JP2012073345A - 像加熱装置 - Google Patents

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直史 村田
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Abstract

【課題】可撓性部材と複数のバックアップ部材とで形成される複数のニップ部のうち互いに隣り合うニップ部間で記録材を可撓性部材から離しその状態に搬送できるようにして、画像の光沢ムラの発生を低減する。
【解決手段】可撓性部材1は、複数の加圧部材3,4と個々に対応する複数のニップ部N1,N2のうちニップ部N1における記録材搬送方向下流側端部bより記録材搬送方向下流側に、ニップ部N1と対応する記録材搬送方向上流側の加圧部材3と共にこの加圧部材に対して凹む中間ニップ部N11を形成し、加圧部材3の回転中心3oに垂直な断面において、中間ニップ部N11における記録材搬送方向下流側端部cの可撓性部材1に対する接線Taは、ニップ部N1と隣り合うニップ部N2における記録材搬送方向上流側端部dよりも、ニップ部N1と対応する記録材搬送方向下流側の加圧部材4の回転方向上流側に位置することを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、電子写真複写機や電子写真プリンタ等の画像形成装置に搭載する定着装置(定着器)として用いれば好適な像加熱装置に関する。
電子写真式の複写機やプリンタに搭載される定着装置(定着器)として、熱ローラ方式の定着装置や、フィルム加熱方式の定着装置が知られている。熱ローラ方式の定着装置は、発熱体と、発熱体により加熱される定着ローラと、定着ローラと接触してニップ部を形成する加圧ローラなどを有している。フィルム加熱方式の定着装置は、発熱体と、発熱体により加熱される定着フィルムと、定着フィルムと接触してニップ部を形成する加圧ローラなどを有している。上記熱ローラ方式の定着装置、及びフィルム加熱方式の定着装置において、未定着トナー画像を担持する記録材は定着装置のニップ部で挟持搬送され、これにより記録材上のトナー画像は記録材に加熱定着される。
特許文献1には、定着ローラに複数の加圧ローラを接触させて複数のニップ部を形成することにより、定着処理の高速化を実現した熱ローラ方式の定着装置の構成が開示されている(図1乃至図3参照)。特許文献2には、押さえガイド部材に対して移動する定着フィルム、或いはローラによって回転移動される定着フィルムに複数の加圧ローラを接触させて複数のニップ部を形成するフィルム加熱方式の定着装置が開示されている(図14、図15参照)。そしてこの特許文献2のフィルム加熱方式の定着装置には、複数のニップ部で、温度や記録材の搬送速度の変更を行うことなくトナー表面の平滑度を変更することにより、出力画像の光沢度を変更可能にする構成が開示されている。
特開平8−160789号公報 特開2002−304072号公報
定着フィルムに複数の加圧ローラを接触させてニップ部を複数形成するフィルム加熱方式の定着装置では、複数のニップ部のうち互いに隣り合うニップ部間で記録材を定着フィルムから離しその状態に搬送することが求められている。定着フィルムの内側に複数の加圧ローラと共に定着フィルムを挟む定着フィルム支持部材が存在しない場合、記録材が定着フィルムに記録材自体の剛性によって不安定に接触しその状態に搬送される可能性が懸念される。記録材が定着フィルムと不安定に接触した状態で搬送されると、ニップ部間で記録材に付与される熱が部分的に異なってしまうため、出力画像の光沢度にムラが生じる可能性がある。
また、定着フィルム支持部材が存在しない場合、坪量が小さく、トナーの印字率が高い記録材を記録材搬送方向上流側のニップ部から記録材搬送方向下流側のニップ部に導入する。すると、この記録材を記録材搬送方向下流側のニップ部から排出する際に、このニップ部を形成する加圧ローラの曲率半径によっては定着フィルムから記録材を曲率分離することが十分に行えず、記録材が定着フィルムに巻きついてしまう可能性も懸念される。
本発明の目的は、可撓性部材と複数のバックアップ部材とで形成される複数のニップ部のうち互いに隣り合うニップ部間で記録材を可撓性部材から離しその状態に搬送できるようにして、画像の光沢ムラの発生を低減するようにした像加熱装置の提供にある。
上記課題を解決するための本発明に係る像加熱装置の構成は、発熱体と、筒状の回転可能な可撓性部材と、前記可撓性部材の内側で前記発熱体を支持する支持部材と、前記支持部材、及び前記支持部材が支持する前記発熱体と共に前記可撓性部材を挟むことにより個々にニップ部を形成する複数の回転可能な加圧部材と、を有し、前記ニップ部で画像を担持する記録材を挟持搬送しつつ前記発熱体の熱で画像を加熱する像加熱装置において、前記可撓性部材は、前記複数の加圧部材と個々に対応する複数のニップ部のうち記録材搬送方向上流側のニップ部における記録材搬送方向下流側端部より記録材搬送方向下流側に、前記記録材搬送方向上流側のニップ部と対応する記録材搬送方向上流側の加圧部材と共にこの加圧部材に対して凹む中間ニップ部を形成し、前記記録材搬送方向上流側の加圧部材の回転中心に垂直な断面において、前記中間ニップ部における記録材搬送方向下流側端部の前記可撓性部材に対する接線は、前記記録材搬送方向上流側のニップ部と隣り合う記録材搬送方向下流側のニップ部における記録材搬送方向上流側端部よりも、前記記録材搬送方向下流側のニップ部と対応する記録材搬送方向下流側の加圧部材の回転方向上流側に位置することを特徴とする。
本発明によれば、可撓性部材と複数のバックアップ部材とで形成される複数のニップ部のうち互いに隣り合うニップ部間で記録材を可撓性部材から離しその状態に搬送できるようにして、画像の光沢ムラの発生を低減するようにした像加熱装置を提供できる。
