JP5843222B2 - 電池システム - Google Patents

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Description

本発明は、電池システム、例えば車両駆動電源用の非水電解液二次電池を備えるシステムに関する。
リチウム(イオン)二次電池等の二次電池の抵抗上昇を引き起こす要因としては種々の要素が挙げられ、特に、例えばハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車等の車両駆動電源(車載電源)に用いられるリチウム二次電池では、主に材料劣化とハイレート劣化による抵抗上昇を抑制するための研究開発が活発に行われている。これらの劣化要因のうち、材料劣化は、使用する電極、電解液等の材料自体の劣化に起因して運転時間の経過とともに二次電池の抵抗が増加していく現象である。一方、ハイレート劣化は、主として電解液中の塩濃度のムラ(偏り)によって抵抗増加が生起される現象であって、二次電池の充放電の条件によっては生じたり生じなかったりする傾向にある(例えば、充放電電流が比較的大きい場合に生じ易い。)。
このように、ハイレート劣化は、二次電池に使用する部材や材料固有の物性及び特性に因るのみならず、二次電池及びそれが搭載された車両の運転条件や環境条件にも依存する複合的且つ複雑な事象であることから、ハイレート劣化を抑制するためには、二次電池の負荷状態及び運転条件を制御することが極めて重要となる。
そこで、二次電池におけるこのようなハイレート劣化を抑制するために、本出願人は、電極体内のリチウムイオン濃度の偏りに着目し、そのリチウムイオン濃度の偏りから二次電池におけるハイレート放電値の劣化に関する評価値(劣化評価値)を算出し、さらに、その劣化評価値に基づいて、二次電池の充放電制御を行う方法を提案している(例えば特許文献1参照)。
特開2009−123435号公報
しかし、本発明者及び本出願人による更なる研究によれば、特許文献1に記載の充放電制御を適用した場合、特にハイレート放電の際の抵抗上昇を十分に制御して抑制することが可能であるものの、ハイレート充電時の抵抗上昇対策としては、未だ改善の余地があることが判明した。
そこで、本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、二次電池に対してハイレート劣化を引き起こす主要因に応じた適切な充放電制御が可能であり、これにより、二次電池の放電(過多)のみならず充電(過多)に起因するハイレート劣化を十分に抑制することができる電池システムを提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明による電池システムは、正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、非水溶媒中にリチウム塩を含む非水電解液とを有する電極体を備え、且つ、車両に搭載される駆動用電源として使用される二次電池と、電極体の中央部における第1の圧力(例えば面圧)、及び、電極体の端部における第2の圧力(例えば面圧)に基づいて、二次電池の充電及び/又は放電に起因する抵抗上昇が生じるか否かを判定する制御部とを備える。
ここで、二次電池の「中央部」及び「端部」とは、それぞれ、二次電池を任意の方向から平面視したときのその平面領域における中央部分、及び、その平面領域における周縁端部(中央部分以外の部分)を示す。
本発明者の知見によれば、このように構成された電池システムでは、二次電池の充放電時に非水電解液中のリチウム塩濃度に偏りが生じることに起因して電極体の抵抗増加が生じるようなハイレート劣化と、二次電池の面圧挙動との間に有意な相関関係があり、さらに、かかるハイレート劣化の原因となり得るような充放電時に、それぞれに特有な二次電池の面圧分布が生起されることを見出した。よって、本発明による電池システムに備わる制御部によって、電極体の中央部における第1の圧力と電極体の端部における第2の圧力とに基づいて、二次電池の充電に起因する抵抗上昇が生じるか否か、及び、二次電池の放電に起因する抵抗上昇が生じるか否かを判定することにより、二次電池への電流の入出力を適正に制御してハイレート劣化を十分に且つ確実に抑制することができ、その結果、二次電池の性能を長期に亘って良好に維持することが可能となる。
また、それのみならず、電極体の中央部の第1の圧力及び端部の第2の圧力に基づいて、二次電池の面圧挙動の相違を見極めることができ、これにより、予期されるハイレート劣化の主要因、すなわち、ハイレート劣化が二次電池への充電過多と二次電池からの放電過多の何れに因るものであるかを的確に判別することができるので、二次電池に対する不必要な過度の制御を予防して、車両の燃費低下及び出力低下といった不都合を抑止することも可能となる。
なお、「第1の圧力と第2の圧力に基づいて」とは、第1の圧力及び第2の圧力そのもの自体に基づくのみならず、それらの第1の圧力及び第2の圧力の任意の補正値を用いることも含意する。例えば、後述するとおり、第1の圧力及び第2の圧力として、それぞれ、電極体の中央部及び端部の面圧を測定する場合、そのリチウム二次電池の通電後(電極体の充放電後)の面圧から、通電前(電極体の充放電前)の初期面圧を差し引いた値を用いる場合も含まれる(この点において、本発明においては、「圧力」を「圧力差」と読み替えてもよい。)。
また、上記構成の電池システムのより具体的な態様としては、例えば、制御部が、二次電池の充電(過多)に起因する抵抗上昇が生じると判断されたときに、二次電池への入力電流を調節(制限)し、又は、二次電池の放電(過多)に起因する抵抗上昇が生じると判断されたときに、二次電池からの出力電流を調節(制限)するような制御を実行するものである構成が挙げられる。
さらに、上記構成の電池システムのより好ましい態様としては、電極体は、非水電解液が含浸されたセパレータを介して正極と負極が積層された構造を有する捲回体であり、その場合の第2の圧力がその捲回体の開口端部における圧力であってもよい。このように、電極体が捲回体である場合、充電時と放電時における面圧分布の差異がより顕著となり、その結果、第1の圧力と第2の圧力に基づく抵抗上昇(ハイレート劣化)の判定感度及び精度がより向上され得るとともに、そのハイレート劣化が充電過多によるものか放電過多によるものかの判別(特定)精度を高めることもできる。
さらに、上記構成の電池システムの更に好ましい態様としては、制御部を、所定の期間内において、第1の圧力が所定の第1の閾値(圧力)を超えたときのその第1の圧力と第1の閾値との差を積算して得られる第1の積算値、及び、第2の圧力が所定の第2の閾値(圧力)を超えたときのその第2の圧力と第2の閾値との差を積算して得られる第2の積算値に基づいて、二次電池の抵抗上昇が充電及び放電の何れに起因するかを判定するように構成してもよい。この場合、第1の圧力に対する第1の閾値、及び、第2の圧力に対する第2の閾値は、例えば、予め(実際の二次電池の運転に先立って)、対象の二次電池に対して充放電(過多)運転を行い、電池抵抗をモニター等しながら、ハイレート劣化が生じたときのその二次電池の電極体における第1の圧力及び第2の圧力を測定し、そのときの充電及び放電の面圧挙動に基づいて適宜設定することができる。
このように、第1の圧力と第1の閾値との差、及び、第2の圧力と第2の閾値との差を積算して得られる第1の積算値及び第2の積算値を抵抗上昇の主要因の判別に用いることにより、所定の期間内の一時期(ある時点)において、第1の圧力や第2の圧力が偶発的に過度に増大してしまったような場合でも、そのような不確定な偶発事象に基づいてハイレート劣化が生じる可能性を誤判定(誤予測)してしまうことが防止される。その結果、ハイレート劣化が生じる可能性の判定精度、及び、そのハイレート劣化の主要因の判別精度が更に向上される。
この場合、第1の圧力及び第2の圧力が経時的に緩和されることを考慮して第1の積算値及び第2の積算値を算出するように、制御部を構成するとより一層好適である。
