〔第1の実施の形態〕
第1の実施の形態は、コンデンサ素子と封口側にある外部端子との間に設置される集電板に第1の接続領域と、第2の接続領域とを異なった位置に備え、第1の接続領域にコンデンサ素子の電極張出し部、第2の接続領域に外部端子を接続した電気二重層コンデンサを開示する。
この電気二重層コンデンサについて、図1、図2及び図3を参照する。図1は電気二重層コンデンサの平面、図2は図1のII−II線断面、図3は分解した電気二重層コンデンサの一例を示している。
この電気二重層コンデンサ(以下単に「コンデンサ」と称する。)2は、本発明のコンデンサの一例であって、図1及び図2に示すコンデンサ2では、コンデンサ素子4の同一の素子端面5に陽極部6と陰極部8が形成されている。素子端面5はコンデンサ素子4のセパレータ48、50(図6、図7)の縁部によって形成されている。陽極部6及び陰極部8は、電極張出し部の一例であって、コンデンサ素子4の素子端面5から引き出された電極体(陽極体60又は陰極体80)の一部で構成される。陽極部6及び陰極部8は、コンデンサ素子4の素子端面5に陽極体60又は陰極体80の何れか一方又は双方から引き出され、コンデンサ素子4の素子端面5から所定幅を折り目線46(図5、図6、図7)を用いてコンデンサ素子4の素子端面5上に折り曲げられて重ねられている。
陽極部6と陽極端子10との接続には両者間に介在させた陽極集電板12が用いられ、また、陰極部8と陰極端子14との接続には両者間に介在させた陰極集電板16が用いられている。接続には例えば、レーザ溶接や電子ビーム溶接が用いられ、レーザ溶接接続部18(図2)で陽極部6と陽極端子10、陰極部8と陰極端子14が接続されている。また、陽極端子10及び陰極端子14は外部接続のための端子部材であって、陽極端子10は陽極端子部材の一例、陰極端子14は陰極端子部材の一例である。陽極集電板12と陰極集電板16との間には、陽極部6と陰極部8との間に形成された絶縁間隔21に対応して絶縁間隔23が設定される。
陽極集電板12は半円状であり、その円弧中心を基準に所定角度θ(図10のA)の区分として例えば、3区分に区画され、端子接続部12A及び素子接続部12B、12Cが形成されている。即ち、陽極集電板12には第1の接続領域として素子接続部12B、12C(図10)、第2の接続領域として端子接続部12A(図10)が設定されている。この実施の形態では、端子接続部12Aの上面側には陽極端子10が接続され、素子接続部12B、12Cの下面には陽極部6の区画部6B、6Cが接続されている。
陰極集電板16も陽極集電板12と同様に半円状であるから、同様に所定角度θ(図10のA)の区分として例えば、3区分に区画され、端子接続部16A及び素子接続部16B、16C(図10)が形成されている。陰極集電板16にも同様に、第1の接続領域として素子接続部16B、16Cが設定され、第2の接続領域として端子接続部16Aが設定されている。端子接続部16Aの上面側には陰極端子14が接続され、素子接続部16B、16Cの下面には陰極部8の区画部8B、8Cが接続されている。
この実施の形態では、コンデンサ素子4は円筒体であって、一方の素子端面5に陽極体60(図6)を引き出して陽極部6が形成されているとともに、陰極体80(図6)を引き出して陰極部8が形成されている。コンデンサ素子4の周囲には保持テープ25が巻回され、陽極体60や陰極体80の巻き戻りが防止されている。この実施形態では、陽極集電板12と接続された陽極部6、及び陰極集電板16と接続された陰極部の外周部には絶縁手段19が設置されている。この絶縁手段19によってコンデンサ素子2と外装ケース20との絶縁が図られている。この絶縁手段19には例えば、絶縁紙や絶縁テープ等の絶縁材料を用いればよい。
コンデンサ素子4の外装部材として外装ケース20及び封口板22が備えられる。外装ケース20は例えばアルミニウム等の成形性のある金属材料からなる成形体である。封口板22は外装ケース20の開口部を閉止し、空間部24の気密性を保持する封口体の一例であるとともに、陽極端子10及び陰極端子14を固定する固定部材であり、コンデンサ素子4の支持部材を構成している。この実施の形態では、封口板22にベース部26と、封止部28とが備えられる。ベース部26は絶縁材料である例えば、合成樹脂で形成され、陽極端子10及び陰極端子14が固定されるとともに、絶縁されている。封止部28は密閉性の高い材料例えば、ゴム環で構成されている。
