JP2012225002A - 水域構造物の足場構築工法及び足場構造 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】水域構造物11の鋼管杭13間を連結し少なくとも鋼管杭13に沿って移動しないように装着された連結部材14が、上部工の下に構築する足場の荷重を保持し、または上部工の下に浮体で構築する足場の動揺を抑制する。足場の荷重を保持する連結部材14は部材軸方向に伸縮自在な棒状部材で、既設の鋼管杭13間に脱着可能である。足場支持部材15は、基部片23aが閉動作することで連結部材14に固定基部23が密着して連結部材14に係止した状態になり、その開閉動作は固定基部23に装着した支柱部材24で行う。
【選択図】図1
Description
このような足場として、例えば、並設された一対の桁の腹部側面に埋設されたボルトでアンカー基材を固定し、このアンカー基材に吊持された吊りチェーンの下端に吊り下げた、鋼管等の架設部材に、これらに交差するように別の架設部材を載置して移動しないように固定し、左右吊りチェーン間の各架設部材上に作業用の道板を設置したものがある(特許文献1参照)。
つまり、削孔作業は、頭上より高い位置での作業になる上、足場が浮体なので波等により足場が動揺するために不安定で力が入り難く、使用するドリルの重さも加わって、危険を伴う困難な作業となるのが避けられなかった。
従って、従来の吊りチェーンを用いた足場を水域構造物に適用した場合、足場の構築作業ばかりでなく、足場構築後の足場上での各種作業においても、作業効率の低下が避けられなかった。
また、この発明に係る水域構造物の足場構築工法は、水中から水面上方に突出する複数の脚部に支持されて水面の上方に位置する上部構造物を備えた水域構造物に、前記上部構造物の下方に位置する足場を設置する、水域構造物の足場構築工法において、水域構造物の脚部間を連結し少なくとも脚部に沿って移動しないように装着された連結部材が、上部工の下に浮体で構築する足場の動揺を抑制することを特徴としている。
また、この発明に係る足場構造は、足場の荷重を連結部材に伝達する足場支持部材において、連結部材に固定する固定基部と支柱部材からなり、足場支持部材は連結部材に脱着可能に装着され、固定基部は基部片が閉動作することで連結部材に固定基部が密着して足場支持部材が連結部材に係止した状態になり、その開閉動作は固定基部に装着した開閉操作部材で行うことができる構造となっていることを特徴としている。
また、この発明に係る足場構造により、この発明に係る水域構造物の足場構築工法を実現することができる。
(第一実施の形態)
図1は、この発明の第一実施の形態に係る水域構造物の足場構造を模式的に示す説明図である。図1に示すように、水域構造物の足場10は、例えば、桟橋や船舶係留施設(ドルフィン)或いは橋脚等の水域構造物11に、水域構造物11が備える上部構造物12の下方に位置して設置されている。
この鋼管杭13の水面W.L上方突出部分から朔望平均干潮面より下側略1m迄の範囲には、防錆・防食のために、ポリエチレン被膜やウレタンエラストマー被膜等を用いたライニングや表面被膜からなる重防食被膜aが施されている。水域構造物部11の脚部には、鋼構造が多く採用されるが、鋼構造を採用した場合、一般的に腐食が激しい水面W.L近傍の飛沫帯には、重防食処理を施すことが望ましく、重防食被膜aは、特に、海水域の水域構造物11において必須とされる施工態様である。
なお、連結部材14が鋼管杭13を挟み込まず鋼管杭13の一方側のみに配置される場合は、鋼管杭13の他方側に鞘管部材19と同様の形状及び機能を備えた鞘管形成用部材20を用意し、鋼管杭13を挟み込んだ鞘管部材19と鞘管形成用部材20のそれぞれのフランジ19a,20aを接合することにより、鋼管杭13の外周面との間に間隙を有して鋼管杭13を内包する円筒状の鞘管を形成することができる。