本発明者の知見によれば、ハイレート劣化による抵抗上昇は、二次電池の運転時間の経過とともに抵抗の継続的な増大を引き起こすので、電極体の抵抗は非可逆的に徐々に増大する傾向にあるのに対し、例えば、二次電池の第1の圧力及び第2の圧力を所定の時間間隔でサンプリングして第1の積算値及び第2の積算値を求めるような場合、充電過多や放電過多が生じていないときには、一旦増大した第1の圧力及び第2の圧力は緩和されて低下する(復帰する)傾向にある。よって、このような圧力緩和現象を考慮(例えば緩和係数で補正)して第1の積算値及び第2の積算値を求めることにより、第1の圧力と第2の圧力によるハイレート劣化の判定感度及び精度、並びに、そのハイレート劣化の主要因の判別精度が更に一層向上され得る。
またさらに、上記構成の電池システムの更に好ましい態様としては、制御部が、第1の積算値と第2の積算値との比に基づいて、二次電池の抵抗上昇が充電及び放電の何れに起因するかを判定する構成が挙げられる。
本発明者の知見によれば、充電過多の場合には、二次電池の中央部の第1の圧力の第1の積算値が、二次電池の端部の第2の圧力の第2の積算値よりも大きくなる傾向にある一方、放電過多の場合には、それらの第1の積算値及び第2の積算値は、実質的に同等か、或いは、両者の差は充電過多の場合よりも比較的小さい傾向にある。よって、第1の積算値と第2の積算値との比を、例えば、対象の二次電池及びその運転条件や環境条件に応じて予め設定しておいた所定の閾値と比較することにより、予期される二次電池のハイレート劣化が充電及び放電の何れに起因するのかをより確実に判定することができる。
また、換言すれば、本発明による電池システムは、正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、非水溶媒中にリチウム塩を含む非水電解液とを有する電極体を備え、且つ、車両に搭載される駆動用電源として使用される二次電池における電流の入出力を制御するシステムであって、電極体の中央部における第1の圧力、及び、電極体の端部における第2の圧力に基づいて、二次電池の充電及び/又は放電に起因する抵抗上昇が生じるか否かを判定し、二次電池の充電に起因する抵抗上昇が生じると判断されたときに、二次電池への入力電流を調節し、又は、二次電池の放電に起因する抵抗上昇が生じると判断されたときに、二次電池からの出力電流を調節する。
ところで、上述した実施態様によるハイレート劣化の可能性判定は、二次電池に対する過去の充放電実績に基づく制御の一種と言うこともできるが、本発明者が二次電池のハイレート劣化について更に研究を進めたところ、二次電池に対する充放電の条件に拘らずハイレート劣化の発生予測を更に高い精度で行い得ることを見出した。すなわち、本発明者の知見によれば、二次電池に対して、特に、急速充電を行いかつ二次電池のSOC(State Of Charge)が大きく変化すると、場合によっては、二次電池の面圧が非常に大きく変動してしまうこと、つまり、二次電池のSOCの相違によって前述した面圧挙動が有意に異なることが確認され、その面圧挙動に基づく有効な補正手法を確立するに至った。
そこで、上記構成の電池システムの更に好ましい態様として、制御部が、二次電池の充電時のSOCに基づいて、第1の圧力及び第2の圧力を補正し、その補正後の第1の圧力及び第2の圧力に基づいて、二次電池の充電及び/又は放電に起因する抵抗上昇が生じるか否かを判定するものであっても好適である。
このようにすれば、二次電池の充電後の運転条件が同じながら、二次電池の充電時のSOCの相違によって面圧(第1の圧力及び第2の圧力)の変化の程度が異なる場合であっても、第1の圧力及び第2の圧力について、そのSOCの相違に起因する面圧の変化分が補正されるので、ハイレート劣化によって引き起こされ得る抵抗上昇の判定精度を向上させることができる。
さらに、この場合のより具体的な態様として、制御部が、SOCによって変化する電極体の面圧変化値を予測し、第1の圧力及び第2の圧力の補正として、第1の圧力及び第2の圧力のそれぞれの測定値から、その面圧変化値(予測値)を減算する(差し引く)ように構成した例が挙げられる。
充電によって二次電池のSOCが増加すると、SOCが比較的小さい場合に比して、その後の電極体の面圧変化量が増大する傾向にあり、また、SOCが大きい程、その変化率もより大きくなる傾向にあることが確認された。よって、二次電池の充電後のSOCに基づいてSOCの増大による言わば容量面圧の増大分を予測し、面圧のその増大分を、第1の圧力及び第2の圧力のそれぞれの測定値から減算する補正を行うことにより、二次電池の運転によって生じたハイレート劣化による面圧変化をより正確に把握することができる。
本発明によれば、電極体の中央部における第1の圧力、及び、電極体の端部における第2の圧力に基づいて、二次電池の充電及び/又は放電に起因するハイレート劣化が生じるか否かを判定し、また、その結果に基づいて、ハイレート劣化を引き起こす主要因(二次電池の充電過多又は放電過多)を判別(特定)することができるので、その主要因に応じた適切な充放電の制御が可能となり、これにより、二次電池の放電のみならず充電に起因するハイレート劣化を十分に抑制することができる。
本実施形態の電池システムが搭載された車両を示す模式図である。 本実施形態の電池システムにおける二次電池の構成を概略的に示す斜視図である。 図2におけるIII−III線断面図である。 二次電池の運転制御の一実施形態における手順の一例を示すフロー図である。 (A)及び(B)は、二次電池の電極体の中央部及び端部の面圧閾値を決定するための耐久試験条件の一例を模式的に示す概念図である。 耐久試験(放電過多ハイレートサイクル条件)実施後の電極体における幅方向面圧分布の測定結果の一例を示すグラフである。 耐久試験(充電過多ハイレートサイクル条件)実施後の電極体における幅方向面圧分布の測定結果の一例を示すグラフである。 SOCが10%〜100%の範囲で異なる場合における電極体の幅方向における面圧分布を測定した結果の一例を示す。 二次電池の運転制御の別の一実施形態における手順の一例を示すフロー図である。 電極体における補正前後の中央部面圧及び端部面圧と、SOCの寄与による中央部容量面圧及び端部容量面圧との関係の一例を示すグラフである。 二次電池の電極体の中央部及び端部の面圧閾値を決定するための耐久試験条件の他の例を模式的に示す概念図である。 二次電池に対して図11に示す単位サイクルを実施し、所定のサイクル数毎にその二次電池の抵抗増加率を測定した結果を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。また、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。さらに、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施の形態のみに限定する趣旨ではない。またさらに、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。
<電池システム>
図1は、本実施形態の電池システム及びこれが搭載された車両を示す模式図であり、図2は、本実施形態の電池システムにおける二次電池の構成を概略的に示す斜視図であり、図3は、図2におけるIII−III線断面図である。
(二次電池)
図1に示す如く、電池システム1000は、リチウム二次電池100と、それに接続された制御部200を備えている。リチウム二次電池100は、車両1(例えば自動車、特にハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車といった電動機を備える自動車)に搭載され、その車両1を駆動するための電源として機能する非水電解液二次電池である。
