以下に、本発明の実施例について説明する。
[第1実施例]
以下に、本発明の第1実施例に係る定着装置を備えた画像形成装置について説明する。本実施例に係る定着装置は、パッドと第2定着ローラを同じ保持プレートに保持させた発明である。
まず、本実施例の画像形成装置の構成について説明する。図1は、本実施例に係る画像形成装置としてのプリンタを示す概略構成図である。
図中の1は画像形成装置としてのプリンタであり、カラー画像を印刷する電子写真方式のカラープリンタである。プリンタ1の装置筐体内の下部には、普通紙等の印刷用媒体としての用紙Pを収容する用紙カセット2が脱着自在に装着されている。なお、印刷用媒体としては、用紙Pに限らず、印刷対象となる他の媒体でもよい。装置筐体の上面の上部カバー15には、画像が印刷された用紙Pを集積するスタッカ3が形成されている。用紙カセット2とスタッカ3は、図1に破線で示すおおむねS字状に形成された用紙搬送路により接続されている。用紙搬送路4と用紙カセット2との接続部には、給紙ローラ5a、5bと分離片6とで構成されている給紙機構が設けられている。給紙機構は、用紙カセット2から用紙Pを1枚ずつに分離して用紙搬送路4へ繰り出す。媒体搬送方向である給紙ローラ5bの用紙Pの搬送方向(以下、用紙搬送方向)の下流側には、給紙機構により繰り出された用紙Pを挟持して搬送する搬送ローラ7、及び搬送された用紙Pの斜行を修正して搬送するレジストローラ8が配置されている。レジストローラ8の下流側には、用紙Pを搬送する搬送ベルト9が配置されている。搬送ベルト9上には複数の画像形成部11が搬送ベルトに沿って配置される。後述する画像形成部11の感光体ドラム18の上方には、静電潜像を形成するための露光ヘッド12が配置されている。感光体ドラム18の下側である、搬送ベルト9上面部を挟んだ感光体ドラム18の反対側には、画像形成部11で形成されたトナー像を用紙P上に転写する転写ローラ13が配置される。搬送ベルト9の用紙搬送方向の下流側には、用紙P上に転写されたトナー像を定着させる定着装置14が配置されている。また、定着装置14の用紙搬送方向の下流側には、定着装置14から排出された用紙Pを上部カバー15上のスタッカ3へ挟持して搬送する複数の排出ローラ16a、16bが配置されている。
本実施例のプリンタ1は、カラープリンタであるため、ブラック(k)、シアン(c)、マゼンタ(m)、イエロー(y)の現像剤を用いる。このため、プリンタ1は、各設定色に対応して4つの画像形成部11が配置される。つまり、ブラック(k)、シアン(c)、マゼンタ(m)、イエロー(y)の現像剤としてのトナーTを収容した4つの独立した画像形成部11k、11c、11m、11yが、用紙搬送方向に沿ってトナー像を形成する順に配置されている。これら4つの画像形成部11k、11c、11m、11yは、全て同一の構造であるため、以下では1つの画像形成部11について説明する。
画像形成部11は、露光ヘッド12によって静電潜像が形成される感光体ドラム18、感光体ドラム18を一様に帯電させる帯電ローラ19、感光体ドラム18上の静電潜像にトナーTを付着させて現像する現像ローラ20、現像ローラ20にトナーTを供給する供給ローラ21、設定色のトナーTを収容したトナーカートリッジ22、転写後に感光体ドラム18上に残留したトナーTを掻き取って除去するクリーニングブレード23等を備えている。また、画像形成部11は、上記各部材が一体的に構成されており、プリンタ1に脱着自在に装着される。このため、プリンタ1の上部カバー15は開閉可能に構成されている。
露光手段としての露光ヘッド12は、図示しない取付ステーによって上部カバー15に支持されている。この取付ステーによって支持された露光ヘッド12は、上部カバー15が閉った状態で、感光体ドラム18の上方に対向配置される。露光ヘッド12は、LED(Light Emitting Diode)光やレーザ光等の発光体を備えている。そして、発光体の光により、画像情報に基づいて感光体ドラム18の表面上に静電潜像を形成する。転写手段としての転写ローラ13には転写電圧が印加されている。そして、転写ローラ13に印加された転写電圧によって、搬送ベルト9で搬送される用紙P上に、感光体ドラム18上に形成されたトナー像を転写する。
本実施例の定着装置14は、ベルト加熱方式の装置である。定着装置14は、加圧部材としての加圧ローラ30と、定着ベルトユニット31とで構成されている。定着装置14は、プリンタ1に対して一体的に装着されてもよく、またプリンタ1から着脱可能に装着されてもよい。
次に、定着装置14の具体的構成について説明する。以下では、定着装置14として、ウオーミングアップを短時間で終了できる定着ベルトと面ヒータを用いた方式の定着装置について説明を行う。図2は本実施例における定着装置14の主要部を示す側面図である。
定着装置14の定着ベルトユニット31は、定着ベルト33、第1定着ローラ321、ヒータ34、ヒータホルダ35等を備えて構成されている。定着ベルト33は、用紙Pに転写されたトナー像を加熱して定着させるためのベルトである。定着ベルト33は、加圧ローラ30との間で用紙Pを挟んで、この用紙Pを搬送する方向へ回転される。定着ベルト33の内側には、定着ベルト33を支持して加圧ローラ30側へ押圧する第1定着ローラ321及び第2定着ローラ322や、定着ベルト33を加熱するヒータ34や、ヒータ34を支持すると共に定着ベルト33のガイドを兼ねるヒータホルダ35等が配置されている。
さらに、第1定着ローラ321の回転方向(用紙搬送方向)の上流側には、第1定着ローラ321に隣接して、押圧部材としてのパッド401が配設されている。パッド401の用紙搬送方向の上流側には、パッド401に隣接して、第2定着ローラ322が配設されている。ここで、加圧部材としての加圧ローラ30、定着ベルトユニット31の第1定着ローラ321、パッド401、第2定着ローラ322は、互いに並列に配置されている。また、定着ベルトユニット31の第1定着ローラ321、パッド401及び第2定着ローラ322と、加圧ローラ30とは、定着ベルト33を介して対向して配置されている。
加圧ローラ30は、定着ベルト33の外周面に当接し、定着ベルト33を介して第1定着手段としての第1定着ローラ321、第2定着手段としての第2定着ローラ322及びニップ形成部材としてのパッド401に対して圧接する加圧部材である。加圧ローラ30は、図3に示すように、押圧機構55に支持されて、第1定着ローラ321(図2参照)へ押圧されている。