実施例1に係る定着装置の概略構成を表わす横断側面模式図 実施例1に係る定着装置の記録材搬送経路を表わす図 (a)は実施例2に係る定着装置の概略構成を表わす横断側面模式図、(b)は実施例2に係る定着装置の記録材搬送経路の説明図 (a)は比較例に係る定着装置の概略構成を表わす横断側面模式図、(b)は比較例に係る定着装置の記録材搬送経路を表わす図 画像形成装置の一例の概略構成を表わす横断側面模式図
[実施例1]
(1)画像形成装置例
図5は本発明に係る像加熱装置を定着装置として搭載する画像形成装置の一例の概略構成を表わす横断側面模式図である。この画像形成装置は、電子写真技術を利用してフルカラー画像を形成するレーザービームプリンタである。
本実施例に示す画像形成装置は、現像剤としてのシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色のトナーを用いてトナー画像を形成する第1から第4の画像形成部Pa,Pb,Pc,Pdを所定の方向に一列に並設したインライン方式の装置である。
各画像形成部Pa,Pb,Pc,Pdは、それぞれ、像担持体としてドラム形状の電子写真感光体(以下、感光ドラムと記す)11を有している。各画像形成部Pa〜Pdにおいて、感光ドラム11の外周面(表面)の周囲には、帯電部材としてのドラム帯電器12と、露光手段としての走査露光装置13が設けられている。また感光ドラム11表面の周囲には、現像手段としての現像器14と、ドラムクリーナ16が設けられている。
各画像形成部Pa,Pb,Pc,Pdの感光ドラム11の下方には、感光ドラム11に跨るように搬送部材としての中間転写ベルト17が設けられている。この中間転写ベルト17は、駆動ローラ18aと、二次転写対向ローラ18bと、に掛け回してある。中間転写ベルト17の内周面(内面)側には、各感光ドラム1と中間転写ベルト17を挟むように第1の転写部材としての一次転写ローラ15が設けられている。中間転写ベルト17の外周面(表面)側には、二次転写対向ローラ18bと中間転写ベルト17を挟むように第2の転写部材としての二次転写ローラ19が設けられている。
本実施例の画像形成装置は、ホストコンピュータ、ネットワーク上の端末機、外部スキャナなどの外部装置(不図示)から出力されるプリント指令に応じて制御部100が所定の画像形成シーケンスを実行する。制御部100はCPUとROMやRAMなどのメモリとからなり、メモリには画像形成シーケンス、画像形成に必要な各種テーブル及び各種プログラムなどが記憶されている。
本実施例の画像形成装置の画像形成動作を、図1を参照して説明する。制御部100は、プリント指令に応じて実行される画像形成シーケンスに従い各画像形成部Pa,Pb,Pc,Pdを順次駆動する。
先ず、各感光ドラム11が所定の周速度(プロセススピード)で矢印方向へ回転されると共に、駆動ローラ18aにより中間転写ベルト17が各感光ドラム11の回転周速度と対応した周速度で矢印方向へ回転される。1色目のシアンの画像形成部Paにおいて、感光ドラム11表面はドラム帯電器12によって所定の極性・電位に一様に帯電される。
次に走査露光装置13が外部装置から出力される画像データ(画像情報)に応じたレーザ光を感光ドラム11の帯電面に対し走査露光する。これにより感光ドラム11表面の帯電面に画像データに応じた静電潜像(静電像)が形成される。そしてこの静電潜像が現像器14によってシアンのトナーを用いて現像される。これによって感光ドラム11表面上にシアンのトナー画像(現像像)が形成される。同様の帯電、露光、現像の各工程が、2色目のマゼンタの画像形成部Pb、3色目のイエローの画像形成部Pc、4色目のブラックの画像形成部Pdにおいても行われる。
各感光ドラム11表面に形成された各色のトナー画像は感光ドラム表面と中間転写ベルト17表面との間の一次転写ニップ部で一次転写ローラ15によって中間転写ベルト17表面上に順番に重ねて転写される。これにより中間転写ベルト17表面にフルカラーのトナー画像が担持される。トナー画像転写後の感光ドラム11表面は、感光ドラム11表面に残留する転写残トナーがドラムクリーナ16により除去され次の画像形成に供される。
一方、給紙カセット20から記録材Pが繰り出しローラ21により1枚ずつ繰り出されレジストローラ22に搬送される。この記録材Pはレジストローラ22によって中間転写ベルト17表面と二次転写ローラ19の外周面(表面)との間の二次転写ニップ部に搬送される。そしてこの搬送過程において二次転写ローラ19によって中間転写ベルト17表面のトナー画像が記録材P上に転写される。これにより記録材P上に未定着のフルカラーのトナー画像が担持される。
フルカラーのトナー画像を担持した記録材Pは定着部としての定着装置23の後述する定着ニップ部N1,N2に導入される。そしてこの定着ニップ部N1,N2で記録材Pを挟持搬送しつつトナー画像に熱とニップ圧を印加し、これにより記録材P上のトナー画像は記録材Pに加熱定着される。定着ニップ部N1,N2を出た記録材Pは排出ローラ24により排出トレー25上に排出される。
(2)定着装置(定着部)の構成
以下の説明において、定着装置及び定着装置を構成する部材に関し、長手方向とは記録材の面において記録材搬送方向と直交する方向である。短手方向とは記録材の面において記録材搬送方向と平行な方向である。長さとは長手方向の寸法である。幅とは短手方向の寸法である。
図1は本実施例に係る定着装置23の概略構成を表わす横断側面模式図である。この定着装置23はフィルム加熱方式の定着装置である。