また、図2及び図3に記載のとおり、リチウム二次電池100は、略角筒状(直方体形状)をなす電池ケース10の内部に、電解質が含浸されたセパレータを介して正極と負極が積層されてなるいわゆる捲回体として構成された電極体20が収容され、そのケース10の開口部12が蓋体14によって閉塞された構造を有している。また、蓋体14には、外部接続用の正極端子38及び負極端子48が設けられており、それらの正極端子38及び負極端子48は、図示上端側の一部が蓋体14の表面から外部に突設されており、それぞれの図示下端部が、電池ケース10の内部において、内部正極端子37及び内部負極端子47に接続されている。
さらに、電極体20は、例えば長尺状の正極集電体32の表面に正極活物質層34を有する正極シート30、及び、長尺状の負極集電体42の表面に負極活物質層44を有する負極シート40が、長尺シート状のセパレータ50を介して交互に積層されたものである。この積層体たる電極体20は、例えば、その軸芯(図示しない)の周囲に筒状に捲回されて得られた捲回電極体を、側面方向から押しつぶすようにして扁平形状に成形されており、開口端20a,20aが電池ケース10の側壁16,16に対向するように、電池ケース10内に配置されている。
また、上述した内部正極端子37及び内部負極端子47は、それぞれ、正極集電体32の正極活物質層非形成部36、及び、負極集電体42の負極活物質層非形成部46に、超音波溶接や抵抗溶接等の適宜の手法によって接合されており、これにより、電極体20の正極シート30及び負極シート40と電気的に接続されている。
セパレータ50は、正極シート30及び負極シート40間に介在しており、正極シート30に設けられた正極活物質層34と、負極シート40に設けられた負極活物質層44の両方に当接するように配置されている。このセパレータ50に形成された空孔内に電解質(非水電解液)を含浸させることにより、正極及び負極間に伝導パス(導電経路)が画成される。なお、セパレータ50は、正極活物質層32及び負極活物質層44の積層部位の幅よりも大きく、且つ、電極体20の幅よりも小さい幅を有しており、正極集電体32と負極集電体42が互いに接触して内部短絡を生じないように、正極活物質層34及び負極活物質層44の積層部位に挟持されるように設けられている。
かかるセパレータ50の構成材料としては、当業界で公知のものを適宜用いることができ、特に制限されない。例えば、樹脂からなる多孔性シート(微多孔質樹脂シート)を好ましく用いることができ、その樹脂の種類としては、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン等のポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。セパレータ50は、単層のもの(単層体)、2層或いは3層以上の積層体のいずれであっても、好適に用いることができる。
(正極シート30)
正極シート30の基材となる正極集電体32を形成するための材料は、当業界で公知のものを適宜用いることができ、特に制限されない。例えば、アルミニウムやアルミニウムを主成分とする合金又は複合金属等の導電性に優れる金属が挙げられる。
正極活物質層34には、少なくとも、電荷担体となるリチウムイオンを吸蔵及び放出可能な正極活物質が含まれる。この正極活物質としては、当業界で公知のものを適宜用いることができ、特に制限されないが、例えば、リチウム(Li)と少なくとも一種の遷移金属元素を含み、且つ、層状構造又はスピネル構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物等が挙げられる。
より具体的には、例えば、コバルトリチウム複合酸化物(LiCoO2)、ニッケルリチウム複合酸化物(LiNiO2)、マンガンリチウム複合酸化物(LiMn24)、またはニッケル・コバルト系のLiNixCo1-x2(0<x<1)、コバルト・マンガン系のLiCoxMn1-x2(0<x<1)、ニッケル・マンガン系のLiNixMn1-x2(0<x<1)やLiNixMn2-x4(0<x<2)で表わされるような、遷移金属元素を2種含むいわゆる2元系リチウム遷移金属複合酸化物、或いは、遷移金属元素を3種含むニッケル・コバルト・マンガン系のような3元系リチウム遷移金属複合酸化物(例えばLiNi1/3Co1/3Mn1/32)等を例示することができる。なお、これらのリチウム遷移金属複合酸化物は、約3.5〜4.2V(リチウム基準電極に対する電位)の範囲内の電位を有する。
また、リチウム遷移金属複合酸化物には、微少構成金属元素として、例えば、アルミニウム (Al)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、バナジウム(V)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、スズ(Sn)、ランタン(La)、及びセリウム(Ce)よりなる群から選択される1種又は2種以上が含まれていても構わない。
なお、このようなリチウム遷移金属酸化物は、例えば、従来公知の方法で調製・提供されるリチウム遷移金属酸化物粉末をそのまま使用することができ、或いは、原子組成に応じて適宜選択されるいくつかの原料化合物を所定のモル比で混合し、適当な手段で焼成することによって調製することもできる。また、焼成物を適宜の手段で粉砕、造粒、及び分級することにより、所望の平均粒径及び/又は粒径分布を有する二次粒子によって実質的に構成された粒状のリチウム遷移金属酸化物粉末を得ることも可能である。
さらに、正極活物質層34には、添加剤として、リチウム二次電池100の放電に伴い後述する非水電解液に含有される添加剤との酸化反応により分解する物質であって、その酸化反応によって正極活物質の表面に生成する被膜生成量の調節を可能とする自己犠牲型補助物質が含有されていてもよい。
この自己犠牲型補助物質としては、上記列挙した正極活物質の電位(約3.5〜4.2V)よりも電位(リチウム基準電極に対する電位)が卑であるものを好適に使用することができ、例えば、一般式LiMPO4(式中、Mは、Co、Ni、Mn、及びFeからなる群より選択される少なくとも1種又は2種以上の遷移金属元素を示す。)で表されるオリビン型構造のリチウム含有リン酸塩等が挙げられる。かかるオリビン型リチウム含有リン酸塩の好適例として、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)、リン酸マンガンリチウム(LiMnPO4)等(対リチウム基準電極電位は、約3.2〜3.8V)を例示することができる。
上述した正極活物質と自己犠牲補助物質との組み合わせは、正極活物質と自己犠牲型補助物質との電位(対リチウム基準電極電位)の関係が、正極活物質>自己犠牲型補助物質を満たすものであれば、特に制限されない。例えば、正極活物質として層状構造のLiNi1/3Co1/3Mn1/32を用い、自己犠牲型補助物質としてオリビン構造のLiFePO4を用いた組み合わせが好適例として挙げられる。或いは、層状構造のリチウム遷移金属複合酸化物を自己犠牲型補助物質として用いてもよく、比較的電位が高い(約4.2V)スピネル構造のLiMn24を正極活物質として用い、それよりも電位が低い層状構造のLiNiO2を自己犠牲型補助物質として用いた組み合わせ等が挙げられる。
また、正極活物質層34には、必要に応じて、導電材や結着材等、当業界で公知の他成分(任意成分)が含まれていてもよい。かかる導電材としては、カーボン粉末やカーボンファイバー等の導電性粉末材料が挙げられる。カーボン粉末の具体例としては、種々のカーボンブラック、例えば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、グラファイト粉末等が挙げられる。また、炭素繊維、金属繊維等の導電性繊維類、銅やニッケル等の金属粉末類、及び、ポリフェニレン誘導体等の有機導電性材料等を、単独で又はこれらの混合物として含有していてもよい。