押圧機構55は、加圧部材としての加圧ローラ30を支持して第1定着ローラ321等に圧接するための機構である。押圧機構55は主に、加圧ローラレバー49と、加圧ローラスプリング441とから構成されている。加圧ローラレバー49は、支持フレーム48(図4参照)に揺動可能に支持されて加圧部材としての加圧ローラ30を支持する加圧レバーである。加圧ローラレバー49は、ほぼL字状に形成され、その角部に加圧レバー回転支持軸482が設けられている。加圧レバー回転支持軸482は、装置本体側の支持フレーム48に支持されている。これにより、加圧ローラレバー49は、支持フレーム48に揺動可能に支持されている。加圧ローラレバー49のうち加圧レバー回転支持軸482の隣接位置(下方の端部)には、加圧ローラ30を支持する加圧ローラ支持孔49aが設けられている。加圧ローラ30は、加圧ローラレバー49の加圧ローラ支持孔49aに、加圧ローラ軸受け473を介して回転可能に取り付けられている。加圧ローラレバー49の上部には、加圧部材付勢手段としての加圧ローラスプリング441が取り付けられている。支持フレーム48には、加圧ローラスプリング441を支持するスプリング支持ステー48aが設けられている。加圧ローラスプリング441は、その一方の端部が加圧ローラレバー49の上部に取り付けられた状態で他方の端部がスプリング支持ステー48aに当接される。これにより、加圧ローラレバー49は、加圧レバー回転支持軸482で支持フレーム48に揺動可能に支持された状態で、上方の端部が、スプリング支持ステー48aに支持された加圧ローラスプリング441で付勢されている。この加圧ローラスプリング441によって加圧ローラレバー49の上部が付勢されて、加圧レバー回転支持軸482で支持された加圧ローラレバー49が回転することで、加圧ローラレバー49の下方の端部に第1定着ローラ321へ向かう力が働く。これにより、加圧ローラ30は、第1定着ローラ321へ押圧されている。加圧レバー回転支持軸482は、加圧ローラ30と第1定着ローラ321とが互いに回転中心に向かって押し付け合うように、その設置位置が設定されている。
なお、加圧部材としては、必ずしも回転することは必須ではなく、摩擦係数の低い材料で表面を覆った固定ガイドでも構わない。本実施例では、加圧部材として、定着ベルト33に従動して回転する回転体である加圧ローラ30を用いている。
また、パッド401は、圧縮コイルスプリング等のバネ部材41によって、定着ベルト33を介して加圧ローラ30を押圧する方向に付勢されている。さらに第2定着ローラ322も、図示しない押圧機構により加圧ローラ30を押圧する方向に第2定着手段付勢手段としての第2定着ローラスプリング43の所定の押圧力によって付勢されている。
以上により、定着ベルトユニット31と加圧ローラ30との間に、用紙搬送方向に所定の幅からなるニップ部Nが形成される。ニップ部Nの下流側には、分離ガイドGが設けられている。
また、定着ベルト33の内側には、ベルト温度検出手段としてのベルト温度センサ36が配置されている。ベルト温度センサ36は、定着ベルト33の回転方向のヒータ34の下流側であってニップ部Nの上流側に設けられている。ベルト温度センサ36は、定着ベルト33の内周面に摺接して定着ベルト33の内周面の温度を検出するサーミスタからなる。ベルト温度センサ36は、装置本体側に支持されている。
また、加圧ローラ30の外周面には、加圧ローラ温度検出手段としての加圧ローラ温度センサ37が配置されている。加圧ローラ温度センサ37は、加圧ローラ30の外周面に摺接して加圧ローラ30の表面温度を検出するサーミスタからなる。加圧ローラ温度センサ37は、装置本体側に支持されている。
加圧部材としての加圧ローラ30は、図5に示すように、鉄、アルミニウム合金等の金属製のパイプまたはシャフトからなる芯金30aと、シリコーンゴム、フッ素樹脂等の耐熱性の弾性層30bと、フッ素樹脂等からなる離型層30cとから構成されている。加圧ローラ30は、図示しない軸受けによって回転可能に支持されている。
第1定着ローラ321は、定着ベルト33の内周面に当接する第1定着手段である。第1定着ローラ321は、図6に示すように、鉄、アルミニウム合金等の金属製のパイプまたはシャフトからなる芯金321aと、シリコーンゴム、フッ素樹脂等の耐熱性の弾性層321bとから構成されている。第1定着ローラ321は、第1定着ローラ軸受け471(図4参照)によって支持フレーム48に回転可能に支持されている。このとき、第1定着ローラ321は、パッドレバー46の第1定着ローラ逃げ孔464(図14参照)に通されているため、第1定着ローラ逃げ孔464が第1定着ローラ321の相対的可動を許容して、第1定着ローラ321とパッドレバー46とが互いに干渉することはない。芯金321aには図示しない定着ローラギアが設けられている。この定着ローラギアに定着モータ38(図15参照)が噛み合っている。これにより、第1定着ローラ321は、定着モータ38から伝達される駆動力によって駆動されて定着ベルト33を回転駆動することで、図2に矢印で示す用紙搬送方向に用紙Pを搬送する。
本実施例の第1定着ローラ321の具体的な寸法の一例は次のようになっている。第1定着ローラ321は、芯金321aを外径20mm、厚さ0.8mm、内径18.4mm、長さ230mmの鉄(STKM)からなるパイプとする。
第1定着ローラ321の外周面には、弾性層321bとして厚さ2mm、発泡倍率2とした発泡シリコーンゴム(スポンジ)層を形成した。これにより、第1定着ローラ321は、外径24mmのローラとなっている。また、ローラ製品硬度はASKER−C70として構成した。第1定着ローラ321と加圧ローラ30との長手方向における圧力分布が均一になるように、中央部の外径が両端の外径に対して0.2mm大きくなるクラウン形状とした。
ここで、加圧ローラ30は、定着ベルト33と共に回転する。定着モータ38によって第1定着ローラ321が回転されると、ニップ部Nにおける摩擦力によって定着ベルト33が従動回転する。そして、定着ベルト33の回転に伴って、加圧ローラ30が従動回転する。
第2定着ローラ322は、定着ベルト33の内周面に当接し、第1定着ローラ321よりも用紙搬送方向上流側に位置する第2定着手段である。第2定着ローラ322は、図7に示すように、鉄、アルミニウム合金等の金属製のパイプまたはシャフトからなる芯金322aと、シリコーンゴム、フッ素樹脂等の耐熱性の弾性層322bとから構成されている。第2定着ローラ322は、図示しない軸受けによって回転可能に支持されている。第2定着ローラ322は、定着ベルト33の回転に伴って従動回転する。
本実施例の第2定着ローラ322の具体的な寸法の一例は次のようになっている。第2定着ローラ322は、芯金322aを直径13mm、厚さ0.8mm、内径11.4mm、長さ230mmの鉄(STKM)からなるパイプとする。第2定着ローラ322の外周面に、弾性層322bとして厚さ1mm、発泡倍率2とした発泡シリコーンゴム(スポンジ)層を形成した。これにより、第2定着ローラ322は、外径15mmのローラとなっている。また、ローラ製品硬度はASKER−C80として構成した。第2定着ローラ322と加圧ローラ30との長手方向における圧力分布が均一になるように、中央部の外径が両端の外径に対して0.1mm大きくなるクラウン形状とした。
