JP5849745B2 - 有機系炭素膜の製造方法及び積層体の製造方法 - Google Patents

有機系炭素膜の製造方法及び積層体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は有機系炭素膜に関するものであり、詳しくは湿式製膜法により形成されたフラーレン誘導体の膜を加熱処理して得られる高硬度有機系炭素膜に関する。
本発明はまた、この有機系炭素膜の製造方法と、この有機系炭素膜を含む積層体に関する。
本発明において、「有機系炭素膜」とは、炭素のみからなる膜ではなく、強熱減量試験(Ignition Loss Test)で質量の減少を示す、主として有機物よりなる強熱減量成分を含む炭素膜をさす。
炭素系材料は、ダイヤモンドや黒鉛(グラファイト)等のバルク材料として古くから利用されてきたが、近年コーティング材料や機能性薄膜材料としても注目を集めつつある。中でも、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)に代表されるアモルファス炭素膜は、例えば後述の本発明に係る鉛筆硬度法で評価した硬度が6H程度と高硬度で摩擦係数が低く、平滑性、耐摩耗性、絶縁性、耐薬品性等に優れるため、アルミニウム加工用金型、工具等の保護膜、光学素子の保護膜、磁気ヘッドの摺動面へのコーティング等に用いられている。
アモルファス炭素膜の形成には、高周波プラズマ法やプラズマ化学気相成長法などの気相成長法が主に用いられている(例えば特許文献1)。しかし、これらの気相成長法はいずれも大型の真空機器を必要とするため、製膜コストが高くなるとともに、大面積膜の製膜には適していない。
また、近年注目を集める炭素系材料にフラーレン(fullerene)がある。フラーレンは、球状の閉殻構造を有する炭素分子の総称であり、紫外線吸収特性、光導電性、光増感特性等の、分子構造に由来するユニークな性質を有しているため、有機半導体等の電子材料、機能性光学材料、従来のアモルファス系炭素薄膜に代わるコーティング材料等への幅広い応用が期待されており、基材上へのフラーレン薄膜の形成に関する検討が近年盛んに行われている。
即ち、フラーレン薄膜を気相成長法により形成することは非常に困難であるため、溶媒キャスト法等の湿式製膜法によるフラーレン薄膜の形成に関する検討がなされてきた(例えば、非特許文献1参照)。
また、フラーレンは溶媒に対する溶解性が低い上に、対称性の高い球状の分子構造を有していて配向性が低いため、十分な膜厚を有し、かつフラーレン分子が規則的に配向した膜を溶媒キャスト法等の湿式製膜法により得ることは困難であることから、フラーレンの膜形成特性および溶媒に対する溶解性を向上させるために、各種フラーレン誘導体の検討がなされ、種々の誘導体が提示されている(例えば特許文献2参照)。
また、本願出願人は、湿式製膜法により容易に製造でき、かつ量産も可能であり、フラーレン本来の性質を損なうことなく保持でき、さらに熱分解によって発生する分解物が分解温度において窒素化合物を含まない気体であることから製造環境を汚染することなく、また膜内に残留することが無いため均質なフラーレン膜を形成することが可能なフラーレン膜の製造方法として、熱分解温度が400℃以下であり、熱分解によって発生する分解物が分解温度において窒素化合物を含まない気体であるフラーレン誘導体の溶液を基材上に塗布して得られる塗布膜を、前記フラーレン誘導体の熱分解温度よりも高く、前記フラーレンの熱分解温度よりも低い温度で加熱して、前記フラーレン誘導体の少なくとも一部を熱分解させることを特徴とするフラーレン膜の製造方法を提案した(特許文献3)。
特開昭64−31974号公報 特開2006−199674号公報 特開2010−229021号公報
パベル・ヤンダ(Pavel Janda)他、「アドバンスト・マテリアルズ(Advanced Materials)」、(ドイツ)、ワイリーVCH社(Wiley−VCH Verlag)、1998年12月、第10巻、第17号、p.1434−1438
アモルファス炭素膜は高硬度で各種の物性に優れるものであるが、その形成方法は乾式製膜法に限定され、工業的大量生産、大面積化には適していない。
一方、フラーレンは炭素のみで構成されるため、高硬度フラーレン膜の形成が期待されるが、湿式製膜法による製膜のためには、溶媒に対する溶解性向上のために、フラーレン骨格に各種の置換基を導入してフラーレン誘導体とする必要がある。そして、置換基の導入により、形成されるフラーレン誘導体膜の炭素含有量が相対的に低減する結果、高硬度膜を形成し得なくなる。
特許文献3では、フラーレン誘導体の塗布膜をフラーレン誘導体の熱分解温度よりも高く、フラーレンの熱分解温度よりも低い温度、好ましくは100〜400℃、より好ましくは150〜300℃で加熱して、フラーレン誘導体の少なくとも一部を熱分解させているが、本発明者らの検討により、このような低温の加熱処理では高硬度膜を得ることは困難であることが確認された。
本発明は、上記従来技術の実状に鑑みてなされたものであり、湿式製膜法で形成可能な高硬度有機系炭素膜を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、湿式製膜法で形成したフラーレン誘導体膜をフラーレンの分解が始まるような高温領域で加熱処理すると、高硬度有機系炭素膜を得ることができることを見出した。
本発明はこのような知見に基づいて達成されたものであり、以下を要旨とする。
炭素のみからなる膜ではなく、強熱減量試験(Ignition Loss Test)で質量の減少を示す有機物の強熱減量成分を含む炭素膜(以下「有機系炭素膜」と称す。)を製造する方法であって、下記式(1)で表される構造を有するフラーレン誘導体の溶液を用いて湿式製膜された膜を400℃以上、1000℃以下で加熱処理することを特徴とする有機系炭素膜の製造方法。
Figure 0005849745
(但し、上記式(1)中、FLNはフラーレン骨格を表し、R は、−Ar−(OX) 又は−Ar−(CH (3−a) −(OX) で表される置換基(但し、Arは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、Oは酸素原子、Xは水素原子、又はアルコール性水酸基の保護基であり、aは0〜3の整数、bは1〜5の整数である)を表し、R は、水素原子、或いは炭素数1〜20のアルキル基又はアルケニル基を表し、mは1〜30の整数、nは0〜25の整数である。m,nが2以上の場合、複数のR 、R はそれぞれ相互に異なっていても同一でもよい。)
] 前記加熱処理の温度が430℃以上、800℃以下であることを特徴とする[]に記載の有機系炭素膜の製造方法。
[3] 前記有機系炭素膜が、鉛筆硬度法で評価した硬度が2H以上の有機系炭素膜であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の有機系炭素膜の製造方法。
[4] 前記フラーレン誘導体のフラーレンが、C 60 、C 70 、C 76 、C 82 、C 84 、及びC 90 フラーレンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする[1]ないし[3]のいずれかに記載の有機系炭素膜の製造方法。
[5] 前記湿式製膜された膜を110℃で加熱したときの膜厚M に対して、その後該膜を400℃以上、1000℃以下で加熱処理して得られる有機系炭素膜の膜厚M が0.5M 以上であることを特徴とする[1]ないし[4]のいずれかに記載の有機系炭素膜の製造方法。
[6] 前記湿式製膜された膜を110℃で加熱して得られる膜がラマンスペクトル上の1460cm −1 ±5cm −1 に吸収ピークを有し、その後該膜を400℃以上、1000℃以下で加熱処理して得られる有機系炭素膜のラマンスペクトルでは該吸収ピークが認められないことを特徴とする[1]ないし[5]のいずれかに記載の有機系炭素膜の製造方法。
[1]ないし[6]のいずれかに記載の有機系炭素膜の製造方法により、有機系炭素膜基材上に形成することを特徴とする積層体の製造方法
本発明の有機系炭素膜は、鉛筆硬度2H以上の高硬度膜であって、フラーレン誘導体を用い、湿式製膜法で形成した膜を加熱処理することにより安価に製造することができ、また大面積化も容易である。
