JP5841437B2 - 切断用ブレード及びその製造方法 - Google Patents
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(a)QFN(quad flat non-leaded package)と称されるもののように、リードフレーム上に一括して多数の素子を実装してこれらをまとめてモールディングした後に切断することにより個片化されて製造される電子材料部品。
(b)IrDA(赤外線データ通信協会)規格の光伝送モジュール(以下、単にIrDAと省略する)のように、ガラスエポキシ樹脂製の基体に形成されたスルーホールの内周面にNi、Au、Cu等のめっきが施された基板を有し切断により個片化される電子材料部品。
すなわち、本発明は、円形薄板状のブレード本体を有する切断用ブレードであって、前記ブレード本体は、ボンド相と、前記ボンド相に分散された砥粒と、前記ボンド相に分散され、仮想四面体の中心から各頂点に向かって針状部が四方に延びた3次元形状体を少なくとも含むフィラーと、前記ボンド相に分散された気孔と、を備え、前記3次元形状体とされたフィラーの表面が、シランカップリング剤で予めコーティング処理されており、前記気孔は、内部に気孔を有する中空ビーズ体が前記ボンド相に分散されて形成されていることを特徴としている。
このため、このようなフィラーが添加されたボンド相は、異方性(ここで言う異方性とは、例えば従来の針状又は繊維状のフィラーが製造時の成形等により所定方向に配列されるような状態を差す)が緩和されることとなり、どの方向に対しても略同一の耐摩耗性を確保でき、結果的に耐摩耗性に優れるものとなる。また、成型後のボンド相においては、特定方向への収縮率が高くなるといった事態を回避でき、製品としての寸法精度の向上が図れる。これに伴い、切断性能が向上するとともに、被切断材の加工品位が高められる。
すなわち、切断用ブレードの製造時に、例えばスラリー状とされたボンド相素材内を浮力などにより意図せず気孔が移動するようなことが3次元形状体により規制されて、製造された切断用ブレードにおいては、これら気孔が、ボンド相に偏析するようなことが防止されるとともに、略均一に分散配置される。これにより、上述した切断抵抗を低減する効果が、ブレード本体の切れ刃において厚さ方向、径方向及び周方向に均一に得られることになり、切断加工がより高精度に安定して行えるのである。
具体的に、ブレード本体に占める気孔の体積比率が10%未満である場合、被切断材と、該被切断材に切り込むブレード本体の切れ刃との接触面積が大きくなり、上述した効果が得られにくくなる可能性がある。
また、ブレード本体に占める気孔の体積比率が70%を超える場合、切断時の該ブレード本体の摩耗量が大きくなり、工具寿命が短くなる可能性がある。
従って、気孔の、ブレード本体に占める体積比率は、10〜70%であることが好ましい。
具体的に、ブレード本体に占めるフィラーの体積比率が10%未満である場合、該フィラーの3次元形状体によって気孔の移動を規制する効果が得られにくくなるとともに、ボンド相に気孔が均一に分散されにくくなる可能性がある。
また、ブレード本体に占めるフィラーの体積比率が40%を超える場合、製造時に作製されるスラリーの粘度が高くなり、シート成形しにくくなる可能性がある。
従って、フィラーの、ブレード本体に占める体積比率は、10〜40%であることが好ましい。
また、ブレード本体に占めるフィラーの体積比率が上述の範囲内とされることで、該フィラーの3次元形状体が有する機能、つまり異方性を緩和する機能を十分発揮できるとともに該機能が過剰となるようなことも防止され、もって、耐摩耗性並びに切断性能のさらなる向上が図れるとともに、金属バリの発生も確実に抑えることができる。
また、本発明の切断用ブレードの製造方法によれば、上述した切断用ブレードを、簡便に、かつ安定して製造できる。
本実施形態の切断用ブレード10は、例えば上述したQFNやIrDAのような、樹脂中に銅やNi−Pd系などの金属材を有する複合材である電子部品材料(被切断材)の切断に使用されるものである。
