以下、一実施形態に係るカメラ及び当該カメラが具備するレンズ鏡筒について、図1〜図7に基づいて詳細に説明する。
図1には、本実施形態に係るカメラ500が模式的に示されている。図1に示すようにカメラ500は、撮像部200と、レンズ鏡筒100と、を備える。
撮像部200は、筐体210と、筐体210内に収容された主鏡212、ペンタプリズム214、接眼光学系216を含む光学系と、焦点検出装置230と、シャッタ234と、撮像素子238と、メインLCD240と、主制御部250と、を有する。
主鏡212は、図1の状態では、レンズ鏡筒100から入射した入射光の大半を上方に配置されたフォーカシングスクリーン222に導く。フォーカシングスクリーン222は、レンズ鏡筒100内の光学系の合焦位置に配置され、レンズ鏡筒100内の光学系により形成された画像を結像させる。
ペンタプリズム214は、フォーカシングスクリーン222に結像された画像を、反射した後、ハーフミラー224を介して、接眼光学系216まで導く。これにより、接眼光学系216では、フォーカシングスクリーン222上の映像を正像として観察することができる。この場合、ハーフミラー224は、ファインダLCD226に形成された撮影条件や設定条件等を示す表示画像をフォーカシングスクリーン222の映像に重畳させる。したがって、接眼光学系216の出射端においては、フォーカシングスクリーン222の映像とファインダLCD226の画像とが重ね合わせられた状態を観察することができる。なお、ペンタプリズム214の出射光の一部は、測光部228に導かれ、当該測光部228にて、入射光の強度及びその分布等が測定される。
焦点検出装置230は、主鏡212を透過し、かつ主鏡212の裏面側に設けられた副鏡232にて反射された光を用いて、レンズ鏡筒100内の光学系の焦点調整状態(ピント状態)を検出する。なお、主鏡212及び副鏡232は、撮影の際には、レンズ鏡筒100から入射する入射光の光路から退避するように、図1に破線にて示す位置まで上昇する。
シャッタ234は、主鏡212後方(レンズ鏡筒100から入射する入射光の光路後方)に配置され、撮影の際には、主鏡212及び副鏡232の上昇動作と連動して、開放動作を行う。シャッタ234が開放された状態では、光学フィルタ236を介して撮像素子238にレンズ鏡筒100からの入射光が入射する。撮像素子238は、入射光が形成する画像を電気信号に変換する。
メインLCD240は、その表示画面部分が筐体210の外部に露出した状態となっている。このメインLCD240の表示画面上には、撮像素子238上に形成された映像(撮影された映像)のほか、撮像部200における各種設定情報などが表示される。
主制御部250は、上記各部の種々動作を統括的に制御する。また、主制御部250は、撮像部200内の焦点検出装置230が検出した光学系の焦点調整状態の情報を参照して、レンズ鏡筒100内の光学系(レンズL1〜L5)を駆動したり(オートフォーカス)、レンズ鏡筒100内の光学系の動作量を参照して、合焦していることをファインダLCD226に表示したりする(フォーカスエイド)。
次に、レンズ鏡筒100の構成について、図2〜図5(b)に基づいて詳細に説明する。
図2、図3には、レンズ鏡筒100の断面図が示されている。これらのうち、図2は、レンズ鏡筒100が広角端にある状態を示し、図3は、レンズ鏡筒100が、望遠端までズームされた状態を示す。これらの図に示すように、レンズ鏡筒100は、共通の光軸AX上に配列された1群レンズL1、2群レンズL2、3群レンズL3、4群レンズL4、5群レンズL5を有する。なお、以下においては、光軸AX方向の1群レンズL1側を前側、5群レンズL5側を後側として説明する。
レンズ鏡筒100は、図2、図3に示すように、固定筒10と、1群レンズL1を保持する1群レンズ摺動筒11と、2群レンズL2を保持する2群レンズ摺動筒12と、3群レンズL3及び5群レンズL5を保持する3,5群レンズ摺動筒13と、4群レンズL4を保持する4群レンズ摺動筒14と、を備える。
