JP5853377B2 - 電動車両のバッテリ充電制御装置 - Google Patents
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Description
電動モータの駆動電力を蓄電しておくバッテリが過充電とならないよう、これに向かう電力を駆動機の損失制御により抑制し得るようにした電動車両のバッテリ充電制御装置に関するものである。
また、発電機回転数指令値が逆に減少した場合においても同様に、いち早く所望の回転数になるよう発電機を回生させる電力をバッテリへ充電しなければならないという状態を抑制することができる。
また、極低温ではなく常温での走行時においても、バッテリへの不必要な入出力電力を抑えることで、バッテリの内部抵抗によるエネルギーロスを軽減することができる。
極低温時などでバッテリの保護のためこれに対する入出力電力が制限されている場合、例えば上述した特許文献1,2のようなバッテリ充電制御技術を用いて、バッテリへの充放電が行われないようにするために、駆動要求に応じて発電機が実際に発電した発電電力を過不足なく駆動機で消費するような制御を行う。
駆動要求に応じてバッテリへの充放電がバッテリの入出力可能電力以内となるよう、発電機が駆動要求を補う態様で発電を行うと同時に、実際に発電された発電電力をバッテリ入出力可能電力以内で過不足無く電動モータで消費するような制御を実施する。
以下、上記した2種類の制御態様をまとめて、本明細書では「ダイレクト配電制御」と称する。
そして、発電電力指令値を実現するように発電機が制御されたことで発生した実発電電力と、バッテリ入出力可能電力範囲内のバッテリ電力とを電動モータの駆動電力として消費するための駆動トルクを算出し、これを電動モータの駆動制御に資する。
このとき、ダイレクト配電制御を継続するには、電動モータが回生する電力の内、バッテリ入出力可能電力を超える分を発電機で放電する必要があるため、発電機に対して発電指令(正の発電電力指令値)から放電指令(負の発電電力指令値)に切り替えるのが一般的である。
その結果、発電機の発電電力と電動モータの回生電力との合計電力が、バッテリ入出力電力制限中にもかかわらず、バッテリを過充電させてしまい、バッテリの劣化や性能低下を生じさせ、最悪の場合はバッテリを故障させてしまうことがある。
特に特許文献1のバッテリ充電制御では、エンジンの燃料噴射または燃料カットの応答遅れに合わせて、発電機の応答を遅らせてしまうことになるため、発電指令から放電指令に変化したとしても、発電状態が継続されてしまい、上記の問題が特に顕著になってしまうという懸念がある。
また特許文献2のバッテリ充電制御では、駆動出力を実発電電力で制限してしまうことから、電動モータとしては回生トルクを掛けたい場合であっても、発電電力が残ってしまっていると力行せざるを得ず、本来「ずり下がり」を防止するためのトルクを施すことができない、という懸念がある。
つまり電気自動車においては、走行開始直後の未だバッテリが満充電状態であるなどのため充電を制限されていて、車両が登坂路で「ずり下がり」を生ずる場合や、電動モータが車輪により逆駆動されて回生電力を発生する場合に上記の懸念が発生する。
先ず前提となる電動車両を説明するに、これは、
バッテリに接続された電動式の駆動機により車輪を駆動して走行可能で、該駆動機、および/または、エンジン駆動される発電機からの発電電力によって上記バッテリへの充電が可能で、発電機からの電力を上記駆動機で消費するダイレクト配電を行うものである。
バッテリ入力可能電力制限状態検知手段は、バッテリの入力可能電力が制限状態であるのを検知するものである。
電力生成領域運転検知手段は、上記駆動機および発電機による上記発電電力が駆動機自身の損失で消費され切れずに上記バッテリへ向かう電力生成領域の運転であるのを、上記駆動機の回転数によって決まる該駆動機の駆動損失、および該駆動機回転数のもとで運転者の要求駆動力を実現するのに必要な該駆動機の要求駆動軸出力から求めた、運転者の要求駆動力を発生させるための要求駆動電力と、上記エンジン駆動される発電機の実発電電力との極性が異なる時をもって電力生成領域の運転であると判定して検知するものである。
