JP5865750B2 - 構台の設置方法 - Google Patents

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Description

本発明は、地盤に打設した複数の杭の上部で構造体を支持する構台の設置方法に関する。
例えば、河川、湖沼や海等における作業場や船舶の係留場として利用される構台としての桟橋では、複数の杭を水底の地盤に打設し、その上端に床版等の構造体を支持した構造が広く用いられている。
通常、この種の桟橋では、各杭間に補強材として水平方向の継材(水平継材)及び斜め方向のブレス(例えば、鉄骨)を架け渡すことで高い安定性を確保している。補強材の杭への固定は、前記補強材を取り付けるための固定具をボルト締めによって杭に固定することが一般的である。
ところが、一般的な桟橋では、補強材や固定具は水中に設置されるため、その設置作業はダイバーが水中に潜って行う必要があり、高コストで作業時間も長くなるという問題があった。特に、ダム湖等の湖沼は、水の濁度が高くて視界が悪いため、水中作業を円滑に行うことが一層難しいものとなっていた。
そこで、特許文献1には、フレーム(水平継材)及びブレス設置での水中作業を軽減するために、フレーム及びブレスをユニット化した補強ユニットを予め製作しておき、この補強ユニットを現場に運搬し、水中で各杭の間に取り付けることにより、水中作業の工程数と時間を低減する方法が開示されている。
特開2007−217952号公報
ところが、上記特許文献1の方法では、前記補強ユニットを水中にある杭の取付部まで搬送するためにクレーンとダイバーによる水中作業とを同時に行う必要がある。しかも、ボルト締め等の補強ユニットの固定作業の大部分を、ダイバーが水中作業によって行う必要があるため、結局のところ、水中作業に要する時間やコストの削減効果も限定的なものとなっている。
また、上記のような桟橋以外でも、例えば、地中に形成した立て坑等に構台を設置する場合等において、補強材を設置する部位の周囲が高温であったり有毒なガスが発生したりしている場合等には、作業者が直接的に補強材の設置作業を行うことが難しいと想定される。
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、水中作業等を軽減して補強材を設置でき、コストや作業時間を一層低減することができる構台の設置方法を提供することを目的とする。
本発明に係る構台の設置方法は、地盤に打設した複数の鋼管杭の上部で構造体を支持する構台の設置方法であって、記地盤に打設した2本の鋼管のそれぞれに上下に固定具を仮固定し、前記2本の鋼管杭における上側の固定具の間及び下側の固定具の間にそれぞれ水平継材を連結することで該2本の鋼管杭の間に該水平継材を上下に設置した後、該上下に設置した水平継材の間に斜材を設置し、これにより前記2本の鋼管杭の間に前記水平継材及び前記斜材を有する補強材を仮設置する第1工程と、前記仮設置した補強材を前記固定具と共に前記鋼管杭に沿って所定位置まで降下させる第2工程と、前記鋼管杭に対して前記固定具を締め付けて固定することにより、前記所定位置に設置した補強材を前記2本の鋼管杭の間に固定する第3工程とを有することを特徴とする。
このような方法によれば、水中や立て坑等に杭を用いて構台を設置する場合に、例えば、水平継材と斜材からなる補強材の杭への設置位置まで作業者が直接的に赴く作業を低減することができ、水面上や地表面上等で補強材の設置作業のほとんどの工程を行うことができる。このため、水中や地下深く等での作業を大幅に低減することができるため、コストや作業時間を低減することができる。なお、補強材の仮設置(仮固定)とは、例えば、固定具を杭に固定した仮受治具の上に載置することや、固定具を杭に対して所定の締付強度よりも低い強度で仮締めし、補強材を固定具と共に杭に沿って移動可能な程度に固定すること、杭に対して一旦固定した固定具を再び緩めてから次の工程を行うことと言うこともでき、また、補強材の固定(本固定)とは、例えば、固定具を杭に対して所定の締付強度で強固に固定することと言うこともできる。
この場合、前記構台は、前記鋼管杭を水底の地盤に打設し、少なくとも前記鋼管杭の上部及び前記構造体が水面上に設置される桟橋であって、前記第1工程は、前記鋼管杭の水面上に露出している部位に前記補強材を仮設置する工程を含み、前記第2工程は、前記仮設置した補強材及び固定具を水中へと降下させる工程を含み、前記第3工程は、前記水中に配置された固定具を締め付ける工程を含むことを特徴とする。
前記補強材を、前記2本の鋼管杭の間で上下に複数段設置する場合に、先ず、1段目の補強材について、前記第1工程を実行することで該1段目の補強材を仮設置した後、前記第2工程を実行することで前記仮設置した補強材を所定位置まで降下させ、次に、前記1段目の補強材の上段に設置する2段目の補強材について、前記第1工程として、前記所定位置まで降下させた1段目の補強材の上側の水平継材を該2段目の補強材の下側の水平継材として利用し、該下側の水平継材の上方に前記固定具を仮固定して該2段目の補強材の上側の水平継材を設置すると共に、上下の水平継材の間に斜材を設置することで該2段目の補強材を仮設置し、その後前記第2工程として、該2段目の補強材を前記1段目の補強材と共に所定位置まで降下させ、さらに、前記補強材を3段以上設置する場合は、3段目以降の補強材について前記2段目の補強材の場合と対応する前記第1工程と前記第2工程とを実行することにより、前記補強材を前記鋼管杭の上下方向に沿って複数段設置し、その後、各段の固定具を締め付けて固定する前記第3工程を実行すると、複数段の補強材を円滑に且つ迅速に設置することができる。
