JP5840310B1 - 銅合金板材、コネクタ、及び銅合金板材の製造方法 - Google Patents

銅合金板材、コネクタ、及び銅合金板材の製造方法 Download PDF

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Abstract

高導電率で、かつ、圧延方向から圧延垂直方向に向けて0?、45?または90?方向のいずれの方向においても高強度の銅合金板材とそれを用いたコネクタ、及びその銅合金板材の製造方法を提供する。NiとCoのいずれか1種又は2種を合計で1.80〜8.00質量%、Siを0.40〜2.00質量%、並びにSn、Zn、Ag、Mn、P、Mg、Cr、Zr、Fe及びTiからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を合計で0.000〜2.000質量%含有し、残部が銅と不可避不純物からなる組成を有し、導電率が20〜40%IACS以上であり、圧延方向から圧延垂直方向に向けて0?、45?、90?の方向の引張強度がいずれも1020〜1400MPaである銅合金板材、それを用いたコネクタおよびその銅合金板材の製造方法。

Description

本発明は、銅合金板材とそれを用いたコネクタ、及びその銅合金板材の製造方法に関する。
電子機器と外部機器等とを接続するための端子やコネクタは、電子機器の小型化、薄肉化に伴って、更なる小型化が求められている。また、これらの端子やコネクタは、一日に何十回もの挿抜や嵌合が行われる場合もあるため、バネ部の強度や耐疲労特性(繰り返し特性)も求められている。端子やコネクタは、強度や導電性を必要とすることから銅合金を用いて製造されることが多い。従って、小型成形が可能で、かつ強度と耐疲労特性に優れた端子・コネクタ用の銅合金材が望まれている。
特に、端子やコネクタは、銅合金の板材を打ち抜き、プレス成型することで製造される。この際、端子やコネクタのバネ部の応力負荷方向は、銅合金板材の圧延方向(RD;Rolling Direction)から圧延垂直方向(TD;Transverse Direction)に向けて90°の方向または45°の方向となる場合が多い。このため、端子やコネクタ用の銅合金板材は、これらの方向のいずれにおいても耐疲労特性が優れることが求められる。また、端子やコネクタの小型化に伴って、バネ部の長さが短くなると、バネ部に掛かる応力が大きくなる。このため、銅合金板材は、前記耐疲労特性が良好なことに加えて、高い応力が付与されても永久変形し難いことが求められる。
従来、バネ用の銅合金としてはリン青銅系が最も多く使用されてきた。リン青銅系のバネ用銅合金は、強度や耐疲労特性に優れるものの、導電率が10%IACS前後と低い。このため、今後の小型で高い信頼性が求められる端子には、リン青銅系のバネ用銅合金は使用が制限される場合があると考えられる。小型で高い信頼性が求められる端子用のバネ材には、20%IACS以上の導電率が求められるためである。
Cu−Ni−Si系の銅合金、いわゆるコルソン系合金は、リードフレーム用として開発され、コネクタ用としても使用されている合金である。これまでのコルソン系合金は、導電率がリン青銅系よりも良好である。しかし、これまでのコルソン系合金は、強度や耐疲労特性が、昨今の要求を満足しない場合があった。特に、圧延方向から圧延垂直方向に向けて0°の方向(すなわち圧延方向)では特性が良好であっても、45°または90°の方向の耐疲労特性が劣っていた。
このような電子機器の技術動向から、高導電率を有し、かつ、圧延方向から圧延垂直方向に向けて0°、45°または90°方向のいずれの強度および耐疲労特性も優れる材料が必要とされている。
特許文献1では、Cu−Ni−Sn系合金の含有成分を含む合金組成を選定し、特定の工程で時効析出硬化させることで、導電率を低下させることなく、疲労特性の良好な銅合金とすることが提案されている。
特許文献2では、Cu−Sn系合金の結晶粒径と仕上げ圧延条件を調整して、高強度の銅合金とすることが提案されている。
特許文献3では、Cu−Ni−Si系合金の中でもNi濃度が高い場合に、特定の工程で調製することで高強度とすることが提案されている。
特許文献4では、Cu−Ti系合金の含有成分を含む合金組成を選定し、特定の工程で時効析出硬化させることで高強度とすることが提案されている。
特許文献5では、Cu−Ni−Si系合金条を特定の製造工程で得ることで、所定の{110}<001>方位密度とKAM(Karnel Average Misorientation)値とを有し、深絞り加工性と耐疲労特性を向上させることが提案されている。
特許文献6では、圧延方向の引張強さと、圧延方向となす角度が45°方向の引張強さと、圧延方向となす角度が90°方向の引張強さの3つの引張強さ間の各差の最大値が100MPa以下である、Cu−Ni−Si系の接点材用銅基析出型合金板材が提案されている。