固定筒10は、基部10aにおいて、撮像部200に固定される。この固定状態では、固定筒10の撮像部200側の端面10bが撮像部200(図1の筐体210)に密接することにより、固定筒10、すなわちレンズ鏡筒100が撮像部200に対して位置決めされる。固定筒10は、その内周面の上側部分(天井部分)近傍において、ガイドパイプ36Aを支持し、その内周面の下側部分近傍において、ガイドパイプ36Bを支持する。
1群レンズ摺動筒11は、当該1群レンズ摺動筒11の内側に設けられたズーム駆動筒16と連動可能に連結されている。具体的には、1群レンズ摺動筒11に植設されたカムピン15が、ズーム駆動筒16に形成されたカム溝16aに係合した状態となっている。
一方、ズーム駆動筒16は、レンズ鏡筒100の最外周において光軸AX回りの回転が自在とされたズーム操作環18と連動可能に連結されている。具体的には、ズーム駆動筒16から外側に突設された駆動力伝達ピン19が、ズーム操作環18の内面に形成された光軸AXに平行な操作溝18aに係合している。これにより、ズーム駆動筒16は、ズーム操作環18の回転に連動して回転する。ズーム操作環18は、前後方向への移動ができないようになっており、その外周面には滑り止めのゴム層が設けられている。ズーム操作環18は、変倍動作(ズーミング)の際に、ユーザによって回転されるものである。
また、ズーム駆動筒16は、その内側に設けられたズーム用案内筒22に対して回転可能とされている。ズーム用案内筒22には、図2、図3の下半部に示すように、逃げ溝22aが貫通形成され、このズーム用案内筒22と、ズーム駆動筒16に貫通形成された直進溝16bとには、固定筒10の内側に設けられたカムリング20に固定された回転連結部材21が係合している。カムリング20には、固定筒10の内側に突設されたカムピン10dと係合するカム溝20eが形成されている。
上記構造によると、ズーム操作環18が回転されると、駆動力伝達ピン19の作用によりズーム駆動筒16が回転し、その回転とカムピン15の作用により、1群レンズ摺動筒11が前後方向(光軸AXに沿った方向)に移動する。また、ズーム操作環18の回転により、ズーム駆動筒16が回転すると、その回転力が回転連結部材21を介してカムリング20に伝達するため、カムリング20は回転しながら前後方向に移動する。なお、ズーム用案内筒22は、回転せずにズーム駆動筒16とともに前後方向に移動する。
なお、ズーム操作環18と1群レンズ摺動筒11との間には、カバー筒17が設けられている。このカバー筒17は、図2、図3に示すように、1群レンズ摺動筒11に連れ従って前後方向に移動して、ズーム操作環18と1群レンズ摺動筒11との間を封止し、レンズ鏡筒100内への塵埃の浸入を防止する。
図4(a)は、2群レンズ摺動筒12及びその近傍を取り出して示す図である。図4(a)に示すように、2群レンズ摺動筒12は、2群レンズL2を保持する保持筒24と、保持筒24に固定された押さえ環26と、保持筒24の外周を取り囲む状態で設けられた係合筒28と、を有する。保持筒24と押さえ環26とは、ネジ止め等により固定され、2群レンズL2の外縁部を挟持する。
係合筒28は、一対(2本)のガイドバー30A,30Bを片持ち支持する。このガイドバー30A,30Bは、2群レンズL2の光軸AXを挟んで上下対称な位置に配置されている。ガイドバー30A,30Bは、同一種類の金属材料を切削して形成された、太さが異なる円柱状部材であり、ガイドバー30Aの方が、ガイドバー30Bよりも太く、曲げ強度が強く設定されている。これらのうち、ガイドバー30Aは、図2、図3に示すように、固定筒10に支持されたガイドパイプ36Aにスライド可能に挿入され、ガイドバー30Bは、固定筒10に支持されたガイドパイプ36Bにスライド可能に挿入される。なお、ガイドバー30A,30Bの材料としては、強度が高く、軽量な材料、例えばステンレスなどを採用することができ、係合筒28とガイドバー30A,30Bとの間は、接着又は圧入などの処理を経て固定されている。
