JP5865739B2 - 積層防湿フィルム - Google Patents
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Description
これらの用途において、積層防湿フィルムには、より厳しい性能が求められるようになり、長期使用や高温条件下における防湿性の劣化が少ない優れた積層防湿フィルムの開発がなされてきた。
また、特許文献2、3には、無機酸化物が樹脂のシートに蒸着された防湿フィルムを複数有する積層シートが提案されており、特許文献2では、一方の表面に金属酸化物の蒸着膜を有する第1蒸着樹脂層と、中間樹脂層と、一方の表面に金属酸化物の蒸着膜を有する第2蒸着樹脂層とがドライラミネート加工により積層された太陽電池モジュール用裏面保護シートであって、前記第1蒸着樹脂層及び前記第2蒸着樹脂層の蒸着膜が前記中間樹脂層側に配置される太陽電池モジュール用裏面保護シートが開示されている。更に、特許文献3では、一方の表面に金属酸化物の蒸着膜を有する蒸着樹脂層の少なくとも3層を順次ドライラミネート加工により積層し、前記蒸着樹脂層は、それぞれ40℃、90%RHにおける水蒸気透過度が0.03〜0.5[g/m2・日]である太陽電池モジュール用裏面保護シートの製造方法が開示されている。
また、特許文献4は、非吸湿性樹脂層の少なくとも片面に無機酸化物若しくは金属の蒸着膜が形成された複合フィルムを2枚以上含有し、該複合フィルムの蒸着膜面が、接着剤層を介して、他の複合フィルムの蒸着膜面と積層された層構成を1〜4の範囲内で含有する防湿性多層フィルムが開示されている。
(1)40℃、90%RHにおける水蒸気透過率(WTR(A))が1.0[g/m2・日]以下である防湿フィルムA、及び基材の片面に無機層を有し、40℃、90%RHにおける水蒸気透過率(WTR(B))が前記防湿フィルムAの水蒸気透過率(WTR(A))の10%以下である防湿フィルムBが接着剤層を介して積層された構成を有することを特徴とする積層防湿フィルム、
(2)40℃、90%RHにおける水蒸気透過率(WTR(A))が0.1[g/m2・日] 以上、1.0[g/m2・日] 以下である防湿フィルムA、及び基材の片面に無機層を有し、40℃、90%RHにおける水蒸気透過率(WTR(B))が0.001[g/m2・日] 以上、0.1[g/m2・日] 未満である防湿フィルムBが、接着剤層を介して積層された構成を有することを特徴とする積層防湿フィルム、
(3)40℃、90%RHにおける積層防湿フィルムの水蒸気透過率(WVTR(L))が、[WTR(A)×WTR(B)]/[WTR(A)+WTR(B)]より低い値であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の積層防湿フィルム、
(4)40℃、90%RHにおける積層防湿フィルムの水蒸気透過率(WVTR(L))が、[WTR(A)×WTR(B)]/[WTR(A)+WTR(B)]の80%以下である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の積層防湿フィルム、
(6)防湿フィルムAの40℃、90%RHにおける水蒸気透過率(WTR(A))が0.2 [g/m2・日]以上であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の積層防湿フィルム、
(7)防湿フィルムAの40℃、90%RHにおける水蒸気透過率(WTR(A))が0.4[g/m2・日] 以上であることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載の積層防湿フィルム、
(8)防湿フィルムAの40℃、90%RHにおける水蒸気透過率(WTR(A))が0.6[g/m2・日] 以上であることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載の積層防湿フィルム、
(9) 防湿フィルムBの40℃、90%RHにおける水蒸気透過率(WTR(B))が0.001[g/m2・日] 以上、0.1 [g/m2・日] 未満であることを特徴とする上記(1)及び(3)〜(8)のいずれかに記載の積層防湿フィルム、
(11)防湿フィルムAが基材の片面に無機層を有するフィルムであることを特徴とする上記(1)〜(10)のいずれかに記載の積層防湿フィルム、
(12)耐候性フィルム、防湿フィルムB及び防湿フィルムAを曝露側からこの順に有し、かつ防湿フィルムAの無機層側に防湿フィルムBの基材を有することを特徴とする上記(11)に記載の積層防湿フィルム、