また、結着材としては、当業界で公知のものを適宜用いることができ、特に限定されないが、各種のポリマー材料を好適に使用し得る。具体的には、正極活物質層34の製作に使用する溶媒に溶解又は分散可溶なポリマーを選択して用いることができ、例えば、水系溶媒を用いる場合、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)等のセルロース系ポリマー;ポリビニルアルコール(PVA);ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等のフッ素系樹脂;酢酸ビニル共重合体;スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリル酸変性SBR樹脂(SBR系ラテックス)等のゴム類等の水溶性又は水分散性ポリマーを好ましく使用することができる。また、非水系溶媒を用いる場合、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)等のポリマーを好ましく採用することができる。なお、例示した各種ポリマー材料は、結着材としての機能の他に増粘材その他の添加材としての機能を発現することもあり得る。
(負極シート40)
負極シート40の基材となる負極集電体42を形成するための材料は、当業界で公知のものを適宜用いることができ、特に制限されない。例えば、銅や銅を主成分とする合金又は複合金属等の導電性に優れる金属が挙げられる。
負極活物質層44には、少なくとも、電荷担体となるリチウムイオンを吸蔵及び放出可能な負極活物質が含まれる。この負極活物質は、リチウム二次電池の充電に伴い後述する非水電解液に含有される添加剤と還元反応により分解する物質であって、その還元反応によって負極活物質の表面に生成する被膜生成量の調節を可能とするものであり、従来から当業界で用いられているものを特に制限なく使用することができる。負極活物質の具体例としては、例えば、少なくとも一部にグラファイト構造(層状構造)を含む粒子状の炭素材料(カーボン粒子)が挙げられる。また、いわゆる黒鉛質のもの(グラファイト)、難黒鉛化炭素質のもの(ハードカーボン)、易黒鉛化炭素質のもの(ソフトカーボン)、これらを組み合わせた構造を有するもの等、種々の炭素材料を好適に使用することができる。
これらのなかでは、特に、グラファイト等の黒鉛粒子を好ましく使用することができる。黒鉛粒子は、電荷担体としてのリチウムイオンを好適に吸蔵することができるため導電性に優れるとともに、粒径が小さく単位体積当たりの表面積が大きいことから、ハイレートのパルス充放電に適した負極活物質となり得る点で有利である。
さらに、負極活物質層44には、添加剤として、リチウム二次電池100の充電に伴い上記添加剤を還元分解する物質であって、上記負極活物質の電位よりも電位(リチウム基準電極に対する電位)が貴である自己犠牲型補助物質が含有されていてもよい。
この自己犠牲型補助物質としては、例えば、チタン系酸化物又は硫化物等の遷移金属の酸化物又は硫化物等が挙げられ、より具体的には、チタン酸リチウム、酸化チタン(TiO2)、硫化チタン、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化コバルト、硫化鉄等を例示でき、特に好ましくは、チタン酸リチウムが挙げられ、更に好適には、Li4+xTi512(0≦x≦3)やLi2+xTi37(0≦x≦3)等が挙げられる。
また、負極活物質層44には、必要に応じて、結着材等の当業界で公知の他成分(任意成分)が含まれていてもよい。かかる結着材としては、一般的なリチウム二次電池の負極に使用される結着材を適宜採用することができ、例えば、上述した正極活物質層34の結着材に用いられるものと同じものを適宜選択して使用することができる。
(非水電解液)
このリチウム二次電池100に用いられる非水電解液は、非水溶媒、及び、支持電解質(支持塩)としてのリチウム塩に加え、適宜の添加剤(例えば、負極及び負極活物質を保護する被膜を形成するためのバリア形成剤等)を含んでいる。
非水溶媒としては、当業界で公知のものを適宜用いることができ、その種類は特に制限されず、例えば、各種の有機溶媒、より好ましくはカーボネート類、エステル類、エーテル類、ニトリル類、スルホン類、ラクトン類等の非プロトン性溶媒を用いることができる。具体的には、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等のカーボネート類のほか、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、アセトニトリル、プロピオニトリル、ニトロメタン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン等の一般にリチウム二次電池の電解液に使用し得るものを、1種又は2種以上組み合わせて使用し得る。
また、支持電解質(支持塩)としてのリチウム塩の具体例としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiN(SO2CF32、LiN(SO2252、LiCF3SO3、LiC49SO3、LiC(SO2CF33、LiClO4等のリチウム二次電池の電解液において支持電解質として機能し得ることが知られている各種のリチウム塩が挙げられるが、これらに特に限定されない。リチウム塩は、1種のみを単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。これらのなかでは、LiPF6が特に好ましい。なお、この支持電解質としてのリチウム塩の非水電解液における濃度は特に制限されず、要求性能に応じて適宜設定することができ、従来のリチウム二次電池で使用される非水電解液と同様に組成することができる。
(制御部)
制御部200は、リチウム二次電池100への電流入力及びリチウム二次電池100からの電流出力を制御する機能を有するものであり、演算装置、記憶装置、入出力インターフェイス等(いずれも図示せず)を備えている。図2に示す如く、この制御部200は、さらに、電池ケース10の幅広面18に当接するように設置された面圧センサ60を備えている。なお、リチウム二次電池100においては、電極体20が収容された電池ケース10の複数が、それぞれの幅広面18に垂直な方向に沿って連設されており、各隣接する電池ケース10,10間に、面圧センサ60が挿入されるように設置されている。
かかる面圧センサ60としては、電池ケース10の幅広面18の面圧分布を測定できるものであれば、その種類は特に限定されず、例えばシート状又はフィルム状のタクタイルセンサを例示することができる。本実施形態において、この面圧センサ60は、電極体20の幅方向W(電極体20の開口端20a,20aを結ぶ方向、電池ケース10の側壁16,16を結ぶ方向)において仮想的に縦分割された短冊状をなす複数の領域20i(iは自然数)の面圧を、電池ケース10を介して測定可能なものであり、制御部20からの制御指令信号に基づいて、それらの各領域20iの面圧を、所定の時間間隔でサンプリングして連続的又は断続的に測定するように構成されている。
<二次電池の製造方法>
(正極)
続いて、リチウム二次電池100の正極の作製方法の一例について説明する。まず、上述した正極活物質、及び、必要に応じて上述した正極用の自己犠牲型補助物質を用意し、それらを固相状態で混合、攪拌等して混合体を調製する。これにより、自己犠牲型補助物質が正極活物質の表面の少なくとも一部に付着した混合体が得られる。或いは、自己犠牲型補助物質を含有する溶媒に正極活物質を浸漬させて乾燥(焼成)する液相法(晶析法)、蒸着法(気相法;スパッタリング法等のPVD法、プラズマCVD法等のCVD法)等の従来公知の各種成膜手法を、単独で又は適宜組み合わせて用いることにより、正極活物質の表面に均一な層厚で自己犠牲型補助物質が被覆された混合体を得ることもできる。
次いで、得られた正極活物質及び自己犠牲型補助物質との混合体を、導電材、結着材等と共に適宜の溶媒で混合して、ペースト状又はスラリー状の正極活物質層形成用ペーストを調製する。そして、このペーストを正極集電体32(基材)に塗布し、溶媒を揮発させて乾燥した後、圧縮(プレス)する。これにより、そのペーストを用いて形成された正極活物質層34を正極集電体32上に有するリチウム二次電池100の正極が得られる。