本実施例に示す定着装置23は、可撓性部材としての定着フィルム1と、発熱体としてのセラミックヒータ(以下、ヒータと記す)2と、複数のバックアップ部材としての2つの加圧ローラ3,4などを有している。また、本実施例に示す定着装置23は、支持部材としてのヒータホルダ5と、剛性部材としての定着ステー7などを有している。定着フィルム1と、ヒータ2と、加圧ローラ3,4と、ヒータホルダ5と、定着ステー7は、何れも長手方向に細長い部材である。説明の便宜上、2つの加圧ローラ3,4のうち、加圧ローラ3を第1の加圧ローラ(第1の加圧部材)と記す。そして加圧ローラ4を第2の加圧ローラ(第2の加圧部材)と記す。
定着フィルム1は、長手方向に細長い筒状に形成されている。そしてこの定着フィルム1は、ヒータホルダ5の外周に回転可能にルーズに外嵌されている。定着フィルム1の厚みは、可撓性及び良好な熱伝導性を確保するため20μm以上60μm以下程度が好ましい。定着フィルム1として、PTFE、PFA、PPS等の材料からなる筒状の単層フィルムが好適である。或いはポリイミド、ポリアミドイミド、PEEK、PES等の材料からなる筒状の基層の外周面上にPTFE、PFA、FEP等を離型層としてコーティングした複合層フィルムが好適である。また、高熱伝導性を有するSUS、Al、Ni、Cu、Zn等の純金属、合金等を基層の材料に用い、離型層の外周面上にPTFE、PFA、FEP等をコーティング処理する、或いは離型層の外周面上にフッ素樹脂チューブを被覆したものを用いてもよい。
本実施例では、定着フィルム1として、外径φ18、厚み50μmのポリイミドを基層として、基層の外周面上にPFAのコーティング処理を施して厚み15μm程度の離型層を設けたものを用いている。
定着フィルム1の内側には、液晶ポリマー、PPS、PEEK等の耐熱性樹脂材料からなるヒータホルダ5が配設されている。ヒータホルダ5は、ホルダ基部5aと、ホルダ基部5aの短手方向の両端部に設けられたフィルムガイド用のリブ5bと、を有して、横断面略凹字形状に形成してある。ホルダ基部5aは、ヒータホルダ5の短手方向において、記録材搬送方向上流側にホルダ部5a1を有し、記録材搬送方向下流側にフィルムガイド部5a2を有している。ホルダ部5a1の定着フィルム1の内周面(内面)側の表面には、ヒータホルダ5の長手方向に沿って溝5a11が形成してある。この溝5a11には、ヒータ2の後述するヒータ基板2aを支持させている。
ヒータ2は長手方向に細長いヒータ基板(以下、基板と記す)2aを有している。基板2aとしては、アルミナや窒化アルミ等の絶縁性セラミックス基板や、ポリイミド、PPS、液晶ポリマー等の耐熱性樹脂基板等が用いられる。基板2aの定着フィルム1内面側の表面には、基板2aの長手方向に沿ってAg/Pd(銀パラジウム)、RuO、TaN等の通電発熱抵抗層2bがスクリーン印刷等により線状もしくは細帯状に塗工・形成されている。そしてこの通電発熱抵抗層2bの保護、及び絶縁の確保を目的として、例えばガラス、ポリイミド樹脂などからなる絶縁保護層2cを、通電発熱抵抗層2bを覆うように基板2aの表面に設けている。
本実施例では、ヒータ2として、アルミナ製の基板2aの表面にAg/Pdの通電発熱抵抗層2bを設けると共にガラスコートによる絶縁保護層2cを設けたものを用いている。また、基板2aのサイズは、幅が5.83mm、長さが270mm、厚さは1mmである。
第1の加圧ローラ3は、ヒータホルダ5の短手方向において、記録材搬送方向上流側に配設されている。この第1の加圧ローラ3は、定着フィルム1の下方においてヒータホルダ5のホルダ部5a1の溝5a11に支持されたヒータ2と対向し、かつヒータ2と平行に配置されている。この第1の加圧ローラ3は、鉄やアルミニウム等の金属材料からなる芯金3aを有している。そしてこの芯金3aの外周面上にシリコーンゴム等の弾性材料からなる弾性層3bを設け、この弾性層3bの外周面上にPFA等のフッ素樹脂材料からなる離型層3cを設けている。そして芯金3aの長手方向の両端部を装置フレーム(不図示)に軸受(不図示)を介して回転可能に支持させている。
本実施例では、第1の加圧ローラ3として、次の構成のものを用いている。φ9の鉄製芯金3aの外周面上に弾性層3bとしてJISアスカC硬度30度のシリコーンゴム層を2.5tの厚みで形成し、そのシリコーンゴム層の外周面上に離型層3cとして30μmの厚みのPFAチューブを被覆したものである。
第2の加圧ローラ4は、ヒータホルダ5の短手方向において、記録材搬送方向下流側に配設されている。この第2の加圧ローラ4は、定着フィルム1の下方においてヒータホルダ5のフィルムガイド部5a2と対向し、かつフィルムガイド部5a2と平行に配置されている。この第2の加圧ローラ4は、鉄やアルミニウム等の金属材料からなる芯金4aを有している。そしてこの芯金4aの外周面上にシリコーンゴム等の弾性材料からなる弾性層4bを設けている。そしてこの芯金4aの長手方向の両端部を上記装置フレームに軸受(不図示)を介して回転可能に支持させている。
本実施例では、第2の加圧ローラ4として、次の構成のものを用いている。φ7の鉄製芯金4aの外周面上に弾性層4bとしてシリコーンゴム層を0.5tの厚みで形成したものである。弾性層4bの硬度は、高分子計器(株)製のマイクロ硬度計(MD−1)によるJIS−Aタイプ表面微小硬度の測定で43度である。
定着フィルム1の内側に配設されたヒータホルダ5は、ヒータホルダ5のホルダ基部5aの長手方向の両端部が上記装置フレームに支持されている。このホルダ基部5aの表面と反対側の裏面には定着ステー7が載置されている。
定着ステー7は、定着ステー7の長手方向の両端部が上記装置フレームに支持されている。そしてこの定着ステー7の長手方向の両端部は加圧手段としての加圧バネ(不図示)により第1の加圧ローラ3及び第2の加圧ローラ4側に加圧されている。定着ステー7の長手方向の両端部で受けた加圧力をヒータホルダ5の長手方向に均一に伝えるために、定着ステー7の材料として鉄、ステンレス、SUM、ジンコート鋼板等の剛性のある金属材料を使用している。また、定着ステー7の剛性を高めるため、定着ステー7の横断面形状を略コ字形状に成形加工している。