(13)耐候性フィルム、防湿フィルムA及び防湿フィルムBを曝露側からこの順に有し、かつ防湿フィルムBの無機層側に防湿フィルムAの基材を有する上記(11)に記載の積層防湿フィルム、
(14) 接着剤層が接着剤からなり、かつ該接着剤が主剤としてポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ポリウレタンポリオール及びポリエステルポリオールのうち少なくとも1種を含むことを特徴とする上記(1)〜(13)のいずれかに記載の積層防湿フィルム、
(16)化合物系発電素子太陽電池モジュール又はフレキシブル太陽電池モジュールの表面保護部材に用いられる上記(1)〜(15)のいずれかに記載の積層防湿フィルム、
(17)上記(1)〜(16)のいずれかに記載の積層防湿フィルムを有することを特徴とする太陽電池用表面保護部材、
(18)防湿フィルムA及び防湿フィルムBが各々の無機層を曝露面側に有する上記(17)に記載の太陽電池用表面保護部材、
(19)上記(17)または(18)に記載の太陽電池用表面保護材を用いて作製された太陽電池モジュール、
に関する。
なお、本発明において、「○以上、△以下」を「○〜△」と表すことがある。
一般に、積層防湿フィルムはドライラミネート加工等により作成される。無機層を有する防湿フィルムと樹脂フィルムとのドライラミネート加工では、樹脂フィルムに溶剤を用いて希釈した接着剤を所定の厚みに塗布し、例えば100℃から140℃の範囲での乾燥により溶剤を蒸発させ樹脂フィルム上に接着剤層を形成する。その後、防湿フィルムの無機層面を接着剤側に向けて貼合し、所定の温度での養生を経て積層防湿フィルムが製造される。養生は、例えば30℃から80℃の範囲で1日から1週間行なわれる。
通常、高防湿フィルム同士をドライラミネート加工する場合、ドライラミネート加工時に接着剤塗液に含まれている溶剤は、高防湿フィルムの高防湿性の故に、積層フィルム内において内側から外側への拡散、及び表面からの揮発が困難であり、積層フィルム間に残留し、また、加熱により発泡が顕著となる。
これは、上記の構成とすることにより、接着剤塗液中の溶剤が比較的容易に低防湿性のフィルムを透過し、積層防湿フィルムの外へ揮発し、溶剤が残留しないためと考えられる。
一方、比較的低防湿性の防湿フィルムを外層とする場合も同様に該比較的低防湿性の防湿フィルムにより積層防湿フィルムへの水蒸気の進入がある程度抑制され、内面側の高防湿性の防湿フィルムの無機層面においては水蒸気透過率の測定環境と比べ低湿度状態が形成される。この低湿度状態は高防湿性の防湿フィルムの無機層面への水分吸着を著しく減少させ、その結果,高防湿性の防湿フィルムの水分の透過がより減少し、該防湿フィルムの防湿性が上昇することとなり、防湿性に優れた積層防湿フィルムが得られる。
本発明の積層防湿フィルムは、40℃、90%RHにおける水蒸気透過率(WTR(A))が1.0[g/m2・日]以下である防湿フィルムA、及び基材の片面に無機層を有し、40℃、90%RHにおける水蒸気透過率(WTR(B))が前記防湿フィルムAの値の10%以下である防湿フィルムBを有する積層防湿フィルムであって、前記防湿フィルムA及び防湿フィルムBが、接着剤を介して積層した構成を有することを特徴とする。
また、本出願のもう一つの発明である積層防湿フィルムは、40℃、90%RHにおける水蒸気透過率(WTR(A))が0.1[g/m2・日]以上、1.0[g/m2・日] 以下である防湿フィルムA、及び基材の片面に無機層を有し、40℃、90%RHにおける水蒸気透過率(WTR(B))が0.001[g/m2・日]以上、0.1[g/m2・日]未満である防湿フィルムBが、接着剤層を介して積層された構成を有することを特徴とする。
以下、各構成層について説明する。
本発明の積層防湿フィルムにおける防湿フィルムAは、40℃、90%RHにおける水蒸気透過率(WTR(A))が1.0[g/m2・日]以下である。本発明における、防湿フィルムA及び防湿フィルムBの組み合わせにおいて、接着剤塗液中の溶剤が残留しないためには、防湿フィルムAの水蒸気透過率(WTR(A))は、40℃、90%RHで好ましくは0.1[g/m2・日]以上であり、より好ましくは0.2[g/m2・日]以上であり、更に好ましくは0.4[g/m2・日]以上であり、特に好ましくは0.6[g/m2・日]以上である。防湿フィルムAの水蒸気透過率(WTR(A))が上記の範囲であれば、積層防湿フィルムの防湿性が高い場合であっても、溶剤が防湿フィルムAを透過することが容易であり加熱による発泡がおき難い。
このような防湿フィルムAとしては、基材の片面に無機層を有するフィルムが挙げられる。