特許文献7では、Cu−Ni−Si系合金のCube方位及びBR方位の面積率を適正に制御することで、高強度で、曲げ加工性、耐応力緩和特性、耐疲労特性を向上させることが提案されている。
特開昭63−312937号公報 特開2002−294367号公報 特開2006−152392号公報 特開2011−132594号公報 特開2012−122114号公報 特開2008−095186号公報 特開2012−246549号公報
ところで、特許文献1〜4では、一般的な銅合金から比べると、高い強度は得られているものの、合金系と製造方法によっては導電率が依然低い場合があった。
特許文献5では、深絞り加工性と耐疲労特性は得られているものの、強度と導電率の点ではなお向上の余地があった。
特許文献6では、高い導電率が得られているものの、高い強度と両立させる点ではなお向上の余地があった。
特許文献7では、曲げ加工性、耐応力緩和特性、耐疲労特性は得られているものの、高い強度と高い導電率を両立させる点ではなお向上の余地があった。
また、これらの特許文献1〜7では、圧延方向から圧延垂直方向に向けて0°、45°または90°いずれの方向でも高強度とすることは着目されておらず、実際にこれらいずれの方向でも引張強度が高いかどうかは不明である。
そこで、良好な導電性を有しながら、かつ、圧延方向から圧延垂直方向に向けて0°、45°または90°いずれの方向でも高い引張強度を有する銅合金板材が求められている。
上記従来技術における問題点に鑑み、本発明の課題は、高導電率で、かつ、圧延方向から圧延垂直方向に向けて0°、45°または90°方向のいずれの方向においても高強度であり、好ましくはいずれの方向においても耐疲労特性にも優れる銅合金板材を提供することにある。また、この銅合金板材を用いたコネクタ、及びこの銅合金板材の製造方法を提供することにある。特に、本発明は、ドックコネクタやUSBコネクタに代表される外部接続コネクタの他、カメラモジュール用の薄板バネ材、リレーの可動片などに適した銅合金板材とそれを用いたコネクタ、及びその銅合金板材の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決する為に鋭意検討を重ねた結果、特定のCu−(Ni,Co)−Si系合金組成を有して、特定の製造条件で製造した銅合金板材が、良好な導電性を有しながら、圧延方向から圧延垂直方向に向けて0°、45°または90°方向のいずれの方向においても高い強度とすることができることを見いだした。本発明は、この知見に基づき完成されるに至ったものである。
すなわち、本発明によれば以下の手段が提供される。
(1)NiとCoのいずれか1種又は2種を合計で1.80〜8.00質量%、Siを0.40〜2.00質量%含有し、さらに、Sn0.31質量%以下、Zn0.47質量%以下、Ag0.08質量%以下、Mn0.1質量%以下、P0.05質量%以下、Mg0.11質量%以下、Cr0.12質量%以下、Fe0.11質量%以下及びTi0.14質量%以下の範囲であって、かつ該Sn、Zn、Ag、Mn、P、Mg、Cr、Fe及びTiからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を合計で0.000〜2.000質量%含有し、残部が銅と不可避不純物からなる組成を有し、導電率が20〜40%IACS以上であり、圧延方向(RD)から圧延垂直方向(TD)に向けて0°、45°、90°の方向の引張強度がいずれも1020〜1400MPaである、銅合金板材。
(2)前記Sn、Zn、Ag、Mn、P、Mg、Cr、Fe及びTiからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素合計の含有量が、0.005〜2.000質量%である(1)項に記載の銅合金板材。
(3)(1)または(2)項に記載の銅合金板材からなるコネクタ。
(4)導電率が20〜40%IACS以上であり、圧延方向(RD)から圧延垂直方向(TD)に向けて0°、45°、90°の方向の引張強度がいずれも1020〜1400MPaである銅合金板材の製造方法であって、NiとCoのいずれか1種又は2種を合計で1.80〜8.00質量%、Siを0.40〜2.00質量%含有し、さらに、Sn0.31質量%以下、Zn0.47質量%以下、Ag0.08質量%以下、Mn0.1質量%以下、P0.05質量%以下、Mg0.11質量%以下、Cr0.12質量%以下、Fe0.11質量%以下及びTi0.14質量%以下の範囲であって、かつ該Sn、Zn、Ag、Mn、P、Mg、Cr、Fe及びTiからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を合計で0.000〜2.000質量%含有し、残部が銅と不可避不純物からなる銅合金の原料を溶解し鋳造する溶解・鋳造工程と、900〜1040℃で1時間以上の熱処理を行う均質化熱処理工程と、熱間加工開始から終了までの温度範囲が500〜1040℃であり、加工率が10〜90%である熱間加工工程と、加工率が0〜95%の中間冷間圧延工程と、300〜430℃で5分間から10時間の熱処理を行う熱処理工程と、加工率が60〜99%の最終冷間圧延工程と、をこの順で行う銅合金板材の製造方法。
