以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明の実施形態は、以下の実施形態に限定されるものではない。なお、以下に説明する実施形態では、画像読取装置の一例として、原稿を固定の読取部に搬送し、所定の速度で搬送しながら原稿の画像読み取りを行う、自動原稿送り機能(ADF)を有する画像読取装置を用いる。
以下、本実施形態による画像読取装置の概略構成について、図1および図2を参照しながら説明する。図1は、本実施形態による画像読取装置の機構部の断面を示す。図2は、本実施形態による画像読取装置の制御ブロック図である。
図1に示す画像読取装置は、原稿束がセットされる原稿セット部Aと、セットされた原稿束から1枚毎に原稿を分離して給送する分離給送部Bと、レジスト部Cと、ターン部Dと、第1読取搬送部Eと、第2読取搬送部Fと、排紙部Gと、スタック部Hとを含み構成される。
レジスト部Cは、給送された原稿を一次突当整合し、整合後、原稿を引き出してターン部Dへ搬送する。ターン部Dは、搬送された原稿をターンさせて読取面を読み取り側(下方)に向け、第1読取搬送部Eおよび第2読取搬送部Fへ搬送する。ここで、読取面は、片面原稿であれば画像面である表面であり、両面原稿であれば一方の面である表面である。第1読取搬送部Eは、コンタクトガラスの下方より原稿の表面画像を読み取り、第2読取搬送部Fは、両面原稿である場合に表面画像読み取り後の原稿の裏面画像を読み取る。排紙部Gは、表面画像、または表面画像および両面画像の読み取りが完了した原稿を外部に排出し、スタック部Hは、読み取り完了後排出された原稿を積載保持する。
画像読取装置は、さらに、一連の動作を制御するコントローラ100と、上述した搬送動作の駆動力を提供する駆動モータ102〜110とを含み構成されている。
通常の操作において、オペレータは、原稿セット部Aの可動原稿テーブル3を含む原稿テーブル2上に、画像読取対象の原稿束1を画像面が上向きの状態でセットする。オペレータは、さらに、図示しないサイドガイドによって、原稿束1の幅方向の位置決めを行う。原稿がセットされたことがセットフィラ4および原稿セットセンサ5により検知されると、その検知情報がコントローラ100からインタフェース(以下、単にI/Fともいう。)112により本体部120の本体制御部114へ送信される。
原稿テーブル2のテーブル面には、原稿長さ検知センサ30,31が設けられており、原稿長さ検知センサ30,31により、原稿搬送方向の長さの概略が判定される。原稿長さ検知センサ30,31としては、反射型センサまたはアクチェータ型センサを用いることができる。また、上記判定を可能にするため、少なくとも同一原稿サイズの縦か横かを判断可能なセンサ配置が構成される。
可動原稿テーブル3は、底板上昇モータ110により、図1に示すa,b方向に上下動可能に構成されていて、通常は、底板HPセンサ6によって検知されるホーム・ポジション(HP)に位置する。その後、原稿がセットされたことがセットフィラ4および原稿セットセンサ5によって検知されると、コントローラ100は、その検知情報を受けて、底板上昇モータ110を正転させ、原稿束1の最上面がピックアップローラ7と接触する位置まで可動原稿テーブル3を上昇させる。
ピックアップローラ7は、ピックアップモータ102によりカム機構で図1に示すc,d方向に動作するとともに、上昇する可動原稿テーブル3上の原稿上面により押され、c方向に上がり、給紙適正位置センサ8により上限が検知可能とされている。本体操作部118上の実行キーが押下されると、指令がI/F116を介して本体制御部114へ伝達し、その本体制御部114からI/F112を介してコントローラ100へ原稿給紙信号が送信される。原稿給紙信号が送信されると、ピックアップローラ7は、給紙モータ104の正転によりコロが回転駆動し、原稿テーブル2上の理想的には1枚の原稿をピックアップする。なお、回転方向は、最上位の原稿を給紙口に搬送する方向である。