この無機層により、湿気の透過から太陽電池の内面側を保護することができる。また、無機層が高い透明性を有する場合は、表面保護材として用いた際、発電効率の向上を達成できる。
使用する紫外線吸収剤としては、種々の市販品が適用でき、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、サリチル酸エステル系など各種タイプのものを挙げることができる。ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2'−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクタデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−5− クロロベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4、4'−ジメトキシベンゾフェノン、2,2'、4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノンなどを挙げることができる。
上記の紫外線吸収剤以外に耐候性を付与する耐候安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定化剤が好適に用いられる。ヒンダードアミン系光安定化剤は、紫外線吸収剤のようには紫外線を吸収しないが、紫外線吸収剤と併用することによって著しい相乗効果を示す。
また、1種以上の樹脂フィルムが積層されたものであってもよい。
かかる基材は、従来公知の方法により製造することができ、例えば、原料樹脂を押出機により溶融し、環状ダイやTダイにより押出して、急冷することにより実質的に無定型で配向していない未延伸フィルムを製造することができる。また、多層ダイを用いることにより、1種の樹脂からなる単層フィルム、1種の樹脂からなる多層フィルム、多種の樹脂からなる多層フィルム等を製造することができる。
上記基材の厚さは、一般に5〜100μm程度であり、生産性や取り扱いやすさの点から8〜50μmが好ましく、12〜25μmが更に好ましい。
紫外線吸収剤及び耐候安定剤としては、前述の基材の説明において挙げたものが使用できる。該紫外線吸収剤及び/または耐候安定剤が前記した樹脂と共重合したポリマータイプのものも使用することもできる。
アンカーコート層の厚みは無機層との密着性の観点から、10〜200nmであることが好ましく、10〜100nmであることがより好ましい。
上記基材の片面に無機層を有する防湿フィルムの厚さは、一般に5〜100μm程度であり、生産性や取り扱いやすさの点から8〜50μmが好ましく、12〜25μmが更に好ましい。
防湿フィルムAの水蒸気透過率(WTR(A))の調整は、基材や無機層を構成する材料の選択や、無機層の厚さ、無機層を構成する材料が無機酸化物の場合は該酸化物の酸化数及び防湿フィルムA全体の厚さ等を調整することにより行うことができる。
本発明において、防湿フィルムBは、基材の片面に無機層を有し、40℃、90%RHにおける水蒸気透過率(WTR(B))が前記防湿フィルムAの値の10%以下であるものであり、好ましくは5%以下であり、より好ましく3%以下である。上記比率を10%以下とすることで、得られる積層防湿フィルムは、高い防湿性を有し、一方で接着剤塗液中の溶剤は比較的容易に防湿フィルムAを透過し、溶剤が残留せず表面から積層防湿フィルム外へ揮発し、加熱による発泡も防止できる。
更に防湿フィルムBの水蒸気透過率は、40℃、90%RHで0.1[g/m2・日]以下であるのが好ましく、より好ましくは0.05[g/m2・日]以下、更に好ましくは0.03[g/m2・日]以下、特に好ましくは0.005[g/m2・日]以下である。
前記無機層により、湿気の透過による太陽電池の内面側を保護することができる。また、無機層が高い透明性を有する場合は、表面保護材として用いた際、発電効率の向上を達成できる。
防湿フィルムBを構成する基材、無機層としては、前記防湿フィルムAの説明において挙げたものが使用できる。更には、好ましくは前記防湿フィルムAの説明において挙げたアンカーコート層を設けることができる。
また、上記基材の厚さは、一般に5〜100μm程度であり、生産性や取り扱いやすさの点から8〜50μmが好ましく、12〜25μmが更に好ましい。従って、上記防湿フィルムBの厚さは、一般に5〜100μm程度であり、生産性や取り扱いやすさの点から8〜50μmが好ましく、12〜25μmが更に好ましい。