(5)前記溶解・鋳造工程に供される銅合金に、Sn0.31質量%以下、Zn0.47質量%以下、Ag0.08質量%以下、Mn0.1質量%以下、P0.05質量%以下、Mg0.11質量%以下、Cr0.12質量%以下、Fe0.11質量%以下及びTi0.14質量%以下の範囲であって、かつ該Sn、Zn、Ag、Mn、P、Mg、Cr、Fe及びTiからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を合計で0.005〜2.000質量%含有する(4)項に記載の銅合金板材の製造方法。
(6)前記最終冷間圧延工程の後に、200〜500℃で5秒〜2時間保持する歪取り焼鈍を行う(4)または(5)項に記載の銅合金板材の製造方法。
本発明の銅合金板材は、その有する特性により、ドックコネクタやUSBコネクタに代表される外部接続コネクタの他、カメラモジュール用の薄板バネ材、リレーの可動片などに好適に用いることができる。
本発明の銅合金板材は、バネへの応力負荷方向として、圧延方向から圧延垂直方向に向けて0°、45°または90°方向のいずれの方向でも従来よりも著しく高い強度を有するため、特性が劣化しにくいバネ用材料として用いることができる。この為、例えば、コネクタ材として好適である。
また、本発明の銅合金板材の製造方法によれば、前記優れた特性を有する銅合金板材を好適に製造することができる。
本発明の上記及び他の特徴及び利点は、適宜添付の図面を参照して、下記の記載からより明らかになるであろう。
図1は、銅合金板材と、圧延方向(RD)、圧延垂直方向(TD)および圧延面垂直方向(ND)の関係を示す模式図である。 図2は、引張試験、疲労試験における試験片として、圧延方向から圧延垂直方向に向けて0°、45°、90°方向の試験片を示す模式図である。 図3は、局部伸びの説明図である。図3には代表的な例として、発明例205の0°方向での応力−歪み曲線を示す。局部伸び(e)とは、図示した均一伸び(e)の後で試験材が破断するまでの伸びをいう。 図4(A)は発明例205、図4(B)は比較例256、図4(C)は比較例257についての、X線による{100}極点図である。
本発明の銅合金板材の好ましい実施の態様について、詳細に説明する。ここで、「銅合金材料」とは、銅合金素材が所定の形状(例えば、板、条、箔、棒、線など)に加工されたものを意味する。そのなかで板材とは、特定の厚みを有し形状的に安定しており面方向に広がりをもつものを指し、広義には条材や箔材、板を管状とした管材を含む意味である。
図1に、本実施形態の銅合金板材1と、圧延方向(RD)、圧延垂直方向(TD)および圧延面垂直方向(ND;Normal Direction)の関係を示す。圧延方向とは、銅合金板材の製造時に、圧延ロール等によって板材が圧延されて伸延していく方向を示す。これに対して、圧延垂直方向は、圧延方向に垂直であり、圧延面に平行な方向である。圧延面垂直方向は、圧延面に垂直な方向である。工業的な銅合金板材はロール状に巻きながら製造・出荷する。したがって、銅合金板材の製造直後では、通常は板材の長手方向が圧延方向であり、板材の幅方向が圧延垂直方向である。
本実施形態の銅合金板材は、NiとCoのいずれか1種又は2種とSiをそれぞれ特定量で含有し、必要によりSn、Zn、Ag、Mn、P、Mg、Cr、Zr、Fe及びTiからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を特定量で含有し、残部が銅と不可避不純物からなる特定の合金組成とすることによって、導電率が20〜40%IACS以上であり、圧延方向(RD)から圧延垂直方向(TD)に向けて0°、45°、90°の方向の引張強度がいずれも1020〜1400MPaである。ここで、前記3つの方向は、いずれも圧延面に平行な面上(すなわち、圧延方向と圧延垂直方向で作る面上)での方向である。図2に、本実施形態の銅合金板材1から、圧延方向(RD)から圧延垂直方向(TD)に向けて0°の方向での試験片20、45°の方向での試験片21、90°の方向での試験片22を、それぞれ採取する様子を点線で示した。
本実施形態の銅合金板材は、溶体化処理を行わずに特定の強加工工程を経て製造されることで、加工組織が適正に制御されて高強度化されるとともに、圧延方向から圧延垂直方向に向けて0°、45°または90°方向のいずれの方向でも従来よりも著しく高い強度を奏する。
本実施形態の銅合金板材に用いるCu−(Ni,Co)−Si系は析出硬化型合金であり、Ni−Si系、Co−Si系、Ni−Co−Si系などの金属間化合物が第二相として銅母相中に数nm前後の微細なサイズで分散することで、析出硬化によって高強度が得られる。
(引張強度:TS)
