JP6785683B2 - 定着装置及び画像形成装置 - Google Patents

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Description

本発明は、プリンタ、複写機、ファクシミリ、複合機等の電子写真方式を利用した画像形成装置に関し、特にその定着装置に関する。
電子写真方式を利用した画像形成装置では、感光体ドラムの表面を帯電ローラによって一様に帯電した後、LEDヘッド等の露光手段によって感光体ドラムの表面を露光して画像情報に応じた静電潜像を形成し、静電潜像に現像ローラ上で薄層化されたトナーを静電的に付着させてトナー像を形成する。その後、給紙装置から給紙され、搬送ベルトによって搬送される用紙上に、形成されたトナー像を転写ローラによって転写し、その後、定着装置でトナー像を定着させて用紙上に画像を形成している。
この定着装置としては、従来、無端ベルトからなる定着ベルトをヒータにより加熱し、定着ローラに対して、対向する加圧ローラでこの定着ベルトを押圧してニップを形成させ、そのニップで、搬送される用紙を挟んで加熱及び加圧してトナー像を用紙上に定着させるベルト加熱方式によるものがあった(例えば、特許文献1参照)。
特開2014−132369号公報(段落0013〜0016、図1)
しかしながら、前述の定着装置は、ニップ入口側にパッドを備えており、厚紙、グロス紙、ラベル紙、フィルム等の特に剛性の高い用紙を定着するときに、用紙搬送時のたるみなどにより、好ましくないタイミングで用紙が定着ベルトに過剰に接触することによりトナーが過剰に溶けてしまうなどして、定着後の画像がムラ状となるなど、良好な印刷品位を得ることが困難であった。
本発明による定着装置は、無端状のベルト部材と、前記ベルト部材の内側に配置された第1のローラと、前記ベルト部材の外側に配置され、前記ベルト部材を介して前記第1のローラに付勢された第2のローラと、前記ベルト部材の内側に、前記第1のローラに隣接して配置され、前記ベルト部材を介して前記第2のローラに付勢された加圧部材を備え、
前記加圧部材の、前記第2のローラに対向する対向面は、印刷媒体の搬送方向において、上流側に形成された第1の平面部と、下流側に形成されて前記第1の平面部とによって前記第2のローラの回転軸方向に延在する交差部を形成する第2の平面部を有して、前記第1の平面部及び前記第2の平面部が前記第2のローラと共にニップ部を形成し、前記第1の平面部の前記搬送方向の上流側端部に相当する第1の端部、前記第2の平面部の前記搬送方向の下流側端部に相当する第2の端部、及び前記交差部が、前記交差部と垂直な断面において仮想円弧上に位置し、
前記仮想円弧の半径Rが、前記第2のローラの半径Rpに対して、不等式
(1/2)×Rp≦R≦(19/20)×Rp
を満たすことを特徴する。
本発明によれば、加圧部材による適切な加圧と、ニップ部以外における無端状ベルトと記録用紙とが過度に接近する領域の排除が可能となり、確実な定着と、トナー画像乱れ及びこすれ印字の防止に貢献できる。
本発明による定着装置を備えた実施の形態1の画像形成装置の要部構成を説明するための概略的な構成図である。 本発明による実施の形態1の定着装置の要部構成図である。 平板状に形成されたヒータの分解斜視図である。 実施の形態1の画像形成装置の制御系のブロック図である。 制御部による定着装置の制御の流れを示すフローチャートである。 (a)は、加圧ローラとパッドとによって形成されるニップ領域及びその周辺の部分拡大図であり、(b)は、幅Nのニップ部全域にわたる圧力分布を示すグラフである。 試験試料として用意したパッドの耐熱性弾性材の形状を説明するための図である。 印刷試験結果及び評価を示すグラフである。 (a)は、比較例1としてのパッドを採用した定着装置のニップ部近傍の構成を示す要部構成図であり、(b)は、ニップ部全域にわたって定着ベルトと加圧ローラ間に発生する圧力分布を示すグラフである。 (a)は、比較例2としてのパッドを採用した定着装置のニップ部近傍の構成を示す要部構成図であり、(b)は、ニップ部全域及びその近傍領域にわたって定着ベルトと加圧ローラ間に発生する圧力分布を示すグラフである。
実施の形態1.