本発明の有機系炭素膜は、従来のアモルファス炭素膜に代わる高硬度機能性膜として、各種用途に適用可能である。
本発明に用いられるフラーレン誘導体「H200」のラマンスペクトルを示すチャートである。 本発明の比較例に相当する「有機系炭素膜2」のラマンスペクトルを示すチャートである。 本発明の実施例に相当する「有機系炭素膜3」のラマンスペクトルを示すチャートである。 本発明の実施例に相当する「有機系炭素膜5」のラマンスペクトルを示すチャートである。 本発明に用いられるフラーレン誘導体「H351」及び添加剤「WPAG618」のラマンスペクトルを併せて示すチャートである。 本発明の比較例に相当する「有機系炭素膜22」のラマンスペクトルを示すチャートである。 本発明の実施例に相当する「有機系炭素膜23」のラマンスペクトルを示すチャートである。 本発明に用いられるフラーレン誘導体「H200」の赤外線吸収スペクトルを示すチャートである。 本発明の実施例に相当する「有機系炭素膜5」の赤外線吸収スペクトルを示すチャートである。
以下、本発明について例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下の例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
なお、本明細書において「〜」という表現を用いる場合、その前後の数値を含む表現として用いる。
本発明の有機系炭素膜は、鉛筆硬度法で評価した硬度が2H以上の高硬度有機系炭素膜である。なお、この鉛筆硬度法による硬度の測定方法の詳細は、後掲の実施例の項に記載する。
本発明の有機系炭素膜の製造方法としては特に制限はないが、湿式製膜法により製造することが好ましく、特に、フラーレン誘導体の溶液を用いて湿式製膜法により形成した膜を400℃以上、1000℃以下で加熱処理する本発明の有機系炭素膜の製造方法に従って製造することが好ましい。
[フラーレン誘導体]
まず、本発明の有機系炭素膜の製造に好適なフラーレン誘導体について説明する。
<フラーレン骨格>
「フラーレン」とは、閉殻構造を有する炭素クラスターである。フラーレンの炭素数は、通常60〜130の偶数である。フラーレンの具体例としては、C60、C70、C76、C78、C82、C84、C90、C94、C96及びこれらよりも多くの炭素を有する高次の炭素クラスターを挙げることができる。なお、本明細書では、炭素数i(ここでiは任意の自然数を表す。)のフラーレン骨格を適宜、一般式「Ci」で表す。
また、「フラーレン誘導体」とは、フラーレン骨格を有する化合物又は組成物の総称である。即ち、フラーレン誘導体には、フラーレン骨格上に置換基を有したものの他、フラーレン骨格の内部に金属や化合物等を内包するもの及び他の金属原子や化合物と錯体を形成したもの等も含まれる。
本発明に係るフラーレン誘導体が有するフラーレン骨格は制限されないが、C60、C70、C76、C82、C84、及びC90から選ばれる少なくとも1種が好ましく、中でもC60又はC70が好ましく、C60がより好ましい。C60及びC70はフラーレンの製造時に主生成物として得られるので、入手が容易であるという利点がある。即ち、本発明に係るフラーレン誘導体は、C60又はC70或いはその混合物の誘導体であることが好ましく、C60の誘導体であることがより好ましい。
<フラーレン誘導体(I)>
本発明で用いるフラーレン誘導体の好適例として、下記式(1)で表される構造を有するもの(以下「フラーレン誘導体(I)」と称す。)が挙げられる。このフラーレン誘導体(I)は耐熱性が高く高温処理を実施した際の残膜量が高い点において好ましい。
Figure 0005849745
(但し、上記式(1)中、FLNはフラーレン骨格を表し、Rは、−Ar−(OX)又は−Ar−(CH(3−a)−(OX)で表される置換基(但し、Arは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、Oは酸素原子、Xは水素原子、又はアルコール性水酸基の保護基であり、aは0〜3の整数、bは1〜5の整数である)を表し、Rは、水素原子、水酸基又は炭素数1〜30の有機基を表し、mは1〜30の整数、nは0〜25の整数である。m,nが2以上の場合、複数のR、Rはそれぞれ相互に異なっていても同一でもよい。)
フラーレン誘導体(I)における置換基R1は、特に、−Ar−CH(3−a)−(OX)において、a=1の場合、加熱処理により容易に脱離し、アルキロール基を与える。そのため、フラーレン誘導体(I)は、自己反応性置換基であるR1を有しており、分子間反応により縮合物を得ることができるだけでなく、m≧2の場合は架橋反応が進行するため架橋したフラーレン材料を得ることができる。
また、フラーレン誘導体(I)は、フラーレン誘導体(I)以外の、アルキロール基又はフェノール性水酸基を含む化合物と結合することもできる。特にフラーレン誘導体(I)における置換基R1が2以上(式(1)においてm=2以上)である場合に、アルキロール基又はフェノール性水酸基を含む他のフラーレン誘導体に対する架橋剤として使用することもできる。
式(1)において、mはフラーレン骨格に結合した置換基R1の数である。mは1〜30の整数であり、好ましくは5〜20であり、より好ましくは5〜10である。
なお、mが2以上である場合には、それぞれの置換基R1が、同一の構造でもよいし、異なる構造であってもよい。例えば1種類の化合物を原料として用いた場合は同一置換基を有する構造となり、複数の化合物の混合物を原料に用いれば通常異なった構造の誘導体が得られる。目的とする用途に応じて複数の置換基を導入できる。
フラーレン誘導体(I)において、置換基Rに含まれるArの置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基としては、置換基を有してもよい炭素数6〜18の芳香族炭化水素基であることが好ましい。
置換基を有してもよい炭素数6〜18の芳香族炭化水素基の具体的な例としては、Rが−Ar−CH(3−a)−(OX)の場合、Ar基としてはフェニレン基、メチルフェニレン基、ジメチルフェニレン基、トリメチルフェニレン基、メトキシフェニレン基、ヒドロキシフェニレン基、ジヒドロキシフェニレン基、ヒドロキシメチルフェニレン基、エチルヒドロキシフェニレン基、ヒドロキシジメチルフェニレン基、アセチルフェニレン基、フッ化フェニレン基、クロロフェニレン基、ブロモフェニレン基、t−ブチルフェニレン基、エチルフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、メチルナフチレン基、ヒドロキシナフチレン基、メトキシナフチレン基、アントラセニレン基、フェナントラセニレン基、ピレニレン基等が挙げられる。
この中でも、フェニレン基、ナフチレン基又はアントラセニレン基が好ましく、特にフェニレン基が好ましい。
また、Rが−Ar−(OX)の場合、Arとしてはフェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、メトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、ジヒドロキシフェニル基、ヒドロキシメチルフェニル基、エチルヒドロキシフェニル基、ヒドロキシジメチルフェニル基、アセチルフェニル基、フッ化フェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、t−ブチルフェニル基、エチルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、ヒドロキシナフチル基、メトキシナフチル基、アントラセニル基、フェナントラセニル基、ピレニル基等が挙げられる。
この中でも、フェニル基、ナフチル基又はアントラセニル基が好ましく、特にフェニル基が好ましい。
Xは水素原子、又はアルコール性水酸基の保護基であり、好ましくは水素原子、又は炭素数1〜10のアルコール性水酸基の保護基である。