これにより、鞘管部材19は鋼管杭13を挟んで相互に接合され、複数の連結部材14が、複数の鋼管杭13の隣接杭間を連結した状態に一体的に装着される。
この接合された一対の鞘管部材19、或いは鋼管杭13を挟み込んだ鞘管部材19と鞘管形成用部材20からなる円筒状の鞘管は、例えば、楔状部材21を用いて、水面W.L下方の鋼管杭13に固定保持することができ、これにより、隣接する鋼管杭13の間に配置された連結部材14を水中に固定保持することができる。
この楔状部材21は、楔状部材移動機構により鋼管杭13と鞘管部材19の間に打ち込むことができる。
このため、固定基部23を、開状態で連結部材14の外周面の外側に位置させ、その後、閉状態にすることで、連結部材14の外周面の大半を覆って外周面に密着し連結部材14に係止した状態にすることができる。
この支柱部材24は、鋼管杭13の水面下所定位置に配置された固定基部23から水面W.L方向に突出して(図1参照)、支柱部材24の上端部を、例えば、水面W.L上方の、水面W.L近傍に位置させることができる長さを有している。
また、固定基部23を連結部材14に係止させた足場支持部材15は、両支柱部材24,24をV字状に保持した状態で、支柱取付部材23dから下方に突出下端部24aを突出させ、連結部材14の下方に突出下端部24aを位置させている。このため、波浪等の影響で足場10全体にかかる、足場10を持ち上げようとする力、即ち、揚圧力に抗することができる。
先ず、水域構造物11から離れた位置で、入れ子構造を有する連結部材14を、両端間を短くした上で、浮力体を取り付け水没しないようにして、例えば、鞘管部材19が上下方向に位置する姿勢で水面W.Lに浮かべる。連結部材14が水没しないようにするには、浮力体として、大きな浮力が得られる発泡スチロール製またはFRP(Fiber Reinforced Plastics)製や空気を注入するゴム製等のフロータを取り付ける他、両端を水密に密封して連結部材14自身にフロータの機能を持たせたり、これらを組み合わせて構成しても良い。
なお、足場設置場所に、既に、鋼管杭13の間を連結する補強用部材等が取り付けられており、この補強用部材等が、連結部材14と同様の機能を有する場合、連結部材14を配置することなく、既設の補強用部材等を用いる。
次に、鋼管杭13の水面下所定位置に固定保持された連結部材14に、足場支持部材15を取り付ける。
図9は、足場床を形成する方法を示し、(a)は足場梁を設置した状態の説明図、(b)は足場床を設置した状態の説明図である。図9に示すように、足場10を設置するために必要な数の足場支持部材15を全て連結部材14に取り付けた後、作業員Wは、浮体Pに乗ったまま、即ち、水面W.L上方から、各支柱部材24の、水面W.L上方に露出させた上端部24bに、梁部材16aを掛け渡し、各上端部24bと梁部材16aとを離脱可能に装着する((a)参照)。
(第二実施の形態)
この第二実施の形態に係る水域構造物の足場構造においては、梁部材16aと床部材16bからなる足場形成部材16を、足場10を設置する設置現場で組み立てて、足場10を形成する代わりに、予め製作した足場ユニットを用いて足場30を形成する。その他の構成及び作用は、第一実施の形態に係る水域構造物の足場構造と同様である。
図10は、この発明の第二実施の形態に係る水域構造物の足場構造における足場ユニットを用いて足場を形成する方法を示し、(a)は設置場所まで運ばれた足場ユニットの説明図、(b)は足場支持部材を介して連結部材に足場ユニットを装着した状態の説明図である。
なお、連結部材14は、少なくとも、足場30の設置現場まで曳航した足場ユニット31から足場支持部材15を水面W.L下方に沈める前に、前述したように、鋼管杭13に装着固定しておく。
(第三実施の形態)