そして駆動機損失増大手段は、上記両手段の検知結果に基づき、バッテリの入力可能電力が前記制限状態であり、且つ、上記電力生成領域での運転であるとき、上記駆動機の損失を増大させるものである。
バッテリに向かおうとしている電力を、上記のように増大させた駆動機の損失によって消費することができる。
これにより、入力可能電力制限状態のバッテリへ電力が向かうのを防止、または抑制し得て、バッテリの過充電を防止、または抑制することができ、バッテリの過充電による劣化、性能低下、および故障を回避することができる。
また上記電力生成領域の運転を検出するに際し、運転者の要求駆動力を発生させるための要求駆動電力と、エンジン駆動される発電機の実発電電力との極性が異なるダイレクト配電不能状態か否かにより、当該電力生成領域の運転であるか否かを判定して電力生成領域の運転を検出するため、簡単なダイレクト配電不能判定によって電力生成領域の運転を検出することができる。
<第1実施例の構成>
図1は、本発明の第1実施例になるバッテリ充電制御装置を内包するハイブリッド車両のパワートレーンを、その制御系とともに示す。
図1に示すハイブリッド車両のパワートレーンは、エンジン1と、発電モータ2および発電インバータ3より成る発電機4と、駆動インバータ5および駆動モータ6より成る駆動機7と、駆動モータ6に左右駆動車輪10L,10Rを駆動結合するための減速機8とで構成し、本実施例におけるハイブリッド車両は、車輪10L,10Rを以下のように駆動されるシリーズ式ハイブリッド車両とする。
発電インバータ3から制御下に出力された直流電力は、駆動インバータ5により直流→交流変換すると共に該駆動インバータ5による制御下で駆動モータ6に向け出力し、該モータ6の駆動に供する。
そして、車輪10L,10Rの駆動(車両の走行)中に消費し切れなかった発電インバータ3からの余剰制電力はバッテリ9へ充電しておき、発電インバータ3からの直流電力だけでは車輪10L,10Rの駆動(車両の走行)に必要な電力を賄い得ず、電力不足になる走行時はバッテリ9からの電力をも消費しつつ、要求駆動トルクで車輪10L,10Rを駆動して車両を走行させる。
このときのエンジン始動は、発電モータ2が電動機として機能し、エンジン1をクランキングさせるものとする。
更に、車両の減速を含むコースティング(惰性)走行時は、車輪10L,10Rからの回転力によって駆動モータ6を逆駆動することにより車輪10L,10Rを回生制動し、このとき駆動モータ6が発電した電力を駆動インバータ5により交流から直流に変換してバッテリ9へ充電し、エネルギーの回収によってエネルギー効率を向上させることができる。
そして、これらコントローラ11〜14は、共通なシステムコントローラ15によって統合制御されるものとする。
発電機コントローラ12は、システムコントローラ15からの発電機回転数指令値NG*を実現するために、発電機4の回転数や電圧などの状態に応じて、発電インバータ3をスイッチング制御するものである。
バッテリコントローラ13からのバッテリ蓄電状態SOC、入力可能電力Pin、出力可能電力Poutや、
発電機コントローラ12からの発電機回転数指令値NG*や発電電力などに基づき、
エンジンコントローラ11へのエンジントルク指令値TE*を演算してエンジン1の制御に供し、また、
発電機コントローラ12への発電機回転数指令値NG*を演算して発電機4の制御に供し、更に、
駆動機コントローラ14への駆動トルク指令値PD*および目標損失指令値PDloss* を演算して駆動機7の制御に供するものである。
図1におけるシステムコントローラ15は、図2〜8につき以下に説明するようにして本発明が狙いとするバッテリ充電制御を遂行し、この制御結果に応答して、図1における駆動機コントローラ14は、図9〜11につき後述するごとく本発明が狙いとするバッテリ充電制御を完遂させる。