砥粒3は、ダイヤモンド砥粒及びcBN砥粒の少なくともいずれかからなる。ブレード本体1のボンド相2において、複数の砥粒3同士は、互いの間隔が均一となるように分散されている。
フィラー4には、上述したもの以外に、前記3次元結晶構造のフィラー4aにおける針状部4aa(またはその先端部分)が折れてなる、単なる針状のフィラーも含まれる。
また、前記酸化亜鉛の結晶構造体からなるフィラー4のうち、前記3次元結晶構造のフィラー4aと酸化亜鉛の結晶構造体からなる他の形状のフィラー(4b、4c、4d)との体積比は、10:90〜90:10の範囲に設定されている。
そして、金属酸化物の結晶構造体からなるフィラー4の、ブレード本体1に占める体積比率は、10〜40%である。
金属酸化物の結晶構造体からなるフィラー4同士、及び、粉末状のフィラー5同士は、ボンド相2にそれぞれ略均一に分散されている。
そして、気孔6の、ブレード本体1に占める体積比率は、10〜70%である。
この切断用ブレード10の製造方法は、ボンド相2素材に溶媒、砥粒3及びフィラー4、5を混合してスラリーとするスラリー形成工程と、前記スラリーをドクターブレード法によりシート状とし、さらに円板状にくり抜いてブレード本体1素材とする成形工程と、前記ブレード本体1素材をホットプレスする圧縮工程と、圧縮工程を経たブレード本体1素材を仕上げ加工する仕上げ工程とを備えている。そして、前記スラリー形成工程では、さらに内部に気孔を有する中空ビーズ体7を混合し、前記フィラー4として、仮想四面体の中心から各頂点に向かって針状部が四方に延びた3次元結晶構造のフィラー(3次元形状体)4aを少なくとも用いる。
例えばフェノール樹脂(ボンド相2)素材を所定量秤量し、IPA溶媒を10ml加えてフェノール樹脂素材を溶解させる。次に、溶解させた樹脂溶液に、上述した砥粒3、酸化亜鉛の結晶構造体からなるフィラー4、WCからなる粉末状のフィラー5及び中空ガラスビーズからなる中空ビーズ体7を添加して混ぜ合わせることにより、スラリーを形成する。尚、上記中空ビーズ体7としては、例えば、製品名:グラスバブルズS60HS(住友スリーエム株式会社)を用いることができる。
また、上記樹脂溶液に、シランカップリング剤を混合してもよい。
次いで、上記スラリーを、ドクターブレード法により、例えば厚さ0.3mmのシート状に成形する。
このシートを乾燥させた後、該シートから直径70mmの円板状ブレードをくり抜くことにより、ブレード本体1素材を形成する。
次いで、上記ブレード本体1素材を、ホットプレスにて圧縮成型する。成型条件は、例えば、熱板200℃、180℃雰囲気で30分間、圧力10tonである。
こうしてブレード本体1素材を圧縮成型したものを、所定サイズとなるように外周部と内周部を切断あるいは研削加工することで、所望形状の切断用ブレード10を得ることができる。
尚、上述した各工程における材料の種類や名称、成形寸法、成型条件等は、本実施形態に限定されるものではない。
このため、このようなフィラー4aが添加されたボンド相2は、異方性(ここで言う異方性とは、例えば従来の針状又は繊維状のフィラーが製造時の成形等により所定方向に配列されるような状態を差す)が緩和されることとなり、どの方向に対しても略同一の耐摩耗性を確保でき、結果的に耐摩耗性に優れるものとなる。また、成型後のボンド相2においては、特定方向への収縮率が高くなるといった事態を回避でき、切断用ブレード10の製品としての寸法精度の向上が図れる。これに伴い、切断性能が向上するとともに、切断されたチップ(被切断材)の加工品位が高められる。
すなわち、切断用ブレード10の製造時に、例えばスラリー状とされたボンド相2素材内を浮力などにより意図せず気孔6(つまり中空ビーズ体7)が移動するようなことが3次元形状体であるフィラー4aにより規制されて、製造された切断用ブレード10においては、これら気孔6が、ボンド相2に偏析するようなことが防止されるとともに、略均一に分散配置される。これにより、上述した切断抵抗を低減する効果が、ブレード本体1の切れ刃において厚さ方向、径方向及び周方向に均一に得られることになり、切断加工がより高精度に安定して行えるのである。
