本発明は、以上のような問題点に着目し、これを有効に解決すべく創案されたものである。本発明の目的は、複数のロール状の原反をセットすることができるウェブ搬送装置を提供することにある。
本件出願人は、複数の原反からウェブを同時給送可能なウェブ搬送装置を既に提案している(特願2011−194983)。本発明は、当該発明に対して更に改良を施したものである。
すなわち、本発明は、ロール状の第一原反がセットされる、中空空間を有する第一給送軸と、ロール状の第二原反がセットされる、中空空間を有する第二給送軸と、当該第二給送軸に対して前記第一給送軸の反対側に配置され、前記第一給送軸及び前記第二給送軸が各々中空のサイドギヤに接続された差動装置と、前記ロール状の第一原反及び前記ロール状の第二原反からそれぞれ給送されるウェブを共通に狭持して搬送するニップローラと、前記第一給送軸の中空空間、前記第二給送軸の中空空間及び前記差動装置の中空のサイドギヤを貫いて延びる駆動軸と、を備え、前記第一給送軸と前記第二給送軸とは、同軸に配置されており、前記第一給送軸は、前記第二給送軸の中空空間を貫いて延びて前記第二給送軸側にあるサイドギヤに接続されており、前記差動装置のピニオンシャフトが駆動軸に接続されていて、当該ピニオンシャフトが駆動軸の回転によって公転するようになっており、前記第一給送軸と前記第二給送軸との間に、互いに対する回転を抑制するための摩擦力増大要素が設けられていることを特徴とするウェブ搬送装置である。
本ウェブ搬送装置によれば、2つのロール状の原反がセットされる各給送軸の角速度差を許容することができるため、2つのロール状の原反の径に差が存在する場合であっても、各ウェブの張力を好適に制御することができる。このため、2つのロール状の原反からウェブを同時に給送可能な、実用に耐え得るウェブ搬送装置が実現できる。
また、本ウェブ搬送装置によれば、第一給送軸と第二給送軸との間に互いに対する回転を抑制するための摩擦力増大要素が設けられているため、第一給送軸及び第二給送軸の慣性モーメント差により駆動時(回転開始時)に速度差が生じて両原反の位相がずれてしまう、ということが抑制される。これの効果は、ウェブ継ぎ時に新しい原反をプリドライブする(新しい原反の周速とウェブ搬送速度とを一致させる)際において、顕著に有用なものである。また、第一給送軸と第二給送軸との両方に必ずトルク負荷がかかるという状態が保証されるため、給送中のウェブに不慮の切断(紙切れ)が生じた場合において、当該ウェブを給送していた給送軸のトルク負荷がゼロになって他方の給送軸が危険な程に高速に回転する、というおそれが効果的に抑制される。逆に、摩擦力増大要素が設けられていなければ、給送中のウェブに不慮の切断(紙切れ)が生じた場合において異常を判断して駆動軸を停止させることによって、他方の給送軸が高速に回転することは防止できるが、給送軸にトルク負荷がかからないため給送軸の回転が長時間止まらないという問題が残る。本ウェブ搬送装置では、第一給送軸と第二給送軸との間に摩擦力増大要素が設けられているため、そのような事態も抑制される。
好ましくは、摩擦力増大要素は、周方向に略均等に複数が設けられる。この場合、周方向においてバランス良く摩擦力を増大させることができるため、第一給送軸と第二給送軸との間の回転抑制効果を十分に提供することができる。
具体的には、摩擦力増大要素は、例えば、第二給送軸に固定されると共に第一給送軸の外周面に当接可能なパッド部材からなる。この場合、パッド部材は、例えばゴム製または樹脂製である。
この場合、好ましくは、パッド部材は、第二給送軸の径方向に伸縮可能な弾性体を介して、第二給送軸に固定される。この場合、当該弾性体が、パッド部材が受ける反力の作用を吸収することができるため、パッド部材の破損等を抑制できる。
また、好ましくは、パッド部材は、第二給送軸の径方向について位置調整可能に、第二給送軸に固定される。この場合、パッド部材の作用の程度を調整することができ、所望の摩擦力増大効果を得ることができる。第二給送軸の径方向についての位置調整可能な固定とは、例えば、第二給送軸の径方向に設けられたネジ孔内においてネジ込み量を調整可能なネジ部材を螺着させることによって実現可能である。
特に、第一給送軸が、前記第一原反がセットされる第一原反セット部と、前記差動装置のサイドギヤとの接続部と、前記第一原反セット部から前記接続部まで延びる中間部と、を有しており、前記第二給送軸が、前記第二原反がセットされる第二原反セット部と、前記差動装置のサイドギヤとの接続部と、前記第二原反セット部から前記接続部まで延びる中間部と、を有している場合においては、摩擦力増大要素が第一給送軸の中間部と第二給送軸の中間部との間に設けられていれば、前記位置調整作業(例えばネジ込み量調整作業)を容易に実施することが可能である。場合によっては、パッド部材を第一給送軸と当接しない位置にまで待避させることも可能である。
