JP6571520B2 - ブレースバンドおよび構台の設置方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ダム湖などの水域に打設した杭とブレース材(水平継材および斜材などの補強材)とからなる構台を構築する際に、ブレース材を杭に固定するために用いられ、杭の外周に固定可能な環状の本体と、ブレース材が連結固定される固定部とを有するブレースバンド、およびこのブレースバンドを用いた構台の設置方法に関するものである。
昨今、ダムの治水・利水機能を向上させる再開発工事の計画が相次いでいる。山間部等の狭小地では工事スペースの確保が難しく、ダム湖への工事用構台の架設が不可欠となっている。
従来の山岳地帯における工事用構台の設置方法としては、てんびんのように釣り合いをとりながら工事用構台を手延べ式で構築する方法が多く適用されている。こうした構築方法は、最近ではダム湖などの湖面の桟橋にも多く用いられるようになり、ダム湖における桟橋構築において標準工法となっている。
山岳地帯と異なり、湖面に工事用構台を設置する場合には、桟橋における水平継材およびブレース(以下、まとめてブレース材と称する。)を水中で潜水士が鋼管杭に連結している。ダム湖水中においては視界不良(例えば視程約50cm)なことが多く、施工の安全性と効率化の一層の向上が課題となっていた。
そこで本発明者は、構台の設置方法として、気中でブレース材を仮組みしてブレースバンドで2本の既設杭に仮固定した後、杭に沿ってブレース材を水中にスライドさせて所定の位置に本固定する方法を既に提案している(特許文献1を参照)。ブレースバンドの内径は杭の外径とほぼ同等であり、ブレースバンドの締付部にライナープレートを挟んでブレースバンドの内径を拡大した上で杭に仮設置した後スライドさせ、潜水士がブレースバンドと杭の間にスペーサを挿入した後ライナープレートを撤去し、締付部のボルトを締付けて本固定し、ブレースバンドとスペーサと杭の接触面の摩擦力で構台の上載荷重を杭に伝えるようになっている。
特開2013−64308号公報
ところで、実際に打設された2本の杭には、それぞれ施工による鉛直誤差(傾斜度)が存在する。この鉛直誤差によっては、ライナープレートの厚さが薄くブレースバンドの内径の拡大が十分でない場合、気中で組んだ複数のブレース材が安定した姿勢で2本の杭に沿って水中にスライドできず、所定位置に固定できない場合も想定される。また、ブレースバンドと杭の位置関係によってはスペーサの挿入が困難であったり、ボルト締付後のブレースバンド、スペーサ、杭間の密着性が悪く接触面の摩擦力が十分でない場合があった。したがって、このような場合でも、ブレース材を安定した姿勢で所定位置までスライドすることができ、接触面の十分な摩擦力を得られる技術の開発が望まれていた。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ブレース材を安定した姿勢で所定位置までスライドすることができ、接触面の十分な摩擦力を得られるブレースバンドおよび構台の設置方法を提供することを目的とする。
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るブレースバンドは、2本の杭の間に架設されるブレース材を、前記杭に沿ってスライド自在に前記杭に固定可能な環状のブレースバンドであって、前記杭の外径よりも大きい内径を有する環状の本体と、前記ブレース材を固定するための固定部と、前記本体から半径方向内側に向けて進退可能に設けられるボルトと、前記ボルトの先端に取り付けられ、前記杭の外周面に当接可能な面を有する押え板とを備え、前記杭に固定した前記ブレース材を前記杭に沿ってスライドした際における前記杭の打設誤差の影響を吸収可能にしたことを特徴とする。
また、本発明に係る他のブレースバンドは、上述した発明において、前記ボルトおよび前記押え板が、前記本体の円周方向等間隔に少なくとも3箇所配置されていることを特徴とする。