本発明によれば、補強材を固定する固定具を杭に仮設置した状態で所定位置まで降下させ、その後、固定具を締め付けることにより、水中や立て坑等に杭を用いて構台を設置する場合に、補強材の杭への設置位置まで作業者が直接的に赴く作業を低減することができ、水面上や地表面上等で補強材の設置作業のほとんどの工程を行うことができる。このため、水中や地下深く等での作業を軽減することができ、コストや作業時間を低減することができる。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る構台の設置方法によって設置した桟橋の構成図である。 図2は、仮締めした状態での固定具26の構成図であり、図2(A)は、固定具の平面図、図2(B)は、図2(A)に示す固定具の正面図、図2(C)は、図2(A)に示す固定具の側面図である。 図3は、締付けた状態での固定具の構成図であり、図3(A)は、固定具の平面図、図3(B)は、図3(A)に示す固定具の正面図、図3(C)は、図3(A)に示す固定具の側面図である。 図4は、ライナープレートの構成図であり、図4(A)は側面図、図4(B)は平面図である。 図5は、スペーサの構成図であり、図4(A)は平面図、図4(B)は正面図、図4(C)は側面断面図である。 図6は、本発明の第1の実施形態に係る構台の設置方法の手順の一例を示すフローチャートである。 図7は、杭を打設し、作業構台として構造体を設置した状態を示す説明図である。 図8は、図7に示す状態から吊具とチェーンブロックを設置した状態を示す説明図である。 図9は、吊具及びチェーンブロックを拡大した説明図である。 図10は、図8に示す状態から固定具を仮組みした状態を示す説明図である。 図11は、図10に示す状態から1段目の補強材を設置した状態を示す説明図である。 図12は、図11に示す状態から固定具と共に1段目の補強材を降下させた状態を示す説明図である。 図13は、図12に示す状態から2段目の補強材を設置した状態を示す説明図である。 図14は、図13に示す状態から2マス目をあけて3マス目の補強材を2段設置した状態を示す説明図である。 図15は、図14に示す状態から2マス目の補強材を設置している状態を示す説明図である。 図16は、本発明の第2の実施形態に係る構台の設置方法によって設置した桟橋の構成図である。 図17は、図16に示す桟橋の要部を拡大した構成図である。 図18は、図16に示す固定具の構成図であり、図18(A)は、固定具の平面図を示し、図18(B)は、図18(A)に示す固定具の正面図を示し、図18(C)は、図18(A)に示す固定具の開閉部材を開いた状態での平面図を示している。 図19は、図18(B)に示す固定具の要部を拡大した正面図である。 図20は、本発明の第2の実施形態に係る構台の設置方法の手順の一例を示すフローチャートである。 図21は、図18に示す固定具を用いて1段目の補強材を杭に仮固定した状態を示す説明図である。 図22は、図21に示す状態から2段目の補強材を仮固定した状態を示す説明図である。 図23は、図22に示す状態から1段目及び2段目の補強材の大部分を水中へと降下させた状態を示す説明図である。 図24は、図23に示す状態から3段目の補強材を仮固定した状態を示す説明図である。 図25は、図24に示す状態から構造体の一部を設置した状態を示す説明図である。 図26は、図25に示す状態から補強材を設置した2本の杭に隣接する2本の杭に対し、1段目の補強材を仮固定した状態を示す説明図である。
以下、本発明に係る構台の設置方法について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る構台の設置方法によって設置した桟橋10の構成図である。本実施形態に係る構台の設置方法(以下、単に「設置方法」ともいう)は、ダム湖等の湖沼に工事用等の構台となる桟橋10を設置するための方法であり、より具体的には、水底の地盤に打設した複数本の杭16の上部で構造体18(覆工受桁18a及び受桁間水平継材18b)を支持した桟橋(杭式桟橋)10の設置工事において、各杭16の間を補強材20によって連結して補強するための補強方法(補強材設置方法)である。なお、桟橋10は、河川や海に設置されるものでもよく、工事用以外の用途に用いられるものであっても勿論よい。
先ず、本実施形態に係る設置方法の説明に先立ち、この設置方法によって設置される桟橋10の構成例について説明する。
図1に示すように、桟橋10は、水底の地盤に下端部が打設された複数本(例えば8本。図1では一側方に並んだ4本のみを図示)の杭16と、各杭16の上端で支持されて水面W上に設置された構造体18(覆工受桁18a及び受桁間水平継材18b)と、2本の杭16の間に複数段(本実施形態では2段)設けた補強材20とから構成されている。桟橋10は、補強材20を構成する水平継材22及び斜材(ブレス、ブレース)24が格点部に設置される固定具(固定金具、ブレースバンド)26によって杭16に固定されることで、各杭16間が互いに強固に連結され、所望の強度と安定性を備えている。杭16は、例えば鋼管杭とするとよく、また、杭16は地盤の表面に着地するように設置されてもよい。
補強材20は、上下2本の水平継材22と、上下の水平継材22の両端部同士を対角線状に連結する2本の斜材24とを備える。図1に示すように、補強材20が2段以上で設置される場合には、上下方向で中間の水平継材22が隣接する2段の補強材20で共有されることになる。水平継材22及び斜材24は、各杭16間を所望の強度で連結可能な鉄骨等の形鋼材によって形成される。
図2は、仮締めした状態での固定具26の構成図であり、図2(A)は、固定具26の平面図、図2(B)は、図2(A)に示す固定具26の正面図、図2(C)は、図2(A)に示す固定具26の側面図である。図3は、締付けた状態での固定具26の構成図であり、図3(A)は、固定具26の平面図、図3(B)は、図3(A)に示す固定具26の正面図、図3(C)は、図3(A)に示す固定具26の側面図である。
図2及び図3に示すように、固定具26は、締付部28によって互いに連結されることで杭16をその内側に把持する一対のバンド30a、30bと、該一対のバンド30a、30bと所定間隔を介して平行に配置され、締付部28によって互いに連結されることで前記バンド30a、30bと共に杭16をその内側に把持する一対のバンド32a、32bとを備える。一方のバンド30a、30bと、他方のバンド32a、32bとは、両側部にそれぞれ設けられた支柱部材34、34を用い、溶接によって互いに接合されている。各バンド30a、30b、32a、32b各隅部には、水平継材22を取り付けるための取付孔部36が設けられている。また、上方に配置されたバンド30a、30bの側方部位には、後述するスペーサ43を取り付けるための取付孔部45が設けられている。
