JP5839626B2 - 電子線回折による高スループット結晶構造解析のための方法及びデバイス - Google Patents

電子線回折による高スループット結晶構造解析のための方法及びデバイス Download PDF

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Description

本発明は、高スループット構造解析に適しており、ナノメートル範囲の寸法を有する結晶に適用することができる技法を用いて、電子線回折解析装置によって内部3次元構造、結晶方位、結晶相及び厚みのような結晶構造の特性を特定する分野にある。
有用な特性を得るために材料を高スループットのX線粉末法で選別することによって、数分の一のコストで、開発時間が桁違いに短縮される。たとえば、結晶相を明確に区別できることが、製薬分野において最も大きな利点であることがわかっている。各結晶形の粉末X線回折パターンは、その形に特有の特徴的な複数組のピークを含み、それにより、それらのパターンを指紋として使用できるようになる。完全に自動的な粉末結晶データ評価によって、得られた大量の情報を迅速に(数分でパターン解析される)、かつ高い費用対効果で処理できるようになる場合がある。そのような高スループットの技法は、工業製品の品質管理に強い影響を及ぼす。
数多くの最新の科学的及び工業的な用途では、大部分の物質が秩序正しく、多くの場合に結晶性を有するナノメートルスケールにおいて、サンプルを調査できる必要がある。
それらの物質の物理的特性は結晶構造に依存する。残念なことに、原子構造を特定するための従来の方法、すなわちX線結晶学は、ナノメートル範囲のサイズを有する単結晶に対して使用することはできない。なぜなら、最新のシンクロトロン源を用いて単結晶構造を特定するための限界サイズは5ミクロンよりも大きいためであり、又は粉末X線パターンは、結晶サイズ(nm)が小さくなると、極めて悪い分解能を示すためである(たとえば、ピークが広がり、重なり合う)。この簡単な事実が、ナノサイエンス、すなわち、半導体から製薬及びタンパク質までの数多くの分野において極めて重大な科学分野に対する高スループット解析の任意の試みにX線結晶学が貢献するのを結果として制限する。それゆえ、ナノ結晶状態においてのみ存在する化合物は通常、構造を特定するX線回折法では力が及ばないので、結果として、そのようなナノ構造は、その所与の重要性にもかかわらずわかっていない。根本的な構造−特性の関係に関する知識が結果として不足していることは、多くの場合に、研究部門全体における飛躍的な発展を妨げるか、又はさらなる製品開発のサイクルにおいて致命的な遅れを引き起こす場合がある。
根本的な構造−特性の関係に関する知識が結果として不足していることは、多くの場合に、研究部門全体における飛躍的な発展を妨げるか、又はさらなる製品開発のサイクルにおいて致命的な遅れを引き起こす場合がある。
電子はX線よりも約10〜10倍だけ物質と強く相互作用し、それゆえ、ナノメートルサイズの範囲における結晶の電子線回折(ED)にとって理想的であるので、EDはナノ結晶サイズにおける構造的な問題を解決するのに最適な方法である。ナノ結晶サンプルは、電子顕微鏡法及び電子線回折の両方によって調査することができる。電子ビームを透過モードにおいて使用する透過型電子顕微鏡法(TEM)は構造の直接的な画像を与えるが、レンズの歪み及び解像度が限られるという問題を抱える。これは、非常に高い解像度、たとえば、0.5オングストローム、さらにはそれ以上の解像度まで行くことができるが、動的散乱という問題を抱える、電子線回折技法における電子ビームの使用とは対照的である。しかしながら、結晶構造を解明するのにED強度を直に使用することは(X線技法とは異なり)現時点では不可能である。これらの欠点が、現在、ナノ結晶構造解析のための信頼性のある技法としてEDを広く使用することを制限する。任意のナノ結晶の3次元構造を解明するには、同じ結晶から、できる限り多くの晶帯軸(ZA)からの3次元(3D)強度データを収集する必要がある。対称性の低い数多くの構造、たとえば、単斜晶系結晶、三斜晶系結晶の場合、広い角度範囲(たとえば、−40度〜40度)にわたって、そのようなZAを得るために、結晶を傾けることが重要である。回折モードにおいて用いられる従来のTEMは、試料ホルダーの幾何学的配置及び対物レンズの極片ギャップによって引き起こされる制限に起因して、必ずしも高い傾斜角を許すとは限らない。これにより、3Dデータの達成可能な解像度において深刻な制限が生じる(ミッシングコーン問題)。結果として、任意のナノ結晶のための3Dデータ収集は極めて時間を要する作業であり、熟練した研究者の場合であっても良好な品質のデータセットを得るのに数日かかる場合があるので、その方法は、日常的な調査にとって極めて魅力がなく、適していないものになる。この状況は、調査されるナノ結晶が電子ビームの影響を受けやすい有機化合物であるときにさらに悪くなる。その場合、極低温冷却のような低線量条件を適用して、ビーム損傷を最小限に抑える場合であっても、ビームの影響を受けやすいために、数分/秒よりも長い時間にわたって結晶構造完全性を保存するのは不可能であり、それゆえ、単結晶方位及びデータ収集の全体として時間を要する標準的な手順(通常、何十分も続く)を難しくするか、又は不可能にする。
したがって、従来のTEM EDデータ収集技法は一般的に制限される。その標準的な手順は非常に長い時間を要し、同じ単結晶に関する完全な3D−ED強度を収集できず、電子の多重/動的散乱に起因して、結晶構造についての情報を伝える回折強度の品質は悪い。
これに関連して、Roger Vincent及びPaul Midgley(非特許文献1)によって開発された電子線回折プリセッション法(electron diffraction precession method:EDPM)は、初めて動的回折効果を著しく小さくできるようにしたので、極めて重要な役割を果たす。この技法では、電子ビームを小さな角度、通常1〜3度だけ傾けて、その後、TEM光軸を中心にして回転させる。このようにして、逆格子空間の体積(励起誤差にわたる積分)が記録され、さらに重要なことには、いつでも少数の反射のみが励起されるので、多重/動的散乱が大幅に削減される。
電子線回折回転法(electron diffraction rotation method:EDRM)として知られている、ナノ単結晶から完全な3D電子線回折データを収集するための代替の方法が提案されており(特許文献1)、その方法も多重/動的散乱を低減する。電子プリセッションを達成するデバイスと概ね同様のデバイスによって電子回転を達成することができる。主な違いは、電子ビームが円を回転させるのではなく、振り子のような直線に従うことである。この線は、x方向に沿って、又はy方向に沿って、又はその間の任意の対角線に沿って存在することができる。部分的に記録された反射を取り扱うために、そのデータは複数の小さな角度ステップにおいて収集されなければならない。たとえば、各走査は、1つの線に沿って、±0.5度のみの回転を有する場合がある。次の走査は、厳密に以前に停止された場所、すなわち、+0.5度から+1.5度まで続くことになり、その次の走査は+1.5度から+2.5度までであり、それ以降も同様である。1つのそのような一連の回転パターンは全部で約6度まで及ぶことができる。厳密な範囲は電子顕微鏡の具体的なモデルの設計によって制限され、その後、結晶が数度だけ傾けられ、データ収集が再開されるであろう。このようにして、回折トモグラフィのようなモードにおいて、完全な3D回折セットを得ることができる。EDRMのためのそのようなデバイスは、電子ビームを、予め決定されるが、可変の角度回転範囲だけ、かつ任意の方向に沿って回転させることができる。
しかしながら、EDRM技法及び上記のEDPM技法の欠点の1つは、3Dデータ収集のために全角度範囲にわたって同時に傾けること、及びTEMホルダーを位置合わせすることが非常に時間を要する手順であることである。さらに、製薬工業において有用な結晶及びタンパク質ナノ結晶が電子ビームの影響を受けやすいことに起因して、低線量条件及びLN2冷却下であっても、各結晶から限られた数のEDパターン(たとえば、1〜3)しか得ることができない。さらに、EDPM技法及びEDRP技法はいずれも、選択された結晶軸を中心にして特定のナノ単結晶を手動で又は自動で(コンピューター制御されたTEMホルダーを通じて)傾けることによって3D回折データを収集することを当てにする。
高角度環状暗視野検出器(high angular annular dark field detector:HAADF)を用いてナノビームED及びSTEM撮像を組み合わせる自動電子線回折トモグラフィ手順(ADT)が開発された。後者の検出器を使用することによって、回折に対する従来の手法に比べて、ビーム損傷を著しく低減できるようになる。ADTによれば、実験研究中の通常の手法は、適切な結晶を見つけること、マーカ(スポット又は許容エリア)を用いてその結晶を選択すること、及び所与の流れに従って、ゴニオメーター軸を中心にしてその結晶を傾けることである。結晶軸がゴニオメーター軸に沿って向けられる必要はない。ピークサーチ後に、自動データ処理ルーチンが、自動的にセルパラメーターを決定できるようにする。結果として生成される(部分的な)3D回折データネットワークによって、結晶セル、部分的な無秩序のような影響、双晶形成、多形体及び超格子を検出できるようになり、不完全なEDネットワークからであっても、ED強度を測定することによって、個々の結晶ナノ構造を解明できるようになる場合がある。しかしながら、ADTは、先行するEDPM及びEDRM技法と同様に、時間を要する技法である。
国際出願PCT/SE2007/050853号
Roger Vincent及びPaul Midgley著「Double conical beam-rocking system for measurement of integratedelectron diffraction intensities」(Ultramicroscopy 53:271-282, 1994)
電子線回折に基づくナノ結晶構造解析のための当該技術分野の技法は時間を要し、傾斜角の全範囲を得るために長い露光プロトコルを用いることが従来技術から明らかである。高スループット測定に十分に役に立つ、より時間効率のよい手順が必要とされている。
本発明の1つの実施の形態は、
結晶サンプルの電子線回折トモグラフィのための方法であって、
a)ランダムな方位にある複数の前記結晶36を含むサンプル38を準備するステップと、
b)該サンプル38の1つのエリア内の複数の別個の場所42、43のそれぞれから電子線回折パターン、すなわちEDパターン44、46を得るステップであって、該EDパターンを得るために用いられる該電子ビームは、該ビームが該サンプル38の別個の場所42、43毎に収束するようなビーム走査プロトコルと組み合わせて、該サンプル38にわたって走査される、得るステップと、
c)b)において得られた個々の該EDパターン44、46に適用されるテンプレートマッチング49を用いて、該サンプル内の異なる結晶方位を特定するステップと、
d)仮想明視野、STEM明視野、HAADF又はゼロロスEELS厚みマップとして得られる相対厚みマップから、該EDパターンが得られた該別個の場所42、43における相対的な結晶厚を求めるステップと、
e)d)において求められた該相対厚みから、共通強度スケールファクターを求めると共に、別個の場所42、43からの個々のEDパターンの強度を正規化するステップと、
f)3次元の1組の正規化されたEDパターン及び方位情報から、該ランダムな方位にある結晶の該原子結晶構造を計算するステップ66と、
を含む、方法である。
本発明の1つの実施の形態は、走査プロトコルと組み合わせて、該サンプル及びしたがって該別個の場所にわたって該電子ビームを該走査することは、該サンプル後方に配置される偏向コイルによって該EDパターンを同様にデスキャンすることと組み合わせて、該サンプル前方に配置される該TEM内の偏向コイルを用いて該電子ビームを走査することによって達成される、上述した方法である。
本発明の別の実施の形態は、電子ビームの該走査プロトコルはビームプリセッションプロトコル若しくはビーム回転プロトコルにあるか、又は結果として準運動学的回折パターンが生成される任意の走査モードプロトコルにある、上述した方法である。
本発明の別の実施の形態は、別個の場所はアレイを形成し、各アレイ要素は該電子ビームの順次変位によって露光される、上述した方法である。
本発明の別の実施の形態は、同じ相の結晶に属さないEDパターンはステップf)において用いられない、上述した方法である。
本発明の別の実施の形態は、異なる方位及び異なる既知の相にある複数の結晶36を含むサンプル38の方位及び相マップを計算するための方法であって、
a)異なる方位にある複数の前記結晶36を含むサンプル38を準備するステップと、
