以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る通電加熱装置の概略平面図である。また、図2は、図1におけるY2A方向、Y2B方向及びY2C方向から見た前記通電加熱装置の側面図であり、図2(a)、図2(b)及び図2(c)はそれぞれ、Y2A方向、Y2B方向及びY2C方向から見た前記通電加熱装置の側面図である。なお、図2(a)、図2(b)及び図2(c)ではそれぞれ、後述する位置決め部材の一部を二点鎖線で示し、これを透過状態で示している。
前記通電加熱装置1は、略平板状に形成された板状ワーク(ブランク)に互いに離間する電極を取り付けて通電することにより板状ワークに生じるジュール熱によって板状ワークを加熱するものであり、本実施形態では、板状ワークに該板状ワークの加熱を補助するための加熱補助部材を重ね合わせて板状ワークを加熱するものである。
図1及び図2に示すように、前記通電加熱装置1は、所定の電気抵抗率を有する導電性の板状ワークW1に略平板状に形成された所定の電気抵抗率を有する導電性の加熱補助部材W2を重ね合わせた状態で板状ワークW1を電気的に加熱するための通電手段10を備えている。通電手段10は、互いに離間して平行に配置される一対の電極11と、電極11に直流又は交流の電力を供給する電源12と、電源12と電極11とを接続するケーブル13とを備え、重ね合わせられた板状ワークW1及び加熱補助部材W2の両端部に一対の電極11を接触させて通電することにより板状ワークW1及び加熱補助部材W2を加熱するように構成されている。一対の電極11は、例えば銅などの材料を用いて略直方体状に形成されたバー電極であり、一方の電極11aが正電極として使用され、他方の電極11bが負電極として使用される。
なお、図1及び図2では、板状ワークW1に加熱補助部材W2を重ね合わせた状態で加熱補助部材W2に一対の電極11を直接接触させているが、板状ワークW1に一対の電極11を直接接触させるようにしてもよく、また、板状ワークW1及び加熱補助部材W2に一対の電極11をそれぞれ直接接触させるようにしてもよい。
前記通電加熱装置1はまた、図2に示すように、一対の電極11の上方にそれぞれ配置されるクランプ部材15を備えている。クランプ部材15は、電極11の延びる方向に略平行に延びる略直方体状のクランプ基部16と、板状ワークW1及び加熱補助部材W2に接触する先端部を備えたピン部17と、クランプ基部15とピン部17とに結合されるスプリング18とを備え、クランプ基部16が、図示しないクランプ基部移動手段に連結されて矢印Z1に示すように上下方向に移動可能に構成されている。
クランプ部材15は、板状ワークW1及び加熱補助部材W2を挟んで電極11の反対側に配置され、前記クランプ基部移動手段によってクランプ基部16が下方へ移動されることにより下方へ移動される。板状ワークW1及び加熱補助部材W2に電極11を取り付ける際には、クランプ部材15が下方へ移動され、電極11とクランプ部材15とによって板状ワークW1及び加熱補助部材W2を挟持して取り付けることができる。これにより、比較的簡便な方法によって板状ワークW1及び加熱補助部材W2に電極11を確実に取り付けることができる。
また、前記通電加熱装置1は、板状ワークW1を所定位置に保持するための位置決め部材21,22を備えている。位置決め部材21は、略直方体状に形成されており、一対の電極11の外側に配置され、図2(a)に示すように、一対の電極11においてそれぞれ他方の電極11が配置される側と反対側の面に、電極11よりも上方へ延びるように結合されている。
これにより、位置決め部材21は、板状ワークW1の周縁部の一部、具体的には板状ワークW1の平行な対辺W1aを該位置決め部材21と係合させることで、電極11の延びる方向に直交する方向において板状ワークW1を所定位置に保持することができるようになっている。
位置決め部材21はまた、板状ワークW1に重ね合わせられる加熱補助部材W2の周縁部の一部、具体的には加熱補助部材W2の平行な対辺W2aを該位置決め部材21と係合させることで、電極11の延びる方向に直交する方向において加熱補助部材W2を所定位置に保持することができるようになっている。
一方、位置決め部材22は、略直方体状に形成され、一対の電極11の内側に配置されている。位置決め部材22は、図1に示すように、一対の電極11の対向する端部の間において電極11の延びる方向に直交する方向に延び、図2(a)において二点鎖線で示すように、電極11よりも上方へ延びている。
これにより、位置決め部材22は、板状ワークW1の周縁部の一部、具体的には板状ワークW1の平行な対辺W1aと直角な辺W1bを該位置決め部材22と係合させることで、電極11の延びる方向において板状ワークW1を所定位置に保持することができるようになっている。
位置決め部材22はまた、板状ワークW1に重ね合わせられる加熱補助部材W2の周縁部の一部、具体的には加熱補助部材W2の平行な対辺W2aと直角な辺W2bを該位置決め部材22と係合させることで、電極11の延びる方向において加熱補助部材W2を所定位置に保持することができるようになっている。
前記通電加熱装置1にはまた、該通電加熱装置1に関連する構成を総合的に制御する制御ユニット(不図示)が備えられ、該制御ユニットは、通電手段10及び前記クランプ基部移動手段等の作動を制御することができるようになっている。なお、前記制御ユニットは、好ましくは、マイクロコンピュータを主要部として構成されている。
このようにして構成された通電加熱装置1では、クランプ部材15がそれぞれ上方へ移動された状態で、所定形状にそれぞれ形成された板状ワークW1と加熱補助部材W2とを用意し、位置決め部材21,22によって所定位置に位置決めされた状態で電極11上に板状ワークW1と加熱補助部材W2とを重ね合わせ、重ね合わせられた板状ワークW1及び加熱補助部材W2に対してクランプ部材15を下方へ移動させることにより電極11とクランプ部材15とによって板状ワークW1及び加熱補助部材W2を密着させた状態で挟持して板状ワークW1及び加熱補助部材W2に一対の電極11を取り付け、その後に、両電極11間を通電して板状ワークW1及び加熱補助部材W2を加熱することが行われる。
ここで、本実施形態に係る通電加熱装置1において加熱される板状ワークW1及び加熱補助部材W2について説明する。
図3は、前記通電加熱装置において加熱される板状ワーク及び加熱補助部材を説明するための説明図であり、図3(a)は、所定形状に形成される前の板状ワーク及び加熱補助部材を示し、図3(b)は、所定形状に形成された後の板状ワーク及び加熱補助部材を示している。