また、本実施形態で説明した切断用ブレード10の製造方法によれば、上述した切断用ブレード10の構成を簡便に、かつ安定して実現(製造)できる。
具体的に、ブレード本体1に占める気孔6の体積比率が10%未満である場合、被切断材と、該被切断材に切り込むブレード本体1の切れ刃との接触面積が大きくなり、上述した効果が得られにくくなる可能性がある。
また、ブレード本体1に占める気孔6の体積比率が70%を超える場合、切断時の該ブレード本体1の摩耗量が大きくなり、工具寿命が短くなる可能性がある。
従って、気孔6の、ブレード本体1に占める体積比率は、10〜70%であることが好ましい。
具体的に、ブレード本体1に占めるフィラー4の体積比率が10%未満である場合、該フィラー4の3次元形状体4aによって気孔6の移動を規制する効果が得られにくくなるとともに、ボンド相2に気孔6が均一に分散されにくくなる可能性がある。
また、ブレード本体1に占めるフィラー4の体積比率が40%を超える場合、製造時に作製されるスラリーの粘度が高くなり、シート成形しにくくなる可能性がある。
従って、フィラー4の、ブレード本体1に占める体積比率は、10〜40%であることが好ましい。
また、ブレード本体1に占めるフィラー4の体積比率が上述の範囲内とされることで、金属酸化物の結晶構造体のうち3次元結晶構造のフィラー4aが有する機能、つまり異方性を緩和する機能を十分発揮できるとともに該機能が過剰となるようなことも防止され、もって、耐摩耗性並びに切断性能のさらなる向上が図れるとともに、金属バリの発生も確実に抑えることができる。
尚、ボンド相2に、酸化亜鉛の結晶構造のフィラー4のみで比較的硬度が高いWCからなる粉末状のフィラー5を有さない場合には、ボンド相2の摩耗が必要以上に進んでしまい、切断用ブレード10としての寿命が短くなってしまう可能性がある。
本実施形態では、フィラーとして、酸化亜鉛の結晶構造フィラー4の他に該結晶構造のフィラー4よりも硬度が高いWC粉末状のフィラー5を用いているので、ボンド相2の摩耗が進むのを適宜抑えることができ、これによって、前述したように切断性能の向上並びにバリの発生を抑制する他、長寿命化を図ることもできる。
尚、針状部4aaの長さが0.1μm未満であると、フィラーとしての大きさを確保することができず、該フィラーを添加する際の効果である、機械的強度を補う効果が得られにくくなる。また、針状部4aaの長さが100μmを超えると、針状部4aa自体が損傷しやすくなり、例えばボンド相2に添加する際あるいは成型時において、針状部4aaが折れたりあるいは曲がったりするおそれがあり、3次元結晶構造の利点が得られにくくなる。
3次元結晶構造のフィラー4aの表面に微細な凹凸が生じており、この凹凸のうち凹所の底部にはボンド相2が進入しにくい。しかしながら、3次元結晶構造のフィラー4aの表面がシランカップリング剤で予めコーティングされていると、3次元結晶構造のフィラー4aの表面の濡れ性が改善されて、ボンド相2と十分なじむこととなり、このため、3次元結晶構造のフィラー4aの表面の凹所の底部にまで、ボンド相2が進入する。この結果、ボンド相2の3次元結晶構造のフィラー4aに対する保持力が高まり、3次元結晶構造のフィラー4aがボンド相2からむやみに脱落するのを回避できる。
尚、3次元結晶構造のフィラー4aの表面をシランカップリング剤で予めコーティング処理する方法としては、公知の乾式処理法やスラリー法が採用される。