本実施形態の銅合金板材では、圧延方向から圧延垂直方向に向けて0°、45°、90°のいずれの方向の引張強度も1020MPa以上であり、好ましくは1060MPa以上である。圧延方向から圧延垂直方向に向けて0°、45°、90°のいずれの方向の引張強度も上限は1400MPa以下であり、好ましくは1350MPa以下である。引張強度が前記の範囲内であれば、耐疲労特性にも優れる。引張強度が低すぎると耐疲労特性に劣る。一方、引張強度が高すぎると局部伸びが出にくい。なお、引張強度とは、JIS
Z2241に基づき、引張試験中に加わった最大の力に対する応力(単位はMPa)である。図3中のσTSの定義によっては、応力−歪み曲線の傾きが零(ゼロ)の点の応力を引張強度とする場合がある。これに対して、本発明では、この傾きが零(ゼロ)になる手前の応力でも引張強度とする、という意味である。
(導電率:EC)
本実施形態の銅合金板材では、導電率は20%IACS以上であり、好ましくは23%IACS以上、さらに好ましくは26%IACS以上である。導電率が高すぎると強度が低下してしまう場合があるので、上限値は40%IACS以下である。
なお、本実施形態において、上記の「%IACS」とは、万国標準軟銅(International Annealed Copper Standard)の抵抗率1.7241×10−8Ωmを100%IACSとした場合の導電率を表したものである。
(結晶方位制御)
本実施形態で特に顕著な45°及び90°方向の引張強度及び耐疲労特性の向上は、結晶方位分布の制御が作用している。図4に代表的に示したX線による{100}極点図のとおり、本実施形態の銅合金板材(発明例205、図4(A))では、従来の製造方法(比較例256、図4(B)や、比較例257、図4(C))では見られなかった結晶方位分布、すなわち従来得られなかった結晶組織が得られていることが分かる。
(合金組成)
・Ni、Co、Siは上記の第二相を構成する元素である。これらは前記金属間化合物を形成する。これらは本実施形態の必須添加元素である。NiとCoのいずれか1種又は2種の含有量の総和は、1.80〜8.00質量%であり、好ましくは2.40〜5.00質量%、より好ましくは3.20〜5.00質量%である。また、Siの含有量は0.40〜2.00質量%、好ましくは0.50〜1.20質量%、より好ましくは0.60〜1.20質量%である。これらの必須添加元素の添加量が少なすぎると、得られる効果が不十分となり、強度不足で、さらに耐疲労特性にも劣る。一方、これらの必須添加元素の添加量が多すぎると、導電率が低下する場合がある。または、圧延工程中に材料割れが発生する場合がある。Coを添加した方が、導電性がやや良好であるが、Coを含んだ状態で必須添加元素の濃度が高い場合に、熱間圧延及び冷間圧延の条件によっては、圧延割れが生じやすくなる場合がある。よって、本発明におけるより好ましい実施形態は、第二相にCoを含まないものである。
・その他の元素
本実施形態の銅合金板材は、前記必須添加元素の他に、Sn、Zn、Ag、Mn、P、Mg、Cr、Zr、Fe及びTiからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を任意添加元素として含有してもよい。該任意添加元素を含有する場合、Sn、Zn、Ag、Mn、P、Mg、Cr、Zr、Fe及びTiからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素の含有量は、合計で0.005〜2.000質量%とする。該任意添加元素は、後述の中間冷間圧延[工程5]、最終冷間圧延[工程7]において、結晶粒の微細化を促進し、強度特性及び疲労特性を向上させる効果がある。また、耐応力緩和特性を向上させる効果があり、使用環境が100℃以上などの高温となる場合などに適する。但し、これらの任意添加元素の含有量が多すぎると導電率を低下させる弊害を生じる場合や圧延工程中に材料割れが発生する場合があるので、2.000質量%以下とすることが好ましい。
・不可避不純物
銅合金中の不可避不純物は、銅合金に含まれる通常の元素である。不可避不純物としては、例えば、O、H、S、Pb、As、Cd、Sbなどが挙げられる。これらは、その合計の量として0.1質量%程度までの含有が許容される。
(製造方法)
従来法として、通常の析出硬化型銅合金材の製造方法では、溶体化熱処理によって過飽和固溶状態とした後に、時効処理によって析出させ、必要に応じて調質圧延(仕上げ圧延)及び調質焼鈍(低温焼鈍、歪み取り焼鈍)が行われる。後述する比較例の製造方法F、J、K、Lがこれに相当する。
これに対して、本発明においては、前記従来法とは異なるプロセスが有効となる。例えば、下記のようなプロセスが有効である。ただし本発明は下記の方法に限定されるものではない。
本実施形態の銅合金板材の製造方法の一例は、溶解・鋳造[工程1]して鋳塊を得て、この鋳塊に、均質化熱処理[工程2]、熱間圧延等の熱間加工[工程3]、水冷[工程4]、中間冷間圧延[工程5]、時効析出のための熱処理[工程6]、最終冷間圧延[工程7]、歪取り焼鈍[工程8]をこの順に行う方法が挙げられる。歪取り焼鈍[工程8]は所定の物性が得られていれば省略してもよい。