通電加熱装置1では、高張力鋼板などの所定の電気抵抗率を有する導電性の板状ワークW1が所定の電気抵抗率を有する導電性の加熱補助部材W2とともに通電加熱によって加熱されるが、加熱される板状ワークW1及び加熱補助部材W2は、図3(a)に示すように、所定厚さを有する矩形状の板状ワークを、対角線の交点C1を通る(一点鎖線で示される)点対称な直線状のラインL1によって切断することによって形成される。図3(b)では、板状ワークW1を上下反転した状態で示しているが、板状ワークW1と加熱補助部材W2は、同一形状を有し、一対の対辺が互いに平行な直角台形状に形成されている。
また、図3に示す板状ワークW1は、車体構成部材であるピラーを成形するための(二点鎖線で示される)ピラー成形部M1を有するように形成されており、板状ワークW1は、通電加熱によって加熱された後に、加熱された板状ワークW1が所定形状にプレス成形される。具体的には、板状ワークW1は、ピラー成形部M1が所定形状にプレス成形されるとともにピラー成形部M1を除く部分がトリミング加工されて取り除かれる。
図4は、前記通電加熱装置において加熱される板状ワーク及び加熱補助部材の通電方向に直交する断面における断面積と電気抵抗率の逆数との積について説明するための説明図であり、図4(a)は、板状ワークと加熱補助部材とを電極上に重ね合わせた状態を示し、図4(b)は、電極間の通電方向における正電極からの距離と板状ワーク及び加熱補助部材の通電方向に直交する断面における断面積と電気抵抗率の逆数との積との関係を示している。なお、図4(b)では、板状ワークW1及び加熱補助部材W2についてそれぞれ通電方向に直交する断面における断面積と電気抵抗率の逆数との積をラインL2、ラインL3で示し、通電方向に直交する断面における板状ワークの断面積と板状ワークの電気抵抗率の逆数との積と前記断面における加熱補助部材の断面積と加熱補助部材の電気抵抗率の逆数との積との総和をラインL4で示している。
前記通電加熱装置1では、電極11上に板状ワークW1及び加熱補助部材W2が重ね合わせられて所定位置に配置される。板状ワークW1及び加熱補助部材W2は、それらの直角部がそれぞれ一致するようにして重ね合わせられ、板状ワークW1及び加熱補助部材W2の両端部にそれぞれ電極11が取り付けられるように配置される。
図4(a)に示すように、電極11間の通電方向における正電極11aからの距離x1において、板状ワークW1、加熱補助部材W2の通電方向に直交する幅をy1,y2とし、板状ワークW1及び加熱補助部材W2がともに所定の厚さtを有するとすると、板状ワークW1,加熱補助部材W2の通電方向に直交する断面における断面積S1,S2はそれぞれ、(y1・t),(y2・t)によって表される。
また、板状ワークW1が所定の電気抵抗率ρ1を有し、加熱補助部材W2が所定の電気抵抗率ρ2を有するとすると、通電方向における正電極11aからの距離x1において、板状ワークW1の断面積S1と板状ワークW1の電気抵抗率ρ1の逆数との積は、(S1/ρ1)によって表され、加熱補助部材W2の断面積S2と加熱補助部材W2の電気抵抗率ρ2の逆数との積は、(S2/ρ2)によって表される。
重ね合わせられた板状ワークW1及び加熱補助部材W2では、通電方向における正電極11aからの距離x1において、通電方向に直交する断面における板状ワークW1の断面積S1と板状ワークW1の電気抵抗率ρ1の逆数との積(S1/ρ1)と通電方向に直交する断面における加熱補助部材W2の断面積S2と加熱補助部材W2の電気抵抗率ρ2の逆数との積(S2/ρ2)との総和(S1/ρ1+S2/ρ2)は、(y1・t/ρ1+y2・t/ρ2)で表される。
図4(a)に示す板状ワークW1及び加熱補助部材W2では、図4(b)に示すように、通電方向における正電極11aからの距離が大きくなるにつれて、板状ワークW1の通電方向に直交する断面における断面積S1と板状ワークW1の電気抵抗率ρ1の逆数との積(S1/ρ1)は大きくなる(ラインL2参照)一方、通電方向における正電極11aからの距離が大きくなるにつれて、加熱補助部材W2の通電方向に直交する断面における断面積S2と加熱補助部材W2の電気抵抗率ρ2の逆数との積(S2/ρ2)は小さくなる(ラインL3参照)。
しかしながら、本実施形態では、通電方向に直交する断面における板状ワークW1の断面積S1と板状ワークW1の電気抵抗率ρ1の逆数との積と通電方向に直交する断面における加熱補助部材W2の断面積S2と加熱補助部材W2の電気抵抗率ρ2の逆数との積との総和(S1/ρ1+S2/ρ2)は、通電方向における正電極11aからの距離に関わらず略一定となるように(ラインL4参照)板状ワークW1及び加熱補助部材W2が用意され重ね合わせられる。
通電方向に直交する断面における板状ワークW1の断面積S1と板状ワークW1の電気抵抗率ρ1の逆数との積と通電方向に直交する断面における加熱補助部材W2の断面積S2と加熱補助部材W2の電気抵抗率ρ2の逆数との積との総和(S1/ρ1+S2/ρ2)が、通電方向において略一定となるようにしたのは、通電方向において板状ワークW1の単位長さあたりの抵抗(ΔR1=ρ1・ΔL/S1)と加熱補助部材W2の単位長さあたりの抵抗(ΔR2=ρ2・ΔL/S2)とを並列回路とみなし、通電方向において板状ワークW1及び加熱補助部材W2の単位長さ当たりの合成抵抗を略一定にするためである。なお、前記ΔLは、通電方向の単位長さを表し、前記ΔR1,ΔR2はそれぞれ、通電方向における板状ワークW1及び加熱補助部材W2の単位長さ当たりの抵抗を表している。
前述したように、板状ワークW1と加熱補助部材W2とは、所定の厚さを有する矩形状の板状ワークを切断して形成されていることにより、板状ワークW1と加熱補助部材W2とが同一の電気抵抗率を有しているが、通電方向に直交する所定の断面における板状ワークの断面積と板状ワークの電気抵抗率の逆数との積と前記所定の断面における加熱補助部材の断面積と加熱補助部材の電気抵抗率の逆数との積との総和が通電方向において略一定となるものであれば、板状ワークW1と加熱補助部材W2とが異なる電気抵抗率や形状を有するものを用いることも可能である。
また、前述した実施形態では、1つの板状ワークW1に加熱補助部材W2が、通電方向に直交する所定の断面における板状ワークW1の断面積と板状ワークW1の電気抵抗率の逆数との積と前記所定の断面における加熱補助部材W2の断面積と加熱補助部材W2の電気抵抗率の逆数との積との総和が通電方向において略一定となるように用意され重ね合わせられるが、2つ以上の板状ワークに加熱補助部材を重ね合わせ、通電方向に直交する所定の断面における板状ワーク毎の断面積と板状ワーク毎の電気抵抗率の逆数との積と前記所定の断面における加熱補助部材の断面積と加熱補助部材の電気抵抗率の逆数との積との総和が通電方向において略一定となるようにしてもよい。