なお以下では、バッテリ9の温度が低下していて、バッテリ9への充放電が制限されている(バッテリ入力可能電力(Pin)=小、バッテリ出力可能電力(Pout)=小である)のを図示せざるバッテリ入力可能電力制限状態検知手段が検知し、運転者の駆動要求に応じた電力を発電機4で発電しつつ、実発電電力を駆動機7で消費する通常のダイレクト配電制御を行っている場合につき説明を展開することとする。
かかる要求駆動電力PD0の演算に当たっては、図3の機能別ブロック線図により示すごとく、先ず要求駆動トルク演算部21において、予め求めておいた図4に例示する要求駆動トルクマップを基に、アクセル開度APOおよび駆動モータ6の回転数Nmから要求駆動トルクTD0を求める。
次に乗算器22において、上記の要求駆動トルクTD0に駆動モータ回転数Nmを乗じて、駆動モータ回転数Nmのもと要求駆動トルクTD0を出力させるのに必要な要求駆動軸出力を求める。
加算器24においては、乗算器22で求めた要求駆動軸出力に、演算部23で求めた駆動機7の駆動損失を加算して、運転者が必要としている要求駆動トルクTD0を発生させるのに必要な駆動機7の要求駆動電力PD0を求める。
なお要求発電電力PG* が0kW以下である場合は、発電機4を力行動作させて電力を放電することになるため、エンジン1の燃料噴射をカットした上、要求発電(放電)電力PG*に対応するフリクショントルクを図5より算出し、このフリクショントルクをエンジントルク指令値TE* に設定するのは言うまでもない。
これら駆動モータトルク指令値TD* および駆動機目標損失指令値PDloss* はそれぞれ、図1に示すごとく駆動機コントローラ14に指令して、駆動機7の制御に供する。
先ずステップS601において、図2のステップS201で求めた要求駆動電力PD0と、ステップS204で求めた駆動電力指令値PD*(消費要求電力:実発電電力)との極性(符号)が同じか否かをチェックする。
要求駆動電力PD0および駆動電力指令値PD*(消費要求電力:実発電電力)の極性が同じでなければ、車両が走行レンジの走行方向とは逆方向への前記した「ずり下がり」を生じて、駆動機7が回生により発電を行うとき、発電機4の放電が指令されているのに、エンジン1が応答遅れにより発電機4を過渡的に発電状態に維持するため、駆動電力指令値PD*(消費要求電力:実発電電力)を駆動機7で消費し切る通常のダイレクト配電制御を行い得ないことを意味する。
従ってステップS601は、本発明における電力生成領域運転検知手段に相当する。
ステップS602において、駆動電力指令値PD*を駆動機7で確実に消費するよう、図7のブロック線図で示す要領で駆動モータトルク指令値TD* を演算する。
除算機33において、この差値(PD*−駆動損失)を駆動モータ回転数Nm(実際は単位を合わせるため、単位[rad/s]を持つ駆動モータ回転速度)で割ることにより、駆動モータトルク指令値TD*を算出する。
そして、上記の通り駆動電力指令値PD*を余すことなく駆動機7で完全に消費し得ることから、駆動機7が追加で消費するべき電力は残存せず、従って、駆動機目標損失指令値PDloss* には「0kW」を設定し、この駆動機目標損失指令値PDloss* =「0kW」を駆動機コントローラ14へ送信して駆動機7の損失制御を事実上は行わない。
ステップS603において、駆動機7で追加的に消費する電力を駆動機目標損失指令値PDloss* として設定することにより、余剰電力が充放電制限状態のバッテリ9に出入りすることのないようにし、そのための駆動モータトルク指令値TD*および駆動機目標損失指令値PDloss* を算出する。
従ってステップS603は、本発明における駆動機損失増大手段に相当する。
図8のステップS801においては、駆動モータトルク指令値TD*に、運転者が望む車両加速を実現すべく要求駆動トルクTD0を設定する。
TD*=TD0 ・・・(1)