b)該サンプル38のエリア内の複数の別個の場所42、43のそれぞれから電子線回折パターン44、46を得るステップであって、該電子線回折パターンを得るために用いられる該電子ビームは、該サンプル38後方の同様のデスキャン34と組み合わせて、該サンプル38の該別個の場所において該電子ビームが収束するように、プリセッションモードプロトコル又は上記で規定した他のプロトコルにおいて走査される(30)、得るステップと、
c)b)において得られた個々の該回折パターン45、46に適用されるテンプレートマッチングを用いて該結晶方位を特定するステップと、
d)b)において得られた該個々の回折パターン45、46に適用されるテンプレートマッチングを用いることによって、異なる結晶相の存在を特定するステップと、
e)ステップc)の該特定から該サンプル内の結晶の方位マップ及び相マップを計算するステップと、
を含む、方法である。
本発明の別の実施の形態は、TEMに接続するためのデバイスであって、結晶のサンプル38のエリア内の複数の別個の場所42、43のそれぞれからEDパターン44、46を得るように、かつ該サンプル38の別個の場所42、43毎に該ビームが収束するようなビーム走査プロトコルと組み合わせて、該サンプル38にわたって該EDパターンを得るために用いられる該電子ビームを走査するように、前記TEMを適合させるように構成される、TEMに接続するためのデバイスである。
本発明の別の実施の形態は上記のようなデバイスであり、TEMは、該サンプル前方に配置される偏向コイル及び該サンプル後方に配置される偏向コイルを備え、該デバイスは、該サンプル後方に配置される偏向コイルによって該EDパターンを同様にデスキャンすることと組み合わせて、該サンプル前方に配置される該TEM内の偏向コイルを起動して該電子ビームを走査するように構成される。
本発明の別の実施の形態は上記のようなデバイスであり、サンプルにわたって該電子ビームを走査するための信号を与えるように構成される走査信号発生器をさらに備え、関数発生器が該走査プロトコルのための信号を与えるように構成される。
本発明の別の実施の形態は上記のようなデバイスであり、TEM内の蛍光板上に投影されるEDパターンを捕捉するように構成されるデジタルカメラ、又はオプションの光学CCDカメラをさらに備える。
本発明の別の実施の形態は上記のようなデバイスであり、電子ビームによる動きを制御すると共に、全ての取り得る結晶方位及び相について、記録されたED強度パターンとシミュレートされたテンプレートとを比較し、最も一致するものを特定することによって、結晶方位及び相を特定するためのテンプレートマッチングを実行するように構成される、コンピューター可読記憶手段を有するコンピューターをさらに備える。
本発明の別の実施の形態は、TEMとインターフェースするためのデバイスであって、上記のような方法を実行するためにTEMを適合させるように構成される、デバイスである。
本発明の別の実施の形態は、上記のような方法及びそのためのデバイスであり、実験プリセッション準運動学的強度及び結晶間隔を含むプロットを用いて個々の結晶粒/微結晶をさらに/代替的に識別/フィンガープリンティングすることをさらに含み、それらのプロットはCOD、ICDD、FIZ等の結晶データバンクデータと比較される。
本発明の別の実施の形態は、上記のような方法及びデバイスであり、上記の方法によるビーム走査をEDエネルギーフィルタリングと組み合わせることによって、個々の結晶粒/微結晶の改善された識別/フィンガープリンティング、並びにさらに良好な品質の方位相マップが得られる。
本発明の別の実施の形態は、上記のような方法及びデバイスであり、結晶にわたる高速走査が結晶劣化、及びその後のEDパターン品質低下を防ぐので、必ずしも試料低温保存技法を用いることなく、ビームの影響を受けやすい有機化合物を含む全てのタイプのナノマテリアルがフィンガープリンティングされ、その結晶構造が高スループットで解明される。
本発明の技法による構造研究のために適している透過型電子顕微鏡(TEM)の断面図である。 A:走査モード及び変位モードにおいて動作するTEM並びにテンプレートマッチングを含む、本発明の電子線回折解析装置を用いて結晶のサンプルの方位マップを特定するステップを示す図である。 B:走査モード及び変位モードにおいて動作するTEM並びにテンプレートマッチングを含む、本発明の電子線回折解析装置を用いて結晶のサンプルの方位マップを特定するステップを示す図である。 C:走査モード及び変位モードにおいて動作するTEM並びにテンプレートマッチングを含む、本発明の電子線回折解析装置を用いて結晶のサンプルの方位マップを特定するステップを示す図である。 D:走査モード及び変位モードにおいて動作するTEM並びにテンプレートマッチングを含む、本発明の電子線回折解析装置を用いて結晶のサンプルの方位マップを特定するステップを示す図である。 E:走査モード及び変位モードにおいて動作するTEM並びにテンプレートマッチングを含む、本発明の電子線回折解析装置を用いて結晶のサンプルの方位マップを特定するステップを示す図である。 F:走査モード及び変位モードにおいて動作するTEM並びにテンプレートマッチングを含む、本発明の電子線回折解析装置を用いて結晶のサンプルの方位マップを特定するステップを示す図である。 A:走査モード及び変位モードにおいて動作するTEMを含む、本発明の電子線回折解析装置を用いて結晶のサンプルの厚みマップを特定するステップを示す図である。 B:走査モード及び変位モードにおいて動作するTEMを含む、本発明の電子線回折解析装置を用いて結晶のサンプルの厚みマップを特定するステップを示す図である。 C:走査モード及び変位モードにおいて動作するTEMを含む、本発明の電子線回折解析装置を用いて結晶のサンプルの厚みマップを特定するステップを示す図である。 D:走査モード及び変位モードにおいて動作するTEMを含む、本発明の電子線回折解析装置を用いて結晶のサンプルの厚みマップを特定するステップを示す図である。 A:走査モード及び変位モードにおいて動作するTEM並びにテンプレートマッチングを含む、本発明の電子線回折解析装置を用いてサンプル内の結晶の3次元結晶構造を特定するステップを示す図である。 B:走査モード及び変位モードにおいて動作するTEM並びにテンプレートマッチングを含む、本発明の電子線回折解析装置を用いてサンプル内の結晶の3次元結晶構造を特定するステップを示す図である。 C:走査モード及び変位モードにおいて動作するTEM並びにテンプレートマッチングを含む、本発明の電子線回折解析装置を用いてサンプル内の結晶の3次元結晶構造を特定するステップを示す図である。 D:走査モード及び変位モードにおいて動作するTEM並びにテンプレートマッチングを含む、本発明の電子線回折解析装置を用いてサンプル内の結晶の3次元結晶構造を特定するステップを示す図である。 E:走査モード及び変位モードにおいて動作するTEM並びにテンプレートマッチングを含む、本発明の電子線回折解析装置を用いてサンプル内の結晶の3次元結晶構造を特定するステップを示す図である。 F:走査モード及び変位モードにおいて動作するTEM並びにテンプレートマッチングを含む、本発明の電子線回折解析装置を用いてサンプル内の結晶の3次元結晶構造を特定するステップを示す図である。 G:走査モード及び変位モードにおいて動作するTEM並びにテンプレートマッチングを含む、本発明の電子線回折解析装置を用いてサンプル内の結晶の3次元結晶構造を特定するステップを示す図である。 H:走査モード及び変位モードにおいて動作するTEM並びにテンプレートマッチングを含む、本発明の電子線回折解析装置を用いてサンプル内の結晶の3次元結晶構造を特定するステップを示す図である。 I:走査モード及び変位モードにおいて動作するTEM並びにテンプレートマッチングを含む、本発明の電子線回折解析装置を用いてサンプル内の結晶の3次元結晶構造を特定するステップを示す図である。 A:ナノ結晶銅のサンプル内の結晶の方位を特定するテンプレートマッチングのステップの一例を示す図である。 B:ナノ結晶銅のサンプル内の結晶の方位を特定するテンプレートマッチングのステップの一例を示す図である。 C:ナノ結晶銅のサンプル内の結晶の方位を特定するテンプレートマッチングのステップの一例を示す図である。 D:ナノ結晶銅のサンプル内の結晶の方位を特定するテンプレートマッチングのステップの一例を示す図である。 E:ナノ結晶銅のサンプル内の結晶の方位を特定するテンプレートマッチングのステップの一例を示す図である。 A:走査(プリセッションを伴う)が用いられるとき(F)と比較される、走査(プリセッションを伴う)が用いられないとき(A)の石綿繊維結晶のサンプル内の結晶の方位を特定するテンプレートマッチングのステップの一例を示す図である。図6Aはプリセッションなし、0.65度、[101]。 B:走査(プリセッションを伴う)が用いられるとき(F)と比較される、走査(プリセッションを伴う)が用いられないとき(A)の石綿繊維結晶のサンプル内の結晶の方位を特定するテンプレートマッチングのステップの一例を示す図である。 C:走査(プリセッションを伴う)が用いられるとき(F)と比較される、走査(プリセッションを伴う)が用いられないとき(A)の石綿繊維結晶のサンプル内の結晶の方位を特定するテンプレートマッチングのステップの一例を示す図である。 D:走査(プリセッションを伴う)が用いられるとき(F)と比較される、走査(プリセッションを伴う)が用いられないとき(A)の石綿繊維結晶のサンプル内の結晶の方位を特定するテンプレートマッチングのステップの一例を示す図である。 E:走査(プリセッションを伴う)が用いられるとき(F)と比較される、走査(プリセッションを伴う)が用いられないとき(A)の石綿繊維結晶のサンプル内の結晶の方位を特定するテンプレートマッチングのステップの一例を示す図である。 F:走査(プリセッションを伴う)が用いられるとき(F)と比較される、走査(プリセッションを伴う)が用いられないとき(A)の石綿繊維結晶のサンプル内の結晶の方位を特定するテンプレートマッチングのステップの一例を示す図である。図6Fは、プリセッションあり、[101]の方位。 G:走査(プリセッションを伴う)が用いられるとき(F)と比較される、走査(プリセッションを伴う)が用いられないとき(A)の石綿繊維結晶のサンプル内の結晶の方位を特定するテンプレートマッチングのステップの一例を示す図である。 H:走査(プリセッションを伴う)が用いられるとき(F)と比較される、走査(プリセッションを伴う)が用いられないとき(A)の石綿繊維結晶のサンプル内の結晶の方位を特定するテンプレートマッチングのステップの一例を示す図である。 A:走査(プリセッションを伴う)が用いられるとき(F)と比較される、走査(プリセッションを伴う)が用いられないとき(A)の石綿繊維結晶のサンプル内の結晶の方位を特定するテンプレートマッチングのステップのさらなる例を示す図である。図7Aはプリセッションなし、[1−10]から−2度。 B:走査(プリセッションを伴う)が用いられるとき(F)と比較される、走査(プリセッションを伴う)が用いられないとき(A)の石綿繊維結晶のサンプル内の結晶の方位を特定するテンプレートマッチングのステップのさらなる例を示す図である。 C:走査(プリセッションを伴う)が用いられるとき(F)と比較される、走査(プリセッションを伴う)が用いられないとき(A)の石綿繊維結晶のサンプル内の結晶の方位を特定するテンプレートマッチングのステップのさらなる例を示す図である。 D:走査(プリセッションを伴う)が用いられるとき(F)と比較される、走査(プリセッションを伴う)が用いられないとき(A)の石綿繊維結晶のサンプル内の結晶の方位を特定するテンプレートマッチングのステップのさらなる例を示す図である。 E:走査(プリセッションを伴う)が用いられるとき(F)と比較される、走査(プリセッションを伴う)が用いられないとき(A)の石綿繊維結晶のサンプル内の結晶の方位を特定するテンプレートマッチングのステップのさらなる例を示す図である。 F:走査(プリセッションを伴う)が用いられるとき(F)と比較される、走査(プリセッションを伴う)が用いられないとき(A)の石綿繊維結晶のサンプル内の結晶の方位を特定するテンプレートマッチングのステップのさらなる例を示す図である。図7Fは、プリセッションあり、[1−10]の方位。 G:走査(プリセッションを伴う)が用いられるとき(F)と比較される、走査(プリセッションを伴う)が用いられないとき(A)の石綿繊維結晶のサンプル内の結晶の方位を特定するテンプレートマッチングのステップのさらなる例を示す図である。 H:走査(プリセッションを伴う)が用いられるとき(F)と比較される、走査(プリセッションを伴う)が用いられないとき(A)の石綿繊維結晶のサンプル内の結晶の方位を特定するテンプレートマッチングのステップのさらなる例を示す図である。 A:石綿繊維結晶のサンプル内の石綿結晶の正確な相を特定するテンプレートマッチングのステップの一例を示す図である。