このように、本実施形態では、所定の電気抵抗率を有する導電性の板状ワークW1に互いに離間する一対の電極11を取り付けて通電することにより板状ワークW1を加熱する通電加熱において、所定形状に形成された板状ワークW1と所定形状に形成された加熱補助部材W2とを用意し、板状ワークW1と加熱補助部材W2とを重ね合わせ、板状ワークW1と加熱補助部材W2とが重ねられた状態で、板状ワークW1及び加熱補助部材W2に一対の電極11を取り付けて、両電極11間を通電する。その場合、板状ワークW1と加熱補助部材W2とは、板状ワークW1及び加熱補助部材W2の通電方向に直交する所定の断面における板状ワークW1の断面積と板状ワークW1の電気抵抗率の逆数との積と前記所定の断面における加熱補助部材W2の断面積と加熱補助部材W2の電気抵抗率の逆数との積との総和が通電方向において略一定となるように用意され重ね合わせられる。
これにより、両電極11間を通電する際に、通電方向において重ね合わせられた板状ワークW1及び加熱補助部材W2の抵抗値を略一定にして板状ワークW1及び加熱補助部材W2から発生するジュール熱を通電方向において略等しくすることができるので、比較的簡単に板状ワークの加熱温度のバラツキを抑制することができる。直角台形状などの非矩形状に形成された板状ワークW1を加熱する場合においても、板状ワークW1の加熱温度のバラツキを抑制することができる。
また、板状ワークW1の周縁部の少なくとも一部W1a,W1bと係合して板状ワークW1を所定位置に位置決めする位置決め部材21,22を備えていることにより、板状ワークW1の位置がずれることを防止して板状ワークW1を所定位置に精度良く保持することができ、前記効果を有効に奏することができる。
なお、前記通電加熱装置1では、一対の電極11にそれぞれ位置決め部材21が結合され、電極11と位置決め部材21とが別体で形成されているが、位置決め部材を電極によって形成し、電極と位置決め部材とを一体的に形成するようにしてもよい。
本実施形態ではまた、直角台形状に形成された板状ワークW1に同一の直角台形状に形成された加熱補助部材W2を、通電方向に直交する所定の断面における板状ワークW1の断面積と板状ワークW1の電気抵抗率の逆数との積と前記所定の断面における加熱補助部材W2の断面積と加熱補助部材W2の電気抵抗率の逆数との積との総和が通電方向において略一定となるように重ね合わせて通電することにより板状ワークW1を加熱し、板状ワークW1の加熱温度を測定した。
図5は、実施例1として用いた通電加熱によって加熱される板状ワークの温度測定条件を説明するための説明図であり、図5では、実施例1として用いた板状ワーク、加熱補助部材及び電極のみを示している。図5(a)は、前記板状ワーク、加熱補助部材及び電極の配置を示す平面図、図5(b)、図5(c)及び図5(d)はそれぞれ、図5(a)においてY5B方向、Y5C方向及びY5D方向から見た前記板状ワーク、加熱補助部材及び電極の側面図を示している。
板状ワークW1及び加熱補助部材W2として、所定の電気抵抗率を有するとともに厚さ1.6mmを有する冷間圧延高張力鋼板SPFC440を用い、図3に示すように、長さが280mm、幅が110mmである矩形状に形成された板状ワークを対角線の交点C1を通る点対称な直線状のラインL1によって切断することにより、同一形状を有する直角台形状に形成したものを用意した。具体的には、板状ワークW1及び加熱補助部材W2は、図5(a)に示すように、上辺が22mm、下辺が88mm、長さが280mmである直角台形状に形成したものを用いた。
板状ワークW1及び加熱補助部材W2は、前記通電加熱装置1において、図5に示すように重ね合わせ、通電方向に直交する所定の断面における板状ワークW1の断面積と板状ワークW1の電気抵抗率の逆数との積と前記所定の断面における加熱補助部材W2の断面積と加熱補助部材W2の電気抵抗率の逆数との積との総和が通電方向において略一定となるように板状ワークW1と加熱補助部材W2とが重ね合わせられた状態で、電極11とクランプ部材15とによって板状ワークW1及び加熱補助部材W2を挟持して板状ワークW1及び加熱補助部材W2に電極11を取り付けて両電極11間を通電し、板状ワークW1を加熱した。通電は、直流電源を用い、電流値を4.2Aに設定して10秒間行った。
そして、通電加熱によって板状ワークW1を10秒間加熱した直後に、熱電対を用いて板状ワークW1の各測定位置において温度測定を行った。具体的には、図5(a)及び図5(b)に示すように、板状ワークW1の上面においてP1〜P4で示す各位置で測定した。
また、比較例として、前記通電加熱装置1において、電極11上に板状ワークW1のみを配置して通電することにより板状ワークW1を加熱し、板状ワークW1の加熱温度を測定した。電極11と板状ワークW1との間に加熱補助部材W2を重ね合わせていないことを除き、実施例1と同様にして通電加熱を行い、板状ワークW1の加熱温度を測定した。
図6は、比較例として用いた通電加熱によって加熱される板状ワークの温度測定条件を説明するための説明図であり、図6では、比較例として用いた板状ワーク及び電極のみを示している。図6(a)は、前記板状ワーク及び電極の配置を示す平面図、図6(b)、図6(c)及び図6(d)はそれぞれ、図6(a)においてY6B方向、Y6C方向及びY6D方向から見た前記板状ワーク及び電極の側面図を示している。
比較例として用いた板状ワークW1は、実施例1に用いた板状ワークW1と同様のものを用い、電極11上に実施例1の場合と同じ位置に配置した。比較例についても、電極11とクランプ部材15とによって板状ワークW1を挟持して板状ワークW1に電極11を取り付けて両電極11間を通電し、板状ワークW1を加熱した。通電加熱条件及び板状ワークW1の測定位置は、実施例1と同様にして行った。
実施例1において加熱された板状ワークW1の温度測定結果を以下の表1に示し、比較例1において加熱された板状ワークW1の温度測定結果を以下の表2に示している。なお、表1及び表2では、板状ワークW1の各測定位置における測定温度と、板状ワークW1の最も高い測定温度と各測定位置における温度差とを示している。
表1に示すように、実施例1では、板状ワークW1について、測定位置P3において最高温度325℃が測定され、測定位置P1において最低温度227℃が測定され、これらの温度差が98℃であるという結果が得られた。
一方、表2に示すように、比較例では、板状ワークW1について、測定位置P4において最高温度577℃が測定され、測定位置P2において最低温度144℃が測定され、これらの温度差が433℃であるという結果が得られた。
これらの結果から、比較例では加熱される板状ワークW1の温度差が433℃であるのに対し、実施例1では加熱される板状ワークW1の温度差が98℃であり、板状ワークW1と加熱補助部材W2とを、通電方向に直交する所定の断面における板状ワークW1の断面積と板状ワークW1の電気抵抗率の逆数との積と前記所定の断面における加熱補助部材W2の断面積と加熱補助部材W2の電気抵抗率の逆数との積との総和が通電方向において略一定となるように用意して重ね合わせることで、通電加熱によって加熱される板状ワークW1の加熱温度のバラツキを抑制することができることが分かる。