また、摩擦力増大要素は、電気的に制御可能な一般の電磁クラッチ装置によって構成されてもよい。
あるいは、本発明は、ロール状の第一原反がセットされる第一給送軸と、ロール状の第二原反がセットされる、中空空間を有する第二給送軸と、当該第二給送軸に対して前記第一給送軸の反対側に配置された差動装置と、前記ロール状の第一原反及び前記ロール状の第二原反からそれぞれ給送されるウェブを共通に狭持して搬送するニップローラと、を備え、前記第一給送軸と前記第二給送軸とは、同軸に配置されており、前記差動装置の2つのサイドギヤのうち前記第二給送軸側にあるサイドギヤが、中空空間を有していて、前記第二給送軸に接続されており、前記第一給送軸は、前記第二給送軸の中空空間及び前記第二給送軸が接続されたサイドギヤの中空空間を貫いて延びて、前記差動装置の他方のサイドギヤに接続されており、前記差動装置のピニオンギヤにそれぞれ対応するピニオンシャフトが駆動軸に接続されていて、当該ピニオンシャフトが前記駆動軸の回転によって公転するようになっており、前記第一給送軸と前記第二給送軸との間に、互いに対する回転を抑制するための摩擦力増大要素が設けられていることを特徴とするウェブ搬送装置である。
本ウェブ搬送装置によれば、2つのロール状の原反がセットされる各給送軸の角速度差を許容することができるため、2つのロール状の原反の径に差が存在する場合であっても、各ウェブの張力を好適に制御することができる。このため、2つのロール状の原反からウェブを同時に給送可能な、実用に耐え得るウェブ搬送装置が実現できる。
また、本ウェブ搬送装置によれば、第一給送軸と第二給送軸との間に互いに対する回転を抑制するための摩擦力増大要素が設けられているため、第一給送軸及び第二給送軸の慣性モーメント差により駆動時(回転開始時)に速度差が生じて両原反の位相がずれてしまう、ということが抑制される。これの効果は、ウェブ継ぎ時に新しい原反をプリドライブする(新しい原反の周速とウェブ搬送速度とを一致させる)際において、顕著に有用なものである。また、第一給送軸と第二給送軸との両方に必ずトルク負荷がかかるという状態が保証されるため、給送中のウェブに不慮の切断(紙切れ)が生じた場合において、当該ウェブを給送していた給送軸のトルク負荷がゼロになって他方の給送軸が危険な程に高速に回転する、というおそれが効果的に抑制される。逆に、摩擦力増大要素が設けられていなければ、給送中のウェブに不慮の切断(紙切れ)が生じた場合において異常を判断して駆動軸を停止させることによって、他方の給送軸が高速に回転することは防止できるが、給送軸にトルク負荷がかからないため給送軸の回転が長時間止まらないという問題が残る。本ウェブ搬送装置では、第一給送軸と第二給送軸との間に摩擦力増大要素が設けられているため、そのような事態も抑制される。
好ましくは、摩擦力増大要素は、周方向に略均等に複数が設けられる。この場合、周方向においてバランス良く摩擦力を増大させることができるため、第一給送軸と第二給送軸との間の回転抑制効果を十分に提供することができる。
具体的には、摩擦力増大要素は、例えば、第二給送軸に固定されると共に第一給送軸の外周面に当接可能なパッド部材からなる。この場合、パッド部材は、例えばゴム製または樹脂製である。
この場合、好ましくは、パッド部材は、第二給送軸の径方向に伸縮可能な弾性体を介して、第二給送軸に固定される。この場合、当該弾性体が、パッド部材が受ける反力の作用を吸収することができるため、パッド部材の破損等を抑制できる。
また、好ましくは、パッド部材は、第二給送軸の径方向について位置調整可能に、第二給送軸に固定される。この場合、パッド部材の作用の程度を調整することができ、所望の摩擦力増大効果を得ることができる。第二給送軸の径方向についての位置調整可能な固定とは、例えば、第二給送軸の径方向に設けられたネジ孔内においてネジ込み量を調整可能なネジ部材を螺着させることによって実現可能である。
特に、第一給送軸が、前記第一原反がセットされる第一原反セット部と、前記差動装置のサイドギヤとの接続部と、前記第一原反セット部から前記接続部まで延びる中間部と、を有しており、前記第二給送軸が、前記第二原反がセットされる第二原反セット部と、前記差動装置のサイドギヤとの接続部と、前記第二原反セット部から前記接続部まで延びる中間部と、を有している場合においては、摩擦力増大要素が第一給送軸の中間部と第二給送軸の中間部との間に設けられていれば、前記位置調整作業(例えばネジ込み量調整作業)を容易に実施することが可能である。場合によっては、パッド部材を第一給送軸と当接しない位置にまで待避させることも可能である。
また、摩擦力増大要素は、電気的に制御可能な一般の電磁クラッチ装置によって構成されてもよい。