この第三実施の形態に係る水域構造物の足場構造においては、足場35は、足場形成部材16により形成される足場10に加えて、足場10より一段低い足場形成ユニット36を設けることにより、二段に形成されている。その他の構成及び作用は、第一実施の形態に係る水域構造物の足場構造と同様である。
図11は、この発明の第三実施の形態に係る水域構造物の足場構造における足場形成ユニットを用いて足場を形成する方法を示し、(a)は足場の平面説明図、(b)は(a)のB-B断面による説明図である。
これにより、水域構造物11が備える上部構造物12である、例えば、桟橋梁部12a下方の空間を十分に確保することができる。つまり、一般に、桟橋床版12bの下面を補修するために床版12bの下面に作業員の手が届き易くしようとすると、足場35の基面、即ち、床部材16bにより形成される足場床面の位置を高くしなければならないが、そうすると、桟橋梁部12aの下面と足場床面との距離が接近してしまい高さ方向空間が非常に狭くなり、桟橋梁部12aの下面における作業性や通行が困難になる。
(第四実施の形態)
この第四実施の形態に係る水域構造物の足場構造においては、足場40を、足場支持部材15を用いることなく直接、連結部材14に装着固定することができる喫水調整足場ユニット41を用いて、形成している。その他の構成及び作用は、第一実施の形態に係る水域構造物の足場構造と同様である。
図12は、この発明の第四実施の形態に係る水域構造物の足場構造における喫水調整足場ユニットの斜視説明図である。図13は、図12の喫水調整足場ユニットを用いて足場を形成する方法を示し、(a)は足場の平面説明図、(b)は(a)のB方向から見た説明図である。
従って、この喫水調整足場ユニット41は、容器内部の液体量を増減することで、水面W.Lに浮かべた際の喫水を調整することができることから、容器内部の液体量を少なくして喫水を浅くし水面W.Lに浮かべた状態にすることができ、一方、容器内部の液体量を多くして喫水を深くし水面W.L下方に沈み込ませることができる。
なお、連結部材14は、少なくとも、足場40の設置現場まで曳航した喫水調整足場ユニット41を水面W.L下方に沈み込ませる前に、前述したように、鋼管杭13に装着固定しておく。
この連結部材14に係止させた喫水調整足場ユニット41は、容器内部の液体量を少なくすることで浮かせることができるので、凹部41aから連結部材14を引き抜いて、連結部材14から喫水調整足場ユニット41を離脱させることができる。
(第五実施の形態)
この第五実施の形態に係る水域構造物の足場構造においては、足場45を、足場支持部材15の代わりに、連結部材14に係止された浮き梁受け部材46を用いて梁部材16aを支持することにより、形成している。その他の構成及び作用は、第一実施の形態に係る水域構造物の足場構造と同様である。
図14は、この発明の第五実施の形態に係る水域構造物の足場構造における浮き梁受け部材を用いて足場を形成する方法を示し、(a)は足場の平面説明図、(b)は(a)のB-B断面による説明図である。
この浮き梁受け部材46を、足場設置場所まで曳航し、足場設置場所に着いたら、係止手段47を用いて、浮き梁受け部材46と連結部材14と繋ぎ止め、水面W.Lに浮かべたまま、連結部材14と直交する方向に位置させて連結部材14に係止する。
水面W.Lに浮かべたまま連結部材14に係止された浮き梁受け部材46を、足場45を形成するために必要な数、設置した後、全浮き梁受け部材46の上面に、浮き梁受け部材46と直交する方向に梁部材16aを掛け渡し、掛け渡した梁部材16aに、足場床となる床部材16bを装着する。これにより、床部材16bの上面を足場床として足場45が形成される。
そして、部材軸方向に伸縮自在な筒体を含む棒状部材で、既設の鋼管杭13間に脱着可能に装着され、水域構造物11の鋼管杭13間を連結し少なくとも鋼管杭13に沿って移動しないように装着された連結部材14が、上部工の下に構築する足場の荷重を保持し、また、上部工の下に浮体で構築する足場の動揺を抑制する。