このように、板状ワークW1に加熱補助部材W2を、通電方向に直交する所定の断面における板状ワークW1の断面積と板状ワークW1の電気抵抗率の逆数との積と前記所定の断面における加熱補助部材W2の断面積と加熱補助部材W2の電気抵抗率の逆数との積との総和が通電方向において略一定となるように重ね合わせることで、非矩形状に形成された板状ワークを通電加熱によって加熱する際に、板状ワークの加熱温度のバラツキを抑制することができる。
このようにして、前記通電加熱装置1を用いて板状ワークW1を加熱した後には、加熱された板状ワークW1を、搬送ロボットや搬送ベルトなどの搬送手段を用いて成形型を備えたプレス成形装置に搬送してプレス成形することで、板状ワークW1を熱間プレス成形することができるが、前記通電加熱装置1をプレス成形装置に組み込んで、通電加熱によって加熱された板状ワークをプレス成形するようにしてもよい。
図7は、前記通電加熱装置を備えたプレス成形装置の一例を示す概略図である。図7に示す前記通電加熱装置1を備えたプレス成形装置31は、下方側へ突出する突出部41を備えたパンチ40と、突出部41に対応して凹状に形成された凹部51を備えたダイ50と有する成形型30を備え、突出部41と凹部51とを組み合わせることで板状ワークを所定形状に形成することができるように構成されている。
パンチ40は、スプリング42及びスプリングガイド44を介してパンチプレート44に取り付けられ、該パンチプレート44がパンチホルダー45に取り付けられている。パンチホルダー45は、図示しないパンチ移動機構に連結されており、前記パンチ移動機構によってパンチホルダー45が上下方向に移動されることにより、パンチ40が上下方向に移動可能に構成されている。一方、ダイ50は、ダイホルダー52に取り付けられて固定されている。
プレス成形装置31にはまた、前述した通電手段10を有する通電加熱装置1が備えられ、ダイ50には、ダイ50の凹部51を挟んで凹部51の両側に一対の電極11が取り付けられている。一対の電極11は、ダイ50の上面よりも突出するように設けられ、ケーブル13によって電源12に接続されている。また、一対の電極11の上方にはクランプ部材15が取り付けられている。
プレス成形装置31では、パンチ40が上方へ移動された状態で、板状ワークW1の断面積と電気抵抗率の逆数との積と加熱補助部材W2の断面積と電気抵抗率の逆数との積との総和が通電方向において略一定となるように重ね合わせられた板状ワークW1及び加熱補助部材W2を電極11とクランプ部材15とによって挟持して板状ワークW1及び加熱補助部材W2に一対の電極11を取り付けた後に、両電極11間を通電して板状ワークW1を加熱することが行われる。
そして、板状ワークW1が加熱された後には、クランプ部材15が上方へ移動され、図示しない搬送手段を用いて加熱補助部材W2がプレス成形装置31から取り除かれ、次いで、パンチ40が下方へ移動され、加熱された板状ワークW1が成形型30を用いてプレス成形され、板状ワークW1の熱間プレス成形が行われる。
図7に示すように、前記通電加熱装置1を組み込んだプレス成形装置31を用い、前記通電加熱装置1によって板状ワークW1を加熱し、その後に、成形型30を用いて加熱された板状ワークW1をプレス成形して、熱間プレス成形を行うようにしてもよい。なお、熱間プレス成形は、板状ワークを焼入れ温度以上に加熱してプレス成形するものに限らず、板状ワークを焼入れ温度未満の温度に加熱してプレス成形するものも含むものとする。
このように、通電方向に直交する所定の断面における板状ワークW1の断面積と板状ワークW1の電気抵抗率の逆数との積と前記所定の断面における加熱補助部材W2の断面積と加熱補助部材W2の電気抵抗率の逆数との積との総和が通電方向において略一定となるように重ね合わせられた板状ワークW1及び加熱補助部材W2を通電加熱し、成形型を用いて加熱された板状ワークW1をプレス成形することにより、板状ワークの加熱温度のバラツキを抑制しつつ板状ワークを迅速に加熱することができ、板状ワークの材料特性にバラツキが生じることを防止することができるとともに板状ワークのプレス成形サイクルタイムを短縮することが可能である。
図8は、本発明の第2実施形態に係る通電加熱装置の概略図であり、図8(a)は、前記通電加熱装置の概略平面図、図8(b)、図8(c)及び図8(d)はそれぞれ、図8(a)におけるY8B方向、Y8C方向及びY8D方向から見た前記通電加熱装置の側面図である。なお、図8(b)、図8(c)及び図8(d)ではそれぞれ、位置決め部材21,22の一部を二点鎖線で示し、これを透過状態で示している。
本発明の第2実施形態に係る通電加熱装置61は、通電加熱装置1と、電極11の形状が異なっていること以外は同様であるので、通電加熱装置1と同様の構成については同一符号を付して説明を省略する。
図8に示すように、本発明の第2実施形態に係る通電加熱装置61においても、互いに離間する一対の電極71を有し、重ね合わせられた板状ワークW1及び加熱補助部材W2に一対の電極71を取り付けて通電することにより板状ワークW1及び加熱補助部材W2を加熱する通電手段70を備え、通電方向に直交する所定の断面における板状ワークW1の断面積と板状ワークW1の電気抵抗率の逆数との積と前記所定の断面における加熱補助部材W2の断面積と加熱補助部材W2の電気抵抗率の逆数との積との総和が通電方向において略一定となるように重ね合わせられた板状ワークW1及び加熱補助部材W2を加熱するようになっているが、通電加熱装置61では、電極71が、通電方向に略直交する方向に延びるものの、重ね合わせられた板状ワークW1及び加熱補助部材W2の通電方向に直交する方向全体に接触するように設けられている。
電極71の正電極71aは、通電加熱装置1の正電極11aと同様に形成され、図8(c)に示すように、重ね合わせられた板状ワークW1及び加熱補助部材W2の通電方向に直交する方向全体に接触するように設けられているが、電極71の負電極71bは、図8(d)に示すように、通電加熱装置1の負電極11bと同様に略直方体状に形成された本体部71cと、該本体部71cから突出する突出部71dとを備え、本体部71cと突出部71dとが一体的に形成されている。
負電極71bの突出部71dは、本体部71cと通電方向において同一長さを有するとともに加熱補助部材W2の厚さと同一厚さを有し、本体部71cと板状ワークW1との間に形成される空間を埋めるように形成されている。これにより、負電極71bについても、重ね合わせられた板状ワークW1及び加熱補助部材W2の通電方向に直交する方向全体に接触するように設けられている。