図1は、本発明による定着装置を備えた実施の形態1の画像形成装置の要部構成を説明するための概略的な構成図である。
画像形成装置1は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の4色を印刷可能なカラー用電子写真式プリンタとしての構成を備えている。同図に示すように、画像形成装置1の内部には、下部に、普通紙等の印刷用媒体としての記録用紙47を収容する給紙カセット18が脱着自在に装着され、外部の上面に、画像が印刷された記録用紙47を集積するスタッカ28が配置されており、これらの間は図1に破線で示す概ねS字状に形成された用紙搬送路4(搬送ベルト14の平行部の上面部を含む)で接続されている。
搬送ベルト14の平行部の上面部に相当する用紙搬送路4に沿って、その上流側から順に、ブラック(K)用の画像形成ユニット11K、シアン(C)用の画像形成ユニット11C、マゼンタ(M)用の画像形成ユニット11M、及びイエロー(Y)用の画像形成ユニット11Y(区別する必要がない場合には画像形成ユニット11と称す場合がある)が配置されている。これらの4つの画像形成ユニット11は、画像形成装置1本体から脱着可能となっており、そのために画像形成装置1の上部カバー17は開閉可能に設けられている。
各画像形成ユニット11K,11C,11M,11Yにはそれぞれ上部カバー17によって支持された露光装置16K,16C,16M,16Y(区別する必要がない場合には露光装置16と称す場合がある)が対応して配置されている。これらの4つの画像形成ユニット11は、使用される現像剤としてのトナーを除いては同じ構成である。従って、ここではブラック(K)の画像形成ユニット11Kを例にして、その内部構成を説明する。
画像形成ユニット11Kは、トナー像を担持する感光体ドラム12K、感光体ドラム12Kの表面を一様に帯電させる帯電ローラ41、一様に帯電した感光体ドラム12Kの表面に静電潜像を形成するLEDアレイから成る露光装置16K、摩擦帯電により静電潜像にトナー像を形成する現像ローラ42、現像ローラ42にトナーを供給するトナー供給ローラ43、及び転写後に感光体ドラム12Kの表面に残る残トナーを掻き落とすクリーニングブレード44などを備える。
4つの画像形成ユニット11の各感光体ドラム12K,12C,12M,12Y(区別する必要がない場合には感光体ドラム12と称す場合がある)には、搬送ベルト14を介してそれぞれ対応する転写ローラ13K,13C,13M,13Y(区別する必要がない場合には転写ローラ13と称す場合がある)が圧接するように配置されている。
搬送ベルト14は、ドライブローラ26とアイドルローラ27によって張架されて駆動され、記録用紙47を矢印Aで示す搬送方向に搬送する。記録用紙47が、この搬送ベルト14によって矢印A方向に搬送される間に、各感光体ドラム12K,12C,12M,12Yにそれぞれ形成された各色のトナー像が、対向する転写ローラ13K,13C,13M,13Yによって記録用紙47上に順次重ねて転写され、カラーのトナー画像となる。
画像形成ユニット11Yの後段には定着装置3が配置されている。定着装置3は、ベルト加熱方式の装置であって、第2のローラとしての加圧ローラ30と定着ベルトユニット31とで構成され、画像形成装置1本体に対して一体的に配設されてもよいし、或は画像形成装置1本体に対して着脱可能に装着されてもよい。定着装置3は、トナー画像が転写された記録用紙47を受入れて、後述するように、加圧及び加熱処理によってトナー画像を記録用紙47に定着させた後、排出する。尚、定着装置3については後に更に詳しく説明する。
給紙カセット18は、画像形成装置1の下部に配設され、記録用紙47を収容する。給紙カセット18の前端には、隣接して給紙機構が配設されている。給紙機構は、給紙ローラ19a、19b及び分離片20を備え、記録用紙47を1枚ずつ分離して給紙する。繰出された記録用紙47は用紙センサ32を通過し、搬送ローラ対21へ送られる。搬送ローラ対21は、記録用紙47が用紙センサ32を通過した時点から給紙搬送駆動制御部104(図4)により回転され、記録用紙47を止めることなく送り出す。
搬送ローラ対21により送り出された記録用紙47は、用紙センサ33を通過してレジストローラ対22へと送られる。レジストローラ対22は、記録用紙47が用紙センサ33を通過した時間から所定時間遅延したタイミングで給紙搬送駆動制御部104(図4)により回転開始される。このため記録用紙47は、レジストローラ対22の圧接部に僅かに撓んだ状態で押し込まれてその斜行が矯正される。レジストローラ対22より送り出された記録用紙47は、書込みセンサ34を通過して搬送ベルト14へと送られる。画像形成ユニット11等による一連の画像形成動作は、書込みセンサ34の検出タイミングに同期して行われる。
一方、定着装置3によって排出された記録用紙47は、用紙センサ35を通過し、搬送ローラ対23によって搬送された後、更に排出ローラ対24によってスタッカ28に排出される。搬送ローラ対23及び排出ローラ対24は、記録用紙47が用紙センサ35を通過した時点から給紙搬送駆動制御部104(図4)により回転され、記録用紙47を止めることなく送り出す。
更に、レジストローラ対22に対向する位置には、用紙厚検出センサ25が取り付けられている。この用紙厚検出センサ25によって、搬送される用紙の厚さを測定することが出来、その出力は、後述する制御部101に入力される。
次に定着装置3の構成について更に説明する。図2は、本発明による定着装置3の要部構成図である。
図2に示すように、定着装置3は、定着ベルトユニット31と第2のローラとしての加圧ローラ30とを備え、定着ベルトユニット31に加圧ローラ30が圧接することにより、幅Nのニップ部70が形成されている。
定着ベルトユニット31は、無端状のベルト部材としての定着ベルト51の内側に、第1のローラとしての定着ローラ52、ヒータ53、定着ベルト51のガイドを兼ねるヒータホルダ54、ベルトガイド55、補助ガイド部材61及び加圧部材としてのパッド56を配置して構成されている。尚、ヒータ53とヒータホルダ54が加熱部材に相当する。