よって、吊りチェーンを無くすことにより、足場を構築することで得られる作業空間がチェーンに遮られないので、作業空間の自由な移動及び広い作業空間を確保することができ、点検・補修作業の効率が上がり、作業コストの低減及び作業工程の短縮が可能になる。また、吊りチェーンを無くすことにより、手間がかかる吊りチェーンの取付け作業そのものが無くなるので、足場架設にかかる作業コストの低減及び工期の短縮が可能になる。
更に、足場を事前に陸上で製作(ユニット化)して現地に曳航し、足場支持部材を使用して支持部材と連結・固定することで、足場構築にかかる工程を大幅に短縮することができる。
11 水域構造物
12 上部構造物
12a 桟橋梁部
12b 桟橋床版
13 鋼管杭
14 連結部材
15 足場支持部材
16,36 足場形成部材
16a 梁部材
16b 床部材
17 外管
18 内管
19 鞘管部材
19a,20a フランジ
20 鞘管形成用部材
21 楔状部材
22a 長ボルト
22b ナット
22c ガイドパイプ
23 固定基部
23a 基部片
23b ヒンジ
23c ゴム部材
23d 支柱取付部材
24 支柱部材
24a 突出下端部
24b 上端部
31 足場ユニット
36 足場形成ユニット
36a 梁部材
36b 床部材
41 喫水調整足場ユニット
41a 凹部
46 浮き梁受け部材
47 係止手段
P 浮体
W 作業員
W.L 水面
a 重防食被膜
また、この発明に係る足場構造は、水中から水面上方に突出する複数の脚部に支持されて水面の上方に位置する上部構造物を備えた水域構造物に、前記上部構造物の下方に位置する足場を設置する足場構造において、前記複数の脚部間を連結し少なくとも脚部に沿って移動しないように、水面下方の重防食被膜が施された部分を除いた水中位置に配置された連結部材に、前記足場の荷重を伝達する足場支持部材を設け、前記足場支持部材は、開閉自在に形成された基部片からなる固定基部と、前記基部片に取り付けられ前記基部片の開閉操作を行う支柱部材を有して、前記連結部材に離脱可能に装着され、前記支柱部材の閉操作により、前記基部片が閉動作して前記固定基部が前記連結部材に密着固定し係止した状態になることを特徴としている。
また、この発明に係る足場構造は、この発明に係る水域構造物の足場構築工法により実現することができる。
Claims (4)
- 水中から水面上方に突出する複数の脚部に支持されて水面の上方に位置する上部構造物を備えた水域構造物に、前記上部構造物の下方に位置する足場を設置する、水域構造物の足場構築工法において、
水域構造物の脚部間を連結し少なくとも脚部に沿って移動しないように装着された連結部材が、上部工の下に構築する足場の荷重を保持することを特徴とする水域構造物の足場構築工法。 - 水中から水面上方に突出する複数の脚部に支持されて水面の上方に位置する上部構造物を備えた水域構造物に、前記上部構造物の下方に位置する足場を設置する、水域構造物の足場構築工法において、
水域構造物の脚部間を連結し少なくとも脚部に沿って移動しないように装着された連結部材が、上部工の下に浮体で構築する足場の動揺を抑制することを特徴とする水域構造物の足場構築工法。 - 請求項1又は2の水域構造物の足場構築工法を実現するために、足場の荷重を保持する連結部材は部材軸方向に伸縮自在な棒状部材で、既設の脚部間に脱着可能であることを特徴とする水域構造物の足場構築工法。
- 足場の荷重を連結部材に伝達する足場支持部材において、連結部材に固定する固定基部と支柱部材からなり、足場支持部材は連結部材に脱着可能に装着され、固定基部は基部片が閉動作することで連結部材に固定基部が密着して足場支持部材が連結部材に係止した状態になり、その開閉動作は固定基部に装着した開閉操作部材で行うことができる構造となっていることを特徴とする足場構造。
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