なお、上述した正極活物質層形成用ペーストを調製するために用いる溶媒としては、水系溶媒及び非水系溶媒のいずれも使用可能である。水系溶媒は、典型的には水であり、また、全体として水性を示すものであればよく、すなわち、水又は水を主成分とする混合溶媒を好ましく用いることができる。この混合溶媒を構成する水以外の溶媒としては、水と均一に混合され得る有機溶剤(低級アルコール、低級ケトン等)の一種又は二種以上を適宜選択して用いることができる。また、非水系溶媒の好適例としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、メチルエチルケトン、トルエン等が例示される。
また、正極集電体32に上記のペーストを塗布する方法としては、従来公知の方法と同様の技法を適宜採用することができ、例えば、スリットコーター、ダイコーター、グラビアコーター、コンマコーター等の適当な塗布装置を使用する方法が挙げられる。さらに、溶媒を乾燥するにあたっては、自然乾燥、熱風、低湿風、真空、赤外線、遠赤外線、及び電子線を、単独で又は適宜組み合わせ用いることが可能である。またさらに、圧縮方法としては、従来公知のロールプレス法、平板プレス法等の圧縮方法を採用することができ、かかる厚さを調整するにあたっては、膜厚測定器で厚さを測定しつつ、プレス圧を適宜調整して所望の厚さになるまで複数回圧縮するようにしてもよい。
(負極)
続いて、リチウム二次電池100の負極の作製方法について説明する。まず、上述した負極活物質、及び、必要に応じて上述した負極用の自己犠牲型補助物質を用意し、それらを固相状態で混合、攪拌等して混合体を調製する。これにより、自己犠牲型補助物質が負極活物質の表面の少なくとも一部に付着した混合体が得られる。或いは、自己犠牲型補助物質を含有する溶媒に負極活物質を浸漬させて乾燥(焼成)する液相法(晶析法)、蒸着法(気相法;スパッタリング法等のPVD法、プラズマCVD法等のCVD法)等の従来公知の各種成膜手法を、単独で又は適宜組み合わせて用いることにより、負極活物質の表面に均一な層厚で自己犠牲型補助物質が被覆された混合体を得ることもできる。
次いで、得られた負極活物質及び自己犠牲型補助物質の混合体を、導電材、結着材等と共に適宜の溶媒で混合して、ペースト状又はスラリー状の負極活物質層形成用ペーストを調製する。そして、このペーストを負極集電体42(基材)に塗布し、溶媒を揮発させて乾燥した後、圧縮(プレス)する。これにより、そのペーストを用いて形成された負極活物質層44を負極集電体42上に有するリチウム二次電池100の負極が得られる。なお、その際の塗布、乾燥、及び圧縮方法は、上述した正極の製造方法と同様の手段及び方法を用いることができる。
(非水電解液)
上述した適宜の非水溶媒に、支持電解質(支持塩)としての上述したリチウム塩を適宜の濃度で、且つ、適宜の添加剤を所定の濃度となるように混合する。
(リチウム二次電池100)
上記のとおり作製した正極活物質を含む正極活物質層34を有する正極(典型的には正極シート30)、及び、負極活物質を含む負極活物質層44を有する負極(典型的には負極シート40)を、2枚のセパレータ50と共に積層して捲回し、得られた捲回状の電極体20を側面方向から押しつぶして拉げさせることによって扁平形状に成形する。
それから、正極集電体32の正極活物質層非形成部36に内部正極端子37を、負極集電体42の負極活物質層非形成部46に内部負極端子47を、それぞれ超音波溶接、抵抗溶接等により接合し、上述の如く扁平形状に形成された電極体20の正極シート30又は負極シート40と電気的に接続する。次に、こうして得られた電極体20をケース10に収容した後、上記のとおり調製した非水電解液を注入し、注入口を封止することによって、本実施形態のリチウム二次電池100を得ることができる。
なお、ケース10の構造、大きさ、材料(例えば金属製、ラミネートフィルム製)、及び正負極を主構成要素とする電極体20のより具体的な構造(捲回構造、積層構造等)等については、特に制限はない。
<リチウム二次電池の運転制御1>
さらに、このように構成されたリチウム二次電池100における運転制御の一例について、以下に説明する。図4は、このリチウム二次電池100の運転制御の好適な一実施形態における手順の一例を示すフロー図であり、車両1に搭載されたリチウム二次電池100の通電中の面圧挙動をモニターしながら、その充放電制御を行う手順を示すものである。なお、以下に記載する各処理は、制御部200からの指令信号に基づいて実施され、各種の演算は制御部200において行われる。
(ステップSP1)
まず、リチウム二次電池100への通電(電極体20の充放電)を開始する前に、面圧センサ60によって電極体20の幅方向W(図2参照)における各領域20iの初期面圧(通電前面圧;ブランク)を測定し、得られた各領域20iの初期面圧測定値を記憶する。なお、このとき、又は、それに先立って、電極体20の幅方向Wにおける中央部と端部を設定する。
(ステップSP2)
次に、リチウム二次電池100への通電(電極体20の充放電)を開始した後、面圧センサ60によって電極体20の幅方向Wにおける各領域20iの面圧(通電後面圧)を、所定の期間、所定の時間間隔でサンプリングして連続的又は断続的にモニタリング測定し、得られた各領域20iの面圧測定値を記憶する。また、ここで得られた面圧測定値から、ステップS1で得られた各領域20iの初期面圧測定値を差し引いた値(正味の面圧変化値)を算出し、電極体20の幅方向Wにおける中央部の正味面圧を中央部面圧Pc(n)(第1の圧力)として、また、電極体20の幅方向Wにおける端部の正味面圧を端部面圧Ps(n)(第2の圧力)として記憶する(nは自然数であり、n回目の測定であることを示す。)。
(ステップSP3)
次いで、中央部面圧Pc(n)と予め設定しておいたそれに対する閾値Kc(第1の閾値)との比較を行い(ステップSP31)、論理演算「中央部面圧Pc(n)>閾値Kc」がYes(真)の場合、中央部面圧Pc(n)から閾値Kcを差し引いたSc値の積算を行い、以下の式(1)及び式(2)で表される関係から、電極体20の中央部についての積算値ΣSc(n)(第1の積算値)を得る(ステップSP32)。
ΣSc(n)=ΣSc(n−1)−Kc(Sc(n−1)) …(1)
Kc(Sc(n−1))=a×Sc(n−1)b …(2)
ここで、aは、中央部における面圧緩和係数(経時的な圧力緩和を補正するための係数;以下同様)を示し、bは、積算回数を示す。一方、論理演算「中央部面圧Pc(n)>閾値Kc」がNo(偽)の場合、Sc値の積算は行なわず、次のステップSP4へ移行する。
(ステップSP4)
続いて、端部面圧Ps(n)と予め設定しておいたそれに対する閾値Ks(第2の閾値)との比較を行い(ステップSP41)、論理演算「端部面圧Ps(n)>閾値Ks」がYes(真)の場合、端部面圧Ps(n)から閾値Ksを差し引いたSs値の積算を行い、以下の式(3)及び式(4)で表される関係から、電極体20の端部についての積算値ΣSs(n)(第2の積算値)を得る(ステップSP42)。
ΣSs(n)=ΣSs(n−1)−Ks(Ss(n−1)) …(3)
Ks(Ss(n−1))=c×Sc(n−1)d …(4)
ここで、cは、端部における面圧緩和係数を示し、dは、積算回数を示す。一方、論理演算「端部面圧Ps(n)>閾値Ks」がNo(偽)の場合、Ss値の積算は行なわず、次のステップSP5へ移行する。
ここで、上述した閾値Kc,Ksは、面圧がその値を超えると、リチウム二次電池100にハイレート劣化が生じ得る可能性を示す一つの指標である。図5(A)及び(B)は、閾値Kc,Ksを決定するための参照面圧分布を測定する際の耐久試験条件の一例を模式的に示す概念図である。図5(A)は、リチウム二次電池100における充電過多によるハイレート劣化を意図的に生じせしめるための連続ハイレート充放電運転の単位サイクル(充電過多ハイレートサイクル)の一例を示し、図5(B)は、リチウム二次電池100における放電過多によるハイレート劣化を意図的に生じせしめるための連続ハイレート充放電運転の単位サイクル(放電過多ハイレートサイクル)を示す。