給紙ベルト9は、給紙モータ104の正転により給紙方向に駆動され、分離給送部Bのリバースローラ10は、給紙モータ104の正転により給紙と逆方向に回転駆動される。これにより、最上位の原稿とその下の原稿とを分離して、最上位の原稿のみを給紙できる構成となっている。より詳細には、リバースローラ10は、給紙ベルト9と所定圧で接し、給紙ベルト9と直接接している状態または原稿1枚を介して接している状態では、給紙ベルト9の回動につられて反時計方向に連れ回りする。万が一原稿が2枚以上給紙ベルト9とリバースローラ10との間に侵入した時は、連れ回り力がトルクリミッタのトルクよりも低くなるように設定されており、リバースローラ10は、本来の駆動方向である時計方向に回転駆動して、余分な原稿を押し戻し、これにより重送が防止される。
原稿は、給紙ベルト9とリバースローラ10との作用によって1枚に分離された後、給紙ベルト9によってさらに送られ、レジスト部Cの突き当てセンサ11によってその先端が検知され、さらに進んで、停止しているプルアウトローラ12に突き当たる。原稿は、プルアウトローラ12に突き当たった後、突き当てセンサ11の検知時点から所定量定められた距離だけ送られ、結果的に、プルアウトローラ12に所定量撓みを持って押し当てられた状態で、給紙モータ104が停止される。これにより、給紙ベルト9の駆動が停止し、待機状態となる。この時、ピックアップモータ102を回転させて原稿上面から退避させ、給紙ベルト9の搬送力のみで原稿を送ることにより、原稿先端は、プルアウトローラ12の上下ローラ対のニップに進入し、先端のスキュー補正が行われる。
プルアウトローラ12は、上記スキュー補正の機能を有するとともに、分離後にスキュー補正された原稿を中間ローラ14まで搬送するためのローラであり、給紙モータ104の逆転により駆動される。また、給紙モータ104逆転時、プルアウトローラ12と中間ローラ14とが駆動されるが、ピックアップローラ7と給紙ベルト9とは、駆動されていない。
原稿幅センサ13は、奥行き方向に複数個並べられて、プルアウトローラ12により搬送された原稿の搬送方向(副走査方向)に直交する幅方向(主走査方向)のサイズを検知する。また、原稿の搬送方向の長さは、原稿の先端および後端を突き当てセンサ11で検知し、その先端検知時点から後端検知時点まで給紙モータ104の出力パルスをカウントすることによって検知される。
プルアウトローラ12および中間ローラ14の駆動により、原稿がレジスト部Cからターン部Dに搬送される際には、レジスト部Cでの搬送速度は、第1読取搬送部Eでの搬送速度よりも高速に設定される。これにより、原稿を第1読取搬送部Eへ送り込む処理時間の短縮が図られている。原稿の先端が読取入口センサ15によって検出されると、コントローラ100は、読取入口ローラ16の上下ローラ対のニップに原稿の先端が進入する前に原稿搬送速度を読取搬送速度と同速にするため、減速を開始する。同時に、コントローラ100は、読取モータ106を正転駆動して読取入口ローラ16、読取出口ローラ23およびCIS出口ローラ27を駆動する。
原稿の先端をレジストセンサ17にて検知すると、コントローラ100は、所定の搬送距離をかけて減速させ、第1読取部20による読取位置の手前で一時停止させると共に、本体制御部114へI/F112を介してレジスト停止信号を送信する。
その後、コントローラ100が本体制御部114から読取開始信号を受信すると、レジスト停止していた原稿は、第1読取部20による読取位置に先端が到達するまでに所定の搬送速度に立ち上がるように増速され、搬送される。そして、読取モータ106の出力パルスをカウントすることによって、検出された原稿の先端が第1読取部20による読取位置に到達するタイミングで、コントローラ100は、本体制御部114に対して原稿の表面の副走査方向有効画像領域を示すゲート信号の送信を開始する。ゲート信号の送信は、第1読取部20による読取位置を原稿の後端が抜けるまで送信される。なお、図2では、便宜上、図1で示す第1読取部20が図示を省略されていることに留意されたい。
