JP5847350B1 - テレフタル酸の乾燥方法および横型回転式乾燥機 - Google Patents
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Abstract
Description
また、乾燥機の大きさ(シェル径)当たりの乾燥処理量を増大できる本発明により装置の大型化に伴う前記問題を極力回避できるようにすることにある。
<請求項1記載の発明>
一端側にテレフタル酸の供給口を、他端側にテレフタル酸の排出口を有し、軸心周りに回転自在な回転筒と、加熱媒体が通る加熱管群を前記回転筒内に設け、前記回転筒の回転に伴って前記加熱管群によりテレフタル酸が回転方向に掻き上げられる構成の横型回転式乾燥機を用いて、
テレフタル酸を前記回転筒の一端側に供給して他端側から排出する過程で、前記加熱管群によりテレフタル酸を間接加熱して乾燥させる、テレフタル酸の乾燥方法であって、
下記式1、式2で定められる臨界速度比αが17〜80%未満となるように、前記回転筒を回転して、テレフタル酸を乾燥させることを特徴とするテレフタル酸の乾燥方法。
Vc=2.21D1/2 ・・・式1
α=V/Vc・100 ・・・式2
ここに、Vcは回転筒の臨界速度(m/s)、Dは回転筒の内径(m)、αは回転筒の臨界速度比(%)、Vは回転筒の回転速度(m/s)である。
従来、テレフタル酸用加熱装置の回転筒の回転数について、回転筒の内径が3.8mの場合は、回転数を2.5〜3.5rpmに設定して運転を行っている。この加熱装置は、回転筒の回転により、加熱装置内部でテレフタル酸を出口へ向かって搬送する推進力を生じさせる。このとき、テレフタル酸の搬送量が多いにも関わらず回転数が低いと、加熱装置内部でテレフタル酸が溜まり過ぎて流路が詰まることがある。このようなトラブルを回避するため、テレフタル酸の流動性を鑑み、経験則に基づいて回転数を調整し、テレフタル酸の搬送量が多い場合は回転数を高め、テレフタル酸の搬送量が少ない場合は回転数を低く設定して運転を行っている。
前記横型回転式乾燥機に供給するテレフタル酸の含液率が3〜19wt%W.B.である請求項1記載のテレフタル酸の乾燥方法。
含液率3〜19wt%W.B.のテレフタル酸を乾燥機に供給したときに、回転筒の臨界速度比αが17〜80%未満となるように回転筒の回転速度を選択して回転することで、テレフタル酸の乾燥速度を従来よりも速くすることができる。
一般的に、テレフタル酸の含液率が19wt%W.B.を超えると、どろどろした粘液状になる。そのため、含液率が19%を超えるテレフタル酸を乾燥機に供給した場合、テレフタル酸が回転筒の内壁に付着して、回転筒とテレフタル酸が一緒に回転してしまう。テレフタル酸が回転筒の上方から下方へ回転筒内の空間を落下することが少ないため、テレフタル酸と加熱管群の接触面積が増えず、乾燥速度を上げることができない。
一方、テレフタル酸の含液率を3wt%W.B.未満にするためには、乾燥工程の前の脱水工程において、高機能の高価な脱水機を用いて高い負荷をかけて脱水する必要があるため、経済性や省電力等の観点から好ましくない。
下記式3で定められるテレフタル酸の充填率ηが20〜40%となるように、前記回転筒内にテレフタル酸を供給する請求項1記載のテレフタル酸の乾燥方法。
η=Ap/Af・100 ・・・式3
ここに、ηは充填率(%)、Apは自由断面積に対してテレフタル酸の占める断面積(m2)、Afは回転筒の全断面積から全加熱管の断面積を減算した自由断面積(m2)である。
充填率ηが20〜40%であると、単位断面積当たりの処理量が多くなり、かつ、乾燥速度も速いものとなる。また、充填率ηの上限が過度に大きくないので、良好な乾燥速度を示す。より好ましい充填率ηは25〜30%である。なお、回転筒の全断面積Afとは、回転筒の任意の横断面における回転筒内部の断面積のことをいい、回転筒の肉厚部分の面積は含まない。すなわち、回転筒の内径に基づいて計算する断面積をいう。