Xが、水素原子、又は炭素数1〜10のアルコール性水酸基の保護基であると、加熱等により容易に脱離することができるため、その末端にはアルキロール基が生成する。該アルキロール基は、自己反応性を有し、分子間反応による縮合物を得ることができるだけでなく、さらに置換基R1を複数(m≧2)有する場合は架橋性も持たせることができる。
アルコール性水酸基の保護基の中でも、炭素数1〜10で炭素鎖中にエーテル結合又はチオエーテル結合を有していてもよいアルキル基、アリール基、シリルエーテル基、アシル基、アラルキル基又は環状構造を構成する原子数が5〜12であるヘテロ環状基であることが好ましい。
炭素数1〜10で炭素鎖中にエーテル結合又はチオエーテル結合を有していてもよいアルキル基、アリール基、シリルエーテル基、アシル基、アラルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、メトキシメチル基、ベンジルメチル基、ベンジルオキシアルキル基、トリメチルシリル基、アセチル基、ベンゾイル基、ビバロイル基等が挙げられる。
環状構造を構成する原子数が5〜12であるヘテロ環状基として具体的には、テトラヒドロピラニル基が挙げられる。
なお、アルコール性水酸基の保護基は特に上記限定されるものではなく、公知の保護基が対象となる。例えば、THEODRA W. GREENE「PROTECTIVE GROUPS in ORGANIC SYNTHESIS」(WILEY−INTERSCIENCE THIRD EDITION) p23−200に記載されている保護基等も有効である。
中でも、Xとしては水素原子が好ましく、アルコール性水酸基の保護基である場合では、メチル基、ベンジル基、テトラヒドロピラニル基が好ましく、特にテトラヒドロピラニル基が好ましい。
フラーレン誘導体(I)は、上記置換基R1以外に、置換基R2を有していてもよい。
置換基R2は、水素原子、水酸基又は炭素数1〜30の有機基である。有機基としてはアルキル基、アルケニル基、アリル基又はアリール基等が挙げられる。また、上記式(1)に示すフラーレン骨格に結合した置換基R2の数を示すnは、0〜25の整数であり、好ましくは0〜20、より好ましくは0〜15である。nが2以上である場合は、個々のR2は相互に異なっていても同一でもよい。なお、n=0は、置換基R2が存在しないことを示す。
2は水素原子又は炭素数1〜20、好ましく炭素数1〜10のアルキル基又はアルケニル基であることが好ましい。
フラーレン誘導体(I)の中でも、置換基RのArがフェニレン基であるAr−CH−OXであるフラーレン誘導体が好ましい。
このようなフラーレン誘導体の中でも、特にフラーレン骨格がC60又はC70、mが5〜10の整数、かつXが水素原子、メチル基又はテトラヒドロピラニル基であることが好ましい。
フラーレン誘導体(I)の製造方法については、後掲の合成例1にその代表例を示す。
<フラーレン誘導体(II)>
本発明で用いるフラーレン誘導体の他の好適例として、下記式(2)で表される構造を有するもの(以下「フラーレン誘導体(II)」と称す。」)が挙げられる。このフラーレン誘導体(II)は、合成法が簡便な点において好ましい。
Figure 0005849745
(但し、上記式(2)中、Aはフラーレン骨格との結合部位を表し、酸素原子、硫黄原子、燐原子、炭素数1〜6の炭素原子鎖、−Ar−O−(但しArは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基でありフラーレン骨格と結合している。)、フラーレン骨格の炭素原子を含む置換されていてもよい環状脂肪族基、又は置換されていてもよい芳香族炭化水素基を表し、rは0〜6の整数、tは0又は1の整数、pは1〜3の整数、qは1〜46の整数をそれぞれ表し、Rは炭素数1〜20の有機基を表す。)
フラーレン誘導体(II)を表す式(2)におけるAが−Ar−Oの場合、Arの置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基としては、前記式(1)において、Rが−Ar−CH(3−a)−(OX)の場合、或いは−Ar−(OX)の場合のArとして例示したものが挙げられ、好ましくはフェニレン基、ナフタレン基である。
また、Aで表される炭素数1〜6の炭素原子鎖としては、2〜4価の鎖状炭化水素鎖が挙げられるが、中でも合成の容易さの点からアルキレン基が好ましい。
フラーレン誘導体(II)のAは、酸素原子、−Ar−O−、又は下記式(3)で表されるフラーレン骨格上の炭素原子を含む環状炭化水素構造を有することが好ましい。
Figure 0005849745
(但し、上記式(3)中、2つのCはフラーレン骨格上の隣接する2つの炭素原子を表し、xは1〜8の整数である。なお、メチレン基−(CH−のうちの水素原子の少なくとも1つは、式(3)に示される−(CH−CO−(O)−Rで置換されている。)
式(2)においてメチレン鎖の数rは0〜6であるが、プロピレングリコールメチルアセテート(以下「PGMEA」と略す。)等のエステル溶媒へ高濃度で溶解させるためには、メチレン鎖を有していた方が良く、好ましいrは4以下である。またメチレン鎖の数rは0か1のものが原料調達の観点から好ましい。
また、上記メチレン鎖には、フラーレン誘導体(II)の優れた物性を大幅に損なうものでなければ、他の有機基で置換されていてもよい。
式(2)において、酸素原子の数tは0又は1を表すが、中でも、PGMEA等のエステル溶媒へ溶解度を向上させる観点から、tは1であることが好ましい。
また、pは1〜3の整数であるが、合成上の容易さを考慮すると、pは1又は2であるのが好ましい。
また、qは1〜46の整数であるが、溶解性と耐熱性の観点から1〜10が好ましく、特に1〜6が好ましい。
式(2)においてRは炭素数1〜20の有機基を表す。Rの好ましい炭素数は1〜15であり、原料調達の観点から、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基が好ましい。
の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、ネオペンチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基等の直鎖又は分岐状の鎖状アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、アダマンチル基等の環状アルキル基;アリル基、クロチル基、シンナミル基等のアルケニル基;フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基等のアリール基が挙げられる。
更に、酸解離性、熱分解性挙動の観点から、Rとしては、酸素原子もしくはカルボニル基が結合している炭素原子が、第三級炭素原子であるアルキル基が好ましい。具体的には、tert−ブチル基、tert−アミル基、1,1-ジエチルプロピル基、1−メチルシクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロペンチル基、1−エチルシクロヘキシル基、1−ブチルシクロペンチル基、1−ブチルシクロヘキシル基、2−メチル−2−アダマンチル基等が挙げられる。これらの中でも、加熱分解後の分解物が気体であると言う観点からtert−ブチル基が最も好ましい。
また、これら有機基Rは、本発明の有機系炭素膜の優れた物性を大幅に損なうものでなければ、他の置換基で更に置換されていてもよい。置換基は炭化水素基に限らずハロゲン原子や水酸基等の置換基でも構わないが、置換基を有する場合も、置換基を含んだ炭素数の合計が上記条件を満たすことが好ましい。
なお、フラーレン誘導体(II)のAが酸素原子のとき、rが1であるのが好ましい。
また、フラーレン誘導体(II)のAが前記式(3)で表される基の場合、xが1であるシクロプロピル基であることが好ましく、rが0であり、pが2であることが好ましい。
好ましいフラーレン誘導体(II)の例としては、下式の(4)〜(6)で示される水酸化フラーレン、芳香族基含有フラーレン、シクロプロパン環含有フラーレンが挙げられる。
(水酸化フラーレン)
Figure 0005849745