本実施形態では、一連の上記プロセスの組み合わせと、前記中間冷間圧延[工程5]の条件を加工率0〜95%とし、前記時効処理[工程6]の条件を300〜430℃で5分〜10時間とし、かつ、前記最終冷間圧延[工程7]の加工率を60〜99%とする、という各工程における特定の条件の組み合わせの制限によって達成される。ここでの機構は次のように推定される。前記時効処理[工程6]において析出した(Ni,Co)−Si化合物の作用によって、その後の最終冷間圧延[工程7]における転位の分布状態や結晶回転が変化する。そして、最終冷間圧延[工程7]の圧延率を高くとることで、最終冷間圧延[工程7]中の結晶粒の分断が誘発される。
各工程での好ましい熱処理、加工の条件としては、以下のとおりである。
均質化熱処理[工程2]は、900〜1040℃で1時間以上、好ましくは5〜10時間保持する。
熱間圧延等の熱間加工[工程3]は、熱間加工開始から終了までの温度範囲が500〜1040℃で、加工率は10〜90%とする。
水冷[工程4]は、通常、冷却速度が1〜200℃/秒である。
中間冷間圧延[工程5]は、加工率が0〜95%、好ましくは71〜95%とする。
時効処理[工程6]は時効析出処理ともいい、その条件は300〜430℃で5分〜10時間の保持であり、好ましい温度範囲は330〜360℃である。
最終冷間圧延[工程7]は、加工率が60〜99%、好ましくは60〜89%である。
歪取り焼鈍[工程8]は、200〜500℃で5秒〜2時間保持する。保持時間が長すぎると、強度が低下してしまうため、5秒以上5分以下の短時間焼鈍とすることが好ましい。
ここで、加工率(又は圧延での断面減少率)は次式によって定義される値である。
加工率(%)={(t−t)/t}×100
式中、tは圧延加工前の厚さを、tは圧延加工後の厚さをそれぞれ表わす。
なお、各熱処理や圧延の後に、材料表面の酸化や粗度の状態に応じて、必要により、面削や酸洗浄、又は表面研磨によって、表面の酸化層を除去してもよい。また、形状に応じて、必要により、テンションレベラーによる矯正を行ってもよい。また、圧延ロールの凹凸の転写やオイルピットによって材料表面の粗さが大きい場合は、圧延速度、圧延油、圧延ロールの径、圧延ロールの表面粗さ、圧延時の1パスの圧下量などの圧延条件を調整することができる。
(板厚)
本実施形態の銅合金板材は、仕上げ圧延後の最終板厚が30μm〜1mmである。好ましくは、40μm〜0.3mmである。
(物性)
本実施形態の銅合金板材は、好ましくは以下の物性を有する。
(耐疲労特性)
本実施形態の銅合金板材の一つの好ましい実施態様では、JIS Z 2273で規定される疲労試験において、圧延方向から圧延垂直方向に向けて0°、45°、90°のいずれの方向の耐疲労特性にも優れる。具体的には、試験片を負荷応力500MPaで繰り返し曲げを施した場合に破断するまでの回数は、好ましくは4×10回以上である。これは、毎日10回の挿抜を10年間行うことに対応した回数である。より好ましくは8×10回以上、さらに好ましくは11×10回以上である。端子の設計によっては90°方向の負荷応力が特に高いため、特に良好な疲労特性が求められる場合がある。本発明のより好ましい形態として、90°方向の寿命が2×10回以上である。
(局部伸び)
本発明の銅合金板材の一つの好ましい実施態様では、局部伸びが、好ましくは0.03〜10%、より好ましくは0.08〜10%、さらに好ましくは0.15〜10%である。
引張試験の際、最大荷重(引張強度σTS)を超えると試験片の一部にくびれ(ネッキング)が生じる。このくびれ発生後の伸びを局部伸びという。図3に、発明例205の0°方向での応力−歪曲線を代表的な例として示す。eが均一伸び、eが局部伸びに相当する。一般的に、材料の強度を高めるほど局部伸びを出すのは難しい。本発明の銅合金板材は、好ましくは、高強度を有しつつ、一定の局部伸びも有する。
以下に、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1)
表1に記載の合金成分元素を含有し、残部がCuと不可避不純物から成る合金の原料を高周波溶解炉により溶解し、これを鋳造して鋳塊を得た。そして、下記A、B、C、D、E及びFのいずれかの製法にて、本発明に従った発明例とこれとは別に比較例の銅合金板材の供試材を、それぞれ製造した。なお、表1にA、B、C、D、E及びFのいずれの製法を用いたのかを示した。最終的な銅合金板材の厚さは0.1mmとした。この最終板厚は、以下に述べる製法J、K、Lの場合も特に断らない限り同様である。
なお、表中に下線つきで表した数字等は、本発明で規定する合金成分の含有量もしくは製法を満たさなかったか、または物性が本発明で規定する範囲もしくは好ましい範囲を満たさなかったものを意味する。