このとき、駆動モータトルク指令値TD*の値を必ずしも要求駆動トルクTD0となるよう一定にする必要はなく、車両状態に応じて所望のトルクに変更してもよい。
例えば、要求駆動トルクTD0が車両状態として好ましい状態にない場合は、車両状態に応じて所望のトルク指令値に変更してもよい。
PDloss* =PD* − PD0 ・・・(2)
の演算により求め、この駆動機目標損失指令値PDloss* を駆動機コントローラ14へ送信して駆動機7の損失制御に供する。
そこで、先ず駆動機目標損失指令値PDloss* を消費させるのに必要なPWMキャリア周波数fcを算出する。
ただしPWMのキャリア周波数は、使用する駆動機コントローラ14の演算スピードによる制約から上限値が決められているため、PWMキャリア周波数を上昇させることで消費できる損失にも上限が存在する。
このため、PWMキャリア周波数の上昇によって消費しきれない電力については、駆動モータ6のトルクを駆動モータトルク指令値TD* にしつつ、モータ印加電流を増加させることで、駆動機7を成すモータ6およびインバータ5の抵抗成分で発生する損失により当該電力を消費させる。
以後、かかる着想に基づき駆動機目標損失指令値PDloss* を消費しつつ、駆動モータトルク指令値TD* を実現するよう、駆動機7を電流制御およびスイッチング制御を実施する。
PDloss*>0kWであれば、駆動機7の損失を追加で増加させる必要があるから、制御をステップS902以降に進めて損失増加処理を遂行し、PDloss*≦0kWであれば、駆動機7が追加で損失を増加させる必要がないから、制御をステップS906へ進めて通常の電流制御を実施する。
ステップS903においては、PWMキャリア周波数(fc)に次式に示すごとく最大値(fc_MAX)を設定すると共に、電流増加により消費させるべき目標電流損失(PDloss_ia*)を、駆動機目標損失指令値(PDloss*)および最大SW損失(PDL_SW_MAX)に基づく次式の演算により算出する。
fc = fc_MAX ・・・(3)-1
PDloss_ia* = PDloss* − PDL_SW_MAX ・・・(3)-2
Ia*={(PDloss_ia*)/Ra}1/2 ・・・(4)
この際、駆動モータトルク指令値(TD*)が一定となるよう損失増加用電流指令値(Ia*)を増加させて損失増加用dq軸電流目標値(id*、iq*)を求めることにより、駆動機7の目標電流損失(PDloss_ia*)を実現するのがよい。
これにより実現される目標電流損失(PDloss_ia*)と、PWMキャリア周波数(fc)に最大値(fc_MAX)を設定した(ステップS903)ことにより得られる損失との和値である駆動機7の損失増大(PDloss*)により、駆動機7の特性線図である図12に示すごとく電力消費領域(力行領域)および電力生成領域(回生領域)間の境界線が波線位置から実線位置へと移動して、電力消費領域(力行領域)が拡大されると同時に電力生成領域(回生領域)が縮小される。
よって、駆動機7の動作点が図12の例えばA点である場合につき説明すると、駆動機7の損失増大(PDloss*)により、駆動機7の動作点Aを電力生成領域(回生領域)の動作点から電力消費領域(力行領域)の動作点となし得る。
例えば、駆動機7の特性線図である図13において駆動機7の動作点がB,Cのような電力生成領域(回生領域)であり、バッテリ9の過充電に関する問題が起きる場合、駆動モータトルク指令値(TD*)を電力消費領域(力行領域)での運転となるようB´,C´点相当値へと変化させつつ、図11上において損失増加用電流指令値(Ia*)をも増加させることにより損失増加用dq軸電流目標値(id*、iq*)を求めて、駆動機7の目標電流損失(PDloss_ia*)を実現するようにしてもよい。
つまり、図10に例示した駆動機7のPWMキャリア周波数fcに対する損失の変化特性を基に、駆動機目標損失指令値(PDloss*)から、この駆動機目標損失指令値(PDloss*)を実現するのに必要なPWMキャリア周波数(fc_1)を、例えば図10に示すように算出して、PWMキャリア周波数(fc)にこの(fc_1)をセットする。
