以下、図面に基づき、本発明における内燃機関の動弁装置の好適な実施の形態を説明する。
先ず図1は、本発明の適用例としての自動二輪車の側面図である。図1を用いて、この自動二輪車100の全体構成について説明する。なお、図1を含め、以下の説明で用いる図においては、必要に応じて車両の前方を矢印Frにより、車両の後方を矢印Rrにより示し、また、車両の側方右側を矢印Rにより、車両の側方左側を矢印Lにより示す。
図1において鋼製或いはアルミニウム合金材でなるメインフレーム101の前部には、ステアリングヘッドパイプ102によって左右に回動可能に支持された左右2本のフロントフォーク103が設けられる。フロントフォーク103の上端にはハンドルバー104が固定され、ハンドルバー104の両端にグリップ105を有する。フロントフォーク103の下部には前輪106が回転可能に支持されると共に、前輪106上部を覆うようにフロントフェンダ107が固定される。前輪106は、前輪106と一体回転するブレーキディスク108を有している。
メインフレーム101はステアリングヘッドパイプ102の後部に接続され、更に後方に向けて左右一対が二又状に分岐し、それぞれが後下がりに傾斜して延出する。メインフレーム101の後部付近から、後上りに適度に傾斜してシートレール101Aが延出し、後述するシートを支持する。なお、メインフレーム101やシートレール101Aにより車体フレームが構成される。また、メインフレーム101の後部にはスイングアーム109が揺動可能に結合すると共に、両者間にリヤショックアブソーバ110が装架される。スイングアーム109の後端には後輪111が回転可能に支持される。後輪111は、後述するエンジンの動力を伝達するチェーン112が巻回されたドリブンスプロケット113を介して、回転駆動されるようになっている。後輪111の直近周囲にはその前上部付近を覆うインナフェンダ114が設けられると共に、そのインナフェンダ114の上方にはリヤフェンダ115が配置される。
メインフレーム101に搭載されたエンジンユニット116(点線部)には、図示しない燃料供給装置から混合気が供給されると共に、エンジン内での燃焼後の排気ガスがエキゾーストパイプ117を通って排気される。本実施形態において、エンジンは例えば4サイクル多気筒、典型的には4気筒エンジンであってよい。それぞれの気筒のエキゾーストパイプ117はエンジンユニット116の下側にて結合し、その後排気チャンバを経て車両後端付近で排気装置118から排気される。
また、エンジンユニット116の上方には燃料タンク119が搭載され、燃料タンク119の後方にシート120が連設される。このシート120は、ライダシート120Aとタンデムシート120Bとを含む。ライダシート120A及びタンデムシート120Bに対応して、フートレスト121及びフートレストもしくはピリオンステップ122が配置される。なお、この例では車両左側において、前後方向略中央下部に図示しないプロップスタンドを有している。
更に図1において、123はヘッドランプ、124はスピードメータ、タコメータ或いは各種インジケータランプ等を含むメータユニット、125はステー126を介してハンドルバー104に支持されるバックミラーである。
車両外装において、フェアリング127及びサイドカウル128によって車両の主に前部及び側部が覆われ、車両後部にはサイドカバーあるいはシートカウル129が被着し、これらの外装部材により所謂、流線型を有する車両の外観フォルムが形成される。
ここで、この実施形態におけるエンジンユニット116は、ピストンを往復動可能に収容するシリンダもしくはシリンダブロック116Aと、このシリンダブロック116Aの下方に配置されたクランクケース116Bとを含み、これらが一体的に結合する。また、エンジンユニット116は複数のエンジンマウントを介してメインフレーム101に懸架されることでメインフレーム101に一体的に結合支持され、それ自体でメインフレーム101の剛性部材として作用する。
なお、図1に示されるようにドーム状もしくは甲羅状を呈する燃料タンク119は、メインフレーム101の上側全体を上部から蓋うようにメインフレーム101上に搭載支持される。更に、シリンダブロック116Aのシリンダヘッドカバーの上側には、吸気装置に清浄空気を供給するためのエアクリーナ130が配置される。エアクリーナ130によって清浄化された空気は吸気装置によって吸気され、その後図1のようにインテークパイプ131内にて燃料が混合され、混合気としてエンジンユニット116に供給される。