前記加熱管を放射状または同心円上に複数配置しており、隣り合う加熱管の間の離間距離が60〜150mmである請求項1記載のテレフタル酸の乾燥方法。
隣り合う加熱管の間の離間距離は、回転筒の回転に伴って、テレフタル酸を掬い上げる量、掬い上げたテレフタル酸が落下し、伝熱管の間に戻る量と関係し、かつ、これらは回転筒の回転速度とも関連するところ、前記離間距離は、60〜150mmが適していることが知見された。
一端側にテレフタル酸の供給口を、他端側にテレフタル酸の排出口を有し、軸心周りに回転自在な回転筒と、加熱媒体が通る加熱管群を前記回転筒内に設け、前記回転筒の回転に伴って前記加熱管群によりテレフタル酸が回転方向に掻き上げられる構成とされ、
テレフタル酸を前記回転筒の一端側に供給して他端側から排出する過程で、前記加熱管群によりテレフタル酸を間接加熱して乾燥させる横型回転式乾燥機であって、
下記式1、式2で定められる臨界速度比αが17〜80%未満となるように、回転筒を回転できる構成であることを特徴とする横型回転式乾燥機。
Vc=2.21D1/2 ・・・式1
α=V/Vc・100 ・・・式2
ここに、Vcは回転筒の臨界速度(m/s)、Dは回転筒の内径(m)、αは回転筒の臨界速度比(%)、Vは回転筒の回転速度(m/s)である。
装置の観点から、請求項1と同様の作用効果を奏する。
前記横型回転式乾燥機は、前記回転筒の回転軸が水平面に対して傾斜して設けられ、前記回転筒の一端側が他端側よりも高く位置しており、
前記回転軸と水平面の間の傾斜角が0.057〜2.86度である請求項5記載の横型回転式乾燥機。
回転筒の臨界速度比αが17〜80%未満となるように回転筒を回転した場合、回転筒の回転速度が従来よりも速いため、テレフタル酸を一端側から他端側へ移動させる推進力が従来よりも強くなる。
一般的に横型回転式乾燥機の回転筒は水平面に対して傾斜して設けられている。これは、一端側から他端側へ被処理物(テレフタル酸等)を移動しやすくするためである。被処理物を一端側から他端側へ移動させる推進力が弱い場合は、この傾斜角を大きくしなければならないが、本発明のように推進力が強い場合は、この傾斜角を小さくすることができる。傾斜角を小さくするほど回転筒に生じる軸方向荷重を支持する部品(スラストローラー)を小型化でき、安価なものとすることができるという利点がある。
一般的な横型回転式乾燥機の回転筒の傾斜角は0.57〜5.7度であるが、本発明では0.057〜2.86度にすることができる。
一般に、乾燥機を用いた被処理物Wの乾燥速度は、下記の式4のように表すことができる。
Q=Uoa×Aef×Tln ・・・式4
ここに、Qは伝熱量(W)であり、Uoaは総括伝熱係数(W/m2−K)であり、Aefは有効接触伝熱面積(m2)であり、Tlnは温度差(℃)である。
本発明者は、総括伝熱係数Uoa及び有効接触伝熱面積Aefに着目し、これらを高めるために、伝熱面と被乾燥物との相対的接触速度をより速くすること、およびテレフタル酸の分散を良くして伝熱面とテレフタル酸との有効接触伝熱面積をより増大させることを考えた。実際に各種の実験・検討を行ったところ、本発明の手法の有効性を明確に確認できた。
まず、被処理物W(乾燥対象物)としてテレフタル酸(1,4−ベンゼンジカルボン酸)を挙げることができる。このテレフタル酸は、パラキシレンの液相空気酸化法で製造することができる。具体的には、コバルトやマンガンを触媒として臭素化合物を助触媒に用いて、酢酸溶媒中、降温・高圧で空気を酸化する。そのほか、パラキシレンを原料とする硝酸酸化法、フタル酸または安息香酸のカリウム塩を原料とするヘルケル法等で製造しても良い。