また、本発明に係る他のブレースバンドは、上述した発明において、前記本体の上下の外周側に、前記ブレース材を固定するための固定部が設けられていることを特徴とする。
また、本発明に係る構台の設置方法は、上述したブレースバンドを用いて、水域に前記杭と前記ブレース材とを有する構台を設置する方法であって、気中で前記ブレースバンドと前記ブレース材を組立ててユニットを構築する工程1と、前記ユニットの前記ブレースバンドを前記杭に仮固定する工程2と、仮固定した前記ユニットを前記杭に沿って水中にスライド移動して、前記ブレースバンドを前記杭に本固定する工程3とを備えることを特徴とする。
また、本発明に係る他の構台の設置方法は、上述した発明において、気中でN(Nは2以上の整数)スパン分の前記ユニットを構築しておき、前記ユニットの前記ブレースバンドをN+1本の前記杭に仮固定した後、前記Nスパン分の前記ユニットをN+1本の前記杭に沿って一体的に水中にスライド移動することを特徴とする。
本発明に係るブレースバンドによれば、2本の杭の間に架設されるブレース材を、前記杭に沿ってスライド自在に前記杭に固定可能な環状のブレースバンドであって、前記杭の外径よりも大きい内径を有する環状の本体と、前記ブレース材を固定するための固定部と、前記本体から半径方向内側に向けて進退可能に設けられるボルトと、前記ボルトの先端に取り付けられ、前記杭の外周面に当接可能な面を有する押え板とを備え、前記杭に固定した前記ブレース材を前記杭に沿ってスライドした際における前記杭の打設誤差の影響を吸収可能にしたので、仮に杭に鉛直誤差があったとしても、仮固定したブレース材を杭に沿って安定した姿勢で所定位置までスムーズにスライドすることができるという効果を奏する。
また、本発明に係る他のブレースバンドによれば、前記ボルトおよび前記押え板が、前記本体の円周方向等間隔に少なくとも3箇所配置されているので、それぞれの押え板に作用する押圧力が対抗し、押え板と杭の接触面に十分な摩擦力を得られ、ブレースバンドを杭の外周面により確実に当接固定することができるという効果を奏する。
また、本発明に係る他のブレースバンドによれば、前記本体の上下の外周側に、前記ブレース材を固定するための固定部が設けられているので、本体の上下の外周側に対してブレース材を簡易に固定することができるという効果を奏する。
また、本発明に係る構台の設置方法によれば、上述したブレースバンドを用いて、水域に前記杭と前記ブレース材とを有する構台を設置する方法であって、気中で前記ブレースバンドと前記ブレース材を組立ててユニットを構築する工程1と、前記ユニットの前記ブレースバンドを前記杭に仮固定する工程2と、仮固定した前記ユニットを前記杭に沿って水中にスライド移動して、前記ブレースバンドを前記杭に本固定する工程3とを備えるので、仮に杭に鉛直誤差があったとしても、仮固定したブレース材を杭に沿って安定した姿勢で所定位置までスムーズにスライドして、本固定することができるという効果を奏する。
また、本発明に係る他の構台の設置方法によれば、気中でN(Nは2以上の整数)スパン分の前記ユニットを構築しておき、前記ユニットの前記ブレースバンドをN+1本の前記杭に仮固定した後、前記Nスパン分の前記ユニットをN+1本の前記杭に沿って一体的に水中にスライド移動するので、構台の施工期間が短縮して施工コストの低減が図れるという効果を奏する。
図1は、本発明に係るブレースバンドの実施の形態を示す斜視図である。 図2は、本発明に係るブレースバンドを杭に装着した状態を示す概略斜視図である。 図3は、本発明に係るブレースバンドの要部平断面図である。。 図4は、桟橋全体の施工概念を示す側面図である。 図5は、本発明に係る構台の設置方法の実施の形態を示す正面図である。 図6は、1列スライドの施工手順1を示す図である。 図7は、1列スライドの施工手順2を示す図である。 図8は、1列スライドの施工手順3を示す図である。 図9は、1列スライドの施工手順4を示す図である。 図10は、本発明に係る構台の設置方法の他の実施の形態を示す正面図である。 図11は、4列同時スライドの施工手順1を示す図である。 図12は、4列同時スライドの施工手順2を示す図である。 図13は、4列同時スライドの施工手順3を示す図である。 図14は、4列同時スライドの施工手順4を示す図である。 図15は、第1ステップ実験状況(工場敷地)を示す写真図である。 図16は、第2ステップ実験状況(実際の現場)を示す写真図である。 図17は、第3スライド試験状況(工場敷地)を示す写真図である。