図2〜図6は、エンジンユニット116のシリンダブロック116A、特にシリンダヘッド10の構成例を示している。シリンダブロック116Aにおいてシリンダヘッド10はシリンダ本体11の上部に固定され、その内部に動弁装置を収容する。これらの図にも示されるように、この実施形態では並列4気筒エンジンであってよく、各気筒ごとに吸気(IN)側及び排気(EX)側にそれぞれ2つのバルブ、つまり4バルブを有している。なお、この実施形態では吸気側に3次元カムを適用した例とするが、吸気側及び排気側の双方に適用することもできる。また、シリンダ本体11内ではピストンが略上下に往復動するようになっている。
シリンダヘッド10は、この例では♯1〜♯4気筒の配列方向に沿って延設され、上部に被着するシリンダヘッドカバー12により動弁装置の収容空間が密閉構造とされる。シリンダヘッド10の底部には各気筒に対応する燃焼室13が形成され、それぞれの燃焼室13にはインテークポート14とエキゾーストポート15が連通形成される。燃焼室13及びインテークポート14間は、互いに隣接配置された一対の吸気バルブ16によって開閉され、また、燃焼室13及びエキゾーストポート15間は互いに隣接配置された一対の排気バルブ17によって開閉される。これら吸気バルブ16及び排気バルブ17を所定のタイミングで駆動制御することで、各気筒のシリンダに対する吸気及び排気を適正に制御することができる。
吸気バルブ16の軸方向、即ちそのバルブステム16a上方には気筒の配列方向に沿って、カムシャフト18が複数のベアリング19を介して、シリンダヘッド10に回転自在に支持される。カムシャフト18には後述するカム20がその軸方向にスライド可能に装着されるが、カム20はカムシャフト18に対して回転方向には固定される。なお、カムシャフト18は中空構造とし、その中空内部に潤滑油路を形成してカム20等に注油することができる。各気筒に対応する計4つのカム20を有し、各カム20は3次元カムとして形成される。カム20と吸気バルブ16(のバルブステム16a)の間には、タペットガイド22によりガイドされてバルブステム16aの軸方向に往復動可能なローラ式のタペット21が配置される。
排気バルブ17の軸方向、即ちそのバルブステム17a上方には気筒の配列方向に沿って、カムシャフト23が複数のベアリング24を介して、シリンダヘッド10に回転自在に支持される。カムシャフト23にはその軸方向所定位置にカム25が装着固定される。各気筒に対応する計4つのカム25を有し、排気側については各カム25は平板状の所謂平面カムとして形成される。カム25と排気バルブ17のバルブステム17aとの間には、バルブステム17aの軸方向に往復動可能な、この例では直打式のタペット26が配置される。
吸気側のカムシャフト18及び排気側のカムシャフト23のそれぞれ一端にはスプロケット27,28が固着している(図6、図9等参照)。これらのスプロケット27,28と、ここでは図示を省略するが、クランクシャフトの一端に固着するドライブスプロケットとの間にタイミングもしくはカムチェーンが巻回装架される。なお、タイミングチェーンは、付属のタイミングチェーンガイド、チェーンテンショナ及びチェーンテンショナアジャスタ等により適正走行するようになっている。これによりクランクシャフトの回転でカムシャフト18及びカムシャフト23が同期回転する。
更に具体的に説明すると、吸気バルブ16はそのバルブステム16aがバルブガイド29によってガイドされることで、バルブステム16aの軸方向に往復動する。バルブステム16aの端部に取り付けられたスプリングリテーナ30とスプリングシート31の間にバルブスプリング32が装着され、このバルブスプリング32の弾力によりバルブステム16aは常時上方へ付勢される。また、このときバルブステム16aの上端には、後述するシムを介してタペット21が当接する。カム20がバルブスプリング32の弾力に抗してタペット21を押し下げることで、バルブステム16aが下方へ付勢され、即ち吸気バルブ16が開くようになっている。
排気バルブ17についても吸気バルブ16と同様に、バルブステム17aの端部に取り付けられたスプリングリテーナ30とスプリングシート31の間にバルブスプリング32が装着される。この場合もカム25によりタペット21を押し下げて、排気バルブ17を作動させるが、そのリフトタイミングやバルブリフト量は吸気バルブ16とは異なる設定になっている。
ここで、吸気側のカム20は前述のように「3次元カム」として構成され、また各気筒に1つのカム20が設けられる。カム20は、カムシャフト18の軸方向であるその長手方向に緩やかに傾斜するプロフィルを持つカムロブを有し、バルブリフト量を連続的に変化させる形状に成形されている。この場合、カム高さと同時にカム作用角及びリフトタイミングも変化し、即ちバルブリフト量が大きくなるのに従ってカム作用角も大きくなり、更にはバルブのリフトタイミングも変化させ得るように設定されている。このようなカム20をカムシャフト18に沿って移動させることにより、吸気バルブのリフト量、作用角及びリフトタイミングを無段階に可変制御することができる。なお、カム20の移動機構等については後述するものとする。