このようにして構成される通電加熱装置61を用いる場合においても、板状ワークW1に、通電方向に直交する所定の断面における板状ワークW1の断面積と板状ワークW1の電気抵抗率の逆数との積と前記所定の断面における加熱補助部材W2の断面積と加熱補助部材W2の電気抵抗率の逆数との積との総和が通電方向において略一定となるように加熱補助部材W2が重ね合わせられることにより、電極71間を通電する際に板状ワークW1及び加熱補助部材W2から発生するジュール熱を通電方向において略等しくすることができるので、比較的簡単に板状ワークの加熱温度のバラツキを抑制することができる。
本実施形態ではまた、前記通電加熱装置61を用い、直角台形状に形成された板状ワークW1に同一の直角台形状に形成された加熱補助部材W2を、通電方向に直交する所定の断面における板状ワークW1の断面積と板状ワークW1の電気抵抗率の逆数との積と前記所定の断面における加熱補助部材W2の断面積と加熱補助部材W2の電気抵抗率の逆数との積との総和が通電方向において略一定となるように重ね合わせて通電することにより板状ワークW1を加熱し、板状ワークW1の加熱温度を測定した。
図9は、実施例2として用いた通電加熱によって加熱される板状ワークの温度測定条件を説明するための説明図であり、図9では、実施例2として用いた板状ワーク、加熱補助部材及び電極のみを示している。図9(a)は、前記板状ワーク、加熱補助部材及び電極の配置を示す平面図、図9(b)、図9(c)及び図9(d)はそれぞれ、図9(a)においてY9B方向、Y9C方向及びY9D方向から見た前記板状ワーク、加熱補助部材及び電極の側面図を示している。
図9に示すように、通電加熱装置61を用いた実施例2においても、実施例1と同様の板状ワークW1及び加熱補助部材W2を用い、電極71上に板状ワークW1の断面積と電気抵抗率の逆数との積と加熱補助部材W2の断面積と電気抵抗率の逆数との積との総和が通電方向において略一定となるように板状ワークW1と加熱補助部材W2とを重ね合わせて両電極71間を通電し、板状ワークW1を通電加熱によって加熱し、板状ワークW1の加熱温度を測定した。通電加熱条件及び温度の測定位置についても実施例1と同様にして行った。
実施例2において加熱された板状ワークW1の温度測定結果を以下の表3に示している。なお、表3では、板状ワークW1の各測定位置における測定温度と、板状ワークW1の最も高い測定温度と各測定位置における温度差とを示している。
表3に示すように、実施例2では、板状ワークW1について、測定位置P4において最高温度372℃が測定され、測定位置P1において最低温度309℃が測定され、これらの温度差が63℃であるという測定結果が得られた。
前述したように、比較例では加熱される板状ワークW1の温度差が433℃であるのに対し、実施例2では加熱される板状ワークW1の温度差が63℃であり、板状ワークW1と加熱補助部材W2とを、通電方向に直交する所定の断面における板状ワークW1の断面積と板状ワークW1の電気抵抗率の逆数との積と前記所定の断面における加熱補助部材W2の断面積と加熱補助部材W2の電気抵抗率の逆数との積との総和が通電方向において略一定となるように用意して重ね合わせることで、通電加熱によって加熱される板状ワークW1の加熱温度のバラツキを抑制することができることが分かる。
また、実施例1では加熱される板状ワークW1の温度差が98℃であるのに対し、実施例2では加熱される板状ワークW1の温度差が63℃であり、板状ワークW1の加熱温度のバラツキをさらに抑制することができることが分かる。
このように、本実施形態に係る通電加熱装置61を用いる場合においても、電極71間を通電する際に板状ワークW1及び加熱補助部材W2から発生するジュール熱を通電方向において略等しくすることができるので、比較的簡単に板状ワークW1の加熱温度のバラツキを抑制することができる。非矩形状に形成された板状ワークW1を加熱する場合においても、板状ワークW1の加熱温度のバラツキを抑制することができる。
また、電極71は、通電方向に略直交する方向に延び、重ね合わせられた板状ワークW1及び加熱補助部材W2の通電方向に直交する方向全体に接触するように設けられていることにより、電極71が板状ワークW1及び加熱補助部材W2の通電方向に直交する方向の一部に接触している場合に比して電極71の接触面積を大きくすることができるので、板状ワークW1及び加熱補助部材W2のそれぞれの通電方向に略均一に電流が流れるようになるとともに、電極71と板状ワークW1及び加熱補助部材W2との接触部分で発熱するジュール熱を小さくすることができ、前記効果をより有利に奏することができる。
図10は、本発明の第3実施形態に係る通電加熱装置の概略図であり、図10(a)は、前記通電加熱装置の概略平面図、図10(b)は、図10(a)におけるY10B方向から見た前記通電加熱装置の側面図である。なお、図10(b)では、位置決め部材22を二点鎖線で示し、これを透過状態で示している。
本発明の第3実施形態に係る通電加熱装置81は、通電加熱装置1において板状ワークW1及び加熱補助部材W2を電極11間でクランプするクランプ手段がさらに設けられたものであり、通電加熱装置1と同様の構成については同一符号を付して説明を省略する。
図10(a)及び図10(b)に示すように、本発明の第3実施形態に係る通電加熱装置81においても、互いに離間する一対の電極11を有し、板状ワークW1及び加熱補助部材W2に一対の電極11を取り付けて通電することにより板状ワークW1及び加熱補助部材W2を加熱する通電手段10を備え、重ね合わせられた板状ワークW1及び加熱補助部材W2を加熱するようになっている。
前記通電加熱装置81ではまた、電極11間の略中央部において板状ワークW1及び加熱補助部材W2をクランプするクランプ手段85が設けられ、クランプ手段85は、板状ワークW1及び加熱補助部材W2を上方からクランプする上側クランプ部材91と、板状ワークW1及び加熱補助部材W2を下方からクランプする下側クランプ部材95とによって構成されている。
上側クランプ91は、クランプ部材15と同様に構成され、電極11の延びる方向に略平行に延びる略直方体状のクランプ基部92と、重ね合わせられた板状ワークW1及び加熱補助部材W2に接触する先端部を備えたピン部93と、クランプ基部92とピン部93とに結合されるスプリング94とを備え、クランプ基部92が、図示しない上側クランプ移動手段に連結されて矢印Z2に示すように上下方向に移動可能に構成されている。
一方、下側クランプ95は、上側クランプ91を上下反転したものであり、電極11の延びる方向に略平行に延びる略直方体状のクランプ基部96と、重ね合わせられた板状ワークW1及び加熱補助部材W2に接触する先端部を備えたピン部97と、クランプ基部96とピン部97とに結合されるスプリング98とを備え、クランプ基部96が、図示しない下側クランプ移動手段に連結されて矢印Z3に示すように上下方向に移動可能に構成されている。