ガイドパイプ36A、36Bは、外径が同一の円筒状部材から成り、ガイドパイプ36Aの内径の方が、ガイドパイプ36Bの内径よりも大きく設定されている。すなわち、ガイドパイプ36Bの方が、ガイドパイプ36Aよりも肉厚で、曲げ強度が強い円筒状部材となっている。ガイドパイプ36Aの内径は、ガイドバー30Aとの外径とほぼ一致している。また、ガイドパイプ36Bの内径は、ガイドバー30Bの外径よりもやや大きく設定され、ガイドバー30Bとの間に若干の隙間を確保している。このように、ガイドパイプ36Bとガイドバー30Bとの間に隙間を確保することで、ガイドバー30A,30B間の間隔の製造誤差(ガタ)にも対応することが可能である。なお、ガイドパイプ36A,36Bの材料としては、ガイドバー30A,30Bと同様、ステンレスなどを採用することができる。
なお、ガイドバー30A(30B)とガイドパイプ36A(36B)との間は、面接触していなくても良く、ガイドパイプ36A(36B)の一端部近傍と他端部近傍の2点で点接触しているのみでも良い。
図4(a)に戻り、係合筒28の外周面の一部には、突起状のフォロワ28aが形成されている。このフォロワ28aは、係合筒28の外側に設けられた連動リング32の周溝32cと係合している。なお、フォロワ28aは、ガイドバー30Aの近傍、すなわち、ガイドバー30Aの中心軸を延長した延長軸の近傍に配置されている。
この周溝32cが形成されている連動リング32には、更に、連動溝32aと、カムフォロワ32bとが形成されている。連動溝32aには、略L字状の形状を有する連動キー34の一端部が係合している。この連動キー34は、図2、図3に示す、固定筒10の外周部に設けられたピントリング37に接続されており、ピントリング37の光軸AX回りの回転に伴って、光軸AXを中心とした回転方向に移動する。このように、連動キー34が光軸AXを中心とした回転方向に移動すると、連動リング32が光軸AX回りに回転する。また、連動キー34は、固定筒10のモータ室10c内に設けられたモータ38にも接続されている。したがって、連動リング32は、モータ38の回転動作に伴う連動キー34の光軸AXを中心とした回転方向への移動によっても、光軸AX回りに回転する。
カムフォロワ32bは、図2、図3に示すように、カムリング20に形成されたカム溝20bに係合している。したがって、連動リング32が回転した場合には、連動リング32及びこれに連結している部材(2群レンズ摺動筒12、ガイドバー30A,30B、2群レンズL2)が、カム溝20bとカムフォロワ32bの作用により、前後方向に移動するようになっている。この前後方向の移動において、連動リング32は、光軸AX回りに回転しながら前後方向に移動するが、ガイドバー30A,30Bの移動方向は、ガイドパイプ36A,36Bにより前後方向にのみ規制されているので、ガイドバー30A,30Bに接続されている2群レンズ摺動筒12及び2群レンズL2は、回転することなく前後方向に移動する。なお、カムフォロワ32bは、ガイドバー30Aの近傍、すなわち、ガイドバー30Aの中心軸を延長した延長軸の近傍に配置されている。
ここで、ガイドバー30A,30Bは、2群レンズL2及び2群レンズ摺動筒12を含む一体構造物の自重を支持するが、例えば、図2,図3の紙面直交方向が、鉛直方向になる場合(ガイドバー30A,30Bが水平方向に並ぶ場合)には、ガイドバー30A、30Bのそれぞれが、2群レンズ摺動筒12の自重の1/2を支持することになる。一方、図2,図3の紙面直交方向が、水平方向になる場合(ガイドバー30A,30Bが鉛直方向に並ぶ場合)には、ガイドバー30Aが、2群レンズ摺動筒12を含む一体構造物の全自重を支持することになる。なお、それ以外の角度であっても、ガイドバー30Aが支持する重量のほうが、ガイドバー30Bが支持する重量よりも必ず大きくなる。したがって、本実施形態のように、負荷が大きいガイドバー30Aの太さを、ガイドバー30Bよりも太く設定して、曲げ強度を強くすることで、ガイドバー30Aの撓みや変形を抑制することができる。