このdq軸電圧指令値(vd*、vq*)を算出するに当たっては、計測した三相電流(iu、iv、iw:ただし、iw=-iu-ivとして求めても良い)と、モータ電気角θとによりdq軸電流値(id、iq)を算出し、これらdq軸電流値(id、iq)とdq軸電流目標値(id*、iq*)との偏差から定常偏差がなくなるようなdq軸電圧指令値(vd*、vq*)を求める。
なお、この部分に非干渉制御を加えてもよい。
つまり、先ずdq軸電圧指令値(vd*、vq*)とモータ電気角θとから三相電圧指令値(vu*、vv*、vw*)を求める。
次に、三相電圧指令値(vu*、vv*、vw*) と、駆動インバータ5のDC側電圧(またはバッテリ電圧)VdcからPWM信号(on duty)(tu[%]、tv[%]、tw[%])を算出し、このPWM信号によって、インバータ5のスイッチング素子を、ステップS903、またはステップS906、或いはステップS907で設定したPWMキャリア周波数(fc)でスイッチング制御する。
上記した第1実施例によるバッテリ充電制御の効果を、図14,15に基づき以下に説明する。
図14,15は何れも、極低温のためバッテリ9が電力の入出力(充放電)を略0に制限されたダイレクト配電制御による登坂中、瞬時t1にアクセルペダルの踏み込みにより要求駆動力TD0および駆動モータトルク指令値TD*が図示のごとくに増大して車速VSPを上昇させていたが、瞬時t2より登坂路勾配αが急になったことで車速VSPが図示のごとくに低下し、瞬時t3より遂には車両が車速VSP<0により示すごとく「ずり下がり」を生じた場合の動作タイムチャートである。
図14に示すごとく、「ずり下がり」開始瞬時t3に要求発電電力PG*は直ちに充電指令から放電指令に切り替わるものの、エンジン1は自身の応答遅れのため、かかる指令の切り替えに即座に応答し得ず(即座に放電を行う状態に移行し得ず)、この応答遅れ時間中、図14の実発電電力波形(ハッチング)により示すとおり、発電機4を発電状態のままにしている。
その結果、駆動機7で消費し切れなかった発電電力と、「ずり下がり」に伴う駆動機7の回生電力との合計電力(図14にハッチングを付して示した電力分)が充放電制限状態のバッテリ9へ入力されることになり、過充電によってバッテリ9が劣化したり、故障するという問題を生ずる。
つまり、「ずり下がり」開始瞬時t3における要求発電電力PG*の充電指令から放電指令への切り替わりに対するエンジン1の応答遅れに起因して、図15の実発電電力波形(ハッチング)により示すとおり、発電機4が発電状態のままにされていても、
駆動機7の損失が図15にハッチングを付して示すように駆動機目標損失指令値PDloss* だけ増大されることから、駆動機7で消費し切れなかった発電電力と、「ずり下がり」に伴う駆動機7の回生電力との合計電力(図14にハッチングを付して示した電力分)を、駆動機7の損失増大(PDloss*)により駆動機7内で消費し切ることができる。
これにより、駆動機7で消費し切れなかった発電電力と、「ずり下がり」に伴う駆動機7の回生電力との合計電力(図14にハッチングを付して示した電力分)を、駆動機7内で消費し切ることができるようになる。
ハイブリッド車両の「ダイレクト配電」時における電力生成領域の運転を確実に検出し得て、充放電を制限されたバッテリ9への入出力電力を0kWに維持することにより、バッテリ9の過充電による劣化や故障を防止するという上記の効果を確実に達成することができる。
駆動インバータ5のPWM制御に用いるPWMキャリア周波数fcを増加させることにより(図9のステップS907)、駆動機7の上記損失増大を実現するため、
駆動機目標損失指令値(PDloss*)を確実に実現しつつ(上記した電力消費領域の拡大によるバッテリ9の過充電防止を確実に実現しつつ)、駆動モータトルク指令値(TD*)に対応する所望のトルクで車両を駆動することができる。