図8Aは、クロシドライト。 B:石綿繊維結晶のサンプル内の石綿結晶の正確な相を特定するテンプレートマッチングのステップの一例を示す図である。図8Bは、指数=1242。 C:石綿繊維結晶のサンプル内の石綿結晶の正確な相を特定するテンプレートマッチングのステップの一例を示す図である。図8Cは、クリソタイル。 D:石綿繊維結晶のサンプル内の石綿結晶の正確な相を特定するテンプレートマッチングのステップの一例を示す図である。図8Dは、指数=550。 E:石綿繊維結晶のサンプル内の石綿結晶の正確な相を特定するテンプレートマッチングのステップの一例を示す図である。 A:EDビーム及びパターンの走査(プリセッションを伴う)が用いられないときに任意の方位にあるマイエナイト(mayenite)結晶Ca12Al1433から得られるEDパターンの図である。 B:図9Aと比較される、EDビーム及びパターンの走査(プリセッションを伴う)が用いられるときに任意の方位にあるマイエナイト結晶Ca12Al1433から得られるEDパターンの図である。 A:走査(プリセッションを伴う)が用いられないとき(A)及び用いられるとき(C)に、本発明の方法に従って測定されたマイエナイト結晶のサンプルの方位マップ及び厚みマップ(仮想明視野マップ)を示す図である。 B:走査(プリセッションを伴う)が用いられないとき(A)及び用いられるとき(C)に、本発明の方法に従って測定されたマイエナイト結晶のサンプルの方位マップ及び厚みマップ(仮想明視野マップ)を示す図である。 C:走査(プリセッションを伴う)が用いられないとき(A)及び用いられるとき(C)に、本発明の方法に従って測定されたマイエナイト結晶のサンプルの方位マップ及び厚みマップ(仮想明視野マップ)を示す図である。 D:走査(プリセッションを伴う)が用いられないとき(A)及び用いられるとき(C)に、本発明の方法に従って測定されたマイエナイト結晶のサンプルの方位マップ及び厚みマップ(仮想明視野マップ)を示す図である。 A:走査(プリセッションを伴う)が用いられなかった場合に、炭化物M23C6及び六方晶系窒化物CrNの沈殿物を含む430ステンレス鋼のサンプルから得られる方位マップを示す図である。 B:走査(プリセッションを伴う)が用いられなかった場合に、炭化物M23C6及び六方晶系窒化物CrNの沈殿物を含む430ステンレス鋼のサンプルから得られる相マップを示す図である。 C:走査(プリセッションを伴う)が用いられた場合に、炭化物M23C6及び六方晶系窒化物CrNの沈殿物を含む430ステンレス鋼のサンプルから得られる相マップを示す図である。 A:仮想明視野マップへの残留磁気効果を示す図である。 B:相関指数マップへの残留磁気効果を示す図である。 C:先行して収集されたEDパターンの或るパーセンテージを差し引く効果を示す図である。 D:しきい値より高い指数相関マップをフィルタリングする効果を示す図である。 A:エネルギーフィルターを用いることなく、プリセッションモードにおいてTEMを用いて収集される任意の方位にあるマイエナイト結晶から得られるEDパターンを示す図である。 B:エネルギーフィルターを用いて、プリセッションモードにおいてTEMを用いて収集される任意の方位にあるマイエナイト結晶から得られるEDパターンを示す図である。 本発明の方法において使用することが可能である電子線回折デバイス(たとえば、TEM)及び関連するデバイスの取り得る構成を示す図である。 本発明の方法において使用することが可能である電子線回折デバイス(たとえば、TEM)及び関連するデバイスの取り得る構成を示す図である。 本発明の方法において使用することが可能である電子線回折デバイス(たとえば、TEM)及び関連するデバイスの取り得る構成を示す図である。 本発明の方法において使用することが可能である電子線回折デバイス(たとえば、TEM)及び関連するデバイスの取り得る構成を示す図である。 本発明の方法において使用することが可能である電子線回折デバイス(たとえば、TEM)及び関連するデバイスの取り得る構成を示す図である。 A:ビームがプリセッションモードにある間にTEM対物レンズ収差を補正するために、ユーザーが、プリセッション信号X及びYに加えられる特別な波形の形状を手動で制御できるようにするグラフィックユーザーインターフェースを示す図である。 B:ビームがプリセッションモードにある間にTEM対物レンズ収差を補正するために、ユーザーが、プリセッション信号X及びYに加えられる特別な波形の形状を手動で制御できるようにするグラフィックユーザーインターフェースを示す図である。 C:ビームがプリセッションモードにある間にTEM対物レンズ収差を補正するために、ユーザーが、プリセッション信号X及びYに加えられる特別な波形の形状を手動で制御できるようにするグラフィックユーザーインターフェースを示す図である。
他に規定されない限り、本明細書において用いられる全ての科学技術用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書において参照される全ての刊行物は、参照により本明細書に援用される。本明細書において参照される全ての米国特許及び米国特許出願は、図面を含め、参照によりその全体が本明細書に援用される。
1つ、又は2つ以上を、すなわち、冠詞の文法的な目的語のうちの少なくとも1つを参照するために、本明細書において冠詞「1つの("a" and "an")」が用いられる。一例として、「1つの関数発生器」は、1つの関数発生器、又は2つ以上の関数発生器を意味する。
端点による数値範囲の列挙は全ての整数を含み、適切な場合には、その範囲内に含まれる分数も含む(たとえば複数の関数発生器を言及するときに、たとえば、1〜5は1、2、3、4を含むことができ、たとえば測定値を言及するときには、1.5、2、2.75及び3.80を含むこともできる)。端点の列挙は、端点の値そのものも含む(たとえば、1.0〜5.0は、1.0及び5.0の両方を含む)。
図2を参照すると、本発明の一実施形態は、種々の方位にある複数の結晶36を含むサンプル38を準備すると共に、そのサンプル38の1つのエリア内の複数の別個の場所42、43のそれぞれから電子線回折パターン44、46を得ることによって、電子線回折デバイス(たとえば、TEM)を用いて上記結晶のサンプルの方位マップを計算するための方法に関し、電子線回折パターンを得るために用いられる電子ビームは、サンプル38後方の同様のデスキャン34と組み合わせて、サンプル38の上記場所(たとえば、42又は43)において電子ビームが収束するような走査プロトコルを用いて走査される(30)。図2Aにおいて、プリセッションを伴う入射電子ビームが1つの場所42に向けられ、その間、EDパターンが収集される。その後、プリセッションを伴う入射電子ビームが別の場所43(図2B)に進められ(40)、その間、別のEDパターンが収集される。サンプル38の所望のエリアが収集されるまでビーム走査することによって、プリセッションを伴う入射電子ビーム30による変位が続けられる(41)。プリセッション、又は他の走査プロトコルを使用する結果として、準運動学的強度、及び以下に言及される他の利点が得られる。こうして、各場所から収集される複数(45)のEDパターン44、46が得られる(図2C)。テンプレートマッチング49を用いて、各EDパターン44が、異なる結晶方位で計算済みのシミュレートされたEDパターン50のデータベース48と比較される(図2D)。シミュレートされたパターンのうちの最も一致するもの52によって、EDパターン毎に結晶方位を特定できるようになる(図2E)。方位情報は方位マップ54として提示され、異なる方位56がそれぞれ、異なる色、灰色の色調、パターン化された線、又はその方位が測定された場所42、43に対応する別のものでプロットされ(図2F)、それにより方位マップ54が得られる。
したがって、本発明の一実施形態は、電子線回折デバイス(たとえば、TEM)を用いて種々の方位にある複数の結晶36を含むサンプル38の方位マップを計算するための方法に関し、該方法は、
a)種々の又はランダムな方位にある複数の上記結晶36を含むサンプル38を準備するステップと、
b)サンプル38の1つのエリア内の複数の別個の場所42、43のそれぞれから電子線回折パターン、すなわちEDパターン44、46を得るステップであって、EDパターンを得るために用いられる電子ビーム30は、別個の場所42、43毎にビームが収束するようなビーム走査プロトコルと組み合わせて、サンプル38にわたって別個の場所42、43毎に走査される、得るステップと、
c)b)において得られた個々の回折パターン44、46に適用されるテンプレートマッチングを用いて、異なる方位を有する結晶の存在を特定するステップと、
d)ステップc)の特定から、サンプルの方位マップを計算するステップとを含む。
同じ技法を用いて、サンプルの相マップを得ることもできる。相マップは方位マップと同時に計算することができる。したがって、本発明の別の実施形態は、電子線回折デバイス(たとえば、TEM)を用いて種々の方位にある複数の結晶36を含むサンプル38の相マップを計算するための方法に関し、該方法は、
a)種々の方位にある複数の上記結晶36を含むサンプル38を準備するステップと、 b)サンプル38のエリア内の複数の別個の場所42、43のそれぞれから電子線回折パターン、すなわちEDパターン44、46を得るステップであって、EDパターンを得るために用いられる電子ビーム30は、別個の場所42、43毎にビームが収束するようなビーム走査プロトコルと組み合わせて、サンプル38にわたって別個の場所42、43毎に走査される、得るステップと、
c)b)において得られた個々の回折パターン44、46に適用されるテンプレートマッチングを用いて、異なる相を有する結晶の存在を特定するステップと、
d)ステップc)の特定から、サンプルの相マップを計算するステップとを含む。
図3を参照すると、本発明の別の実施形態は、電子線回折デバイスを用いて、結晶のサンプルの相対厚みマップを計算するための方法に関する。ビーム走査中に(図3Aは、図2と同じ参照符号を利用する)、CCDカメラによって中央EDパターンの強度を測定することによって、相対厚みマップを作成することができる。そのような実験厚みマップ(仮想明視野、VBFに等価である)画像は、実験方位マップと相関する。デジタル形式で記録される、それら全てのマップにおいて、後の段階で(走査後にオフラインで)、ZA方向に向けられたEDプリセッション準運動学的パターンを選択し、それらの相対強度を共通スケールファクターと相関させることができる。その強度が結晶の厚みに比例する、(排他的ではないが)図3Bに示されるEDパターン44’の中央スポット53のような、内部結晶構造にかかわらず一定の強度を有するマーカの強度を用いて、場所42、43における結晶の厚みを特定することができる。厚み情報は厚みマップ58、すなわち仮想明視野(VBF)マップとして提示され、異なる厚み60がそれぞれ、異なる色、灰色の色調、パターン化された線、線の厚み、又はその方位が測定された場所42、43に対応する別のものでプロットされ(図3D)、それによりサンプルの厚みマップ58が得られる。図3Dは対応する方位マップを示す。そのような相対厚みマップは、STEM撮像、HAADF撮像及びゼロロスEELS撮像を含む他の検出器を使用することによって作成することもでき、上記のようなビームプリセッション及び走査と組み合わせて用いることもできる。