図4(b)は、3,5群レンズ摺動筒13、4群レンズ摺動筒14及びその近傍を取り出して示す図である。この図4(b)に示すように、3,5群レンズ摺動筒13は、3群レンズL3と5群レンズL5とを光軸AX方向に所定間隔あけた状態で保持する。この3,5群レンズ摺動筒13は、ガイドパイプ36Bに係合する2つの係合部13a,13bと、ガイドパイプ36Aに係合する1つの係合部13cを有している。
係合部13b(及び13a)は、図4(b)のA−A線断面図である図5(a)に示すように、円形の貫通孔31を有している。この貫通孔31は、ガイドパイプ36Bの外径とほぼ同径であり、この貫通孔31にガイドパイプ36Bが挿入された状態で、ガイドパイプ36Bにより3,5群レンズ摺動筒13の自重が支持される。ここで、ほぼ同径とは、3,5群レンズ摺動筒13のスライドに支障が無い程度の隙間が、ガイドパイプ36Bと貫通孔31の間に形成される寸法を意味する。
一方、係合部13cは、U字溝33を有する。U字溝33の幅は、ガイドパイプ36Aの直径と略同一、すなわち、3,5群レンズ摺動筒13のスライドに支障が無い程度の隙間が形成される寸法に設定されている。3,5群レンズ摺動筒13では、ガイドパイプ36AにU字溝33が係合することにより、ガイドパイプ36Bを中心とした回転方向の動きが抑制されている。なお、係合部13cには、U字溝33に代えて、上下方向に長い長円孔を形成しても良い。
また、3,5群レンズ摺動筒13の外周部の一部には、図5(a)に示すように、カムフォロワ35が突設されている。このカムフォロワ35は、カムリング20に形成されたカム溝20cに係合している。このため、カムリング20が光軸AX回りに回転すると、当該回転動作に連動して、3,5群レンズ摺動筒13は、前後方向(光軸AX方向)の駆動力を受ける。なお、3,5群レンズ摺動筒13は、前述のようにガイドパイプ36A、36Bに係合しているため、光軸AX回りに回転することなく、前後方向にのみ移動する。なお、図4(b)及び図2等では、図示の便宜上、カムフォロワ35及びカム溝20cの図示を省略している。
なお、3,5群レンズ摺動筒13の下部には、図4(b)及び図5(a)に示すように、下部開口13dが形成され、上部には、上部開口13eが形成されている。
4群レンズ摺動筒14は、図4(b)に示すように、3,5群レンズ摺動筒13の内部空間に設けられ、その下端部が3,5群レンズ摺動筒13の下部開口13dから表出し、その上端部が3,5群レンズ摺動筒13の上部開口13eから表出している。4群レンズ摺動筒14の下端部には、図4(b)に示すように、ガイドパイプ36Bに係合する係合部14a,14bが設けられ、上端部には、ガイドパイプ36Aに係合する係合部14cが設けられている。
係合部14a(及び14b)は、図4(b)のB−B線断面図である図5(b)に示すように、円形の貫通孔41を有している。この貫通孔41は、ガイドパイプ36Bとほぼ同径、すなわち、4群レンズ摺動筒14のスライドに支障が無い程度の隙間が形成される径であり、この貫通孔41にガイドパイプ36Bが挿入された状態で、4群レンズ摺動筒14の自重が支持されている。一方、係合部14cは、図5(b)に示すように、U字溝43を有している。このU字溝43の幅は、ガイドパイプ36Aの直径と略同一、すなわち、4群レンズ摺動筒14のスライドに支障が無い程度の隙間が形成される寸法に設定されている。4群レンズ摺動筒14では、ガイドパイプ36AにU字溝43が係合することにより、ガイドパイプ36Bを中心とした回転方向の動きが抑制されている。なお、係合部14cには、U字溝43に代えて、上下方向に長い長円孔を形成しても良い。
また、4群レンズ摺動筒14の外周部の一部には、図5(b)に示すように、カムフォロワ45が突設されている。このカムフォロワ45は、カムリング20に形成されたカム溝20d(図5(a)参照)に係合しているため、カムリング20が光軸AX回りに回転すると、当該回転動作に連動して、前後方向(光軸AX方向)に移動するようになっている。この場合、4群レンズ摺動筒14は、前述のようにガイドパイプ36A、36Bに係合しているため、回転することなく前後方向に移動する。なお、図4(b)及び図2等では、図示の便宜上、カムフォロワ45及びカム溝20dの図示を省略している。