式(4)のフラーレン誘導体は、前記式(2)で表される部分構造において、フラーレン骨格との結合部位Aが酸素原子であるフラーレン誘導体であり、rは0〜5の整数を表し、tは0又は1を表し、zとsはz+s=q、即ちzとsの和が1〜46を満足する整数を表し、Rは式(2)におけると同様炭素数1〜20の有機基を表す。このフラーレン誘導体は特定の構造を有する有機基が水酸化フラーレンの水酸基上に導入されたものである。
式(4)において、zは、フラーレン骨格に結合している保護された水酸基保護基の数を表す。また、sはフラーレン骨格に結合している未保護の水酸基の数を表す。z+s(=q)は前述の通り、1〜46の整数であるが、好ましくは2以上、更に好ましくは6以上、特に好ましくは8以上であり、好ましくは20以下、更に好ましくは12以下である。z+sの数は原料となる水酸化フラーレンの水酸基数に相当するが、目的に応じて適切なものを選択すればよい。
z+sの値が小さすぎると有機溶媒への溶解性が低くなる傾向があり、大きすぎるとフラーレン誘導体の性質が損なわれる傾向がある。
また式(4)において、zは1以上46以下であるが、好ましくは2以上、更に好ましくは3以上であり、好ましくは20以下、更に好ましくは10以下である。
さらに式(4)において、sは0〜45であるが、好ましくは20以下、さらに好ましくは10以下である。
z及びsは原料として用いる水酸化フラーレンの水酸基数(z+s)並びにこれらの置換基を導入する目的に応じて決定すればよい。
式(4)において、水酸基の保護基の種類は1種類でもよく、2種類以上でもよい。2種類以上の場合は、その組み合わせ及び比率は任意である。
(芳香族基含有フラーレン)
Figure 0005849745
式(5)のフラーレン誘導体は、前記式(2)で表される部分構造において、フラーレン骨格との結合部位Aが−Ar−O−であるフラーレン誘導体であり、rは0〜5の整数を表し、tは0又は1を表し、yは1〜15の整数を表し、Rは炭素数1〜20の有機基を表す。
このフラーレン誘導体は特開2006−56878号公報に記載された芳香族性水酸基を有するフラーレン誘導体、もしくはフラーレンに水酸基を有する芳香族化合物と三塩化アルミニウムを作用させて得られる芳香族性水酸基を有するフラーレン誘導体の水酸基に、特定の構造を有する有機基を導入したものである。
式(5)において、yは、特定の構造を有する有機基によって保護されたフラーレン骨格に結合している芳香族炭化水素基の数を表す。yは1以上15以下であるが、好ましくは2以上、更に好ましくは3以上であり、通常15以下、好ましくは10以下、更に好ましくは5以下である。y(芳香族炭化水素基による置換数)は原料として用いるフラーレン誘導体の水酸基数並びに目的に応じて決定すればよい。
また、上記式(5)で表されるフラーレン誘導体は上記式(5)に示される部分構造の他に、−Ar−OHで示される未保護の水酸基を有する芳香族炭化水素基を有していてもよい。またフラーレン骨格に水素基(即ち、水素原子。ヒドロ基とも言う)やエポキシド(即ち、三員環を成すオキシド)、炭素数1〜30の有機基を有していてもよい。
式(5)において、芳香族性水酸基に導入される有機基の種類は1種類でもよく、2種類以上でもよい。2種類以上の場合は、その組み合わせ及び比率は任意である。
(シクロプロパン環含有フラーレン)
Figure 0005849745
式(6)のフラーレン誘導体は、前記式(2)で表される部分構造において、式(2)で表されるフラーレン骨格との結合部位Aが、フラーレン骨格の隣接する2個の炭素原子を含んだ三員環(シクロプロパン環)であるフラーレン誘導体であり、FLNはフラーレン骨格を表し、rは0〜5の整数を表し、tは0又は1を表し、pは1又は2を表し、qは1〜46の整数を表し、Rは炭素数1〜20の有機基を表す。
式(6)で表されるフラーレン誘導体としては、特許第3512412号公報及び特開2005−263795号公報に記載されているメタノフラーレン誘導体を用いることができる。メタノフラーレンとはフラーレン誘導体の1種であり、フラーレン骨格上にメチレン基による架橋結合を有するフラーレン誘導体の総称であり、通常はフラーレン骨格上にシクロプロパン構造を有するフラーレン誘導体を指す。
上記式(6)において、rは0であることが好ましく、tは1であることが好ましく、pは2であることが好ましい。qは架橋メチレン基の付加数に相当する。C60フラーレンの場合の理論上の最大値は30となるが、立体反発等の要因により、tの上限は通常30よりも低い値となる。
上記の式(4)〜(6)で表されるフラーレン誘導体で代表されるフラーレン誘導体(II)は、特開2010−229021号公報に記載される方法で製造することができる。
<フラーレン誘導体(III)>
本発明で用いるフラーレン誘導体の他の好適例として、下記式(4a)又は(4b)で表される構造を有するアミノ化フラーレン誘導体が挙げられる。これらは、低温で付加基を分解できるため膜の炭素濃度を高くできるという点において好ましい。
Figure 0005849745
(但し、上記式(4a),(4b)中、R及びRはそれぞれ独立して、任意の置換基を有していてもよい炭化水素基を表し、RとRは、RとRの両者に結合する炭素原子、窒素原子、及び酸素原子のいずれかとともに、任意の置換基を有していてもよい含窒素環を形成していてもよい。)
式(4a),(4b)において、R,Rの置換基を有していてもよい炭化水素基としては、例えばアルキル基、アラルキル基やアルケニル基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、ベンジル基、フェネチル基、ビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基などが挙げられる。これらのうち、合成が容易であることからメチル基が好ましい。
また、RとRが、RとRの両者に結合する炭素原子、窒素原子、及び酸素原子のいずれかとともに、任意の置換基を有していてもよい含窒素環を形成している場合、この含窒素環構造としてはアゼチジン、ピロリジン、イミダゾリジン、ピペリジン、ピペラジン、ホモピペラジン、ピロール、ピロリン、イミダゾリン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾールなどに相当する構造が挙げられ、好ましくはピペリジン、ピペラジンである。
<フラーレン誘導体(IV)>
本発明で用いるフラーレン誘導体の他の好適例として、下記式(7)で表されるフラーレン骨格上の炭素原子を含む環状炭化水素構造を有するフラーレン誘導体(以下「フラーレン誘導体(IV)」と称す。)が挙げられる。フラーレン誘導体(IV)は、合成が簡便である点において好ましい。
Figure 0005849745
(但し、上記式(7)中、2つのCはフラーレン骨格上の隣接する2つの炭素原子を表し、Cαβは、式(7)に示されていない置換基を有していてもよいα個の炭素原子とこれらの炭素原子のいずれかに結合したβ個の水素原子とを有する飽和又は不飽和の炭化水素鎖を表し、αは1〜8の整数、βは0〜16の整数である。Cαβが2以上の置換基を有する場合、これらは互いに結合して環状構造を形成していてもよい。)
上記式(7)におけるCαβとしては、具体的には−C(Q)H−CH−C(Q)H−、−CH−C(Q)=C(Q)−CH−等が挙げられる。ここで、Qは炭素原子に結合した任意の置換基であり、複数のQは同一であってもよく異なるものであってもよい。また、Q同士が結合して環状構造を形成していてもよい。
置換基Qとしては、前記式(2)におけるRの炭素数1〜20の有機基として例示したものなどが挙げられ、これらが互いに結合して形成する環状構造としては、インデン環、インダン環、ベンゼン環、ベンゾシクロブテン環、ベンゾシクロヘキサン環等が挙げられる。
また、一つのフラーレン誘導体(IV)が有する前記式(7)で表されるフラーレン骨格上の炭素原子を含む環状炭化水素構造の数は1〜16個、特に1〜10個であることが好ましい。
このようなフラーレン誘導体(IV)の具体例としては、例えば、下記構造式(7a)で表されるフラーレン誘導体や、下記構造式(7b)で表されるフラーレン誘導体などが挙げられる(下記式中wは1〜10の整数を表す。)
Figure 0005849745
<その他のフラーレン誘導体>