カム20をカムシャフト18に沿って移動させるためのカムスライド機構を有し、その駆動源として図2及び図3等に示すようにシリンダヘッドカバー12上にアクセルモータ33が搭載支持される。アクセルモータ33は、この例ではシリンダ10の右後側の角部に配置され、そのフランジ33aを介してボールスクリューハウジング34(図7をも参照)に結合する。このボールスクリューハウジング34内部には、後述するボールスクリュー等の部材が収容される。
次に図8〜図10は、シリンダヘッド10からシリンダヘッドカバー12を取り外した状態を示している。動弁装置の主要構成要素であるカム・カムシャフトユニットは、シリンダヘッド10に取付固定されたカムハウジング35内に収容されるが、この場合、排気側のカムシャフト23及びカム25は略全体がカムハウジング35内にすっぽりと収容される。一方、吸気側のカムシャフト18及びカム20は、カムハウジング35の実質的に外部に配置されるカムスライド機構と連結もしくはリンクするため、そのような連結構造を配設可能とすべく開放構造とし、即ちその一部がカムハウジング35から露呈する。ここで、図11は、本実施形態におけるカムハウジング35を示している。カムハウジング35全体としてはカムシャフト18及びカムシャフト23の上方を覆うカバー構造となっているが、吸気側についてはカムスライド機構を搭載するために必要なフレーム部35a等を除き、開放構造となっている。
前述したようにタペット21は、タペットガイド22によりガイドされる。タペットユニットについて更に説明すると、図12及び図13に示すようにその内側にベアリング37を収容する収容部を有する概略ドーナッツ状に形成されたタペットローラ36と、ベアリング37を介してタペットローラ36を支持する芯部38と、芯部38の両外側方へ延設するアーム39とを有する。タペットローラ36は、バルブスプリング32の弾力に基づきカム20のカムロブに当接する。ベアリング37はこの例では芯部38の外周に沿って配列された複数のニードルベアリングとする。アーム39はバルブステム16aの上端まで延出し、シム40を介してバルブステム16aの上端と間接的に当接する。なお、芯部38の両外側からタペットローラ36側へ延出する突片38Aが付設され、タペットローラ36組付時のベアリング37の脱落防止を図っている。
シリンダヘッド10適所にはタペットガイド22が配置固定されており、タペット21は図14ようにタペットガイド22内側に収容されるかたちで浮動保持される。タペット21は、そのタペットローラ36がカム20のカム面に押されることで、アーム39がバルブスプリング32の弾力に抗してバルブステム16aを押動させ、これにより吸気バルブ16を開かせるバルブリフタとして機能する。
図15〜図18は、動弁装置の吸気側構成例を示している。前述したようにシリンダヘッドカバー12上にアクセルモータ33が搭載され、このアクセルモータ33を駆動源としてカムスライド機構もしくはカム進退機構を作動させる。先ず、シリンダヘッドカバー12内には、カムシャフト18の上方にてその軸方向に沿って所定間隔おいて、カムフォークシャフト41が平行配置されている。このカムフォークシャフト41はカムハウジング35に設けた複数、この例では5つの軸受部35b(図8等参照)により、その軸方向にスライド可能に支持される。ボールスクリューハウジング34内部において、カムフォークシャフト41と平行且つ略同一高さ位置にボールスクリュー42(スクリューシャフト)が配置される。このボールスクリュー42はその両軸端付近にて、シリンダヘッドカバー12及びボールスクリューハウジング34の合せ面で一対のベアリング43により回転可能に支持される。ボールスクリュー42のアクセルモータ33側の端部にはギア44が取り付けられると共に、該アクセルモータ33の出力軸にはピニオンギア45が取り付けられ、これらのギア44及びピニオンギア45が噛合し、即ちアクセルモータ33の作動によりボールスクリュー42が回転駆動される。