図4を参照すると、本発明の別の実施形態は、種々の方位にある複数の結晶36を含むサンプル38を準備すると共に、サンプル38の1つのエリア内でビーム走査によって複数の別個の場所42、43のそれぞれから電子線回折パターン44、46を得ることによって、上記結晶のランダム電子線回折トモグラフィ(逆格子の3次元断片を特定する)ための方法に関し、電子線回折パターンを得るために用いられる電子ビームは、同様に、サンプル38後方の同様のデスキャン34と組み合わせて、サンプル38の上記場所(たとえば、42又は43)において電子ビームが収束するような走査プロトコルに従って走査される(30)。図4−1Aにおいて、プリセッションを伴う入射電子ビームが1つの場所42に向けられ、その間、EDパターンが収集される。次に、プリセッションを伴う入射電子ビームが別の場所43(図4−1B)に進められ(40)、その間、別のEDパターンが収集される。サンプル38の所望のエリアが収集されるまで、プリセッションを伴う入射電子ビーム30の移動が続けられる(41)。プリセッション、又は他の走査プロトコルを使用する結果として、準運動学的強度、及び本明細書の他の場所において言及される他の利点が得られる。こうして、各場所から収集される複数(45)のEDパターン44、46が得られる(図4−1C)。テンプレートマッチング49を用いて、各EDパターン44が、異なる結晶方位で計算済みのシミュレートされたEDパターンのデータベースと比較される。シミュレートされたパターンのうちの最も近いマッチングを示すものによって、EDパターン毎に結晶方位を特定できるようになる。この方位情報を用いて、ランダムな方位の全ての結晶の厳密な方位を計算する。方位情報はオプションで方位マップ54として提示される場合があり、異なる方位56がそれぞれ、異なる色、灰色の色調、パターン化された線、又はその方位が測定された場所42、43に対応する別のものでプロットされ(図4−1E)、それにより方位マップ54が得られる。各場所から収集される複数(45)のEDパターン44、46から(図4−1C)、上記場所における結晶の厚みが計算される。その強度が結晶の厚みに比例する、中央TEMスポットのような、内部構造にかかわらず一定の強度を有するマーカの強度を用いて、その場所42、43における結晶の厚みを推定することができる。厚み情報はオプションで厚みマップ58、すなわち仮想明視野(VBF)マップとして提示される場合があり、異なる厚み60がそれぞれ、異なる色、灰色の色調、パターン化された線、線の厚み、又はその厚みが測定された場所42、43に対応する別のものでプロットされ(図4−1D)、それによりサンプルの厚みマップ58が得られる。同様の相対厚みマップは、そのサンプルにわたる厚みのばらつきに対応するSTEM若しくはHAADF撮像又はゼロロスEELS密度マップによって得られる場合もある。そのような厚み情報(たとえば、厚みマップ58の形をとる)を用いて、収集されるセット45内のEDパターン44、46の強度を調整し(図4−2F)、それにより結晶厚の影響を取り除くために適用される(63)共通強度スケールファクターを求める。強度で正規化されたEDパターン44’、46’のセット64(図4−2G)を、方位情報54(図4−2H)と共に用いて、結晶の内部構造68を計算する(66)(図4−2I)。構造特定において用いられるそれらのEDパターンを選択するためにフィルタリングステップが含まれる場合があり、フィルタリングステップは、同じ相の結晶、準運動学的強度を示すEDパターン、種々のZAに対して完全にランダムな方位であるか、又は方位(特定のZAから離れる)が正確にわかっている結晶からのEDパターンを選択することは理解されよう。セル寸法のようなパラメーターが予め求められていることは理解されよう。種々のZAからの1組の3D準運動学的プリセッション強度を収集することによって、EDPM及びEDRM技法によって必要とされるような角度範囲にわたって個々の結晶を傾けることを必要とすることなく、結晶ナノ構造のランダムな方位のEDパターン(共通の正規化された強度を有する)を解明することができる。同じ手順は、特定のZAから離れて、正確にわかっている方向に向けられるナノ結晶にも当てはまる。
したがって、本発明の別の実施形態は、結晶サンプルの電子線回折トモグラフィのための方法であって、
a)種々の方位にある複数の結晶36を含むサンプル38を準備するステップと、
b)サンプル38のエリア内の複数の別個の場所42、43のそれぞれから電子線回折パターン、すなわちEDパターン44、46を得るステップであって、EDパターンを得るために用いられる電子ビームは、ビームがサンプル38の別個の場所42、43毎に収束するようなビーム走査プロトコルと組み合わせて、サンプル38にわたって別個の場所42、43毎に走査される、得るステップと、
c)b)において得られた個々の回折パターン44、46に適用されるテンプレートマッチング49を用いて、異なる方位を有する結晶の存在を特定するステップと、
d)b)において得られた個々の回折パターン44、46から、EDパターンが得られた別個の場所42、43における結晶厚を求めるステップと、
e)d)において求められた厚みから、共通強度スケールファクターを求めると共に、各EDパターンの強度を正規化するステップと、
f)正規化されたEDパターン及び方位情報から、サンプル内に存在する各別個の結晶相の原子結晶構造を計算するステップ66とを含む、結晶サンプルの電子線回折トモグラフィのための方法である。
サンプルは種々の方位にある結晶の分布を含み、本方法はサンプル内の複数の場所から回折パターンを得るので、種々の結晶方位の場合の回折パターンの分布が得られる。それゆえ、サンプル内の結晶のランダムな方位は、実効的な傾斜角の範囲を与えるので、構造を特定するために必要な角度範囲を得るために結晶を傾ける要件を不要にする。テンプレートマッチングの使用は、この方位の指示を、さらには相の指示も与える。さらに、サンプルの前方及び後方において電子ビームを走査することによって(たとえば、EDPM又はEDRMによる)、最も近い晶帯軸から小さな方位差を有する結晶から得られる準運動学的回折パターンは、その特定の晶帯軸に沿って完全に向けられるように見える。異なる結晶からの種々のEDパターンの準運動学的強度は、相対VBF、STEM、HAADF又はゼロロスEELS相対厚みマップからの中央スポットの強度から計算される共通強度スケールファクターを用いて、種々の厚みについて正規化することができる。本方法は最終的に、ZA方向に向けられるプリセッションパターンの全てから完全な1組の3次元(3D)強度を与え、それにより、結晶の構造を解明できるようにし、信頼性のある3D原子モデルを確立できるようにする。
本発明において用いられる電子線回折デバイスは、透過型電子顕微鏡(TEM)の機能を有する任意のデバイスであり、したがってTEMとすることができる。図1は、本発明において用いるのに適しているTEMの取り得る構成を表す。TEM1は電子銃2を備えており、電子銃は電子を放出し、その電子は、ビームを合焦し、かつ偏向する一連のコイル又はレンズ(5〜16)の近位を通過する。図1にはレンズを通る断面が示される。レンズは円形コイルであるので、その図はコイル毎に2つの断面を表し、コイル毎に右側断面に番号が付される。ここで図示される例によれば、コイルは、コンデンサースティグメーターコイル(CSC)5、偏向及びビームチルトコイル(DBTC)6、対物スティグメーター及びアライメントコイル7、回折スティグメーターコイル(DSC)8、回折及び中間アライメントコイル(DIAC)9、第1のコンデンサー10、第2のコンデンサー11、対物レンズの上側部分12、対物レンズの下側部分13、回折レンズ14、中間レンズ15、投影レンズ16である。CSC5は第2のコンデンサーコイル11内に配置される。DBTC6は回転アライメントコイル、偏向コイル、及びビームチルトコイルを含む。DBTC6は、対物レンズの上側部分12内に配置される。DIAC9は、本発明の一態様に従って回折画像を回折計上で走査するために用いられる最後のコイルである。TEMは、35mmポート17も備える場合があり、そのポートを通じて、上記のような本発明の回折計又はデジタル(たとえば、CCD、又はCMOS)カメラを挿入することができる。また、TEMは投影チャンバの窓20を備える場合もある。図1において、本発明のデジタルカメラ19が、投影チャンバの窓20を通じて回折画像を撮影するように配置される。また、TEMは、蛍光板21も備える場合がある。本発明の別の態様は、隔離したコンデンサー絞り及びホルダー3である。この特殊な絞りホルダーは、離隔したコンデンサー絞りと共に、顕微鏡の一次ビーム安定性を測定するために用いられ、C2ビーム開口内に挿入される場合がある。その図には、サンプルホルダー4も示される。
そのサンプルは通常、収集されるエリアにわたって広げられる、ランダムな方位にある複数の結晶を含む。TEMと共に用いるために、そのサンプルは、TEMサンプルホルダーの末端においてサンプルグリッド上に広げられる。TEMの一般的な指針として、そのサンプルは、電子ビームに対して透過性であるように、10×10ミクロンの寸法及び数(たとえば、1〜10)nmの厚みを有する。結晶は任意のサイズにすることができるが、本発明は、ナノメートル範囲に適している。結晶は、同じ厚み、又は異なる厚みからなることができ、重なり合う場合があるか、重なり合わない場合があり、同じ相、又は異なる相からなる場合がある。結晶は対称であっても、対称性が低くてもよい(たとえば、単斜晶系、三斜晶系)。サンプルは、結晶粒及び沈殿物、種々の無機物結晶(酸化物、セラミック、触媒等)及び電子ビーム放射に対して影響を受けやすい有機化合物結晶を有する、内部構造を有する大きな金属箔を含む任意のタイプからなることができる。
本発明によれば、サンプルの1つのエリア内の別個の複数の場所のそれぞれから電子線回折パターンが得られる。そのサンプルはグリッドサンプルエリア上に配置され、入射電子ビームは、サンプルエリア内の複数(たとえば、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、1000、10000、20000、50000、100000又はそれ以上)の異なる場所に向けられる。本明細書において用語「ビーム走査」又は「走査」が用いられており、それは、サンプルにわたって入射電子ビームが変位することを指す。変位は一定の距離で行なわれ、それにより、サンプル表面にわたってアレイ又は等間隔の場所を生じることが好ましい。電子ビーム走査は、隣接する要素を順次に(たとえば、左から右へ、上から下へ)進む経路を取ることによって、そのアレイを網羅することが好ましい。言い換えると、別個の場所は1つのアレイを形成し、そのアレイにおいて、各要素は、電子ビームを順次に変位させることによって露光される。しかしながら、ランダムな経路も本発明の範囲内にある。収集されるアレイのサイズは、たとえば、100×100、200×200、300×300、400×400、又は500×500個の別個の場所からなる場合がある。ビーム走査(変位)は、通常、ビーム変位を実行し、モニタできるようにする8又は16ビットD/Aボードを通じてコンピューターによって制御される、サンプル前方に配置される電子線回折デバイス(たとえば、TEM)内のビーム偏向コイルを用いて達成することができる。より詳細には、それは、本明細書で他の場所において記述される走査信号発生器を用いて達成することができる。ステップのサイズは1nm程度に小さくすることができるが、通常2nm、3nm、4nm、5nm、6nm、7nm、8nm、9nm、10nm、12nm、14nm、16nm、18nm、20nm、22nm、24nm、26nm、28nm、30nm、40nm若しくは50nm、又は上記の値のうちのいずれか2つの値の間の範囲内の値になるであろう。撮像モードにおいて用いられる電子顕微鏡の場合、最も小さなスポットサイズは1〜5nmの間にあるか(FEG TEM)又は20nm(LaB6 TEM)とすることができる。ビーム変位はEDパターン捕捉と同期する。本明細書において用いられるようなビーム走査は、サンプル後方に配置される電子線回折デバイス(たとえば、TEM)内のビーム偏向コイルを用いて達成される、サンプル後方のEDパターンの同様の変位も含む場合がある。サンプル後方の変位はEDパターンの変位を補正し、連続したEDパターン内の中央スポットを同じ場所に位置合わせする。
各回折パターンを得るために、本発明においてED強度の動的特性を低減する走査プロトコル(たとえば、EDPM及びEDRM)が利用される。その結果は、運動学的条件により近いEDパターンであり、すなわち、準運動学的ED強度が得られる。他の場所において言及されるように、走査プロトコルは、たとえば円錐プリセッション若しくは振り子運動において、又はサンプルエリアの別個の場所に収束する他の運動において入射電子ビームを走査することに基づく。そのビームは、サンプル後方の同様の運動を用いて、再びデスキャンされる。プリセッションに基づく走査プロトコル(EDPM)は、Roger Vincent及びPaul Midgley著の非特許文献1によって記述される。振り子運動に基づく走査プロトコル(EDPM)は、Sven Hovmoellerによる特許文献1「Electron rotation camera」によって記述される。走査プロトコルモードにおいてED強度を測定することによって、動的回折及び二重散乱寄与からの影響を低減して、全てのED強度を記録できるようになるので、改善された精度で構造解析できるようになる。
その走査プロトコルは、サンプル後方に配置される偏向コイルによるEDパターンの同様のデスキャン(たとえば、反転した円錐又は振り子)と組み合わせて、TEM内でサンプル前方に配置される偏向コイルを用いて電子ビームを(たとえば、円錐又は振り子において)走査することによって達成され、それらのコイルは通常、ビーム変位を実行し、モニタできるようにする8ビットD/Aボードを通じてコンピューターによって制御される。
さらに複雑な走査プロトコルを用いる結果として、準運動学的ED強度も得ることができる。これは、本明細書の他の場所において記述され、信号を混合できるようにするデバイスによって、デジタル制御下で偏向コイルを用いて達成することができる。