本発明の積層防湿フィルムは、前記防湿フィルムA及び前記防湿フィルムBを有するものであるが、その40℃、90%RHにおける水蒸気透過率(WVTR(L))が、[WTR(A)×WTR(B)]/[WTR(A)+WTR(B)]より低い値であることが好ましい。
接着剤を用いて複数の防湿フィルムを積層した積層防湿フィルムにおいて、使用する接着剤に防湿フィルムの防湿性を低下させている要因である無機層表面内の欠陥を補強するなどの防湿性を向上させる効果がない場合、積層体の防湿性は各々の防湿フィルムの防湿性への寄与から直列的に導き出されると考えられる。すなわち、得られる積層防湿フィルムの40℃、90%RHにおける水蒸気透過率(W)は、1/W=1/WTR(A)+1/WTR(B) と表され、W=[WTR(A)×WTR(B)]/[WTR(A)+WTR(B)]として理論的に求めることができる。
上記観点から、積層防湿フィルムの水蒸気透過率(WVTR(L))は、上記Wの値の80%以下が好ましく、より好ましくは75%以下、さらに好ましくは72%以下である。
更に、実施例記載の方法により求めた積層防湿フィルムの初期ヘイズ値が30以下であり、かつヘイズの変化度が1〜2であると、積層防湿フィルムが透明性に優れるため好ましい。
また、本発明の積層防湿フィルムにおいては、上記防湿フィルムAと防湿フィルムBの間に接着剤層を有する。
ポリエーテルポリオールは、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等のアルキレンオキサイドを、アルカリ触媒又は酸触媒を触媒として開環重合を行うことで得ることができる。開環重合の出発物質となる活性水素含有化合物としてはエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−へキサンジオール等の多価アルコールを用いることができる。
ジオール成分、ジイソシアネート成分は、ポリウレタンポリオールの流動性や溶剤への溶解性等を考慮して選択することができる。ジオール成分として好ましくは、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の1級水酸基を有するジオールが挙げられる。また、イソシアネート成分としては、脂肪族ジイソシアネート、脂環系ジイソシアネート、芳香族イソシアネートが挙げられる。
更に、例えばポリテトラメチレングリコール(PTMG)のように主鎖構造にポリエーテル構造を含む、耐加水分解ポリエステルポリオールを選択することが望ましい。このようなポリエステルポリオールとしては、エステル基1個当たりの分子量が、好ましくは100〜5,000、より好ましくは120〜3,000である。
硬化後に高い耐熱性をもたせる硬化剤として、例えば芳香族系ジイソシアネートであるXDI、及び脂環系ジイソシアネートであるIPDI等が好ましい。更に、接着剤の黄変を防ぐためには脂環系ジイソシアネートであるIPDI等がより好ましい。
また、より熱的に安定な接着剤層を得るために、主剤にエポキシ系化合物を含んだものを用いてもよい。
本発明における接着剤の主剤と硬化剤の好ましい配合比は、接着剤中に残留する反応性官能基を減らす観点から、質量比で、主剤/硬化剤=5〜25、また官能基のモル比で、NCO/OH=0.8〜9である。
本発明の積層防湿フィルムは、その用途にもよるが、太陽電池などに使用する場合は透明であることが好ましいが、他の非透明部材との併用も任意である。
前記耐候性フィルムは、耐候性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)及びポリビニルフルオライド(PVF)等のフッ素樹脂フィルム、或いは、アクリル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の樹脂に紫外線吸収剤を混合した樹脂組成物を製膜したものが好ましく用いられる。
真空ラミネーション時や高温高湿時の温度・湿度変化においてもその特性変化が小さいことが好ましいことから、ポリエチレンナフタレートなどの低収縮性耐候性基材が好ましい。また、収縮率が大きいポリエチレンテレフタレートフィルムやフッ素系フィルムの場合は、事前の熱処理による低収縮化等が行われたフィルムを使用することが好ましい。
また、太陽電池保護材への使用を考えると可撓性に富み、耐熱性、防湿性、紫外線耐久性に優れる性能を有する耐候性フィルムであることが望ましく、フッ素系フィルムや紫外線吸収剤を含有する耐加水分解性ポリエステルフィルムや耐加水分解性ポリエステルフィルムに紫外線吸収剤を含有する層を設けたフィルムが好ましく用いられる。
該紫外線吸収剤の添加量は、耐候性フィルム中、通常、0.01〜2.0質量%程度であり、0.05〜0.5質量%添加することが好ましい。