カムフォロワ35,45は、図5(a)に示すように、ガイドパイプ36Bの近傍に配置されている。ここで、ガイドパイプ36Bの近傍とは、例えば、0°〜45°程度の範囲を意味する。このように、ガイドパイプ36Bの近傍にカムフォロワ35,45を配置することにより、カムフォロワ35,45からの力(前後方向の駆動力)が、ガイドパイプ36B近傍に作用するので、カムフォロワ35,45を介した、各摺動筒13,14の効率的な移動を実現できる。なお、設計上の制約が無ければ、カムフォロワ35,45は、ガイドパイプ36Bの最近傍に位置しているのが好ましい。
ここで、ガイドパイプ36A,36Bは、3〜5群レンズL3〜L5、3、5群レンズ摺動筒13及び4群レンズ摺動筒14の自重を支持するが、例えば、図2,図3の紙面直交方向が、鉛直方向になる場合(ガイドパイプ36A,36Bが水平方向に並ぶ場合)には、ガイドパイプ36A、36Bのそれぞれが、3、5群レンズ摺動筒13及び4群レンズ摺動筒14の自重の1/2を支持することになる。一方、図2,図3の紙面直交方向が、水平方向になる場合(ガイドパイプ36A,36Bが鉛直方向に並ぶ場合)には、ガイドパイプ36Bが、3、5群レンズ摺動筒13及び4群レンズ摺動筒14等の全自重を支持することになる。なお、それ以外の角度であっても、ガイドパイプ36Bが支持する重量のほうが、ガイドパイプ36Aが支持する重量よりも大きくなる。したがって、本実施形態のように、ガイドパイプ36Bをガイドパイプ36Aよりも肉厚に設定して、曲げ強度を強くすることで、ガイドパイプ36Bの撓みや変形を抑制することができる。
次に、図6、図7に基づいて、ズーム動作を行うとき(ズーミング)の2群レンズL2〜5群レンズL5の移動動作、及びピントを合わせるとき(フォーカシング)の2群レンズL2〜5群レンズL5の移動動作について説明する。なお、図6、図7では、図面の錯綜を避けるため、1群レンズL1の動作に関係する部分の図示を省略している。
まず、ズーミングのときの各レンズの移動動作について、図6(a)、図6(b)に基づいて説明する。ここでは、レンズ鏡筒100が広角端にある状態(図6(a))から、望遠端にズームされるまで(図6(b))の動作について説明する。
図6(a)の状態から、ユーザによりズーム操作環18(図2等参照)が回転されると、前述したように回転連結部材21等を介してカムリング20が回転される。この回転に伴い、連動リング32にもカムフォロワ32bを介して、回転力と前方向の移動力とが作用するが、連動リング32は、連動溝32aと係合する連動キー34(固定状態)により、前後方向にのみガイドされているので、回転することなく前側に直進する。また、この連動リング32の直進に伴って、連動リング32に係合する係合筒28(すなわち2群レンズ摺動筒12)、及び2群レンズL2が前方向に移動する。
更に、カムリング20の回転は、カムフォロワ35,45を介して係合している3,5群レンズ摺動筒13及び4群レンズ摺動筒14(3〜5群レンズL3〜L5)も前方向に移動させる。なお、レンズL3,L5とレンズL4の移動距離は、カムフォロワ35及びカムフォロワ45が係合するカム溝20c,20dの形成方向(角度)によって異なる。なお、カムリング20自体も前方向に移動するため、各レンズL3〜L5の実際の移動距離は、カムリング20の移動距離と、カム溝20c,20dによるカムフォロワ35,45の移動距離との合計距離となる。
このように、ズーミングのときには、ズーム操作環18の回転動作に伴って、2〜5群レンズL2〜L5(及び説明、図示を省略している1群レンズL1)のそれぞれが前方向に、別々の距離(ただし、レンズL3とL5は同一距離)だけ移動するようになっている。