そのようなデジタル信号デバイスの可能性のうちの1つは、観察されるビームプローブサイズの補正である。実際には、仮想的なプローブサイズは、プリセッション角が大きくなるほど(0.5度超)劇的に増加する場合があり、その増加は、対物レンズ球面収差、TEM係数Cs及び対物レンズ非点収差(特に3次非点収差)に依存する。プローブを補正し(又はそのような影響をできる限り低減し)、かつ高いプリセッション角においてプローブをできる限り小さく保持するために、動的な補償を実行するようにX及びY走査信号に特別な波形を追加することができる。波形を生成する3つの方法が、本発明の範囲内にある。
すなわち、方法1:その特別な波形は、直線形状から、又はプリセッション周波数に対して特有の周波数において生成された正弦波から手動で変更することができる。任意の形状の波形を生成することができる。最初に、直線又は正弦波を生成し、その波形を手動で変更して、プリセッション中のプローブの不規則な動きを補償することができる(図19A)。プリセッション運動を伴う場合、ユーザーは、X及びY走査に加えられる波形の形状を変更することができる(図19B及び図19C)。これにより、任意のタイプの収差及び/又はTEMカラムの位置合わせ不良を補償できるようになる。
方法2:補正された波形の自動計算。追加された波形は、プローブの動的な位置に従って自動的に計算される。これは、異なるプリセッション角及びプリセッション振幅でTEMにおいて1つ又は複数の写真を収集することによって行なわれる。プリセッション円上の角度に対するプローブの座標x及びyがわかるとき、波形の形状を計算することができる。計算は、リサージュパターンに従って行われる。リサージュパターンは、y軸上にプロットされる1つの周波数とx軸上にプロットされる第2の周波数とを合成するグラフである。Y及びXはいずれも、x=sin(wt+c)及びy=sin wtのような式によって与えられる時間tの周期関数である。異なる値のn(周期シフト)及びc(位相シフト)の場合に、異なるパターンを生成することができる。n及びcを求めるために、リサージュパターンが解析される。
方法3:(自動ビームセンタリング)TEM蛍光板中心を基準とするとき、異なるプリセッション角及び異なるrにおける動的なプローブ位置、プリセッション円におけるθ極座標が計算される。X、Y偏向コイルに特別な信号を送信して、プローブの位置を動的にシフトし、プローブのX及びYの動きを補償(相殺)し、それを蛍光板の中心に戻す。自動的に、ソフトウエアがメモリ内に特別な信号の値を保持し、その値をプリセッション円の角度に従ってx及びyコイルに送信する。
個々のプリセッションEDパターンを収集するために、EDパターンが収集される場所において結晶は互いに重なり合わないことが好ましい。これは、ナノ結晶(サイズ5〜10nm未満)凝集物を含むサンプルの場合に特に、必ずしも可能であるとは限らない。たとえば、高濃度結晶のエリアにおいて、重なり合うことが避けられない場合、多結晶リングEDパターンが現れるであろう。都合のよいことに、走査プロトコル(たとえば、プリセッション)は、パターンの円の鮮明度を改善することになり、EDリング強度を測定して、局所的な(走査された)エリアのナノ構造を特徴付けることができる。逆に、収集された走査デジタルマップ内の特定のリングを選択することによって、特定の方位に回折する結晶、又は同じ特定の相に属する結晶の仮想暗視野マップ又はエリアを作成することも本発明の範囲内にある。
サンプルの1つのエリア内の複数の別個の場所から得られる回折パターンから、サンプル内の結晶の方位及び相を特定することができる。本発明は、その過程を促進し、その精度を改善するテンプレートマッチングの技法を利用する。その技法は、全ての取り得る方位について、記録されたED強度パターンを予め計算された(シミュレートされた)テンプレートと比較するアルゴリズムを使用する。シミュレートされたテンプレートと最も一致するものを示すEDパターンは、最も確からしい方位を指示する。同時に、その技法は、結晶の相も識別し、それにより、同じ方法によって相マップを生成できるようにする。上記の図2を参照すると、対象となるサンプルエリアが電子ビームによって走査される間に、電子線回折(ED)パターンが収集される。ステレオ三角形にわたって全ての方位のためのテンプレートが生成される。デジタルカメラによって収集される実験パターンが、シミュレートされた全てのテンプレートと比較され、相関指数マップが、最も一致するもの、すなわち、最も確からしい方位を示す。
より具体的には、収集されたED画像に対して、テンプレートと収集されたEDデータとの間のマッチングの程度を計算することによって、かつ最も高い相関指数を有するものを選択することによって、そのパターンが識別される。基本的な手順は、Rauch, E. F.及びDupuy, L.「Rapid spot diffraction pattern identification through templatematching」(Arch. Metall. Mater. 50:87-99, 2005)並びにRauch, E. F.、Veron, M.「Coupled microstructural observation and local texture measurementswith an automated crystallographic orientation mapping tool attached to a TEM」(J. Mater. Sci. Eng.Tech. 36:552-556, 2005)によって記述される。
テンプレートは、Rauch, E. F.及びDupuy, L.「Rapid spot diffraction pattern identification through tenplatematching」(Arch. Metall. Mater. 50:87-99, 2005)において記述される技法に従って生成され、その技法は当該技術分野において知られており、理解されている。テンプレートは、後続の識別ルーチンに影響を及ぼすことなく、種々の方法において生成することができる。完全な動的又は運動学的計算を考慮することができる。最も簡単な手法では、古典的な幾何学作図がエワルド球に基づく。その手順は、指数付け後に、実験写真と比較するための結果を表示するために、Zaefferer(S. Zaefferer, J. Appl. Cryst.,33(2000) p.10)によって使用されるパターン発生に類似である。各回折パターンは単に、逆格子と、その直径が電子波長の逆数である球との交わりと見なされる。スポット強度は、回折するビームと原子散乱因子を通じて透過するビームとの間の距離、ブラッグ角からの偏差、さらには観測条件(たとえば、二重又は多重ビーム、箔厚)に依存する。後者は、特に著しく変形した材料の場合には、厳密にはわからないので、正確に計算することはできない。しかしながら、方位を識別する場合には、スポット強度の厳密な値は不要である。推定値で十分である。この推定値は、励起誤差、すなわち、ブラッグ角からの偏差に対して線形に強度を低減することによって得られる。その手順の後続のステップを変更することなく、さらに複雑な関係(逆数、平方根、指数...)も同様に用いることができる。データベースにおいて、強度画像は存在せず、座標及び強度値を含む3個一組の値のみが存在する。パターンを適切に再現するために用いられる励起誤差は通常かなり高く、通常0.05〜0.1オングストロームである。データベースは、専用ソフトウエアによってオフラインで計算されることが好ましい。材料特性(結晶構造、格子パラメーター)、実験条件(加速電圧、回折パターンのサイズ)及びいくつかの調整される特徴(励起誤差、角度分解能)が導入されることが好ましい。そのソフトウエアは、方位毎にテンプレートを計算する。3次元の材料の場合に、通常約2000個のシミュレートされたテンプレートが生成される。
テンプレートマッチング法の効率は、1度よりも良好な角度分解能の場合に2000個以下のテンプレートで十分であるという事実に起因する。この方策の主な利点は、高速の処理速度、全ての方位(結晶の全ての走査される点)について同一の指数付け時間、及び結晶構造に依存しない識別アルゴリズムである。ここでも、対称性の低い材料の場合、処理時間はわずかに(たとえば、h.c.p.材料の場合に2倍だけ)増加する。また、その技法によれば、粒径、局所的な組織、結晶粒界及び沈殿物のような、調査中の材料の他の非常に重要な特徴も抽出できるようになる。そのような結晶学的態様は、ビーム走査プロトコルによって、かつ電子後方散乱回折(EBSD−収集される菊池パターンに基づく)を収集することによって走査型電子顕微鏡(SEM)において視覚化することもできる。
個々の結晶粒/微結晶の識別/フィンガープリンティングは、実験プリセッション準運動学的強度及び結晶間隔を含むプロットに基づいて、いくつかの結晶データバンクデータ(COD、ICDD、FIZ等)と比較することによって行うことができる。
EDパターンは、TEM蛍光板上に直に視覚化されるパターンの画像を捕捉するように向けられるか、又は窓を通じてSTEM蛍光板又は変更された蛍光板に直に取り付けられるデジタルカメラ(たとえば、CCD又はCMOS)を用いて収集される場合がある。オンラインデジタルカメラ(12ビット以上)を用いることもできるが、収集速度が速い(たとえば、100EDパターン/secよりも大きく、すなわち、オンラインデジタルカメラよりも約10倍だけ速い)ことに起因して、TEM蛍光板の前方に取り付けることができる専用の外部デジタルカメラ(8ビットレンジ、250×250ピクセル写真サイズ)が好ましい(E. F. Rauch, A. Duft, P. van Houtte(Ed) ICOTOM Proceedings 14,Leuven, Belgium 2005, pp 197-202)。他の場所において言及されるように、デジタルカメラは、CCD又はCMOSを基にしてもよく、他のものとしてもよい。
テンプレートマッチング手順の一部として、個々の収集されたEDパターンについて相関指数を推定してもよい。個々のEDパターンの相関指数は、二重基準ステレオ三角形に変形されるステレオ投影の一部を表す投影内にプロットされる場合がある(たとえば、立方晶系結晶の場合)。結果として生成される相関指数マップは、実験スポットEDパターン毎に最も確からしい方位を明らかにする。このマップにおいて、指数は最も高い値(黒色)によって正規化される(図5)。
相関指数は、理論的な画像と実験的な画像との間の定量的な一致を測定するが、識別の品質を適切に重み付けしない場合がある。場合によっては、十分なコントラストのパターンが不十分に認識されるとき(たとえば、第2の相の粒子)に得られる相関指数は、マッチングは正確であるが、背景雑音が著しいとき(たとえば、厚いサンプルの場合)でも同じである場合がある。したがって、品質指数を導出し得(信頼性指数、R)、それは式1に従って定義される。
(式1)
ただし、Q1及びQ2は異なる最大値の場合の相関指数の2つの最も高い値を表す。2つの解が等しい場合には、信頼性指数(R)はヌルである。対照的に、第2の解(Q2)が第1の解(Q1)に比べて相対的に低いときには、Rは100に向かう傾向がある。このように、信頼性マップを(方位及び指数マップと同時に)作成し得、結晶粒界又は結晶形状を明確に視覚化することができる。
相関指数マップは、ビーム走査プロトコル(たとえば、プリセッション又は振り子運動)を用いるとき、より信頼性が高い。
本発明の1つの方法によれば、EDパターンが得られた別個の場所における相対的な結晶厚が特定される。これは、EDパターン内の中央スポットの強度を測定することによって達成され、その強度は材料の厚みに比例する。得られた厚み情報を用いて、仮想厚みマップを作成することができる。そのような実験厚みマップ(STEMのような明視野コントラストマップに等価な仮想明視野、VBF)は、方位マップ、相関指数及び信頼性マップと同時に得てもよく、かつ相関させることができる。等価な情報STEM明視野、又はHAADF明視野、又はゼロロスEELSマップは、VBFマップと概ね同じ厚みサンプル変動を示し、それゆえ、同じ目的を果たすためにも用いることができる。都合のよいことに、相対的な結晶厚変動を知ることによって、選択された、ZAの方位にあるEDプリセッションパターンの強度を、たとえば、EDパターン間の共通の強度列を用いて共通の強度スケールファクターを計算することによって、互いに正規化できるようになる。こうして、個々のプリセッションEDパターンからの強度が、同じ結晶相の異なる厚みの結晶から収集される場合であっても、それらの強度を測定し、比較することができる。相対厚みマップを用いて求められる共通の強度スケールファクターによって、さらに構造を特定するために用いられることになる、種々の厚みから得られる実験的な準運動学的ZAパターンからのED強度を正規化することもできるようになる。
或る範囲の結晶方位に対して得られる複数の準運動学的回折パターンを用いて、結晶のトモグラフィ(逆格子の3次元断片)が計算され、その場合に、強度はそれぞれの結晶厚から求められるスケールファクターを用いてスケーリングされている。