以下に、本発明に係るブレースバンドおよび構台の設置方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
[ブレースバンド]
まず、本発明に係るブレースバンドの実施の形態について説明する。図1は本発明のブレースバンドの斜視図である。図2は本発明のブレースバンドの装着状態を示す図である。図2においては、詳細な部分の図示を省略している。
図1および図2に示すように、本発明に係るブレースバンド10は、2本の円形鋼管杭からなる杭12の間に架設されるブレース材14(水平継材16およびブレース18)を、杭12に沿ってスライド自在に杭12に固定可能な環状のものである。
このブレースバンド10は、杭12の外径よりも大きい内径を有する環状の鋼製の本体20と、本体20から半径方向内側に向けて進退可能に設けられるボルト22と、ボルト22の内端(先端)に取り付けられ、杭12の外周面12aに当接可能な面24を有する押え板26とを備えており、杭12に固定したブレース材14を杭12に沿ってスライドした際における杭12の打設誤差の影響を吸収可能である。
本体20は、2つの半円弧状体28を環状に連結して構成されている。半円弧状体28は、円弧状の上部フランジ30および下部フランジ32と、これらフランジ30、32を上下に連結するウェブ34およびリブ36とにより構成されている。半円弧状体28の周方向端部には上下に突き出た連結板38が設けられており、2つの半円弧状体28は、連結板38に設けた孔40に挿通した図示しないボルトにより連結固定されている。
上部フランジ30および下部フランジ32の外周の円周方向等間隔の4箇所には、水平継材16を固定するための固定部42が突設されている。水平継材16は、固定部42に設けられた孔44に挿通する図示しないボルトにより固定される。このように、本体20の上下の外周側に対して水平継材16を簡易に固定することができる。また、上部フランジ30の上面の固定部42の根元位置には、図示しない揚重装置のワイヤロープを係合可能な孔46を有する係合部48が設けられている。
ボルト22および押え板26は、本体20の円周方向等間隔に4箇所配置される。押え板26をこのように配置することで、それぞれの押え板26に作用する押圧力が対抗し、押え板26と杭12の接触面に十分な摩擦力を得られ、ブレースバンド10を杭12の外周面12aにより確実に当接固定することができる。このボルト22および押え板26の配置位置は、固定部42と上下方向に重ならない位置に設定されている。
本体20のウェブ34には、ボルト挿通用の図示しない孔が上下2箇所設けられており、孔位置のウェブ34外面にはナット50が設けられている。この上下2箇所の孔およびナット50にそれぞれボルト22が挿通配置される。ボルト頂部52を介してボルト22を回転することでボルト22を半径方向に進退させることが可能である。
押え板26は、ボルト22の内端が揺動可能に固定される基部54と、基部54の内側に設けられた円弧状の湾曲プレート56とからなる。押え板26は、ボルト22を進退することで半径方向に位置を調整可能である。湾曲プレート56は、その内面24が杭12の外周面12aに当接可能に形成されている。ブレースバンド10と杭12は接触面の摩擦力で固定されるため、内面24の面積は必要に応じて適宜設定する。
上記構成の動作および作用について説明する。