本発明の中位径(「メジアン径」ともいう。)は、例えばレーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、商品名SALD−3100、島津製作所社製)を用いて粒度分布を測定し、累積体積が50%に相当する時の粒子径を中位径(D50)として定める。
次に、本発明に係る横型回転式乾燥機(以下、「STD(Steam Tube Dryerの略称)」ともいう。)について説明する。この横型回転式乾燥機の構造は、図1に例示するように、円筒状の回転筒10を有し、この回転筒10の軸心RAが水平面HPに対して若干傾くようにして設置されており、回転筒10の一端が他端よりも高く位置している。本発明においては、前記回転軸RAと水平面HPの間の傾斜角θを0.057〜2.86度にすることが好ましい。回転筒10の下方には、2台の支持ユニット20及びモーターユニット30が回転筒10を支持するようにして設置されており、回転筒10は、モーターユニット30によって、自身の軸心回りに回転自在とされている。この回転筒10は、一方向に回転するようになっている。その方向は任意に定めることができ、例えば、他端側(テレフタル酸の排出口側)から一端側(テレフタル酸の供給口側)を見て、反時計回り(矢印R方向)に回転させることができる。
図1において、開口50は裸で図示されているが、たとえば図4に示す分級フード55などで覆われている。分級フード55の下部には、処理物Eを排出する排出口55が形成されている。
回転筒10内を一端側まで流通したキャリアガスAは、この開口41を通じて機外へ排出される。
次に、図1〜図3を参照しながら、横型回転式乾燥機でテレフタル酸を乾燥する過程を説明する。
本発明に係る横型回転式乾燥機の変形例を説明する。
横型回転式乾燥機へテレフタル酸を供給する方式には、前記スクリュー式(図2)のほか、シュート式(図5)や振動トラフ式(図6)を例示できる。シュート式では、供給シュート46が吸気ボックス45と結合しており、供給口41から供給したテレフタル酸が、供給シュート46内を落下し、回転筒10内へ移動する。吸気ボックス45がシールパッキン47を介して回転筒10に接続しており、回転筒10と吸気ボックス45間のシールを維持しながら、回転筒10が回転する構造になっている。振動トラフ式では、吸気ボックス45がトラフ(断面形状が凹状)であり、その吸気ボックス45の下端に振動モータ48とばね49が結合している。供給口41から供給したテレフタル酸は、トラフの上に落下する。そして、振動モータ48により吸気ボックス45が振動することにより、テレフタル酸が回転筒10内へと移動する。吸気ボックス45を取り付ける際は、テレフタル酸が移動しやすいように、回転筒10へ向かって下る傾斜を持たせると良い。
回転筒10の断面形状は、後述する円形のほか、矩形にしても良い。矩形の例として、六角形の回転筒10を図7に示す。矩形の回転筒10を回転すると、回転筒10の角部15によりテレフタル酸が持ち上がるため、テレフタル酸の混合が良くなる。一方で、円形の場合に比べて、回転筒10の断面積が狭くなるため、配置する加熱管11の数が減るというデメリットも存在する。なお、矩形の角部の数(辺の数)は変更でき、より詳しくは、角部の数を3つ以上の任意の数にすることができる。