ヒータホルダ5のたわみを抑えた状態で、定着ステー7の長手方向の両端部で受けた加圧力が、ヒータホルダ5、ヒータ2及び定着フィルム1を介して第1の加圧ローラ3に印加される。また定着ステー7の長手方向の両端部で受けた加圧力が、ヒータホルダ5、及び定着フィルム1を介して第2の加圧ローラ4に印加される。これにより、第1の加圧ローラ3と第2の加圧ローラ4は、個々に、定着フィルム1と共に定着ニップ部を形成する。即ち、ヒータホルダ5、ヒータ2及び定着フィルム1を介して印加される加圧力により第1の加圧ローラ3の弾性層3bが長手方向及び幅方向に弾性変形する。これにより、定着フィルム1の外周面(表面)と第1の加圧ローラ3の外周面(表面)が長手方向及び幅方向に均一に連続して接触する。これによって、定着フィルム1表面と第1の加圧ローラ3表面とで長手方向に均一な所定の幅の第1の定着ニップ部(記録材搬送方向上流側のニップ部)N1が形成される。また、ヒータホルダ5、ヒータ2及び定着フィルム1を介して印加される加圧力により第2の加圧ローラ4の弾性層4bが長手方向及び幅方向に弾性変形する。これにより、定着フィルム1の外周面(表面)と第2の加圧ローラ4の外周面(表面)が長手方向及び幅方向に均一に連続して接触する。これによって、定着フィルム1表面と第2の加圧ローラ4表面とで長手方向に均一な所定の幅の第2の定着ニップ部(記録材搬送方向上流側のニップ部と隣り合う記録材搬送方向下流側のニップ部)N2が形成される。第1の加圧ローラ3と第2の加圧ローラ4にそれぞれ上記加圧力を印加した状態において、第1の加圧ローラ3の回転中心3oと第2の加圧ローラ4の回転中心4oとの間の距離eはヒータホルダ5の幅wよりも短い幅の12mmとなるように設定してある。
本実施例では、ヒータホルダ5の材料として液晶ポリマーを用い、定着ステー7の材料としてジンコート鋼板を用いている。
第1の定着ニップ部(以下、第1のニップ部と記す)N1は、第1の加圧ローラ3がヒータ2の絶縁保護層2cと共に定着フィルム1を挟むことにより形成される。第1のニップ部N1を形成するために第1の加圧ローラ3に印加される加圧力は137N(14kgf)である。この加圧力によって定着フィルム1表面と第1の加圧ローラ3表面とで幅5mmの第1のニップ部N1を形成している。つまり、第1のニップ部N1は、記録材搬送方向上流側端部aから記録材搬送方向下流側端部bまでの幅が約5mmに設定してある。
第2の定着ニップ部(以下、第2のニップ部と記す)N2は、記録材搬送方向において第1のニップ部N1と隣り合っている。そしてこの第2のニップ部N2は、第2の加圧ローラ4がホルダ基部5aのフィルムガイド部5a2と共に定着フィルム1を挟むことにより形成される。第2のニップ部N2を形成するために第2の加圧ローラ4に印加される加圧力は39N(4kgf)である。この加圧力によって定着フィルム1表面と第2の加圧ローラ4表面とで幅2mmの第2のニップ部N2を形成している。つまり、第2のニップ部N2は、記録材搬送方向上流側端部cから記録材搬送方向下流側端部dまでの幅が約2mmに設定してある。
図2を参照して、第1のニップ部N1と第2のニップ部N2との間におけるヒータホルダ5と定着フィルム1との関係を説明する。ホルダ基部5aのフィルムガイド部5a2の第1の加圧ローラ3と第2の加圧ローラ4側の表面5sはフラットな面に形成してある。このフィルムガイド部5a2の表面5sにおいて、第1の加圧ローラ3と対向する位置には、第1の加圧ローラ3側(記録材搬送方向上流側の加圧部材側)に突出する突起部5saが設けてある。これにより第1のニップ部N1の記録材方向下流側に中間ニップ部N11を形成することができる。ヒータ2は、ヒータ2の絶縁保護層2cの表面がフィルムガイド部5a2の表面5sと同一平面上で定着フィルム1の内周面(内面)と接触するようにホルダ基部5aの溝5a11に支持されている。本実施例では、定着フィルム1内面が接触しつつ移動(摺動)するヒータ2の絶縁保護層2c表面を基準として、突起部5saの幅を0.8mmに設定し、高さ(突出高さ)を0.3mmに設定している。そして突起部5saの長さをヒータ2の基板2aと略同じ長さに設定している。この突起部5asにより定着フィルム1を第1のニップ部N1と第2のニップ部N2との間で第1の加圧ローラ3側に突出させ、定着フィルム1表面を第1の加圧ローラ3表面に接触させている。これにより、第1のニップ部N1における記録材搬送方向下流側端部bより記録材搬送方向下流側に、第1のニップ部N1と連続するように中間ニップ部N11を形成している。つまり、定着フィルム1は、第1のニップ部N1における記録材搬送方向下流側端部bより記録材搬送方向下流側に、定着フィルム1表面が加圧ローラ3表面に接触する。これによって、第1の加圧ローラ3と共にこの第1の加圧ローラ3に対して凹む中間ニップ部N11を形成している。そしてこの中間ニップ部N11における記録材搬送方向下流側端部cの定着フィルム1に対する接線Taは、第2の加圧ローラ4に対して次のような関係を有している。即ち、接線Taは、破線にて示すように、第1の加圧ローラ3の回転中心3oに垂直な断面において、第2のニップ部N2における記録材搬送方向下流側端部dよりも、第2の加圧ローラ4の回転方向上流側に位置する。これにより、第1のニップ部N1から搬送されて来る記録材Pを中間ニップ部N11で第2の加圧ローラ4に向けて接線Ta上に搬送することができる。