(製法A)
前記鋳塊に対して、900〜1040℃で1時間以上10時間以下保持する均質化熱処理を行い、この高温状態のまま熱間圧延を行った。熱間圧延の終了温度は500℃以上とし、加工率は10〜90%とした。熱間圧延終了後には水冷した。その後、必要により面削した。その後、加工率が0〜95%の中間冷間圧延、300〜430℃に5分〜10時間保持する時効処理、加工率が60〜99%の最終冷間圧延、下記の歪取り焼鈍をこの順に行った。
(製法B)
前記最終冷間圧延の加工率を99.1〜99.9%とした以外は、前記製法Aと同様に行った。
(製法C)
前記最終冷間圧延の加工率を30〜59%とした以外は、前記製法Aと同様に行った。
(製法D)
前記時効処理の加熱温度を250〜290℃とし、前記最終冷間圧延の加工率を60〜89%とした以外は、前記製法Aと同様に行った。
(製法E)
前記時効処理の加熱温度を440〜500℃とし、前記最終冷間圧延の加工率を60〜89%とした以外は、前記製法Aと同様に行った。
(製法F)
前記中間冷間圧延の後で前記時効処理の前に、700〜1000℃に5秒〜10分間保持した後に水焼き入れを施す溶体化処理を行い、前記最終冷間圧延の加工率を60〜89%とした以外は、前記製法Aと同様に行った。
前記製法A、B、C、D、E及びFにおける歪取り焼鈍の条件は、200〜500℃で5秒〜5分間保持した。
なお、各熱処理や圧延の後に、材料表面の酸化や粗度の状態に応じて、必要により、面削や酸洗浄、又は表面研磨によって、表面の酸化層を除去した。また、形状に応じて、必要により、テンションレベラーによる矯正を行った。また、圧延ロールの凹凸の転写やオイルピットによって、材料表面の粗さが大きい場合は、圧延速度、圧延油、圧延ロールの径、圧延ロールの表面粗さ、圧延時の1パスの圧下量などの圧延条件を調整した。
また、他の比較例として下記の製法J、K、Lのいずれかにて試作して、銅合金板材の供試材を得た。製法J、K、Lの条件は、各特許文献に記載されている製造方法のものを踏襲した。
(製法J)特許文献6:特開2008−095186号公報の実施例2の製法
下記表1に示した銅合金組成を与える原料を高周波溶解炉にて溶解し、これをDC(ダイレクト・キャスティング)法により厚さ30mm、幅100mm、長さ150mmの鋳塊に鋳造し、得られた鋳塊を1000℃の温度に1時間保持後、厚さ12mmに熱間圧延し、速やかに冷却した。次に、熱間圧延板の両面を各1.5mm切削して酸化皮膜を除去し、次いで厚さ0.15〜0.1mmに冷間圧延し、次いで825〜925℃の温度範囲で15秒間溶体化処理し、その後直ちに10℃/秒以上の冷却速度で冷却した。次に420〜480℃で1〜3時間の時効熱処理を施し、その後直ちに約1〜10℃/秒の冷却速度で冷却した。
次いで、30%以下の圧延率で冷間圧延して板厚0.1mmの板材に仕上げた。なお、溶体化処理と時効熱処理の条件は合金組成に応じて適宜選定した。冷間圧延後に、歪取り焼鈍を650℃で3秒間施した。
(製法K)特許文献7:特開2012−246549号公報に記載の実施例1、工程Aの製法
下記表1に示した銅合金組成を与える原料を高周波溶解炉により溶解し、これを鋳造して鋳塊を得た。この状態を提供材とし、下記の工程にて、銅合金板材の供試材を製造した。最終的な合金板材の厚さは0.12mmとした。
950〜1050℃の温度で3分〜10時間の均質化熱処理を行い、500〜950℃の熱間圧延を行った後に400〜800℃で5秒〜20時間の熱処理を行い、酸化スケール除去のために面削を行った。その後に90〜99%の加工率の冷間圧延1を行い、400〜700℃の温度で5秒〜20時間の中間焼鈍を行い、3〜80%の加工率の冷間圧延2を行った。その後に、800〜950℃の温度に5秒〜50秒間保持する溶体化熱処理を行い、350〜600℃の温度で5分間〜20時間の時効析出熱処理を行い、5〜50%の仕上げ圧延を行い、300〜700℃の温度で10秒〜20時間保持する調質焼鈍を行った。
(製法L)特許文献3:特開2006−152392号公報に記載の発明例1の製法
下記表1に示した銅合金組成(Cu−6.0Ni−1.2Si−0.02P)を与える銅合金を鋳造して銅合金板を製造した。なお、前記記載以外の他の元素(不可避的不純物元素)として、Al、Fe、Ti、Be、V、Nb、Mo、Wは、これらの総量で0.5質量%以下であった。また、B、C、Na、S、Ca、As、Se、Cd、In、Sb、Pb、Bi、MM(ミッシュメタル)等の元素は、これらの総量で0.1質量%以下であった。
具体的な銅合金板の製造方法としては、クリプトル炉において大気中で木炭被覆下で溶解し、鋳鉄製ブックモールドに鋳造し、厚さが50mm、幅が75mm、長さが180mmの鋳塊を得た。そして、鋳塊の表面を面削した後、950℃の温度で厚さが15mmになるまで熱間圧延し、750℃以上の温度から水中に急冷した。次に、酸化スケールを除去した後、冷間圧延を行い、厚さが0.75mmの板を得た。