定着ベルト51は、定着ローラ52の矢印B方向回転によって、同方向に移動されるが、この定着ベルト51の移動方向において、定着ローラ52の上流側に、定着ローラ52に隣接してパッド56が配置され、パッド56の上流側且つベルトガイド55の下流側に、この間の定着ベルト51をガイドする補助ガイド部材61が配置されている。尚、パッド56の上流側には、更に定着ベルト51の幅方向への寄りを規制するフランジを備えた図示しない環状フランジ部材が配置されている。尚、ここでは、補助ガイド部材61はローラで形成されている。
定着ベルト51は、これらの定着ローラ52、ヒータホルダ54、ベルトガイド55、パッド56、及び補助ガイド部材61によって張架されて回転移動可能に支持され、ヒータホルダ54の外側表面54a、ベルトガイド55の表面等に沿って回転移動する。尚、張架された定着ベルト51の、後述する定着ローラ52の矢印B方向回転に伴う動きを、回転移動と称す場合がある。
加圧ローラ30は、定着ベルト51を介して定着ベルトユニット31の定着ローラ52及びパッド56に対向して配置され、図示しない押圧機構により、所定の押圧力にて定着ローラ52の中心に向けた矢印C方向に押圧されている。
パッド56は、定着装置3本体との間に圧縮された状態で架けられた圧縮コイルスプリング等の付勢手段としてのパッドスプリング57によって、定着ベルト51を介して加圧ローラ30を押圧する方向に付勢されている。以上の構成により、定着ベルトユニット31と加圧ローラ30の間には、用紙搬送方向において、所定の幅Nからなるニップ部70が形成される。尚、ここでのニップ部70の幅Nは、用紙搬送方向における、パッド56と加圧ローラ30の圧接部の上流側端部から、定着ローラ52と加圧ローラ30の圧接部の下流側端部までの距離に相当する。
ヒータホルダ54は、定着ベルト51内の、加圧ローラ30に対向する定着ローラ52及びパッド56から離間する反対側にあって、断面略円弧状のその外側表面54aが定着ベルト51の内側に接して定着ベルト51をガイドするように、定着ベルト51の幅方向に延在して配置され、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー(LCP)などの耐熱性の高い樹脂、又は良熱伝導性を有する銅、アルミニウム合金等の金属で構成されている。尚、定着ベルト51の幅方向を、以後長手方向と称す場合がある。
ヒータホルダ54は、定着ベルト51に接する外側表面54aとは反対側の内側表面部に、その長手方向に延在する、ヒータ53をはめ込むための溝が形成されており、その溝部にヒータ53を配設している。
図3は、平板状に形成されたヒータ53の分解斜視図である。同図に示すように、ヒータ53は、ステンレスやセラミックなどの基板53a上にガラス等からなる電気絶縁層53bを設け、その上に電極53cを有する抵抗発熱体53dを形成し、それを保護層53eで保護した面状ヒータである。このような抵抗発熱体53dは、ニッケル−クロム合金、銀−パラジウム合金などの材料を用いることができる。また、保護層53eには、耐圧ガラスによるガラスコーティングを施してある。
ヒータ53は、ヒータホルダ54の溝部に長手方向に沿って耐熱性グリースを隙間に充填された状態で固定支持され、溝部は、ヒータ53の表面を覆うように配設された加圧プレート58によって塞がれている。ヒータホルダ54は、定着装置3本体と加圧プレート58との間に圧縮された状態で架けられた圧縮コイルスプリング等のヒータスプリング59によって、定着ベルト51を張架する方向に付勢されている。
ベルトガイド55は、定着ベルト51内の、ヒータホルダ54の下流側に位置し、断面略円弧状のその外側表面55aが定着ベルト51の内側に接して定着ベルト51をガイドするように、定着ベルト51の幅方向に延在して配置され、LCP、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等で成形されている。定着ベルト51との摺擦面となる外側表面55aは、接触面積を減らすためにリブ形状等を設けて、定着ベルト51から奪う熱を小さくすることが望ましい。またこのベルトガイド55には、定着ベルト51の内周面の温度を検出するベルト温度センサ60が組み込まれている。
ベルト温度センサ60は、定着ベルト51の回転移動方向において、幅Nのニップ部70の上流側に隣接してベルトガイド55上に配置され、定着ベルト51の内周面に摺接して内周面の温度を検出する。
パッド56は、鉄、アルミニウム合金等の金属からなる支持基材65と、支持基材65に接着固定された耐熱性弾性材66とからなり、耐熱性弾性材66の表面には、更に、定着ベルト51の内周面との摩擦抵抗を下げるための摺動層が形成されている。パッドスプリング57は、パッド56の長手方向に複数配置され、その長手方向圧力が均一になるように構成されている。尚、ニップ部70の幅Nは、加圧ローラ30に対するパッド56の接触面の長さを変更することによって変更することが可能である。
無端状に形成された定着ベルト51は、耐熱ニッケル(Ni)電鋳、ポリイミド(PI)、ステンレス(SUS304)などの材料で形成された円筒状のベルト基材の外周面に、シリコーンゴム、フッ素樹脂等の耐熱性弾性層を設け、弾性層の外周面には、フッ素樹脂等から成る離型層が形成された可撓性を有する部材である。この定着ベルト51は、定着ローラ52の回転に伴う幅Nのニップ部70における摩擦力によって、定着ローラ52の矢印B方向回転に伴って同方向に回転移動し、ヒータ53によって加熱される。
定着ローラ52は、鉄、アルミニウム合金等の金属製のパイプ又はシャフトからなり、長手方向に延在する芯金52aに、シリコーンゴム、フッ素樹脂等の耐熱性の弾性層52bが施され、図示しない軸受けによって回転可能に支持されており、芯金52aに設けた図示しない定着ローラギアに定着モータ107(図4参照)から伝達される駆動力によって、矢印B方向に回転駆動される。