ボールスクリュー42には、回転方向に固定されたスライドナット46(スクリューナット)が噛合する。このスライドナット46はナットフォーク47を介してカムフォークシャフト41と連結する。ナットフォーク47はボールスクリュー42の軸方向に配置されたベースプレート47aを有し、このベースプレート47aがカムフォークシャフト41と結合する。より具体的にはカムフォークシャフト41には各気筒に対応して4つのカムフォーク48が固定され、このうち♯2及び♯3気筒に対するカムフォーク48とベースプレート47aとが相互に結合される。各カムフォーク48は、カム20の端部に装着されたベアリング49を介して、そのカム20と回転自在に係合する。即ち、ベアリング49はカムシャフト18の径方向でカム20とカムフォーク48との間に配置されて、両者を回転自在に結合する。
図19及び図20に示されるように、ベアリング49は転がり軸受として内輪49a、外輪49b及び転動体49c(ボール)を含み、カムフォーク48が外輪49bの少なくとも一の側面に当接してカム20をカムシャフト18の軸方向に移動可能にしている。この場合、ベアリング49は、カム20におけるカム高さ低位側の一端部に配設される。
カムフォークシャフト41に固定されたカムフォーク48は図17等に示すように、カムシャフト18側へ延出し、ベアリング49の略半周部位に対応するように概略三日月状に形成される。図20に示されるようにベアリング49はカム20のベースサークル側の端部に嵌着するが、カムフォーク48の先端部がその外輪49bに係合する。この場合、ベアリング49の外輪49bの外周面とカムフォーク48の間にガイドリング50が介挿される。なお、ガイドリング50は例えばCリング51によって係止されるようになっている。カムフォーク48は二又状に分岐する先端部48a,48bを有し、一方の先端部48aが外輪49bの一側面と当接すると共に、他方の先端部48bがガイドリング50の他側面と当接する。つまりカムフォーク48の先端部48a,48bの間に、外輪49b及びガイドリング50が一体的に挟着保持されるようになっている。
カムスライド機構において、アクセルモータ33によりボールスクリュー42が回転すると、スライドナット46及びナットフォーク47を介してカムフォークシャフト41がその軸方向にスライドする。そして、このようにカムフォークシャフト41がスライドするのに連動もしくは同期して、各カム20が同時にカムシャフト18の軸方向に沿ってスライドする。このように回転するカム20をスライド移動させるために、ベアリング49の側面部をカムフォーク48で押すことでこれを実現する。
実車の例で説明すると、エンジン運転時、自動二輪車100のアクセルグリップを操作するとアクセルモータ33が作動し、ボールスクリュー42が回転することでスライドナット46及びナットフォーク47を介してカムフォークシャフト41がスライドする。このカムフォークシャフト41のスライドにより各カム20が同時にカムシャフト18の軸方向に沿ってスライドする。例えば、エンジン低速時にはタペット21はカム20に対して、カム高さの低い部位に当接している。なお、図16あるいは図19等ではカム高さの高い部位に当接する状態が図示されている。この状態で加速、即ちアクセルを開くと、アクセルモータ33の作動によりカムフォークシャフト41を介して、カムフォーク48の先端部48aが外輪49bの側面を付勢することで、カム20をスライド移動させる。このカム20のスライドに伴いタペット21は次第に、カム高さの高い部位に当接し、これによりカム20が持つリフト特性に従ってバルブリフト量が増大する。一方、減速時にはアクセルを戻すことで、上記とは逆の動作でバルブリフト量を減少させる。即ち、このときカムフォーク48の先端部48bがガイドリング50の側面を当接付勢し、加速時とは反対方向にカム20をスライド移動させる。
ここで、シリンダヘッド10における潤滑系について説明する。この実施形態ではカムハウジング35において複数種の潤滑用オイル通路が形成される。この場合、エンジンユニット116のクランクケース116Bに配置されたオイルポンプから吐出された潤滑オイルは、図示しないオイル通路を通ってシリンダブロック116Aを経由してシリンダヘッド10に導入され、そのオイルは更にシリンダヘッド10との合せ面から、図21〜図23に示されるようにカムハウジング35に形成されたオイル流入口52に導入される。カムハウジング35の排気側において気筒配列方向にオイル通路としてのメインギャラリ53が形成されており、オイル流入口52からメインギャラリ53へ潤滑オイルが供給される。メインギャラリ53から各気筒ごとにタペット21まわりやカムフォークシャフト41まわりの潤滑オイルが分配供給されるようになっている。