より具体的には、図5(A)に示す充電過多ハイレートサイクルでは、充電レート30(C:Cレート)×10(sec)のレートで充電を行った後、4(C)×75(sec)のレートで放電を行い、図5(B)に示す放電過多ハイレートサイクルでは、放電レート30(C:Cレート)×10(sec)のレートで放電を行った後、4(C)×75(sec)のレートで充電を行う。このように、これらのサイクルにおいては、リチウム二次電池100への入出力エネルギー(図示棒グラフの面積=300(C);合計電荷量)は同等とされる。また、これらのサイクル条件における30(C)充放電は、例えば5(A・h)のリチウム二次電池100の場合、150(A)のハイレート充放電に相当する。なお、この耐久試験は、例えば、SOC(State Of Charge)=60%、電池温度=25℃、サイクル数=3000サイクルの条件下で実施する。
こうして、図5(A)に示す充電過多ハイレートサイクルで耐久試験を実施することによりハイレート劣化が生じたリチウム二次電池100に対し、図2と同等の構成を用いて電極体20の幅方向Wにおける面圧分布を測定した結果の一例を図7に示す。また、図5(B)に示す放電過多ハイレートサイクルで耐久試験を実施することによりハイレート劣化が生じたリチウム二次電池100に対し、図2と同等の構成を用いて電極体20の幅方向Wにおける面圧分布を測定した結果の一例を図6に示す。これらの図6及び図7の各グラフにプロットしたデータは、図2に示す電極体20の各領域20iにおける面圧測定値(各領域20iの図示縦方向における平均値)から、各耐久試験を実施する前に得た初期面圧測定値(図4におけるステップSP1で測定される初期面圧値に相当)を差し引いた値である。
に示す如く、電過多に起因するハイレート劣化が生じると、電極体20の中央部の面圧はやや増加し、緩やかな極値(図示において極大値)を有する面圧分布が得られる傾向にある。このとき、端部の面圧は、開口端20aから中央部に向かって一旦急峻に減少し、大きな極値(図示において極小値)を有する面圧分布となる傾向にある。一方、図に示す如く、電過多に起因するハイレート劣化が生じると、電極体20の中央部の面圧と端部の面圧は、図に比して全体的に大きく増加して幅方向Wに亘って略一定又は緩やかに変化する(明確な極値を有しない)面圧分布となる傾向にある。
このように同じエネルギー量(電荷量)の充放電を繰り返しても充電過多によるハイレート劣化の場合と放電過多によるハイレート劣化の場合では、それぞれの面圧分布が有意に異なり、そのメカニズムの詳細は未だ明らかではないものの、以下のように推定される(但し、作用機序はこれに限定されない。)。
以上のようにして得られた充電過多に起因するハイレート劣化が生じたときの電極体20の面圧分布(図7)及び放電過多に起因するハイレートが生じたときの電極体20の面圧分布(図6)から、中央部面圧に対する閾値Kc及び端部面圧に対する閾値Ksを予め設定することができる。例えば、図6及び図7に示す例では、中央部面圧に対する閾値Kcを+0.5(kgf)(絶対値で0.5(kgf))に設定し、端部面圧に対する閾値Ksを−0.5(kgf)(絶対値で0.5(kgf))に設定することができる。
なお、閾値Kc,Ksは、リチウム二次電池100が同じ構成のものであっても、常に同一ではなく、そのリチウム二次電池100が搭載される車両の負荷条件、その他の運転条件、外部環境条件等に応じて、適宜設定することができる。その場合、図6及び図7に示すようなハイレート劣化時の面圧差分布を種々の条件において予め算出しておいてもよいし、或いは、基本条件の面圧差分布の実測値に対して、シミュレーション等によって運転条件等が異なる場合の補正を施してもよい。
(ステップSP5)
次に、ステップSP3で得た電極体20の中央部についての積算値ΣSc(n)と、それに対して予め設定しておいた又は適宜のタイミングで算出した閾値Tcとの比較を行い(ステップSP51)、論理演算「積算値ΣSc(n)>閾値Tc」がYes(真)の場合、次のステップSP6へ移行する。一方、論理演算「積算値ΣSc(n)>閾値Tc」がNo(偽)の場合、ステップSP6へは移行せず、その積算値ΣSc(n)、及び、ステップSP4で得た電極体20の端部についての積算値ΣSs(n)を記憶して(ステップSP52)からステップSP2へ回帰する。
ここで、閾値Tcは、中央部面圧Pc(n)の各測定値が閾値Kcを超えたときのそれらの累積値である積算値ΣSc(n)がその閾値Tcを超えると、リチウム二次電池100にハイレート劣化が生じる可能性が極めて高いことを示す言わば推定限界値を示す一つの指標であって、リチウム二次電池100の運転条件や環境条件等によっては経時的に変化し得る値である。図6及び図7に示すとおり、リチウム二次電池100に充電過多によるハイレート劣化が生じた場合、及び、放電過多によるハイレート劣化が生じた場合の何れのケースでも、電極体20の面圧挙動としては中央部の面圧が増大する傾向にあるので、中央部についての積算値ΣSc(n)が閾値Tcを超えた場合には、ハイレート劣化が生じる可能性が高いと判定することができる。
(ステップSP6)
こうして、ステップSP5でハイレート劣化の可能性が予見(予測)されると、さらに、ステップSP3で得た電極体20の中央部についての積算値ΣSc(n)と電極体20の端部についての積算値ΣSs(n)との比の値、例えばΣSc(n)/ΣSs(n)と、それに対して予め設定しておいた又は適宜のタイミングで算出した閾値Gとの比較を行う(ステップSP61)。具体的には、論理演算「ΣSc(n)/ΣSs(n)>閾値G」の真偽判定を行い、その結果に基づいて、リチウム二次電池100に生じ得るハイレート劣化が充電過多及び放電過多の何れに起因するかを判断して、リチウム二次電池100の充放電制御を実行する。
すなわち、図6に示す電過多によるハイレート劣化時の面圧分布は、図7に示す電過多によるハイレート劣化時の面圧分布とは異なり、特に、中央部における面圧変化と端部における面圧変化の程度が顕著に相違することから、中央部面圧Pc(n)の各測定値が閾値Kcを超えたときのそれらの累積値である積算値ΣSc(n)と、端部面圧Ps(n)の各測定値が閾値Ksを超えたときのそれらの累積値である積算値ΣSs(n)との比の値ΣSc(n)/ΣSs(n)は、充電過多によるハイレート劣化時と放電過多によるハイレート劣化時では、有意に異なる値を示す。
よって、ΣSc(n)/ΣSs(n)に対する閾値Gとして、充電過多に起因するハイレート劣化と放電過多に起因するハイレート劣化が弁別され得る値を採用することにより、論理演算「ΣSc(n)/ΣSs(n)>閾値G」がYes(真)の場合、放電過多であると判断することができ、その場合、リチウム二次電池100からの出力電流Woutを制限する指令信号を制御部200から出力する(ステップSP62)。一方、論理演算「ΣSc(n)/ΣSs(n)>閾値G」がNo(偽)の場合、充電過多であると判断して、リチウム二次電池100への入力電流Winを制限する指令信号を制御部200から出力する(ステップSP63)。そして、何れの場合も、積算値ΣSc(n)及び積算値ΣSs(n)を記憶して(ステップSP64)からステップSP2へ回帰する。
このように構成された電池システム1000によれば、制御部200によって、電極体20の中央部面圧Pc(n)(第1の圧力)と端部面圧Ps(n)(第2の圧力)に基づいて、リチウム二次電池100のハイレート劣化が生じる可能性を判定するので、かかるハイレート劣化の発生を未然に且つ確実に抑制・防止することができ、これにより、不必要な過度の制御が不要となるので、車両1の燃費低下及び出力低下を効果的に抑止することができる。