この封口板22は、外装ケース20の開口部30(図3)に挿入されるとともに、開口部30側の中途部に形成された加締め段部32に位置決めされている。外装ケース20の開口端部34は、カーリング処理により加締められ、封止部28に食い込ませられている。これらにより、外装ケース20が強固に封止されている。そして、封口板22のベース部26には、図2に示すように、透孔36が形成されるとともに、薄ゴムからなる圧力開放機構38が形成されている。
このコンデンサ2について、特徴事項や利点を以下に列挙する。
(1) コンデンサ素子4の素子端面5には電極張出し部である陽極部6と陰極部8とが形成され、陽極部6には陽極集電板12、陰極部8には陰極集電板16が重ねられて溶接により接続され、コンデンサ素子4及び電気二重層コンデンサ2の低抵抗化が図られている。
(2) 陽極集電板12又は陰極集電板16には、端子接続部12A又は16A(第2の接続領域)と、素子接続部12B、12C又は16B、16C(第1の接続領域)が異なる位置に設定され、素子接続部12B、12C又は16B、16Cにコンデンサ素子4の陽極部6又は陰極部8が接続され、端子接続部12A又は16Aに陽極端子10又は陰極端子14が接続されている。陽極側及び陰極側はそれぞれの陽極集電板12又は陰極集電板16の異なる位置に、陽極部6又は陰極部8と陽極端子10又は陰極端子14が接続されているので、コンデンサ素子と集電板との接続を安定化させることができ、コンデンサ素子の低抵抗化とともに接続の強化を図ることができる。
(3) 陽極集電板12又は陰極集電板16には、端子接続部12A又は16Aを挟んで素子接続部12B、12C又は16B、16Cが形成され、2か所の接続領域を素子側に設定しているので、コンデンサ素子4側の電極取出し効率が高くなり、コンデンサ素子4の低抵抗化をより図ることができる。
(4) コンデンサ素子4の素子端面5に陽極部6及び陰極部8が平坦化され、陽極集電板12、陰極集電板16を介して陽極端子10及び陰極端子14が接続されているので、これら接続のための空間部24を狭小化でき、該空間部が電気二重層コンデンサ2に占める割合を小さくでき、しかも接続の強化、接続の信頼性向上を図ることができる。
(5) コンデンサ素子4の陽極部6と陽極集電板12、陰極部8と陰極集電板16とを備えた接続構造であるから、接続の簡略化とともに、接続構造の堅牢化を図ることができる。
(6) 上記構造により、陽極集電板12、陰極集電板16を介在させて封口板22にある陽極端子10及び陰極端子14の接続が容易化でき、接続工程を簡略化とともに、接続処理を短時間で行うことができ、製造コストの低減を図ることができる。
〔第2の実施の形態〕
第2の実施の形態は、外部端子と前記電極張出し部との間に設置される集電板に第1の接続領域と第2の接続領域が異なる位置に設定され、前記第1の接続領域に前記電極張出し部を接続し、前記第2の接続領域に前記外部端子を接続する工程を含む電気二重層コンデンサ2の製造方法を開示している。
この製造工程について、図4、図5、図6、図7、図8、図9、図10、図11及び図12を参照する。図4は電気二重層コンデンサの製造工程の一例、図5は電極体及び電極部の形成工程の一例、図6はコンデンサ素子の電極、セパレータの大小関係及び配置の一例、図7はコンデンサ素子の一例、図8は電極部の成形前及び成形後の一例、図9は電極部の成形前及び成形処理の一例、図10は集電板の一例、図11は集電板の溶接の一例、図12は集電板と外部端子の接続処理の一例を示している。
このコンデンサ2の製造工程は、本発明のコンデンサの製造方法の一例であって、図6に示す製造工程では、コンデンサ素子4の形成工程(ステップS11)、電極部の形成工程(ステップS12)、第1の接続工程(電極部と集電板の溶接工程)(ステップS13)、第2の接続工程(集電板と外部端子の溶接工程)(ステップS14)、電解液含浸及び封入工程(ステップS15)が含まれる。
(1) コンデンサ素子4の形成工程(ステップS11)
このコンデンサ素子4の形成工程には、電極体の形成工程、折り目形成工程、電極部の形成工程及び巻回工程が含まれる。電極体の形成工程では、陽極側又は陰極側の電極体が形成され、この電極体の形成工程では、図5のAに示すように、コンデンサ素子4の端面集電用の電極張出し部である未塗工部44(陽極部6、陰極部8)が形成される。