本発明において用いる原料フラーレン誘導体としては、加熱処理により鉛筆硬度2H以上の有機系炭素膜を得ることができるものであればよく、上記のフラーレン誘導体以外にも、PCBM(フェニルC61酪酸メチルエステル)多付加体、水酸化フラーレン、上記式(4a),(4b)で表されるアミノ化フラーレン以外のアミノ化フラーレンなどが挙げられる。
なお、本発明で用いるフラーレン誘導体は、後述の好適な残膜率を満たすものであることが好ましく、また、後述の鏡面性を示すものであることが好ましい。
[有機系炭素膜の製造方法]
次に、上述のようなフラーレン誘導体を用いた本発明の有機系炭素膜の製造方法について説明する。ただし、本発明の有機系炭素膜の製造方法は、何ら以下に説明する方法に限定されるものではない。
本発明の有機系炭素膜を製造するには、まず、前述の原料フラーレン誘導体の溶液(以下「製膜溶液」又は「塗布液」と称す。)を調製し、この製膜溶液を基材上に湿式製膜することにより塗膜を形成し、この塗膜を必要に応じて乾燥させた後、所定の温度で加熱処理して本発明の有機系炭素膜を得る。
なお、本発明の有機系炭素膜の製造に当たり、原料フラーレン誘導体は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<製膜溶液の調製>
製膜溶液の調製に用いられる溶媒としては、フラーレン誘導体が十分な溶解度を有し、常圧下又は減圧下で室温又は加熱することにより揮発させることのできる溶媒であれば特に限定することなく用いることができるが、入手の容易さ、価格、毒性ないしは有害性、安全性等を考慮して適宜選択すればよい。
溶媒としては、例えば1価又は多価のアルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、芳香族炭化水素類、芳香族ハロゲン化炭化水素類、複素環化合物系溶媒、アルカン系溶媒、ハロアルカン系溶媒、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ニトロメタン、ニトロエタン、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)および水を挙げることができる。
1価又は多価のアルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコールを挙げることができる。
ケトン類としては、例えば、アセトン、MEK(メチルエチルケトン)、2−ヘプタノン、メチルイソプロピルケトン、MIBK(メチルイソブチルケトン)、シクロヘキサノン(CHN)を挙げることができる。
エーテル類としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)等を挙げることができる。
エステル系溶媒としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、乳酸エチル、GBL(γ−ブチロラクトン)、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)等を挙げることができる。
芳香族炭化水素類としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、1,2,3−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン、1−メチルナフタレン、1−フェニルナフタレンなどが挙げられる。
芳香族ハロゲン化炭化水素類の具体例としては、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、ブロモベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼンなどが挙げられる。
複素環化合物系溶媒としては、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、2−メチルチオフェン、ピリジン、キノリン、チオフェン等を挙げることができる。
アルカン系溶媒としては、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−オクタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−デカン、n−ドデカン、n−テトラデカン、デカリン、cis−デカリン、trans−デカリン等を挙げることができる。
ハロアルカン系溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジブロモエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロジフルオロエタン、1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン等を挙げることができる。
これらの溶媒の中でも、より好ましく用いられる溶媒の例としては、PGMEA、PGME、乳酸エチル、2−ヘプタノン、CHN、MEK、GBL、NMP等が挙げられる。
製膜溶液において、溶媒は1種のみを用いてもよく、2種以上を任意に組み合わせて併用してもよい。
製膜溶液のフラーレン誘導体濃度は、フラーレン誘導体の溶媒への溶解度、形成する有機系炭素膜の膜厚等により異なるため一義的に定めることは困難であるが、通常1〜30質量%であることが好ましく、5〜30質量%であることがより好ましく、10〜25質量%であることがさらに好ましい。製膜溶液のフラーレン誘導体濃度が1質量%よりも低くなると、多量の溶媒を必要とし不経済であるとともに膜厚の厚い有機系炭素膜を製膜するために繰返し塗布を行う必要が生じる。また、有機系炭素膜の濃度が30質量%を超えると、製膜溶液の粘性が高くなるため取扱いが困難になり、均一な膜厚の有機系炭素膜を得ることが困難になる。また、製膜溶液において、フラーレン誘導体は溶媒に完全溶解していることが好ましいが、一部溶解せずに懸濁していてもよく、或いは塗布時に再分散して分散液とすることができる限り、その一部が沈降していても構わない。
本発明の有機系炭素膜の優れた物性を大幅に損なわない限り、製膜溶液は、フラーレン誘導体及び溶媒の他に、その他の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、界面活性剤や分散剤、高分子化合物等が挙げられるが、これに限定されるものではない。添加剤は1種のみを含有していてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で含有していてもよい。
製膜溶液に、フラーレン誘導体及び溶媒以外の添加剤を含む場合、添加剤の含有量が多過ぎると高硬度有機系炭素膜を得ることができない場合があるので、製膜溶液中の添加剤の含有量は30質量%以下で、フラーレン誘導体に対して100質量%以下、例えば1〜50質量%とすることが好ましい。また、製膜溶液中のフラーレン誘導体と添加剤との合計の固形分濃度としては1〜50質量%、特に10〜40質量%であることが好ましい。
フラーレン誘導体、必要に応じて用いられる添加剤を上記の溶媒に溶解させることができる限り、製膜溶液の調製方法に制限はないが、通常、所定の装置で攪拌しながら溶解させる方法、超音波を照射する方法などで調製できる。また、フラーレン誘導体及び溶媒、並びに必要に応じて用いられる添加剤の混合順序も、特に制限はない。
製膜溶液は、安定性や操作性の観点から通常室温(25℃程度)で調製されるが、溶媒の沸点以下であれば、加熱しながら溶解させ、保管することができる。また、フラーレン誘導体の溶解度に問題がなければ、25℃以下の低温下で調製、保管することもできる。
<製膜溶液の湿式製膜>
製膜溶液の湿式製膜は、ディップコーティング法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法等の、任意の方法により行うことができる。
製膜溶液を湿式製膜する基材の形状としては、板状およびフィルム状、球状、塊状、繊維状等が挙げられる。また、基材の材質としては、次の加熱処理の際に熱分解や変形を起こさない限り特に限定することなく任意の材質のものを用いることができる。例えば、ガラス、シリコン等の半導体、金属、コンクリート等の無機系材料を用いることができる。