セルパラメーターは予めわかっていなければならないが、わかっていない場合には、実験EDパターンと比べてシミュレーションによって推定することができる。全ての実験EDパターン(同じ相からなる)が指数付けされ、その強度が1つのセット内に収集されると、パターソン、フーリエマップ、直接法(最大エントロピー法を含む)、チャージフリッピング、又は任意のタイプの結晶学的アルゴリズムを用いて、全ての原子タイプ(Oのような軽い原子を含む)及び構造内の位置を含む、原子結晶モデルを見つけ得る。
構造を計算する前に、同じ相の結晶に属するEDパターンが選択される。これは、手動によって、又は自動的に行なわれる場合がある。さらに、特定のZAに対してランダムな方位にある結晶に属するEDパターンも選択される場合がある。ZAの方位にあるプリセッションパターンの全てから生じる完全な1組の3次元(3D)強度から、構造を解明し、信頼性のある3D原子モデルを確立し得る。
本発明は当該技術分野の方法よりも優れた速度に関する利点を提供する。300×300ピクセルのエリアを有する通常のマップの場合、デジタルカメラのED捕捉速度にもよるが、電子ビームがサンプルを走査するのにわずか数分(たとえば、2〜7分)しかかからない場合がある。後続のデータ解析、たとえば、方位解析のためのパターンマッチングは、簡単な立方晶系セルについて、現在のデスクトップPC能力を用いて5分未満で実行することができる。同じ角度分解能でより多くのテンプレートを必要とする正方晶系セル又は六方晶系セルの場合、時間が3〜4倍長くかかることがある。それゆえ、速度の観点から、その技法は、同じ相又は異なる相の種々のナノ結晶からの実験EDパターンの生成に関して高スループットと見なすことができる。特に、テンプレートマッチングは、他のEBSD−SEMに基づく方法を用いるときの8〜10時間と比べて、わずか数分までその手順を早める。さらに、多数の暗視野パターンが収集され、その後、サンプルエリア全体においてビーム回転を通じて数百のEDパターンが再構成される方位回折解析の場合に、その技法は、他の手順(たとえば、Dingley, D「Progressive steps in thedevelopment of electron backscatter diffraction and orientation imagingmicroscope」(J. Microscopy 21 3(3):2 14-224, 2004)によって記述される)と比べてはるかに高い角度分解能(5度ではなく1度)を有する。
TEM調査の場合、スポット回折パターンを用いることは、菊池ライン指数付けに対する興味深い代替法であり、それらの回折パターンから関連する情報を抽出するために、Dingley, D「Progressive steps in thedevelopment of electron backscatter diffraction and orientation imagingmicroscopy」(J. Microscopy 21 3(3):2 14-224, 2004)及びZaefferer, S及びSchwarzer, R. A.「Automated measurement of single grain orientations in the TEM」(Z. Metallkunde 85:585-591, 1994)において記述されるような、現在のコンピューター指数付けルーチンが開発された。W. K. Pratt著「Digital Image Processing」(Wiley, New York,1978)並びにA. Rosenfeld及びA. C. Kak著「Digital Picture Processing, Computer Science and Applied Mathematics」(Academic Press, NY 1976)によって記述される、TEMにおけるスポットパターンに関係しているそのようなコンピューター指数付けルーチンは、著しく変形した金属、有機化合物、及び菊池パターンが弱いか又は存在しない薄い結晶のような結晶の場合であっても、全てのタイプの結晶のための一般的な/汎用の用途を有する。
本発明の方法の結果として、複数のサンプル場所からの収集と組み合わせて、ビーム走査プロトコル(たとえば、プリセッション)を用いることによって、低温保存技法を用いない場合であっても、有機化合物又は製薬関連結晶のような、ビームの影響を受けやすいサンプルのEDパターンを高スループットで収集できるようになる。
通常、連続したEDパターンを捕捉することができる速度は、一方において、デジタルカメラの収集速度によって制限される。たとえば、光学8ビットCCDは理論的には最大で150EDパターン/secまでを捕捉することができるが、12〜16ビットCCDは5〜10EDパターン/secしか捕捉しない場合がある。それに対して、より速い速度に達するとき、TEMにおいて用いられる蛍光板が制限要因となる可能性がある。蛍光板は、連続したパターンが迅速に投影されるときに、残留磁気信号の影響を受けやすい場合がある。結果として、方位又は相マップは、残留磁気現象に原因がある細長い尾のアーティファクトを示す場合がある。その問題を解決するために、後に収集されるEDパターンから、先行して収集されたEDパターンの強度の或るパーセンテージが差し引かれる。したがって、本発明の一実施形態は、本明細書において記述されるような方法であり、後に収集されるEDパターンから先行して収集されたEDパターンの強度の或るパーセンテージを差し引くステップをさらに含む。そのパーセンテージは、10%、20%、30%、40%若しくは50%、又は上記の値のうちの任意の2つの値の間の範囲内にある値とすることができる。さらに、得られたマップは、しきい値より上でフィルタリングされる場合がある。そのパーセンテージは、10%、20%、30%、40%若しくは50%、又は上記の値のうちの任意の2つの値の間の範囲内にある値とすることができる。さらに、得られたマップは、しきい値より上でフィルタリングされる場合がある。
付加的に又は代替的に、TEM蛍光板に起因する残留磁気は、はるかに低い残留磁気特性を有する代替の「青色光蛍光板」を用いることによって低減又は解消し得る。代替的には、蛍光板は、EDパターンを収集する自らの収集ミラースクリーンを有する電子線回折計内に(たとえば、TEMの35mmポート17内に)直にデジタルカメラを組み込むことによって避けられる場合もある。
本発明の一態様によれば、電子線回折デバイスは、連続した強度背景を低減し、それにより、収集されるプリセッションEDパターンを大きく改善するように構成されるエネルギーフィルターをさらに備える。TEMにおけるエネルギーフィルターの用途は、Werner Grogger EFerdinand Hofer E.Kothleitner EBernhard Schaffer 19 July 2008において記述される。実験的な証拠(実施例9、図13)によれば、エネルギーフィルタリングを用いて得られたパターンは、従来のプリセッションパターンよりも大きな、かつ一般的により信頼性がある反射強度を示し、このように、シミュレートされたテンプレートとのマッチング相関を改善することがわかる。このように、相識別、及び結果として生成される相/方位マップは、はるかに信頼性が高くなる。
本発明の別の実施形態は、TEM、又は電子線回折を実行することができる類似の機能のデバイスに接続することができる1つ又は複数のデバイスであり、そのデバイスは、本発明の方法に従ってサンプルからEDパターンを測定するようにTEMを適合させる。本発明のインターフェースデバイスと電子線回折デバイス(たとえば、TEM)との組み合わせは、本明細書において、電子線回折解析装置として知られている。本発明の一態様では、そのデバイスはTEMに接続することができ、TEMは標準的には、本発明によるEDパターンを測定するための機能を備えていない。たとえば、TEMは、サンプルの前方及び後方に配置される1組の偏向コイルを有する場合があるが、TEMは、コイルを駆動するための1組の増幅器、又は走査プロトコル(たとえば、プリセッション)若しくはビーム走査(変位)信号を生成するためのデバイスを備えていない場合がある。本発明による1つ又は複数のデバイスは、TEMが本発明の方法を実行できるようにする機能を該TEMに提供する。本発明の別の態様では、その装置は、EDパターンを測定するための機能を部分的に備えているTEMに接続することができる。たとえば、TEMは、サンプルの前方及び後方に配置される1組の偏向コイルと、コイルを駆動するための1組の増幅器とを有するが、本発明による走査プロトコル(たとえば、プリセッション)又はビーム走査(変位)信号を実行する手段を備えない場合がある。本発明による1つ又は複数のデバイスは、TEMが本発明の方法を実行できるようにする機能を該TEMに提供する。
本発明の一態様では、デバイス(複数可)は、TEMが上記の方法のうちの1つ又は複数を別々に、又は組み合わせて実行できるようにする構成要素を備える。たとえば、そのデバイス(複数可)によって、TEMは、走査プロトコル(たとえば、プリセッション)及び/若しくはビーム走査(EDビーム変位)を実行できるようになり、かつ/又はサンプルをビームに露光することから生じるEDパターンを記録できるようになる。
本発明によるデバイス(複数可)及び方法によれば、本発明の方法を実行するように、任意のTEMを適合させることができるようになる。デバイスの実施例は、限定はしないが、以下に列挙されるデバイスを含む。それらのデバイスのうちの1つ又は複数は単一のデバイス内に組み込まれる場合がある。
−電気信号に応答して偏向コイルを起動するための電気信号を出力するようにそれぞれ構成される複数の関数発生器(たとえば、4、5、6、7、8、コイル毎に1つ)を含むコントローラーユニット。起動される偏向コイルは、所望の走査プロトコルに従って(たとえば、プリセッション/振り子揺動において)電子ビーム及びEDパターンを誘導する。コントローラーユニットは通常、異なるフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を介してコンピュータープロセッサ(たとえば、PC)によって制御される8個の関数発生器を配置される。各発生器は、任意の形状の任意の周期的な波形を生成することができる。周期は、0(DC)〜2000Hzまで調整可能である場合がある。各発生器の位相及び振幅を正確に調整して、全ての必要なアライメントを実行することができる。また、関数発生器は、ビーム走査のために適した電気信号、すなわち、偏向コイルによって入射電子ビームを、そしてオプションでEDパターンを変位させるのに適した電気信号を出力するように構成される場合もある。しかしながら、変位走査を制御する信号が外部から与えられることも本発明の範囲内にある。そのような場合には、コントローラーユニットは、関数発生器出力に動作可能に接続される1つ又は複数の混合器をさらに備える場合があり、混合器は外部信号を受信し(たとえば、走査信号発生器から)、偏向コイルに送信される前に、それらの信号を1つ又は複数の関数発生器の出力と混合する。ビーム走査は、走査発生器からのx走査信号及びy走査信号を、偏向コイルに送信されるx信号及びy信号に加えることによって達成し得る。コントローラーユニットとTEMとの間の接続は、銅ケーブルを介して果たすことができるか、又は代替的には、全体的なガルバニック絶縁のために光ファイバー若しくは無線リンクを介して果たすことができる。これは、ビームに影響を及ぼす可能性がある全ての起こり得る干渉又はグランドループを相殺する必要がある場合に必要とされることがある。
−好ましくは本明細書の他の場所において言及されるような順次走査動作において、サンプルにわたって入射電子ビームを変位させ、オプションでサンプル後方のEDパターンを変位させる偏向コイルのための信号を生成するように構成される走査信号発生器。他の場所において言及されるように、走査信号発生器からの出力は、関数発生器によって生成される信号と混合される場合がある。
−関数発生器のそれぞれからの出力をTEMの偏向コイルのそれぞれに接続する中継インターフェース。それにより、デジタルデバイスのスイッチが切られるときに、TEMへの信号を完全に切断できるようになる。
−関数発生器からの出力(たとえば、8個の別々の信号)を単一の光信号に変換するマルチプレクサ。
−単一の(多重化された)光信号をTEMのための別々の出力に変換するデマルチプレクサ。
−TEMからの適切な増幅器が存在しない場合に、TEMコイルを駆動するのに適している増幅器のラック。それらの増幅器は中継インターフェース内に組み込まれる場合がある。
−EDパターンを捕捉するためのCCDカメラ又はCMOSカメラのようなデジタルカメラ。
−デジタルカメラに接続するアナログ/デジタル手段。