陽極体60及び陰極体80には、ベース材40に例えば、アルミニウム箔が用いられる。ベース材40は、同一幅の帯状体であって、このベース材40の両面に活性炭等の活物質及び結着剤等を含む分極性電極42を形成する。この分極性電極42の形成の際、ベース材40には、一方の縁部側に一定幅の未塗工部44が形成され、この未塗工部44は分極性電極42の非形成部分である。この未塗工部44が既述の電極張出し部であり、この未塗工部44の縁部側の所定幅で既述の陽極部6又は陰極部8が形成される。
折り目形成工程では、既述の未塗工部44に対し、図5のBに示すように、縁部から一定幅の折り目線46を形成する。この折り目線46はキズではなくケガキ線であって、陽極部6及び陰極部8の折り曲げ時の座屈を防止することができる。この折り目線46は溝であり、断面形状は三角、四角又は湾曲(R)であってもよい。この折り目線46の形成には例えば、プレス、レーザ、切削等の方法を用いればよい。折り目線46は図5のBに示すように1本であってもよいが、未塗工部44の幅に応じて複数本としてもよい。折り目線46の形成面部は、未塗工部44の片面でもよいが、両面であってもよい。一例としての折り目線46は、素子端面5の巻回中心部52に対向する面が谷折りになるように形成されている。
次に、電極部の形成工程では、図5のCに示すように、陽極体60には幅の異なる複数の陽極部6が形成され、図5のDに示すように、陰極体80には幅の異なる複数の陰極部8が形成される。各陽極部6は、コンデンサ素子4の素子端面に半周毎に引き出されるように異なる間隔で形成する。また、各陰極部8もコンデンサ素子4の素子端面に半周毎に引き出され、しかも、陽極部6と陰極部8との間には既述の絶縁間隔21を形成するための絶縁間隔27が設定されている。そして、各陽極部6及び各陰極部8には、既述の折り目線46が形成されている。
陽極体60、陰極体80及びセパレータ48、50について、図6を参照すると、陽極体60、陰極体80の幅W1 、セパレータ48、50の幅をW2 、分極性電極42の幅をW3 、既述の未塗工部44の幅をW4 、セパレータ48、50から露出する陽極体60、80即ち、陽極部6及び陰極部8の幅をW5 、幅W4 の未塗工部44とセパレータ48、50が重なり部分の幅をW7 、素子端面5の反対側素子端面の形成幅をW6 、陽極部6及び陰極部8の折り幅をW8 とすると、一例としての大小関係は、
W1 >W2 >W3 >W4 >W5 >W8
であり、また、W6 =W7 に設定される。幅W5 には折り幅W8 を内側に屈曲させるための折り目線46が形成されている。
これらの幅W1 、W2 、W3 、W4 、W5 、W6 、W7 、W8 を例示すれば、W1 =100〔mm〕、W2 =99〔mm〕、W3 =89〔mm〕、W4 =11〔mm〕、W5 =6〔mm〕、W6 =W7 =W8 =5〔mm〕である。
このような配置からコンデンサ素子4の素子端面5は、コンデンサ素子4から露出したセパレータ48、50の縁部によって形成される。そして、素子端面5から一定の幅W8 の寸法は0.5〔mm〕以上が好ましく、また、素子端面5からの陽極部6及び陰極部8の張り出し長寸法は、3〔mm〕〜10〔mm〕とすることが好ましい。
そして、巻回工程では、図示しない巻軸を用いることにより、図7に示すように、陽極体60及び陰極体80は、これらの間にセパレータ48、50を介在させて巻回され、巻回素子であるコンデンサ素子4が形成される。このコンデンサ素子4の一方の素子端面5には、セパレータ48、50の縁部で覆われるとともに、既述の通り、半周毎に陽極部6と陰極部8とが形成されている。
(2) 電極部の形成工程(ステップS12)
この電極部の形成工程では、図8のAに示すように、コンデンサ素子4の素子端面5に陽極部6又は陰極部8が、陽極集電板12又は陰極集電板16との接続前に、図8のBに示すように、コンデンサ素子4の素子端面5上で密着状態に成形加工する。