上記の紫外線吸収剤以外に耐候性を付与する耐候安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定化剤が好適に用いられる。ヒンダードアミン系光安定化剤としては、前述の基材の説明において挙げたものが使用できる。該ヒンダードアミン系光安定化剤の添加量は、耐候性フィルム中、通常、0.01〜0.5質量%程度であり、0.05〜0.3質量%添加することが好ましい。
太陽電池は発電時の発熱や太陽光の輻射熱などで、その使用温度が85〜90℃程度まで昇温する為、該背面フィルムの融点が使用温度以下であると背面フィルムは軟化し動作中に本来の太陽電池素子を保護する機能が失われる。従って背面フィルムとしては、ポリプロピレン(PP)、ポリ乳酸(PLA)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、酪酢酸セルロース(CAB)などの樹脂に紫外線吸収剤や着色剤を練り込んだ樹脂組成物を成膜したものが好ましく用いられるが、これらに限定されるものではない。
なお、上記紫外線吸収剤としては、前述の基材の説明において挙げたものが使用できる。また、着色剤としては、酸化チタン、炭酸カルシウムなどが使用できる。
背面フィルムの厚さは、一般に25〜300μm程度であり、フィルムの取り扱いやすさとコストの点から好ましくは50〜300μm、より好ましくは50〜250μmである。
本発明の積層防湿フィルムは、そのまま、あるいはガラス板等と貼り合わせて太陽電池用表面保護部材として用いることができる。本発明の表面保護材を用いて本発明の太陽電池モジュール及び/又は太陽電池を製造するには、公知の方法により、作成すれば良い。
(1)防湿フィルム及び積層防湿フィルムの防湿性
<水蒸気透過率測定:袋重量変化からの算出>
防湿フィルムa−1〜5については、防湿フィルム作成後、一週間40℃保管後の時点で、また、積層防湿フィルムD−1、D−2、D−4、D−5、D−7、D−8については、ドライラミネート養生後にJIS Z 0222「防湿包装容器の透湿度試験方法」、JIS Z 0208「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」の諸条件を参照し、次の手法で評価した。
透湿面積10.0cm×10.0cm角の防湿フィルムa−1〜5又は積層防湿フィルムD−1、D−2、D−4、D−5、D−7、D−8をそれぞれ2枚用い、全てのサンプルに関して無機蒸着面を外側となるよう吸湿剤として無水塩化カルシウム約20gを入れ四辺を封じた袋を作製し、その袋を温度40℃相対湿度90%の恒温恒湿装置に入れ、72時間以上の間隔でおよそ200日目まで質量測定し、4日目以降の経過時間と袋重量との回帰直線の傾きから水蒸気透過率[g/m2・日]を算出した。
太陽電池モジュールに供したガスバリアフィルムのうち、袋重量変化からの算出による水蒸気透過率測定で水蒸気透過率が0.01[g/m2・日]未満のフィルムについて、差圧法水蒸気透過率測定を実施した。
防湿フィルムa−6については、防湿フィルム作成後、一週間40℃保管後の時点で、また、積層防湿フィルムD−3、D−6、D−9、D−10については、ドライラミネート養生後にTechnolox社製DELTAPERM機を用いて水蒸気透過率を測定した。該装置は、上室と下室の間に積層体を挟み、湿度条件の上室から真空条件の下室への水蒸気透過を圧力変化で検出し、水蒸気透過率[g/m2・日]を得る。水蒸気透過率の算出は、測定開始から2週間経過以後において、上室40℃90RH%及び下室40℃0RH%での測定値から、上室及び下室とも40℃0RH%での測定値を差し引いて求めた。
積層防湿フィルムD−1〜D−10を10.0cm×10.0cm角切り出し150℃オーブンに30分保持し耐候性フィルム側と反対の面より目視にて発泡の有無を確認した
◎:10.0cm×10.0cm角サンプル全面に発泡が認められないもの
○:10.0cm×10.0cm角サンプルの一部に発泡が認められるもの
×:10.0cm×10.0cm角サンプルの全面に発泡が認められるもの
積層防湿フィルムD−1〜D−10を15.0cm×15.0cm角切り出し、150℃、30分の熱処理後に、JIS−K7136に準じ、積層防湿フィルムのヘイズ値を測定した(初期ヘイズ値)。なお、ヘイズ値測定は日本電色工業社製ヘイズメーターNDH2000を用いた。
さらに、切り出した上記熱処理後の積層防湿フィルムD−1〜D−10をJIS C 60068−2−66に準じ、加速試験であるプレッシャークッカー試験(120℃、湿度100%で32時間(PC32))を行ない、その後ヘイズ値を測定した。なお、プレッシャークッカー試験はトミー精工社製プレッシャークッカー試験LSK−500を用いた。