パッド401は、図8に示すように、支持基材401aと、耐熱性弾性材401bと、摺動層401cとから構成される。
支持基材401aは、耐熱性弾性材401b及び摺動層401cを支持するための部材である。支持基材401aは、断面形状がほぼT字状の棒材で構成されている。さらに支持基材401aは、鉄、アルミニウム合金等の金属で構成されている。支持基材401aは、耐熱性弾性材401b及び摺動層401cを支持するため、加圧ローラ30側の先端が広がった形状となっている。
耐熱性弾性材401bは、摺動層401cを弾性的に支持するための部材であり、支持基材401aの加圧ローラ30側の先端に接着固定されている。
摺動層401cは、定着ベルト33を加圧ローラ30に押し付けるために、定着ベルト33の内周面に圧接される層である。摺動層401cは、定着ベルト33の内周面との摩擦抵抗を下げるために、耐熱性弾性材401bの表面に設けられている。摺動層401cの円弧面401dは、定着ベルト33を含む加圧ローラ30側の曲率と同じに設定されている。なお、ニップ部Nの幅は、パッド401の円弧面401dの長さを変更することによって、変更することが可能である。
スプリング41は、図2,3に示すように、パッド401を加圧ローラ30に設定圧力で押し付けるための付勢手段である。スプリング41は、パッド401の長手方向に複数配置され、長手方向の圧力分布が均一になるように配置間隔、押圧力等が設定されている。
加熱部材としてのヒータ34は、図9に示すように、基板34aと、電気絶縁層34bと、抵抗発熱体34dと、保護層34eとから構成されている。基板34aは、ベルト状のステンレスやセラミックなどで構成されている。この基板34a上に、ガラス等からなる電気絶縁層34bが設けられる。そして、電気絶縁層34bの上に、電極34cを有する抵抗発熱体34dが形成され、それを保護層34eで保護して面状ヒータとなる。
このような抵抗発熱体34dは、ニッケル−クロム合金、銀−パラジウム合金などの材料を用いることができる。また、保護層34eには、耐圧ガラスによるガラスコーティングが施されている。
図2のヒータホルダ35は、第1定着ローラ321、第2定着ローラ322と共に定着ベルト33を張架して、回転可能に支持している。ヒータホルダ35は、第1定着ローラ321、第2定着ローラ322に対向して、離間した位置に配置されている。さらに、第1定着ローラ321、第2定着ローラ322、パッド401と共に定着ベルト33を張架して、回転可能に支持している。ヒータホルダ35は、アルミニウム合金等の金属で構成されている。
ヒータ34は、ヒータホルダ35の定着ベルト摺接面に対向して設けた溝に配置され、さらにヒータ加圧板39に挟み込まれて固定支持されている。ヒータホルダ35、ヒータ加圧板39に接するヒータ34の両面には、耐熱性の熱伝導グリースを塗布している。さらに、ヒータ34等は、ヒータ加圧板39を介して定着ベルト33を張架する方向に、図示しない押圧機構のヒータスプリング42の所定の押圧力によって付勢されている。
ベルト部材としての定着ベルト33は、図10に示すように、ベルト基材33aと、弾性層33bと、離型層33cとから構成されている。ベルト基材33aは、ニッケル、ポリイミド、ステンレスなどの材料で形成された円筒状の部材である。この円筒状のベルト基材33aの外周面に、シリコーンゴム、フッ素樹脂等の耐熱性の弾性層33bが設けられている。弾性層33bの外周面には、フッ素樹脂等から成る離型層33cが形成されている。定着ベルト33は、第1定着ローラ321の回転に伴って回転する。具体的には、第1定着ローラ321の回転がニップ部Nにおける摩擦力によって定着ベルト33に伝達することで、定着ベルト33が従動回転し、定着ベルト33の全体がヒータ34によって加熱される。
本実施例の加圧ローラ30は、芯金30aを直径33.6mm、厚さ0.5mm、長さ230mmの鉄(STKM)からなるパイプとする。加圧ローラ30の外周面に、弾性層30bとして厚さ1.2mmのシリコーンゴム層を形成し、その表面に離型層30cとして厚さ30μmのパーフルオロビニルエーテル共重合体(PFA)樹脂チューブを被覆している。これにより、加圧ローラ30は、外径36mmのローラとなっている。また、ローラ製品硬度はASKER−C75として構成した。
本実施例のパッド401は、支持基材401aをアルミニウム合金(A6063)として、耐熱性弾性材401bをシリコーンゴムで形成し、摺動層401cとして厚さ30μmのシリコーン系樹脂をコーティングして構成した。円弧面401dの円弧長さは5mmに設定している。シリコーンゴム硬度は、JISA40とした。また、パッド401と加圧ローラ30との長手方向における圧力分布が均一になるように、円弧面401dには、中央部が両端に対して0.1mm凸になるようなクラウン形状とした。なお摺動層401cはコーティングとして構成したが、シート状のフッ素樹脂で耐熱性弾性層401bを覆うように構成してもよい。また、ガラス繊維にフッ素樹脂コートを施したガラスクロスで耐熱性弾性層401bを覆うように構成してもよい。
ニップ部Nのパッド401と第1定着ローラ321との間隙が約1mm、パッド401と第2定着ローラ322との間隙が約1mmに設定されている。なお、本実施例では、パッド401のニップ部Nを円弧形状で形成したが、平面形状で形成してもよい。
本実施例の定着ベルト33は、ベルト基材33aとして厚さ70μmのポリイミド(PI)樹脂製の円筒部材を用い、弾性層33bとして厚さ100μmのシリコーンゴム層を設け、離型層33cとして厚さ15μmのPFA樹脂層を無端帯状に形成した無端ベルトである。また、定着ベルト33は、ベルト周長が長くなると昇温時間が長くなる。一方、ベルト周長が短いと内部のスペースが不足するため、ニップ幅の確保に必要な定着ローラの外径及びパッド基材サイズを確保して配置するのが不可となる。そのため、前述の第1第2定着ローラ321,322とパッド401の構成に対して、定着ベルト33の内径を50mmとしている。
加圧ローラ30は、押圧機構55によって片側15kgf、両側で30kgfの総押圧力で第1定着ローラ321を押圧するように設定されている。さらにパッド401は総荷重8kgfにて加圧ローラ30を押圧するように設定されている。第2定着ローラ322は、図示しない押圧機構によって片側4kgf、両側で8kgfの総押圧力にて、加圧ローラ30を押圧するように設定されている。
以上の構成により、加圧ローラ30と第1定着ローラ321のなすニップ幅を8mm、加圧ローラ30とパッド401のなすニップ幅を6mm、加圧ローラ30と第2定着ローラ322のなすニップ幅を4mmにそれぞれ設定し、ニップ部Nの幅は、約18mmに設定した。なお、上述したニップ部Nのパッド401と第1定着ローラ321との間隙約1mm及びパッド401と第2定着ローラ322との間隙約1mmは、前記ニップ幅8mm、6mm、4mmに含まれる。