コンデンサ素子4の素子端面5には図8のAに示すように、電極張出し部を構成する陽極部6と陰極部8とが立設され、これら陽極部6と陰極部8との間には既述の所定幅の絶縁間隔21を形成するための絶縁間隔27が設定されている。絶縁間隔27の幅をWaとし、絶縁間隔21の幅をWbとすると、陽極部6と陰極部8の折り曲げによっても絶縁間隔21が確保されるように、Wa>Wbに設定され、幅Waは電極体即ち、折曲前の陽極部6又は陰極部8の引出し幅より大きく設定されている。また絶縁間隔27の幅Waと前述の陽極部6及び陰極部8の折り幅をW8 の大小関係は、Wa>W8 である。
この絶縁間隔27の中心にY軸、このY軸と直交方向にX軸を取り、X軸を中心に左右に角度θ1 、θ2 (>θ1 )を設定して区画する。角度θ1 でコンデンサ素子4の巻回中心部(巻芯部)52を中心に放射状方向に複数の切込み54を入れ、各切込み54で区画された複数の区画部6A、6B、6Cが陽極部6側に形成されている。同様に、陰極部8側にも複数の区画部8A、8B、8Cが形成されている。角度θ1 を例えば、33〔°〕に設定すれば、区画部6A、8Aは2θ1 =66〔°〕となり、区画部6Aを挟んで形成された区画部6B、6C又は区画部8Aを挟んで形成された区画部8B、8Cの角度θ2 は、θ2 =57〔°〕に設定されている。
切込み54の深さは例えば、張出し長を陽極部6と陰極部8の高さh1 に設定されている。この高さh1 と、既述の絶縁間隔27の幅Waの大小関係は、Wa>h1 である。この高さh1 に設定されている陽極部6の区画部6A、6B、6C、陰極部8の区画部8A、8B、8Cを中途部で屈曲させ、コンデンサ素子4の巻回中心部52の方向に押し倒して圧縮成形することにより、図8のBに示すように、各区画部6A、6B、6C、陰極部8の区画部8A、8B、8Cに成形される。この実施の形態では、各区画部6B、6C及び区画部8B、8Cが溶接部分に設定されている。そこで、区画部6A、8Aの突出高さh2 が各区画部6B、6C、8B、8Cの高さh3 より高く設定され、区画部6A、6B、6C及び陰極部8の区画部8A、8B、8Cの高さを陽極集電板12及び陰極集電板16の屈曲形状に対応させている。なお、コンデンサ素子4の陽極部6及び陰極部8は、この様にコンデンサ素子4の中心方向に向かって陽極部6及び陰極部8全体を圧縮成形することで、高さ寸法を抑制している。この実施の形態では、陽極部6の区画部6B、6Cを圧縮形成して、安定した平坦状の接続面(即ち、溶接面)を形成し、その後非接続面である区画部6Aを圧縮成形し、区画部6A−6B間、区画部6A−6C間の重なりによって生じる境界部の高さ寸法が抑制されている。
各陽極部6及び各陰極部8の成形工程において、コンデンサ素子4の巻回後、素子端面5に露出する陽極部6、陰極部8は、図9のAに示すように、折り目線46により巻回中心部52を中心にして対向方向に折り曲げられた状態で対向している。そこで、図9のBに示すように、陽極集電板12、陰極集電板16との接続を図るために巻回中心部52側に折り目線46を用いて既述の区画部6B、6C、8B、8 Cを折り曲げる。
そして、区画部6B、6C、8B、8 Cを折り曲げた後、図9のCに示すように、折り目線46を用いて区画部6A、区画部8Aを素子端面5上に折り曲げる。
(3) 第1の接続工程(ステップS13)
この接続工程では、コンデンサ素子4の素子端面5に形成された陽極部6に陽極集電板12、陰極部8に対して陰極集電板16の各接続が含まれる。
陽極部6に接続される陽極集電板12、陰極部8に接続される陰極集電板16は、図10に示すように、電極材料と同一の例えば、アルミニウム板で形成され、既述の陽極部6の区画部6A、6B、6C(図8のB)を覆い、区画部6B、6Cとのレーザ溶接面積を持ち、且つ陽極端子10とのレーザ溶接面積を持つ形状及び面積を備えている。この実施の形態では、コンデンサ素子4の素子端面の2分の1の大きさであって、絶縁間隔21が確保される形状として、ほぼ半円形板である。
陽極集電板12(又は陰極集電板16)には、図10のAに示すように、弦側中心部にコンデンサ素子4の巻回中心部52に対応して円弧状切欠部58が形成され、その弧側には、X軸を中心にX軸と直交方向に直線状に切り落とされた接続面部63が形成されている。また、この陽極集電板12(又は陰極集電板16)には、図10のBに示すように、円弧状切欠部58を中心即ち、X軸を中心に左右に角度θ1 を持って直角に屈曲させた段部62を以て円弧状の端子接続部12A(16A)及び素子接続部12B、12C(16B、16C)が形成されている。各端子接続部12A(16A)及び素子接続部12B、12C(16B、16C)は、それぞれ平坦面に形成され、段部62を挟んで平行面を構成している。陽極集電板12又は陰極集電板16の異なる位置に設定された素子接続部12B、12C又は16B、16Cが第1の接続領域、端子接続部12A、16Aが第2の接続領域を構成している。