片面原稿の画像読み取りを行う場合は、原稿は、第1読取搬送部Eを通過すると、第2読取搬送部Fの第2読取部25を経て排紙部Gへ搬送される。この際、コントローラ100が排紙センサ24により原稿の先端を検知すると、排紙モータ108が正転駆動して排紙ローラ28を回転させる。また、排紙センサ24による原稿の先端検知からの排紙モータ108の出力パルスをカウントすることにより、原稿の後端が排紙ローラ28の上下ローラ対のニップから抜ける直前に排紙モータ108の駆動速度を減速させ、スタック部Hを構成する排紙トレイ29上に排出される原稿が飛び出さないよう制御される。第1読取ローラ19は、第1読取部20における原稿の浮きを抑えると同時に、また第1読取部20におけるシェーディングデータを取得するための基準白部材を兼ねる。
両面原稿の画像読み取りを行う場合は、コントローラ100は、排紙センサ24にて原稿の先端を検知してから読取モータ106の出力パルスをカウントすることにより、第2読取部25による読取位置に原稿先端が到達するタイミングで、本体制御部114に対して原稿の裏面の副走査方向有効画像領域を示すゲート信号の送信を開始する。ゲート信号の送信は、第2読取部25の読取位置を原稿の後端が抜けるまで送信される。第2読取ローラ26は、第2読取部25における原稿の浮きを抑えると同時に、さらに第2読取部25におけるシェーディングデータを取得するための基準白部材を兼ねる。
以下、図3を参照しながら、図1および図2に示した第2読取部25の詳細について説明する。図3は、図1および図2に示した第2読取部25の電気回路の要部構成を示すブロック図である。なお、第1読取部20の制御系も同様の構成とすることができるので、説明は割愛する。
図3に示す第2読取部25は、LED(Light Emitting Device)、LEDアレイ、キセノンランプまたはCCFL(冷陰極蛍光ランプ)などで構成される照明手段である光源部200を備える。第2読取部25は、さらに、原稿幅方向に対応する方向、つまり主走査方向に並ぶ複数のセンサチップ202a〜202zと、各センサチップ202a〜202zに個別に接続された複数のアンプ回路と、各アンプ回路に個別に接続された複数のアナログ/デジタル・コンバータ部(以下A/D部と参照する。)204(204a以降は符号が省略されている。)とを備える。
センサチップ202は、それぞれ、等倍密着イメージセンサと称される光電変換素子と集光レンズとを備えたものである。光電変換素子は、特に限定されるものではないが、CMOSセンサを用いることができる。センサチップ202は、それぞれ複数の画素を備え、複数のセンサチップ202が配列することにより、所望の総画素数を有するイメージセンサが構成される。図3に示す実施形態において、上記複数のセンサチップ202に備えられる複数の光電変換素子が光電変換手段を構成する。
A/D部204の出力信号には、信号成分以外にも、黒レベルが含まれているため、第2読取部25は、かかる黒レベルのオフセットを除去するため、各A/D部204に個別に接続された複数の黒補正部206(206a以降は符号が省略されている。)をさらに備える。各黒補正部206からの信号は、また、光源のムラやセンサの感度不均一に起因した影響を受けているため、第2読取部25は、各黒補正部206に個別に接続された複数の白補正部208(208a以降は符号が省略されている。)をさらに備える。第2読取部25は、さらに、画像処理部210、フレームメモリ部212、出力制御回路部214およびI/F回路部216なども備える。