バンド30a、30b、32a、32bは、平面視で半リング形状であり、それぞれの内面には、バンド30a、30b同士、及びバンド32a、32b同士がそれぞれ閉じられた状態で、杭16の外周面形状(外径)に略一致又は杭16の外径よりも多少小さい円形状を画成する円弧凹部39a、39bが設けられている。バンド30a、30b間、及びバンド32a、32b間の各円弧凹部39a、39bの内側に杭16を挿入した状態で、締付部28を締め付けることにより、円弧凹部39a、39bの内側で杭16を強固に固定・把持することができる(図3参照)。
締付部28は、バンド30a、30b同士、及びバンド32a、32b同士の対向面に上下方向に渡って固着された各一対のプレート部材40a、40bと、プレート部材40a、40bのバンド30a、30b、32a、32bの表面上から上下方向に突出した部位に形成された貫通孔に挿通されることでバンド30a、30b同士、及びバンド32a、32b同士を締結するボルト44及びナット46とを備える。
図2及び図3に示すように、各プレート部材40a、40bの上下に形成された貫通孔に、ワッシャ48を介してボルト44を挿通させ、先端のねじ部にカラー(筒体)50を介してナット46を締結することで、杭16に対してバンド30a、30b、32a、32bを締め付けることができる。
図2に示すように、バンド30a、30b同士、及びバンド32a、32b同士を仮締め(仮固定)する場合には、プレート部材40a、40bの上下にそれぞれ形成された貫通孔にボルト44を挿通させると共に、カラー50を介してナット46を仮締めする。この際、上部のバンド30a、30bと下部のバンド32a、32bとの間の空間に位置するプレート部材40a、40b間にライナープレート49を挟んだ状態で、プレート部材40a、40bの中央部付近に二組形成された貫通孔にそれぞれボルト47を通してナット46で固定する。これにより、バンド30a、30b間、及びバンド32a、32b間(プレート部材40a、40b間)が所定の強度で仮締めされると共に、その間にライナープレート49の板厚による十分な隙間が形成される。このため、当該仮締めの状態で、固定具26やこれに接続された水平継材22及び斜材24を杭16に沿って移動させても、締結部28での緩みが発生せず、ボルト44やナット46の落下が防止される。
ライナープレート49は、図4(A)及び図4(B)に示すように、側面視E字型のプレートであり、2本のボルト47に対して側方から係合させるための一対の凹部51、51が形成されたプレート部49aと、作業者が掴むための取っ手部49bとを備える。
一方、図3に示すように、バンド30a、30b同士、及びバンド32a、32b同士を締め付け(本固定)する場合には、ボルト47とライナープレート49とを取り外した後、プレート部材40a、40bの上下の貫通孔を挿通されているボルト44に対してナット46を締め付けることにより、バンド30a、30b同士、及びバンド32a、32b同士を強固に締め付けて、杭16に対して固定することができる。この際、上部のバンド30a、30b間で円形状に画成される円弧凹部39a、39bの側縁部と、杭16との間に、スペーサ43の湾曲支持面43aを介在させておくことで、固定後の固定具26のガタツキを防止することができる。
スペーサ43は、図5(A)〜図5(C)に示すように、杭16と円弧凹部39a、39bとの間に介在する薄板円弧状の湾曲支持面43aと、湾曲支持面43aの上部に直交するように設けられ、バンド30a、30bの表面上に載置され固定される部位となるプレート部43bと、作業者が掴むための取っ手部43cとを備え、側面視略L字状に構成されている。プレート部43bの両側部には、バンド30a、30bの取付孔部45と共に固定用のボルト53が挿通される孔部43dが形成されている。
固定具26の仮締め時、図2中に2点鎖線で示すように、スペーサ43は、後述する固定具26及び補強材20を杭16に沿って降下させる際に邪魔にならないように、湾曲支持面43aをバンド30a、30bの外側に向けた状態でボルト53とナット55とによって仮止めされる。これにより、本締め時にスペーサ43を作業者が手持ちする手間もかからず、スペーサ43固定用のボルト53を紛失することもない。一方、固定具26の本締め時、図3に示すように、一旦ボルト53を取り外し、スペーサ43を上記の仮止めの状態から反転させて、湾曲支持面43aを杭16側に向けて固定し、続いて、ライナープレート49を取り外してからボルト44を本締めする。これにより、杭16と円弧凹部39a、39bとの間の隙間がスペーサ43によって埋められ、固定具26をより強固に安定して固定することができる。なお、スペーサ43は固定具26の安定性を向上させる点で有用であるが、作業者の作業量が増加するため、施工の状況等によっては省略しても勿論よい。
次に、本実施形態に係る構台の設置方法の一例について、主に図6〜図15を参照して説明する。
図6は、本発明の第1の実施形態に係る構台の設置方法の手順の一例を示すフローチャートである。図7は、杭16を打設し、作業構台として構造体18を設置した状態を示す説明図である。図8は、図7に示す状態から吊具52とチェーンブロック54を設置した状態を示す説明図である。図9は、吊具52及びチェーンブロック54を拡大した説明図である。図10は、図8に示す状態から固定具26を仮組みした状態を示す説明図である。図11は、図10に示す状態から1段目の補強材20を設置した状態を示す説明図である。図12は、図11に示す状態から固定具26と共に1段目の補強材20を降下させた状態を示す説明図である。図13は、図12に示す状態から2段目の補強材20を設置した状態を示す説明図である。図14は、図13に示す状態から2マス目をあけて3マス目の補強材20を2段設置した状態を示す説明図である。図15は、図14に示す状態から2マス目の補強材20を設置している状態を示す説明図である。
桟橋10を設置するに当たっては、先ず、所定本数の杭16を水底の地盤に打設する。勿論、当該設置方法は、既設の桟橋について補強材を追加で設置する場合に用いてもよい。以下、図1に示すように、第1スパンの工程として1マス目の2本の杭16間に2段の補強材20を設置した後、第2スパンの工程として2マス目をあけて3マス目の2本の杭16間に2段の補強材20を設置し、続いて、第3スパンの工程として2マス目の杭16間に2段の補強材20を設置する場合を例示して当該設置方法を説明する。