なお、第一給送軸と第二給送軸との間に摩擦力増大要素を設ける代わりに、差動装置内において公知の差動制限機構を適用しても、第一給送軸と第二給送軸との間の回転抑制効果を得ることはできる。しかしながら、差動装置内の公知の差動制限機構は、オイルを必要としたり、金属紛が発生したり、装置が大型化したり、といった問題を発生させ得るため、あまりお薦めでない。
本ウェブ搬送装置によれば、2つのロール状の原反がセットされる各給送軸の角速度差を許容することができるため、2つのロール状の原反の径に差が存在する場合であっても、各ウェブの張力を好適に制御することができる。このため、2つのロール状の原反からウェブを同時に給送可能な、実用に耐え得るウェブ搬送装置が実現できる。
また、本ウェブ搬送装置によれば、第一給送軸と第二給送軸との間に互いに対する回転を抑制するための摩擦力増大要素が設けられているため、第一給送軸及び第二給送軸の慣性モーメント差により駆動時(回転開始時)に速度差が生じて両原反の位相がずれてしまう、ということが抑制される。これの効果は、ウェブ継ぎ時に新しい原反をプリドライブする(新しい原反の周速とウェブ搬送速度とを一致させる)際において、顕著に有用なものである。また、第一給送軸と第二給送軸との両方に必ずトルク負荷がかかるという状態が保証されるため、給送中のウェブに不慮の切断(紙切れ)が生じた場合において、当該ウェブを給送していた給送軸のトルク負荷がゼロになって他方の給送軸が危険な程に高速に回転する、というおそれが効果的に抑制される。逆に、摩擦力増大要素が設けられていなければ、給送中のウェブに不慮の切断(紙切れ)が生じた場合において異常を判断して駆動軸を停止させることによって、他方の給送軸が高速に回転することは防止できるが、給送軸にトルク負荷がかからないため給送軸の回転が長時間止まらないという問題が残る。本ウェブ搬送装置では、第一給送軸と第二給送軸との間に摩擦力増大要素が設けられているため、そのような事態も抑制される。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施の形態におけるウェブ搬送装置を示す概略図である。本実施の形態のウェブ搬送装置は、図1に示すように、給送部20と、インフィード部30と、印刷部40と、アウトフィード部50と、巻取部60と、により構成されている。そして、ロール状の原反10が、給送部20の給送軸にセットされるようになっている。当該給送軸が駆動されることに伴って、ロール状の原反からウェブ11がインフィード部30に給送される。給送されるウェブ11は、インフィード部30を介して印刷部40へと給送され、当該印刷部40において印刷処理される。その後、アウトフィード部50を介して排送されて、巻取部60によって巻取られる。
図2は、図1のウェブ搬送装置の要部を示す概略図である。本実施の形態におけるウェブ搬送装置は、ロール状の第一原反10aがセットされる、中空空間を有する第一給送軸21aと、ロール状の第二原反10bがセットされる、中空空間を有する第二給送軸21bと、当該第二給送軸21bに対して第一給送軸21aの反対側に配置された差動装置22と、差動装置22を介して第一給送軸21a及び第二給送軸21bを回転させる駆動軸28と、からなる。また、ウェブ搬送装置は、ロール状の第一原反10a及び第二原反10bからそれぞれ給送されるウェブ11a及び11bを共通に狭持して搬送するニップローラ31を備えている。
第一給送軸21a及び第二給送軸21bには、種々の幅を有するロール状の原反10がセットできるようになっている。第一給送軸21aと第二給送軸21bとは、同軸に配置されており、それぞれ差動装置22の中空のサイドギヤ23a及び23bに接続されている。第一給送軸21aは、具体的には、ロール状の第一原反10aがセットされる第一原反セット部と、差動装置22のサイドギヤ23aとの接続部と、第一原反セット部から接続部まで延びる中間部213aと、を有している。同様に、第二給送軸21bは、ロール状の第二原反10bがセットされる第二原反セット部と、差動装置22のサイドギヤ23bとの接続部212bと、第二原反セット部から接続部212bまで延びる中間部213bと、を有している。これにより、各サイドギヤ23a及び23bと、第一給送軸21a及び第二給送軸21bと、第一原反10a及び第二原反10bとは、それぞれ一体に回転することができるようになっている。
より詳細には、第一給送軸21aは、第二給送軸21bの中空空間を貫いて延びて第二給送軸21b側にあるサイドギア23aに接続されている。一方、第二給送軸21bは、差動装置22の外縁を回り込む形状を有している接続部212bにより、サイドギヤ23bに接続されている。これにより、接続部212bは、サイドギヤ23bの回転を第二給送軸21bへ伝達することができるようになっている。
ニップローラ31は、回転駆動される駆動ローラ32と、当該駆動ローラ32と対向するように配置されて当該駆動ローラ32との間でウェブ11を押圧するゴムローラ33と、により構成されている。駆動ローラ32とゴムローラ33は、ウェブ11の搬送方向に対して直角かつ水平に回転可能に支持されている。更に、駆動ローラ32は、モータにより回転駆動される。