本実施例のパッドレバー46は、パッド401と第2定着ローラ322を支持する部材である。パッドレバー46によるパッド401と第2定着ローラ322の支持形態を、図3,11,12,13に示す。またパッドレバー46の側面形状を図14に示す。
図14に示すように、パッドレバー46には、用紙搬送方向上流側から、第2定着ローラスプリング43の付勢方向に延在して第2定着ローラ322を、加圧ローラ30を押圧する方向にスライド可能にかつ加圧ローラ30を押圧する方向と直行する方向であって用紙搬送方向のガタつきを抑えて保持する第2定着ローラ支持孔462と、パッド401を固定保持するパッド支持孔461と、第1定着ローラ321の芯金軸部を逃がす(接触しないで通す)第1定着ローラ逃げ孔464と、パッドレバー46を支持フレーム48に回転可能に支持するためのパッドレバー回転支点孔463とが配設されている。
パッドレバー46は、支持フレーム48に揺動可能に支持されている。具体的には、パッドレバー46のパッドレバー回転支点孔463が、支持フレーム48に取り付けた回転支持軸481(図4参照)に嵌り合うことで、パッドレバー46が、回転支持軸481を揺動中心にして、支持フレーム48に揺動可能に支持されている。これにより、パッドレバー46は、パッド401を、用紙搬送方向に対して直交する方向に揺動可能に支持する。このように、支持フレーム48に揺動可能に支持されたパッドレバー46によってパッド401が支持されるため、パッド401は、その先端の摺動層401cを、ガタつくことなく正確にかつ確実に、定着ベルト33を介して加圧ローラ30に押圧することができるようになっている。パッド401は、パッドスプリング41によって加圧ローラ30の回転中心方向に付勢される。これにより、パッド401は、パッドレバー46に支持された状態で、パッドスプリング41によって摺動層401cを加圧ローラ30に設定圧力で安定して押圧することができるようになっている。
パッド401は、上述のようにパッドレバー46のパッド支持孔461に装着されて、ガタつかないように隙間なく支持されている。パッド401は具体的には図11〜14に示すように構成されている。パッド401の断面形状は略T字板形であるため、パッドレバー46のパッド支持孔461はこれに合わせて略T字形に形成されている。パッド401の板厚W1、W2(図2参照)と、パッド支持孔461の孔幅461a、461b(図14参照)とは、最小の隙間となる寸法関係にある。これにより、パッド401は、パッドレバー46に、ガタつかないように隙間なく保持されている。この結果、パッド401は、パッドレバー46に支持されて、他の部材と干渉することなく、パッドレバー回転支点孔463が嵌り合う回転支持軸481を中心にして回転する。パッドレバー46に支持されたパッド401は、前記第1定着手段としての第1定着ローラ321及び前記第2定着手段としての第2定着ローラ322の間に位置する。パッド401は、ニップ形成部材の一部で、ニップ形成部材は、定着ベルト33を介して加圧部材を押圧する押圧部材(パッド401)と、支持フレーム48に揺動可能に支持され、押圧部材(パッド401)を支持しその先端のガタつきを抑えてガイドする保持プレート(パッドレバー46)とを備えている。
第2定着ローラ322は、第2定着ローラ軸受け部材47を介してパッドレバー46に装着されている。具体的には、第2定着ローラ322の芯金軸端部が、パッドレバー46の第2定着ローラ支持孔462に通された状態で、第2定着ローラ軸受け部材47に回転可能に支持されている。第2定着ローラ軸受け部材47は、パッドレバー46の第2定着ローラ支持孔462に近接離間する方向にスライド可能に保持されている。第2定着ローラ軸受け部材47に支持された第2定着ローラ322は、パッドレバー46に支持されてパッド401との設定間隔が保たれた状態で、互いに干渉することなく、加圧ローラ30に対して、その回転中心に向けて近接離間できるようになっている。
第2定着ローラ322は、第2定着ローラスプリング43によって、加圧ローラ30の回転中心方向に付勢されている。第2定着ローラ322は、第2定着ローラ軸受け部材47に支持されている。第2定着ローラ軸受け部材47は、第2定着ローラスプリング43によって付勢されている。第2定着ローラ軸受け部材47は、パッドレバー46の第2定着ローラ支持孔462に沿って加圧ローラ30の回転中心方向にスライドする。第2定着ローラスプリング43は、第2定着ローラ軸受け部材47と、支持フレーム48に切り起したスプリング支持ステー483(図4参照)との間に保持されている。これにより、第2定着ローラスプリング43は、第2定着ローラ軸受け部材47を加圧ローラ30の回転中心方向に付勢する付勢力を発生させる。パッド401と第2定着ローラ322がパッドスプリング41と第2定着ローラスプリング43で揺動するが、その揺動範囲でこれらが支持フレーム48に干渉しない形状に設けられている。さらに、パッド401と第2定着ローラ322とは、互いに干渉しないようにパッドレバー46で支持されている。
本実施例では、ヒータ34の出力は合計900Wに設定されている。印刷速度はA4縦送り40ppmに設定されている。
ここで、図15に、本実施例のプリンタ1の機能面の構成を示す。図中の50はプリンタ1の制御部であり、図示しない通信回線を介してパーソナルコンピュータ等の上位装置と接続されている。制御部50は、プリンタ1内の各部を制御して印刷処理等を実行する機能、上位装置とのデータ通信を制御する機能等を有している。
図中の51はプリンタ1の記憶部であり、制御部50が実行するプログラムや、それに用いる各種のデータ、制御部50による処理結果等が格納される。52は高圧電源部であり、制御部50の指令に基づいて、帯電ローラ19、現像ローラ20、供給ローラ21、転写ローラ13等に電圧を印加する。また、帯電ローラ19、現像ローラ20、供給ローラ21等は、画像形成部11がプリンタ1に装着されたときに、高圧電源部52と電気的に接続される。53は定着制御部であり、制御部50からの指命に基づいて、図示しない給電回路から、定着装置14のヒータ34へ加熱用の電力を供給すると共に、定着モータ38へ電力を供給して第1定着ローラ321を用紙搬送方向に回転させる。また、定着制御部53へは、ベルト温度センサ36によって検出された定着ベルト33の温度、および加圧ローラ温度センサ37によって検出された加圧ローラ30の表面温度等が入力される。制御部50は、定着制御部53へ入力された定着ベルト33の温度を基に、定着制御部53によってヒータ34へ供給する電力をON、OFFさせて、定着ベルト33の表面温度を所定の定着温度に保つように制御する。