続いて、塩浴炉を使用し、温度900℃で20秒間加熱する溶体化処理を行なった後に、水中に急冷した後、加工率20%で後半の仕上げ冷間圧延により、厚み0.6mmの冷延板にした。この冷延板を、温度450℃で4時間の時効処理に付した。
これらの本発明に従った発明例及び比較例の供試材について、以下のようにして各特性を測定、評価した。結果を表1に併せて示す。
a.引張強度:TS
図2に示したように圧延方向から圧延垂直方向に向けて0°(圧延方向)、45°または90°(圧延垂直方向)に切り出したJIS Z2201−13B号の試験片を、JIS Z2241に準じて各方向に3本ずつ測定しそれぞれ平均値を示した。引張強度は、引張試験中に加わった最大の力に対する応力(単位はMPa)とした。
b.導電率:EC
各供試材について、20℃(±0.5℃)に保たれた恒温漕中で四端子法により比抵抗を計測して導電率を算出した。なお、端子間距離は100mmとした。
c.耐疲労特性
図2に示したように、圧延方向から圧延垂直方向に向けて0°(圧延方向)、45°または90°(圧延垂直方向)に切り出したJIS Z2201−13B号の試験片を、JIS Z 2273に準じて各方向に3本ずつ、負荷応力500MPaで繰り返し曲げた場合に破断するまでの繰り返し回数を測定しそれぞれ平均値を示した。
d.局部伸び:e
図3に示したように、前記と同様の引張試験において局部伸び(e)を求めた。
Figure 0005840310
表1に示すように、本発明の規定を満足する発明例101〜110は、いずれも全ての特性に優れた。すなわち発明例101〜110は、Ni/Co、Siの濃度が所定範囲内で高い程、圧延方向から圧延垂直方向に向けて0°、45°または90°方向のいずれにおいてもより高い引張強度[TS]と耐疲労特性(繰り返し回数)を示した。また、発明例104、106の圧延方向から圧延垂直方向に向けて0°または90°方向を除いて、各発明例は局部伸びを有していた。
一方、各比較例では、合金組成、製造条件の内のいずれかが本発明で規定する条件を満たさなかったため、圧延方向から圧延垂直方向に向けて0°、45°または90°方向のいずれかにおいて引張強度[TS]が本発明で規定する条件を満たさずに低かった。
より具体的には、比較例151では、Ni/Co、Siが少なすぎたので、圧延方向から圧延垂直方向に向けて0°または45°方向において引張強度[TS]が本発明で規定する条件を満たさずに低かった。また、比較例151は、圧延方向から圧延垂直方向に向けて0°または45°方向において耐疲労特性(繰り返し回数)に劣った。NiとSiの含有量が多すぎた比較例152では、圧延割れが発生し、製造性が劣った。製法C、D、EまたはFによる比較例153〜156では、製造条件が本発明で規定する条件を外れ、圧延方向から圧延垂直方向に向けて0°、45°または90°方向のいずれかにおいて引張強度[TS]が本発明で規定する条件を満たさずに低かった。また、比較例153〜156は、圧延方向から圧延垂直方向に向けて0°、45°または90°方向のいずれかにおいて耐疲労特性(繰り返し回数)に劣った。
他の比較例として、製法Jによる比較例157、製法Kによる比較例158は、いずれも製造条件が本発明で規定する条件を外れ、圧延方向から圧延垂直方向に向けて0°、45°及び90°方向のいずれにおいても引張強度[TS]が本発明で規定する条件を満たさずに低かった。また、圧延方向から圧延垂直方向に向けて0°、45°及び90°方向のいずれにおいても耐疲労特性に劣った。
(実施例2)
実施例1と同様の製造方法及び試験・測定方法によって、表2に示す各種銅合金を用いて銅合金板材を製造し、その特性を評価した。結果を表2に示す。
Figure 0005840310
表2に示すように、本発明の規定を満足する発明例201〜210は、いずれも全ての特性に優れた。任意添加元素の添加効果によって、全ての試験例においてではないものの、圧延方向から圧延垂直方向に向けて0°、45°または90°方向のいずれにおいてもより高い引張強度[TS]と耐疲労特性(繰り返し回数)が向上する傾向が認められた。また、発明例203、206の圧延方向から圧延垂直方向に向けて0°または90°方向を除いて、各発明例は局部伸びを有していた。
一方、各比較例では、合金組成、製造条件の内のいずれかが本発明で規定する条件を満たさなかったため、圧延方向から圧延垂直方向に向けて0°、45°または90°方向のいずれかにおいて引張強度[TS]が本発明で規定する条件を満たさずに低かった。
より具体的には、副添加元素(この例ではSn)が多すぎた比較例251では、圧延割れが発生し、製造性が劣った。製法C、D、EまたはFによる比較例252〜255では、製造条件が本発明で規定する条件を外れ、圧延方向から圧延垂直方向に向けて0°、45°または90°方向のいずれかにおいて引張強度[TS]が本発明で規定する条件を満たさずに低かった。また、比較例252〜255は、圧延方向から圧延垂直方向に向けて0°、45°または90°方向のいずれかにおいて耐疲労特性に劣った。