ヘイズの変化度は、[プレッシャークッカー試験(PC32)後のヘイズ値/初期ヘイズ値]により算出した。なお、プレッシャークッカー試験(PC32)前後で気泡が発生しない場合は、ヘイズの変化がないためヘイズの変化度は1となる。
<耐候性フィルム1>
アルケマ社製ポリフッ化ビニリデン(PVDF)系フィルムKynar 302−PGM−TR(厚み:30μm)を使用した。
防湿フィルムa−1
12μmポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムにシリカを蒸着した三菱樹脂製テックバリアP2を使用して防湿フィルムa−1とした。また上述の方法で測定した防湿性は0.610[g/m2・日]であった。
12μmポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムにシリカを蒸着した三菱樹脂製テックバリアTXを使用して防湿フィルムa−2とした。また上述の方法で測定した防湿性は0.400[g/m2・日]であった。
12μmポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムにシリカを蒸着した三菱樹脂製テックバリアLXを使用して防湿フィルムa−3とした。また上述の方法で測定した防湿性は0.200[g/m2・日]であった。
基材として、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム(帝人デュポン製、「Q51C12」)を用い、そのコロナ処理面に、下記のコート液を塗布乾燥して厚さ0.1μmのコート層を形成した。
次いで、真空蒸着装置を使用して1.33×10-3Pa(1×10-5Torr)の真空下でSiOを加熱蒸発させ、コート層上に厚さ40nmのSiOx(x=1.5)無機層を有する防湿フィルムa−4を得た。作成した防湿フィルムa−4の防湿性能は0.015[g/m2・日]であった。
基材として、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム(帝人デュポン製、「Q51C12」)を用い、そのコロナ処理面に、下記のコート液を塗布乾燥して厚さ0.1μmのコート層を形成した。
次いで、真空蒸着装置を使用して1.33×10-3Pa(1×10-5Torr)の真空下でSiOを加熱蒸発させ、コート層上に厚さ15nmのSiOx(x=1.5)無機層を有する防湿フィルムa−5を得た。作成した防湿フィルムa−5の防湿性能は0.040[g/m2・日]であった。
基材として、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム(帝人デュポン製、「Q51C12」)を用い、真空蒸着装置を使用して、真空下でSiOを蒸発させ、厚さ50nmのSiOxの真空蒸着膜(PVD無機層)を形成した。次いで、アルゴンガスを導入したプラズマ下で、HMDSN(ヘキサメチルジシラザン)を用い、無機層面上に厚さ3nmのプラズマ化学蒸着膜(CVD無機層)を形成した。次いで、プラズマCVD無機層上に、真空下でSiOを蒸発させ、厚さ50nmのSiOxのPVD無機層を形成し防湿フィルムa−6とした。作成した防湿フィルムa−6の防湿性能は0.0030[g/m2・日]であった。
日本合成(株)製「ゴーセノール」(ケン化度:97.0〜98.8mol%、重合度:2400)のポリビニルアルコール樹脂220gをイオン交換水2810gに加え加温溶解した水溶液に、20℃で攪拌しながら35%塩酸645gを加えた。次いで、10℃でブチルアルデヒド3.6gを攪拌しながら添加し、5分後に、アセトアルデヒド143gを攪拌しながら滴下し、樹脂微粒子を析出させた。次いで、60℃で2時間保持した後、液を冷却し、炭酸水素ナトリウムで中和し、水洗、乾燥し、ポリビニルアセトアセタール樹脂粉末(アセタール化度75mol%)を得た。
また、架橋剤としてイソシアネート樹脂(住友バイエルウレタン(株)製「スミジュールN−3200」)を用い、水酸基に対するイソシアネート基の当量比が1:2になるように混合した。
ポリウレタンポリオール成分を含む主剤としてロックペイント株式会社製HD1013を使用し、脂肪族系のヘキサメチレンジイソシアナート成分を含む硬化剤としてロックペイント株式会社製H62を使用し、質量比で10:1となるように混合し、固形分濃度が30%となるように酢酸エチルで希釈して接着剤塗液を調製した。また本接着剤塗液を50μmPETフィルムに塗布後、防湿フィルムa−1〜a−6と貼合、養生し水蒸気透過率を測定し、接着剤に防湿フィルムa−1〜a−6に対する防湿性向上効果がないことを確認した。