本発明のブレースバンド10を杭12の外周に仮固定または本固定する場合には、2つの半円弧状体28を杭12の側方より外周面12aに装着してから半円弧状体28どうしをボルト連結することで杭12に取り付ける。そして、ブレースバンド10に設けた4箇所のボルト22を回して半径方向に進退させ、その内端の押え板26のそれぞれの湾曲プレート56の内面24の位置を調整し、杭12の外周面12aに当接する。この状態でボルト22を回して締め付け、湾曲プレート56の内面24を杭12の外周面12aに当接固定する。このようにして、ブレースバンド10を杭12に仮固定または本固定することができる。
ここで、本実施の形態に係るブレースバンド10は、杭12とブレース材14とからなる構台を水域にスムーズに構築するために用いることができる。この場合の構台の設置方法としては、例えば上記の特許文献1に記載の方法を適用することが可能である。まず、気中でブレース材14を仮組みして、上下左右の四隅に位置する水平継材16の端部とブレースバンド10とを連結固定する。こうして、ブレース材14とブレースバンド10とからなるユニットを構築する。
続いて、電動チェーンブロック等の揚重装置を用いてユニットを吊り下げ、2本の既設の杭12にユニットのブレースバンド10を装着する。ここで、杭12へのブレースバンド10の装着は、杭12の上端からブレースバンド10を挿入し、所定の位置に合わせることで行ってもよいし、2つの半円弧状体28を杭12の側方より装着して行ってもよい。続いて、ユニットのブレースバンド10を仮止め部材等を用いて杭12に仮固定する。この場合、ボルト22を半径方向外側に退避して押え板26を半径方向外側に位置させ、押え板26と杭12の外周面12aとの間隔を大きく開けた状態で仮固定する。
次に、杭12に沿ってユニットを水中の所定位置にスライドする。ここで、杭12に鉛直誤差(傾斜度)があった場合には、ユニットを所定位置にスライドすると、ブレースバンド10の中心と杭12の杭芯とに位置ずれが生じた状態となる。そこで、ボルト22を回して全ての押え板26の半径方向の位置を微調整し、押え板26を杭12の外周面12aに当接固定する。このように、杭12に存在する鉛直誤差はブレースバンド10により吸収されるので、杭12に沿ってユニットを安定した姿勢で所定位置までスムーズにスライドすることができる。なお、構台の上載荷重は、ブレースバンド10の押え板26と杭12の接触面の摩擦力で杭12に伝達される。
図3は、ブレースバンド10の杭12への固定態様の一例を示した要部平断面図である。この図に示すように、ブレースバンド10の内部の杭12は、杭心が若干右側に偏心した位置で固定されている。押し板26と杭12の最大間隔Sは、杭12の鉛直誤差の吸収可能範囲であり必要に応じて適宜設定可能である。間隔Sとしては、例えば最下端のブレースバンド10の位置における杭12の打設誤差で例えば12cm以内とすることができる。このようにすれば、片側最大12cm(設計位置±6cm)の誤差を吸収することが可能であり、例えば水深40m程度の場合、鉛直精度が1/300の鋼管杭まで対応可能である。
上記の実施の形態において、係合部48にあらかじめクレーンや電動チェーンブロックのような揚重装置からのワイヤロープを係合しておき、このワイヤロープを通じてブレースバンド10を揚重し、杭12に装着したり、杭12に沿ってスライドしてもよい。
[構台の設置方法]
次に、本発明に係る構台の設置方法の実施の形態について説明する。
図4は、本発明に係る構台の設置方法によるダム湖の桟橋の構築概念を示した側面図である。この図に示すように、本発明に係る構台の設置方法では、まず、水面WL上の既設の桟橋1上に重機2を配置し、てんびんのように釣り合いをとりながら、互いに直交するメインフレーム3と杭フレーム4を吊り下げ・設置する。
本実施の形態では、基本的に奥行き方向に並列した5本の杭12(鋼管杭)が一つの施工単位となっている。杭フレーム4に取り付けられた5箇所の孔5をガイドにして、水底地盤Gに奥行き方向に5本の杭12を打設する。そして、5本の杭12の間の図示しない4スパンにブレース材を取り付けて、次の施工単位に移動する。