製膜溶液の湿式製膜により形成する塗膜の膜厚は、製膜溶液の濃度や基材への付着量を調節することにより、用途等に応じて数nm〜数十μmの範囲内で適宜調整することができる。膜厚の下限は、好ましくは10nm、より好ましくは50nmである。膜厚の上限は、繰り返して湿式製膜を行えば理論上制限がないが、好ましくは1μm、より好ましくは500nmである。この膜厚は公知の膜厚測定方法により測定することができる。
塗膜の膜厚が厚すぎると、フラーレン誘導体の加熱分解時に膜質が悪化する可能性があり、薄すぎるとピンホール等の膜の不均質の問題が起きる可能性がある。
<乾燥処理>
上記塗膜の加熱処理に先立ち、膜中に残留した溶媒を除去するための乾燥を行ってもよい。
乾燥は、用いられる溶媒の沸点、揮発性等に応じて任意の方法により行うことができる。乾燥方法としては、室温、大気圧下での風乾、室温、減圧下での減圧乾燥、大気圧又は減圧下での加熱等が挙げられ、これらを組み合わせて用いてもよい。加熱による乾燥の場合、フラーレンの閉殻構造の破壊を伴わない500℃以下、好ましくは300℃以下で行うことが好適であり、塗膜の突沸等を防止するため150℃以下で行うことがより好ましい。さらに、酸化による膜質の変化を抑制するためには不活性雰囲気下で行ってもよいが、通常は大気中で行うことができる。加熱による乾燥を、フラーレンの閉殻構造の破壊を伴わない温度条件下で行う場合等では、乾燥は、後述の加熱処理と同時に行ってもよい。減圧による乾燥の場合、好ましい減圧条件は1.33×10Pa(1torr)以上1.01×10Pa(760torr)未満である。
乾燥を不活性雰囲気下で行う際に使用できる不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴン等が挙げられる。
特に、塗膜の乾燥は大気中にて、20〜200℃の温度で5秒〜60分程度行うことが好ましい。
<加熱処理>
製膜溶液の湿式製膜により形成された塗膜を必要に応じて乾燥した後は、加熱処理を行う。
本発明において、この加熱処理は400℃以上、1000℃以下の温度で行う。加熱処理温度が400℃よりも低いと、目的とする高硬度有機系炭素膜を得ることができない。加熱処理温度は1000℃よりも高くても得られる有機系炭素膜の硬度の向上は認められず、基材の耐熱性や加熱コスト、加熱設備等に制約を受け好ましくない。加熱処理は400℃を超える温度で行うことがより好ましく、特に430〜800℃、とりわけ450〜650℃で行うことが好ましい。
加熱処理時間については、目的とする高硬度有機系炭素膜が得られる時間であればよく、特に制限はないが、通常1分〜1時間、好ましくは1分〜0.5時間である。
加熱処理の雰囲気については、乾燥雰囲気と同様の不活性ガス雰囲気であってもよく、大気中であってもよいが、雰囲気により得られる有機系炭素膜の組成や性状が変動することは好ましくないので、この点についての配慮が必要である。
<残膜率>
本発明の有機系炭素膜の製造で用いる原料フラーレン誘導体は、上述の製膜溶液の湿式製膜により形成した塗膜を110℃で加熱したときの膜厚Mに対する、その後該膜を400℃以上、1000℃以下で加熱処理して得られる有機系炭素膜の膜厚Mの比で表される残膜率M/Mが0.5以上であることが好ましい。即ち、Mは0.5M以上であることが好ましい。
残膜率が0.5未満であると体積変化率が大きく密度低下などの影響により低硬度の膜になったり膜の鏡面性が劣ったものになることがある。残膜率は好ましくは0.5以上、特に好ましくは0.6以上であるが、可溶性のフラーレン誘導体とするための置換基の導入などの影響を考慮すると、通常0.95以下である。
なお、この残膜率を算出するための膜厚及び以下の本発明の有機系炭素膜の膜厚は、皮膜が施されていない部分との段差を測定することによって求めることができる。
<膜厚>
本発明の有機系炭素膜の膜厚については、その用途に応じて適宜設計されるが、通常50nm〜100μm、特に100nm〜1μmであることが好ましい。有機系炭素膜の膜厚が上記範囲よりも薄いと、例えば半導体用の炭素膜材料として使用する際のエッチング処理時に膜が消滅してしまうことがあり、逆に厚いと熱が均一にかかりにくく均一で高強度な膜を作ることが難しいことがある。
<鏡面性>
本発明の有機系炭素膜の製造に当たり、前述の塗膜の加熱処理後において、膜表面が鏡面性に優れたものであることが好ましい。
即ち、加熱処理により膜中のフラーレン誘導体の分解が不均一に進行した場合、加熱処理後の膜表面は鏡面を示さず膜荒れが生じる。このような膜荒れが生じた有機系炭素膜は通常硬度も劣るものとなり、半導体向けなど均一性を必要とする用途では好ましくない。
なお、加熱処理後の膜の鏡面性の有無は目視観察で評価することができる。
<ラマンスペクトルの吸収ピーク>
本発明において、上述の製膜溶液の湿式製膜により形成した塗膜を110℃で加熱して得られる膜(以下、「乾燥膜」と称す。)について、後掲の実施例の項で記載される装置及び条件でラマンスペクトル分析すると、1460cm−1付近(1460cm−1±5cm−1)に吸収ピークが確認されるが、その後この乾燥膜を400℃以上、1000℃以下で加熱処理して得られる本発明の有機系炭素膜について同様にラマンスペクトル分析すると、この吸収ピークは消失している。
この1460cm−1付近の吸収ピークは、フラーレン骨格構造に由来するものであり、乾燥膜において存在する1460cm−1付近の吸収ピークが、本発明の有機系炭素膜では認められないことは、乾燥膜ではフラーレン骨格構造が残存しているが、この乾燥膜を400℃以上の温度で加熱処理して得られる本発明の有機系炭素膜では、フラーレン誘導体のフラーレン骨格の少なくとも一部が分解して、アモルファスカーボンまたはこれに近い構造を取るようになったことを示すものと推定され、本発明の有機系炭素膜では、これによって高硬度が得られるものと推定される。
[鉛筆硬度]
本発明の有機系炭素膜は、鉛筆硬度法で評価した硬度が2H以上であることを特徴とする。この硬度は高い程好ましく、より好ましくは4H以上である。
従来のアモルファス炭素膜について、本発明に係る鉛筆硬度法で測定された鉛筆硬度は6H程度であるが、本発明によれば、フラーレン誘導体の種類や加熱処理温度を適切に制御することにより、鉛筆硬度6H程度の有機系炭素膜を得ることもできる。
なお、本発明において、有機系炭素膜の鉛筆硬度は、以下の方法で評価した値である。
<有機系炭素膜の鉛筆硬度の評価>
有機系炭素膜について、JIS K−5600−5−4 塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第4節:引っかき硬度(鉛筆法)に基づき、以下の調整を加えた方法で、荷重630gで硬度の異なる鉛筆を用いて引っかき操作を実施する。鉛筆で引っかいたときに、評価膜厚の1/10程度よりも深い傷が、80%以上の発生確率で生じる場合は、その鉛筆では傷が発生すると評価する。
鉛筆で引っかいても、傷の深さが評価膜厚の1/10より浅い場合、或いは、傷の深さが評価膜厚の1/10より深くてもその発生確率が80%未満の場合は、当該鉛筆に対して合格と評価し、評価した鉛筆のうち、最も硬度の高い鉛筆の硬度を当該有機系炭素膜の鉛筆硬度とする。傷の深さはαステップIQ(段差測定機)(KLA−Tencol社製)を用いて測定する。
また、傷の発生確率とは複数回評価をし、傷が発生した件数を評価回数で除したものの割合として求める。
なお、評価にあたっては均一な塗布膜が形成されていることが重要であり、不均一な膜を用いた評価では、本発明の有機系炭素膜が有する本質的な物性を評価することが困難であるので注意を要する。
[積層体]
本発明の積層体は、前述の基材上に本発明の有機系炭素膜が形成されたものであり、有機系炭素膜表面の硬度が高いという特長を利用して、前述の半導体用のエッチング基材等に用いることができる。
以下に実施例及び比較例に相当する有機系炭素膜の製造例と評価結果を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例によって限定されるものではない。
以下において、各種の化合物や測定法等の略号は次の通りである。