クランプ手段85では、前記上側クランプ移動手段によってクランプ基部91が下方へ移動されることにより上側クランプ部材91が下方へ移動され、前記下側クランプ移動手段によってクランプ基部96が上方へ移動されることにより下側クランプ部材95が上方へ移動される。これにより、クランプ手段85は、電極11間の略中央部において電極11上に配置された板状ワークW1及び加熱補助部材W2を上側クランプ部材91と下側クランプ部材95とによってクランプすることができるようになっている。
なお、通電加熱装置81では、電極11間において板状ワークW1及び加熱補助部材W2をクランプするクランプ手段85が1つ設けられ、板状ワークW1及び加熱補助部材W2を電極11間の1ヶ所でクランプするように構成されているが、複数のクランプ手段を設けて板状ワークW1及び加熱補助部材W2を電極11間の複数箇所でクランプするようにするようにしてもよい。
このようにして構成される通電加熱装置81においても、クランプ部材15及び上側クランプ部材91がそれぞれ上方へ移動されるとともに下側クランプ部材95が下方へ移動された状態で、それぞれ所定形状に形成された板状ワークW1及び加熱補助部材W2を用意し、電極11上において板状ワークW1と加熱補助部材W2とを重ね合わせ、重ね合わせられた板状ワークW1及び加熱補助部材W2に対してクランプ部材15を下方へ移動させることにより電極11とクランプ部材15とによって板状ワークW1及び加熱補助部材W2を挟持して板状ワークW1及び加熱補助部材W2に一対の電極11を取り付けることが行われる。
前記通電加熱装置81ではまた、板状ワークW1と加熱補助部材W2とを重ね合わせた後、両電極11間を通電する前に、重ね合わせられた板状ワークW1及び加熱補助部材W2に対して上側クランプ部材91を下方へ移動させるとともに下側クランプ部材95を上方へ移動させることにより上側クランプ部材91と下側クランプ部材95とによって電極11間において板状ワークW1及び加熱補助部材W2をクランプし、その後に、両電極11間を通電して板状ワークW1及び加熱補助部材W2を加熱することが行われる。
このように、通電加熱装置81を用いる場合においても、板状ワークW1に、板状ワークW1の断面積と電気抵抗率の逆数との積と加熱補助部材W2の断面積と電気抵抗率の逆数との積との総和が通電方向において略一定となるように加熱補助部材W2が重ね合わせられることにより、電極71間を通電する際に板状ワークW1及び加熱補助部材W2から発生するジュール熱を通電方向において略等しくすることができるので、比較的簡単に板状ワークの加熱温度のバラツキを抑制することができる。
また、通電加熱装置81では、クランプ手段85を用いて板状ワークW1及び加熱補助部材W2を電極11間の少なくとも1ヶ所以上でクランプすることにより、電極11間において、重ね合わせられた板状ワークW1及び加熱補助部材W2の間に隙間が生じることを防止することができる。
次に、本発明の実施形態に係る通電加熱装置において加熱される板状ワーク及び加熱補助部材の変形例について説明する。
本実施形態では、板状ワークW1及び加熱補助部材W2を、図3に示すように、所定の電気抵抗率を有する矩形状に形成された板状ワークを対角線の交点C1を通る点対称な直線状のラインL1によって切断して同一の直角台形状に形成しているが、これに限定されるものではなく、図11から図13に示すような板状ワーク及び加熱補助部材を用いることも可能である。
図11は、本発明の実施形態に係る通電加熱装置において加熱される板状ワーク及び加熱補助部材の第1、第2及び第3の変形例を示す図である。図11(a)に示すように、矩形状に形成された板状ワークを対角線の交点C1を通る点対称な直線状のラインL5によって切断して同一の直角三角形に形成した板状ワークW1及び加熱補助部材W2を用い、通電加熱装置1,61,81において通電方向に直交する所定の断面における板状ワークW1の断面積と板状ワークW1の電気抵抗率の逆数との積と前記所定の断面における加熱補助部材W2の断面積と加熱補助部材W2の電気抵抗率の逆数との積との総和が通電方向において略一定となるように重ね合わせることも可能である。
また、図11(b)に示すように、矩形状に形成された板状ワークを対角線の交点C1を通る点対称な階段状のラインL6によって切断して同一の形状に形成した板状ワークW1及び加熱補助部材W2を用い、通電加熱装置1,61,81において通電方向に直交する所定の断面における板状ワークW1の断面積と板状ワークW1の電気抵抗率の逆数との積と前記所定の断面における加熱補助部材W2の断面積と加熱補助部材W2の電気抵抗率の逆数との積との総和が通電方向において略一定となるように重ね合わせてもよい。
また、図11(c)に示すように、矩形状に形成された板状ワークを対角線の交点C1を通る点対称な曲線状のラインL7によって切断して同一の形状に形成した板状ワークW1及び加熱補助部材W2を用い、通電加熱装置1,61,81において通電方向に直交する所定の断面における板状ワークW1の断面積と板状ワークW1の電気抵抗率の逆数との積と前記所定の断面における加熱補助部材W2の断面積と加熱補助部材W2の電気抵抗率の逆数との積との総和が通電方向において略一定となるように重ね合わせることも可能である。
図11では、矩形状に形成された板状ワークを対角線の交点C1を通る点対称なラインL5,L6,L7によって切断して同一の形状に形成した板状ワークW1及び加熱補助部材W2について記載しているが、平行四辺形に形成された板状ワークを対角線の交点を通る点対称なラインによって切断して同一の形状に形成した板状ワーク及び加熱補助部材を用いることも可能である。
図12は、本発明の実施形態に係る通電加熱装置において加熱される板状ワーク及び加熱補助部材の第4の変形例を示す図である。図12(a)に示すように、平行四辺形に形成された板状ワークを対角線の交点C2を通る点対称な直線状のラインL8によって切断して同一の等脚台形に形成した板状ワークW1及び加熱補助部材W2を用い、通電加熱装置1,81において、図12(b)に示すように、電極11上に板状ワークW1の断面積と電気抵抗率の逆数との積と加熱補助部材W2の断面積と電気抵抗率の逆数との積との総和が通電方向において略一定となるように重ね合わせることも可能である。
図13は、本発明の実施形態に係る通電加熱装置において加熱される板状ワーク及び加熱補助部材の第5の変形例を示す図である。図12では、平行四辺形に形成された板状ワークを切断して板状ワークW1及び加熱補助部材W2を同一の等脚台形に形成しているが、図13(a)に示すように、平行四辺形に形成された板状ワークを対角線の交点C3を通る点対称な直線状のラインL9によって切断して同一形状を有する平行な対辺の間のもう1つの対辺の長さが異なる台形状に形成した板状ワークW1及び加熱補助部材W2を用い、通電加熱装置1,81において、図13(b)に示すように、電極11上に板状ワークW1の断面積と電気抵抗率の逆数との積と加熱補助部材W2の断面積と電気抵抗率の逆数との積との総和が通電方向において略一定となるように重ね合わせることも可能である。