5本の杭12の間の4スパンにブレース材を取り付ける方法としては、例えば、1列のブレース材を取り付けた後、横方向に進捗していく方法(1列スライド)と、複数列(例えば4列)のブレース材を同時に取り付けていく方法(4列同時スライド)とがある。これら各方法について、以下に説明する。
(1列スライドの施工手順)
まず、1列のブレース材からなるユニットを水中にスライドして固定する場合の施工手順について説明する。
これは、図5に示すようなブレースバンド10とブレース材14からなる下部工のユニット60を杭12に順次追加して組み立てる方法であり、具体的には例えば以下のような手順により施工する。
図6の施工手順1に示すように、まず準備工として、杭フレーム4に電動チェーンブロック64を、杭12に作業用足場62を設置する。そしてまず、図中4つの仮止めバンド66を、杭12の所定位置(多くの場合、最上段および2段目のブレースバンド10の設置予定位置直下)に取り付ける。その後、4つのブレースバンド10を、前記4つの仮止めバンド66上に順に固定する。その際、ブレースバンド10付属のボルト22を締め込み押え板26の円弧状の湾曲プレート56を杭12に固定することで更に堅牢に仮固定状態を確保することができる。なお、ブレース材14の部品は各々重量物であり、当手順を含め、以降の手順では、クレーンにより所定位置に移動する。
図7の施工手順2に示すように、ブレースバンド10の固定が完了すると、次に、水平継材16、ブレース18を順次取り付け、ブレース材14をブレースバンド10に取り付ける。
図8の施工手順3に示すように、次に、仮止めバンド66をいったん撤去し、スライド速度およびストロークを管理しながら、電動チェーンブロック64によりブレース材14とブレースバンド10を一体で気中から(図中では)一部が水中になる高さまでスライドさせ、気中に残ったブレース材14の上部のブレースバンド10を再び仮止めバンド66により杭12に仮固定する。
図9の施工手順4に示すように、新しく最上段のブレースバンド10を、それに先行して再度杭12の所定位置(多くの場合、最上段および2段目のブレースバンド10を設置予定位置直下)に取り付けた仮止めバンド66上に取り付け、その後、順次水平継材16、ブレース18を組み付ける。
上記の施工手順2(初回のみ)、3、4の繰り返しにより、所定の深度まで所定の段数のブレース材14をスライドする。その後、潜水作業により、水中のブレースバンド10のボルト22を本締めして、ブレース材14を杭22に固定させる。そして、最上段のブレース材14を気中で作業用足場62において組み立てて作業が完了する。
ここで、上記の1列スライドの施工手順においては、杭12に存在する鉛直誤差はブレースバンド10により吸収されるので、杭12に沿ってユニット化したブレース材14を安定した姿勢で所定位置までスムーズにスライドすることができる。
(4列同時スライドの施工手順)
次に、4列のブレース材からなるユニットを水中に同時にスライドして固定する場合の施工手順について説明する。
これは、杭12が3本以上の場合、つまりブレース材14が2列以上となる場合に、図10に示すようなブレースバンド10とブレース材14からなる下部工のユニット60を順次追加して組み立てる方法であり、具体的には例えば以下のような手順により施工する。
図11の施工手順1に示すように、まず準備工として、杭フレーム4に4基の電動チェーンブロック64を、杭12に作業用足場62を設置する。そしてまず、図中5本の杭12の仮止めバンド66を、5本の杭12の所定位置(多くの場合、最上段および2段目のブレースバンド10を設置予定位置直下)に取り付ける。その後、ブレースバンド10を、前記仮止めバンド66上に順に固定する。その際、ブレースバンド10付属のボルト22を締め込み押え板26の円弧状の湾曲プレート56を杭12に固定することで更に堅牢に仮固定状態を確保することができる。なお、ブレース材14の部品は各々重量物であり、当手順を含め、以降の手順では、クレーンにより所定位置に移動する。また、作業用足場62、電動チェーンブロック64を使用して、5本の杭12の気中上方にブレースバンド10を、気中下方に仮止めバンド66を仮固定する。仮止めバンド66としては、ブレースバンド10と同じ構造のものを用いる。