本実施例の定着装置23は、プリント指令に応じて制御部100が第1の駆動源としての第1の駆動モータM1と第2の駆動源としての第2の駆動モータM2を同期して回転駆動する。第1の加圧ローラ3の芯金3aにはギア列(不図示)を介して第1の駆動モータM1の出力軸が結合されている。第2の加圧ローラ4の芯金4aにはギア列(不図示)を介して第2の駆動モータM2の出力軸が結合されている。第1の駆動モータM1の回転駆動により第1の加圧ローラ3は矢印方向へ所定の周速度(プロセススピード)で回転し、第2の駆動モータM2の回転駆動により第2の加圧ローラ4は第1の加圧ローラ3と略等しい周速度(プロセススピード)で矢印方向へ回転する。第1の加圧ローラ3の回転は、第1のニップ部N1における第1の加圧ローラ3表面と定着フィルム1表面との摩擦力によって定着フィルム1に駆動力として伝達される。第2の加圧ローラ4の回転は、第2のニップ部N2における第2の加圧ローラ4表面と定着フィルム1表面との摩擦力によって定着フィルム1に駆動力として伝達される。これにより定着フィルム1は、定着フィルム1の内周面(内面)がヒータ2の絶縁保護層2cの表面、突起部5saの先端面、及びフィルムガイド部5a2の表面5sの記録材搬送方向下流側の領域にそれぞれ接触しその状態に矢印方向に回転する。このときの第1の加圧ローラ3の表面速度をVs1とし、第2の加圧ローラ4の表面速度をVs2としたとき、Vs1×1.01>Vs2>Vs1×0.97が成立するように、制御部100は第1の駆動モータM1と第2の駆動モータM2を回転駆動する。つまり、制御部100は、Vs1×1.01>Vs2>Vs1×0.97が成立するように、第1の駆動モータM1と第2の駆動モータM2の回転駆動速度が設定されている。
また、プリント指令に応じて制御部100が通電制御部(不図示)をオンする。これにより通電制御部の商用電源からヒータ2の通電発熱抵抗層2bに通電される。これによって通電発熱抵抗層2bが発熱しヒータ2は急速に昇温して定着フィルム1を加熱する。そして制御部100は、ヒータ2の基板2aの表面と反対側の裏面に設けられているサーミスター等の温度検知素子(温度検知部材)6からの温度検知信号(出力信号)を取り込む。そしてこの温度検知信号に基づいてヒータ2を所定の定着温度(目標温度)に維持するように通電制御部の制御(温度制御)を行う。
第1の駆動モータと第2の駆動モータの回転駆動を行うと共に通電制御部の制御を行っている状態において、未定着のトナー画像Tを担持した記録材Pは記録材Pのトナー画像担持面を上向きにして記録材搬送方向の先端が第1のニップ部N1に導入される。この記録材Pは第1のニップ部N1で定着フィルム1表面と第1の加圧ローラ3表面とで挟持されその状態に搬送(挟持搬送)される。この搬送過程において、記録材P上のトナー画像Tに定着フィルム1を介してヒータ2の熱が印加されると共に上記加圧力に応じたニップ圧が印加され、これによってトナー画像Tは記録材Pに加熱定着される。第1のニップ部N1を出た記録材Pの記録材搬送方向の先端はトナー画像担持面を上向きにして中間ニップ部N11に導入される。そしてこの記録材Pの先端は、中間ニップ部N11で定着フィルム1表面と第1の加圧ローラ3表面とで挟持されその状態に搬送(挟持搬送)され、中間ニップ部N11の記録材搬送方向下流側端部cで接線Ta上に排出される。接線Ta上に排出された記録材Pの先端は、第1の加圧ローラ3の回転中心3oに垂直な断面において第2のニップ部N2における記録材搬送方向下流側端部dよりも第2の加圧ローラ4の回転方向上流側で、第2の加圧ローラ4表面に当たる。そして第2の加圧ローラ4表面に当たった記録材Pの先端は、第2の加圧ローラ4の回転によって第2のニップ部N2における記録材搬送方向下流側端部dに導かれる。そしてこの記録材Pは第2のニップ部N2で定着フィルム1表面と第2の加圧ローラ4表面とで挟持されその状態に搬送(挟持搬送)される。この搬送過程において、記録材P上のトナー画像Tに上記加圧力に応じたニップ圧が印加され、これによってトナー画像Tの表面が平滑化されトナー画像Tの表面に光沢が付与される。
本実施例の定着装置23における中間ニップ部N11の作用効果を比較例の定着装置と比較して説明する。先ず、比較例の定着装置について説明をする。比較例の定着装置において本実施例の定着装置23と共通する部材及び部分には同じ符号を付している。図4において、(a)は比較例の定着装置の概略構成を表わす横断側面模式図、(b)は比較例の定着装置の記録材搬送経路の説明図である。
図4の(a)に示すように、比較例の定着装置は、ヒータホルダ5のホルダ基部5aの表面5sに突起部を有していない点を除いて、本実施例の定着装置23と同じ構成としてある。そのため比較例の定着装置には、本実施例の定着装置23のような中間ニップ部N11は形成されていない。その結果、比較例の定着装置において、定着フィルム1は、第1のニップ部N1と第2のニップ部N2との間で略平坦な形状となる。第1のニップ部N1に記録材Pが通紙(導入)されると、図4(b)で矢印にて示すように、記録材Pについても、第1のニップ部N1と第2のニップ部N2との間で略平坦な形状となって搬送される。この場合、第1のニップ部N1と第2のニップ部N2との間において、記録材Pと定着フィルム1との距離が近い即ち記録材Pが定着フィルム1と近接しているため、例えば記録材Pに波打ちなどの部分的な変形が起こる虞がある。記録材Pに波打ちなどの部分的な変形が起こると、記録材Pのトナー画像担持面が定着フィルム1に対して不均一な接触をしてしまう。その結果、記録材Pの種類によっては、記録材Pと定着フィルム1の接触ムラが、定着フィルム1から記録材Pへの熱の供給ムラとなり、最終的にトナー画像に光沢ムラとなって現れてしまう。実際に、HP社製の光沢紙であるHP Laser Photo Paper(220g/m)の上にシアン及びマゼンタのトナー画像を上記光沢紙の一面に重ねて印字したものを比較例に示す定着装置に通紙した。すると、トナー画像に光沢ムラが発生してしまうことがあった。
次に本実施例の定着装置23について、図2を参照して説明をする。図2は本実施例に係る定着装置23の記録材搬送経路を表わす図である。図2において、(a)は中間ニップ部N11による第2の加圧ローラ4への記録材排出方向を表わす図、(b)は第2の加圧ローラ4による記録材搬送経路を表わす図、(c)は中間ニップ部N11と第2のニップ部N2との間の記録材搬送経路を表わす図である。