第2読取部25による読取位置に原稿が進入するのに先立って、コントローラ100は、光源部200に対して点灯ON信号を送る。これにより、光源部200は、点灯を開始して、その光を原稿の画像面に向けて照射する。原稿の画像面で反射された反射光は、各センサチップ202a〜202zにおいて、それぞれ、集光レンズによって光電変換素子に集光されてライン毎に光電変換され、アナログ画像信号(電気信号)として読み取られる。読み取られたアナログ画像信号は、各センサチップ202に対応する各アンプ回路により増幅された後、対応する各A/D部204によって、標本化および量子化され、それぞれデジタル画像信号(離散信号)に変換される。
デジタル画像信号は、さらに、対応する各黒補正部206でそれぞれ信号成分からオフセット成分を除去する黒オフセット補正が行われ、基準白レベルの調整を行う白補正部208を経て、画像処理部210に入力される。なお、黒補正部206および白補正部208は、本実施形態による黒オフセット補正を実現するが、詳細については後述する。
デジタル画像信号は、画像処理部210にてシェーディング補正などが施された後、フレームメモリ部212に一時記憶される。その後、フレームメモリ部212に一時記憶されたデジタル画像信号は、出力制御回路部214によって、本体制御部114が受入可能なデータ形式に変換された後、I/F回路部216を経由して、本体制御部114に出力される。コントローラ100からは、原稿の先端が第2読取部25による読取位置に到達するタイミングを知らせるためのタイミング信号、光源の点灯信号、および電源からの電力が第2読取装置に出力されるよう構成されている。
以下、図4〜図8を参照しながら、黒補正部206および白補正部208により実現される、黒オフセット補正について、詳細を説明する。図4は、黒補正部206および白補正部208の詳細な機能ブロック図である。図5(A)は、導光体と該導光体の端面に設置したLEDを含み構成される照明手段を用いた場合における、主走査方向の位置yにわたる黒レベルの経時変化を示す図である。図5(B)は、上記照明手段を用いた場合における、主走査方向にわたる白レベルの経時変化を示す図である。図5(C)は、白レベルの平均値の温度依存性を示す図である。なお、図5(C)に示す白レベルは、有効画素領域全域の平均値より算出されたものである。
図5(A)には、一例として、光源点灯前の室温における基準黒レベル(実線で示す。)と、光源連続点灯時にLEDの温度がX1℃およびX2℃となった場合における黒レベル(それぞれ破線および一点鎖線で示す。)が例示されている。図5(A)を参照すると、例示の照明手段の場合、LEDの連続点灯に起因して光源温度が上昇するにつれ、LEDに近い側の主走査方向端部における黒レベルが増大している。また、LEDに近い側端部における黒レベルの変動は、LEDから離れている中央部と比較して顕著である。この黒レベルの上昇は、光源温度の上昇に伴って主走査方向の各センサ位置における周囲温度が上昇したことに起因するものであり、各センサ位置における黒レベルの変動量の差は、イメージセンサ主走査方向の温度分布の偏りを表している。
一方で、図5(B)を参照すると、基準白レベルに関しては、光源温度の上昇に伴い光源の光量の低下が生じ、それに伴い主走査方向全域にわたり基準白レベルが低下している。図5(C)は、温度変化に対する白レベル出力特性を示すが、基準白レベルの平均値は、温度上昇に伴い単調減少し、光源温度と相関している。なお、図5(C)に示すような温度に対する白レベルの依存特性は、発光素子に熱電対を装着して、温度を記録しながら白レベルの出力値を記録し、白レベルの領域内平均値を算出することにより得ることができる。
また、上記説明では、主走査方向にわたる有効画素領域の全域にわたる平均値としているが、精度高く白レベルの温度依存特性を計測する観点から、より好ましくは、黒レベルの温度依存の変動幅が所定の基準を下回る一部の画素領域の平均値として算出することができる。図5(B)に示す例では、主走査方向の中心部の領域を好適に用いることができる。