差動装置22は、第一給送軸21a及び第二給送軸21bにそれぞれ接続される各サイドギヤ23a及び23bと、各サイドギヤ23a及び23bの回転軸と直交する回転軸を有し各サイドギヤに噛合する一対のピニオンギヤ24と、一対のピニオンギヤ24を回転可能に軸支するピニオンシャフト25と、を備えている。
図2の例では、サイドギヤ23a及び23bと一対のピニオンギヤ24とは、かさ歯車として構成されており、サイドギヤ23a及び23bは、一対のピニオンギヤ24に直交して噛み合っている。このような構成により、一対のピニオンギヤ24は、サイドギヤ23aとサイドギヤ23bとの間の回転速度差(角速度差)を吸収するようになっている。
駆動軸28は、2つの給送軸21a及び21bの中空空間及び差動装置22の中空のサイドギヤ23a及び23bを貫いて延びている。そして、駆動軸28は、ピニオンシャフト25と、互いの軸線が直交するように接続されている。駆動軸28の初期回転速度は、ウェブ11へ微張力をかけるために、ニップローラ31(駆動ローラ32)の回転速度に対して給送軸21の回転速度が相対的に遅くなるように決定される。
駆動軸28は、具体的には、第二原反セット部の中空空間から第一原反セット部の中空空間まで延びる原反貫通部と、差動装置22のピニオンシャフト25との接続部と、原反貫通部から接続部まで延びる中間部283と、を有している。駆動軸28の原反貫通部側の端部は、不図示のハウジングに固定された自由回転する支持軸部材27により回転可能に支持されている。
また、支持軸部材27は、軸方向に(図2における右方向に)待避移動可能となっている。一方、駆動軸28の接続部側の端部も、不図示のハウジングに固定された自由回転する支持軸部材(不図示)により回転可能に支持されている。
また、第二給送軸21bの中間部213bの部分と第一給送軸21aの中間部213aの部分との間には、ラジアル軸受26aが設けられている。これにより、第二給送軸21bの中間部213bの部分と第一給送軸21aの中間部213aの部分とが、互いに対して安定して回転することができる。
更に、駆動軸28の中間部283と第一給送軸21aの中間部213aの間にも、ラジアル軸受26bが設けられている。これにより、駆動軸28の中間部283と第一給送軸21aの中間部213aとが互いに対して安定して回転することができる。
また、第二給送軸21bの第二原反セット部の中空空間にも、所定の間隔を有する複数のラジアル軸受26cが嵌入されており、第二給送軸21bが安定して第一給送軸21aに軸支されている。更に、第一給送軸21aの第一原反セット部側の部分の中空空間にも、所定の間隔を有する複数のラジアル軸受26dが嵌入されており、第一給送軸21aが安定して駆動軸28に軸支されている。
そして、本実施の形態では、本発明の特徴である摩擦力増大要素としてのパッド部材71〜76が設けられている。パッド部材71〜76は、図2及び図3に示すように、周方向に均等に6分割された位置に、第一給送軸21aの中間部213aと第二給送軸21bの中間部213bとの間に設けられている。
パッド部材71〜76は、本実施の形態では、第二給送軸21bに固定されると共に第一給送軸21aの外周面に当接可能な部材として構成されている。この場合、パッド部材71〜76はゴム製であるが、第一給送軸21aの外周面に対する摩擦力を増大させる材料であれば特に限定されない。例えば、パッド部材71〜76は樹脂製であってもよい。さらに、パッド部材71〜76は、第一給送軸21aの外周面に対する当接部の材料と後述するコイルバネとの結合部の材料とが異なっていてもよい。
そして、図2及び図3に示すように、本実施の形態のパッド部材71〜76の径方向外側の端部には、伸縮可能なコイルバネ81〜86の端部が結合されている。コイルバネ81〜86のバネ定数としては、パッド部材71〜76が第一給送軸21aから受ける反力の作用を効果的に吸収することができるような値が選択される。そして、互いに結合されたパッド部材71〜76及びコイルバネ81〜86は、第二給送軸21bの径方向に設けられたネジ孔内に挿入されて、当該径方向にのみ移動可能ないし伸縮可能となっている。第一給送軸21aの外径と第二給送軸21bの内径との間のギャップが大きい場合には、第二給送軸21bの径方向に設けられたネジ孔を更に内径方向に延長するようにスリーブが設けられてもよい。あるいは、当該部分においてのみ、第二給送軸21bが肉厚に形成されてもよい。
そして、前記コイルバネ81〜86の他端にネジ部材91〜96の下端が当接するように、第二給送軸21bの径方向に設けられたネジ孔内にネジ部材91〜96が螺着されている。当該ネジ部材91〜96のネジ込み量を調整することによって、パッド部材71〜76の設置位置(第一給送軸21aに対する当たり具合)を所望に調整することが可能である。