この陽極集電板12及び陰極集電板16において、端子接続部12A、16Aの高さをh4 、陽極集電板12及び陰極集電板16の厚さをt、端子接続部12Aの内側の高さをh5 とすると、
h5 =h4 −t≧h2 −h3 ・・・(1)
に設定されている。従って、端子接続部12Aの内側の高さh 5 は、区画部6A、8Aの突出高さh2 と各区画部6B、6C、8B、8Cの高さh3 との差分Δh(=h2 −h3 )を吸収し、陽極集電板12の素子接続部12B、12Cが各区画部6B、6Cに密着し、且つ区画部6Aが端子接続部12Aの下面部に収納される。なお、陽極集電板12の厚さtは、陽極集電板12の素子接続部12B、12Cと端子接続部12Aの部位で厚さを変更することもできる。例えば、端子接続部12Aの厚みを素子接続部12B、12Cに比べて厚く設定(1.2倍以上)することができ、これによると陽極部6とのレーザ溶接の際に素子接続部12B、12Cに生じる発熱が所定厚みを有する端子接続部12Aによって吸収され、レーザ溶接の接続精度が向上する。このような構成及び他の部材との関係については、陰極集電板16についても同様である。
陽極集電板12及び陰極集電板16は図11に示すように、コンデンサ素子4の一端面に巻回中心部52を中心にし、且つ巻回中心部52に円弧状切欠部58を合わせて配置され、陽極部6と陰極部8との間の絶縁間隔21に対応して絶縁間隔23が設定されている。陽極集電板12には、端子接続部12Aの下面側にコンデンサ素子4の陽極部6の区画部6A、陽極集電板12の素子接続部12B、12Cの下面側にコンデンサ素子4の陽極部6の区画部6B、6Cが位置決めされて密着させられる。そして、レーザ照射接続部68では、コンデンサ素子4の周縁方向から巻芯方向に向かうレーザ照射により、区画部6B、6C及び素子接続部12B、12Cを部分的又は全面的に溶融させ、接続している。このような接続は陰極集電板16側でも同様である。なお、陽極部6と陰極部8との間の絶縁間隔21の幅をWbとし、陽極集電板12と陰極集電板16との間の絶縁間隔23の幅をWcとし、少なくとも巻回中心部52付近における大小関係をWb>Wcとしている。このように、陽極集電板12と陰極集電板16との間の絶縁間隔23の幅Wcを小さくすることで、素子端面5に圧縮成形された陽極部6及び陰極部8の各区画部(特に各区画部の巻回中心部52付近)が各集電板によって覆われるため、レーザ照射により陽極部8及び陰極部8が各集電板12、16と確実に溶接される。なお、陽極部6と陰極部8との間の絶縁間隔21の幅Wbは、3〔mm〕〜15〔mm〕に設定している。
レーザ照射の部位は、この実施の形態では、図11に示すように、陽極集電板12及び陰極集電板16の段部62で隔てた素子接続部12B、12Cの各2箇所に設定され、陽極集電板12又は陰極集電板16が複数のレーザ照射接続部68でコンデンサ素子4の陽極部6又は陰極部8に溶接されている。この場合、レーザ照射接続部18に付した矢印〔I 〕、〔II〕、〔III 〕及び〔IV〕で示すように、レーザ照射を行う。このレーザ照射は、シールドガスにアルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスを用いてコンデンサ素子4をシールドし、コンデンサ素子4に対するレーザ熱やスパッタの影響を回避する。
〔I〕このレーザ照射は、コンデンサ素子4の外周側より、素子中心方向に向かって例えば、巻回中心部52に向かって直線状に一方の陽極集電板12の素子接続部12Bに照射する。
〔II〕次に、巻回中心部52を隔てて対向する他方の陰極集電板16の素子接続部16Bに素子中心側より、素子外周方向に向かって直線上にレーザ照射することにより、一連の動作にて溶接される。
〔III 〕また、同じく、レーザ照射は、コンデンサ素子4の外周側より、素子中心方向に向かって直線状に一方の陽極集電板12の素子接続部12Cに照射する。