先ず、図6のステップS1において、図7に示すように、岸(岸壁)19から沖に向かって必要本数(例えば8本であり、図7では4本のみを図示)の杭16を打設し、その上部にチェーンブロック用吊り桁等となる構造体18や作業足場65を設置する。
続いて、図8に示すように、固定具26を杭16に対して組み付けるために使用する吊具52、チェーンブロック54及び仮受治具56を設置する。図9に示すように、吊具52は、構造体18のフレームに吊り下げられ、下端から垂下するワイヤ60によってチェーンブロック54を吊り下げている。また、チェーンブロック54の下端からは、ワイヤ62が垂下される。
次に、第1スパンの各工程を実行する。先ず、ステップS2、S3において、2本の杭16の間に1マス目の1段目の補強材20を仮設置(仮固定、仮組み)する工程を実行する(仮設置工程、仮固定工程、仮設置肯定、仮組み工程)。
ステップS2では、図10に示すように、水面Wと作業構台である構造体18との間の気中において、杭16の所定位置に設置された仮受治具56の上に固定具26の締付部28を仮締めした状態(図2参照)で設置する。この場合、上記のように、バンド30a、30b間及びバンド32a、32b間にライナープレート49を挟んだ状態で各ボルト44、47を仮締めすると共に、スペーサ43を湾曲支持面43aを外側に向けて仮止めしておく(図2参照)。
続いて、ステップS3では、図11に示すように、仮受治具56の上に仮組みした固定具26の取付孔部36に対して水平継材22を固定(本固定)すると共に、水平継材22に斜材24を固定(本固定)する。さらに、最下段の固定具26の側部に仮受治具64を固定し、この仮受治具64にチェーンブロック54から垂下されたワイヤ62を固定した後、各固定具26を支えていた仮受治具56を取り外す。
ステップS4では、図12に示すように、チェーンブロック54で吊りながら、仮設置してある固定具26と共に補強材20(水平継材22及び斜材24)を、水中の所定位置まで降下させる工程を実行する(降下工程)。この際、次の2段目の補強材20を気中で取り付けるために、1段目の補強材20のうちの上方にある固定具26は水面W上に露出した状態としておく。
次に、ステップS5において、補強材20が必要段数(本実施形態では2段)まで設置できた場合には(ステップS5のYES)、ステップS6を実行する。一方、ステップS5で必要段数が設置できていない場合には(ステップS5のNO)、上記のステップS2〜S4の工程と同様な工程を行うことで、1段目の補強材20の上部に2段目の補強材20を設置する(図13参照)。
そこで、ステップS6では、1マス目に必要段数の補強材20が設置できているため、1マス目の全ての固定具26の締付部28を締め付ける(本締めする)(本固定工程、本組み工程)。これにより、1マス目に2段の補強材20の設置が完了したことになる。この際、水中にある固定具26(図13では最下段の固定具26)については、ダイバーが水中作業によって行えばよい。この場合には、上記のように、仮止めされていたスペーサ43を反転させてその湾曲支持面43aを杭16とバンド30a、30b(円弧凹部39a、39b)の間に介在させて固定した後、ライナープレート49を取り外してボルト44を本締めする(図3参照)。
次に、ステップS7において、次のマス目の補強材20を上記のステップS2〜S6と同様な手順で施工する。当該ステップS7では、既に補強材20の設置が完了した1マス目から、2マス目をあけて3マス目に対する補強材20の設置作業を行い、図14に示すように、3マス目にも2段の補強材20を設置する。2マス目をあけたことで、3マス目の固定具26を杭16に沿って降下させる際、1マス目で設置された固定具26が邪魔になることがなく円滑に作業を実行できる。
ステップS8では、図15に示すように、2マス目に補強材20を2段設置する工程を行う。このステップS8では、固定具26を杭16に沿って滑らせながら降下させることが困難であるため、固定具26、水平継材22及び斜材24の設置について、水中にある箇所についてはダイバーが水中作業によって実行することで、当該設置方法が完了する(図1参照)。
以上のように、本実施形態に係る構台の設置方法では、杭16に対して補強材20を固定する固定具26を用い、地盤に打設した2本の杭16の間に補強材20を仮設置する工程(第1工程)と、仮設置した補強材20を固定具26と共に杭16に沿って所定位置まで降下させる工程(第2工程)と、杭16に対して固定具26を締め付けることにより、所定位置に設置した補強材20を2本の杭16の間に固定する工程(第3工程)とを実行する。
これにより、水中や立て坑等に杭16を用いて構台を設置する場合に、補強材20の杭16への設置位置まで作業者が直接的に赴く作業を低減することができ、水面W上や地表面上等で補強材20の設置作業のほとんどの工程を行うことができる。このため、水中や地下深く等での作業を大幅に削減することができるため、コストや作業時間を低減することができる。特に、当該設置方法を、図1に示すように、杭16を水底の地盤に打設し、少なくとも杭16の上部及び構造体18が水面W上に設置される桟橋10に適用すると、補強材20の設置作業のうちの大部分の工程を水面W上の気中で行うことができ、水中作業を軽減でき、コスト面や工期面で有効となる。
なお、杭16の打設精度が十分高く、3マスに同時に補強材20を設置・降下可能と判断された場合には、3マス同時に1段目の補強材20を設置・降下させ、続いて同様な方法で2段目、3段目の補強材20を設置するようにしてもよい。これにより2マス目の水中部分での水平継材22、斜材24のダイバーによる設置作業を無くすことができ、さらに水中作業が軽減できる。
次に、第2の実施形態に係る構台の設置方法について説明する。