特に、本実施の形態では、第二給送軸21bのネジ孔が、外部からアクセス容易な第二給送軸21bの中間部213bに設けられているため、ネジ部材71〜76のネジ込み量の調整作業を容易に実施することができる。
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について図2及び図3を参照しながら説明する。
駆動軸28が回転駆動されると、駆動軸28に接続された差動装置22のピニオンシャフト25が回転する。このピニオンシャフト25の回転は、一対のピニオンギヤ24から各サイドギヤ23a及び23bを介して各給送軸21a及び21b(第一給送軸21a及び第二給送軸21b)へと等しく伝わり、各給送軸21a及び21bが等しい角速度で回転し始める(この回転は「差動装置の公転」と呼ばれる)。これにより、各給送軸21a及び21bから、各ウェブ11a及び11bが給送され始める。給送されるウェブ11a及び11bは、駆動ローラ32とゴムローラ33とによって共通に狭持されながら搬送されていく。
ここで、ロール状の原反10aの径raとロール状の原反10bの径rbとが異なる場合を考える(相対的に大径である径raを有するロール状の原反(第一原反)を10a、相対的に小径である径rbを有するロール状の原反(第二原反)を10bとする)。この場合、各給送軸21a及び21bが等速で回転し続けるならば、径raの大きい原反10aから給送されるウェブ11aの給送速度Vaの方が、径rbの小さい原反10bから給送されるウェブ11bの給送速度Vbより速くなる。すると、ウェブ11aは給送過剰のために張力が弱くなる一方で、ウェブ11bは給送不足のため張力が強くなる。ウェブ11bに作用するこの強い張力は、ウェブ11bを引張って、給送軸21bを速く回転させようとする。給送軸21bの回転速度が少しでも速くなると、サイドギヤ23bの回転速度とサイドギヤ23aの回転速度との間に速度差が生じることとなり、一対のピニオンギヤ24がサイドギヤ23bによって回転して、サイドギヤ23aの回転速度、すなわち給送軸21aの回転速度、の方が遅くなるような作用が生じる(この回転は「差動装置の自転」と呼ばれる)。この結果、ウェブ11bの張力過剰が抑えられると共に、ウェブ11aの給送過剰が抑えられウェブ11aの必要な張力が維持されるようになる。
特に本実施の形態では、パッド部材71〜76が周方向に均等に6カ所に設けられているため、周方向にバランス良く摩擦力を増大させることができ、第一給送軸21aと第二給送軸21bとの間の回転抑制効果を十分に発揮することができる。
また、本実施の形態では、パッド部材71〜76が第一給送軸21aの外周面から受ける反力の作用を、コイルバネ81〜86がバランスよく吸収する。このため、パッド部材71〜76の破損等の発生を抑制できる。
また、本実施の形態では、パッド部材71〜76が第二給送軸21bの径方向について位置調整可能に固定される。従って、パッド部材71〜76による摩擦力増大作用の程度を調整することができ、所望の摩擦力増大効果を得ることができる。
以上のように、本実施の形態によれば、2つのロール状の原反10a及び10bがセットされる各給送軸21a及び21b(第一給送軸21a及び第二給送軸21b)の角速度差を許容することができるため、2つのロール状の原反10a及び10bの径に差が存在する場合であっても、各ウェブ11a及び11bの張力を好適に制御することができる。このため、2つのロール状の原反10a及び10bからウェブ11a及び11bを同時に給送可能な、実用に耐え得るウェブ搬送装置が実現できる。
また、本ウェブ搬送装置によれば、第一給送軸21aと第二給送軸21bとの間に、互いに対する回転を抑制するための摩擦力増大要素71〜76が設けられているため、第一給送軸21a及び第二給送軸21bの慣性モーメント差により駆動時(回転開始時)に速度差が生じて両原反10a及び10bの位相がずれてしまう、ということが抑制される。これの効果は、ウェブ継ぎ時に新しい原反をプリドライブする(新しい原反の周速とウェブ搬送速度とを一致させる)際において、顕著に有用なものである。また、第一給送軸21aと第二給送軸21bとの両方に必ずトルク負荷がかかるという状態が保証されるため、給送中のウェブ11に不慮の切断(紙切れ)が生じた場合において、当該ウェブ11を給送していた給送軸21のトルク負荷がゼロになって他方の給送軸21が危険な程に高速に回転する、というおそれが効果的に抑制される。逆に、摩擦力増大要素71〜76が設けられていなければ、給送中のウェブ11に不慮の切断(紙切れ)が生じた場合において異常を判断して駆動軸21を停止させることによって、他方の給送軸21が高速に回転することは防止できるが、給送軸21にトルク負荷がかからないため給送軸21の回転が長時間止まらないという問題が残る。本ウェブ搬送装置では、第一給送軸21aと第二給送軸21bとの間に摩擦力増大要素71〜76が設けられているため、そのような事態も抑制される。