〔IV〕そして、巻回中心部52を隔てて対向する他方の陰極集電板16の素子接続部16Cに素子中心側より素子外周側に向かって直線上にレーザを照射する一連の動作にて溶接される。
このように、巻回中心部52を隔てて直線状にレーザ照射する一連の動作にて、陽極部6と陽極集電板12、陰極部8と陰極集電板16とが接続される。つまり、陽極部6及び陰極部8と各集電板12、16とを巻回中心部52を隔ててコンデンサ素子4の直径方向に向かう溶接ライン(レーザ照射接続部68)を設定して溶接するので、陽極部6及び陰極部8と各集電板12、16との接続のための溶接の時間短縮を図ることができ、製造工程の簡略化を図ることができる。なお、レーザ照射の〔I 〕及び〔II〕の一連の動作を2回繰り返す。又は、レーザ照射の〔I 〕ないし〔IV〕の一連の動作を2回繰り返し、近傍に溶接部を配することで接続抵抗を更に低減することも可能である。レーザ照射の〔I 〕及び〔II〕の一連の動作にて接続することも可能であるが、陽極集電板12、陰極集電板16の各素子接続部12B、12Cを、それぞれ素子中心側より素子外周側に向かって直線上に照射する等、個別に接続することもできる。
また、レーザ照射の〔I 〕ないし〔IV〕の連続動作について、同一箇所を連続してレーザ照射するのではなく、レーザ溶接を〔I 〕から〔IV〕で行い、その後、再び〔I 〕から〔IV〕にレーザ照射すれば、同一箇所のレーザ照射に時間間隔を設けることができ、この結果、レーザ照射箇所の冷却化を図ることができ、レーザ溶接による接続の安定化が図られる。また、同一箇所に時間間隔を設けて複数回のレーザ照射を行うことも可能であるが、1回目のレーザ溶接を〔I 〕から〔IV〕で行い、再びレーザ溶接を〔I 〕から〔IV〕で行うので、冷却間隔を取りながら、レーザ照射を連続的に行うことができ、レーザ照射による溶接時間の短縮化を図ることができる。
なお、図7及び図8のAに示すように、陽極部6及び陰極部8は、所定の絶縁間隔27(幅Wa:図8のA)を設けてコンデンサ素子4の素子端面5から導出している。陽極部6及び陰極部8には、中心方向に向かって圧縮成形した際に、陽極部6及び陰極部8が接触しない絶縁間隔21(幅Wb:図8のB)を設定しており、このため、コンデンサ素子4の巻回中心部52近傍では、陽極部6及び陰極部8が形成されていない。また、陽極部6及び陰極部8は、その形成部位が多いほど(又は面積が大きいほど)、抵抗の低減につながるため、陽極部6及び陰極部8が接触せず、また、低抵抗化が図れる絶縁間隔27(図8のA)として、例えば、3〔mm〕〜15〔mm〕を設定している。即ち、絶縁間隔27の幅Waに対してコンデンサ素子4の素子端面5から陽極部6及び陰極部8の引き出し高さh1 は、Wa>h1 であるから、陽極部6及び陰極部8が折り曲げられて素子端面5に成形しても、陽極部6及び陰極部8が接触することはない。
また、コンデンサ素子4の最外周では、陽極部6及び陰極部8の圧縮成形時にずれ等が生じても、陽極部6及び陰極部8が外装ケース20に接触しないように、陽極集電板12と接続された陽極部6及び陰極集電板16と接続された陰極部8の外周面に絶縁紙や絶縁テープ等の絶縁手段19を設置してもよい。この絶縁手段19は、該陽極部6及び陰極部8に加え、陽極端子10、陰極端子14、陽極集電板12、陰極集電板16を覆うように外周に沿って設置され外装ケース20との絶縁が図られている。
(4) 第2の接続工程(ステップS14)
この接続工程には、陽極集電板12及び陰極集電板16と外部端子との接続処理が含まれる。即ち、この接続工程では、陽極集電板12及び陰極集電板16が接続されたコンデンサ素子4に、図12のAに示すように、封口板22にある陽極端子10、陰極端子14が位置決めされる。陽極端子10及び陰極端子14には端子側接続面70が形成され、この端子側接続面70は、陽極集電板12及び陰極集電板16にある接続面部63と同一面を形成する側壁面である。そこで、これら接続面部63及び端子側接続面70を合致させ、図12のBに示すように、レーザ照射72を行えば、既述の溶接接続部18がレーザ溶着され、接続面部63及び端子側接続面70間を溶着させることができる。
従って、コンデンサ素子4の陽極部6には陽極集電板12を介して外部端子である陽極端子10がレーザ照射72による溶接接続部18を以て接続され、また、コンデンサ素子4の陰極部8には陰極集電板16を介して外部端子である陰極端子14がレーザ照射72による溶接接続部18を以て接続され、コンデンサ素子4に外部端子が接続される。