本実施例の定着装置23では、ヒータホルダ5のホルダ基部5aの表面5sにおいて第1の加圧ローラ3と対向する位置に第1の加圧ローラ3側に突出する突起部5saを有している。このため、中間ニップ部における記録材搬送方向下流側端部cの定着フィルムに対する接線Taは、第1の加圧ローラの回転中心3oに垂直な断面において、第2のニップ部の記録材搬送方向上流側端部dよりも、第2の加圧ローラ4の回転方向上流側に位置する。つまり、接線Taは、第2のニップ部N2の記録材搬送方向上流側端部dよりも第2の加圧ローラ4の回転方向上流側で第2の加圧ローラ4表面と交差する。このため、第1のニップ部を通過した記録材Pの先端は、中間ニップ部N11で定着フィルム1表面と第1の加圧ローラ3表面とで挟持されその状態に第1の加圧ローラ3表面に沿って搬送される。そしてこの記録材Pの先端は、中間ニップ部N11における記録材搬送方向下流側端部cから接線Ta方向に即ち第2のニップ部の記録材搬送方向上流側端部dよりも第2の加圧ローラ4の回転方向上流側に向けて斜め下方に排出される(図2(a)参照)。そしてこの記録材Pは、記録材Pの先端が接線Ta方向において第2の加圧ローラ4表面に当たり、第2の加圧ローラ4の回転により加圧ローラ4表面に沿って第2のニップ部N2の記録材搬送方向上流側端部dに導かれる(図2(b)参照)。中間ニップ部N11と第2のニップ部N2との間において、記録材Pの先端は、中間ニップ部N11の記録材搬送方向下流側端部cから排出される。そして第2の加圧ローラ4表面を経由して第2のニップ部N2の記録材搬送方向上流側端部dに搬送される。これに対して、定着フィルム1は、中間ニップ部N11の記録材搬送方向下流側端部cから第2のニップ部N2の記録材搬送方向上流側端部dまで直線的に移動する。このため、中間ニップ部N11と第2のニップ部N2との間における記録材Pの先端の移動距離は定着フィルム1の移動距離よりも大きい。そのため、記録材Pは、第2のニップ部N2で記録材Pの先端が挟持された時点で、中間ニップ部N11と第2のニップ部N2との間で記録材Pの先端の移動距離と定着フィルム1の移動距離との差分に応じた量だけ弛みループrを形成する(図2(c)参照)。このループrによって中間ニップ部N11と第2のニップ部N2との間において記録材Pのトナー画像担持面が定着フィルム1表面から離すことができる。これにより、中間ニップ部N11と第2のニップ部N2との間で記録材Pを定着フィルム1表面から離しその状態に搬送することができる。さらに、第1の加圧ローラ3と第2の加圧ローラ4の表面速度は略等速であるため、中間ニップ部N11と第2のニップ部N2との間で記録材Pに形成されるループrを維持でき、安定した記録材搬送性を実現できる。
本実施例の定着装置23における第1の加圧ローラ3と第2の加圧ローラ4の表面速度の設定は、記録材Pの定着フィルム1への不均一な接触による光沢ムラが発生しない表面速度範囲を実験的に求めて設定する。ただし、記録材Pのループが大きすぎると、剛性の小さい薄紙のような記録材Pを第2のニップ部N2に通紙(導入)する際に、シワが発生するおそれがあるため、設定することができない。本実施例では、第2の加圧ローラ4の表面速度Vs2を変化させることで、光沢ムラ及び薄紙の紙シワの発生を抑えられる範囲を求めた結果を表1に示す。光沢ムラの発生の有無はHP社製の光沢紙であるHP Laser Photo Paper(220g/m)上にシアン及びマゼンタのトナーを一面に重ねて印字したものを用いて確認した。薄紙はBOISE社製の薄紙であるBOISE CASCADE X−9(60g/m)を用い、紙シワの発生の有無を確認した。
本実施例の定着装置23において、第1の加圧ローラ3における第1のニップ部N1と中間ニップ部N11以外の表面速度と第2の加圧ローラ4における第2のニップ部N2以外の表面速度との関係を、Vs1×1.02<Vs2に設定した。この場合、トナー画像に光沢ムラが発生した。Vs1とVs2が略同等の場合、記録材Pの先端が第2のニップN2の記録材搬送方向上流側端部dで挟持された時に、図2(c)のように記録材Pが第1のニップ部N1と第2のニップ部N2との間で適切な大きさのループrを形成できる。ところが、第2の加圧ローラ4の表面速度の方が第1の加圧ローラ3の表面速度よりも速いために、記録材Pのループrを保つことができない。そのため、第1のニップ部N1と第2のニップ部N2との間において、記録材Pと定着フィルム1との距離が次第に近くなってしまい、定着フィルム1と記録材Pが不均一な接触を起こし、その結果として光沢ムラが発生してしまった。
また、第1の加圧ローラ3における第1のニップ部N1と中間ニップ部N11以外の表面速度と第2の加圧ローラ4における第2のニップ部N2以外の表面速度との関係を、Vs2<Vs1×0.96に設定した。この場合、光沢ムラは出なかったものの、薄紙を第2のニップ部N2に通紙した際に紙シワが発生した。薄紙のような剛性の小さい記録材Pは、記録材Pのループrが第1のニップ部N1と第2のニップ部N2との間に形成された際に記録材P自身の剛性で元の平坦な形状に戻ろうとする力が弱い。そのため、第1のニップ部N1と第2のニップ部N2との間での記録材Pのループrが過大になりやすい。記録材Pのループr量が限界量を超えると、ループrの行き場所がなくなり、ループrごと第2のニップN2に挟持されてしまい、蛇腹状の紙シワが発生してしまった。
以上の結果により、第1の加圧ローラ3と第2の加圧ローラ4における表面速度の関係がVs1×1.01>Vs2>Vs1×0.97となるようにギア列(歯車機構)などの所定の駆動伝達機構を用いて設定した。これによって、記録材Pの適切なループ量を保ったまま、記録材Pを搬送できる。