図21及び図26等に示されるようにカムハウジング35の吸気側には、各気筒ごとにタペット21を指向するように形成された4つのタペット用オイルジェット54が配設される。メインギャラリ53と各オイルジェット54はそれぞれオイル通路55により接続される。オイル通路55は図21のように排気側から吸気側へ跨るように形成され、図24のようにメインギャラリ53からシリンダヘッド10との合せ面側へと延設される。このシリンダヘッド10との合せ面付近にはタペット用オイルジェット54が設けられている。
各オイルジェット54はタペット21の左前方の斜め上方に位置し、図21の矢印Pのように潤滑オイルが噴射される。前述のようにタペット21はそのタペットローラ36の内側にベアリング37を収容し、このベアリング37の一部はタペットローラ36の側面に露出している(図12等参照)。タペットローラ36の外周は、幅方向一方側が滑らかに傾斜することで小径にされた角部36a(図12(a)及び図13(a)参照)を有し、この角部36aを狙うようにオイルジェット54から潤滑オイルが噴射されるようにしている。
オイル通路55はオイルジェット54の手前で分岐して、カムフォークシャフト41に対する軸受部35bまで延設され、即ちカムフォークシャフト41潤滑用のオイル通路56が形成される。このオイル通路56は軸受部35bの内周面にて開口し、スライド移動するカムフォークシャフト41に対して潤滑用オイルを供給する。
また、図21のように♯4気筒においてはカムハウジング35の右側端部付近にて、メインギャラリ53からカムシャフト18及びカムフォークシャフト41潤滑用のオイル通路57が延出形成される。図27のようにオイル通路57は、カムシャフト18に対するオイルサプライリング58により形成されるオイル通路59に接続され、更にこのオイル通路59は、カムハウジング35に形成されたカムフォークシャフト41潤滑用のオイル通路60に接続される。これらのオイル通路57,59,60を介してカムフォークシャフト41に潤滑オイルが供給される。なお、オイルサプライリング58は、♯4気筒の右側端部でカムシャフト18を支持するベアリング19側近に配置される。
ここで図20をも参照して、ベアリング19の内輪19aに当接するかたちでカムシャフトリング61が装着され、その外周にオイルサプライリング58が嵌着する。カムシャフトリング61の外周にはオイル溝62が形成されていて、このオイル溝62に連通するオイル穴63とカムシャフト18に形成されたオイル穴64が相互に連通する。また、オイル溝62とオイル通路59とは図27に示したように、オイルサプライリング58に形成されたオイル穴65を介して連通する。なお、図27に示したようにカムハウジング35には、オイルサプライリング58に対する回り止め部66が設けられている。
オイル通路59、オイル溝64及びオイル穴63,64を介して、オイル通路57からカムシャフト18内に形成されたオイル通路67(図19参照)に潤滑オイルが供給される。また、カムシャフト18には各カム20の内周面に開口するオイル穴68が形成されており、オイル通路67からオイル穴68を介して各カム20の内周面に潤滑オイルが供給される。
なお、カムハウジング35は、シリンダヘッド10に対する締結用のボルト69(図9等参照)により固定される。前述のオイルジェット54は、該ボルト69のボルト穴70(図21及び図25等参照)を利用してその直近に形成配置される。この場合、例えばボルト69及びこれが挿入されたボルト穴70相互間の隙間にオイル通路55を連通させ、その隙間を更にオイルジェット54と連通させることで、オイル通路55からオイルジェット54へ潤滑油を供給することができる。
上記潤滑系において気筒ごとにメインギャラリ53から分岐し、それぞれ連通する各オイルジェット54から潤滑オイルが噴射される。図28〜図30は、潤滑オイルの噴射時の様子を示している。図29等から分かるように各オイルジェット54はタペット21の左前方の斜め上方に位置し、矢印Pのように潤滑オイルが噴射される。前述のようにタペット21はそのタペットローラ36の内側にベアリング37を収容し、このベアリング37の一部はタペットローラ36の側面に露出している(図12等参照)。タペットローラ36の外周は、幅方向一方側が滑らかに傾斜することで小径にされた角部36a(図12(a)及び図13(a)参照)を有し、この角部36aを狙うようにオイルジェット54から潤滑オイルが噴射される。タペットローラ36に対してこのように直接潤滑オイルを噴射することで、タペットローラ36自体を始めその内側のベアリング37等を有効に潤滑することができる。