また、コンデンサ素子4と封口板22との間隔(距離)を長く取れば、長くなる程、抵抗が増加し、しかも、コンデンサ2の高さ寸法が大きくなる。このため、コンデンサ素子4と封口板22との間隔(距離)を極力短くしている。このような小スペースにおいて、陽極端子10及び陰極端子14と、陽極集電板12及び陰極集電板16とを接続するために、既述の通り、端子側接続面70と接続面部63とを同一面とし、この部位に局所的に溶接可能なレーザにて溶接しているので、溶接の簡易化及び強化が図られている。ここで、陽極集電板12及び陰極集電板16、陽極端子10及び陰極端子14の厚みは、レーザ溶接が可能な寸法でかつ内部抵抗を増大されない大きさ、また、コンデンサ2の高さ寸法を短く抑えるため、この実施の形態では、それぞれ0.5〔mm〕〜5〔mm〕の範囲に設定している。
また、端子側接続面70及び接続面63は、コンデンサ素子4の外周面近傍に設置されており、これにより、レーザ照射の際に他の部材(陽極部6や陰極部8)に対する過剰なストレスが加わることが防止される。具体的には、コンデンサ素子4の外周面より、10〔mm〕以内に設定すればよい。また、陽極集電板12、陰極集電板16において、コンデンサ素子4の陽極部6及び陰極部8との接続領域と、陽極端子10と陰極端子14との接続領域とが異なる位置に設定されているので、各電極部と集電板、各外部端子と集電板との接続を安定化させることができ、コンデンサ素子の低抵抗化とともに接続の強化を図ることができる。
(5) 電解液含浸及び封入工程(ステップS15)
コンデンサ素子4は、電解液を含浸した後、外装ケース20に収容し、外装ケース20の開口端部34のカーリング処理により封止し、製品である電気二重層コンデンサ2(図1)が完成する。
このような製造工程によれば、既述のコンデンサ2を容易に製造でき、端子接続工程の簡略化を図ることができ、第1の実施の形態で述べた通りの効果を有するコンデンサを実現できる。
以上説明した第2の実施の形態の電気二重層コンデンサ2の特徴事項や利点を列挙すれば以下の通りである。
(1) コンデンサ素子4の一端面側に陽極体60の基材で陽極部6、陰極体80の基材で陰極部8が形成され、陽極部6と陽極端子10とが陽極集電板12を介して接続され、陰極部8と陰極端子14とが陰極集電板16を介して接続されるので、端子接続のシンプル化が図られている。しかも、接続を容易化することができる。
(2) 外装ケース20の空間部24内に接続部の占める空間専有率が極めて低い。
(3) 外装部材である封口板22には、コンデンサ素子4が強固に支持されている。即ち、陽極端子10及び陰極端子14に陽極集電板12、陰極集電板16を介してコンデンサ素子4の陽極部6及び陰極部8のレーザ溶接により、強固に固定されるので、コンデンサ素子4の支持強度が高められている。この結果、機械的に堅牢な支持構造が構成され、製品の耐震性を高めることができる。
(4) 巻回素子であるコンデンサ素子4に巻回されている陽極体60から複数の側縁部を集合させて陽極部6が形成され、この陽極部6を陽極集電板12にレーザ溶接し、同様に、陰極体80から複数の側縁部を集合させて陰極部8が形成され、この陰極部8を陰極集電板16にレーザ溶接しているので、コンデンサ素子4及び電気二重層コンデンサ2の低抵抗化を図ることができ、等価直列抵抗の低い製品を提供できる。
(5) 陽極集電板12及び陰極集電板16を用いたので、コンデンサ素子4にタブを接続する必要がない。
(6) 陽極集電板12又は陰極集電板16と外部端子(陽極端子10又は陰極端子14)との側面の同一面化しているので、両者に対するレーザ照射を安定でき、接続の完全化及び信頼性を高めることができる。
(7) レーザ照射時にシールドガスを用いるので、レーザ熱や、飛翔するスパッタからコンデンサ素子4を防護でき、コンデンサ素子4及び製品であるコンデンサ2の特性劣化を防止でき、信頼性を向上させることができる。