図14は、本発明の実施形態に係る通電加熱装置において加熱される板状ワーク及び加熱補助部材の第6の変形例を示す図である。図14に示される板状ワークW1及び加熱補助部材W2は、図3(a)に示すように、矩形状に形成された板状ワークを対角線の交点C1を通る点対称な直線状のラインL1によって切断して同一の直角台形状に形成したものであるが、図14に示すように、板状ワークW1を上下反転することなく、通電加熱装置1,81において電極11上に板状ワークW1及び加熱補助部材W2の重なり合う部分が矩形状になるように板状ワークW1と加熱補助部材W2とを重ね合わせ、板状ワークW1の断面積と電気抵抗率の逆数との積と加熱補助部材W2の断面積と電気抵抗率の逆数との積との総和が通電方向において略一定となるように重ね合わせることも可能である。
前記通電加熱装置1,61,81では、重ね合わせられる板状ワークW1及び加熱補助部材W2は、一定の厚さを有して非矩形状に形成されているが、板状ワークW1及び加熱補助部材W2は、通電方向に直交する所定の断面における板状ワークW1の断面積と板状ワークW1の電気抵抗率の逆数との積と前記所定の断面における加熱補助部材W2の断面積と加熱補助部材W2の電気抵抗率の逆数との積との総和が通電方向において略一定となるように重ね合わせられるものであれば、板状ワークW1及び加熱補助部材W2の厚さが変化するものを用いることも可能である。
図15は、本発明の実施形態に係る通電加熱装置において加熱される板状ワーク及び加熱補助部材の第7の変形例を示す図であり、図15では、前記板状ワーク及び加熱補助部材を通電加熱装置1に取り付けた状態で示している。図15(a)は、前記板状ワーク及び加熱補助部材が取り付けられた前記通電加熱装置の概略平面図、図15(b)、図15(c)及び図15(d)はそれぞれ、図15(a)におけるY15B方向、Y15C方向及びY15D方向から見た前記通電加熱装置の側面図である。
図15に示すように、通電加熱装置1において、通電方向に直交する所定の断面における板状ワークW11の断面積と板状ワークW11の電気抵抗率の逆数との積と前記所定の断面における加熱補助部材W12の断面積と加熱補助部材W12の電気抵抗率の逆数との積との総和が通電方向において略一定となるように形成され重ね合わせられる場合には、同一の矩形状に形成されるとともに厚さが長手方向に変化する板状ワークW11及び加熱補助部材W12を用いることも可能である。
かかる場合においても、両電極11間を通電する際に、板状ワークW11及び加熱補助部材W12から発生するジュール熱を通電方向において略等しくすることができるので、比較的簡単に板状ワークW11の加熱温度のバラツキを抑制することができる。
前述した板状ワークW1,W11及び加熱補助部材W2,W12は、同一形状に形成されているが、通電方向に直交する所定の断面における板状ワークの断面積と板状ワークの電気抵抗率の逆数との積と前記所定の断面における加熱補助部材の断面積と加熱補助部材の電気抵抗率の逆数との積との総和が通電方向において略一定となるように形成され重ね合わせられるものであれば、板状ワークと加熱補助部材とが異なる形状を有するものを用いることも可能である。
図16は、本発明の実施形態に係る通電加熱装置において加熱される板状ワーク及び加熱補助部材の第8の変形例を示す図である。図16に示す板状ワークW21は、車体構成部材であるピラーを成形するための(斜線ハッチングが施される)ピラー成形部M21を有するものについて示している。
図16(a)に示すように、板状ワーク及び加熱補助部材として、ピラーの形状に応じて所定の矩形状に形成されるとともに所定の厚さを有する板状ワークB1がラインL11及びL12によって切断され、ピラー成形部M21を有する板状ワークW21と第1の加熱補助部材W22と第2の加熱補助部材W23とが形成される。
そして、図16(b)に示すように、第1の加熱補助部材W22と第2の加熱補助部材W23とは、第1の加熱補助部材W22のラインL11によって切断された辺と反対側の辺と第2の加熱補助部材W23のラインL12によって切断された辺と反対側の辺とが突き合わせられ、板状ワークW21及び加熱補助部材W22,W23が用意される。
次に、通電加熱装置1,81において、図16(c)に示すように、電極11上に、通電方向に直交する所定の断面における板状ワークW21の断面積と板状ワークW21の電気抵抗率の逆数との積と前記所定の断面における加熱補助部材W22,W23の断面積と加熱補助部材W22,W23の電気抵抗率の逆数との積との総和が通電方向において略一定となるように重ね合わせられ、通電加熱によって板状ワークW21が加熱される。なお、板状ワークW21は、通電加熱によって加熱された後に、ピラー成形部M21が所定形状にプレス成形されるとともにピラー成形部M21を除く部分がトリミング加工されて取り除かれる。
かかる場合においても、両電極11間を通電する際に板状ワークW21及び加熱補助部材W22,W23から発生するジュール熱を通電方向において略等しくすることができるので、板状ワークW21の加熱温度のバラツキを抑制することができる。非矩形状に形成された板状ワークW21を通電加熱によって加熱する際に、板状ワークW21の加熱温度のバラツキを抑制することができる。
図17は、本発明の実施形態に係る通電加熱装置において加熱される板状ワーク及び加熱補助部材の第9の変形例を示す図である。図17に示す板状ワークW31は、車体構成部材であるインパクトバーを成形するための(斜線ハッチングが施される)インパクトバー成形部M31を有するものについて示している。
図17(a)に示すように、板状ワーク及び加熱補助部材として、インパクトバーの形状に応じて所定の矩形状に形成されるとともに所定の厚さを有する板状ワークB2がラインL21及びL22によって切断され、インパクトバー成形部M31を有する板状ワークW31と第1の加熱補助部材W32と第2の加熱補助部材W33とが形成される。
そして、図17(b)に示すように、第1の加熱補助部材W32と第2の加熱補助部材W33とは、第1の加熱補助部材W32のラインL21によって切断された辺と反対側の辺と第2の加熱補助部材W33のラインL22によって切断された辺と反対側の辺とが突き合わせられ、板状ワークW31及び加熱補助部材W32,W33が用意される。
次に、通電加熱装置1,81において、図17(c)に示すように、電極11上に、通電方向に直交する所定の断面における板状ワークW31の断面積と板状ワークW31の電気抵抗率の逆数との積と前記所定の断面における加熱補助部材W32,W33の断面積と加熱補助部材W32,W33の電気抵抗率の逆数との積との総和が通電方向において略一定となるように重ね合わせられ、通電加熱によって板状ワークW21が加熱される。なお、板状ワークW31は、通電加熱によって加熱された後に、インパクトバー成形部M31が所定形状にプレス成形されるとともにインパクトバー成形部M31を除く部分がトリミング加工されて取り除かれる。