−上記のデバイスのうちの1つ又は複数にインターフェースする、コンピューター可読記憶手段を有するコンピューター。そのコンピューターは、FPGAを介してコントローラーユニットと通信する、Windows、UNIX、Linuxを実行するデスクトップ又はラップトップコンピューターとすることができる。そのコンピューターは単一のコンピューターとすることができるか、又は協調的に接続される2つ以上のコンピューターとすることができる。そのコンピューターは、関数発生器、走査信号発生器を制御し、かつ/又はデジタルカメラデータを記録及び解析し、かつ/又は厚み(仮想明視野)マップを生成し、かつ/又は方位マップを生成し、かつ/又は相マップを生成し、かつ/又は相関指数マップを生成し、かつ/又は3次元構造を生成するように構成される場合がある。
−コンピューター可読手段上に格納され、関数発生器、走査信号発生器を制御し、かつ/又はデジタルカメラデータを記録及び解析し、かつ/又はテンプレートマッチングを実行し、かつ/又は厚み(仮想明視野)マップを生成し、かつ/又は方位マップを生成し、かつ/又は相マップを生成し、かつ/又は相関指数マップを生成し、かつ/又は3次元構造を生成するためのコンピュータープログラム。
本発明のデバイスを含む素子の構成の実施例が、TEMと共に、図14〜図18において与えられる。上記のデバイスのうちのいくつかが示されるが、いくつかのデバイスは存在しない場合があり、それは、いずれのデバイスが既にTEM内に存在しているかによる。当業者によって判断されるように、関連する回路は存在してもしなくてもよく、その回路は入手可能である。上記のデバイス間の接続は直接的であっても、間接的であってもよい。当業者によって知られ、理解されるように、デバイス間に、さらなる構成要素が挿入されてもよい。
本発明の別の態様によれば、EDパターンの画像を捕捉するのに適しているTEMの35mmポート又は任意のポートにおいて、窓の前方にデジタルカメラが配置される場合がある。
本発明の一態様では、デジタルカメラは直に、又はアナログ/デジタルコンバータを介してコンピューターに接続する。
本発明の一態様によれば、コンピューターは、走査プロトコル及び/又はビーム走査(EDビーム変位)を制御し、デジタルカメラからのEDパターンを記録する。
そのシステムによって測定される全てのED強度はコンピューターを介して自動的に制御されることができ、コンピューターは、結晶構造を精緻化するための種々の数学的演算を実行した後に、調査されるサンプルのための1つ(又はいくつか)の結晶学的モデルをユーザーに自動的に提示する。
本発明の別の態様は、本明細書において開示されるデバイスのうちの1つ又は複数を含むTEMである。本発明の別の態様は、本発明の方法のうちの1つ又は複数を実行することができるTEMである。本発明の別の態様は、本発明の方法のうちの1つ又は複数を実行することができる、本明細書において開示されるデバイスのうちの1つ又は複数を含むTEMである。
本発明の別の実施形態は、TEMとインターフェースするのに適しており、該TEMが本発明に従ってサンプルのEDパターンを測定できるようにし、コントローラーユニットを備える、デバイスである。
本発明の別の実施形態は、走査信号発生器をさらに備える、TEMと接続するのに適しているデバイスである。
本発明の別の実施形態は、デジタルカメラをさらに備える、上記のようなデバイスである。
本発明の別の実施形態は、上記のようなコンピューター可読記憶手段を有するコンピューターをさらに備える、上記のようなデバイスである。
本発明の別の実施形態は、上記のような方法を実行することができるTEMである。
本発明の別の実施形態は、上記のようなデバイスを備えるTEMである。
本発明は、当該技術分野の任意のTEM、又は将来のTEMにインターフェースすることができ、TEMが結晶サンプルの構造を迅速に特定し、方位、厚み、相及び相関指数マップを生成できるようにする方法及びデバイスである。
図14は、本発明の方法を実行するのに適している電子線回折解析装置(すなわち、TEMに連結される本発明のデバイス)の1つの取り得る構成を示す。TEM1は図1のTEMと同じである。コントローラーユニット80が複数の電気ケーブル88によってTEMに接続され、偏向コイルを制御するためにTEMに信号を与え、たとえば、DBTCに(プリセッションを制御するための)、かつDIACに(回折画像の走査及びデスキャンを制御するための)信号を与えるように構成される。コントローラーユニットはさらに、コンピューター86からのデジタル信号によって制御され、それらの信号は、D/Aコンバータ82を用いてアナログ形式から変換される。デジタルカメラ19はフレーム収集ユニット84に接続され、そのユニットはカメラからの画像をデジタル化し、それらの画像はコンピューター86によって受信される。コンピューター86は、コンピュータープログラムによって、サンプル前方に配置される偏向コイルを用いることによって走査プロトコル(たとえば、プリセッション、振り子揺動)を、かつサンプル後方に配置される偏向コイルを用いることによってデスキャンパターンを制御する。また、コンピューターは、サンプルの配列されたエリアの範囲において、ビーム走査、すなわち、たとえば、入射EDビームの変位を制御し、オプションで、EDパターンの相補的な変位を制御する。また、コンピューター86は、ビーム走査を、走査プロトコルと、かつ画像捕捉と同期させる。コンピューターは、画像処理も実行することができる。
図15は、本発明の方法において用いるのに適した電子線回折解析装置のデバイスブロック構成を示す。TEM1はTEMテーブル90上に取り付けられ、TEMテーブル90は手動インターフェース92、たとえば、ユーザーがインタラクトするのに用いる1組のボタン又はキーボードを組み込む。TEM1の偏向コイルは、直に、又はインターフェースを介して、電気ケーブル88を用いてコントローラーユニット80に接続される。通常、8個のTEM偏向コイルが制御される。コントローラーユニット80は、コンピューターシリアルケーブル(たとえば、ファイアワイヤケーブル)を介して、Windows、UNIX、Linux、MacOS又は他のオペレーティングシステムを実行するコンピューター86、たとえば、デスクトップ又はラップトップコンピューターに接続される。手動インターフェース92は、コンピューターシリアルケーブル(たとえば、USBケーブル)を介して、コンピューター86に接続される。この実施形態では、コントローラーユニット80は、走査プロトコル(たとえば、プリセッション)及びビーム走査(EDビーム/EDパターン変位)のために必要な信号を生成する。
図16は、本発明の方法を使用できるようにする電子線回折解析装置(TEMを含む)のデバイスブロック構成を示す。そのデバイスブロック構成は、プリセッション(走査プロトコル)技法と、(回折パターンの記録と同期して)試料にわたってビームを走査するビーム走査技法、及び検出器上の回折パターンをデスキャンしてスポット強度を正確に記録する技法とを組み合わせる。TEM1はTEMテーブル90上に取り付けられ、TEMテーブル90は手動インターフェース、たとえば、ユーザーがインタラクトするのに用いる1組のボタン又はキーボードを組み込む。TEM1の偏向コイルは、直に、又はインターフェースを介して、電気ケーブル88を用いてコントローラーユニット80に接続される。通常、8個のTEM偏向コイルが制御される。コントローラーユニット80は、コンピューターシリアルケーブル(たとえば、ファイアワイヤケーブル)を介して、Windows、UNIX、Linux、MacOS又は他のオペレーティングシステムを実行するコンピューター86、たとえば、デスクトップ又はラップトップコンピューターに接続される。手動インターフェース92は、コンピューターシリアルケーブル(たとえば、USBケーブル)を介して、コンピューター86に接続される。この実施形態では、コントローラーユニット80が走査プロトコル(たとえば、プリセッシング)パターンのために必要な信号を生成する一方、別のコンピューター87が、ビーム走査、すなわち、サンプルエリアにわたって入射ビームを変位させるために必要な信号、及び変位したパターンをデスキャンするために必要な信号を与える。走査発生器81はコンピューター86によって制御され、その出力は、コントローラーユニット80に向けられ、コントローラーユニット80において、回折パターンを走査するための信号と混合される。
図17は、前置増幅器128にそれぞれ接続される複数のビームチルト偏向コイル100及びビームシフト偏向コイル101を配置される電子線回折解析装置(TEMに連結される)を示しており、増幅器128は、詳細図128において示されるように、加算前置増幅器と抵抗器との組み合わせから構成される。各偏向コイル/増幅器セットは、中継インターフェース102内に配置される中継器に接続される。制御ユニット80が、接続インターフェース103を介して中継インターフェース102に接続し、複数の関数発生器(104、106、108、110、112、114、116、118)を備えており、偏向コイル毎に1つの関数発生器があり、各関数発生器は0Hz(DC)〜2000Hzの信号を生成することができる。偏向コイルを通じて加えられる信号は、電子ビーム及びパターンの動きに影響を及ぼす。関数発生器(104、106、108、110、112、114、116、118)によって生成される信号は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)122によって制御され、FPGA122は、コンピューターシリアルケーブル(たとえば、ファイアワイヤケーブル)を介して、Windows、UNIX、Linux、MacOS又は他のオペレーティングシステムを実行するコンピューター86、たとえば、デスクトップ又はラップトップコンピューターとインターフェースする。関数発生器(104、106、108、110、112、114、116、118)は通常、コンピューター制御下で、必要な走査プロトコル(たとえば、プリセッション)信号を与えるように構成される。それらの関数発生器は、必要なビーム及びパターン走査(変位)信号も与えることができる。しかしながら、それらの関数発生器が後者の信号を与えない場合には、2つの混合器118、120が示されており、それらの混合器は、入射ビームを変位させる信号を与える走査信号発生器126からの出力信号、及びEDパターンを変位させる信号を与える第2の走査発生器124からの出力信号を受信する。それらの混合器は、ビーム及びEDパターン走査(変位)信号とプリセッション信号とを混合し、合成された信号が偏向コイルに送信される。
図18は、図17の電子線回折解析装置の代替の構成を示しており、TEM1及び制御ユニット80が光ファイバーリンク135によって接続され、それにより、電子顕微鏡1と制御ユニット80との間のガルバニック絶縁を達成する。関数発生器からの信号はマルチプレクサ134によって多重化され、制御ユニット80から光信号として渡され、その信号はTEM側においてデマルチプレクサ136によって逆多重化される。
本発明の方法及びデバイスは、ZAに沿ったランダムな方位の結晶からのいくつかの高品質の準運動学的EDパターンを収集することによって、高速の高スループットトモグラフィを提供する。本発明は、特定のシングルチルト、ダブルチルト、極低温及び任意の専用TEMホルダーを一切必要とすることなく、結晶構造(有機/無機)、多形体及び非晶相スクリーニングを解決する高スループット粉末X線に対する代替法を提供する。それは、サンプル挿入機能を有する任意の一般的なTEM/ED回折デバイスで実行することができる。
ナノ結晶銅のサンプル内の結晶の方位を特定するテンプレートマッチングの一例が図5に示される。図5A及び図5Bは、ステレオ三角形にわたって全ての方位の場合に生成されるシミュレートされたテンプレートを示す。図5Cには、CCDカメラを備えるTEMを用いて、ナノ結晶銅のサンプル内の1つの場所から収集される実験EDパターンが示される。そのEDパターンは全てのシミュレートされたテンプレートと比較された。図5Dに示されるのは、実験EDパターンからの円と重ね合わせられるマッチングテンプレートである。図5Eに示されるように、最も一致するもの、すなわち、収集の時点において最も確からしい結晶方位を示す相関指数マップが生成された。