ここで、本実施形態では、ガイドパイプ36Bを、ガイドパイプ36Aよりも肉厚に設定して、曲げ強度を強くしているので、ズーミングのときに、3〜5群レンズL3〜L5が前方向に移動しても、ガイドパイプ36Bが撓んだり変形したりするのが抑制されることになる。また、本実施形態では、ガイドバー30Aを、ガイドバー30Bよりも太く設定しているので、ズーミングのときに、2群レンズL2が前方向に移動しても、ガイドバー30Aが撓んだり変形したりするのが抑制されることになる。
次に、フォーカシングのときの各レンズの移動動作について、図7(a)、図7(b)に基づいて説明する。ここでは、図7(a)の状態からフォーカシングを行い、ピントが合ったときに、図7(b)の状態になるものとする。
まず、ピントリング37がユーザにより回転されるか、あるいはモータ38が回転駆動されることにより、連動キー34が光軸AXを中心とする回転方向に移動すると、前述したように、連動キー34に係合する連動リング32が光軸AX回りに回転する。この回転により、連動リング32は、カムフォロワ32bをカムリング20のカム溝20bに沿わせて、前方向にも移動する。そして、この連動リング32の回転方向及び前方向の移動により、連動リング32の周溝32cに係合したフォロワ28aを有する係合筒28(すなわち2群レンズ摺動筒12)及び2群レンズL2も前方向に移動することになる。ここで、カムフォロワ32b及びフォロワ28aは、ガイドバー30Aの近傍に配置されているので、連動リング32及び係合筒28に対して光軸AX方向の駆動力を効率的に作用させることができる。
一方、カムリング20は、無回転の固定状態にあるため、3群〜5群レンズL3〜L5は前(後)方向に移動しない。また、説明及び図示を省略している1群レンズL1も前(後)方向に移動することはない。
このように、フォーカシングのときには、連動キー34の回転動作に伴って、2群レンズL2のみが前(後)方向に移動するようになっている。この場合、2群レンズ摺動筒12に固定されたガイドバー30A,30Bには、3,5群レンズ摺動筒13や4群レンズ摺動筒14は直接接触していないので、2群レンズ摺動筒12の前(後)方向への移動が、3,5群レンズ摺動筒13や4群レンズ摺動筒14により邪魔されることはない。
なお、フォーカシング時のモータ38の回転は、図1の主制御部250が、焦点検出装置230の検出結果に基づいて制御する。すなわち、主制御部250によるモータ38の回転制御により、オートフォーカスが実行される。なお、レンズ鏡筒100と、撮像部200との間は、レンズ鏡筒100と撮像部200との間に設けられる接続端子により電気的に接続されており、これにより、レンズ鏡筒100(例えばモータ38など)に、撮像部200側から電力が供給されるようになっている。
以上説明したように、本実施形態によると、固定筒10に設けられた光軸AX方向に延びる一対のガイドパイプ36A,36Bが、異なる曲げ強度に設定されており、当該一対のガイドパイプ36A,36Bの内周面に沿って、2群レンズL2を保持する2群レンズ摺動筒12に設けられたガイドバー30A,30Bがスライドし、3群レンズL3及び5群レンズL5を保持する3,5群レンズ摺動筒13、及び4群レンズL4を保持する4群レンズ摺動筒14が、ガイドパイプ36A,36Bの外周面に沿って光軸AX方向にスライドする。したがって、本実施形態では、負荷が大きい側のガイドパイプ36Bの曲げ強度をガイドパイプ36Aよりも強くする、すなわち、3、5群レンズ摺動筒13及び4群レンズ摺動筒14が嵌合するガイドパイプ36Bの曲げ強度を、3、5群レンズ摺動筒13及び4群レンズ摺動筒14が係合するガイドパイプ36Aの曲げ強度よりも強くすることで、ガイドパイプ36A,36Bの撓み等の変形を抑制することができる。これにより、レンズ鏡筒100及びカメラ500の光学性能を維持することができる。