駆動モータトルク指令値(TD*)が一定となるよう損失増加用電流指令値(Ia*)を増加させて損失増加用dq軸電流目標値(id*、iq*)を求めることにより(ステップS905)、駆動機7の目標電流損失(PDloss_ia*)を実現して、駆動機目標損失指令値PDloss* を達成するため、
損失増加用電流指令値(Ia*)の増加が駆動機7の損失を増加させ、実質的に図12につき前述した電力消費領域の拡大が行われ、バッテリ9の過充電防止を確実に実現することができる。
しかも、駆動モータトルク指令値(TD*)が一定であることにより、この(TD*)に対応する所望のトルクで車両を駆動することができる。
図13につき前述した通り、駆動モータトルク指令値(TD*)を電力消費領域(力行領域)での運転となるよう変化させつつ、損失増加用電流指令値(Ia*)を増加させて損失増加用dq軸電流目標値(id*、iq*)を求めることにより(ステップS905)、駆動機7の目標電流損失(PDloss_ia*)を実現して、駆動機目標損失指令値PDloss* を達成するため、
損失増加用電流指令値(Ia*)の増加が駆動機7の損失を増加させ、実質的に図12につき前述した電力消費領域の拡大が行われ、バッテリ9の過充電防止を確実に実現することができる。
この領域では、所望のトルクを得るために電動機に発電となる方向へ電流を施すことになるが、その間電動機内部での損失によりエネルギーが失われることにより電力消費領域(力行領域)が発生する。
ここで、「ずり下がり」を防止する方向に制御するのであれば、トルクを大きくする方向、かつ、車両を逆走させないためにトルクの符号が逆転することのないように運転する必要がある。
図16は、本発明の第2実施例になるバッテリ充電制御装置を内包する電気自動車のパワートレーンを、その制御系とともに示す。
図16に示す電気自動車のパワートレーンおよびその制御系は、図1のパワートレーンおよびその制御系からエンジン1と、発電モータ2および発電インバータ3より成る発電機4と、エンジンコントローラ11と、発電機コントローラ12とを除去したもので、
駆動インバータ5および駆動モータ6より成る駆動機7と、駆動モータ6に左右駆動車輪10L,10Rを駆動結合するための減速機8と、バッテリ9と、バッテリコントローラ13と、駆動機コントローラ14と、システムコントローラ15とで構成する。
駆動インバータ5は、バッテリ9から供給される直流の電力を、交流電力に変換すると共に制御下に駆動モータ6へ向かわせて、駆動モータ6を駆動制御する。
バッテリコントローラ13からのバッテリ蓄電状態SOC、入力可能電力Pin、出力可能電力Poutなどに基づき、
駆動機コントローラ14への駆動トルク指令値PD*および目標損失指令値PDloss* を演算して駆動機7の制御に供するものである。
図16におけるシステムコントローラ15は、図17,18につき以下に説明するようにして本発明が狙いとするバッテリ充電制御を遂行する。
なお以下では、坂道途中の充電スタンドでバッテリ9を満充電にした後、登坂路走行を再開したが、つまりバッテリ蓄電状態SOCがSOC=100%で、バッテリ9への充電が制限されている(バッテリ入力可能電力Pin=小または0kW)状態で登坂路走行を再開したが、登坂路勾配αの増大で車両が停止し、「ずり下がり」を生じた場合につき、バッテリ充電制御の説明を展開することとする。
かかる要求駆動電力PD0の演算に当たっては、図3の機能別ブロック線図に基づき前述したと同様、先ず要求駆動トルク演算部21において、図4に例示する予定の要求駆動トルクマップを基に、アクセル開度APOおよび駆動モータ6の回転数Nmから、運転者がアクセル操作により必要としている要求駆動トルクTD0を求める。
次に乗算器22において、上記の要求駆動トルクTD0に駆動モータ回転数Nmを乗じて、駆動モータ回転数Nmのもと要求駆動トルクTD0を出力させるのに必要な要求駆動軸出力を求める。