横型回転式乾燥機から処理物Eを排出する方式としては、図9のような形態も採用できる。かかる形態において、キャリアガスAは、ケーシング80の上部のキャリアガス供給口33から隔壁23の内側へ送り込まれる。このキャリアガスAが再利用ガスである場合は、キャリアガスA中に粉塵等が含まれているが、隔壁23の内側、すなわちガス通路U2には、リボンスクリューZが配されているため、ガスに混入している粉塵等は、このリボンスクリューZによって捕捉される。捕捉された粉塵等は、リボンスクリューZの送り作用により開口部22へ向かって送られ、ケーシング80内へ排出される。排出された粉塵等は、自由落下によりケーシング下方の排出口32から排出される。一方、キャリアガスAの粉塵等以外の気体は、リボンスクリューZによって妨げられることなく、回転筒10内へ送られる。
そのほか、回転筒10の支持構造は、回転筒10の外周に2つのタイヤ部材20、20を取り付ける前記支持構造のほか、一端側に設けたスクリューケーシング42と、他端側に設けたガス管72の外周にベアリング(図示しない)を取り付け、このベアリングを支持する構造や、前記タイヤ部材25とベアリングを組み合わせる支持構造にしても良い。
本発明は、テレフタル酸の乾燥速度を上げるため、従来の横型回転式乾燥機よりも、回転筒10を高速で回転させる。この回転速度の決定方法について、以下に説明する。
横型回転式乾燥機の処理負荷PLを決定する。具体的には、テレフタル酸の種類、含液率(wt%W.B.)、目標の処理量(kg/h)等を基に、負荷PLを算出する。
小型の横型回転式乾燥機を実験機として用いて、単位負荷当たりのテレフタル酸の乾燥速度Rdを調査する。
前記工程2で調査したテレフタル酸の乾燥速度Rdを基にして、回転筒10のサイズを決定する。
回転筒10の回転数を決定する。従来の回転数決定法は、重要な基準として回転筒10の回転速度(本発明では、「回転速度」を「周速」ともいう。)を用いており、具体的には、下記式5を用いて回転数を決定していた。なお、回転速度Vの値は、約0.1〜0.7[m/s]の範囲内で経験則に基づいて決定していた。
N=(V×60)/(D×π) ・・・式5
ここに、Nは回転筒10の回転数(r.p.m.)であり、Vは回転筒10の回転速度(m/s)であり、Dは回転筒10の内径(m)である。
N=V/Vc×Nc ・・・式6
ここに、Nは回転筒10の回転数(r.p.m.)であり、Vは回転筒10の回転速度(m/s)であり、Vcは回転筒10の臨界速度(m/s)であり、Ncは回転筒10の臨界回転数(r.p.m.)である。
前記式6の「臨界速度」と「臨界回転数」について詳述する。図12を参照すると、「臨界速度」は、横型回転式乾燥機内で、テレフタル酸の重力とテレフタル酸に作用する遠心力がつり合う回転速度であり、理論上、テレフタル酸が回転筒10と共廻りする回転筒10の回転速度をいう。なお、rωは速度を表す。また、「臨界速度比」とは、前記臨界速度に対する実際の回転速度の比をいう。
臨界速度について、詳述する。臨界速度は、テレフタル酸の重力(mg)と遠心力(mrω2)が同じであるため、下記の式7が成り立つ。
mg=mrω2 ・・・式7
ここに、mはテレフタル酸の質量(kg)、gは重力加速度(m/s2)、rは回転筒10の半径(m)、ωは角速度(rad/s)である。
g=r(Vc/r)2 ・・・式8
ここに、gは重力加速度(m/s2)であり、rは回転筒10の半径(m)であり、Vcは回転筒10の臨界速度(m/s)である。
Vc=(rg)1/2=(D/2・g)1/2=2.21D1/2
Vc=2.21D1/2 ・・・式1
ここに、Vcは回転筒10の臨界速度(m/s)、Dは回転筒10の内径(m)である。
次に、回転筒の臨界速度比について説明する。回転筒の臨界速度比αは、臨界速度(Vc)に対する実際の回転速度Vの比を指すため、下記式2によって表すことができる。
α=V/Vc・100 ・・・式2
ここに、αは回転筒10の臨界速度比(%)、Vは回転筒10の回転速度(m/s)、Vcは回転筒10の臨界速度(m/s)である。
なお、臨界速度における回転筒10の回転数を「臨界回転数」といい、下記式9により求めることができる。