加圧ローラ30は、鉄、アルミニウム合金等の金属製のパイプ又はシャフトからなり、長手方向に延在する芯金30aに、シリコーンゴム、フッ素樹脂等の耐熱性の弾性層30bと、フッ素樹脂等からなる離型層30cとが施され、図示しない押圧機構によって回転自在に保持され、定着ローラ52の中心に向けた矢印C方向に付勢されている。
これにより、定着ローラ52の回転に伴う幅Nのニップ部70における摩擦力によって従動回転する定着ベルト51の回転移動に伴って従動回転する。トナー80が転写された記録用紙47は、用紙搬送路4に沿って形成された用紙ガイド部71にガイドされながら搬送され、用紙ガイド部71の先端を乗り越えるようにして、幅Nのニップ部70に進入する。
本実施の形態における定着装置3の各部材について更に説明する。
ヒータホルダ54は、アルミニウムA6063を押出し成型した一体ホルダであり、加圧プレート58は、板厚1mmのアルミニウムA5052によって構成されている。
加圧ローラ30は、芯金30aを、直径33.6mm、厚さ0.7mm、長さ350mmの鉄(STKM)からなるパイプとし、その外周面に、弾性層30bとして厚さ1mmの発泡シリコーンゴム(スポンジ)層を形成し、更にその表面に、離型層30cとして厚さ30μmのパーフルオロビニルエーテル共重合体(PFA)樹脂チューブを被覆した外径40mm(半径20mm)のローラである。またローラ製品硬度はASKER−C75として構成した。
定着ローラ52は、芯金52aを、直径21mm、厚さ1.5mm、長さ350mmの鉄(STKM)からなるパイプとし、その外周面に、弾性層52bとして厚さ2mmの発泡シリコーンゴム(スポンジ)層を形成した外径22mmのローラである。ローラ製品硬度はASKER−C60として構成した。尚、加圧ローラ30との長手方向における圧力分布が均一となるように、中央部の外径が、両端の外径に対して0.3mm大きくなるクラウン形状とした。
パッド56は、支持基材65を、アルミニウム合金(A6063)で形成し、耐熱性弾性材66はシリコーンゴムで形成し、摺動層として厚さ30μmのグラファイト含有シリコーン系樹脂をコーティングして構成し、対向面67(図6)が半径20mmの加圧ローラ30に当接した時のニップ領域Aの長さ6mmに設定している。シリコーンゴム硬度は、JISA40とした。また加圧ローラ30との長手方向における圧力分布が均一となるように、対向面67(図6)を、中央部が両端に対して0.2mm凸になるような形状とした。
尚、摺動層はここではコーティングとして構成したが、シート状のフッ素樹脂で耐熱性弾性材66を覆うように構成してもよい。また、幅Nのニップ部70の、パッド56と定着ローラ52との間隙(後述するニップ領域B(低加圧領域)に相当)を約1mmに設定している。
定着ベルト51は、ベルト基材として、厚さ80μmのポリイミド(PI)樹脂製の円筒部材を用い、弾性層として厚さ200μmのシリコーンゴム層を設け、離型層として厚さ20μmのPFA樹脂層を形成した無端ベルトである。また、定着ベルト51は、ベルト周長が、長くなると昇温時間が長くなり、短いとスペースが不足してニップ幅の確保に必要な定着ローラの外径、パッド基材サイズでの配置が不可となる。そのため、上記した定着ローラ52とパッド56の構成に対して、定着ベルト51の内径を49mm、長さ(幅)350mmとしている。
加圧ローラ30は、図示しない押圧機構により、定着ローラ52に対し、その中心に向かう矢印C方向に、30kgfの押圧力で押圧されるように設定されている。更にパッド56は、長手方向に複数配置されたパッドスプリング57によって、総荷重10kgfにて加圧ローラ30を押圧するように設定されている。以上の構成により、加圧ローラ30と定着ローラ52のなすニップ領域Cの幅を6mm、加圧ローラ30とパッド56のなすニップ領域Aの幅を6mmとする各ニップ幅が設定でき、ここでのニップ部70の幅Nは、約12〜14mmに設定した。
図4は、画像形成装置1の制御系のブロック図である。
同図において、制御部101は、マイクロプロセッサ、ROM、RAM、入出力ポート、タイマ等によって構成され、上位装置によって印刷指示を受け、また画像形成装置1の状態を通知すると共に、印刷動作にかかわるすべての動作を制御する。表示部102は、制御部101からの指示に基づいて、表示パネル102aにおいて、装置の動作内容、各種の設定状態を示すデータを表示する。図1で説明した用紙センサ32,33,35、書込みセンサ34、及び用紙厚検出センサ25等のセンサ群110は、それぞれが検出する検出データを制御部101に送信する。
画像形成制御部103は、制御部101の指示に基づいて画像形成ユニット11を駆動制御すると共に露光装置16の発光を制御し、ベルト駆動制御部105は、制御部101の指示に基づいて搬送ベルト14(図1)を回転移動すべく、ドライブローラ26を回転駆動制御し、給紙搬送駆動制御部104は、記録用紙47を給紙、搬送すべく、制御部101の指示に基づいて、図1に示す給紙ローラ19a、19b、搬送ローラ対21,23、レジストローラ対22、及び排出ローラ対24を回転駆動制御し、更に定着制御部106は、制御部101の指示に基づいて、定着装置3による定着処理(加熱・加圧)動作を駆動制御する。
駆動制御部106aと温度制御部106bとからなる定着制御部106について、図2を参照しながら更に説明する。定着ベルト51は、ヒータ53の発熱によって加熱される。このとき定着ベルト51の表面温度は、サーミスタ等のベルト温度センサ60によって検出され、温度制御部106bに送信される。温度制御部106bは、制御部101の指示に基づいて、検出される定着ベルト51の表面温度が、予め設定されている温度を維持するようにヒータ53をオンオフ制御する。
定着ローラ52は、芯金52a端部に結合されたギアに定着モータ107から駆動力を受けることによって記録用紙47を搬送方向に搬送するため、矢印B方向に回転する。駆動制御部106aは、制御部101の指示に基づいて定着モータ107を回転制御し、制御部101は、定着制御部106に対して、ユーザー、PCからの情報に基づき、定着装置制御開始を指示する。