(8) 電極箔からの張出し部が多いほど内部抵抗が下がるので、張出し部を多くすると巻回、積層した際に、張出し部が複数重なることになり、精度良く折り曲げるのは困難であるが、また、巻回素子においては、円周上に連続した張出し部を設けた場合は、折り曲げた際にシワが発生しやすく、集電板との接続が困難となるのに対し、既述のように、張り出し部を精度良く折り曲げることで、集電板との接続を安定させ、低抵抗のコンデンサを提供することができる。即ち、電極張出し部に折り目を付けることで、電極張出し部を精度良く折り曲げることが可能となり、集電板との接続時のがたつき等がなく、安定した接続を実現できる。
(9) 折り目位置を素子端面から所定寸法離間させることで、集電板とのレーザ溶接の際に、素子側へのレーザ熱やスパッタが飛ぶことがなく、素子への影響が少なくてすむ。
(10) コンデンサ素子を形成する前に予め張り出し部に折り目を形成することで、折り目の形成が容易となる。
(11) 電極箔(未塗工部)に折り目を付け、その後、電極箔の端部を切り出して、張り出し部とすることで、折り目の位置が張り出し部でずれることがないという効果も得られる。
〔他の実施の形態〕
(1) 上記実施の形態では、コンデンサ素子として巻回素子を例示したが、巻回素子に限定されない。積層型素子や固体素子であってもよい。
(2) 上記実施の形態では、コンデンサ素子の素子端面の一方(同一面)に陽極部6及び陰極部8を備えて外部端子に接続する構成を開示しているが、一方の素子端面に陽極部、他方の素子端面に陰極部を備える構成としてもよい。
(3) 上記実施の形態では、集電板の異なる位置として3分割された区分により、第1の接続領域である素子接続部12B、12C又は16B、16Cと、第2の接続領域である端子接続部12A又は16Aとが集電板の表裏面に設定され、水平方向に異なる位置に設定しているが、これに限定されない。集電板の一部に第1の接続領域(素子接続領域:レーザ照射接続部68)を設定し、その他の部位に第2の接続領域(端子接続領域:溶接接続部18)を設定してもよい。即ち、表裏面で溶接位置が異なれば、第1及び第2の接続領域が近接していてもよい。つまり、第1の接続領域である素子接続部12Bにおいてレーザ照射接続部68と集電板の表裏面で溶接位置が重ならない部位にレーザ照射接続部68を設定してもよい。
(4) 上記実施の形態では、電気二重層コンデンサ2を例示したが、本発明はこれに限定されない。同一の構造及び方法は、電解コンデンサにも同様に適用でき、同様の効果が得られる。
(5) 上記実施の形態では、集電板として陽極集電板12、陰極集電板16を例示したが、本発明は上記実施の形態に限定されない。また陽極部6、陰極部8と陽極集電板12、陰極集電板16のレーザ照射72の箇所(各接続面部63及び端子側接続面70と同一面を形成する側壁面)は、フラット面としたが、外部端子の形状に合致する形状として、曲面であってもよい。
(6) 上記実施の形態では、陽極部と陰極部との間に絶縁間隔を設置しているが、この絶縁間隔に絶縁部材を設置してもよい。
(7) 上記実施の形態では、陽極外部端子として陽極端子10を用い、陰極外部端子として陰極端子14を例示したが、本発明は上記実施の形態に限定されない。外部端子としては、別途薄板状のアルミニウム等からなる接続板が接続された外部端子であってもよい。この場合、陽極接続板は陽極端子10にレーザ溶接により接続された後、コンデンサ素子4側の陽極集電板12に接続される。同様に、陰極接続板は陰極端子14にレーザ溶接により接続された後、コンデンサ素子4側の陰極集電板16に接続される。このような陽極接続板及び陰極接続板を用いた構成では、外部端子である陽極端子10、陰極端子14とコンデンサ素子4側に接続された陽極集電板12、陰極集電板16との接続が広範囲に行われ、接続抵抗を低減でき、しかも接続強度を高めることができる。
(8) 上記実施の形態では、W1 >W2 を例示したが、これに限定されない。W1 =W2 としてもよく、他の寸方も一例であって、これらの値に限定されない。
以上説明したように、本発明の最も好ましい実施の形態等について説明したが、本発明は、上記記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載され、又は発明を実施するための形態に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能であることは勿論であり、斯かる変形や変更が、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。