耐候性フィルム1に接着剤塗液を固形分6g/m2となるよう塗布乾燥し、防湿フィルムBとして防湿フィルムa−4を用い、該防湿フィルムa−4の無機層を接着剤面に向けてドライラミネートによって貼合した。
その後、積層フィルムの防湿フィルムa−4の基材側に接着剤塗液を固形分6g/m2となるよう塗布乾燥し、防湿フィルムAとして防湿フィルムa−1を用い、該防湿フィルムa−1の無機層面を貼合し、40℃×5日間養生し、厚み66μmの積層防湿フィルムD−1を作成し防湿性、発泡性及びヘイズ変化度を測定及び評価した。結果を表2に示す。
防湿フィルムAとして防湿フィルムa−2を用いたこと以外は実施例1と同様にして厚み66μmの積層防湿フィルムD−2を作成し防湿性、発泡性及びヘイズ変化度を測定及び評価した。結果を表2に示す。
防湿フィルムAとして防湿フィルムa−3を用いたこと以外は実施例1と同様にして厚み66μmの積層防湿フィルムD−3を作成し防湿性、発泡性及びヘイズ変化度を測定及び評価した。結果を表2に示す。
実施例3において、耐候性フィルム側になる防湿フィルムを入れ替えた。
すなわち、耐候性フィルム1に接着剤塗液を固形分6g/m2となるよう塗布乾燥し、防湿フィルムAとして防湿フィルムa−3を用い、該防湿フィルムa−3の無機層を接着剤面に向けてドライラミネートによって貼合した。
その後、積層フィルムの防湿フィルムa−3の基材側に接着剤塗液を固形分6g/m2となるよう塗布乾燥し、防湿フィルムBとして防湿フィルムa−4を用い、該防湿フィルムa−4の無機層面を貼合し、40℃×5日間養生し、厚み66μmの積層防湿フィルムD−4を作成し防湿性、発泡性及びヘイズ変化度を測定及び評価した。結果を表2に示す。
防湿フィルムAとして防湿フィルムa−2を用い、防湿フィルムBとして防湿フィルムa−5を用いたこと以外は実施例1と同様にして厚み66μmの積層防湿フィルムD−5を作成し防湿性、発泡性及びヘイズ変化度を測定及び評価した。結果を表2に示す。
防湿フィルムAとして防湿フィルムa−3を用い、防湿フィルムBとして防湿フィルムa−6を用いたこと以外は実施例1と同様にして厚み66μmの積層防湿フィルムD−6を作成し防湿性、発泡性及びヘイズ変化度を測定及び評価した。結果を表2に示す。
防湿フィルムA、防湿フィルムBのいずれにも防湿フィルムa−3を用いたこと以外は実施例1と同様にして厚み66μmの積層防湿フィルムD−7を作成し防湿性、発泡性及びヘイズ変化度を測定及び評価した。結果を表2に示す。
防湿フィルムBとして防湿フィルムa−3を用い、防湿フィルムAとして防湿フィルムa−2を用いたこと以外は実施例1と同様にして厚み66μmの積層防湿フィルムD−8を作成し防湿性、発泡性及びヘイズ変化度を測定及び評価した。結果を表2に示す。
防湿フィルムA、防湿フィルムBのいずれにも防湿フィルムa−4を用いたこと以外は実施例1と同様にして厚み66μmの積層防湿フィルムD−9を作成し防湿性、発泡性及びヘイズ変化度を測定及び評価した。結果を表2に示す。
防湿フィルムBとして防湿フィルムa−6を用い、防湿フィルムAとして防湿フィルムa−4を用いたこと以外は実施例1と同様にして厚み66μmの積層防湿フィルムD−10を作成し防湿性、発泡性及びヘイズ変化度を測定及び評価した。結果を表2に示す。
2 防湿フィルムA
3 防湿フィルムB
4 基材
5 無機層
6 耐候性フィルム
7 接着剤層
8 背面フィルム
Claims (19)
- 40℃、90%RHにおける水蒸気透過率(WTR(A))が1.0[g/m2・日]以下である防湿フィルムA、及び基材の片面に無機層を有し、40℃、90%RHにおける水蒸気透過率(WTR(B))が前記防湿フィルムAの水蒸気透過率(WTR(A))の10%以下である防湿フィルムBが接着剤層を介して積層された構成を有することを特徴とする積層防湿フィルム。
- 40℃、90%RHにおける水蒸気透過率(WTR(A))が0.1[g/m2・日] 以上、1.0[g/m2・日] 以下である防湿フィルムA、及び基材の片面に無機層を有し、40℃、90%RHにおける水蒸気透過率(WTR(B))が0.001[g/m2・日] 以上、0.1[g/m2・日] 未満である防湿フィルムBが、接着剤層を介して積層された構成を有することを特徴とする積層防湿フィルム。
- 40℃、90%RHにおける積層防湿フィルムの水蒸気透過率(WVTR(L))が、[WTR(A)×WTR(B)]/[WTR(A)+WTR(B)]より低い値であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層防湿フィルム。