Nc=Vc・60/(πD)=2.21D1/2・60/(πD)=42.2/D1/2
Nc=42.2/D1/2 ・・・式9
ここに、Ncは回転筒10の臨界回転数(r.p.m.)、Vcは回転筒10の臨界速度(m/s)、Dは回転筒10の内径(m)である。
回転筒10の内径が370mmの横型回転式乾燥機を用いて、回転筒の臨界速度比α(%)とテレフタル酸の乾燥速度Rdの関係について実験を行った。回転筒10内に配置する加熱管11の隙間Kは60mmである。
なお、図13で回転筒10内に記載した実線の矢印は、テレフタル酸が落下する方向を表しており、破線の矢印は、加熱管11が移動する方向を表している。
回転筒10の内径が1830mmの横型回転式乾燥機を用いて、回転筒の臨界速度比α(%)とテレフタル酸の乾燥速度Rdの関係性について実験を行った。この実験では、含液率が異なる4種類の試料(テレフタル酸)を横型回転式乾燥機にバッチ式で投入した。各テレフタル酸の含液率は、テレフタル酸1が5wt%W.B.、テレフタル酸2が9wt%W.B.、テレフタル酸3が13wt%W.B.、テレフタル酸4が17wt%W.B.である。
次に、回転筒10の内径が異なる2つの横型回転式乾燥機を用いて、回転筒の臨界速度比α(%)とテレフタル酸の乾燥速度Rdの関係性を調べた。回転筒10の内径は、それぞれ370mmと1830mmである。この実験では、含水率9wt%w.b.のテレフタル酸を横型回転式乾燥機にバッチ式で投入した。実験結果を図15に示す。なお、図15の乾燥速度の値は、相対数値である。詳しくは、臨界速度比が10%のときの乾燥速度の値を1と定め、その値を基準にした相対数値で表している。
次に、回転筒10内のテレフタル酸の充填率を変えた場合における回転筒の臨界速度比α(%)とテレフタル酸の乾燥速度Rdの関係性を調べた。具体的には、内径370mmの横型回転式乾燥機にテレフタル酸を13kg/h投入して実験を行った。回転筒10に配置する加熱管11の隙間Kは60mmである。また、このテレフタル酸の中位径は120mmである。
η=Ap/Af・100 ・・・式3
ここに、ηは充填率(%)、Apは自由断面積に対してテレフタル酸の占める断面積(m2)、Afは回転筒10の全断面積から全加熱管11の断面積を減算した自由断面積(m2)である。なお、回転筒10の全断面積Afは、回転筒10の任意の横断面における回転筒10内部の断面積のことをいい、回転筒10の肉厚部分の面積は含まない。すなわち、回転筒10の内径に基づいて計算する断面積をいう。
図17に加熱管11の隙間Kを示す。この例においては、隙間Kは4つの同心円列ですべて同一の例が示されている。このために、加熱管11の径を外側ほど大きくしてある。隣接する加熱管11の間(隙間)Kの距離は60〜150mmにすることが好ましい。もちろん、加熱管11の径は同一径とする、隙間Kはたとえば外側ほど大きくするなど、適宜の変形が可能である。また、後述する第1の配置形態又は第2の配置形態を採ることもできる。
前記の各説明や各式においては、回転筒10の内径Dを用いており、外径は用いなかった。しかし、前記各式を補正して、外径を用いても良い。この点について、以下に詳述する。
D=Do−(2×t) ・・・式10
Vc=2.21D1/2 ・・・式1
Vc=2.21×(Do−2×t)1/2
本発明において加熱管11にサイズ及び配置は適宜選択できるものの、本発明者らの高速回転化を指向する過程の中で、主に接触効率を高め、もって乾燥速度を高めるためには、次述する手段が有効であるとの知見を得た。