本実施例の定着装置23では、第1の加圧ローラ3と第2の加圧ローラ4をそれぞれ異なる第1の駆動モータM1と第2の駆動モータM2によって回転し、この第1の加圧ローラ3と第2の加圧ローラ4の回転に追従して定着フィルム1の回転を行っている。駆動モータは第1の駆動モータM1と第2の駆動モータM2の2つに限られず1つであってもよい。駆動モータを1つ用いる場合、第1の加圧ローラ3のみを第1の駆動モータM1により回転駆動し、この第1の加圧ローラ3の回転に追従して定着フィルム1の回転を行い、この定着フィルム1の回転に追従して第2の加圧ローラ4の回転を行う構成とする。このように構成される定着装置23においても、第1の加圧ローラ3と第2の加圧ローラ4における表面速度の関係がVs1×1.01>Vs2>Vs1×0.97となるようにギア列(歯車機構)などの所定の駆動伝達機構を用いて設定する。これによって、駆動モータを2つ用いる定着装置23と同様、記録材Pの適切なループ量を保ったまま、記録材Pを搬送できる。
定着フィルム1の回転に追従して第2の加圧ローラ4の回転を行う構成の定着装置23において、第1の加圧ローラ3の表面速度Vs1に対する第2の加圧ローラ4の表面速度Vs2を小さくし、光沢ムラ及び紙シワの発生の有無を確認した結果を表2に示す。この定着装置23は、第1の加圧ローラ3の表面速度Vs1に対する第2の加圧ローラ4の表面速度Vs2を小さくするために、定着フィルム1の回転に追従して回転を行っている第2の加圧ローラ4の軸受部に減速ギアなどを用いて負荷を与える構成としてある。光沢ムラの発生の有無はHP社製の光沢紙であるHP Laser Photo Paper(220g/m)上にマゼンタ及びシアンのトナーを一面に重ねて印字したものを用いて確認した。薄紙はBOISE社製の薄紙であるBOISE CASCADE X−9(60g/m)を用い、紙シワの発生の有無を確認した。
表2に示すように、第2の加圧ローラ4の表面速度Vs2が、第1の加圧ローラ3の表面速度Vs1と略等速(Vs1×1.00)のときには、光沢ムラ、紙シワ共に発生せず、良好な画像が得られた。第2の加圧ローラ4の回転負荷を増し、表面速度Vs2をVs2<Vs1×0.98にした場合、薄紙を第2のニップ部N2に通紙すると紙シワが発生した。これは、第1の加圧ローラ3及び第2の加圧ローラ4を共に回転した場合と同様の結果である。よって、第2の加圧ローラ4を追従させて回転させる構成にしたときでも、第2の加圧ローラ4の表面速度Vs2が、Vs1×1.01>Vs2>Vs1×0.97の関係を満たす速度範囲であれば、記録材Pの適切なループ量を保ったまま、記録材Pを搬送できる。
従って、本実施例の定着装置23における第1の加圧ローラ3と第2の加圧ローラ4の表面速度の設定をVs1×1.01>Vs2>Vs1×0.97の関係を満たすように設定する。これにより、中間ニップ部N11と第2のニップN2との間で記録材Pを定着フィルム1から離しその状態に安定して搬送できる。これによって、記録材Pと定着フィルム1の不安定な接触による光沢ムラを低減でき、均一な光沢度を得ることができる。
[実施例2]
定着装置の他の実施例を説明する。本実施例では、説明の簡略化のため、実施例1の定着装置23と同じ部材及び部分には同一の符号を付している。
図3において、(a)は本実施例に係る定着装置の概略構成を表わす横断側面模式図、(b)は本実施例に係る定着装置の記録材搬送経路の説明図である。
本実施例に示す定着装置23は、ヒータホルダ5のホルダ基部5aのフィルムガイド部5a2の表面5sにおいて第2の加圧ローラ4と対向する位置に第2の加圧ローラ4に対して凹む凹部5dを形成している。この凹部5dはヒータホルダ5の長手方向全域に渡って形成してある。この凹部5dの深さは0.4mmである。そして第2の加圧ローラ4は、定着フィルム1をヒータホルダ5の凹部5dと共に挟むことにより第2のニップ部N2を凹部5dに沿って凹むニップ部に形成している。この第2のニップ部N2における記録材搬送方向上流側端部dの定着フィルムに対する接線Tbは、第1の加圧ローラ3に対して次のような関係を有している。即ち、接線Tbは、破線にて示すように、第2の加圧ローラ4の回転中心4oに垂直な断面において、中間ニップ部N11における記録材搬送方向下流側端部cよりも、第1の加圧ローラ3の回転方向下流側に位置する。つまり、接線Tbは、中間ニップ部N11の記録材搬送方向下流側端部cよりも第1の加圧ローラ3の回転方向下流側で第1の加圧ローラ3表面と交差する。この接線Tbが第1の加圧ローラ3表面と交差する交差位置cp2は、実施例1の定着装置23における接線Tb´が第1の加圧ローラ3表面と交差する交差位置cp1(図1参照)よりも、中間ニップ部N11における記録材搬送方向下流側端部cから離れている。ここで、接線Tb´は、実施例1の定着装置23において、第2のニップ部N2における記録材搬送方向上流側端部dの定着フィルム1に対する接線である。
本実施例の定着装置23は、実施例1の定着装置23と同様、中間ニップ部N11を通過した記録材Pの先端が接線Ta上で第2の加圧ローラ4表面に当たる。そしてこの記録材Pを第2の加圧ローラ4の回転により加圧ローラ4表面に沿って第2のニップ部N2における記録材搬送方向上流側端部dに導く。そして記録材Pの先端を第2のニップ部における記録材搬送方向上流側端部dで挟持すると、この記録材搬送方向上流側端部dの定着フィルム1に対する接線Tbに沿うようにして記録材Pを第2のニップ部N2に導入する。上述のように接線Tbの第1の加圧ローラ3表面との交差位置cp2は、実施例1の定着装置23における接線Tb´の第1の加圧ローラ3表面との交差位置cp2よりも中間ニップ部N11における記録材搬送方向下流側端部cから離れている。このため、図3(b)に示すように、実施例1の定着装置23と比較して、記録材Pのループrがより大きくなる方向に記録材Pの姿勢が変化する。これにより、中間ニップ部N11と第2のニップ部N2との間で記録材Pを定着フィルム1から離しその状態に搬送することを、実施例1の定着装置23よりも更に安定して行うことができる。よって、本実施例の定着装置23においても、中間ニップ部N11と第2のニップ部N2との間で記録材Pに形成されるループrを維持でき、安定した記録材搬送性を実現できる。よって、記録材Pと定着フィルム1の不安定な接触による光沢ムラを低減でき、均一な光沢度を得ることができる。