光源温度上昇に伴い光源の光量が低下するところ、センサチップ202周辺の主要な熱源は光源であるため、光源温度の変化は、主走査方向にわたる温度分布に影響し、白レベルと、主走査方向における各位置の周辺温度とは概ね相関する。したがって、白レベルから推定可能な光源温度は、主走査方向の位置に依存して出力レベルに影響を及ぼし得る基準温度として、黒オフセット補正に利用することができる。本実施形態による黒補正部206および白補正部208は、基準白レベルから光源温度を推定し、これに基づいて黒オフセット補正の補正量にフィードバックする。
図4を参照すると、黒補正部206は、より詳細には、黒補正処理部220と、黒レベル生成部222と、メモリ228とを含む。黒レベル生成部222は、黒レベル読取部224を含んで構成され、黒レベル読取部224は、光源消灯時(センサチップ202の暗時)に対応する入力信号Dinを、黒オフセット補正の基準とするための基準黒レベルとして画素単位で読み取り、保持する。基準黒レベルの読み取りは、例えばジョブの画像読取開始前に、光源部200を消灯して行うことができる。黒補正処理部220は、原稿画像読取期間(光源点灯時)の出力に対応する信号Dinから、上記基準黒レベルを減算し、黒オフセット補正を行う。
白補正部208は、より詳細には、白補正処理部230と、白レベル生成部232と、光源温度推定部234とを含む。白補正処理部230は、黒補正部206から出力される信号に対し、基準白レベルを目標範囲に収束させるゲイン調整または光源の点灯デューティ比の調整を行うための手段である。
白レベル生成部232は、原稿画像の読み取りを行う画像読取期間以外の光源点灯期間に、白基準部材からの反射光に対応する黒補正部206からの出力信号を読み取り、画素単位で基準白レベルを生成して、保持する。基準白レベルの読み取りは、原稿搬送手段によって搬送される原稿の画像読取期間の間における空白期間に行うことができる。
光源温度推定部234は、白レベル生成部232が生成した基準白レベルから、光源部200の光源温度を推定する。この光源温度は、主走査方向の位置に依存して出力レベルに影響を及ぼすものであり、基準温度として黒補正部206の黒レベル生成部222にフィードバックされる。このとき、光源温度は、基準白レベルの主走査方向の全域または一部での平均値から推定することができる。また、光源温度推定部234は、図3に示す複数の白補正部208がそれぞれ備える必要はなく、主走査方向の全域または一部の基準白レベルの値を取得して平均値を算出して基準温度を推定する光源温度推定部234を備えればよい。
また、以下説明する実施形態では、便宜上、主走査方向にわたる有効画素領域全域の平均値から光源温度を推定するものとするが、精度高く光源温度を推定する観点からは、温度に依存した黒レベルの変動幅が所定基準を下回る一部の画素領域の平均値として算出することが好ましい。
さらに、光源温度推定部234は、画像読取装置がカラー・スキャナである場合、精度高く光源温度を推定する観点からは、赤、緑および青のセンサチップ202うちの最適な一方のみを対象としてもよい。例えば、光源温度推定部234は、赤、緑および青のセンサチップ202うちの、温度に依存した黒レベルの変動幅が最も小さな色のセンサからの出力のみを対象として、平均値を算出し、基準温度を推定することもできる。
黒レベル生成部222は、さらに、黒レベル補正部226を含み構成される。上述したメモリ228は、主走査方向にわたる温度分布を折り込んだ補正量を与える補正データを格納している。黒レベル補正部226は、フィードバックされた基準温度を用い、補正データを参照して基準黒レベルの補正量を決定し、原稿の画像読取開始前に黒レベル読取部224が生成した基準黒レベルを補正する。基準黒レベルが補正された後は、上記黒補正処理部220は、原稿画像読取期間に対応する入力信号Dinから、フィードバックにより補正された基準黒レベルを減算し、黒オフセット補正を行う。