走査プロトコル(プリセッション)が用いられないときの石綿繊維結晶のサンプル内の結晶の方位を特定するテンプレートマッチングの一例が図6に示されており、走査プロトコル(プリセッション)が用いられるときと比較される。いずれの場合にもビーム走査が用いられる。最初に、プリセッションを用いることなく、実験EDパターンが、石綿繊維結晶のサンプル内の1つの場所においてTEMを用いて収集され、結果として、図6Aに示されるEDパターンがCCDカメラによって捕捉された。そのEDパターンは全てのシミュレートされたテンプレートと比較された。図6Bに示されるのは、実験EDパターンからの円と重ね合わせられるマッチングテンプレートである。図6Cに示されるように、対応する相関指数マップが生成され、その方位が白色スポット(S)で指示されている。マッチングによれば、EDパターンは、最も近いZA[101]に対して、0.65度だけ誤った方位に向けられる。その後、プリセッションを用いて石綿繊維結晶のサンプル内の同じ場所において、実験EDパターンが収集され、結果として、図6Fに示されるEDパターンがCCDカメラによって捕捉された。そのEDパターンはシミュレートされた全てのテンプレートと比較された。図6Gに示されるのは、実験EDパターンからの円と重ね合わせられるマッチングテンプレートである。図6Hに示されるように、対応する相関指数マップが生成され、その方位が白色スポット(S)で指示されている。そのマッチングによれば、ここで、EDパターンは、プリセッションの結果、完全に[101]ZAに沿った方位にある。サンプル全体から、図6Dに示されるように、石綿繊維結晶サンプルのTEM画像が生成された。[101]晶帯軸のシミュレーションが図6Eに詳細に示される。
走査プロトコル(プリセッション)が用いられないときに、ビーム走査を用いて石綿繊維結晶のサンプル内の結晶の方位を特定するテンプレートマッチングのさらなる例が図7に示されており、走査プロトコル(プリセッション)が用いられるときと比較される。いずれの場合にもビーム走査が用いられる。最初に、プリセッションを用いることなく、実験EDパターンが、石綿繊維結晶のサンプル内の1つの場所においてTEMを用いて収集され、結果として、図7Aに示されるEDパターンがCCDカメラによって捕捉された。そのEDパターンは全てのシミュレートされたテンプレートと比較された。図7Bに示されるのは、実験EDパターンからの円と重ね合わせられるマッチングテンプレートである。図7Cに示されるように、対応する相関指数マップが生成され、その方位が白色スポット(S)で指示されている。マッチングによれば、EDパターンは、最も近いZA[1−10]に対して、−2度だけ誤った方向に向けられる。その後、プリセッションを用いて、石綿繊維結晶のサンプル内の同じ場所において実験EDパターンが収集され、結果として、晶帯軸[1−10]に沿って(プリセッションの結果として)完全な方位を有する図7Fに示されるEDパターンがCCDカメラによって捕捉された。そのEDパターンはシミュレートされた全てのテンプレートと比較された。図7Gに示されるのは、実験EDパターンからの円と重ね合わせられるマッチングテンプレートである。図7Hに示されるように、対応する相関指数マップが生成され、その方位が白色スポット(S)で指示されている。サンプル全体から、図7Dに示されるように、石綿繊維結晶サンプルのTEM画像が生成された。晶帯軸[1−10]のシミュレーションが図7Eに詳細に示される。
石綿繊維結晶のサンプル内の石綿結晶の相を特定するテンプレートマッチングの一例が図8に示される。未知の結晶石綿相の実験EDパターンが、TEM及びプリセッションを用いて収集された(図8EのEDパターンを参照)。このEDパターンに対して最も一致するパターン(図8A)がクロシドライト相を示した。図8Bに示されるように、対応する相関指数マップが生成され、その方位が白色スポット(S)で指示されている。対照的に、クリソタイル相に対して最も一致するパターン(図8C)は低い指数を示し、それゆえ、その相に対する確率が低いことを示す。図8Dに示されるように、対応する相関指数マップが生成され、その方位が白色スポット(S)において指示されている。単斜晶系相のクロシドライト及びクリソタイル石綿の格子及びセルが、参考文献一覧からわかっている。
EDビーム及びパターンの走査プロトコル(プリセッション)が用いられないとき(図9A)の任意の方位にあるマイエナイト結晶Ca12Al1433から得られたEDパターンと、走査プロトコル(プリセッション)が用いられるとき(図9B)のEDパターンとの比較が示される。いずれの場合にもビーム走査が用いられる。
走査プロトコル(プリセッションを伴う)が用いられるとき、及び用いられないときに、方位マップ及び厚みマップ(仮想明視野マップ)を得るために、本発明の方法に従ってマイエナイト結晶のサンプルが測定された。いずれの場合にも、ビーム走査が用いられる。CCDカメラによって捕捉される10フレーム/秒の速度において、全収集時間は50分であった。電子ビームは、200×150アレイにおいて、28nmステップで変位した。図10Aは、プリセッションを用いない場合にビーム走査を用いて得られた方位マップを示し、図10Bは、同じ条件において得られた仮想明視野マップを示す。そのパターンは、頻繁に誤った指数付けが生じたパターンを指示する、グレースケール強度における数多くのランダムな変動を示す。図10Cは、ビーム走査及び0.35度のプリセッションを用いて得られた方位マップを示し、図10Dは、ここでも同じ条件において得られた仮想明視野マップを示す。全ての他のパラメーター(たとえば、スポットサイズ、ステップサイズ、カメラ設定、収集周波数等)は同様であった。方位マップ品質はプリセッションを伴う場合に劇的に向上することに注目されたい。各結晶粒内で真の一様な方位が示される。
fcc構造(a=1.062nm)を有する炭化物M23の沈殿物及び六方晶系窒化物CrNの沈殿物(a=0.483nm、c=0.451nm)を含む430ステンレス鋼のサンプルであり、沈殿物の形状もサイズもそれらを区別するのに役に立たない。走査プロトコル(プリセッション)が用いられた場合、及び用いられなかった場合の方位マップ及び相マップを得るために、本発明の方法に従って、そのサンプルが測定された。いずれの場合でもビーム走査が用いられる。電子ビームは、200×300アレイにおいて、22nmステップで変位した。図11Aは、プリセッションを用いることなく、ビーム走査を用いて得られる方位マップを示し、図11Bは、プリセッションを用いることなく、ビーム走査も組み合わせる相マップを示しており、すなわち、標準的なモードが利用される。プリセッションを用いることなく収集された相マップ(図11B)は、2つの沈殿物の特定が曖昧であることを示し、各結晶粒は灰色の2つの色調を示す。図11Cは、ビーム走査と0.3度のプリセッションとを組み合わせることによって得られた相マップを示しており、炭化物及び窒化物沈殿物のエリアを、より連続した領域として示すので、プリセッションを用いる場合に相特定の信頼性が高いことを示す。
蛍光板上に画像が残存することが原因で、44フレーム/秒において残留磁気効果を示すTEMレプリカ仮想明視野マップ(図12A)が得られた。対応する相関指数マップ(図12B)の場合にも同様の残留磁気効果が見られた。以前に収集されたEDパターンの或るパーセンテージを差し引き、そこから明視野マップを生成する効果が図12Cに示される。しきい値よりも上で指数相関マップをフィルタリングする効果が図12Dに示される。
エネルギーフィルターを用いることなく(図13A)、及びエネルギーフィルターを用いて(図13B)、プリセッションモード(1度プリセッション角)においてTEMを用いて任意の方位にあるマイエナイト結晶が収集された。エネルギーフィルターは、プリセッションを用いない場合よりも、高い反射強度を示す。

Claims (12)

  1. 透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて異なる方位及び異なる既知の相にある複数の結晶(36)を含むサンプル(38)の方位及び相マップを計算するための方法であって、
    a)異なる方位にある複数の前記結晶(36)を含むサンプル(38)を準備するステップと、
    b)該サンプル(38)のエリア内の複数の別個の場所(42、43)のそれぞれから電子線回折パターン(44、46)を得るステップであって、該電子線回折パターンを得るために用いられる電子ビームは、該サンプル(38)後方の同様のデスキャン(34)と組み合わせて、該サンプル(38)の該別個の場所において該電子ビームが収束するように、プリセッションモードプロトコル、ビーム回転プロトコル、又は結果として準運動学的回折パターンが生成される任意の走査モードプロトコルにおいて走査される(30)、得るステップと、
    c)該b)において得られた個々の該回折パターン(45、46)に適用されるテンプレートマッチングを用いて該結晶方位を特定するステップと、
    d)該b)において得られた該個々の回折パターン(45、46)に適用されるテンプレートマッチングを用いることによって、異なる結晶相の存在を特定するステップと、
    e)該ステップc)及び該ステップd)の該特定から該サンプル内の結晶の方位マップ及び相マップを計算するステップと、
    を含み、
    ビーム走査は、該TEM内のx偏向コイル及びy偏向コイルを制御する走査発生器によって生成されるx走査信号及びy走査信号によって制御され、
    該x走査信号及び該y走査信号に波形が加えられ、観測されたビームプローブサイズの動的な補償を実行する、方法。
  2. 波形は、
    直線形状、又は該プリセッション周波数に対して特有の周波数において生成された正弦波を、該プローブの不規則な動きを補償するように手動で変更したものである、請求項1に記載の方法。
  3. 波形は、
    該ビームのx座標及びy座標並びに該プリセッション円上の角度から計算される、請求項1に記載の方法。
  4. 波形は、
    該プローブの動きを補償し、該回折パターンを視覚化するのに用いられる該TEM板の中心に戻すように加えられる、請求項1に記載の方法。
  5. 実験プリセッション準運動学的強度及び結晶間隔を含むプロットを用いて個々の結晶粒又は微結晶をさらに又は代替的に識別又はフィンガープリンティングすることをさらに含み、それらのプロットは好ましくはCOD、ICDD、又はFIZ等である結晶データバンクデータと比較される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. ビーム走査及びEDエネルギーフィルタリングを組み合わせて、個々の結晶粒又は微結晶の識別又はフィンガープリンティングを強化すると共に、より良好な品質の方位相マップを得る、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  7. 高スループットにおいて実行される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  8. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法を実行するように、TEMを適合させるためのデバイス。
  9. 透過型電子顕微鏡(TEM)とインターフェースし、請求項1に記載の方法を実行するように前記TEMを適合させるためのデバイスであって、
    a)ランダムな方位にある複数の前記結晶(36)を含むサンプル(38)のエリア内の複数の別個の場所(42、43)のそれぞれから電子線回折パターン(44、46)を得るように、なお、該電子線回折パターンを得るために用いられる該電子ビームは、該サンプル(38)後方の同様のデスキャン(34)と組み合わせて、該サンプル(38)の該別個の場所において該電子ビームが収束するように、プリセッションモードプロトコル又は請求項3に記載の他のプロトコルにおいて走査され(30)、
    b)該a)において得られた個々の該回折パターン(45、46)に適用されるテンプレートマッチングを用いて該結晶方位を特定するように、
    c)仮想明視野、STEM明視野、HAADF又はゼロロスEELS厚みマップとして得られる相対厚みマップから、該EDパターンが得られた該別個の場所(42、43)における相対的な結晶厚を求めるように、
    d)該c)において求められた該相対的な厚みから、共通強度スケールファクターを求めると共に、該別個の場所(42、43)からの個々のEDパターンの強度を正規化するように、かつ
    e)3次元の1組の正規化されたEDパターン及び方位情報から、該ランダムな方位にある結晶の該原子結晶構造を計算する(66)ように、
    構成される、デバイス。
  10. 実験プリセッション準運動学的強度及び結晶間隔を含むプロットを用いて個々の結晶粒又は微結晶をさらに又は代替的に識別又はフィンガープリンティングするようにさらに構成され、それらのプロットは好ましくはCOD、ICDD、FIZである結晶データバンクデータと比較される、請求項に記載のデバイス。
  11. ビーム走査をEDエネルギーフィルタリングと組み合わせて、個々の結晶粒又は微結晶の識別又はフィンガープリンティングを強化すると共に、より良好な品質の方位相マップを得るようにさらに構成される、請求項9又は10に記載のデバイス。
  12. 高スループットレートのためにさらに構成される、請求項9〜11のいずれか一項に記載のデバイス。
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