図12の施工手順2に示すように、5本の杭12へのブレースバンド10の固定が完了すると、次に、水平継材16、ブレース18を順次取り付け、4列のブレース材14をブレースバンド10に取り付ける。
図13の施工手順3に示すように、次に、仮止めバンド66をいったん撤去し、スライド速度およびストロークを管理しながら、電動チェーンブロック64により4列のブレース材14とブレースバンド10を一体で気中から(図中では)一部が水中になる高さまでスライドさせ、気中に残ったブレース材14の上部のブレースバンド10を再び仮止めバンド66により杭12に仮固定する。
図14の施工手順4に示すように、新しく最上段のブレースバンド10を、それに先行して再度杭12の所定位置(多くの場合、最上段および2段目のブレースバンド10を設置予定位置直下)に取り付けた仮止めバンド66上に取り付け、その後、順次水平継材16、ブレース18を組み付ける。
上記の施工手順2(初回のみ)、3、4の繰り返しにより、所定の深度まで所定の段数のブレース材14をスライドする。その後、潜水作業により、水中のブレースバンド10のボルト22を本締めして、4列のブレース材14を杭22に固定させる。そして、最上段のブレース材14を気中で作業用足場62において組み立てて作業が完了する。
ここで、上記の4列同時スライドの施工手順においては、杭12に存在する鉛直誤差はブレースバンド10により吸収されるので、ユニット化した4列のブレース材14を安定した姿勢で杭12に沿って所定位置までスムーズにスライドすることができる。
上記の実施の形態では、5本の杭の間の4スパンに4列のブレース材14を同時に取り付ける場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。気中でN(Nは2以上の整数)スパン分のブレース材14からなるユニットを構築しておき、ユニットのブレースバンド10をN+1本の杭12に仮固定した後、Nスパン分のユニットをN+1本の杭12に沿って一体的に水中にスライド移動し、本固定してもよい。このようにしても、構台の施工期間が短縮して施工コストの低減が図れる。
また、本発明の構成は、上述した実施の形態の構成(手順、装置)に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において種々の変更が可能であることに留意されたい。例えば、上記の実施の形態では、電動チェーンブロック64を用いてブレース材14やブレースバンド10などをスライド移動させる場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限るものではなく、例えば手動のレバーブロック(登録商標)などの装置を用いてブレース材14やブレースバンド10などをスライド移動させてもよい。
[本発明の効果の検証]
次に、本発明に係るブレースバンドおよび構台の設置方法の効果を検証するために行った実験について説明する。
本実験は、上下2段のブレース材とブレースバンドからなるユニットを杭に沿ってスライドして施工性等を確認するものであり、次の3つのステップで行った。まず、第1ステップは、工場敷地に実際と同じ規模の2本の鋼管杭を設置し、1列のユニットをスライドするものである。第2ステップは、実際の施工現場における2本の鋼管杭の間の1スパンに適用したものである。第3ステップは、工場敷地に実際と同じ規模の5本の鋼管杭を設置し、4列上下2段のブレース材からなるユニットを一体的に同時にスライドするものである。本実験の結果、以下の事項が確認された。
第1ステップ実験では、打設した2本の杭の鉛直精度は各々1/340、1/385であった。実験状況の写真を図15に示す。本発明に係るブレースバンドを用いることで、ユニットを杭に沿ってスムーズにスライドできることが確認された。本実験では、1つのユニットに対し、2基の電動チェーンブロックのストロークおよび下降速度が同調でき、ユニットを水平に安定してスライドできることが確認できた。また、ユニットを複数回にわたり上下にスライドさせたが、ユニットの姿勢の安定を保持できることが確認できた。