なお、本実施の形態のウェブ搬送装置が、それぞれ約100kgの重量を有する第一原反10a及び第二原反10bからウェブを給送するように構成されている場合、第一原反10a及び第二原反10bがセットされない状態で、例えば0.5〜2.0kg程度の測定用おもりを第一給送軸21aまたは第二給送軸21bの外周面の一点に取付けても第一給送軸21aと第二給送軸21bとが互いに対して回転しない程度にネジ部材91〜96のネジ込み量を調整しておけば、外乱によって一方の給送軸が突然回転し始めるということが防止される一方で、2つのロール状の原反がセットされた状態では各給送軸の角速度差を許容することができる。
次に、図4乃至図6を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。
図4は、本発明の第2の実施の形態におけるウェブ搬送装置を示す概略図である。本実施の形態のウェブ搬送装置は、図4に示すように、給送部120と、インフィード部130と、印刷部140と、アウトフィード部150と、巻取部160と、により構成されている。そして、ロール状の原反110が、給送部120の給送軸にセットされるようになっている。当該給送軸が駆動されることに伴って、ロール状の原反からウェブ111がインフィード部130に給送される。給送されるウェブ111は、インフィード部130を介して印刷部140へと給送され、当該印刷部140において印刷処理される。その後、アウトフィード部150を介して排送されて、巻取部160によって巻取られる。
図5は、図4のウェブ搬送装置の要部を示す概略図である。本実施の形態におけるウェブ搬送装置は、ロール状の第一原反110aがセットされる第一給送軸121aと、ロール状の第二原反110bがセットされる、中空空間を有する第二給送軸121bと、当該第二給送軸121bに対して第一給送軸121aの反対側に配置された差動装置122と、差動装置122を介して第一給送軸121a及び第二給送軸121bを回転させる駆動軸128と、からなる。また、ウェブ搬送装置は、ロール状の第一原反110a及び第二原反110bからそれぞれ給送されるウェブ111a及び111bを共通に狭持して搬送するニップローラ131を備えている。
第一給送軸121a及び第二給送軸121bには、種々の幅を有するロール状の原反110がセットできるようになっている。第一給送軸121aと第二給送軸121bとは、同軸に配置されており、それぞれ差動装置122のサイドギヤ123a及び123bに接続されている。第一給送軸121aは、具体的には、ロール状の第一原反110aがセットされる第一原反セット部と、差動装置122のサイドギヤ123aとの接続部と、第一原反セット部から接続部まで延びる中間部1213aと、を有している。同様に、第二給送軸121bは、ロール状の第二原反110bがセットされる第二原反セット部と、差動装置122のサイドギヤ123bとの接続部と、第二原反セット部から接続部まで延びる中間部1213bと、を有している。これにより、各サイドギヤ123a及び123bと、第一給送軸121a及び第二給送軸121bと、第一原反110a及び第二原反110bとは、それぞれ一体に回転することができるようになっている。
より詳細には、図5に示すように、第二給送軸121b及び当該第二給送軸121bが接続されたサイドギヤ123b(第二給送軸121b側にあるサイドギヤ123b)は、中空空間を有している。そして、第一給送軸121aが、第二給送軸121bの中空空間及びサイドギヤ123bの中空空間を貫いて延びている。更に、本実施の形態では、差動装置122の他方側にあるサイドギヤ123aも、中空空間を有している。そして、第一給送軸121aは、差動装置122の他方のサイドギヤ123aの中空空間をも貫いて更に他方に延びており、当該他方のサイドギヤ123aよりも他方に延びた部分が、ラジアル軸受126aにより回転可能に支持されている。一方、第一給送軸121aの他方の端部は、不図示のハウジングに固定された自由回転する支持軸部材127により回転可能に支持されている。第一給送軸121aの他方の端部と支持軸部材127とは、それぞれ切頭円錐面状に形成された凹嵌合部と凸嵌合部とが互いに押圧されることで、結合されている。このような構成により、第一給送軸121aが安定して軸支されている。
また、第二給送軸121bの中空空間には、複数のラジアル軸受126bが嵌入されており、第二給送軸121bが安定して第一給送軸121aに軸支されている。