また、電極体20の中央部面圧Pc(n)を用いて算出した積算値ΣSc(n)と電極体20の端部面圧Ps(n)を用いて算出したΣSs(n)の比の値ΣSc(n)/ΣSs(n)を所定の閾値Gと比較することにより、リチウム二次電池100のハイレート劣化を引き起こす主要因(リチウム二次電池100の充電過多又は放電過多)を特定することができるので、その主要因に応じた適切な充放電の制御が可能となる。その結果、リチウム二次電池100の放電のみならず充電に起因するハイレート劣化を効果的に抑制することができる。
また、電極体20が捲回体であるので、図6及び図7にそれぞれ示すような充電過多によるハイレート劣化時の面圧分布と放電過多によるハイレート劣化時の面圧分布(面圧挙動)の有意差がより顕著となり、その結果、電極体20の中央部面圧Pc(n)及び端部面圧Ps(n)を用いたハイレート劣化の判定感度及び精度をより向上させることができ、且つ、そのハイレート劣化が充電過多によるものか放電過多によるものかの判別精度(特定精度)を高めることもできる。
さらに、ハイレート劣化及びその主要因の判定に用いる比の値ΣSc(n)/ΣSs(n)を、所定の時間間隔でモニタリング測定した中央部面圧Pc(n)とその閾値Kc(第1の閾値)との差を積算して得た積算値ΣSc(n)(第1の積算値)、及び、同じく所定の時間間隔でモニタリング測定した端部面圧Ps(n)とその閾値Ks(第2の閾値)との差を積算して得た積算値ΣSs(n)(第2の積算値)から求めるので、ある時点において中央部面圧Pc(n)や端部面圧Ps(n)が偶発的に過度に増大してしまったような場合であっても、そのような不確定な事象に基づいてハイレート劣化が生じる可能性及びその主要因を誤判定してしまうことを防止することができる。その結果、ハイレート劣化が生じる可能性の有無の判定精度、及び、そのハイレート劣化がリチウム二次電池の充電過多によるものなのか放電過多によるものなのかの判別精度を更に向上させることができる。
またさらに、電極体20の中央部面圧Pc(n)と閾値Kcに基づいて算出される積算値ΣSc(n)、及び、電極体20の端部面圧Ps(n)と閾値Ksに基づいて算出される積算値ΣSs(n)を算出する際に、面圧緩和係数を用いた補正を行う(前述した式(2)及び式(4)参照)ので、面圧緩和事象を考慮しない場合に比して、ハイレート劣化が生じる可能性の判定感度及び精度、並びに、そのハイレート劣化の主要因(充電過多又は放電過多)の判別精度を更に一層高めることができる。
<リチウム二次電池の運転制御2>
先に述べたとおり、本発明者の知見によれば、リチウム二次電池100に対して、特に、急速充電を行いかつそのSOCが大きく変化する場合、リチウム二次電池100の面圧が大きく変動すること、つまり、リチウム二次電池100の充電状態(SOC)によって電極体20の面圧挙動が有意に異なり得る。ここで、図8は、SOCが10%〜100%の範囲で異なる場合における電極体20の幅方向Wにおける面圧分布を測定した結果の一例である。同図に示す場合、SOCが100%に近い電極体20の面圧は、その幅方向Wの全体に亘って、SOCが10%程度の電極体20の面圧よりも2倍〜4倍程度大きいことが理解される。
そこで、かかる事象を考慮して、リチウム二次電池100の運転制御を行う他の例について、その手順の一例を以下に説明する。図9は、リチウム二次電池100の運転制御の好適な別の一実施形態における手順の一例を示すフロー図であり、例えば二次電池100を急速充電する際に、図4に示す<リチウム二次電池の運転制御1>で先述した手順において、SOCの相違による電極体20の面圧変化への影響を補正しつつ充放電制御を行う手順を示すものである。なお、<リチウム二次電池の運転制御1>におけるのと同様に、以下に記載する各処理は、制御部200からの指令信号に基づいて実施され、各種の演算は制御部200において行われる。
(ステップSP7〜SP9)
まず、<リチウム二次電池の運転制御1>と同様に、リチウム二次電池100への通電を開始する前に図4に示す前述したステップSP1の処理を実行する。それから、ここでのリチウム二次電池100への通電が急速充電を行う処理であるか否かを判断し(ステップSP7)、急速充電を行う場合(Yes)、電極体20への急速充電を行い(ステップSP8)、その後、リチウム二次電池100のSOCを充電量等に基づいて確認する(ステップSP9)。
次いで、図4に示す前述したステップSP2の処理を実行し、面圧センサ60によって電極体20の幅方向Wにおける各領域20iの面圧(通電後面圧)を測定し、その面圧測定値を記憶する。さらに、得られた各面圧測定値から、ステップS1で得られた各領域20iの初期面圧測定値を差し引き、電極体20の幅方向Wにおける中央部の正味面圧を中央部面圧Pc(n)(補正前の第1の圧力)として、また、電極体20の幅方向Wにおける端部の正味面圧を端部面圧Ps(n)(補正前の第2の圧力)として記憶する。
(ステップSP10)
そして、本実施形態では、図4に示す前述したステップSP3の処理を実行する前に、ステップSP2で得られた電極体20の幅方向Wにおける中央部面圧Pc(n)(補正前の第1の圧力)、及び、電極体20の幅方向Wにおける端部面圧Ps(n)(補正前の第2の圧力)に補正を施す(ステップSP10)。具体的には、例えば、電極体20の幅方向Wにおける少なくとも中央部及び端部において、SOCを変化させたときの面圧増加の程度(言わば「容量面圧」)を予め求めておき、そのSOCと面圧との関係に基づいて、ステップSP9で確認把握した実際のSOCに対する面圧増加分(中央部容量面圧Pc(s)、及び、端部容量面圧Ps(s))を算出する。
そして、ステップSP2で得た補正前の中央部面圧Pc(n)から中央部容量面圧Pc(s)を差し引いた値を、新たな中央部面圧Pc(n)(補正後の第1の圧力)とし、また、ステップSP2で得た補正前の端部面圧Ps(n)から端部容量面圧Ps(s)を減算した(差し引いた)値を、新たな端部面圧Ps(n)(補正後の第2の圧力)として記憶する。ここで、図10に、補正前後の中央部面圧Pc(n)及び端部面圧Ps(n)と、SOC(10%〜100%:10%毎)の寄与による中央部容量面圧Pc(s)及び端部容量面圧Ps(s)との関係の一例を示す。なお、図10においては、理解を容易にするべく、「中央部」及び「端部」の一方についてのグラフのみを記載した。
同図において、黒塗菱形のプロットとそれらを結んだ曲線Lsが、SOCの寄与による面圧の増加分である中央部容量面圧Pc(s)及び端部容量面圧Ps(s)を示す。そして、図中、黒塗長方形のプロットとそれらを結んだ曲線Lnで示す補正前の中央部面圧Pc(n)及び端部面圧Ps(n)は、SOCの寄与がない場合の正味の中央部面圧Pc(n)及び端部面圧Ps(n)に、曲線Lsで示す中央部容量面圧Pc(s)及び端部容量面圧Ps(s)(SOCの寄与による面圧の増加分)を含んだ値となる。
したがって、ステップSP10において、曲線Lnの値(補正前の中央部面圧Pc(n)及び端部面圧Ps(n))から、曲線Lsの値(中央部容量面圧Pc(s)及び端部容量面圧Ps(s))を減算した差分Δが、SOCの寄与がない場合の正味の中央部面圧Pc(n)及び端部面圧Ps(n)、すなわち、リチウム二次電池100の運転によって経時的に生じたハイレート劣化に起因する面圧の増加分に相当する値となり、後続の処理ステップにおいては、それらを補正後の中央部面圧Pc(n)及び端部面圧Ps(n)として演算に使用する。
こうしてステップSP10を実施した後、処理を図4に示す前述したステップSP3へ移行し、図4に示す手順にしたがって、ステップSP3〜SP6の各処理を順次実行する。一方、上述したステップSP7において、急速充電を行わないと判断された場合(No)には、ステップSP8〜SP10の処理を行うことなく(スキップして)、図4に示すステップSP2以降の各処理を順次実施する。