- 40℃、90%RHにおける積層防湿フィルムの水蒸気透過率(WVTR(L))が、[WTR(A)×WTR(B)]/[WTR(A)+WTR(B)]の80%以下である請求項1〜3のいずれかに記載の積層防湿フィルム。
- 防湿フィルムAの40℃、90%RHにおける水蒸気透過率(WTR(A))が0.1 [g/m2・日]以上であることを特徴とする請求項1、3または4のいずれかに記載の積層防湿フィルム。
- 防湿フィルムAの40℃、90%RHにおける水蒸気透過率(WTR(A))が0.2 [g/m2・日]以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の積層防湿フィルム。
- 防湿フィルムAの40℃、90%RHにおける水蒸気透過率(WTR(A))が0.4[g/m2・日] 以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の積層防湿フィルム。
- 防湿フィルムAの40℃、90%RHにおける水蒸気透過率(WTR(A))が0.6[g/m2・日] 以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の積層防湿フィルム。
- 防湿フィルムBの40℃、90%RHにおける水蒸気透過率(WTR(B))が0.001[g/m2・日] 以上、0.1 [g/m2・日] 以下であることを特徴とする請求項1及び3〜8のいずれかに記載の積層防湿フィルム。
- 防湿フィルムBの40℃、90%RHにおける水蒸気透過率(WTR(B))が0.001[g/m2・日] 以上、0.05[g/m2・日] 以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の積層防湿フィルム。
- 防湿フィルムAが基材の片面に無機層を有するフィルムであることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の積層防湿フィルム。
- 耐候性フィルム、防湿フィルムB及び防湿フィルムAを曝露側からこの順に有し、かつ防湿フィルムAの無機層側に防湿フィルムBの基材を有し、
前記耐候性フィルムが、フッ素樹脂フィルム、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂もしくはポリエステル樹脂に紫外線吸収剤を混合した樹脂組成物からなるフィルム、またはアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂もしくはポリエステル樹脂のフィルムに紫外線吸収剤を含有する層が設けられたフィルムであることを特徴とする請求項11に記載の積層防湿フィルム。 - 耐候性フィルム、防湿フィルムA及び防湿フィルムBを曝露側からこの順に有し、かつ防湿フィルムBの無機層側に防湿フィルムAの基材を有し、
前記耐候性フィルムが、フッ素樹脂フィルム、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂もしくはポリエステル樹脂に紫外線吸収剤を混合した樹脂組成物からなるフィルム、またはアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂もしくはポリエステル樹脂のフィルムに紫外線吸収剤を含有する層が設けられたフィルムである請求項11に記載の積層防湿フィルム。 - 接着剤層が接着剤からなり、かつ該接着剤が主剤としてポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ポリウレタンポリオール及びポリエステルポリオールのうち少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の積層防湿フィルム。
- 太陽電池用表面保護部材に用いられる請求項1〜14のいずれかに記載の積層防湿フィルム。
- 化合物系発電素子太陽電池モジュール又はフレキシブル太陽電池モジュールの表面保護部材に用いられる請求項1〜15のいずれかに記載の積層防湿フィルム。
- 請求項1〜16のいずれかに記載の積層防湿フィルムを有することを特徴とする太陽電池用表面保護部材。
- 防湿フィルムA及び防湿フィルムBが各々の無機層を曝露面側に有する請求項17に記載の太陽電池用表面保護部材。
- 請求項17または18に記載の太陽電池用表面保護材を用いて作製された太陽電池モジュール。
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