従来は、図26に示すように、回転筒10内に加熱管11を放射状に配置していた。回転筒10内では、テレフタル酸(粉粒体)が回転筒10下部に移行した複数の加熱管11の隙間に入り込み、回転筒10の回転に伴って、複数の加熱管11により回転方向に掻き上げられる。安息角まで掻き上げられたテレフタル酸は、主に安息角を越えた時点から崩落し始め、落下運動に転じる。より詳しくは、安息角限を超えて、より上方に位置する複数の加熱管11の間から雪崩のように落下し、回転筒10下部に位置する加熱管11に衝突する。
すなわち、一端側にテレフタル酸の供給口を、他端側にテレフタル酸の排出口を有し、軸心周りに回転自在な回転筒10と、加熱媒体が通る多数の加熱管11、11…を前記回転筒10内に設け、テレフタル酸を前記回転筒10の一端側に供給して他端側から排出する過程で、前記加熱管11、11…によりテレフタル酸を加熱して乾燥させる横型回転式乾燥機において、加熱管11、11…の配置は、次の配置形態が望ましいのである。
前記加熱管11、11…群が、前記回転筒10の中心を中心とする実質的に同心円状に配置され、その中心側円上の第1基準加熱管S1芯から、第2基準加熱管S2芯までを繋ぐ繋ぎ線が、次記(1)または(2)の配置形態の一つ又はこれらを組み合わせた配置形態から選択されるものである。
(1)各加熱管11、11…芯が、第1基準加熱管S1芯と第2基準加熱管S2芯とを直接繋ぐ直線L1上に位置しており、さらに、第1基準加熱管S1芯を通る半径放射線J1に対して、前記第2基準加熱管S2芯が、回転筒10の回転方向後方に位置している第1配置形態。
(2)各加熱管11、11…芯が、第1基準加熱管S1芯と第2基準加熱管S2芯とを繋ぐ曲線L2上に位置しており、かつ、第2基準加熱管S2芯に向かうほど回転筒10の回転方向後方に位置しており、さらに、第1基準加熱管S1芯を通る半径放射線J1に対して、第2基準加熱管S2芯が、回転筒10の回転方向後方に位置している第2配置形態。
そのほか、本発明の別の好適な形態の下では、回転筒10の回転軸の同心円上において、中心側から外側に位置するに従って、隣り合う加熱管11の隙間を大きくした配置とすることもできる。図19〜図21は、中心側から外側へ向かうに従って、隣り合う加熱管11の隙間を次第に大きくする配置とした例である。
前記のように加熱管11を曲線状または斜め直線状に配置することで、テレフタル酸が落下する方向とテレフタル酸が複数の加熱管11の間に入り込む方向が近似し、落下したテレフタル酸はその運動方向を大きく変えずに複数の加熱管11、11の隙間に入り込む。加熱管11、11の隙間に入り込んだテレフタル酸は、回転筒10の内側から外側へと流れ、回転筒10の筒壁に到達する。加熱管11の配置を選定することで、加熱管11の隙間にテレフタル酸が速やかに入り込み、加熱管11の外側(回転筒10の中心側)に滞留せず、テレフタル酸と加熱管11の接触が良くなるため、乾燥効率を向上させることができる。また、テレフタル酸と加熱管11の接触面積が増大し、両者の接触時間も増えるため、この点からも乾燥効率を向上させることができる。
同心円上にある加熱管11の本数を全て同じにしても良いが、加熱管11を直線状に設けた場合には、図24に示すように、回転筒10の最外周から中間付近までの加熱管11の本数を、回転筒10の中間付近から最内周までの加熱管11の本数より多くした方が良い。このように、中間付近から最外周までの加熱管11の本数を増やすことで、隣り合う加熱管11、11の間の距離を最内周から最外周までほぼ同じにすることができる。そして、加熱管11の本数を増やすことで、加熱管11の伝熱面積が増え、回転筒10の外周側へ移動したテレフタル酸の乾燥効率を向上させることができる。