また、本実施形態では、各レンズ摺動筒12,13,14を、同一部材に沿って移動させることができる。これにより、レンズ鏡筒100内の構造の簡素化を図ることが可能である。また、3,5群レンズ摺動筒13及び4群レンズ摺動筒14は、2群レンズ摺動筒12に設けられたガイドバー30A,30Bとは非接触であるため、フォーカシング時など、2群レンズ摺動筒12が単独で移動するような場合にも、他の摺動筒13,14が、ガイドバー30Aのスライドを妨げることがない。これにより、2群レンズ摺動筒12を移動させるのに必要な力を低減することができるので、モータ38の負担又はピントリング37を回転するユーザの負担を軽減することができる
また、本実施形態では、一対のガイドバー30A,30Bも、異なる曲げ強度に設定されているので、負荷が大きい側のガイドバー30Aの曲げ強度をガイドバー30Bよりも強くすることで、ガイドバー30A,30Bの撓み等の変形を抑制することができる。これにより、レンズ鏡筒100及びカメラ500の光学性能を維持することができる。
更に、本実施形態では、曲げ強度が強く設定されたガイドパイプ36Bに挿入されたガイドバー30Bよりも、ガイドパイプ36Aに挿入されたガイドバー30Aの曲げ強度を強く設定している。このようにすることで、肉厚の厚いほうのガイドパイプに挿入されたガイドバーを細くでき、かつ、肉厚の薄いほうのガイドパイプに挿入されたガイドバーを太くすることができる。これにより、ガイドパイプ36A,36Bの外径をほぼ同一に設定することができるので、スペース効率の向上及びレンズ鏡筒100の小型化を図ることが可能である。また、レンズ鏡筒100の小型化により、操作性の向上や軽量化を図ることが可能となる。
なお、上記実施形態では、ガイドバー30Aを太くするとともに、ガイドパイプ36Aの肉厚を薄くし、ガイドバー30Bを細くするとともに、ガイドパイプ36Bの肉厚を厚くする場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、いずれか一方のガイドバーを太くするとともに、当該ガイドバーが挿入されるガイドパイプを肉厚にすることとしてもよい。このようにしても、上記実施形態と同様、光学性能を維持することができる。
また、上記実施形態では、ガイドバーとガイドパイプの曲げ強度を異ならせる場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、ガイドバーとガイドパイプのいずれか一方の曲げ強度を異ならせることとしても良い。
また、上記実施形態では、ガイドバーの太さを異ならせる又はガイドパイプの肉厚を異ならせることで、曲げ強度を異ならせる場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、ガイドバー及びガイドパイプの材料を異ならせることにより、曲げ強度を異ならせることとしても良い。この場合、荷重が小さいガイドバー又はガイドパイプの材料として、安価な材料や軽量な材料を採用することもできるので、材料選択の幅が広がり、低コスト化や軽量化等を図ることが可能となる。
なお、上記実施形態では、フォーカシングの際に、1〜5群レンズL1〜L5のすべてのレンズ又はこれらのうちの複数のレンズが移動するようにしても良い。このうち、すべてのレンズが移動する方式は全体繰り出し方式と呼ばれる。
なお、上記実施形態では、ガイドパイプ36A,36Bが、固定筒10と別体で構成され、固定筒10によりガイドパイプ36A,36Bが支持されている場合について説明したがこれに限られるものではない。例えば、ガイドパイプ36A,36Bと固定筒10とが一体成型されていても良い。
また、上記実施形態では、3群レンズL3と5群レンズL5が、共通のレンズ摺動筒13により保持される場合について説明したが、これに限らず、3群レンズL3と5群レンズL5は、別々のレンズ摺動筒により保持されても良い。
また、上記実施形態のレンズの数やレンズ配置は一例である。すなわち、レンズ鏡筒としては、ガイドバーに固定された一のレンズ摺動筒に保持されるレンズと、ガイドパイプの外周面に沿ってスライドする他のレンズ摺動筒に保持されるレンズとを、少なくとも有していれば良い。
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。