本実施例のプリンタ1の印刷動作における各部の動作について説明する。
プリンタ1の制御部50は、上位装置から印刷命令を受信すると、その印刷命令に従った印刷を開始する。まず、用紙カセット2に収容された用紙Pを、給紙ローラ5a、5b及び分離片6によって1枚ずつに分離して用紙搬送路4へ繰り出す。繰り出された用紙Pは、搬送ローラ7、レジストローラ8によって、搬送ベルト9へ搬送される。
これと並行して制御部50は、高圧電源部52によって、それぞれの画像形成部11の各ローラおよび転写ローラ13へ、予め設定された所定の電圧を印加する。各画像形成部11の帯電ローラ19に印加された帯電電圧によって、各感光体ドラム18の表面を一様に帯電させ、印刷命令に基づく画像情報に従って各露光ヘッド12を発光させ、各感光体ドラム18の表面を露光して、それらの表面上に静電潜像を形成する。次いで、供給ローラ21から供給されたトナーTを、現像ローラ20によって感光体ドラム18の静電潜像に付着させて現像して、感光体ドラム18の表面上に各色のトナー像を形成する。
その後、用紙Pが搬送ベルト9により画像形成部11まで搬送される。用紙Pが各色の画像形成部11の感光体ドラム18と転写ローラ13との間を通過する際に、転写ローラ13に印加されている転写電圧によりブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの各色のトナー像が用紙P上に順次転写されて、カラーのトナー像が形成される。
トナー像が転写された用紙Pは、定着装置14に搬送されて、定着装置14によってトナー像が用紙P上に定着される。そして、トナー像が定着された用紙Pは、排出ローラ16aによって搬送された後、排出ローラ16bによって上部カバー15上のスタッカ3へ排出されて集積される。これにより、印刷動作が完了する。
この場合の定着装置14の定着動作について、以下に説明する。
まず、プリンタ1における印刷動作の開始に伴って、制御部50は、定着制御部53によって定着モータ38を回転させる。定着モータ38の回転によって、定着装置14の第1定着ローラ321の定着ローラギアが、プリンタ1の本体に配設された図示しないギア列を介して用紙搬送方向に回転され、第1定着ローラ321が用紙搬送方向に回転される。用紙搬送方向に回転する第1定着ローラ321は、ニップ部における摩擦力により、定着ベルト33および加圧ローラ30を従動回転させる。
また、制御部50は定着制御部53によって、ヒータ34へ図示しない給電回路から電力を供給してヒータ34を発熱させて、定着ベルト33をその内周側から加熱する。ヒータ34によって加熱された定着ベルト33の温度は、ベルト温度センサ36によって検出されて定着制御部53に入力される。定着制御部53は、検出された定着ベルト33の温度に基づいて、給電回路からヒータ34へ供給する電力をON、OFFして、定着ベルト33の表面温度を所定の定着温度に保つように制御する。定着ベルト33の表面温度が所定の温度に保たれた状態で、トナー像が転写された用紙Pが搬送されてくると、用紙Pは定着ベルト33を介して第2定着ローラ322、パッド401、第1定着ローラ321と、加圧ローラ30とで形成されたニップ部Nで挟持され、定着ベルト33による所定の定着温度での加熱と、所定の押圧力での加圧によって、トナー像を用紙P上に定着させる。
このとき、加圧ローラ30は、押圧機構55の加圧ローラレバー49に支持されている。加圧ローラレバー49は、加圧レバー回転支持軸482で、支持フレーム48に支持されている。さらに、加圧ローラレバー49は、加圧ローラスプリング441で付勢されて、梃の原理で、加圧ローラ30を第1定着ローラ321に押し付けている。このとき、第1定着ローラ321は支持フレーム48に支持されているため、加圧ローラレバー49に支持された加圧ローラ30が第1定着ローラ321の回転中心に向かう方向に付勢されて、互いに押し付け合う。
一方、パッド401は、パッドレバー46に支持されて、パッドスプリング41により安定して加圧ローラ30に押圧される。パッド401の押圧方向は、加圧ローラ30の回転中心方向である。
また、第2定着ローラ322は、パッドレバー46にスライド可能に支持されているため、第2定着ローラスプリング43により安定して加圧ローラ30に押し付けられる。このとき、第2定着ローラ322は、加圧ローラ30の回転中心に向けてスライドするため、第1定着ローラ321は、加圧ローラ30の回転中心に向かう方向に押し付けられる。
これにより、第1定着ローラ321が支持フレーム48に支持され、加圧ローラ30が加圧ローラレバー49で第1定着ローラ321に押し付けられ、さらにパッド401及び第2定着ローラ322がそれぞれパッドレバー46に支持されて互いに独立して加圧ローラ30の回転中心に向けて押し付けられる。
この結果、用紙Pがニップ部に搬送されると、加圧ローラ30、第1定着ローラ321、第2定着ローラ322及びパッド401は、互いに独立した動作で、定着ベルト33を介して用紙Pを挟む。このため、加圧ローラ30、第1定着ローラ321、第2定着ローラ322及びパッド401は、互いに影響されることなく、各部材に設定された圧力で用紙Pを押圧する。
なお、本実施例では、定着ベルト過昇温防止のために、第1定着ローラ321の回転開始タイミングはヒータONから時間を空けずに、回転開始することが望ましい。本実施例では、ヒータONと同時に第1定着ローラ321の回転を開始する設定とした。また、本実施例の定着ベルト33の目標温度は160℃に設定され、ヒータ34のON後に定着ベルト33の温度は、定着実行時にこの目標温度を中央値とした所定の温度範囲となるように制御される。
ここで、本実施例の定着装置14において、第2定着ローラ322の保持方法の違いによる、トナー画像への影響を確認する評価試験を行った。比較例として、従来構成であるパッドと第2定着ローラを別レバー部材にそれぞれ保持した構成を用いた。図16は比較例の構成を模式的に示す概略平面図である。図17は本実施例の構成を模式的に示す概略平面図である。具体的には、図16に示すように、支持フレーム48の回転支持軸481に、パッド401を支持した第1レバー部材501と、第2定着ローラ322を支持した第2レバー部材502とが回転可能に設けられている。第1定着ローラ321は、支持フレーム48に支持され、第1レバー部材501及び第2レバー部材502に干渉しないようになっている。
一方、本実施例の構成である定着装置14は、図17に示すように、支持フレーム48の回転支持軸481に、パッド401及び第2定着ローラ322を支持したパッドレバー46を回転可能に設けている。第1定着ローラ321は、支持フレーム48に支持され、パッドレバー46に干渉しないようになっている。