以上の構成において、印刷時における画像形成装置1の各部の動作について説明する。
画像形成装置1の制御部101は、上位装置から印刷命令を受信すると、その印刷命令に従った印刷を開始する。先ず、給紙カセット18に収容された記録用紙47を、給紙ローラ19a,19及び分離片20によって1枚ずつに分離して用紙搬送路4に繰り出し、搬送ローラ対21、レジストローラ対22によって斜行を矯正した後、搬送ベルト14へ搬送する。
これに同期して制御部101は、各画像形成ユニット11の各ローラ及び転写ローラ13に予め設定された所定の電圧を印加し、各画像形成ユニット11の帯電ローラ41に印加した帯電電圧によって各感光体ドラム12の表面を一様に帯電させ、印刷命令に基づく画像情報に従って各露光装置16を発光させ、各感光体ドラム12の表面を露光してそれらの表面上に静電潜像を形成し、トナー供給ローラ43から供給されたトナー80(図2)を現像ローラ42によって感光体ドラム12の静電潜像に付着させて現像し、各感光体ドラム12の表面上に対応する各色のトナー像を形成する。
その後記録用紙47を、搬送ベルト14により画像形成ユニット11まで搬送し、更に各色の感光体ドラム12とそれぞれに対応する転写ローラ13との間を通過させる際に、各転写ローラ13に印加した転写電圧によりブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の各色のトナー像を記録用紙47上に順次転写し、カラーのトナー画像を形成する。
トナー画像が転写された記録用紙47が定着装置3に搬送されると、定着装置3によってトナー画像を記録用紙47上に定着させ、トナー像が定着された記録用紙47を、搬送ローラ対23によって用紙搬送路4に沿って搬送し、更に排出ローラ対24によって上部カバー17上のスタッカ28へ排出して印刷動作が完了する。
この印刷時における定着装置3の定着動作について、主に図2を参照しながら更に説明する。
先ず、画像形成装置1における印刷動作の開始に伴って、制御部101は、定着制御部106の駆動制御部106aによって定着モータ107を回転させ、画像形成装置1本体に配設された図示しないギア列、及び定着ローラ52の芯金52aに設けた図示しないギアを介して、定着ローラ52を矢印B方向(図2)に回転する。この定着ローラ52の回転に伴う幅Nのニップ部70における摩擦力によって、定着ベルト51を従動回転(回転移動)させる。
同時に制御部101は、定着制御部106の温度制御部106bによって、ヒータ53をオンオフ制御して発熱させ、定着ベルト51を内周側から加熱する。ヒータ53によって加熱された定着ベルト51の温度は、ベルト温度センサ60によって検出され、その温度情報が温度制御部106bに送信される。温度制御部106bは、このベルト温度センサ60による検出温度に基づいてヒータ53に供給する電力をオン、オフし、定着ベルト51の表面温度を所定の定着温度に保つように制御する。
この定着ベルト51の表面温度が所定の温度に保たれた状態において、トナー画像が転写された記録用紙47が搬送されてくると、その記録用紙47は、定着ベルト51を介して、パッド56及び定着ローラ52と、加圧ローラ30とで形成された幅Nのニップ部70で挟持され、定着ベルト51による所定の定着温度での加熱と、所定の押圧力での加圧よって、トナー画像を記録用紙47上に定着させる。
尚、定着ベルト過昇温防止の点から、定着ローラ52の回転開始タイミングは、ヒータオンから時間を空けずに回転開始することが望ましく、本実施の形態では、ヒータオンと同時に定着ローラ52の回転を開始する設定とした。また、ここでの定着ベルト51の目標温度は160℃に設定され、ヒータ53のオン後の定着実行時において、温度制御部106bは、定着ベルト51の温度が、この目標温度を中央値とする所定の温度範囲となるように制御する。
図5は、制御部101による定着装置3の制御の流れを示すフローチャートであり、このフローチャートを参照しながら、定着装置3の制御について更に説明する。
制御部101は、印刷動作開始後、用紙厚検出センサ25から、搬送される記録用紙47の用紙厚情報を取得して用紙厚を確認し(ステップS101)、記録用紙47の厚さに適した定着温度と用紙搬送速度の設定を行う(ステップS102)。各パラメータの設定後、温度制御部106bによるヒータ53への通電を開始し(ステップS103)、同時に駆動制御部106aによる、設定回転での定着モータ107の回転駆動を開始する(ステップS104)。尚、ここでは、記録用紙47として、普通厚とする用紙秤量が80g/mの用紙を使用し、定着動作時の搬送速度を50ppmに設定し、またこのときの定着ベルト51の目標温度を165℃に設定している。
その後、温度制御部106bは、ベルト温度センサ60によって検出される定着ベルト51の温度が、定着ベルト51の目標温度(165℃)を保つようにヒータ53をオンオフ制御し(ステップS105)、トナー画像定着動作を開始する(ステップS106)。
以後、定着された記録用紙47が用紙センサ35(図1)を通過することにより、定着装置3から記録用紙47の排出が確認されるまで、定着モータ107の回転駆動制御及びヒータ53のオン・オフによる温度制御が継続され(ステップ107、ステップ108,No)、定着装置3から記録用紙47の排出が確認されると(ステップ108,Yes)、これらの回転駆動制御及び温度制御を停止し(ステップS109)、定着装置3による定着動作を終了する。
次に、定着ベルト51を介して、パッド56及び定着ローラ52と、加圧ローラ30とで形成された幅Nのニップ部70(図2)の、パッド56の形状、圧力分布等について以下に説明する。図6(a)は、加圧ローラ30とパッド56とによって形成されるニップ領域A及びその周辺の部分拡大図であり、図6(b)は、幅Nのニップ部70全域にわたる圧力分布を示すグラフである。