図16は、本発明の第2の実施形態に係る構台の設置方法によって設置した桟橋110の構成図であり、図17は、図16に示す桟橋110の要部を拡大した構成図である。本実施形態に係る構台の設置方法(以下、単に「設置方法」ともいう)は、上記第1の実施形態の場合と同様に、ダム湖等の湖沼に工事用等の構台となる桟橋110を設置するための方法であり、水底の地盤114に打設した複数本の杭116の上部で構造体118を支持した桟橋(杭式桟橋)110の設置工事において、各杭116の間を補強材120によって連結して補強するための補強方法(補強材設置方法)である。なお、桟橋110は、河川や海に設置されるものでもよく、工事用以外の用途に用いられるものであっても勿論よい。
先ず、本実施形態に係る設置方法の説明に先立ち、この設置方法によって設置される桟橋110の構成例について説明する。
図16及び図17に示すように、桟橋110は、水底の地盤114に下端部が打設された複数本(例えば8本。図16では一側方に並んだ4本のみを図示)の杭116と、各杭116の上端で支持されて水面W上に設置された構造体(床版)118と、2本の杭116の間に複数段(本実施形態では3段)設けた補強材120とから構成されている。桟橋110は、補強材120を構成する水平継材122及び斜材(ブレス、ブレース)124が格点部に設置される固定具(固定金具)126によって杭116に固定されることで、各杭116間が互いに強固に連結され、所望の強度と安定性を備えている。杭116は、例えば鋼管杭とするとよく、また、杭116は地盤114の表面に着地するように設置されてもよい。
補強材120は、上下2本の水平継材122と、上下の水平継材122の両端部同士を対角線状に連結する2本の斜材124とを備える。図16に示すように、補強材120が2段以上で設置される場合には、上下方向で中間の水平継材122が隣接する2段の補強材120で共有されることになる。水平継材122及び斜材124は、各杭116間を所望の強度で連結可能な鉄骨等の形鋼材によって形成される。
図18は、固定具126の構成図であり、図18(A)は、固定具126の平面図を示し、図18(B)は、図18(A)に示す固定具126の正面図を示し、図18(C)は、図18(A)に示す固定具126の開閉部材138a、138bを開いた状態での平面図を示している。また、図19は、図18(B)に示す固定具126の要部を拡大した正面図である。
図17及び図18に示すように、固定具126は、水平継材122及び斜材124を取り付けるための取付部128と、取付部128が一端側に設けられ、杭116を把持するための把持部130と、把持部130の他端側に設けられ、杭116に対して把持部130を締め付ける締付部132と、締付部132より離隔した位置から該締付部132を操作するための動力伝達機構134とを備える。
把持部130は、一端が軸136によって連結されることで互いに開閉可能な一対の開閉部材138a、138bを有する。各開閉部材138a、138bは、平面視で半リング形状であり、それぞれの内面には、開閉部材138a、138bが閉じられた状態で(図18(A)参照)、杭116の外周面形状(外径)に略一致又は杭116の外径よりも多少小さい円形状を画成する円弧凹部139a、139bが設けられている。軸136を中心として開閉部材138a、138bを開くことにより、図18(C)に示すように円弧凹部139a、139bの内側に杭116を挿入することができ、この状態で開閉部材138a、138bを閉じることにより、図18(A)に示すように円弧凹部139a、139bの内側で杭116を把持することができる。
図18に示すように、把持部130では、円弧凹部139a、139bの内面にゴム等からなる緩衝部材140を設けてもよい。そうすると、把持部130で杭116を挟持する際のガタツキを低減でき、より安定して杭116を把持することができる。なお、図18では、理解の容易のため、2点鎖線で示す杭116の外径を緩衝部材140の内径よりも小さく図示しているが、実際には、上記のように円弧凹部139a、139bの内径と杭116の外径とが略一致するため、開閉部材138a、138bが閉じられると緩衝部材140は杭116によって径方向外方に押し潰され、杭116と円弧凹部139a、139bとの間のクッション材として機能する。
取付部128は、一方の開閉部材138aの一端部から外側に向けて突設されたプレート部材であり、その中心には、取付孔141(図18(B)参照)が形成されている。すなわち、水平継材122及び斜材124の端部に形成された図示しない孔部に取付ボルト142(図17参照)を挿通させると共に、該取付ボルト142を取付孔141に挿通させて図示しないナットで締結することで、水平継材122及び斜材124を取付部128(固定具126)に固定することができる。
締付部132は、両方の開閉部材138a、138bの他端部から外側に向けて突設され、互いに対面して重なるプレート部材144a、144bと、各プレート部材144a、144bの中心で互いに連通する貫通孔に対して挿通される締付ボルト(ボルト)146と、一方のプレート部材144aに溶接等によって固着されたナット148とを備える。
図18(A)に示すように、一対の開閉部材138a、138bの円弧凹部139a、139bの内側に杭116を挟持した状態で、締付ボルト146をプレート部材144a、144bの貫通孔を挿通させてナット148によって締結することで、杭116に対して把持部130(開閉部材138a、138b)を締め付けることができる。
図18及び図19に示すように、動力伝達機構134は、例えば水中に配置された締付部132を水面W上(気中)で操作し、把持部130を杭116に対して所望の締付強度で締め付けるためのものである。つまり、動力伝達機構134は、締付部132より離隔した位置から該締付部132を操作する遠隔操作部を構成する。本実施形態の場合、動力伝達機構134は、締付ボルト146の頂部外周面に形成されたギア146aに噛み合うチェーン部材(駆動ギア)150と、チェーン部材150の両端部に連結されて水面W上へと延びたワイヤ部材152とを有する。
チェーン部材150は、例えば金属チェーンによって構成される。チェーン部材150は、ギア146aに噛み合いし、少なくとも後述するように締付ボルト146を仮固定状態から本固定状態(固定状態)まで回転可能な長さに設定される。つまり、チェーン部材150を移動させることにより、締付ボルト146をナット148に対して締め付けし、又は緩めることができる(図19参照)。勿論、締付ボルト146から離れた位置から該締付ボルト146のギア146aを回転させられるものであればチェーン部材150以外を用いてもよく、例えば、棒状のラックギアが形成されたラック部材を上下動可能に設置してもよい。
