard 6890GC/5973N MSD(現Agilent)装置により解析した。カラムはDB5−MSを用い、60℃から320℃まで昇温し、スキャンモード(m/z5〜650)で測定した。
結果は図1のとおりである。
(結果)
その結果、肌の保護効果(エモリエント効果)を感じられた実施例1のエタノールにだけ含まれていた成分は、酢酸イソアミル、カプロン酸エチル、オクタン酸エチル、酢酸2−フェニルエチル、デカン酸エチルといったカルボン酸エステルであった。またこれらの物質を単体で和光純薬(株)から試薬としてそれぞれ購入し、直接手肌に塗布したところ、分子量が大きくなるほど肌の保護効果(エモリエント効果)が強く感じられた。
本発明の製造方法により得られる保湿性エタノールは、通常のエタノールと同様の消毒・殺菌効果を有しつつ、エタノールの刺激により生じる手肌への刺激・肌荒れを防止し、一方で手肌の保湿性を高めることができる。
また本発明の保湿性エタノールにおける保湿成分であるエステル類は、手肌に対する高い保湿・保護効果を有するため、消毒・殺菌用エタノールに適用するばかりでなく、化粧品、皮膚外用剤など種々の分野における保湿・保護成分として有用である。
本出願は、特願2009−256555(出願日:平成21年11月9日)を優先権の基礎とした出願であり、当該出願の内容は本明細書中に全て包含される。

Claims (7)

  1. (1)酢酸イソアミル、カプロン酸エチル、オクタン酸エチル、酢酸2−フェニルエチルおよびデカン酸エチルからなる群から選択されるエステル類、及び(2)エタノールを含有する、保湿性の、皮膚の除菌または消毒用組成物。
  2. デンプン質物または含糖質物由来の原料を発酵させて粗製エタノールを得る工程を含む、保湿性の、エタノールを含有する皮膚の除菌または消毒用組成物の製造方法。
  3. さらに粗製エタノールを蒸留してエステル類を含有するエタノールを共沸する工程を含む、請求項に記載の製造方法。
  4. 発酵が、清酒酵母によってなされる、請求項またはに記載の製造方法。
  5. 発酵が、並行複発酵によりなされる、請求項またはに記載の製造方法。
  6. 0℃〜25℃で発酵を行うことを特徴とする、請求項またはに記載の製造方法。
  7. デンプン質物または含糖質物がコメである、請求項のいずれか一項に記載の製造方法。
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