図6(a)に示すように、パッド56の先端部に固定配置された耐熱性弾性材66は、その長手方向と垂直な断面形状において、加圧ローラ30に対する対向面67が、概ね加圧ローラ30の円弧に沿って形成された、第1の平面部67aと第2の平面部67bからなる。更にこの第1の平面部67aと第2の平面部67bは、鈍角で交差して長手方向に直線状に延在する交差部Psを形成し、この対向面67が、加圧ローラ30に圧接してニップ領域Aを形成している。更にこの対向面67には、前記したように、摺動層がコーティングにより形成されているものとする。
尚、図6(a)では、説明の便宜上、ニップ領域Aでの加圧ローラ30と耐熱性弾性材66とのニップ部を、未変形の加圧ローラ30と未変形の耐熱性弾性材66とが重なる領域として示しているが、実際には、両者は、定着ベルト51を介して圧接し、その圧接部において弾性変形した状態となっている。また、ニップ領域Aの各部で、未変形の加圧ローラ30と未変形の耐熱性弾性材66とが重なる深さをニップ量と称す場合がある。
上記したようにニップ領域Aは、定着ベルト51を介して、加圧ローラ30にパッド56の耐熱性弾性材66が圧接して形成され、ニップ領域C(図2)は、定着ベルト51を介して、定着ローラ52に加圧ローラ30が圧接して形成され、ニップ領域Aとニップ領域Cとの間では、定着ベルト51が加圧ローラ30に押圧された、低加圧によるニップ領域B(低加圧領域)を形成している。
図6(b)は、幅Nのニップ部70(図2)における用紙搬送方向において、定着ベルト51と加圧ローラ30間に発生する圧力の分布を示している。同図(a)、(b)に示すように、ニップ領域Aの、耐熱性弾性材66の対向面67の第1の平面部67aが加圧ローラ30に当接する領域A1では、下流側に向かう際のニップ量が比較的小さい増加率で増加するため、ニップ圧もこれに伴って徐々に増加し、耐熱性弾性材66の対向面67の第2の平面部67bが加圧ローラ30に圧接する領域A2では、下流側に向かう際のニップ量が比較的大きい増加率で増加するため、ニップ圧もこれに伴って速やかに増加し、耐熱性弾性材66の下流側端部P2の位置で、最大ニップ圧Pn2を示すように構成されている。
一方ニップ領域Cでは、加圧ローラ30と定着ローラ52との各回転中心を結ぶ線上に相当する中心部が最大のニップ圧となり両側に向かうに従ってニップ圧が低下している。但しニップ領域Cの上流側端部P3の位置では、定着ベルト51がそのテンションによって加圧ローラ30に押し付けられているため、ニップ圧はゼロとはならず、ニップ領域B(低加圧領域)における最小ニップ圧Pn3を保っている。
尚、ここでは、ニップ領域Cの、各部での長手方向の平均圧力(以下、単にニップ領域Cの圧力と称す)の最大ニップ圧Pn1が1.5〜2.5kgf/cmに、ニップ領域Aの最大ニップ圧Pn2が0.8〜1.5kgf/cmに、そしてニップ領域Bの最小ニップ圧Pn3が0.5kgf/cmとなるように設定している。
次に、パッド56の耐熱性弾性材66の形状による、トナー画像乱れ及びこすれ印字の発生状態を調べるため、対向面67を含む先端部の形状の異なる耐熱性弾性材66を有するパッド56を試験試料として複数用意して行った印刷試験について説明する。尚、本実施の形態の耐熱性弾性材66は、後述する試験結果によって限定した所定形状を備えたものであるが、ここでは試験試料として、便宜上区別なく耐熱性弾性材66として説明する場合がある。
試験試料として使用する耐熱性弾性材66は、後述するように、先端部の形状が種々異なるが、それ以外の、材質、摺動層の処理等については、前記した図2で説明した仕様に基づいて形成されている。
図7は、試験試料として用意したパッド56の耐熱性弾性材66の形状を説明するための図である。同図に示すように、試験試料としての耐熱性弾性材66の対向面67は、第1の平面部67aと第2の平面部67bとを備え、点線で示す半径Rの仮想円弧90に沿って形成されている。
耐熱性弾性材66の対向面67の、第1の平面部67aの第1の端部としての上流側端部P1、第2の平面部67bの第2の端部としての下流側端部P2、及び交差部Psは、半径Rの仮想円弧90上にあって、交差部Psは、上流側端部P1と下流側端部P2とを結ぶ線上の中心部WMを中心振り分けとした幅W2の設定領域内に設定されている。以上のように形成され、仮想円弧90の半径Rをパラメータとする耐熱性弾性材66を備えたパッド56を試験試料として複数用意した。
試験試料としてのパッド56を定着装置3に装着するときの条件は、前記した図2で説明したパッド56と全く同様に設定される。従って、試験試料として用意されたパッドは、試験時に、その支持基材65が図2に示すパッド56のものと全く同じ角度・付勢力で加圧ローラ30に付勢されるように設定される。因みに、図2で採用したパッド56は、試験試料として用意したパッドの仮想円弧90の半径Rが15mmの試料に相当する。
測定方法及び測定条件について以下に説明する。
・試験には、基本的な構成が図1に示す画像形成装置1と同種の試験装置を使用した。従って、ここでの加圧ローラ30の外径は40mm(半径は20mm)である。
・各試験試料として用意した上記パッド56を順次装置に備え付け、それぞれにおいてブラック(K)による単色ベタ印刷を行い、定着率を測定し、更にトナー画像乱れ及びこすれ印字チェックを行った。
定着率の測定は、例えば、以下の手順で行われる。
(1)ブラック(K)による単色ベタ印刷を行った印刷済み記録用紙の所定部分を、処理前濃度として分光濃度計(例えば、X−Rite528:エックスライト社製)で測定する。
(2)(1)で測定した記録用紙の測定部分にメンディングテープを貼り、500g圧で押圧した後引き剥がす。
(3)メンディングテープをはがした部分を、更に処理後濃度として上記分光濃度計で測定する。
(4)定着率を、定着率=(処理後濃度/処理前濃度)によって求める。
(5)求めた定着率の許容範囲を90%以上とし、90%以上のものをOKとする。
トナー画像乱れ及びこすれ印字チェックは、目視によっておこない、発生しているか否かを判定した。