他の比較例として、製法Jによる比較例256、製法Kによる比較例257、製法Lによる比較例258は、いずれも製造条件が本発明で規定する条件を外れ、圧延方向から圧延垂直方向に向けて0°、45°及び90°方向のいずれにおいても引張強度[TS]が本発明で規定する条件を満たさずに低かった。また、圧延方向から圧延垂直方向に向けて0°、45°及び90°方向のいずれにおいても耐疲労特性に劣った。
本発明の銅合金板材は、コネクタであればどのようなタイプでも好適に用いることができる。特に、ドックコネクタやUSBコネクタに代表される外部接続コネクタの他、カメラモジュール用の薄板バネ材、リレーの可動片として好適に用いることができる。
本発明をその実施態様とともに説明したが、私は特に指定しない限り私の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
1 銅合金板材
20 圧延方向(RD)から圧延垂直方向(TD)に向けて0°方向の引張強度・耐疲労特性を測定するための試験片
21 圧延方向(RD)から圧延垂直方向(TD)に向けて45°方向の引張強度・耐疲労特性を測定するための試験片
22 圧延方向(RD)から圧延垂直方向(TD)に向けて90°方向の引張強度・耐疲労特性を測定するための試験片

Claims (6)

  1. NiとCoのいずれか1種又は2種を合計で1.80〜8.00質量%、Siを0.40〜2.00質量%含有し、さらに、Sn0.31質量%以下、Zn1.85質量%以下、Ag0.08質量%以下、Mn0.1質量%以下、P0.05質量%以下、Mg0.11質量%以下、Cr0.12質量%以下、Fe0.11質量%以下及びTi0.14質量%以下の範囲であって、かつ該Sn、Zn、Ag、Mn、P、Mg、Cr、Fe及びTiからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を合計で0.000〜2.000質量%含有し、残部が銅と不可避不純物からなる組成を有し、
    導電率が20〜40%IACS以上であり、
    圧延方向(RD)から圧延垂直方向(TD)に向けて0°、45°、90°の方向の引張強度がいずれも1020〜1400MPaである、銅合金板材。
  2. 前記Sn、Zn、Ag、Mn、P、Mg、Cr、Fe及びTiからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素合計の含有量が、0.005〜2.000質量%である請求項1に記載の銅合金板材。
  3. 請求項1または2に記載の銅合金板材からなるコネクタ。
  4. 導電率が20〜40%IACS以上であり、圧延方向(RD)から圧延垂直方向(TD)に向けて0°、45°、90°の方向の引張強度がいずれも1020〜1400MPaである銅合金板材の製造方法であって、NiとCoのいずれか1種又は2種を合計で1.80〜8.00質量%、Siを0.40〜2.00質量%含有し、さらに、Sn0.31質量%以下、Zn1.85質量%以下、Ag0.08質量%以下、Mn0.1質量%以下、P0.05質量%以下、Mg0.11質量%以下、Cr0.12質量%以下、Fe0.11質量%以下及びTi0.14質量%以下の範囲であって、かつ該Sn、Zn、Ag、Mn、P、Mg、Cr、Fe及びTiからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を合計で0.000〜2.000質量%含有し、残部が銅と不可避不純物からなる銅合金の原料を溶解し鋳造する溶解・鋳造工程と、
    900〜1040℃で1時間以上の熱処理を行う均質化熱処理工程と、
    熱間加工開始から終了までの温度範囲が500〜1040℃であり、加工率が10〜90%である熱間加工工程と、
    加工率が0〜95%の中間冷間圧延工程と、
    300〜430℃で5分間から10時間の熱処理を行う熱処理工程と、
    加工率が60〜99%の最終冷間圧延工程と、
    をこの順で行う銅合金板材の製造方法。
  5. 前記溶解・鋳造工程に供される銅合金に、Sn0.31質量%以下、Zn1.85質量%以下、Ag0.08質量%以下、Mn0.1質量%以下、P0.05質量%以下、Mg0.11質量%以下、Cr0.12質量%以下、Fe0.11質量%以下及びTi0.14質量%以下の範囲であって、かつ該Sn、Zn、Ag、Mn、P、Mg、Cr、Fe及びTiからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を合計で0.005〜2.000質量%含有する請求項4に記載の銅合金板材の製造方法。
  6. 前記最終冷間圧延工程の後に、200〜500℃で5秒〜2時間保持する歪取り焼鈍を行う請求項4または5に記載の銅合金板材の製造方法。
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