第2ステップ実験では、実際の2本の杭の精度は各々1/320、1/315であった。実験状況の写真を図16に示す。本発明に係るブレースバンドを用いることで、ユニットを杭に沿ってスムーズにスライドできることが確認された。本実験では、1列のブレース材からなるユニットに対し、2基の電動チェーンブロックのストロークおよび下降速度が同調でき、ユニットを水平に安定してスライドできることが確認できた。以上より、本発明に係るブレースバンドの実用性および電動チェーンブロックの制御・同調性能が確認された。
第3ステップ実験では、4列上下2段のブレース材からなるユニットを一体的に同時にスライドする。スムーズにスライドするためには、複数のチェーンブロックのストロークと下降速度を同調させる必要がある。そのため、4列のブレース材に対し、4基の電動チェーンブロックを用いた。実験状況の写真を図17に示す。実際の5本の杭の精度は各々1/385〜1/244であった。本実験では、4列のブレース材からなるユニットに対し、4基の電動チェーンブロックのストロークおよび下降速度が同調でき、ユニットを水平に安定してスライドできることが確認できた。以上より、本発明に係るブレースバンドの実用性および電動チェーンブロックの制御・同調性能が確認された。
本発明に係る構台の設置方法によれば、従来の方法に比べて、潜水作業を低減でき、構台の施工期間を短縮し、施工コストを大幅に低減することができる。このため、本発明は大規模な工事用構台の施工を行う場合に好適である。
また、本発明に係る構台の設置方法は、作業用足場、電動チェーンブロック、ブレース材、ブレースバンドなど簡易な設備だけで施工可能であり、特殊な設備は必要としない。さらに、使用する部材や構台の構造形式は従来と同等で調達は容易であり、汎用性は高い。また、ダム湖だけでなく、河川内や港湾などでの作業構台の架設工事にも適用できるので汎用性は高い。
また、ブレース材の杭への設置作業を一部材毎でなく、まとめてスライドにて設置できるとともに、気中の安定した足場上で多くの作業を行うため、作業安全性が大幅に向上する。なお、ブレース材の設置作業手順を単純化すれば、作業安全性がより一層高まる。
また、潜水作業はスライド終了後のブレースバンドのボルト締め付けのみでよく、多数に及ぶブレース材の取り付けに要する潜水時間を短縮でき、視界が十分に確保されない(視程50cm程度)ようなダム湖水中における作業安全性を大きく向上することができる。
このように、本発明によれば、水中作業を大幅に低減できるので作業安全性が向上し、さらに、工期の短縮と工費の低減を図ることができる。
以上説明したように、本発明に係るブレースバンドによれば、2本の杭の間に架設されるブレース材を、前記杭に沿ってスライド自在に前記杭に固定可能な環状のブレースバンドであって、前記杭の外径よりも大きい内径を有する環状の本体と、前記ブレース材を固定するための固定部と、前記本体から半径方向内側に向けて進退可能に設けられるボルトと、前記ボルトの先端に取り付けられ、前記杭の外周面に当接可能な面を有する押え板とを備え、前記杭に固定した前記ブレース材を前記杭に沿ってスライドした際における前記杭の打設誤差の影響を吸収可能にしたので、仮に杭に鉛直誤差があったとしても、仮固定したブレース材を杭に沿って安定した姿勢で所定位置までスムーズにスライドすることができる。
また、本発明に係る他のブレースバンドによれば、前記ボルトおよび前記押え板が、前記本体の円周方向等間隔に少なくとも3箇所配置されているので、それぞれの押え板に作用する押圧力が対抗し、押え板と杭の接触面に十分な摩擦力を得られ、ブレースバンドを杭の外周面により確実に当接固定することができる。
また、本発明に係る他のブレースバンドによれば、前記本体の上下の外周側に、前記ブレース材を固定するための固定部が設けられているので、本体の上下の外周側に対してブレース材を簡易に固定することができる。