図6は、本実施形態における、温度変化に応じて基準黒レベルを補正するための補正データを説明する図である。図6(A)は、主走査方向にわたる黒レベルの温度依存性を主走査方向の位置と対応付けて説明する図である。図6を参照して説明する補正データは、光源温度の範囲および主走査位置に対応付けて基準黒レベルの補正量を与える、ルックアップテーブルとして構成される。補正データは、予め複数の光源温度(室温を含む。)における黒レベルを計測し、各光源温度の画素毎の黒レベル変動量を把握することにより作成される。
図6(A)には、室温(実線で示す。)、X1℃(破線で示す。)およびX2℃(一点鎖線で示す。)の合計3点の光源温度における黒レベルデータが例示されている。図6(A)に示す各光源温度における黒レベルデータは、暗室などで光源を点灯してもセンサに光が入らない状態を準備し、発光素子に熱伝対を装着した状態で、発光素子を点灯させて、熱電対の出力とともにセンサチップの画素単位の出力値を計測することによって得られる。
図6(A)を参照して説明すると、各光源温度における各画素の基準黒レベルの補正量は、各光源温度(室温を除く。)時に読み取られた各画素の黒レベルから、室温時の各画素の基準黒レベルを減算することにより得られる。画素iの温度Xnに対応する補正量bi(Xn)は、下記式(1)を用いて算出することができる。
本実施形態では、事前に、複数の光源温度(Xn=X1,・・・,XN)について、画素単位で、黒レベル値を計測し、補正量bi(Xn)を計算し、永続的な記憶装置に記憶しておく。また、上述したように画像読取装置では、光量が変化してもA/D部204がオーバーフローしない範囲でダイナミックレンジが広くなるように、起動時等にゲインまたは光源点灯デューティ比が調整される。そこで、上記黒レベル値の計測時のゲインまたは点灯デューティ比の調整量を記憶しておき、光源温度推定部234は、その同一条件の調整量を設定して生成した基準白レベルから基準温度を推定することができる。
図6(B)は、画素単位で保持される各光源温度における基準黒レベルの補正量をまとめたルックアップテーブルのデータ構造を示す図である。図6(B)に示すルックアップテーブルは、センサチップ202毎に、各黒補正部206内のメモリ228に事前に格納される。
そして、ジョブ実行時には、画像読取が行われる前に、黒レベル読取部224が画素単位の基準黒レベルbi(基準)を読み取り、保持する。図6(C)は、黒レベル読取部224が取得した画素単位の基準黒レベルのデータ構造を示す。黒レベル補正部226は、光源温度推定部234から基準温度を受け取り、図6(C)に示す基準黒レベルbi(基準)と、ルックアップテーブルにより基準温度Tに対応付けられる補正量bi(Xn)とを用いて、補正後の基準黒レベルb0*(基準)を算出する。原稿画像読取期間においては、黒補正処理部220は、各有効画素iについて、上記補正後の基準黒レベルbi*(基準)を用いて、黒オフセット処理を行う。
上述したように基準黒レベルの補正量は、各温度範囲に対応付けて段階的に与えることができる。例えば、2つの温度について補正量が準備される場合、推定された基準温度をTとして、下記式(2)〜(4)を用いて、3段階で補正量を決定することができる。
さらに他の実施形態では、図7に示すような近似式を用いて補正量を求めることができる。図7は、他の実施形態における温度変化に応じて基準黒レベルを補正するための補正データを説明する図である。図7(A)は、黒レベルの光源温度依存性を説明する図である。図7を参照して説明する補正データは、主走査位置に対応付けて、光源温度に応じた基準黒レベルの補正量を与える近似式の係数データとして構成される。
図7に示す補正データは、予め複数の光源温度(室温を含む。)における黒レベルを計測し、最小二乗法等でカーブフィッティングを行うことにより、画素単位で黒レベルの温度特性を表す近似式の係数を算出することにより作成する。変数tを室温(例えば25℃)を原点とした場合の光源温度の相対値とすると、推定される基準黒レベルbi(t)は、下記式(5)で近似することができる。