その後、加算器24において、乗算器22からの要求駆動軸出力に、演算部23で求めた駆動機7の駆動損失を加算して、運転者が必要としている要求駆動トルクTD0を発生させるのに必要な駆動機7の要求駆動電力PD0を求める。
このとき、駆動モータトルク指令値(TD*)は必ずしも要求駆動トルク(TD0)となるよう一定にする必要はなく、車両状態に応じて所望のトルク値に変更しても良い。
例えば、要求駆動トルク(TD0)が車両状態として好ましくないトルク値である場合は、車両状態に応じて駆動モータトルク指令値(TD*)を要求駆動トルク(TD0)とは異なる所望のトルク指令値にしてもよい。
この演算に当たっては、図18に示す制御プログラムを実行して当該演算を行う。
先ずステップS2201において、バッテリ入力可能電力(Pin)が0kW、または非常に限られた所定値以内であるかどうかを判定する。
従ってステップS2201は、本発明におけるバッテリ入力可能電力制限状態検知手段に相当する。
ステップS2201でバッテリ入力可能電力制限状態でないと判定する場合、バッテリ9への電力の入力を回避する必要がないため、駆動機7の回生電力を駆動機自身の損失として消費する必要がなく、制御をステップS2204に進める。
ステップS2202においてPD0<0kW以下の電力生成領域(回生領域)であると判定する場合は、ステップS2201でバッテリ9が充電を制限されていると判定した後であることから、ステップS2203において、バッテリ9への電力の入力を回避すべく、駆動機目標損失指令値(PDloss*)に要求駆動電力(PD0)の逆極性値(-PD0)を設定する。
PDloss* =(-PD0) ・・・(5)
従ってステップS2203は、本発明における駆動機損失増大手段に相当する。
バッテリ9が充電を制限されていないか、若しくは、バッテリ9に向かう電力が発生していないことから、バッテリ9への電力の入力を回避する駆動機7の損失増大が不要であるため、制御をステップS2204に進めて、駆動機目標損失指令値(PDloss*)に0kWと設定する。
上記した第2実施例によるバッテリ充電制御の効果を、図19,20に基づき以下に説明する。
図19,20は何れも、坂道途中の充電スタンドでバッテリ9を満充電(バッテリ蓄電状態SOCがSOC=100%で、バッテリ充電制限状態)にし、登坂路走行を再開した直後の瞬時t1に、アクセルペダルの踏み込みにより要求駆動力TD0が図示のごとくに増大して車速VSPを上昇させていたが、瞬時t2より登坂路勾配αが急になったことで車速VSPが図示のごとくに低下し、瞬時t3より遂には車両が車速VSP<0により示すごとく「ずり下がり」を生じた場合の動作タイムチャートである。
図19の「ずり下がり」開始瞬時t3より、駆動機7が車輪10L,10Rにより進行方向(選択レンジ)とは逆の方向へ回転されるため、駆動機軸出力は図示のごとく負値となり、駆動機7が回生電力を発生する。
しかし、バッテリ9は前記した通り満充電状態で、充電を制限されており、それにもかかわらず駆動機7からの回生電力がバッテリ9に向かって、これを充電するのでは、バッテリ9が過充電によって劣化したり、故障するという問題を生ずる。
つまり、駆動機7の回生電力が駆動機自身の固有損失を上回るようになる瞬時t4からは、図18のステップS2202が制御を、ステップS2204ではなくステップS2203へ進めて、駆動機目標損失指令値(PDloss*)に要求駆動電力(PD0)の逆極性値(-PD0)を設定し、駆動機7の損失を図20の最下段に示すとおり当該(PDloss*)=(-PD0)だけ嵩上げする。
そのため第2実施例においても、第1実施例におけると同様に、バッテリ9の過充電を回避し得て、過充電によるバッテリ9の劣化や、故障を防止することができる。
なお第1実施例では、ハイブリッド車両がシリーズ式ハイブリッド車両である場合について説明を展開したが、
エンジンでも車輪を駆動するようにした、所謂パラレル式ハイブリッド車両に対しても本発明の上記した着想は適用可能であり、この場合も前記したと同様な作用効果を奏することができる。