尚、トナー画像乱れとは、トナー画像が転写された記録用紙47が、ニップ領域Aに侵入し、溶融したトナーが用紙に浸透し、定着した後、ニップ領域Aから排出される過程で発生する。即ち、パッド56の領域で溶融を開始したトナーが、以下の、
1.用紙から発生する水蒸気による力がトナーにかかる、
2.平滑度が高い用紙でのトナー浸透が悪い、
といった要因により、パッド部後の低圧部で一旦定着ベルト51側に移動し、その後再び記録用紙47に戻る動きが発生するが、このときに移動前の位置からずれた位置に移動すると、本来トナーでカバーされる部分の用紙露出が発生し、部分的に画像が薄く見える不具合のことをいう。
一方、こすれ印字とは、ニップ領域Aに至る前の定着ベルト51に未定着トナーが接触することで発生する擦れ痕のことをいう。ニップ領域Aに入る前のパッド56部で、記録用紙47が定着ベルト51側に近づき過ぎて接触すると、未定着トナーが圧力不足の状態で過剰に溶け、溶けた後に定着されることで、その部分のトナー面の光沢が低下し、他の部分とに光沢差が発生する不具合のことをいう。
図8は、印刷試験結果及び評価を示すグラフである。同図に示すように、縦軸に定着率を取り、横軸に仮想円弧90の半径Rを取った同グラフにおいて、各試験試料の試験結果位置を□又は■で示している。
□は、その試料を用いた試験において、トナー画像乱れ及びこすれ印字の発生が認められないため可としたことを示し、
■は、その試料を用いた試験において、トナー画像乱れ及びこすれ印字の、少なくとも何れか一方の発生が認められたために、不可としたことを示している。
また定着率については、ここでは90%以上であれば、問題なし(可)と判断した。従って、図8のグラフから明らかなように、トナー画像乱れ及びこすれ印字の発生が認められず、更に定着率が90%以上であってすべて可とする試験試料は、仮想円弧90の半径Rが10mm以上且つ19mm以下の範囲にあることが判明した。ここで、この範囲の仮想円弧の半径Rを、加圧ローラ30の半径Rp(20mm)に対する比率で表すと、
(1/2)×Rp≦R≦(19/20)×Rp
となる。
また発明者等による試験によれば、図7に示す耐熱性弾性材66の対向面67の、上流側端部P1から下流側端部P2までの距離をW1(図2におけるニップ部70の幅Nに相当する)としたとき、設定領域の幅W2が、
W2<(1/3)×W1
であった場合、仮想円弧90の半径Rが同じであって、交差部Psがその設定領域W2内に設定されている耐熱性弾性材66を備えた個々の試験試料については、同一の試験判定結果が得られた。
次に、本実施の形態のパッド56に対する比較例1,2について説明する。
図9(a)は、比較例1としてのパッド156を採用した定着装置のニップ部70(図2参照)近傍の構成を示す要部構成図であり、図9(b)は、ニップ部全域にわたって定着ベルト51と加圧ローラ30間に発生する圧力分布を示すグラフである。ここでの比較例としての定着装置は、本実施の形態の定着装置3(図2参照)に対して、耐熱性弾性材166(本実施の形態の耐熱性弾性材66に相当)の形状及び耐熱性弾性材166の加圧ローラ30への圧接条件が異なるが、他の部分は共通している。
図9(a)に示すように、この比較例では、パッド156の耐熱性弾性材166の対向面167が、円弧状に形成されており、その円弧の半径が、加圧ローラ30の外形の半径Rp(20mm)と同じく20mmに形成され、下流側端部P2側が上流側端部P1側に対して多少圧接力が大きくなるように取り付けられている。
この場合、同図(b)に示すように、耐熱性弾性材166が加圧ローラ30に当接するニップ領域Aでの最大ニップ圧Pn2及びニップ領域B(低加圧領域)における最小ニップ圧Pn3がともに低下するため、主にトナー画像乱れが発生しやすくなる。
一方図10(a)は、比較例2としてのパッド256を採用した定着装置のニップ部70(図2参照)近傍の構成を示す要部構成図であり、図10(b)は、ニップ部全域及びその近傍領域にわたって定着ベルト51と加圧ローラ30間に発生する圧力分布を示すグラフである。ここでの比較例としての定着装置は、本実施の形態の定着装置3(図2参照)に対して、耐熱性弾性材166(本実施の形態の耐熱性弾性材66に相当)の形状及び耐熱性弾性材166の加圧ローラ30への圧接条件が異なるが、他の部分は共通している。
図10(a)に示すように、この比較例では、パッド256の耐熱性弾性材166の対向面167が、円弧状に形成されており、その円弧の半径が、加圧ローラ30の外形の半径Rp(20mm)と同じく20mmに形成され、図9(a)に示す比較例1の場合よりも、パッド256を反時計回りに傾けることにより、下流側端部P2側が上流側端部P1側に対して圧接力がより大きくなるように取り付けられている。
尚、ここでは便宜上、比較例1の構成を示す図9で定義したニップ領域A、その上流側端部P1及び下流側端部P2をそのまま引用しているが、図10に示すように、ここでのニップ領域Aの上流側端部P1の近傍の導入部領域Abでは、加圧ローラ30から浮いた状態となっている。
この場合、同図(b)に示すように、耐熱性弾性材166が加圧ローラ30に当接するニップ領域A(但し、導入部領域Adを除く)での最大ニップ圧Pn2及びニップ領域B(低加圧領域)における最小ニップ圧Pn3を共に、本実施の形態の場合(図6(b)に示す)と同程度に維持できる。しかしながら、導入部領域Abで、定着ベルト51に記録用紙47が接触してしまい、主にこすれ印字が発生しやすくなる。
尚、上記実施の形態では、印刷媒体として記録用紙47(普通紙)を使用して説明したが、これに限定されるものではなく、例えばOHPシート、カード、葉書、秤量が450g/m相当以上の厚紙、封筒、熱容量の大きいコート紙等の特殊紙であってもよい。
また、上記実施の形態では、ヒータ53を、平板状ヒータであるとして説明したが、定着ベルト51との摺接面が定着ベルト51と同程度の曲率を有するもの、円筒状のヒータ形状のもの、或いはハロゲンヒータであってもよく、更には電磁誘導可能な材料で定着ベルトを構成することで誘導加熱とすることも可能であり、ヒータの種類や形状に限定されるものではない。