評価試験は、プリンタ1へ前記各構成の定着装置を装着し、電源を投入した後のウォームアップ終了時に、A4サイズの用紙P(沖データエクセレントペーパ秤量64g/m2)を10枚連続して印刷を行った。このとき、印刷パターンは単色トナーデューティ100%として、印刷速度はA4縦送り40ppm、30ppm、20ppmの3水準として印刷を行った。そのときの用紙P上の定着トナー画像の乱れ、ずれ、ムラ等(以下「画像乱れ」という)の定着画像品位を評価項目とした。画像品位の評価は、用紙上の未定着時のトナー位置から定着時にずれることによって生じた不均一部(画像乱れ)の有無を目視にて判断したものである。画像乱れは、トナーが移動して用紙Pの地肌が見える場合や、光沢ムラが見える場合である。なお、トナーデューティのデューティは以下の意味である。用紙の印刷可能範囲に対する全面ベタ印刷時の面積率100%印刷を100%dutyといい、その100%dutyに対して1%の面積に相当する印刷を1%dutyという。「密度」は所定の面積(例えば、用紙100枚分やドラム100回転分の面積など)で(1)実際に画像形成されたドット数と(2)所定の面積にて画像形成可能な総ドット数(画像形成されたドット数+画像形成されないドット数であり、所定の面積にて潜在的に画像形成可能なドットの総数)とから求める密度である。即ち、「密度=(1) /(2)×100」となる。
また、本実施例では画像乱れを3段階のレベルに分類した。画像の違いを模式図にしたものを図18,19,20に示す。即ち、図18のように定着画像に乱れがないもの(○で示す)と、図19のように定着画像に乱れがページ内に部分的に発生したもの(△で示す)と、図20のように定着画像に乱れがページ内に全面的に発生したもの(×で示す)との3段階である。
上記評価条件による各構成の評価結果を図21に示す。図21に示すように、第1定着ローラ321と第2定着ローラ322の間にパッド401を配置した本実施例の構成によって、40ppmの印刷速度まで、画像乱れが発生しないことが判る(図中○)。
比較例では、図16で記載のパッド401の斜線部401s、第2定着ローラ322の斜線部322s、第1レバー部材501と回転支持軸481の接続部501s、第2レバー部材502と回転支持軸481の接続部502sの4カ所で接続しなくてはならず、そこに寸法的な誤差が生じる。
本実施例では図17のパッド401の斜線部401s2、第2定着ローラ322の斜線部322s2、パッドレバー46と回転支持軸481の接続部46s、の3カ所で寸法的な誤差が生じる。
これにより、寸法的な誤差が、比較例では大きくなり、印刷速度がある程度速くなると(30ppm以上)画像乱れが生じやすくなる。
比較例では、第2レバー部材502と回転支持軸481の接続部502sと、第2定着ローラ322の斜線部322sとで間隔が広がろうとする。即ち、加圧ローラ30に対してモーメントを利用して外側から接触するため、加圧ローラ30からの反発力が外側に向くために外側に開こうとする力が働き、パッド401と第2定着ローラ322の距離幅が広がるので、ニップ部Nの幅が広がる。このため、30ppmの印刷速度で画像乱れが発生したものと考えられる。
ここで、本実施例の構成による定着装置14の圧力分布を図22に示す。第1定着ローラ321と第2定着ローラ322の間の部分と加圧ローラ30との接触領域がニップ部Nである。ニップ領域Aは第2定着ローラ322が加圧ローラ30に 、ニップ領域Cはパッド401が加圧ローラ30に、ニップ領域Eは加圧ローラ30が第1定着ローラ321に、各々押圧されて生じる圧力分布である。ニップ領域A、C間およびニップ領域C、E間では、定着ベルト33が加圧ローラ30に押圧されてニップ領域(低加圧領域)B,Dを形成している。そのニップ領域B,Dにおいては、定着ベルト33はベルトのテンションによって加圧ローラ30に押し付けられている。
また、前述の押圧機構の構成により、ニップ領域Eの長手方向平均圧力(以下「ニップ領域E圧力」という)のピークを2.0〜2.5kgf/cm2に、ニップ領域Cの長手方向平均圧力(以下「ニップ領域C圧力」という)のピークを0.8〜1.0kgf/cm2に、ニップ領域Aの長手方向平均圧力(以下「ニップ領域A圧力」という)のピークを0.8kgf/cm2になるように設定される。つまり、ニップ領域A圧力及びニップ領域C圧力は、ニップ領域E圧力よりも低く設定される。
これに対して比較例のように構成すると、ニップ部Nの幅が広がってしまって、図23のような圧力分布になる。図に示すように、パッドと第2定着ローラとの間にできるニップ領域Bcに低加圧領域(ほぼ無圧)が発生する。これは、パッド先端が第2定着ローラと加圧ローラの隙間に入り込んでいたことで発生していた圧力が、パッドと第2定着ローラが離れることで、これらがベルトを押さえきれずに、通常発生する圧力(図23中のニップ領域Bcの点線で示している圧力)を発生させることが出来なくなったためと考えられる。このニップ領域Bcでは、ニップ通過時にトナー層から発生する空気、水蒸気等の動きを抑え込むことが出来なくなると共に、用紙P表面と定着ベルト33の間で微少すべりが生じ易くなるため、トナー画像の乱れが発生しやすくなる。コート紙等のように通気性の低い用紙を使用した場合、より乱れが大きくなる。
本実施例では、パッド401と第2定着ローラ322とを、同一のパッドレバー46に支持させて配置したことで、パッド401と第2定着ローラ322との間の距離のバラツキを小さくすることが可能となる。この結果、図22に示すような圧力分布を得ることが可能となる。図22の圧力分布では低加圧領域の発生を抑えているため、トナー画像の乱れが発生しない良好な印刷結果を得ることが出来る。
以上のように、本実施例の定着装置14では、第1定着ローラ321は支持フレーム48に回転可能に固定支持されると共に、パッド401と第2定着ローラ322は、同じレバー部材(保持プレート)であるパッドレバー46にそれぞれ保持させる。即ち、パッド401がパッドレバー46に保持されてガイドされ、同一のパッドレバー46に第2定着ローラ322が保持される。このように、可動部材を減らし、寸法的な誤差を減らすことにより、ニップ圧力の落ち込みを低減することができる。
このように、本実施例の定着装置14によれば、第2定着ローラ322とパッド401との間の距離のバラツキやパッド401の先端部のガタつきを抑えることが可能となるため、2部材間の圧力の落ち込みを防ぐことが可能となり、圧力のバラツキが抑えることができる。
これらによって、定着画像品位不具合(画像乱れ)の発生を効果的に抑えることのできる定着装置14を提供できる。この結果、画像品位の高いプリンタを提供することが可能になる。
[第2実施例]
次に、本発明の第2実施例について説明する。本実施例では、印刷速度を高速化するのに伴って、第1定着ローラ321及び第2定着ローラ322と加圧ローラ30との間の当接圧力を増やすために、第2定着ローラを支持フレームに固定させたものである。