ワイヤ部材152は、例えば金属繊維や樹脂繊維等によって形成された長尺なワイヤ(ロープ)であり、2本のワイヤ部材152の一端部がチェーン部材150の両端部にそれぞれ連結され、他端部が水面W上へと延びている(図17及び図19参照)。なお、ワイヤ部材152の他端部(チェーン部材150とは反対側の端部)は、互いに連結されてチェーン部材150と共に無端状のループを形成してもよいし、互いに連結されずにそのまま一対の端部として設けられてもよい。
ワイヤ部材152をチェーン部材150に連結することにより、例えば金属チェーンによって形成されて相当な重量物となるチェーン部材150の長さを締付ボルト146の回転量に対応した必要最小限に設定でき、当該動力伝達機構134を軽量化することができる。勿論、ワイヤ部材152を省略しチェーン部材150を長尺に形成して水面W上へと延在させてもよい。
ワイヤ部材152のチェーン部材150とは反対側の端部(水面W上に延びた部分)には、例えば、図示しない手動又は電動のリール装置等を接続してもよい。図19に示すように、例えば、把持部130が水中にある状態で水面W上まで延びているワイヤ部材152をリール装置に接続し、このリール装置を駆動することにより、水面W上からチェーン部材150を移動させて水中の締付ボルト146を回転させることができる。
動力伝達機構134により、水中にある締付部132を水面W上から操作して、水中にある把持部130を杭116に対して締め付けることができる。つまり、チェーン部材150及びワイヤ部材152が、水面W上からの動力を水中の締付部132及び把持部130へと伝達する動力伝達部材(可撓性動力伝達部材)として機能する。勿論、前記リール装置を用いずに、ワイヤ部材152を作業者が手動で引き寄せて締付ボルト146を操作してもよい。
図19に示すように、締付ボルト146の頂面には、例えばT字状の取っ手146bが設けられている。取っ手146bは、水面W上で締付ボルト146を回転させる際に、作業者が直接操作して締付ボルト146を操作するための操作部である。
次に、本実施形態に係る構台の設置方法の一例について、主に図20〜図26を参照して説明する。
図20は、本発明の一実施形態に係る構台の設置方法の手順の一例を示すフローチャートである。図21は、固定具126を用いて1段目の補強材120を杭116に仮固定した状態を示す説明図であり、図22は、図21に示す状態から2段目の補強材120を仮固定した状態を示す説明図である。図23は、図22に示す状態から1段目及び2段目の補強材120の大部分を水中へと降下させた状態を示す説明図であり、図24は、図23に示す状態から3段目の補強材120を仮固定した状態を示す説明図である。図25は、図24に示す状態から構造体118の一部を設置した状態を示す説明図であり、図26は、図25に示す状態から補強材120を設置した2本の杭116に隣接する2本の杭116に対し、1段目の補強材120を仮固定した状態を示す説明図である。図21〜図26では、図面の簡単のため、図16と同様に、動力伝達機構134を構成するチェーン部材150及びワイヤ部材152を省略して図示している。
桟橋110を設置するに当たっては、先ず、所定本数の杭116を水底の地盤114に打設する。勿論、当該設置方法は、既設の桟橋について補強材を追加で設置する場合に用いてもよい。以下、図16に示すように、第1スパンの工程となる2本の杭116間に3段の補強材120を設置した後、さらに隣接する第2スパンの工程となる2本の杭116間に3段の補強材120を設置する場合を例示して当該設置方法を説明する。
先ず、図20のステップS10において、図21に示すように、岸(岸壁)119から沖に向かって必要本数(例えば8本であり、図21では4本のみを図示)の杭116を打設する。
続いて、第1スパンの各工程を実行する。先ず、ステップS20では、2本の杭116の間に1段目の補強材120を仮固定(仮設置、仮組み)する工程を実行する(仮固定工程、仮設置工程、仮組み工程)。すなわち、ステップS20では、図21に示すように、4つの固定具126を用いて2本の水平継材122及び2本の斜材124を杭116に仮固定し、上方の水平継材122を支持する固定具126が水面W上に露出し、下方の水平継材122を支持する固定具126が水中となるように仮設置する。このように1段目の補強材120のうちの上方にある固定具126を水面W上に露出した状態としておくことで、次の2段目の補強材120を気中で容易に取り付けることができる。
なお、当該仮固定工程の施工手順は適宜設定すればよいが、例えば、図21に示すように、予め4つの固定具126に対して2本の水平継材122と2本の斜材124とを陸上や桟橋上で仮組みした補強材120を構築しておき(図21中に破線で示す補強材120を参照)、この補強材120の各円弧凹部139a、139b内に各杭116の上端を挿通させるようにクレーン160を操作し、図21に示す位置へと補強材120を降下させた後、各固定具126を各杭116に対して仮固定するとよい。この際、水平継材122及び斜材124は、所望の締結強度で固定具126の取付部128に対して確実に固定(本固定)する一方、締付部132は、把持部130から杭116が外れない程度の締結強度で締付ボルト146をナット148に締結する仮固定状態とする。これにより、杭116間に仮固定した補強材120は、把持部130の円弧凹部139a、139b(緩衝部材140)が杭116の外周面に摺接しながら該杭116の上下方向に沿って移動可能な程度に取り付けられる。
ステップS30では、上記ステップS20と略同様にして、図22に示すように、水面W上に露出している2本の杭116の間に2段目の補強材120を仮固定(仮組み)する工程を実行する(仮固定工程、仮組み工程)。