また、本実施例の定着装置23は、第2のニップ部N2を第2の加圧ローラ4に対して凹むニップ部に形成している。この第2のニップ部N2の凹み形状によって、第2のニップ部N2の記録材搬送方向下流側端部eよりも第2の加圧ローラの回転方向下流側において定着フィルム1の走行方向(移動方向)と記録材Pの搬送方向との成す角度が広がる。そのため、剛性の小さい薄紙のような記録材Pを第2のニップ部N2に通紙した際にも、記録材Pと定着フィルム1の分離性を高めることができ、記録材Pが定着フィルム1表面に巻きついてしまう可能性を低減できる。
[その他の実施例]
実施例1及び実施例2では第1と第2の2つの加圧ローラを用いてニップ部を2つ形成した定着装置を説明したが、加圧ローラは2つに限られず3つ以上の加圧ローラを用いて加圧ローラの数に応じたニップ部を形成してもよい。この場合、互いに隣り合う2つのニップ部間で実施例1及び実施例2で説明した構成を採用して記録材を定着フィルムから離しその状態に搬送するようにしてもよい。
1:定着フィルム、2:セラミックヒータ、3:第1の加圧ローラ、3o:第1の加圧ローラ3の回転中心、4:第2の加圧ローラ、4o:第2の加圧ローラ4の回転中心、5:ヒータホルダ、5d:ヒータホルダ5の凹部、N1:第1の定着ニップ部、N11:中間ニップ部、N2:第2の定着ニップ部、b:第1の定着ニップ部N1の記録材搬送方向下流側端部、c:中間ニップ部N11の記録材搬送方向下流側端部、d:第2の定着ニップ部N2の記録材搬送方向上流側端部、Ta:中間ニップ部N11における記録材搬送方向下流側端部cの定着フィルム1に対する接線、Tb:第2のニップ部N2における記録材搬送方向上流側端部dの定着フィルム1に対する接線、M1:第1の駆動モータ、M2:第2の駆動モータ、P:記録材、T:未定着のトナー画像

Claims (7)

  1. 発熱体と、筒状の回転可能な可撓性部材と、前記可撓性部材の内側で前記発熱体を支持する支持部材と、前記支持部材、及び前記支持部材が支持する前記発熱体と共に前記可撓性部材を挟むことにより個々にニップ部を形成する複数の回転可能な加圧部材と、を有し、前記ニップ部で画像を担持する記録材を挟持搬送しつつ前記発熱体の熱で画像を加熱する像加熱装置において、
    前記可撓性部材は、前記複数の加圧部材と個々に対応する複数のニップ部のうち記録材搬送方向上流側のニップ部における記録材搬送方向下流側端部より記録材搬送方向下流側に、前記記録材搬送方向上流側のニップ部と対応する記録材搬送方向上流側の加圧部材と共にこの加圧部材に対して凹む中間ニップ部を形成し、前記記録材搬送方向上流側の加圧部材の回転中心に垂直な断面において、前記中間ニップ部における記録材搬送方向下流側端部の前記可撓性部材に対する接線は、前記記録材搬送方向上流側のニップ部と隣り合う記録材搬送方向下流側のニップ部における記録材搬送方向上流側端部よりも、前記記録材搬送方向下流側のニップ部と対応する記録材搬送方向下流側の加圧部材の回転方向上流側に位置することを特徴とする像加熱装置。
  2. 前記支持部材は、前記記録材搬送方向上流側の加圧部材側に突出する突起部を有し、前記突起部により前記可撓性部材を前記記録材搬送方向上流側の加圧部材に接触させることによって前記中間ニップ部を形成することを特徴とする請求項1に記載の像加熱装置。
  3. 前記支持部材は、前記記録材搬送方向下流側のニップ部と対応する位置に、前記記録材搬送方向下流側の加圧部材に対して凹む凹部を有し、前記記録材搬送方向下流側の加圧部材は、前記可撓性部材を前記凹部と共に挟むことにより前記記録材搬送方向下流側のニップ部を前記凹部に沿って凹むニップ部に形成し、前記記録材搬送方向下流側の加圧部材の回転中心に垂直な断面において、前記記録材搬送方向下流側のニップ部における記録材搬送方向上流側端部の前記可撓性部材に対する接線は、前記中間ニップ部における記録材搬送方向下流側端部よりも、前記記録材搬送方向上流側の加圧部材の回転方向下流側に位置することを特徴とする請求項1に記載の像加熱装置。
  4. 前記ニップ部で画像を担持する記録材を挟持搬送するときの前記記録材搬送方向上流側の加圧部材と前記記録材搬送方向下流側の加圧部材の表面速度は略等速であることを特徴とする請求項1に記載の像加熱装置。
  5. 前記ニップ部で画像を担持する記録材を挟持搬送するときの前記記録材搬送方向上流側の加圧部材と前記記録材搬送方向下流側の加圧部材の表面速度は、前記記録材搬送方向上流側の加圧部材の方が前記記録材搬送方向下流側の加圧部材よりも速いことを特徴とする請求項1に記載の像加熱装置。
  6. 前記記録材搬送方向上流側の加圧部材と前記記録材搬送方向下流側の加圧部材はそれぞれ異なる駆動源により回転され、前記記録材搬送方向上流側の加圧部材と前記記録材搬送方向下流側の加圧部材の回転に追従して前記可撓性部材の回転を行うことを特徴とする請求項1に記載の像加熱装置。
  7. 前記記録材搬送方向上流側の加圧部材は駆動源により回転され、前記記録材搬送方向上流側の加圧部材の回転に追従して前記可撓性部材の回転を行い、前記可撓性部材の回転に追従して前記記録材搬送方向下流側の加圧部材の回転を行うことを特徴とする請求項1に記載の像加熱装置。
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