また、上記実施の形態では、加圧ローラ30の半径Rpが20mmのものについて試験したが、これに限定されるものではなく、少なくとも半径Rpが15〜20mmのものについては同様の試験結果が得られることを確認している。
更に、上記実施の形態では、ヒータ53を定着ベルト51の内側に配置する構成として説明したが、定着ベルトの外側であってもよいなど、本発明は種々の態様を取り得るものである。
以上のように、本実施の形態の定着装置によれば、パッド56を設けることによりニップ領域を広げて定着に必要な加圧を十分行うことができるうえ、パッド56による適切な加圧と、ニップ部以外における定着ベルト51と記録用紙47とが過度に接近する領域の排除が可能となり、確実な定着と、トナー画像乱れ及びこすれ印字の防止に貢献できる。
本実施の形態では画像形成装置としてカラープリンタを用いて説明したが、単色プリンタ、複写機、FAX、更にこれらを複合させた複合機等にも適用可能である。
1 画像形成装置、 3 定着装置、 4 用紙搬送路、 11 画像形成ユニット、 12 感光体ドラム、 13 転写ローラ、 14 搬送ベルト、 16 露光装置、 17 上部カバー、 18 給紙カセット、 19a 給紙ローラ、 19b 給紙ローラ対、 20 分離片、 21 搬送ローラ対、 22 レジストローラ対、 23 搬送ローラ対、 24 排出ローラ対、 25 用紙厚検出センサ、 26 ドライブローラ、 27 アイドルローラ、 28 スタッカ、 30 加圧ローラ、 30a 芯金、 30b 弾性層、 30c 離型層、 31 定着ベルトユニット、 32 用紙センサ、 33 用紙センサ、 34 書込みセンサ、 35 用紙センサ、 41 帯電ローラ、 42 現像ローラ、 43 トナー供給ローラ、 44 クリーニングブレード、 47 記録用紙、 51 定着ベルト、 52 定着ローラ、 52a 芯金、 52b 弾性層、 53 ヒータ、 53a 基板、 53b 電気絶縁層、 53c 電極、 53d 抵抗発熱体、 53e 保護層、 54 ヒータホルダ、 54a 外側表面、 55 ベルトガイド、 55a 外側表面、 56 パッド、 57 パッドスプリング、 58 加圧プレート、 59 ヒータスプリング、 60 ベルト温度センサ、 61 補助ガイド部材、 65 支持基材、 66 耐熱性弾性材、 67 対向面、 67a 第1の平面部、 67b 第2の平面部、 70 ニップ部、 71 用紙ガイド部、 80 トナー、 90 仮想円弧、 101 制御部、 102 表示部、 102a 表示パネル、 103 画像形成制御部、 104 給紙搬送駆動制御部、 105 ベルト駆動制御部、 106 定着制御部、 106a 駆動制御部、 106b 温度制御部、 107 定着モータ、 110 センサ群。

Claims (9)

  1. 無端状のベルト部材と、
    前記ベルト部材の内側に配置された第1のローラと、
    前記ベルト部材の外側に配置され、前記ベルト部材を介して前記第1のローラに付勢された第2のローラと、
    前記ベルト部材の内側に、前記第1のローラに隣接して配置され、前記ベルト部材を介して前記第2のローラに付勢された加圧部材を備え、
    前記加圧部材の、前記第2のローラに対向する対向面は、印刷媒体の搬送方向において、上流側に形成された第1の平面部と、下流側に形成されて前記第1の平面部とによって前記第2のローラの回転軸方向に延在する交差部を形成する第2の平面部を有して、前記第1の平面部及び前記第2の平面部が前記第2のローラと共にニップ部を形成し、
    前記第1の平面部の前記搬送方向の上流側端部に相当する第1の端部、前記第2の平面部の前記搬送方向の下流側端部に相当する第2の端部、及び前記交差部が、前記交差部と垂直な断面において仮想円弧上に位置し、
    前記仮想円弧の半径Rが、前記第2のローラの半径Rpに対して、不等式
    (1/2)×Rp≦R≦(19/20)×Rp
    を満たすことを特徴する定着装置。
  2. 前記交差部は、前記断面において、前記第1の端部と前記第2の端部とを結ぶ線上の中心部を、該線方向において中心振り分けとした設定領域内に設定され、該設定領域の幅をW2とし、前記第1の端部と前記第2の端部間の距離をW1としたとき、前記設定領域は、その幅W2が不等式
    W2<(1/3)×W1
    を満たしていることを特徴とする請求項1記載の定着装置。
  3. 前記加圧部材は、前記仮想円弧の半径Rが15mmのとき、前記第1のローラ側に配置した前記第2の端部でのニップ圧が1〜1.5kgf/cmとなるように、付勢手段によって付勢されることを特徴とする請求項1又は2に記載の定着装置。
  4. 前記ベルト部材は、前記第1のローラの回転に伴って回転移動し、前記ベルト部材に接して配置された加熱部材によって加熱されることを特徴とする請求項1から3までの何れか1項に記載の定着装置。
  5. 前記加熱部材は、前記ベルト部材の内側にあって、前記ベルト部材を張架する方向に付勢されていることを特徴とする請求項4記載の定着装置。
  6. 前記加圧部材は、金属からなる支持基材と、該支持基材に固定されて前記第2のローラに対向する耐熱性弾性材からなり、前記対向面が該耐熱性弾性材に形成されていることを特徴とする請求項1から5までの何れか1項に記載の定着装置。
  7. 前記ニップ部における前記上流側端部から前記下流側端部に至るニップ圧の増加率において、前記第2の平面部と前記第2のローラによる増加率が、前記第1の平面部と前記第2のローラによる増加率よりも大きい領域を有することを特徴とする請求項1記載の定着装置。
  8. 前記ニップ部における最大ニップ圧は、前記第2の平面部と前記第2のローラとによって得られることを特徴とする請求項1記載の定着装置。
  9. 請求項1からまでの何れか1項に記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
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