ステップS40では、図23に示すように、杭116に仮固定した1段目及び2段目の補強材120をクレーン160で吊りながら、仮固定してある各固定具126の締付ボルト146を緩め、水中の所定位置まで降下させる工程を実行する(降下工程)。この際、次の3段目の補強材120を気中で取り付けるために、2段目の補強材120のうちの上方にある固定具126は水面W上に露出した状態としておく。なお、上記ステップS20における1段目の補強材120の仮固定工程についても、2段目の補強材120の場合と略同様にして、杭116の水面W上に露出している部位に補強材120を仮固定した後、締付ボルト146を緩めて図21に示す所定位置まで降下させて仮設置するようにしてもよい。
ステップS50では、水中にある各固定具126から水面W上へと延びている動力伝達機構134のワイヤ部材152(図17参照)を図示しないリール装置等によって移動させ、チェーン部材150とギア146aとの噛み合い作用下に締付ボルト146を回転させて、図23に示す設置位置に仮固定された1段目と2段目の補強材120の各固定具126について、順次締付ボルト146をナット148に対して所望の締結強度で締結した固定状態(本固定状態)とする(本固定工程、本組み工程)。すなわち、ステップS50では、水面W上から動力伝達機構134を操作することにより、水中にある固定具126を杭116に対して締め付けて、仮固定した1段目及び2段目の補強材120の本固定(本組み)を完了することができる。
なお、動力伝達機構134を構成するチェーン部材150及びワイヤ部材152は、当該桟橋110の設置工事の完了後に取り外してもよいが、図17及び図19に示すように、取り外さずに残しておき、ワイヤ部材152の上端を構造体118の底部等に固定しておいてもよい。そうすると、桟橋110が不要となって取り壊す際に、再び動力伝達機構134を用いて水中にある固定具126の締付部132を緩めることができるため、桟橋110の取り壊し作業においても水中作業をなくすことができる。
次に、ステップS60では、上記ステップS30と略同様にして、図24に示すように、水面W上に露出している2本の杭116の間に3段目の補強材120を仮固定(仮組み)する工程を実行する(仮固定工程、仮組み工程)。
ステップS70では、上記ステップS50と略同様にして、仮固定した3段目の補強材120の固定具126について、動力伝達機構134によって締付ボルト146を所望の締結強度で締結した固定状態(本固定状態)とし(本固定工程、本組み工程)、3段目の補強材120の本固定(本組み)を完了する。なお、上記ステップS50に示す1段目及び2段目の本固定工程を省略し、上記ステップS60の3段目の仮固定工程の後に、1段目〜3段目の各補強材120を所定位置に設置した後、1段目〜3段目の全ての補強材120の全ての固定具126について、まとめて本固定を行うようにしてもよい。
続いて、ステップS80では、図25に示すように、3段の補強材120を固定した第1スパンとなる2本の杭116の上部にクレーン160を用いて構造体118を設置することで、当該第1スパンの全工程を完了する。なお、次の第2スパンの各工程は、上記したステップS20〜S80に示される第1スパンの各工程と略同様に行えばよく、これにより図1に示されるような桟橋110を設置することができる。この際、第2スパンの各工程は、第1スパンの工程によって設置された構造体118にクレーン160を設置して行うとよい(図26参照)。
以上のように、本実施形態に係る構台の設置方法では、地盤114に打設した2本の杭116の間に固定具126によって補強材120を仮固定する工程(第1工程。図20に例示した設置方法ではステップS20、S30、S60)と、仮固定した補強材120を固定具126と共に杭116に沿って所定位置まで降下させる工程(第2工程。図20に例示した設置方法ではステップS40)と、動力伝達機構134によって固定具126から離隔した位置で該固定具126を操作することにより、所定位置に設置した補強材120を2本の杭116の間に固定する工程(第3工程。図20に例示した設置方法ではステップS50、S70)とを実行する。
これにより、水中や立て坑等に杭116を用いて構台を設置する場合に、補強材120の杭116への設置位置まで作業者が直接的に赴く必要がなく、水面W上や地表面上等で補強材120の設置作業の略全工程を行うことができる。このため、水中や地下深く等での作業を無人化し又は大幅に削減することができるため、コストや作業時間を低減することができる。特に、当該設置方法を、図16に示すように、杭116を水底の地盤114に打設し、少なくとも杭116の上部及び構造体118が水面W上に設置される桟橋110に適用すると、補強材120の設置作業のうちの略全工程を水面W上の気中で行うことができ、水中作業を無人化させ又は大幅に削減し、コスト面や工期面で有効となる。また、水中作業をなくし又は大幅に削減することができるため、桟橋110を設置する湖沼等の水深が極めて深い場合や透明度が低い場合等であっても工事を円滑に行うことができる。なお、固定具126の設置時又は設置後の微調整時や、動力伝達機構134が良好に作動しない場合等には、水中作業が必要になる場合も想定されるが、このような場合であっても水中作業は最小限のみでよく、コスト面や工期面に大きな影響が出ることはない。
なお、補強材120を1段のみ設置する場合には、上記した補強材120を仮固定する工程(図20のステップS20)と、仮固定した補強材120を所定位置まで降下させる工程(図20のステップS40)とを実行した後、補強材120を2本の杭116の間に固定(本固定)する工程(図20のステップS50)を実行すればよい。また、補強材120を2段設置する場合には、図20のステップS10〜S50を実行した後、ステップS80を実行すればよい。一方、補強材120を4段以上設置する場合には、例えば、最下段の補強材120が所定位置となるまで図20のステップS20〜S50を繰り返した後、ステップS60以降を実行すればよい。
本実施形態に係る固定具126は、水平継材122や斜材124を取り付ける取付部128が設けられ、杭116を把持可能な把持部130と、杭116に対して把持部130を締め付ける締付部132と、締付部132より離隔した位置から該締付部132を操作するための動力伝達機構134とを備える。これにより、固定具126から離隔した位置から締付部132を操作して当該固定具126を杭116に対して締め付けることができる。このため、水中や地下深くに固定具126を用いて補強材120を設置する工事に用いると、水中作業等をなくし又は大幅に削減することができ、コストを低減し工期を短縮することができる。