先ず、図24,25を用いて本実施例の定着装置およびプリンタについて説明する。なお、第1実施例の定着装置およびプリンタと同様の部分は、同一の符号を付してその説明を省略する。
本実施例の定着装置14では、上述した第1実施例の構成に対して、第2定着ローラを支持フレームに直接支持する構成としている。これにより、パッドと第2定着ローラ間の距離のバラツキを抑制できる。さらに、第2定着ローラ外径を大径化して構成している。これによって、ニップ部Nを長くし、更に後述する圧力ピークを上げることで、更に印刷速度を上げることのできる定着装置としている。
本実施例のパッドレバー46のパッド401と第2定着ローラ322の支持形態を、図24〜27に示す。またパッドレバー46の側面形状を図28に示す。
本実施例では、図24に示すように、第2定着ローラ322を支持フレーム48に対して軸受け472を介して支持する構成としている。
図28に示すように、パッドレバー46には、用紙搬送方向上流側から、パッドレバー46の揺動時に第2定着ローラ322の相対的可動を許容してパッドレバー46と第2定着ローラ322との干渉を防ぐ第2定着ローラ逃げ孔466と、パッド401を固定保持するパッド支持孔467と、第1定着ローラ321の芯金軸部を逃げて干渉を防ぐ第1定着ローラ逃げ孔464と、パッドレバー回転支点孔463とが配設されている。
パッド401の保持形態を、図26,27に示す。パッド401の断面形状は上述のように略T字板形で、各部の板厚はW1及びW2であり、パッド支持孔467の孔幅467a、467bに最小の隙間となる寸法関係にて保持されている。
第2定着ローラ322の保持形態を、図24,25に示す。第2定着ローラ322は、パッドレバー46と干渉しない状態で、支持フレーム48に対して軸受け472を介して支持されている。パッドレバー46では、第2定着ローラ322は、パッドレバー46に設けた幅466aの逃げ孔466に通される。パッドレバー46は、パッドレバー回転支点孔463が支持フレーム48に設けた回転支持軸481に取り付けられることで、支持フレーム48に揺動可能に支持されている。このとき、パッドレバー46の逃げ孔466は、パッド401が揺動する範囲でパッド401の揺動を許容して、パッド401と第2定着ローラ322、パッドレバー46と第2定着ローラ322で干渉が起らない構造になっている。
本実施例では、第1定着ローラ321及び第2定着ローラ322が各々支持フレーム48に回転可能に支持された状態で、これらの定着ローラに加圧ローラ30が当接する。このとき、加圧ローラレバー49は、支持フレーム48の加圧レバー回転支持軸482に回転可能に支持されるが、加圧ローラレバー49と加圧レバー回転支持軸482とには次の関係がある。
加圧ローラレバー49は、加圧レバー回転支持軸482に支持されて、加圧ローラ30を、第1定着ローラ321及び第2定着ローラ322に押圧させる。加圧ローラ30は定着ベルト33に接触している周の中心が第1定着ローラ321及び第2定着ローラ322の回転中心間の中間点を通る方向に押圧される。このように設計するため、加圧レバー回転支持軸482は、第1実施例の加圧レバー回転支持軸482よりも高い位置に設けられている。加圧ローラレバー49に支持された加圧ローラ30の押圧力は、第1定着ローラ321及び第2定着ローラ322に接触する当初は均等に作用し、次第に第1定着ローラ321に強い押圧力が作用するようになる。加圧ローラ30は加圧レバー回転支持軸482を中心にした円弧上を移動するため、加圧ローラ30を第1定着ローラ321及び第2定着ローラ322に強く押し付ければ、第2定着ローラ322にかかる押圧力に比べ第1定着ローラ321に強い押圧力が作用する。この押圧力の変化は、加圧レバー回転支持軸482と第1定着ローラ321と第2定着ローラ322の位置関係によって変わる。このため、加圧レバー回転支持軸482の取り付け位置を調整したり、加圧ローラスプリング441の圧縮強度を設定したりすることにより、加圧ローラ30と第1定着ローラ321間、加圧ローラ30とパッド401間、加圧ローラ30と第2定着ローラ322間で所望の押圧力を得るように設計できる。
本実施例の第1定着ローラ321は、芯金321aを直径20mm、長さ230mmの鉄(STKM)からなる中実シャフトとして、弾性層321bとして厚さ2mmの発泡倍率2とした発泡シリコーンゴム(スポンジ)層を形成した外径24mmのローラである。ローラ製品硬度はASKER−C70として構成した。第1定着ローラ321は加圧ローラ30との間の長手方向における圧力分布が均一になるように、中央部が両端に対して外径が0.2mm大きくなるクラウン形状とした。
第2定着ローラ322は、芯金322aを直径10mm、長さ230mmの鉄(STKM)からなる中実シャフトとし、弾性層322bとして厚さ2mmの発泡倍率2とした発泡シリコーンゴム(スポンジ)層を形成した外径14mmのローラである。ローラ製品硬度はASKER−C75として構成した。加圧ローラ30との長手方向における圧力分布が均一となるように、中央部が両端に対して外径が0.1mm大きくなるクラウン形状とした。その他の各ローラ、パッドの構成は第1実施例と同様である。
加圧ローラ30は、図示しない押圧機構によって片側25kgf、両側で50kgfの総押圧力で、第1定着ローラ321と第2加圧ローラ324を押圧するように設定されている。さらに、パッド402は総荷重5kgfにて、加圧ローラ30を押圧するように設定されている。このとき、加圧ローラ30の荷重方向は、第1定着ローラ321と第2加圧ローラ324の回転中心間の中間点を通る方向としている。これによって加圧ローラ30が、第1定着ローラ321と第2加圧ローラ324の両方に均等に荷重を掛けることが可能となる。
以上の構成により、本実施例では、加圧ローラ30と第1定着ローラ321のなすニップ幅を7mm、加圧ローラ30とパッド401のなすニップ幅を6mm、加圧ローラ30と第2定着ローラ322のなすニップ幅を6mmとし、本実施例のニップ部Nの幅を約19mmとした。なお、印刷速度はA4縦送り50ppmに設定している。
また、ヒータ34の出力は合計1100Wに設定した。なお、本実施例では、加圧ベルトユニット45内にヒータを配置していないが、定着ベルトユニット31側と同様に、加圧ベルトユニット45内にヒータを配置して構成してもよい。