また、本発明に係る構台の設置方法によれば、上述したブレースバンドを用いて、水域に前記杭と前記ブレース材とを有する構台を設置する方法であって、気中で前記ブレースバンドと前記ブレース材を組立ててユニットを構築する工程1と、前記ユニットの前記ブレースバンドを前記杭に仮固定する工程2と、仮固定した前記ユニットを前記杭に沿って水中にスライド移動して、前記ブレースバンドを前記杭に本固定する工程3とを備えるので、仮に杭に鉛直誤差があったとしても、仮固定したブレース材を杭に沿って安定した姿勢で所定位置までスムーズにスライドして、本固定することができる。
また、本発明に係る他の構台の設置方法によれば、気中でN(Nは2以上の整数)スパン分の前記ユニットを構築しておき、前記ユニットの前記ブレースバンドをN+1本の前記杭に仮固定した後、前記Nスパン分の前記ユニットをN+1本の前記杭に沿って一体的に水中にスライド移動するので、構台の施工期間が短縮して施工コストの低減が図れる。
以上のように、本発明に係るブレースバンドおよび構台の設置方法は、ダム湖などの水域に打設した杭とブレース材とからなる構台を構築する際に有用であり、特に、気中で仮組みしたブレース材を、杭に沿って安定した姿勢で水中の所定位置までスライドするのに適している。
10 ブレースバンド
12 杭
12a 外周面
14 ブレース材
16 水平継材
18 ブレース
20 本体
22 ボルト
24 面
26 押え板
28 半円弧状体
30 上部フランジ
32 下部フランジ
34 ウェブ
36 リブ
38 連結板
40,44,46 孔
42 固定部
48 係合部
50 ナット
52 ボルト頂部
54 基部
56 湾曲プレート
60 ユニット
62 作業用足場
64 電動チェーンブロック
66 仮止めバンド
68 ワイヤロープ
WL 水面
G 水底地盤
S 間隔

Claims (5)

  1. 2本の杭の間に架設されるブレース材を、前記杭に沿ってスライド自在に前記杭に固定可能な環状のブレースバンドであって、
    前記杭の外径よりも大きい内径を有する環状の本体と、前記ブレース材を固定するための固定部と、前記本体から半径方向内側に向けて進退可能に設けられるボルトと、前記ボルトの先端に取り付けられ、前記杭の外周面に当接可能な面を有する押え板とを備え、
    前記押え板は、前記ボルトを進退することで半径方向に位置を調整可能であり、
    前記杭に固定した前記ブレース材を前記杭に沿ってスライドした際における前記杭の打設誤差の影響を吸収可能にしたことを特徴とするブレースバンド。
  2. 前記ボルトおよび前記押え板が、前記本体の円周方向等間隔に少なくとも3箇所配置されていることを特徴とする請求項1に記載のブレースバンド。
  3. 前記本体の上下の外周側に、前記ブレース材を固定するための固定部が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のブレースバンド。
  4. 請求項1〜3のいずれか一つに記載のブレースバンドを用いて、水域に前記杭と前記ブレース材とを有する構台を設置する方法であって、
    気中で前記ブレースバンドと前記ブレース材を組立ててユニットを構築する工程1と、
    前記ユニットの前記ブレースバンドを前記杭に仮固定する工程2と、
    仮固定した前記ユニットを前記杭に沿って水中にスライド移動して、前記ブレースバンドを前記杭に本固定する工程3とを備えることを特徴とする構台の設置方法。
  5. 気中でN(Nは2以上の整数)スパン分の前記ユニットを構築しておき、前記ユニットの前記ブレースバンドをN+1本の前記杭に仮固定した後、前記Nスパン分の前記ユニットをN+1本の前記杭に沿って一体的に水中にスライド移動することを特徴とする請求項4に記載の構台の設置方法。
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