THP:テトラヒドロピラニル
ODCB:o−ジクロルベンゼン
THF:テトラヒドロフラン
MeI:ヨウ化メチル
CDCl3:重水素化クロロホルム
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
CHN:シクロヘキサノン
ODS:オクタデシルシリル
Me:メチル基
Bu:ブチル基
Ph:フェニル基
BOC:tert−ブトキシカルボニル基
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
NMR:核磁気共鳴
MS:質量分析
また、以下において、有機系炭素膜の膜厚はαステップIQ(段差測定機)(KLA−Tencol社製)により測定をした。
[有機系炭素膜の合成]
<合成例1>
臭化銅(I)(7.32g、51.0mmol)のTHF懸濁液(75mL)を5℃まで冷却した後、(4−THP)OCH2−C64Brから合成したグリニャール試薬である(4−THP)OCH2−C64MgBr/THF溶液(0.7mol/L;68mL)を加え、25℃まで昇温した。そこにC60(3.0g、4.17mmol)のODCB溶液(135mL)を加え、2時間攪拌した。ここに、MeI(3.9mL、62.6mmol)を加えさらに8時間攪拌した。反応液を濾過し、THFを除去した後、トルエンで希釈し、シリカカラムクロマトグラフィー(展開液:トルエン及び酢酸エチル)を行った。溶液を濃縮し、2−プロパノール(500mL)で晶析を行い、100℃で真空乾燥を行うことでフラーレン誘導体:C60{(4−THP)OCH2−C645(−CH3)をオレンジ色固体(6.01g、3.56mmol、収率84.5%)の生成物として得た。
得られた生成物を1H−NMR及びHPLCにて測定した。なお、1H−NMRはCDCl3を溶媒とし、400MHzにて測定した。また、HPLCは、0.5mg/mLのTHF溶液を調製し、以下の測定条件で測定した。
カラム種類:ODS
カラムサイズ:150mm×4.6mmφ
溶離液:トルエン/メタノール=4/6
検出器:UV290nm
HPLC測定の結果、保持時間4.40minに、89.9(Area%)で観測された。
また、1H−NMRの測定結果は、以下の通りであった。
1H−NMR(CDCl3,400MHz)>
7.78ppm(d,Ph,4H),7.68ppm(d,Ph,4H),7.30ppm(t,Ph,8H),7.19ppm(d,Ph,2H),7.06ppm(d,Ph,2H),4.83〜4.80ppm(m,PhCH2,4H),4.70ppm(s,PhCH2,4H),4.6ppm(m,PhCH2,2H),4.5ppm(t,PhCH2−O−CH,4H),4.3ppm(d,PhCH2−O−CH,1H),3.9〜3.8ppm(m,THP(O−CH2),5H),3.6〜3.5ppm(m,THP(O−CH2),5H),2.0〜1.4ppm(m,C60Me+THP(CH2),33H)
以上の結果から、得られた生成物が下記構造式で表される、C60{(4−THP)OCH2−C645(−CH3)であることが確認された。このフラーレン誘導体を「H351」と称す。
Figure 0005849745
<合成例2>
フロンティアカーボン(株)製の水酸化フラーレン(平均水酸化数10)C60(OH)101.0g(1.12mmol)のTHF(20mL)、アセトン(40mL)懸濁液に、炭酸カリウム8gとブロモ酢酸tert-ブチル10mL(68.2mmol)を加え、25℃で1時間攪拌した。その後、反応液を55℃まで昇温して更に12時間攪拌した。その後、反応液をセライト濾過し(展開液:酢酸エチル)溶媒を除去した後、酢酸エチルと水を加えて分液操作を行った。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥後、濾過し溶液を濃縮した後、ヘキサン300mLで晶析を行い、50℃で真空乾燥を行うことで、フラーレン誘導体:C60(OH)5.2(O−CH2C(=O)O−t−Bu)4.8を茶色固体(0.74g;収率46%)の生成物として得た。
得られた生成物のH−NMR及び、MS測定を行った。なお、H−NMRは重クロロホルムを溶媒とし、400MHzにて測定した。
H−NMR測定の結果により、 5.40〜4.20ppm(brs,O−CH2−),1.80−1.30ppm(brs,tert−Bu)のピークが9:2で観測され、水酸化フラーレンの水酸基の一部が保護されたことが確認された。
得られた生成物及び内部標準としてクマリンをそれぞれ秤量した後、その混合物を重クロロホルムに溶解し、H−NMRを測定した。それぞれの積分比から得られた生成物の平均分子量は1437.2、平均保護数は4.8と算出された。
また、得られた生成物のMS測定では、C60(OH)(O−CH2C(=O)O−t−Bu):分子量1084、C60(OH)(O−CH2C(=O)O−t−Bu):分子量1198、C60(OH)(O−CH2C(=O)O−t−Bu):分子量1312、C60(OH)(O−CH2C(=O)O−t−Bu):分子量1346、C60(OH)(O−CH2C(=O)O−t−Bu):分子量1460、C60(OH)(O−CH2C(=O)O−t−Bu):分子量1574、C60(OH)(O−CH2C(=O)O−t−Bu):分子量1608、C60(OH)(O−CH2C(=O)O−t−Bu):分子量1722が混合物ピークとして観測された。
以上の結果から、得られた生成物が下記構造式で表される、C60(OH)5.2(O−CH2C(=O)O−t−Bu)4.8であることが確認された。このフラーレン誘導体を「D200−A」と称す。
Figure 0005849745
[有機系炭素膜の製造]
<有機系炭素膜1〜5>
下記構造式で表されるフラーレン誘導体「H200」(フロンティアカーボン(株)製)1重量部に対して、PGMEA6.7重量部を添加して塗布液1を調製した。
Figure 0005849745
次いで、塗布液1をシリコンウエハ上に滴下し、スピンコーターを用いて、500rpmで10秒間、その後1500rpmで40秒間回転させる条件で、シリコンウエハ上に塗布液1を塗布した。
次いで、塗布液1を塗布したシリコンウエハを、空気中、ホットプレート上で110℃で60秒加熱処理後(1st加熱処理)、表1に示す温度で60秒加熱処理する(2nd加熱処理)ことで、各々シリコンウエハ上に表1に示す膜厚の有機系炭素膜1〜5を形成した。
また、上記加熱処理に当たり、各加熱処理後の塗膜の鏡面性の有無を目視観察して下記基準で評価し、結果を表1に示した。
なお表1の「添加剤」欄の「NULL」との表記は添加剤を用いなかったことを示す。以下の表についても同様である。
(鏡面性評価基準)
○:鏡面である
×:鏡面でない
なお、加熱処理後に膜が存在しなくなったものを「−」で表した。
<有機系炭素膜6〜10>
下記構造式で表されるフラーレン誘導体「M100」(フロンティアカーボン(株)製)1重量部に対して、PGMEA6.7重量部を添加して塗布液2を調製した。
Figure 0005849745
塗布液1の代りに塗布液2を用いたこと以外は、有機系炭素膜1〜5と同様にして、各々表1に示す膜厚の有機系炭素膜6〜10を形成し、各々鏡面性の評価を行って結果を表1に示した。
<有機系炭素膜11〜15>
下記構造式で表されるフラーレン誘導体「H350」1重量部に対して、CHN5.7重量部を添加して塗布液3を調製した。
Figure 0005849745
塗布液1の代りに塗布液3を用いたこと以外は、有機系炭素膜1〜5と同様にして、各々表1に示す膜厚の有機系炭素膜11〜15を形成し、各々鏡面性の評価を行って結果を表1に示した。
<有機系炭素膜16〜20>
合成例1で合成した下記構造式で表されるフラーレン誘導体「H351」1重量部に対して、CHN5.7重量部を添加して塗布液4を調製した。
Figure 0005849745
塗布液1の代りに塗布液4を用いたこと以外は、有機系炭素膜1〜5と同様にして、各々表1に示す膜厚の有機系炭素膜16〜20を形成し、各々鏡面性の評価を行って結果を表1に示した。
<有機系炭素膜21〜25>