ここで、本実施例の構成による圧力分布を図29に示す。第1定着ローラ321と第2定着ローラ322に架け渡された定着ベルト33と加圧ローラ30との接触領域がニップ部N2である。ニップ領域A2は第2定着ローラ322が加圧ローラ30に、ニップ領域C2はパッド401と加圧ローラ30とが互いに、ニップ領域E2は加圧ローラ30が第1定着ローラ321に、各々押圧されて生じる圧力分布である。ニップ領域A2、C2間およびニップ領域C2、E2間では、定着ベルト33が加圧ローラ30に押圧されてニップ領域(低加圧領域)B2,D2を形成している。そのニップ領域B2,D2においては、定着ベルト33はベルトのテンションによって加圧ローラ30に押し付けられている。本実施例では、前述の押圧機構の構成により、ニップ領域E2の長手方向平均圧力(以下「ニップ領域E2圧力」という)のピークを2.0〜2.5kgf/cm2に、ニップ領域C2の長手方向平均圧力(以下「ニップ領域C2圧力」という)のピークを0.8〜1.0kgf/cm2に、ニップ領域A2の長手方向平均庄力(以下「ニップ領域A2圧力」という)のピークを1.0〜1.5kgf/cm2になるように設定される。つまり、ニップ領域A2圧力およびニップ領域C2圧力は、ニップ領域E2圧力よりも低く設定している。本実施例では、第1実施例と異なり、第2定着ローラ322を支持フレーム48に軸固定支持としたことで、ニップ領域A2圧力およびニップ領域B2圧力を高く設定することが可能である。
このため、C2の頂点はA2、E2の頂点と比べて押圧力の増加が少ない。また、第1実施例の場合よりもニップ幅が広がっている。それは、第1定着ローラ及び2定着ローラに対して加圧ローラの押圧力が増えて、弾性層が押しつぶされる量が増えるからである。
本実施例のプリンタ1の印刷動作および定着装置14の定着動作については、第1実施例と同様であるので、その説明を省略する。本実施例の特徴的構成である定着装置14において、第1実施例と同様の評価試験を行った。なお、本実施例では、比較例として上述の第1実施例を用いた。本実施例の評価試験における印刷速度はA4縦送り50ppm、45ppm、40ppmの3水準として、印刷を行った。
上記評価条件による各構成の評価結果を図30に示す。図30に示すように、本実施例の第1定着ローラ321と第2定着ローラ322とを支持フレーム48で支持し、その間のパッド401をパッドレバー46で支持した構成にすることによって、50ppmの印刷速度まで、画像乱れが発生しないことが判る。
比較例の第1実施例では、加圧ローラ30と第2定着ローラ332とが対向してバネ力で互いに押圧する構造(第2定着ローラ322が可動式)であるため、更に印刷速度を上げるために押圧力を上げでニップ幅を増やそうとして加圧ローラバネ力を上げても、フックの法則によりバネの縮み量と荷重とは比例するため、2つのバネの荷重が釣り合う縮み量で安定する。このため、2つのバネが両方とも縮んで、押圧力の上昇分ほど両者間の圧力は増えない。即ち、加圧ローラの圧力を増やしても、第2定着ローラもバネ押しのため、バネが押されて力が吸収され、第2定着ローラ322と加圧ローラの圧力を高くすることができない。このため、ニップ領域A2及びニップ領域B2の圧力を上げることが困難であった。本実施例では、第2定着ローラ322を支持フレーム48に軸固定支持としたことで、加圧ローラ30による第2定着ローラ322への押圧力を上げることを可能としている。即ち、第2定着ローラ322を支持フレーム48に軸固定支持したので、加圧ローラ30の荷重をアップすることで、ニップ領域A2圧力及びニップ領域B2圧力を高くすることができる。
結果として上述した第1実施例の構成では、印刷速度40ppmまでは良好であったが、速度が高速になると画像乱れが発生した。これは、印刷速度の高速化に対してニップ領域AからBの範囲での圧力が相対的に不足していることが原因と考えられる。このニップ領域AからBの範囲でより高速に移動するようになった媒体からニップ通過時に発生する空気、水蒸気等の、単位時間当たりの発生量が増加し、その動きを抑え込むことが出来なくなり、その結果用紙P表面と定着ベルト33の間で微少すべりが生じやすくなり画像乱れが発生しやすくなったと推測される。
本実施例の形態では、第2定着ローラ322を支持フレーム48に軸固定支持したことで、ニップ領域A2圧力を高く設定することが可能で、本実施例ではニップ領域A2の圧力を高めに設定している。そのため、低加圧領域であるニップ領域B2圧力を底上げすることができ、高速印刷条件下であっても、トナー画像の乱れが発生することを防止することが出来る。
以上のように本実施例の定着装置によれば、第1定着ローラ321と第2定着ローラ322を支持フレーム48に固定し、パッド401が保持プレートであるパッドレバー46に保持されて、パッド401がパッドレバー46によりガイドされ、その先端部がガタつかないようにしている上に、第2定着ローラ322が固定されることで、パッド401と第2定着ローラ322間の距離に誤差がより生じにくくなり、ニップ圧力の落ち込みを低減することができる。
第1定着ローラ321と第2定着ローラ322は支持フレーム48に固定されているため、パッド401のみが動き、寸法誤差はこのパッド401のみに生じる。そして、パッド401をパッドレバー46にガイドさせることにより、第2定着ローラ322とパッド401間の距離の誤差が少なくなり、押圧力が安定し、印刷品質を保つことができる。
この結果、本実施例の定着装置によれば、第1実施例に比べて、第2定着ローラのニップ幅および圧力を更に増やすことが可能となり、印刷速度を上げた状態であっても、定着画像品位の不具合(画像乱れ)の発生を抑制できる。また、本実施例の定着装置を備えることで、印刷速度を上げた状態であっても、定着画像品位の不具合(画像乱れ)の発生を抑制できる画像形成装置を提供することができる。
[産業上の利用可能性]
本発明は、各実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。本発明の効果も上述した内容に限定されない。また、明細書全文に表れる部材の内容はあくまで例示であって、これらの記載に限定さるものではない。特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更、組み合わせおよび部分的削除等が可能である。
各実施例においては、画像形成装置はカラープリンタであるとして説明したが、画像形成装置は前述した各実施例に限らず、電子写真方式を採用したモノクロプリンタ、複写機、ファクシミリ装置、複合機等であってもよい。電子写真方式でないプリンタ等でもよい。
また、各実施例においては、印刷用の媒体は、普通紙であるとして説明したが、媒体は前記に限らず、OHPシート、カード、葉書、秤量が250g/m2相当以上の厚紙、封筒、熱容量の大きいコート紙等の特殊紙であってもよい。
更に、各実施例においては、ヒータは、面状ヒータであるとして説明したが、定着ベルトとの摺接面が定着ベルトと同程度の曲率を有するものであっても、円筒状のヒータ形状であってもよく、またハロゲンヒータであってもよい。更には電磁誘導可能な材料で定着ベルトを構成することで、誘導加熱とすることも可能であり、ヒータの種類や形状に限定されるものではない。
更に、各実施例においては、ヒータは定着ベルトの内側に配置するとして説明したが、定着ベルトの外側であってもよい。