ニップローラ131は、回転駆動される駆動ローラ132と、当該駆動ローラ132と対向するように配置されて当該駆動ローラ132との間でウェブ111を押圧するゴムローラ133と、により構成されている。駆動ローラ132とゴムローラ133は、ウェブ111の搬送方向に対して直角かつ水平に回転可能に支持されている。更に、駆動ローラ132は、モータにより回転駆動される。
差動装置122は、第一給送軸121a及び第二給送軸121bにそれぞれ接続される各サイドギヤ123a及び123bと、各サイドギヤ123a及び123bの回転軸と直交する回転軸を有し各サイドギヤに噛合する一対のピニオンギヤ124と、一対のピニオンギヤ124を回転可能に軸支するピニオンシャフト125と、を備えている。
図5の例では、サイドギヤ123a及び123bと一対のピニオンギヤ124とは、かさ歯車として構成されており、サイドギヤ123a及び123bは、一対のピニオンギヤ124に直交して噛み合っている。このような構成により、一対のピニオンギヤ124は、サイドギヤ123aとサイドギヤ123bとの間の回転速度差(角速度差)を吸収するようになっている。
駆動軸128は、第一給送軸121a及び第二給送軸121bに対して同軸となっている。そして、駆動軸128は、一対のピニオンシャフト125と、互いの軸線が直交するように、一対の接続部材129を介して接続されている。より詳細には、接続部材129は、差動装置122の外縁を周り込むような形状を有しており、一端において駆動軸128に接続され、他端においてピニオンシャフト125に接続されている。ここで、駆動軸128の初期回転速度は、ウェブ111へ微張力をかけるために、ニップローラ131(駆動ローラ132)の回転速度に対して給送軸121a及び121bの回転速度が相対的に遅くなるように決定される。
そして、本実施の形態では、本発明の特徴である摩擦力増大要素としてのパッド部材171〜176が設けられている。パッド部材171〜176は、図5及び図6に示すように、周方向に均等に6分割された位置に、第一給送軸121aの中間部1213aと第二給送軸121bの中間部1213bとの間に設けられている。
パッド部材171〜176は、本実施の形態では、第二給送軸121bに固定されると共に第一給送軸121aの外周面に当接可能な部材として構成されている。この場合、パッド部材171〜176はゴム製であるが、第一給送軸121aの外周面に対する摩擦力を増大させる材料であれば特に限定されない。例えば、パッド部材171〜176は樹脂製であってもよい。さらに、パッド部材171〜176は、第一給送軸121aの外周面に対する当接部の材料と後述するコイルバネとの結合部の材料とが異なっていてもよい。
そして、図5及び図6に示すように、本実施の形態のパッド部材171〜176の径方向外側の端部には、伸縮可能なコイルバネ181〜186の端部が結合されている。コイルバネ181〜186のバネ定数としては、パッド部材171〜176が第一給送軸121aから受ける反力の作用を効果的に吸収することができるような値が選択される。そして、互いに結合されたパッド部材171〜176及びコイルバネ181〜186は、第二給送軸121bの径方向に設けられたネジ孔内に挿入されて、当該径方向にのみ移動可能ないし伸縮可能となっている。第一給送軸121aの外径と第二給送軸121bの内径との間のギャップが大きい場合には、第二給送軸121bの径方向に設けられたネジ孔を更に内径方向に延長するようにスリーブが設けられてもよい。あるいは、当該部分においてのみ、第二給送軸121bが肉厚に形成されてもよい。
そして、前記コイルバネ181〜186の他端にネジ部材191〜196の下端が当接するように、第二給送軸121bの径方向に設けられたネジ孔内にネジ部材191〜196が螺着されている。当該ネジ部材191〜196のネジ込み量を調整することによって、パッド部材171〜176の設置位置(第一給送軸121aに対する当たり具合)を所望に調整することが可能である。
特に、本実施の形態では、第二給送軸121bのネジ孔が、外部からアクセス容易な第二給送軸121bの中間部1213bに設けられているため、ネジ部材171〜176のネジ込み量の調整作業を容易に実施することができる。
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について図5及び図6を参照しながら説明する。
駆動軸128が回転駆動されると、駆動軸128に接続された差動装置122の一対のピニオンシャフト125が回転する。この一対のピニオンシャフト125の回転は、一対のピニオンギヤ124から各サイドギヤ123a及び123bを介して各給送軸121a及び121b(第一給送軸121a及び第二給送軸121b)へと等しく伝わり、各給送軸121a及び121bが等しい角速度で回転し始める(この回転は「差動装置の公転」と呼ばれる)。これにより、各給送軸121a及び121bから、各ウェブ111a及び111bが給送され始める。給送されるウェブ111a及び111bは、駆動ローラ132とゴムローラ133とによって共通に狭持されながら搬送されていく。