具体的には、上述の実施形態の製造方法により切断用ブレードを複数作製し、これら切断用ブレードのうち、ブレード本体1に占めるフィラー4の体積比率を、5%、10%、20%、30%、40%、50%としたものをこの順に実施例1〜6とし、前記体積比率を0%(つまりフィラー4無し)としたものを比較例1とした。そして、得られた切断用ブレードのブレード本体1において、ボンド相2に気孔6が均一に分散されているかどうかを、レーザー顕微鏡による画像解析にて確認した。結果を表1に示す。尚、表1において、「良」は、ボンド相2に気孔6が均一に分散されたもの(狙い値±5%以下)を示し、「可」は、気孔6がほぼ均一に分散されているものの良に比べて若干均一性に劣るもの(狙い値±10%以下)を示し、「不可」は、気孔6が偏って(不均一に)分散されたもの(狙い値±10%超)を示す。
以上のことから、ブレード本体1において、ボンド相2に3次元形状体4aを含むフィラー4を分散させることにより、気孔6を均一に分散できることが確認され、さらに該ブレード本体1に占めるフィラー4の体積比率が10〜40%の範囲内とされることで、その効果がより顕著となることがわかった。
具体的には、上述の実施形態の製造方法により切断用ブレードを複数作製し、これら切断用ブレードのうち、気孔率(体積%)を、5%、10%、20%、30%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%としたものをこの順に実施例7〜18とし、前記気孔率を0%(つまり気孔6無し)としたものを比較例2とした。尚、ブレード本体1の組成(気孔6分を含めない体積比率)としては、砥粒3を25%、ZnO(フィラー4)を7.5%、WC(フィラー5)を18.75%とし、残部を上記気孔率の設定に準ずる中空ビーズ体7及びフェノール系樹脂(ボンド相2)とした。また、ボンド相2に分散される砥粒3の集中度は、100とした。
以上のことから、ブレード本体1において、ボンド相2に気孔6を分散させることにより、切断抵抗が低減されるとともに切粉の排出性が向上して、金属バリの発生を抑制できることが確認された。
以上のことから、ブレード本体1に占める気孔6の体積比率(気孔率)が、10〜70%の範囲内とされることで、加工品位をより高めることができ好ましく、さらには、上記気孔率が20〜50%の範囲内とされることで、その効果が格別顕著となり望ましいことがわかった。
2 ボンド相
3 砥粒
4 フィラー
4a 3次元結晶構造のフィラー(3次元形状体)
4aa 針状部
6 気孔
7 中空ビーズ体
10 切断用ブレード
Claims (4)
- 円形薄板状のブレード本体を有する切断用ブレードであって、
前記ブレード本体は、
ボンド相と、
前記ボンド相に分散された砥粒と、
前記ボンド相に分散され、仮想四面体の中心から各頂点に向かって針状部が四方に延びた3次元形状体を少なくとも含むフィラーと、
前記ボンド相に分散された気孔と、を備え、
前記3次元形状体とされたフィラーの表面が、シランカップリング剤で予めコーティング処理されており、
前記気孔は、内部に気孔を有する中空ビーズ体が前記ボンド相に分散されて形成されていることを特徴とする切断用ブレード。 - 請求項1に記載の切断用ブレードであって、
前記気孔の、前記ブレード本体に占める体積比率が、10〜70%であることを特徴とする切断用ブレード。 - 請求項1又は2に記載の切断用ブレードであって、
前記フィラーの、前記ブレード本体に占める体積比率が、10〜40%であることを特徴とする切断用ブレード。 - ボンド相素材に溶媒、砥粒及びフィラーを混合してスラリーとするスラリー形成工程と、
前記スラリーをドクターブレード法によりシート状とし、さらに円板状にくり抜いてブレード本体素材とする成形工程と、
前記ブレード本体素材をホットプレスする圧縮工程と、を備える切断用ブレードの製造方法であって、
前記スラリー形成工程では、
さらに内部に気孔を有する中空ビーズ体を混合し、
前記フィラーとして、表面がシランカップリング剤で予めコーティング処理され、仮想四面体の中心から各頂点に向かって針状部が四方に延びた3次元形状体を少なくとも用い、
前記3次元形状体により、前記ボンド相素材内を前記中空ビーズ体が移動することを規制することを特徴とする切断用ブレードの製造方法。
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