かかる場合においても、両電極11間を通電する際に板状ワークW31及び加熱補助部材W32,W33から発生するジュール熱を通電方向において略等しくすることができるので、板状ワークW31の加熱温度のバラツキを抑制することができる。非矩形状に形成された板状ワークW31を通電加熱によって加熱する際に、板状ワークW31の加熱温度のバラツキを抑制することができる。
図16及び図17に示す板状ワーク及び加熱補助部材の変形例では、第1の加熱補助部材W22,W32と第2の加熱補助部材とW23,W33を突き合わせ、突き合わせられた第1の加熱補助部材W22,W32と第2の加熱補助部材W23,W33に板状ワークW21,W31を重ね合わせているが、突き合わせることなく離間して配置した第1の加熱補助部材W22,W32と第2の加熱補助部材W23,W33に板状ワークW21,W31を重ね合わせるようにしてもよく、あるいは第1の加熱補助部材W22,W32と第2の加熱補助部材W23,W33と板状ワークW21,W31とを3枚重ね合わせるようにしてもよい。また、第1の加熱補助部材W22,W32と第2の加熱補助部材W23,W33とを突き合わせた形状の加熱補助部材を一体的に形成し、この1つの加熱補助部材に板状ワークW21,W31を重ね合わせるようにすることも可能である。
前述した実施形態に係る通電加熱装置1,61,81では、板状ワークと加熱補助部材とをそれぞれ用意した後に電極上に板状ワークと加熱補助部材とを重ね合わせ、重ね合わせられた板状ワーク及び加熱補助部材を電極とクランプ部材とによって挟持して板状ワーク及び加熱補助部材に一対の電極を取り付けているが、通電加熱装置1,61,81において、電極11と加熱補助部材W2とを一体的に形成し、電極11と一体的に形成された加熱補助部材W2に板状ワークW1を重ね合わせるようにすることも可能である。これにより、電極11と加熱補助部材W2とが別体で形成されている場合に比して、通電加熱装置の構成を簡素化することができる。
また、前記通電加熱装置1,61,81において、加熱補助部材W2をクランプ部材側に配置するとともにクランプ部材と加熱補助部材W2とを一体的に形成し、クランプ部材と一体的に形成された加熱補助部材W2と板状ワークW1とを重ね合わせるようにすることも可能である。
図18は、本発明の第4実施形態に係る通電加熱装置の概略図であり、図18(a)は、前記通電加熱装置の概略平面図、図18(b)、図18(c)及び図18(d)はそれぞれ、図18(a)におけるY18B方向、Y18C方向及びY18D方向から見た前記通電加熱装置の側面図である。
本発明の第4実施形態に係る通電加熱装置101は、通電加熱装置1において、加熱補助部材W2をクランプ部材側に配置するとともにクランプ部材と加熱補助部材W2とを一体的に形成したものである。通電加熱装置1と同様の構成については同一符号を付して説明を省略する。
図18に示すように、本発明の第4実施形態に係る通電加熱装置101では、電極11の上方にそれぞれ、電極11の延びる方向に略平行に延びる略直方体状に形成されたクランプ部材105が配置され、クランプ部材105が、図示しないクランプ移動手段に連結されて矢印Z4に示すように上下方向に移動可能に構成されている。
前記通電加熱装置101ではまた、クランプ部材105に加熱補助部材W2が一体的に形成され、加熱補助部材W2が、クランプ部材105とともに上下方向に移動されるようになっている。加熱補助部材W2はまた、板状ワークW1に重ね合わせた状態で、通電方向に直交する所定の断面における板状ワークW1の断面積と板状ワークW1の電気抵抗率の逆数との積と前記所定の断面における加熱補助部材W2の断面積と加熱補助部材W2の電気抵抗率の逆数との積との総和が通電方向において略一定となるように形成されている。
このようにして構成される通電加熱装置101では、クランプ部材105が加熱補助部材W2とともに上方へ移動された状態で電極11上に板状ワークW1を配置し、板状ワークW1に対してクランプ部材105を加熱補助部材W2とともに下方へ移動させ、板状ワークW1と加熱補助部材W2とを重ね合わせるとともに板状ワークW1及び加熱補助部材W2に一対の電極11を取り付けて、その後に、両電極11間を通電して板状ワークW1及び加熱補助部材W2を加熱することが行われる。
通電加熱装置101を用いる場合においても、板状ワークW1に、通電方向に直交する所定の断面における板状ワークW1の断面積と板状ワークW1の電気抵抗率の逆数との積と前記所定の断面における加熱補助部材W2の断面積と加熱補助部材W2の電気抵抗率の逆数との積との総和が通電方向において略一定となるように加熱補助部材W2が重ね合わせられることにより、比較的簡単に板状ワークの加熱温度のバラツキを抑制することができる。
また、通電加熱装置101では、板状ワークW1を挟んで電極11の反対側に配置され、電極11とともに板状ワークW1を挟持するクランプ部材105を備え、クランプ部材105と加熱補助部材W2とが一体的に形成されていることにより、クランプ部材105と加熱補助部材W2とが別体で形成されている場合に比して、通電加熱装置の構成を簡素化することができる。通電加熱後に板状ワークW1を搬送する場合、加熱補助部材W2をクランプ部材105とともに移動させることができるので、板状ワークW1の搬送を容易に行うことができる。
このように、加熱補助部材と電極とを一体的に形成したり加熱補助部材とクランプ部材とを一体的に形成したりする通電加熱装置において、板状ワークを連続的に通電加熱によって加熱する場合、両電極間を通電する前に、加熱補助部材が板状ワークに対して高温状態になる畏れがある。
この場合、好ましくは、両電極間を通電する前に、板状ワークと加熱補助部材とが略同一温度になるように、例えば板状ワークを加熱炉に保持して板状ワークを予め加熱したり、例えば加熱補助部材に冷風を供給して加熱補助部材を予め冷却したりすることが行われる。これにより、加熱補助部材が板状ワークに比して高温状態にある場合、通電加熱前に板状ワークと加熱補助部材との温度を略等しくすることができる。
なお、本実施形態に係る通電加熱において加熱される板状ワーク及び加熱補助部材は、高張力鋼板などの金属製の板状ワーク及び加熱補助部材に限らず、所定の電気抵抗率をそれぞれ有する導電性の板状ワーク及び加熱補助部材であれば、樹脂製などのその他の板状ワーク及び加熱補助部材を使用することも可能である。また、加熱補助部材を電極やクランプ部材と一体的に形成して使用する場合、加熱補助部材として、板状ワークと同一の材料からなる部材に限らず、例えば、酸化しにくいステンレスや鋳鉄などからなる部材を用いるようにしてもよい。
本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能であることは言うまでもない。