ここで、ロール状の原反110aの径raとロール状の原反110bの径rbとが異なる場合を考える(相対的に大径である径raを有するロール状の原反(第一原反)を110a、相対的に小径である径rbを有するロール状の原反(第二原反)を110bとする)。この場合、各給送軸121a及び121bが等速で回転し続けるならば、径raの大きい原反110aから給送されるウェブ111aの給送速度Vaの方が、径rbの小さい原反110bから給送されるウェブ111bの給送速度Vbより速くなる。すると、ウェブ111aは給送過剰のために張力が弱くなる一方で、ウェブ111bは給送不足のため張力が強くなる。ウェブ111bに作用するこの強い張力は、ウェブ111bを引張って、給送軸121bを速く回転させようとする。給送軸121bの回転速度が少しでも速くなると、サイドギヤ123bの回転速度とサイドギヤ123aの回転速度との間に速度差が生じることとなり、一対のピニオンギヤ124がサイドギヤ123bによって回転して、サイドギヤ123aの回転速度、すなわち給送軸121aの回転速度、の方が遅くなるような作用が生じる(この回転は「差動装置の自転」と呼ばれる)。この結果、ウェブ111bの張力過剰が抑えられると共に、ウェブ111aの給送過剰が抑えられウェブ111aの必要な張力が維持されるようになる。
特に本実施の形態では、パッド部材171〜176が周方向に均等に6カ所に設けられているため、周方向にバランス良く摩擦力を増大させることができ、第一給送軸121aと第二給送軸121bとの間の回転抑制効果を十分に発揮することができる。
また、本実施の形態では、パッド部材171〜176が第一給送軸121aの外周面から受ける反力の作用を、コイルバネ181〜186がバランスよく吸収する。このため、パッド部材171〜176の破損等の発生を抑制できる。
また、本実施の形態では、パッド部材171〜176が第二給送軸121bの径方向について位置調整可能に固定される。従って、パッド部材171〜176による摩擦力増大作用の程度を調整することができ、所望の摩擦力増大効果を得ることができる。
以上のように、本実施の形態によれば、2つのロール状の原反110a及び110bがセットされる各給送軸121a及び121b(第一給送軸121a及び第二給送軸121b)の角速度差を許容することができるため、2つのロール状の原反110a及び110bの径に差が存在する場合であっても、各ウェブ111a及び111bの張力を好適に制御することができる。このため、2つのロール状の原反110a及び110bからウェブ111a及び111bを同時に給送可能な、実用に耐え得るウェブ搬送装置が実現できる。
また、本ウェブ搬送装置によれば、第一給送軸121aと第二給送軸121bとの間に、互いに対する回転を抑制するための摩擦力増大要素171〜176が設けられているため、第一給送軸121a及び第二給送軸121bの慣性モーメント差により駆動時(回転開始時)に速度差が生じて両原反110a及び110bの位相がずれてしまう、ということが抑制される。これの効果は、ウェブ継ぎ時に新しい原反をプリドライブする(新しい原反の周速とウェブ搬送速度とを一致させる)際において、顕著に有用なものである。また、第一給送軸121aと第二給送軸121bとの両方に必ずトルク負荷がかかるという状態が保証されるため、給送中のウェブ111に不慮の切断(紙切れ)が生じた場合において、当該ウェブ111を給送していた給送軸121のトルク負荷がゼロになって他方の給送軸121が危険な程に高速に回転する、というおそれが効果的に抑制される。逆に、摩擦力増大要素171〜176が設けられていなければ、給送中のウェブ111に不慮の切断(紙切れ)が生じた場合において異常を判断して駆動軸121を停止させることによって、他方の給送軸121が高速に回転することは防止できるが、給送軸121にトルク負荷がかからないため給送軸121の回転が長時間止まらないという問題が残る。本ウェブ搬送装置では、第一給送軸121aと第二給送軸121bとの間に摩擦力増大要素171〜176が設けられているため、そのような事態も抑制される。
なお、本実施の形態のウェブ搬送装置が、それぞれ約100kgの重量を有する第一原反110a及び第二原反110bからウェブを給送するように構成されている場合、第一原反110a及び第二原反110bがセットされない状態で、例えば0.5〜2.0kg程度の測定用おもりを第一給送軸121aまたは第二給送軸121bの外周面の一点に取付けても第一給送軸121aと第二給送軸121bとが互いに対して回転しない程度にネジ部材191〜196のネジ込み量を調整しておけば、外乱によって一方の給送軸が突然回転し始めるということが防止される一方で、2つのロール状の原反がセットされた状態では各給送軸の角速度差を許容することができる。