各光源温度における各画素の補正量は、基準温度が与えられた段階で、上記近似式を用いて計算することができる。仮に基準黒レベルの測定時の光源温度を室温(25℃)と近似すると、画素iの基準黒レベルの補正量は、ai・t2+ci・tとなる。あるいは、各ジョブ開始前に基準黒レベルを測定した際の光源温度を計測および保持しておき、その温度をt0とすると、基準黒レベルの補正量は、bi(t)−bi(t0)となる。この実施形態でも同様に、黒レベル補正部226は、上述した基準白レベルから推定される基準温度を用いて、基準温度に対する基準黒レベルの補正値を上記近似式(5)を計算し、得られた補正量を基準黒レベルに加算することができる。
図7(B)は、画素単位で保持される補正係数をまとめたテーブルのデータ構造を示す図である。図7(B)に示すテーブルは、センサチップ202毎に、各黒補正部206内のメモリ228に事前に格納することができる。
以下、図8を参照しながら、本実施形態による黒オフセット補正が組み込まれた画像読取処理について説明する。図8は、本実施形態の画像読取装置が実行する、スキャンジョブにおける黒オフセット補正に関する処理を示すフローチャートである。なお、図8は、第2読取部25にかかる原稿裏面画像を読み取る処理を示し、第1読取部20についても同様の処理が行われる。図8に示すスキャンジョブ処理は、原稿がセットされた状態で、本体操作部118上の実行キーが押下され、スキャンジョブ実行が指令されたことに応答して、ステップS100から開始する。
ステップS101では、画像読取装置は、コントローラ100により、当該スキャンジョブにかかる画像読取を開始する前に、光源部200に消灯信号を出力させて、光源部200を消灯させる。ステップS102では、画像読取装置は、黒レベル読取部224により、暗時に対応する入力信号を基準黒レベルとして画素単位で読み取らせる。ステップS103では、画像読取装置は、コントローラ100により、当該スキャンジョブにかかる画像読取を開始するために、光源部200に点灯信号を送信させて、光源部200を点灯させる。これにより、第2読取部25の読取位置への原稿の搬送が開始され、原稿の画像読取処理が開始する。
ステップS104では、画像読取装置は、原稿が読取位置へ到達する前のタイミングで、白レベル生成部232により、白基準部材(第2読取ローラ26)からの反射光に対応する信号を読み取らせ、基準白レベルとして生成させる。ステップS105では、画像読取装置は、光源温度推定部234により、上記基準白レベルから光源温度を基準温度として推定させる。ステップS106では、画像読取装置は、黒レベル補正部226により、上記光源温度推定部234が推定した基準温度に従って、基準黒レベルに対し画素単位で補正を行わせる。
ステップS107では、画像読取装置は、原稿が第2読取部25の読取位置に到達したことに対応して、原稿の画像読取を開始する。ステップS108では、画像読取装置は、黒補正処理部220により、上記黒レベル補正部226が主走査方向の位置に応じて補正された基準黒レベルを用いて、離散信号の黒レベル・オフセットを除去する黒オフセット補正を行う。ステップS109では、画像読取装置は、当該スキャンジョブとして、次に処理すべき原稿が存在するか否かを判定する。
ステップS109で、次の原稿があると判定された場合(YES)は、ステップS104へループさせる。これにより、原稿毎に、原稿と原稿との間の空白期間内で、基準白レベルの生成(S104)、光源温度の推定(S105)、基準黒レベルの補正(S106)を行い、原稿画像読取期間に、上記補正された基準黒レベルを用いたオフセット補正(S108)を実行する。ステップS109で、次の原稿が無いと判定された場合(NO)には、ステップS110へ処理を進め、画像読取を終了させて、ステップS111で、本スキャンジョブを終了する。
以上説明した実施形態によれば、黒オフセット補正を行うための基準黒レベルは、基準白レベルから推定された基準温度を対応して、主走査方向の位置に応じて補正される。主走査方向の位置に応じた補正は、主走査方向にわたる温度分布を折り込んだ補正量を与える補正データを参照して行うことができる。このため、光源温度の上昇に伴う主走査方向にわたる温度分布の偏りに起因して生じ得る原稿画像の濃淡を抑制することが可能となる。