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
例えば、補強材を杭に固定する固定具は、上記のような固定具26、126以外の構成であってもよく、補強材を杭に対して一旦仮設置(仮固定)した後、これを杭に沿ってスライドさせ、その後、杭に対して確実に固定することができるものであればよい。
また、補強材としては、上記のように水平継材122及び斜材124を用いた補強材120のような構成以外であってもよく、例えば水平継材122又は斜材124のいずれか一方のみを用いた補強材とすることもできる。
上記第2の実施形態では、陸上や桟橋上で予め組んでおいた補強材120を1段毎にクレーン160から吊り降ろして杭116間に設置する方法を例示したが、例えば、2段又は3段程度(勿論4段以上でもよい)の補強材120を一括して陸上や桟橋上で組んでおき、これをクレーン160から吊り降ろして杭116間に設置する方法を採用してもよい。そうすると2段以上の補強材120を一度に設置することができるので、施工の効率が向上し、作業時間を短くすることができる。さらに、第2の実施形態における固定具126は、第1の実施形態においても使用可能であることは言うまでもない。これにより、第1の実施形態において水中作業をさらに軽減できる。
10、110 桟橋
16、116 杭
18、118 構造体
20、120 補強材
22、122 水平継材
24、124 斜材
26、126 固定具
134 動力伝達機構

Claims (7)

  1. 地盤に打設した複数の鋼管杭の上部で構造体を支持する構台の設置方法であって、
    記地盤に打設した2本の鋼管のそれぞれに上下に固定具を仮固定し、前記2本の鋼管杭における上側の固定具の間及び下側の固定具の間にそれぞれ水平継材を連結することで該2本の鋼管杭の間に該水平継材を上下に設置した後、該上下に設置した水平継材の間に斜材を設置し、これにより前記2本の鋼管杭の間に前記水平継材及び前記斜材を有する補強材を仮設置する第1工程と、
    前記仮設置した補強材を前記固定具と共に前記鋼管杭に沿って所定位置まで降下させる第2工程と、
    前記鋼管杭に対して前記固定具を締め付けて固定することにより、前記所定位置に設置した補強材を前記2本の鋼管杭の間に固定する第3工程と、
    を有することを特徴とする構台の設置方法。
  2. 請求項1記載の構台の設置方法において、
    前記固定具として、前記鋼管杭の外周面を囲繞してその内側に把持するバンド形状部を有するものを用い、
    前記第2工程は、前記固定具のバンド形状部の内周面と前記鋼管杭の外周面との間に互いに相対移動可能な隙間を設け、且つ前記固定具で前記鋼管杭の外周面を囲繞した状態で、該固定具を前記鋼管杭に沿って下降させることで、該固定具に連結された前記補強材を所定位置まで降下させることを特徴とする構台の設置方法。
  3. 請求項1又は2記載の構台の設置方法において、
    前記構台は、前記鋼管杭を水底の地盤に打設し、少なくとも前記鋼管杭の上部及び前記構造体が水面上に設置される桟橋であって、
    前記第1工程は、前記鋼管杭の水面上に露出している部位に前記補強材を仮設置する工程を含み、
    前記第2工程は、前記仮設置した補強材及び固定具を水中へと降下させる工程を含み、
    前記第3工程は、前記水中に配置された固定具を締め付ける工程を含むことを特徴とする構台の設置方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の構台の設置方法において、
    前記補強材を、前記2本の鋼管杭の間で上下に複数段設置する場合に、
    先ず、1段目の補強材について、前記第1工程を実行することで該1段目の補強材を仮設置した後、前記第2工程を実行することで前記仮設置した補強材を所定位置まで降下させ、
    次に、前記1段目の補強材の上段に設置する2段目の補強材について、前記第1工程として、前記所定位置まで降下させた1段目の補強材の上側の水平継材を該2段目の補強材の下側の水平継材として利用し、該下側の水平継材の上方に前記固定具を仮固定して該2段目の補強材の上側の水平継材を設置すると共に、上下の水平継材の間に斜材を設置することで該2段目の補強材を仮設置し、その後前記第2工程として、該2段目の補強材を前記1段目の補強材と共に所定位置まで降下させ、
    さらに、前記補強材を3段以上設置する場合は、3段目以降の補強材について前記2段目の補強材の場合と対応する前記第1工程と前記第2工程とを実行することにより、前記補強材を前記鋼管杭の上下方向に沿って複数段設置し、その後、各段の固定具を締め付けて固定する前記第3工程を実行することを特徴とする構台の設置方法。
  5. 請求項1〜のいずれか1項に記載の構台の設置方法において、
    前記第3工程では、前記固定具の前記バンド形状部の内周面と前記鋼管杭の外周面との間にスペーサを狭持させた状態で前記固定具を前記鋼管杭に対して固定することを特徴とする構台の設置方法。
  6. 請求項記載の構台の設置方法において、
    前記スペーサとして、前記鋼管杭の外周面に沿った形状を有する湾曲支持面を有するものを用い、
    前記第3工程では、前記固定具の前記バンド形状部の内周面と前記鋼管杭の外周面との間に前記スペーサを狭持させ、且つ前記湾曲支持面を前記鋼管杭の外周面に当接させた状態で前記固定具を前記鋼管杭に対して固定することを特徴とすることを特徴とする構台の設置方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の構台の設置方法において、
    前記固定具として、互いに閉じた状態でその内周面で前記鋼管杭の外周面を把持する一対の半リング形状部材を有した前記バンド形状部を有するものを用いることを特徴とする構台の設置方法。
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