2 発電モータ
3 発電インバータ
4 発電機
5 駆動インバータ
6 駆動モータ
7 駆動機
8 減速機
9 バッテリ
10L,10R 駆動車輪
11 エンジンコントローラ
12 発電機コントローラ
13 バッテリコントローラ
14 駆動機コントローラ
15 システムコントローラ
21 要求駆動トルク演算部
22 乗算器
23 駆動モータ損失演算部
24 加算器
31 駆動モータ損失演算部
32 減算器
33 除算器
Claims (7)
- バッテリに接続された電動式の駆動機により車輪を駆動して走行可能で、該駆動機、および/または、エンジン駆動される発電機からの発電電力によって前記バッテリへの充電が可能で、発電機からの電力を前記駆動機で消費するダイレクト配電を行う電動車両において、
前記バッテリの入力可能電力が制限状態であるのを検知するバッテリ入力可能電力制限状態検知手段と、
前記駆動機および発電機による前記発電電力が駆動機自身の損失で消費され切れずに前記バッテリへ向かう電力生成領域の運転であるのを、前記駆動機の回転数によって決まる該駆動機の駆動損失、および該駆動機回転数のもとで運転者の要求駆動力を実現するのに必要な該駆動機の要求駆動軸出力から求めた、運転者の要求駆動力を発生させるための要求駆動電力と、前記エンジン駆動される発電機の実発電電力との極性が異なる時をもって電力生成領域の運転であると判定して検知する電力生成領域運転検知手段と、
これら手段の検知結果に基づき、バッテリの入力可能電力が前記制限状態であり、且つ、前記電力生成領域での運転であるとき、前記駆動機の損失を増大させる駆動機損失増大手段と
を具備して成ることを特徴とする電動車両のバッテリ充電制御装置。 - 請求項1に記載の電動車両のバッテリ充電制御装置において、
前記電力生成領域運転検知手段は、運転者が指令している電動車両の走行方向と逆方向への車両移動を示す信号の発生をもって電力生成領域の運転であると判定するものであることを特徴とする電動車両のバッテリ充電制御装置。 - 請求項1または2に記載の電動車両のバッテリ充電制御装置において、
前記駆動機損失増大手段は、前記駆動機および/または発電機の発電電力が前記制限状態を超えて前記バッテリへ向かうことのないよう前記駆動機の損失を増大させるものであることを特徴とする電動車両のバッテリ充電制御装置。 - 前記駆動機が、インバータのPWM制御により制御されるものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電動車両のバッテリ充電制御装置において、
前記駆動機損失増大手段は、前記PWM制御のPWMキャリア周波数を増加させることにより、前記駆動機の損失増大を実現するものであることを特徴とする電動車両のバッテリ充電制御装置。 - 請求項1〜4のいずれか1項に記載の電動車両のバッテリ充電制御装置において、
前記駆動機損失増大手段は、前記駆動機のトルク指令値が一定となるよう電流指令値を増加させることにより、前記駆動機の損失増大を実現するものであることを特徴とする電動車両のバッテリ充電制御装置。 - 請求項1〜4のいずれか1項に記載の電動車両のバッテリ充電制御装置において、
前記駆動機損失増大手段は、前記駆動機のトルク指令値を電力消費領域での運転となるよう変化させつつ電流指令値を増加させることにより、前記駆動機の損失増大を実現するものであることを特徴とする電動車両のバッテリ充電制御装置。 - 請求項6に記載の電動車両のバッテリ充電制御装置において、
前記駆動機損失増大手段は、前記駆動機のトルク指令値を電力消費領域での運転となるよう変化させるに際し、同符号のトルク指令値が複数存在する場合は、絶対値の大きい方のトルク指令値を選択して使用するものであることを特徴とする電動車両のバッテリ充電制御装置。
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