合成例1で合成したフラーレン誘導体「H351」1重量部に対して、添加剤として熱酸発生剤である「WPAG618」(和光純薬株式会社製)を0.2重量部、CHN5.7重量部を添加して塗布液5を調製した。
塗布液1の代りに塗布液5を用いたこと以外は、2nd加熱処理の温度を表1に示す温度として有機系炭素膜1〜5と同様にして、各々表1に示す膜厚の有機系炭素膜21〜25を形成し、各々鏡面性の評価を行って結果を表1に示した。
<有機系炭素膜26〜30>
ポリヒドロキシスチレン(PHS樹脂)「VP15000」(日本曹達株式会社製)1重量部に対して、PGMEA11.5重量部を添加して塗布液6を調製した。
塗布液1の代りに塗布液6を用いたこと以外は有機系炭素膜1〜5と同様にして、各々表2に示す膜厚の有機系炭素膜26〜30を形成し、各々鏡面性の評価を行って結果を表2に示した。
<有機系炭素膜31〜35>
ノボラック樹脂「SP1010」(旭有機材料株式会社製)1重量部に対して、PGMEA7.3重量部を添加して塗布液7を調製した。
塗布液1の代りに塗布液7を用いたこと以外は有機系炭素膜1〜5と同様にして、各々表2に示す膜厚の有機系炭素膜31〜35を形成し、各々鏡面性の評価を行って結果を表2に示した。
<有機系炭素膜36〜40>
下記構造式で表されるフラーレン誘導体「F301」(フロンティアカーボン社製)1重量部に対して、PGMEA4重量部を添加して塗布液8を調製した。
Figure 0005849745
塗布液1の代りに塗布液8を用いたこと以外は有機系炭素膜1〜5と同様にして、各々表2に示す膜厚の有機系炭素膜36〜40を形成し、各々鏡面性の評価を行って結果を表2に示した。
<有機系炭素膜41〜45>
下記構造式で表されるフラーレン誘導体「J204」(フロンティアカーボン社製)1重量部に対して、PGMEA4重量部を添加して塗布液9を調製した。
Figure 0005849745
塗布液1の代りに塗布液9を用いたこと以外は有機系炭素膜1〜5と同様にして、各々表2に示す膜厚の有機系炭素膜41〜45を形成し、各々鏡面性の評価を行って結果を表2に示した。
<有機系炭素膜46〜50>
合成例2で合成した下記構造式で表されるフラーレン誘導体「D200−A」1重量部に対して、PGMEA6.7重量部を添加して塗布液10を調製した。
Figure 0005849745
塗布液1の代りに塗布液10を用いたこと以外は有機系炭素膜1〜5と同様にして、各々表2に示す膜厚の有機系炭素膜46〜50を形成し、各々鏡面性の評価を行って結果を表2に示した。
Figure 0005849745
Figure 0005849745
[有機系炭素膜の硬度評価]
表3に示す有機系炭素膜について、前述の通りJIS K−5600−5−4 塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第4節:引っかき硬度(鉛筆法)に基づいた修正法により鉛筆硬度の評価を行った。
鉛筆硬度の評価結果を、各々の有機系炭素膜の2nd加熱処理温度に対応させて、表3に示す。
Figure 0005849745
表3より、フラーレン誘導体を用いて形成した塗膜に400℃以上の加熱処理を行うことにより、高硬度有機系炭素膜を得られることが判る。
[加熱処理前後の残膜率]
加熱処理前後の残膜率として、表4に示す有機系炭素膜の製造時の1st加熱処理後の膜厚Mに対する、2nd加熱処理後の膜厚Mの割合(M/M)を求め、結果を各々の有機系炭素膜の2nd加熱処理温度に対応させて表4に示した。
Figure 0005849745
[ラマンスペクトル分析]
有機系炭素膜の原料として用いたフラーレン誘導体H200、H351、添加剤(熱酸発生剤)WPAG618、及び有機系炭素膜2(比較例相当)、同3(実施例相当)、同5(実施例相当)、同22(比較例相当)、同23(実施例相当)の顕微ラマンスペクトル分析を行った。測定結果を図1〜図7に示す。
測定装置及び条件は下表にまとめた通りである。
Figure 0005849745
Figure 0005849745
図1、図5よりフラーレン誘導体H200、H351において、フラーレン骨格構造に由来する1460cm−1付近の吸収ピークが観察され(図1,図5)、このピークは有機系炭素膜2(図2)、同22(図6)においても観測される。このことよりこれらの炭素膜ではフラーレン骨格構造が残っていることを示すものと考えられる。
一方、有機系炭素膜3(図3)、同5(図4)、及び同23(図7)においては、このピークは著しく小さくなりほとんど観測されない。
このことは、本発明において、400℃以上の温度で加熱処理することにより、フラーレン誘導体のフラーレン骨格の少なくとも一部が分解して、アモルファスカーボンまたはこれに近い構造を取るようになったことを示すものと思われ、これによって膜の硬度が向上したものと推定される。
[赤外線吸収(IR)スペクトル分析]
H200及び有機系炭素膜5の赤外線吸収スペクトル測定を行ったところ、1730cm−1付近にピークの出現が確認された(図8、図9)。
このことから、有機系炭素膜5は酸素(カルボニル基)を含有した膜であることが確認された。
なお、有機系炭素膜5については、得られた膜を剥離させて、試料1mgを秤量し、これに臭化カリウム(KBr)199mgを添加した上で乳鉢中で粉砕混合したものを、KBr錠剤法で成形してIR測定を行った。

Claims (7)

  1. 炭素のみからなる膜ではなく、強熱減量試験(Ignition Loss Test)で質量の減少を示す有機物の強熱減量成分を含む炭素膜(以下「有機系炭素膜」と称す。)を製造する方法であって、
    下記式(1)で表される構造を有するフラーレン誘導体の溶液を用いて湿式製膜された膜を400℃以上、1000℃以下で加熱処理することを特徴とする有機系炭素膜の製造方法。
    Figure 0005849745
    (但し、上記式(1)中、FLNはフラーレン骨格を表し、R は、−Ar−(OX) 又は−Ar−(CH (3−a) −(OX) で表される置換基(但し、Arは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、Oは酸素原子、Xは水素原子、又はアルコール性水酸基の保護基であり、aは0〜3の整数、bは1〜5の整数である)を表し、R は、水素原子、或いは炭素数1〜20のアルキル基又はアルケニル基を表し、mは1〜30の整数、nは0〜25の整数である。m,nが2以上の場合、複数のR 、R はそれぞれ相互に異なっていても同一でもよい。)
  2. 前記加熱処理の温度が430℃以上、800℃以下であることを特徴とする請求項に記載の有機系炭素膜の製造方法。
  3. 前記有機系炭素膜が、鉛筆硬度法で評価した硬度が2H以上の有機系炭素膜であることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機系炭素膜の製造方法。
  4. 前記フラーレン誘導体のフラーレンが、C 60 、C 70 、C 76 、C 82 、C 84 、及びC 90 フラーレンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の有機系炭素膜の製造方法。
  5. 前記湿式製膜された膜を110℃で加熱したときの膜厚M に対して、その後該膜を400℃以上、1000℃以下で加熱処理して得られる有機系炭素膜の膜厚M が0.5M 以上であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の有機系炭素膜の製造方法。
  6. 前記湿式製膜された膜を110℃で加熱して得られる膜がラマンスペクトル上の1460cm −1 ±5cm −1 に吸収ピークを有し、その後該膜を400℃以上、1000℃以下で加熱処理して得られる有機系炭素膜のラマンスペクトルでは該吸収ピークが認められないことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の有機系炭素膜の製造方法。
  7. 請求項1ないし6のいずれか一項に記載の有機系炭素膜の製造方法により、有機系炭素膜基材上に形成することを特徴とする積層体の製造方法
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