さて、前述のようにカムスライド機構において、ボールスクリュー42に噛合するスライドナット46を介して、ナットフォーク47のベースプレート47aを駆動し、これによりカムフォークシャフト41を付勢する。ボールスクリュー42はその両軸端付近にて、シリンダヘッドカバー12及びボールスクリューハウジング34の合せ面で一対のベアリング43により回転可能に支持される(図8〜図10等)。ここで、図31及び図32に示されるようにカム20とボールスクリュー42との間に設けられて、ボールスクリュー42の軸受であるベアリング43を軸方向に連結する梁状部71を備える。
本発明では更に、図31及び図32に示すようにカム20よりも外側にあるヘッドカバー12の一面は、梁状部71から離間する方向に膨出する膨出部72として形成される。この場合、膨出部72は、カム20の回転方向(図31、矢印I)の下流側に設けられている。なお、既に述べたようにオイルジェット54からタペットローラ36に対して直接潤滑オイルが噴射され、その潤滑オイルはタペットローラ36の周辺部材であるカム20に対しても供給される。
本実施形態においてカム20の上方に梁状部71がある構造では、カム20がそれ自身に付着した潤滑オイルを弾き飛ばす際、そのままではその潤滑オイルが十分にボールスクリュー42に付着する程度までは届かない。本発明ではシリンダヘッドカバー12の一部を外側に張り出させて膨出部72とすることで、その内側に潤滑オイルが飛び散る通路が形成される。これにより、その通路を通って飛散した潤滑オイルが、シリンダヘッドカバー12上方にあるボールスクリュー42まで届くようにしている。従って、梁状部71等を持つ構造でありながら、ボールスクリュー42まわりを有効に潤滑することができる。
上記の場合、膨出部72はカム29の回転方向下流側に設けられる。カム20の回転によって周囲の空気が巻き込まれて空気の流れが形成されるため、カム20の回転方向下流側に膨出部72を形成するのが望ましい。
また、本発明においてナットフォーク47と当接して進退動作を規制する一対のストッパが、所定間隔をおいてシリンダヘッドカバー12の上面から突設される。ナットフォーク47は、図33のように二又状に分岐するそれぞれの先端部73A,73Bを有する。一方、ボールスクリューハウジング34の内側には図34のように、先端部73Aと当接する一対のストッパ74Aと、先端部73Bと当接する一対のストッパ74Bが形成される。これらのストッパ74A,74Bは、ボールスクリューハウジング34の内面もしくは下面から下方へ突出するように形成される。
これらのストッパ74A,74Bは、ボールスクリュー42との関係では該ボールスクリュー42を上方から覆う構成であるため実質的にその上方に配置され、且つその軸受であるベアリング43(図35)よりも内側に配置される。
更に、ナットフォーク47は図33のように基部75を有する。一方、カムハウジング35には、図21に示されるように所定間隔をおいて一対のストッパ76が形成されている。基部75もまた、ナットフォーク47の進退動作の際、ストッパ76と当接することで、その進退動作を規制する。
このようにナットフォーク47が当接するストッパ74A,74Bをボールスクリューハウジング34自体に形成することで、別体の部品を設けることなくナットフォーク47の的確に位置規制をすることができる。この例ではナットフォーク47の先端部73A,73B及び基部75の3箇所をストッパ74A,74B及びストッパ76と各々当接させ、複数点でバランスよくナットフォーク47を位置規制することで、その進退動作を的確且つ円滑に行うことができる。
また、カム20の回転による空気の流れが、ストッパ74A,74Bの下面と衝突して壁面にオイルが付着することでボールスクリュー42の潤滑が可能となる。また、その空気の通路で狭くなる箇所をできるだけ上方位置、即ちボールスクリューハウジング34の天井部に位置させることで、空気を流れ易くする。この場合も別体の部品を設けることなくナットフォーク47の位置規制をすることができる。
ここで更に、図32等に示されるようにカムフォークシャフト41とボールスクリュー42は、カムシャフト18の上方に配置される。その場合特にカムシャフト18の軸線を中心にして、カムフォークシャフト41(内側)及びボールスクリュー42(外側)を実質的に内外幅方向(実車では前後方向)に振り分けて配置する。
カムシャフト18のシリンダ軸線方向に沿って真上に配置するのではなく、カムシャフト18から内側及び外側に偏倚して配置することで、カムフォークシャフト41及びボールスクリュー42の高さ位置を実質的に低く抑え、結果として装置のコンパクト化を図ることができる。
以上、本発明を種々の実施形態と共に説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。
上記実施形態において、エンジンユニット116は4気筒以外の多気筒エンジンであっても同様に適用可能である。