上述までの実施形態では、主走査方向の全域にわたり基準黒レベルの補正を行うものとして説明してきた。しかしながら、基準黒レベルの補正対象範囲は、全域に限られない。他の実施形態では、主走査方向の一部の領域のみを基準黒レベルの補正対象範囲とし、補正範囲を削減することができる。
図9(A)は、基準黒レベルの補正対象範囲を削減する実施形態を示す。図9(A)に示す例では、図5(A)で示した照明手段と同様、導光体の両側のLEDの存在に起因して、左側領域Aおよび右側領域Cでは、黒レベルの温度依存が大きくなるが、LEDから遠い中央領域Bでは、黒レベルの変動幅が小さい傾向にある。したがって、図9(A)に示す例では、基準黒レベルの補正対象範囲は、規定温度範囲内の黒レベルの変動量が基準以上となる画素領域Bのみとすることができる。このように、基準黒レベルの補正対象範囲が削減されると、それに伴いルックアップテーブルのサイズが小さくなるため、メモリ容量を削減することができる。
また、上述までの実施形態では、導光体と該導光体の端面に設置したLEDを含み構成される照明手段を用いる場合について説明してきた。しかしながら、本黒オフセット補正が適用可能な照明手段は、上述したものに限定されるものではない。
図9(B)は、異なる照明手段による他の実施形態を説明する図あり、複数のLEDを配列したLEDアレイ方式の照明手段による場合を例示する。このように複数の発光素子が含まれる場合、各発光素子に対応する主走査方向の位置で、黒レベルの温度依存の変動量にやまが見られる。この場合でも、光源温度推定部234は、例えば、基準白レベルから発光素子の平均光源温度を推定し、黒レベル補正部226は、この平均光源温度を基準温度として、主走査方向にわたる画素毎の基準黒レベルの補正量を決定することができる。
図9(C)は、さらに異なる照明手段による他の実施形態を説明する図あり、キセノンランプを用いた照明手段による場合を例示する。このように主走査方向全面を照明する発光素子を用いる場合は、主走査方向の全域で均一に黒レベルが変動する。この場合でも、基準白レベルから発光素子全体の平均光源温度を推定し、この平均光源温度を基準温度として、主走査方向にわたる画素毎の基準黒レベルの補正量を決定することができる。
また、上述までの実施形態では、基準白レベルを用いて光源温度を推定するものとして説明してきた。一方、上述したように、画像読取装置においては、図10に示すような、白レベル目標値に漸近させるようにゲイン調整またはLED点灯デューティ比の調整が行われる。そして、他の実施形態では、原稿搬送手段によって搬送される原稿の画像読取期間の間における空白期間にゲイン調整またはLED点灯デューティ比調整を実施し、このときの調整値を上記基準白レベルに代えて用いて、光源温度を推定することができる。上記調整値は、光源温度の変化による光量を反映しているため、好適に、光源温度を推定することができる。
以上説明してきたように、本実施形態によれば、光電変換手段の主走査方向の位置に依存して出力レベルに影響を及ぼす基準温度を推定し、これを用いて主走査方向の位置に応じた黒オフセット補正を行い、ひいては、光源温度の上昇に伴う主走査方向にわたる温度分布の偏りに起因して生じ得る原稿画像の濃淡を抑制することができる画像読取装置を提供することができる。
なお、上記画像読取装置としては、上述したADF機能を有する画像読取装置に限られるものではなく、特定の用途に応じて、イメージスキャナや、複合機、複写器およびファクシミリを含む画像読取機能を備える画像形成装置として構成することもできる。
これまで本発明の実施形態について説明してきたが、本発明の実施形態は上述した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。