加熱管11の直径を全て同じにしても良いが、図20に示すように、回転筒10の内周側から外周側へ向かうに連れて、次第に直径を大きくすることもできる。このように、加熱管11の直径を変えることで、隣り合う加熱管11の間の距離を内周から外周までほぼ同じにすることができる。このように加熱管11の直径を大きくすることで、加熱管11の伝熱面積が増え、回転筒10の外周側へ移動したテレフタル酸の乾燥効率を向上させることができる。
加熱管11の配列の決定方法について、図20を参照しながら説明する。なお、加熱管11の配列を「行列」で表し、回転筒10の径方向(回転筒10の中心側から外側へ向かう方向)の配列を「列」とし、円周方向の配列を「行」とする。
なお、図19〜図25では、加熱管11を複数列配置した例を示したが、図13に例示するように、加熱管11を1列だけ配置しても良い。
11 スチームチューブ(加熱管)
41 供給口
50 排出口
55 分級フード
56 固定排気口
57 固定排出口
60 掻上板
65 撹拌手段
A キャリアガス
E 処理物
W 被処理物(テレフタル酸)
Claims (6)
- 一端側にテレフタル酸の供給口を、他端側にテレフタル酸の排出口を有し、軸心周りに回転自在な回転筒と、加熱媒体が通る加熱管群を前記回転筒内に設け、前記回転筒の回転に伴って前記加熱管群によりテレフタル酸が回転方向に掻き上げられる構成の横型回転式乾燥機を用いて、
テレフタル酸を前記回転筒の一端側に供給して他端側から排出する過程で、前記加熱管群によりテレフタル酸を間接加熱して乾燥させる、テレフタル酸の乾燥方法であって、
下記式1、式2で定められる臨界速度比αが17〜80%未満となるように、前記回転筒を回転して、テレフタル酸を乾燥させることを特徴とするテレフタル酸の乾燥方法。
Vc=2.21D1/2 ・・・式1
α=V/Vc・100 ・・・式2
ここに、Vcは回転筒の臨界速度(m/s)、Dは回転筒の内径(m)、αは回転筒の臨界速度比(%)、Vは回転筒の回転速度(m/s)である。 - 前記横型回転式乾燥機に供給するテレフタル酸の含液率が3〜19wt%W.B.である請求項1記載のテレフタル酸の乾燥方法。
- 下記式3で定められるテレフタル酸の充填率ηが20〜40%となるように、前記回転筒内にテレフタル酸を供給する請求項1記載のテレフタル酸の乾燥方法。
η=Ap/Af・100 ・・・式3
ここに、ηは充填率(%)、Apは自由断面積に対してテレフタル酸の占める断面積(m2)、Afは回転筒の全断面積から全加熱管の断面積を減算した自由断面積(m2)である。 - 前記加熱管を放射状または同心円上に複数配置しており、隣り合う加熱管の間の離間距離が60〜150mmである請求項1記載のテレフタル酸の乾燥方法。
- 一端側にテレフタル酸の供給口を、他端側にテレフタル酸の排出口を有し、軸心周りに回転自在な回転筒と、加熱媒体が通る加熱管群を前記回転筒内に設け、前記回転筒の回転に伴って前記加熱管群によりテレフタル酸が回転方向に掻き上げられる構成とされ、
テレフタル酸を前記回転筒の一端側に供給して他端側から排出する過程で、前記加熱管群によりテレフタル酸を間接加熱して乾燥させる横型回転式乾燥機であって、
下記式1、式2で定められる臨界速度比αが17〜80%未満となるように、回転筒を回転できる構成であることを特徴とする横型回転式乾燥機。
Vc=2.21D1/2 ・・・式1
α=V/Vc・100 ・・・式2
ここに、Vcは回転筒の臨界速度(m/s)、Dは回転筒の内径(m)、αは回転筒の臨界速度比(%)、Vは回転筒の回転速度(m/s)である。 - 前記横型回転式乾燥機は、前記回転筒の回転軸が水平面に対して傾斜して設けられ、前記回転筒の一端側が他端側よりも高く位置しており、
前記回転軸と水平面の間の傾斜角が0.057〜2.86度である請求項5記載の横型回転式乾燥機。
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