さらにここで、図11は、閾値Kc,Ksを決定するための参照面圧分布を測定する際の耐久試験条件の他の例を模式的に示す概念図であり、リチウム二次電池100における連続ハイレート充放電運転の単位サイクル(充電過多ハイレートサイクル)の一例を示す。この図11に示す充電過多ハイレートサイクルでは、充電レート20(C:Cレート)×10(sec)のレートで充電を行った後、4(C)×50(sec)のレートで放電を行う。このように、このサイクルにおいても、リチウム二次電池100への入出力エネルギー(図示棒グラフの面積=200(C);合計電荷量)は同等とされる。また、これらのサイクル条件における20(C)充放電は、例えば5(A・h)のリチウム二次電池100の場合、100(A)のハイレート充放電に相当する。
この図11に示す単位サイクルを、リチウム二次電池100に対して、SOC=60%、及び、電池温度=25℃で、サイクル数=10000サイクルまで実施し、所定のサイクル数毎にそのリチウム二次電池100の抵抗増加率を測定した結果を、図12のグラフに示す。なお、その際の抵抗値測定における放電条件は、電流=60(A)、放電時間=10(sec)、及びカット電圧=2.7(V)とした。図12中、白抜正方形のプロットとそれらを結んだ曲線E1は、充電過多ハイレートサイクルを実施している間、図9に示す手順を実行してSOCに起因する容量面圧の寄与を補正しつつ、ステップSP6における充電過多時の入力電流Winの制御を行ったときの結果を示す。また、同図中、黒塗正方形のプロットとそれらを結んだ曲線R1は、充電過多ハイレートサイクルを実施している間、図9に示す手順を実行せず、SOCに起因する容量面圧の寄与の補正及び充電過多時の入力電流Winの制御を行わなかった場合の結果を示す。
これらの結果より、急速充電時において図9に示す手順を適用した入力電流の制御(<リチウム二次電池の運転制御2>)を行った場合の優位性が理解される。換言すれば、リチウム二次電池100の充電後の運転条件が同じながら、その充電時のSOCの相違によって電極体20の面圧(第1の圧力及び第2の圧力)の変化の程度が異なる場合であっても、そのSOCの相違に起因する面圧の変化分を補正する<リチウム二次電池の運転制御2>を実行することにより、ハイレート劣化によって引き起こされ得る抵抗上昇の判定精度を向上させることができ、これにより、リチウム二次電池100に対して更に良好な電流制御を実施することが可能となる。
なお、上述したとおり、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない限度において様々な変形が可能である。例えば、電極体20は捲回体に限定されず、捲回されていない積層体であってもよい。また、面圧センサ60によって各領域20iの平均的な面圧を測定することに代えて又は加えて、各領域20iの延在方向に沿った複数の領域の面圧分布を測定してもよい。換言すれば、電極体20の面圧を、面圧センサ60によって、二次元的に(マトリックス状に)且つより詳細に分割測定してもよい。
以上説明したとおり、本発明の電池システムは、二次電池の電極体の中央部における第1の圧力、及び、電極体の端部における第2の圧力に基づいて、二次電池にハイレート劣化が生じる可能性を判定し、さらに、その結果に基づいて、ハイレート劣化を引き起こす主要因(二次電池の充電過多又は放電過多)を判別して特定することができるので、その主要因に応じた適切な充放電の制御が可能となる。したがって、例えば、図1に模式的に示す如く、リチウム二次電池等を車両駆動用電源として備える車両一般、及び、それらの製造等に広く且つ有効に利用することができる。
1 車両
10 電池ケース
12 開口部
14 蓋体
16 側壁
18 幅広面
20 捲回電極体
20a 開口端
20n 領域
30 正極シート
32 正極集電体
34 正極活物質層
36 正極活物質層非形成部
37 正極集電端子
38 外部正極集電端子
40 負極シート
42 負極集電体
44 負極活物質層
46 負極活物質層非形成部
47 負極集電端子
48 外部負極集電端子
50 セパレータ
60 面圧センサ
100 リチウム二次電池(非水電解液二次電池)
200 制御部
1000 電池システム
W 幅方向

Claims (8)

  1. 正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、非水溶媒中にリチウム塩を含む非水電解液とを有する電極体を備え、且つ、車両に搭載される駆動用電源として使用される二次電池と、
    前記電極体の中央部における第1の圧力、及び、前記電極体の端部における第2の圧力に基づいて、前記二次電池の充電に起因する抵抗上昇及び放電に起因する抵抗上昇が生じるか否かを判定する制御部と、を備え
    前記制御部は、所定の期間内において、前記第1の圧力が所定の第1の閾値を超えたときの該第1の圧力と該第1の閾値との差を積算して得られる第1の積算値、及び、前記第2の圧力が所定の第2の閾値を超えたときの該第2の圧力と該第2の閾値との差を積算して得られる第2の積算値に基づいて、前記二次電池の抵抗上昇が充電及び放電の何れに起因するかを判定する電池システム。
  2. 前記制御部は、前記二次電池の充電に起因する抵抗上昇が生じると判断されたときに、前記二次電池への入力電流を調節し、又は、前記二次電池の放電に起因する抵抗上昇が生じると判断されたときに、前記二次電池からの出力電流を調節する、請求項1記載の電池システム。
  3. 前記電極体は、前記非水電解液が含浸されたセパレータを介して前記正極と前記負極が積層された構造を有する捲回体であり、
    前記第2の圧力は、前記捲回体の開口端部における圧力である、
    請求項1又は2記載の電池システム。
  4. 前記制御部は、前記第1の圧力及び前記第2の圧力が経時的に緩和されることを考慮して前記第1の積算値及び前記第2の積算値を算出する、
    請求項1乃至請求項3の何れか1項記載の電池システム。
  5. 前記制御部は、前記第1の積算値と前記第2の積算値との比に基づいて、前記二次電池の抵抗上昇が充電及び放電の何れに起因するかを判定する、
    請求項1乃至請求項4の何れか1項記載の電池システム。
  6. 正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、非水溶媒中にリチウム塩を含む非水電解液とを有する電極体を備え、且つ、車両に搭載される駆動用電源として使用される二次電池における電流の入出力を制御するシステムであって、
    前記電極体の中央部における第1の圧力、及び、前記電極体の端部における第2の圧力に基づいて、前記二次電池の充電に起因する抵抗上昇及び放電に起因する抵抗上昇が生じるか否かを判定し、
    前記二次電池の充電に起因する抵抗上昇が生じると判断されたときに、前記二次電池への入力電流を調節し、又は、前記二次電池の放電に起因する抵抗上昇が生じると判断されたときに、前記二次電池からの出力電流を調節し、
    前記判定において、所定の期間内において、前記第1の圧力が所定の第1の閾値を超えたときの該第1の圧力と該第1の閾値との差を積算して得られる第1の積算値、及び、前記第2の圧力が所定の第2の閾値を超えたときの該第2の圧力と該第2の閾値との差を積算して得られる第2の積算値に基づいて、前記二次電池の抵抗上昇が充電及び放電の何れに起因するかを判定する電池システム。
  7. 前記制御部は、前記二次電池の充電時のSOCに基づいて、前記第1の圧力及び前記第2の圧力を補正し、該補正後の第1の圧力及び第2の圧力に基づいて、前記二次電池の充電に起因する抵抗上昇及び放電に起因する抵抗上昇が生じるか否かを判定する、請求項1記載の電池システム。
  8. 前記制御部は、前記SOCによって変化する前記電極体の面圧変化値を予測し、前記第1の圧力及び前記第2の圧力の補正として、該第1の圧力及び該第2の圧力のそれぞれの測定値から、前記面圧変化値を減算する、請求項記載の電池システム。
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